【実施例】
【0032】
特に断りのない限り、すべての部及び百分率は重量基準である。実施例では、次に示す試験手順及び成分を用いる。
【0033】
カルボキシメチルセルロース(CMC)
利用するCMC(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)は、ASTM D 1439−03「Standard Test Methods for Sodium Carboxymethylcellulose; Degree of Etherification, Test Method B: Nonaqueous Titration」に準じて測定される、約0.9のアンヒドログルコース単位当たりのカルボキシメトキシル置換度(DS)、及びThermo Electron社(Germany)から市販されている、シリンダシステムcup MVを備えたHaake Viscotester VT550を2.55 s
−1で用い、20℃の2重量%水溶液として測定される、約20,000mPa・sの粘度を有していた。
【0034】
CMCは、The Dow Chemical Company社、又はDow Wolff Cellulosics社(Germany)からWALOCEL(商標)CRT 20,000 GAとして市販されている。
【0035】
メチルセルロース(MC)
以下の表1に列挙されているとおりに、食品用(FG)メチルセルロースを用いた。メチルセルロースは、The Dow Chemical Company社から市販されている。
【0036】
【表1】
【0037】
アイスクリームミックスを、表2に列挙されている成分から製造した。安定剤組成物の成分を除くアイスクリームミックスの組成を、以下の表3に列挙する。安定剤組成物の成分は、実施例1〜6及び比較例A〜Eについて、個別に更に以下に開示されている。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
アイスクリームの製造
上の表2に列挙されている成分を、表3のレシピに従って秤量し、その結果、総量1600gの最終アイスクリーム配合物を得た。水、乾燥粉乳及び乳化剤を混合し、次いで、これを、調理機(Thermomix TM 31、Vorwerk社(Germany)から市販されている。)のボウルに加えた。このミックスを、速度2で2分間撹拌した。その後、ミックスを、速度3.5で約5分間、80℃まで加熱した。加熱を、乳化剤及びカラギーナンの適切な溶解を保証するために行った。スクロースと安定剤組成物をブレンドし、塊にならないように撹拌した。Thermomix TM 31調理機が所望の温度に達するとすぐに、粉末状の成分を加えた。そして、液体成分(クリーム、コーンシロップ、バニラ芳香剤)を、ミックスに加えた。全混合物を撹拌し、80℃で5分間保持した。その後、ミックスを70℃で保存し、上述したとおりに、それぞれ1600gの更なる2つの配合物を調製した。すべてのミックスを合わせ、約4800gを得た。
【0041】
そして、170 barの圧力によって、まだ熱いうちに(70℃)、液体アイスクリームミックスを均質化した(ホモジナイザーNiro Soavi S.p.A., GEA)。その後、アイスクリームミックスを、85℃で10分間、アイスクリーム機(CRM Telme社(Italy)製)により直接低温殺菌した。次いで、アイスクリーム機を、ミックスが4℃に達するまで、冷却した。続いて、アイスクリームミックスを、アイスクリーム機から取り出し、エージングし、これによってアイスクリームミックスのホイップ品質を向上させるために、16時間冷蔵庫(4℃)内に保存した。その後、アイスクリームミックスを、アイスクリーム機において12分間凍結させた。次いで、アイスクリームをボトルに充填し、硬化のために、−18℃のフリーザー内に直ちに入れた。アイスクリームを少なくとも3日間フリーザー内に放置した後、分析を開始した。
【0042】
実施例1及び比較例A
0.3重量%の安定剤組成物を含むアイスクリームミックスを、上述のとおりに調製した。
【0043】
実施例1において、安定剤組成物は、72重量%のMETHOCEL(商標)A4C FGメチルセルロースと、18重量%のWALOCEL(商標)CRT 20,000 GAカルボキシメチルセルロースと、10重量%のκ‐カラギーナンガムと、からなっていた。このミックスを、4℃で16時間静置した。ミックスは、均質に維持されていた。相分離はみられなかった。
【0044】
比較例Aにおいて、安定剤組成物は、80重量%のMETHOCEL(商標)A4C FGメチルセルロースと、20重量%のWALOCEL(商標)CRT 20,000 GAカルボキシメチルセルロースと、からなっていた。このミックスを4℃で16時間静置すると、相分離がみられた。
【0045】
実施例2〜5及び比較例B〜E
以下の表4に列挙されている0.3重量%の安定剤組成物を含むアイスクリームミックスを、上述のとおりに調製した。また、安定剤を含まない対照ミックスも調製した。比較例Eは、アイスクリームにおいて安定剤組成物として一般に用いられるローカストビーンガム、グアー及びκ‐カラギーナンの組合せを示す。比較例Dは、比較例Eにおいて利用されるローカストビーンガムの代わりに、CMCを利用する。また、比較例Dも、アイスクリームにおいて一般に用いられる安定剤組成物を示す。比較例D及びEにおいて利用される安定剤組成物の成分が、個別に又は更に上述した先行技術と組み合わせて推奨される。
【0046】
安定剤組成物の組成、並びに、ミックスから調製されたアイスクリームのオーバーラン%及びメルトバックを、以下の表4に列挙する。
【0047】
アイスクリームのオーバーラン
オーバーランは、上述したように調製された凍結アイスクリーム中の混入空気の量を表す。オーバーランは、次のように算出することができる。
オーバーラン%=100×(アイスクリームの容量−凍結されたアイスクリームを調製するのに用いられるアイスクリームミックスの容量)/アイスクリームを調製するのに用いられるアイスクリームミックスの容量)
【0048】
アイスクリームのメルトバック試験
試験を、22±2℃の一定温度及び55±5%の湿度において、気候室で行った。約80 mmの径及び約−19.2±1.3℃の温度の、350g±5gの円筒状アイスクリームブロックを、10 mmの径の円形開口部を備えたプラスチックグリッドであって、円の中心が互いから20 mm離れて位置しているグリッド上に置いた。測定前に、グリッドを−18℃で保存した。すべての試験において、アイスクリームブロックは、同じ温度及び同じ寸法であった。
【0049】
グリッドの下において、滴下した血清
(アイスクリームの液体部分、以下同じ。)をペトリ皿に集め、10分ごとに、合計180分間秤量した。固形量は、所定の経過時間におけるパーセントとして表されるいわゆるメルトバックレベルとして、試料の出発質量を基準としている。
【0050】
【数1】
【0051】
【表4】
【0052】
表4の結果は、実施例2〜5並びに比較例A〜C及びEのすべてのアイスクリーム組成物のすべての測定されたメルトバック特性が類似し、消費者の要求を満たしていることを示す。
【0053】
実施例2〜5のアイスクリーム組成物は、比較例D及びEのアイスクリーム組成物よりも実質的により高いオーバーランを有する。比較例B及びCのアイスクリーム組成物は、実施例2〜5のアイスクリーム組成物と同様のオーバーランを有するが、更に下に示すように、比較例B及びCのアイスクリーム組成物は、実施例2〜5のアイスクリーム組成物よりも官能特性において劣っている。
【0054】
アイスクリームの凍解安定性
凍解安定性は、消費者の重要なパラメータである。アイスクリームが融点よりもわずかに低い温度に解凍し、再び凍結すると、氷晶の成長が促進される。大きな氷晶は、砂のように粗い口当たりとなり、望ましくない。凍解安定性試験では、アイスクリームを解凍し、連続して(22℃で15分、−18℃で45分)4回再び凍結させる。
【0055】
口当たりを、ISO 4120:2004に準じた三角試験を用い、訓練パネルによって調査した。この方法は、知覚可能な相違の結果(相違についての試験)、又は知覚可能な相違が、2つの試料AとBとの間に生じない(類似性についての試験)ことの決定に有効である。評価者は、1組の3試料(三つ組)を受け取り、2つの試料が似ており、1つの試料が異なっている(異様な試料とする。)ことを通知される。評価者は、選択が推測のみに基づいている場合であっても、異なっていると考えていることを報告する(強制選択試験)。これは、「相違がない」という報告が、この試験では認められないことを意味する。最低6人の評価者が相違についての試験に必要である。十分な数の総評価をもたらすのに必要な場合、反復評価を用いてもよい。
【0056】
等しい数の2つの試料A及びBの6つの可能な次の順序を用いる。
ABB AAB ABA BAA BBA BAB
【0057】
試料を、3桁の乱数を用いて符号化し、評価者間で6つのグループに無作為に分配させた。それぞれの順序を、評価者6人の最初のグループで1回、次いで、次のグループなどで用いた。三つ組を、評価者に同時に提示した。これらによって、反復評価が可能になった。約30gのそれぞれの試料を出した。−18℃の温度の冷却アイスクリームを、Styrofoam(商標)発泡体からなる箱内に、低温を維持するために氷嚢とともに保存した。試食が開始するとすぐに、アイスクリームをグラスに入れ、パネリストに直接渡した。水及び食パン(小麦澱粉及び水のみからなる。)を、口蓋中和剤(palate neutralizer)として出した。試験室は、ドイツ規格DIN 10962:1997の要件に準じて用意した。評価者を、それぞれのドイツ規格(DIN 10961:1996−08, DIN 10959: 1998−07)に準じて、選択し、訓練し、モニタリングした。
【0058】
上述した凍解安定性試験において、比較例Bのアイスクリーム組成物は、凍解サイクル後に顕著に多くの氷晶を含み、実施例3のアイスクリーム組成物よりも砂のような口当たりであることが分かった。7人の訓練評価者のうち、6人は、比較例Bと実施例3のアイスクリーム組成物との間の相違に気付いた。これらの試料間の相違は、統計的に有意であった。
【0059】
一方、8人の訓練評価者のうち、4人しか、実施例2と実施例3のアイスクリーム組成物との間の相違に気付かず、4人の訓練評価者は、相違に気付かなかった。実施例2と実施例3のアイスクリーム組成物との間の相違は、統計的に有意ではなかった。
【0060】
上述した凍解安定性試験において、比較例Cのアイスクリーム組成物は、実施例4のアイスクリーム組成物よりも凍解サイクル後に多くの氷晶を含んでいた。7人の訓練評価者のうち、5人は、比較例Cと実施例4のアイスクリーム組成物との間の相違に気付いた。これらの試料間の相違は、統計的に有意であった。比較例Cと実施例4との間の相違を識別した評価者の大半は、実施例4のアイスクリーム組成物よりも、比較例Cのアイスクリーム組成物の砂のような口当たりを相違として気付いた。
【0061】
8人の訓練評価者のうち、4人は、実施例4と実施例5のアイスクリーム組成物との間の相違に気付いたが、4人の訓練評価者は、相違に気付かなかった。
【0062】
【表5】
【0063】
アイスクリームのクリーミーさ及び水っぽさ
少なくとも6人の訓練評価者が、ドイツ規格DIN10967−1:1999−10に準じて、アイスクリーム試料の官能特性、とりわけ、クリーミーさ及び水っぽさを評価する試験に参加した。アイスクリーム試料を3桁の乱数を用いて無作為に符号化した。約30gのそれぞれの試料を出した。直接的な比較が可能になるように、パネリストは、並行して種々のアイスクリーム試料を試食した。−18℃の温度の冷却アイスクリームを、Styrofoam(商標)発泡体からなる箱内に、低温を維持するために氷嚢とともに保存した。試食が開始するとすぐに、アイスクリームをグラスに入れ、パネリストに直接渡した。パネリストは、試料が評価時に既に溶けていた場合、再度新しいアイスクリームを注文することができた。水及び食パン(小麦澱粉及び水のみからなる。)を、口蓋中和剤として出した。試験室は、ドイツ規格DIN 10962:1997の要件に準じて用意した。評価者を、それぞれのドイツ規格(DIN 10961:1996−08, DIN 10959: 1998−07)に準じて、選択し、訓練し、モニタリングした。クリーミーさ及び水っぽさのスコアを、以下の表6に列挙する。
【0064】
【表6】
【0065】
比較例Eは、参照試料の最良の官能特性を有していた(参照試料には、比較例E、比較例D、及び安定剤を含まない対照ミックスが含まれる。)。比較例D及びE、並びに、安定剤を含まない対照ミックスの特性を、以下の表7に示す。比較例Eのクリーミーさをスコア3とし、比較例Eの水っぽさをスコア0とした。
【0066】
次の試験では、評価者に、結果の比較可能性を保証するために、比較例Eに対して、実施例2〜5と比較例B及びCの試料を試験し、ランク付けさせた。これらの結果も以下の表7に列挙する。
【0067】
【表7】
【0068】
実施例2及び3と比較例Bの比較、並びに実施例4及び5と比較例Cの比較は、メチルセルロース、CMC及びカラギーナンが、メチルセルロースとカラギーナンのみの組合せの代わりに安定剤組成物として、組み合わせて用いられる場合、アイスクリーム組成物の所望のクリーミーさが増加し、及び/又は、アイスクリーム組成物の望ましくない水っぽさが減少することを示す。
【0069】
実施例6
表9に列挙されている安定剤の組成を用いて、更に上述したとおりに、アイスクリームを調製する。実施例6のアイスクリームを、実施例2及び3並びに比較例Eとともに、以下に説明するように、ヘドニック味覚試験により試験する。
【0070】
ヘドニック味覚試験
ヘドニック試験は、訓練を受けていない参加者による主観的な試験である。少なくとも30人の参加者に、アイスクリーム試料(約50g)を盲目的に試食し、試料の許容に関して匿名の質問表に記入するように依頼した。
【0071】
参加者に、以下の表8に示すように、1〜9の尺度で好みをランク付けするように依頼した。好みの尺度は、「好き」という区分(スコア9から6)、「どちらでもない」という回答(スコア5)、及びスコア4から1の「嫌い」という区分に分けることができる。ボランティアはそれぞれ、一度しか参加することができなかった。結果を以下の表9に列挙する。
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
表9の結果は、本発明の安定剤組成物を含むアイスクリームが、消費者からより好かれ、アイスクリームに一般に用いられる安定剤組成物を含む比較例Eの比較可能なアイスクリームよりも多くの消費者から好かれることを示す。