特許第5938150号(P5938150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938150
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】食品及び飲料製品用の安定剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20160609BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20160609BHJP
   A23G 9/44 20060101ALI20160609BHJP
   A23G 9/52 20060101ALI20160609BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A23L1/03
   A23G9/02
   A23L2/00 E
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-551690(P2015-551690)
(86)(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公表番号】特表2016-501554(P2016-501554A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】US2013075604
(87)【国際公開番号】WO2014107293
(87)【国際公開日】20140710
【審査請求日】2015年7月2日
(31)【優先権主張番号】61/748,481
(32)【優先日】2013年1月3日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】アン・アデン
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・アデン
(72)【発明者】
【氏名】ブリッタ・ヒューブナー−キーズ
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−504738(JP,A)
【文献】 特開2003−339354(JP,A)
【文献】 特開2003−189810(JP,A)
【文献】 特開平06−225720(JP,A)
【文献】 特開平06−038691(JP,A)
【文献】 米国特許第04208444(US,A)
【文献】 LWT - Food Science and Technology,2008年,41,1816-1827
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/00
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品及び飲料製品用の安定剤組成物であって、
(a)15〜85重量%のメチルセルロースと、
(b)10〜80重量%のカルボキシメチルセルロースと、
(c)5〜20重量%のカラギーナンと、を含み、すべての百分率が(a)、(b)及び(c)の全重量を基準としている、
前記安定剤組成物。
【請求項2】
(a)20〜70重量%のメチルセルロースと、(b)20〜70重量%のカルボキシメチルセルロースと、(c)6〜15重量%のカラギーナンと、を含む、請求項1に記載の安定剤組成物。
【請求項3】
(a)、(b)及び(c)の重量の合計が、前記安定剤組成物の全重量の少なくとも60%である、請求項1又は2に記載の安定剤組成物。
【請求項4】
前記メチルセルロース(a)と前記カルボキシメチルセルロース(b)との重量比w(a)/w(b)が、(0.7‐1.5)/1.0である、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の安定剤組成物。
【請求項5】
前記メチルセルロース(a)の粘度が、ウッベローデキャピラリ粘度計を用い、20℃の2重量%水溶液中で決定される、500〜60,000mPa・sである、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の安定剤組成物。
【請求項6】
前記メチルセルロース(a)の粘度が700〜25,000mPa・sである、請求項5に記載の安定剤組成物。
【請求項7】
前記メチルセルロースが、1.50〜2.25の、メトキシル置換度、DS(メトキシル)を有する、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の安定剤組成物。
【請求項8】
食品又は飲料製品であって、
(a)0.02〜0.30重量%のメチルセルロースと、
(b)0.03〜0.30重量%のカルボキシメチルセルロースと、
(c)0.01〜0.1重量%のカラギーナンと、を含み、すべての百分率が食品又は飲料製品の全重量を基準としている、
前記食品又は飲料製品。
【請求項9】
前記食品又は飲料製品の全重量を基準として、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の安定剤組成物を0.02〜2重量%含む、請求項8に記載の食品又は飲料製品。
【請求項10】
前記食品又は飲料製品の全重量を基準として、1以上の単糖、二糖及び/又はオリゴ糖を5〜50重量%含む、請求項8又は9に記載の食品又は飲料製品。
【請求項11】
前記食品又は飲料製品の全重量を基準として、1以上のタンパク質を1〜20重量%含む、請求項8〜10のうちのいずれか1項に記載の食品又は飲料製品。
【請求項12】
前記食品又は飲料製品の全重量を基準として、1以上の無脂乳固形分を1〜25重量%含む、請求項8〜11のうちのいずれか1項に記載の食品又は飲料製品。
【請求項13】
前記食品又は飲料製品の全重量を基準として、1以上の脂肪を0〜30重量%含む、請求項8〜12のうちのいずれか1項に記載の食品又は飲料製品。
【請求項14】
前記食品又は飲料製品の全重量を基準として、30〜90重量%の水を含む、請求項8〜13のうちのいずれか1項に記載の食品又は飲料製品。
【請求項15】
冷凍消費又は冷凍食品若しくは半冷凍食品を企図した食品である、請求項8〜14のうちのいずれか1項に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品及び飲料製品用の安定剤組成物とともに、この安定剤組成物の成分を含む食品及び飲料製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
インスタント及び即席/飲食物及び飲料製品の多くは、保存時に食品及び飲料製品の個々の成分の分離を防止する、例えば、懸濁液から固体成分の沈降によって生じる固体/液体分離を防止するか、又は液体成分の親水性若しくは疎水性の相違によって生じる液体/液体分離を防止する、安定剤を含む。
【0003】
安定剤は、官能特性に悪影響を及ぼさない。消費者は、一般に、コーヒー、ホットチョコレート、茶、クリーム状ジュース飲料若しくはミルクセーキなどのフレーバー飲料、又は、マヨネーズ、サラダドレッシング、ソース、グレイビー、プディング及びムースなどの液体若しくは半液体食品において、クリーミーな口当たり、コク及び甘味を所望する。これらの属性は、通常、商業的に製造されるクリーム若しくはハイドロコロイド、ペクチン、及び/又は澱粉によって提供される。または、食品又は飲料製品は、高い固形分を含有するように配合されてもよい。アイスクリームのような発酵乳製品などの食品組成物におけるメチルセルロースの使用は、欧州特許第1 171 471号及び当該特許に引用された先行技術に開示されている。残念なことに、一部の冷凍食品では、メチルセルロースが、十分な凍解安定性を提供しないことが見出されている。
【0004】
米国特許第6,673,384号には、水不溶性成分と水溶性成分とを含む食品及び飲料製品のクリーミーマウスフィール剤(creamy mouth−feel agent)が開示されている。水不溶性成分は、クリーミーマウスフィール剤の全固形分の少なくとも60%を含む。水不溶性成分は、(a)5〜70%、好ましくは10〜50%の微粒子成分と、(b)0〜60%、好ましくは20〜40%の脂肪/油成分と、(c)0〜5%、好ましくは0.5〜3%の乳化剤成分と、(d)0〜5%、好ましくは0〜3%の微結晶セルロース成分と、を含む。水溶性成分は、(a)0.05〜40%、好ましくは0.05〜20%の増粘剤と、(b)0〜10%、好ましくは0〜8%のカゼインナトリウムと、(c)0〜40%、好ましくは0〜20%の乳固形分と、(d)0〜4%、好ましくは0〜2%の加工助剤と、を含む。増粘剤は、ローカストビーンガム、グアーガム、ゲランガム、キサンタンガム、ガティガム、変性ガティガム、トラガカントガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コーンスターチ、小麦澱粉、タピオカ澱粉、α化高アミロース含量澱粉、α化加水分解澱粉、マルトデキストリン、コーンシロップ固形物、化学変性澱粉及びこれらの混合物から選択される。
【0005】
国際公開公報第2012/152908号には、a)乳と、b)クリームと、c)ポリオールと、d)乳化剤と、e)必要に応じて、ゲル化剤及び/又は増粘剤と、並びにf)必要に応じて、凍結組成物を製造するための糖などの食味添加剤(taste additive)と、を含む乳製品組成物の使用について開示されている。ゲル化剤及び/又は増粘剤は、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸塩、ペクチン、キサンタンガム、又はこれらの混合物若しくはこれらの会合体であり得る。国際公開公報第2012/152908号には、かかる乳製品組成物によって、凍結時における非常に良好なすくい出し性能及び/又は低い結晶化を含む良好な利用性とともに、フレッシュな温度(fresh temperature)での保存時における安定性を含む良好な特性も可能になることについて開示されている。
【0006】
ローカストビーンガム、グアーガム及びカラギーナンの組合せ、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、グアーガム及びカラギーナンの組合せが、アイスクリームにおける安定剤として一般に用いられる。Arbuckle, W.S., “Ice Cream” 4th edition, 1986, chapter 6, pp 84−92を参照のこと。米国特許第6,673,384号及び国際公開公報第2012/152908号において、これらの増粘剤が、個別に又は組み合わせて推奨されている。残念なことに、かかる安定剤組成物は、ムースなどの混入空気を含む食品及び飲料製品、又はアイスクリームのような冷凍食品中に導入される場合、十分に高いオーバーランを提供しない。オーバーランは、食品及び飲料製品中に空気がどのくらい導入されているかについての尺度である。混入空気を含む食品及び飲料製品では、高いオーバーランが消費者に好まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的の一つは、食品及び飲料製品用の新規安定剤を提供することである。公知の安定剤若しくは安定剤組成物よりも高いオーバーラン及び/又は凍解安定性を有する食品及び飲料製品の製造を可能にする、新規安定剤を提供することが特に望ましい。
【0008】
さらに、食品及び飲料製品の官能特性に対して大きな悪影響を及ぼさない、新規安定剤を提供することが特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、食品及び飲料製品用の新規安定剤組成物によって、高いオーバーラン及び高い凍解安定性を有し、食品及び飲料製品の官能特性に対して大きな悪影響を及ぼさない、食品及び飲料製品の製造が可能になることが見出された。
【0010】
本発明の一態様は、食品及び飲料製品用の安定剤組成物であって、(a)15〜85重量%のメチルセルロースと、(b)10〜80重量%のカルボキシメチルセルロースと、(c)5〜20重量%のカラギーナンと、を含み、すべての百分率が(a)、(b)及び(c)の全重量を基準としている、安定剤組成物である。
【0011】
本発明の別の態様は、食品又は飲料製品であって、(a)0.02〜0.30重量%のメチルセルロースと、(b)0.03〜0.30重量%のカルボキシメチルセルロースと、
(c)0.01〜0.1重量%のカラギーナンと、を含み、すべての百分率が食品又は飲料製品の全重量を基準としている、食品又は飲料製品である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の安定剤組成物は、(a)15〜85重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%、更により好ましくは40〜50重量%、最も好ましくは約45重量%のメチルセルロースと、(b)10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%、更により好ましくは40〜50重量%、最も好ましくは約45重量%のカルボキシメチルセルロースと、(c)5〜20重量%、好ましくは6〜15重量%、より好ましくは7〜12重量%、最も好ましくは約10重量%のカラギーナンと、を含み、すべての百分率が(a)、(b)及び(c)の全重量を基準としている。成分(a)、(b)及び(c)の重量の合計は、安定剤組成物の全重量の、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%である。成分(a)、(b)及び(c)の重量の合計は、安定剤組成物の全重量の最大100%、通常95%である。
【0013】
本発明による安定剤組成物中の成分(a)と成分(b)との重量比w(a)/w(b)は、好ましくは少なくとも0.35/1.0、より好ましくは少なくとも0.6/1.0、更により好ましくは少なくとも0.7/1.0、最も好ましくは少なくとも0.8/1.0である。重量比w(a)/w(b)は、好ましくは最大5.0/1.0、より好ましくは最大2.0/1.0、更により好ましくは最大1.5/1.0、最も好ましくは最大1.2/1.0である。
【0014】
本発明において、メチルセルロースは、安定剤組成物の必須成分(a)である。メチルセルロースは、セルロースの誘導体である。セルロースは、1‐4結合によって結合されたアンヒドログルコース単位からなる。アンヒドログルコース単位はそれぞれ、2、3及び6位においてヒドロキシル基を含有する。これらのヒドロキシル基の部分的又は完全な置換によって、セルロース誘導体が生じる。例えば、苛性溶液、続いてメチル化剤によるセルロース繊維の処理によって、1以上のメトキシル基により置換されたセルロースエーテルが得られる。他の基により更に置換されていない場合、このセルロース誘導体は、メチルセルロースとして知られている。メチルセルロースのDS(メチル)は、好ましくは1.50〜2.25、より好ましくは1.55〜2.20、最も好ましくは1.60〜2.10である。メチルセルロースのメトキシル置換度、DS(メトキシ)は、アンヒドログルコース単位当たりの、メトキシル基により置換されたOH基の平均数である。メチルセルロースのメトキシル%の決定は、米国薬局方(USP 34)に従って行われる。求められる値は、メトキシル%である。これらは、その後、メトキシル置換基の置換度(DS)に変換される。
【0015】
メチルセルロースの粘度は、ASTM D 446−07に規定されているように、ウッベローデキャピラリ粘度計を用い、ASTM D 445−03に準じて、20℃の2重量%水溶液中で決定される、好ましくは20〜100,000mPa・s、より好ましくは150〜80,000mPa・s、更により好ましくは500〜60,000mPa・s、特に好ましくは700〜25,000mPa・s、最も好ましくは1000〜10,000mPa・sである。カルボキシメチルセルロースは、本発明による安定剤組成物の必須成分(b)である。本明細書に用いられる「カルボキシメチルセルロース」又は「CMC」という用語は、式‐CHCOA(式中、Aは、水素、又はK若しくは好ましくはNaなどの一価のカチオンである。)の基により置換されたセルロースを包含する。カルボキシメチルセルロースは、そのナトリウム塩の形態であり、すなわち、AがNaであることが好ましい。好ましい種類のCMCは、0.2〜1.4のDScarboxymethoxylを有し、より好ましくは0.2〜1.4、最も好ましくは0.60〜1.0のDScarboxymethoxylを有する。「DScarboxymethoxyl」という用語は、アンヒドログルコース単位当たりのカルボキシメトキシル置換度を指し、アンヒドログルコース単位当たりの、カルボキシメトキシル基により置換されたOH基の平均数を意味する。DScarboxymethoxylは、ASTM D 1439−03「Standard Test Methods for Sodium Carboxymethyl−cellulose; Degree of Etherification, Test Method B: Nonaqueous Titration」に準じて測定される。CMCは、本発明において、粉末形態又は凝集体の形態などの種々の形態により利用することができる。凝集体の形態のCMCを製造する方法は、国際公開公報第2010/117781号に記載されている。
【0016】
CMCの粘度は、Thermo Electron社(Germany)から市販されている、シリンダシステムcup MVを備えたHaake Viscotester VT550を2.55 s−1で用い、20℃の2重量%水溶液として測定される、概して、最大60,000mPa・s、好ましくは最大50,000mPa・s、より好ましくは最大40,000mPa・s、最も好ましくは最大35,000mPa・sである。
【0017】
CMCの粘度は、上述のように測定される、概して、2000mPa・s以上、好ましくは3000mPa・s以上、より好ましくは5000mPa・s以上、最も好ましくは8000mPa・s以上である。本発明に有用な市販CMCの例としては、The Dow Chemical Company社から入手可能な、Walocel CRT 10000 PA、CRT 20000 PA及びCRT 30000 PA(DScarboxymethoxyl=0.82−0.95;2重量%粘度はそれぞれ、10,000mPa・s、20,000mPa・s及び30,000mPa・s)が挙げられる。
【0018】
カラギーナンは、本発明による安定剤組成物の必須成分(c)である。κカラギーナン、ιカラギーナン及びλカラギーナンの3つの主な商用カラギーナンがある。κカラギーナンは、カリウムイオンの存在下で、強力な硬質ゲルを形成し、乳タンパク質と反応する。κカラギーナンが好ましいが、本発明はその使用に限定されない。カラギーナン回収には、半精製、精製及び混合処理の3つの種類の産業工程がある。これらの工程のうちのいずれかによって回収されたカラギーナンが、本発明に有用である。
【0019】
本発明の安定剤組成物は、塩化カリウム、塩化ナトリウム若しくは硫酸カルシウムのような塩類;グルコース又は水などの任意の添加剤を含んでいてもよい。かかる任意の添加剤の量は、本発明の安定剤組成物の全重量を基準として、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%、最も好ましくは3〜20重量%である。
【0020】
本発明の別の態様は、食品又は飲料製品であって、(a)0.02〜0.30重量%、好ましくは0.04〜0.26重量%、最も好ましくは0.06〜0.23重量%のメチルセルロースと、(b)0.03〜0.30重量%、好ましくは0.04〜0.28重量%、最も好ましくは0.06〜0.26重量%のカルボキシメチルセルロースと、(c)0.01〜0.1重量%、好ましくは0.02〜0.07重量%、最も好ましくは0.02〜0.05重量%のカラギーナンと、を含み、すべての百分率が食品又は飲料製品の全重量を基準としている、食品又は飲料製品である。成分(a)、(b)及び(c)は、上により詳細に説明されている。
【0021】
本発明の食品又は飲料製品は、本発明の食品又は飲料製品の全重量を基準として、好ましくは0.02〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%、最も好ましくは0.1〜0.6重量%の本発明による安定剤組成物を含む。
【0022】
一実施形態において、本発明の食品又は飲料製品は、本発明の食品又は飲料製品の全重量を基準として、5〜50重量%、好ましくは7〜40重量%、より好ましくは10〜35重量%の、1以上の単糖、二糖及び/又はオリゴ糖を含む。有用な単糖は、元素化学式C2x(式中、xは、少なくとも3、好ましくは3〜7、より好ましくは4、5又は6、最も好ましくは6である。)を有する。好ましい単糖は、グルコース及びフルクトースである。有用な二糖は、例えば、ラクトース、マルトース及びスクロースである。一般にショ糖とも称するスクロースが好ましい。オリゴ糖は、グリコシド結合によって結合された、3〜10、好ましくは3〜7の単糖単位を有する。オリゴ糖の例は、フルクタンなどのフラクトオリゴ糖、又はガラクトオリゴ糖、又はマンノオリゴ糖、又はガラクトマンノオリゴ糖、又はマルトデキストリン若しくはシクロデキストリン若しくはセロデキストリンなどのグルコオリゴ糖である。本発明の食品又は飲料製品は、1以上の種類の単糖、二糖及び/又はオリゴ糖を含み得る。上述の重量範囲は、単糖、二糖及び/又はオリゴ糖の全重量に関する。単糖、二糖及び/又はオリゴ糖の好ましい例は、2002年1月12日付けで欧州連合官報L 10/53に公表されているように、ヒトの消費を意図した特定の糖に関する、2001年12月20日付けの理事会指令2001/111/ECに列挙されており、例えば、半白糖、(白)糖、乾燥グルコースシロップ、デキストロース、デキストロース一水和物、無水デキストロース又はフルクトースである。これらの糖は、固体又は液体の形態であり得る。理事会指令2001/111/ECには、糖液、転化糖液、転化糖シロップ又はグルコースシロップが列挙されている。糖液、転化糖液及び転化糖シロップは、62重量%以上の乾燥物が特徴である。
【0023】
一実施形態において、本発明の食品又は飲料製品は、本発明の食品又は飲料製品の全重量を基準として、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%の、1以上のタンパク質を含む。本発明において用いることができるタンパク質の好ましい供給源としては、全乳、脱脂乳、濃縮乳、無糖練乳、無脂乳固形分及びこれらの混合物などの乳タンパク質源;ホエータンパク質単離物及びホエータンパク質濃縮物、カゼイン、並びにこれらの混合物;植物性タンパク質、及び、大豆、小麦、米、カノーラ、ジャガイモ、トウモロコシ、エンドウ及びこれらの混合物などの植物性タンパク源;並びに、ゼラチン又は卵タンパク質を含む動物源のタンパク質が挙げられる。タンパク質は、単離タンパク質、タンパク質濃縮物、又はタンパク質加水分解物として存在し得る。
【0024】
一実施形態において、本発明の食品又は飲料製品は、本発明の食品又は飲料製品の全重量を基準として、1〜25重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%の、1以上の無脂乳固形分を含む。「無脂乳固形分」という用語は、乳脂肪及び水以外の乳中の物質に関し、MSNFと略される。無脂乳固形分には、カゼイン、ラクトース、ビタミン及び無機塩類が含まれる。無脂乳固形分は、通常、畜乳、一般には牛乳に由来するが、羊乳又は山羊乳などの代替的な畜乳を用いることができる。いずれかの種類の畜乳は、完全な乳、部分的若しくは完全な脱脂乳、又は脱脂粉乳などを用いることができる。乳が組成物中に含まれる場合、乳は、粉乳の形態で完全に又は部分的に導入することができる。また、乳代替物も用いることができ、これは植物性ミルクとも称され、例えば、豆乳、オートミルク、ライスミルク、アーモンドミルク、又はこれらの混合物である。
【0025】
本発明の食品又は飲料製品は、本発明の食品又は飲料製品の全重量を基準として、概して、0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜15重量%、最も好ましくは0.5〜6重量%の、1以上の脂肪を含む。本出願に用いられる「脂肪」という用語には、1種類の脂肪とともに、異なる種類の脂肪の混合物も含まれる。脂肪は、室温(23℃)の固体又は液体のいずれかであってもよく、すなわち、本明細書に用いられる脂肪という用語には、室温で液体の脂肪(通常、消費者に「油」と呼ばれる。)、及び、室温で固体の脂肪(通常、消費者に「脂肪」と呼ばれる。)が含まれる。本発明の意味の範囲内の脂肪は、天然由来の食用脂肪酸トリグリセリドとともに、食用合成脂肪酸トリグリセリドであり、天然由来の脂肪酸トリグリセリドが好ましい。植物性脂肪とともに、乳脂肪などの動物性脂肪を用いることもできる。
【0026】
一実施形態において、本発明の食品又は飲料製品は、本発明の食品又は飲料製品の全重量を基準として、0.05〜0.7重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%、最も好ましくは0.2〜0.4重量%の乳化剤を含む。本出願に用いられる「乳化剤」という用語には、1種類の乳化剤とともに、異なる種類の乳化剤の混合物も含まれる。本発明に用いられる例示的な乳化剤としては、レシチン;水酸化レシチン;ステアロイルラクチル酸ナトリウム(SSL);グリセリルモノステアレート及びグリセリルジステアレート(GMS)などの脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド又はポリグリセリド、並びにトリグリセロールモノステアレート(TGMS)などの脂肪酸のポリグリセロールエステル(PGE);ソルビタンモノステアレートのポリオキシエチレン(polyoxythylene)エーテル(Tween 60)又はソルビタンジステアレートのポリオキシエチレンエーテルなどの、多価アルコールの脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル;ソルビタンモノステアレートなどのような多価アルコールの脂肪酸エステル;プロピレングリコールモノステアレート及びプロピレングリコールモノパルミテートなどの、グリコールのモノエステル及びジエステル;スクロースエステル;及び、グリセロールラクトパルミテート及びグリセロールラクトステアレートなどの、乳酸、クエン酸及び酒石酸などのカルボン酸と、脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリドとのエステル;並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0027】
一実施形態において、本発明の食品又は飲料製品は、2以上の上述した成分、単糖、二糖及び/又はオリゴ糖、タンパク質、無脂乳固形分、脂肪及び乳化剤を組み合わせて、好ましくは上述したこれらの好ましい範囲において含む。
【0028】
本発明の食品又は飲料製品は、本発明の食品又は飲料製品の全重量を基準として、一般に30〜90重量%、より一般に40〜80重量%、最も一般に45〜70重量%の水を含む。
【0029】
本発明の食品又は飲料製品は、着色剤、保存剤、ビタミン、又はフレーバー、香料などの食味添加剤、果実若しくは果実抽出物、ナッツ、単糖、二糖及び/又はオリゴ糖とは異なる甘味剤、又は酸度調整剤などの任意の添加剤を含んでいてもよい。かかる任意の添加剤及び有用な量は、当該技術分野において公知である。
【0030】
本発明の食品又は飲料製品の好ましい例は、フレーバー飲料、又は液体、半液体若しくは固形食品であり、ホットチョコレート、クリーム状ジュース飲料若しくはミルクセーキ、プディング、ムース、マヨネーズ、サラダドレッシング若しくはソースなどの乳製品又は非乳製品が好ましい。本発明の食品又は飲料製品は、冷凍消費又は冷凍食品若しくは半冷凍食品を企図した食品であることがより好ましく、シャーベット、低脂肪アイスクリーム、豆乳アイスクリーム、ルピナスアイスクリーム(lupin ice cream)及びクリーム状アイスクリーム(cream ice cream)を含む種々の種類のアイスクリームなどの冷凍デザート又は半冷凍デザートがより好ましい。
【0031】
ここで、本発明の一部の実施形態を、次の実施例において詳細に説明する。
【実施例】
【0032】
特に断りのない限り、すべての部及び百分率は重量基準である。実施例では、次に示す試験手順及び成分を用いる。
【0033】
カルボキシメチルセルロース(CMC)
利用するCMC(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)は、ASTM D 1439−03「Standard Test Methods for Sodium Carboxymethylcellulose; Degree of Etherification, Test Method B: Nonaqueous Titration」に準じて測定される、約0.9のアンヒドログルコース単位当たりのカルボキシメトキシル置換度(DS)、及びThermo Electron社(Germany)から市販されている、シリンダシステムcup MVを備えたHaake Viscotester VT550を2.55 s−1で用い、20℃の2重量%水溶液として測定される、約20,000mPa・sの粘度を有していた。
【0034】
CMCは、The Dow Chemical Company社、又はDow Wolff Cellulosics社(Germany)からWALOCEL(商標)CRT 20,000 GAとして市販されている。
【0035】
メチルセルロース(MC)
以下の表1に列挙されているとおりに、食品用(FG)メチルセルロースを用いた。メチルセルロースは、The Dow Chemical Company社から市販されている。
【0036】
【表1】
【0037】
アイスクリームミックスを、表2に列挙されている成分から製造した。安定剤組成物の成分を除くアイスクリームミックスの組成を、以下の表3に列挙する。安定剤組成物の成分は、実施例1〜6及び比較例A〜Eについて、個別に更に以下に開示されている。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
アイスクリームの製造
上の表2に列挙されている成分を、表3のレシピに従って秤量し、その結果、総量1600gの最終アイスクリーム配合物を得た。水、乾燥粉乳及び乳化剤を混合し、次いで、これを、調理機(Thermomix TM 31、Vorwerk社(Germany)から市販されている。)のボウルに加えた。このミックスを、速度2で2分間撹拌した。その後、ミックスを、速度3.5で約5分間、80℃まで加熱した。加熱を、乳化剤及びカラギーナンの適切な溶解を保証するために行った。スクロースと安定剤組成物をブレンドし、塊にならないように撹拌した。Thermomix TM 31調理機が所望の温度に達するとすぐに、粉末状の成分を加えた。そして、液体成分(クリーム、コーンシロップ、バニラ芳香剤)を、ミックスに加えた。全混合物を撹拌し、80℃で5分間保持した。その後、ミックスを70℃で保存し、上述したとおりに、それぞれ1600gの更なる2つの配合物を調製した。すべてのミックスを合わせ、約4800gを得た。
【0041】
そして、170 barの圧力によって、まだ熱いうちに(70℃)、液体アイスクリームミックスを均質化した(ホモジナイザーNiro Soavi S.p.A., GEA)。その後、アイスクリームミックスを、85℃で10分間、アイスクリーム機(CRM Telme社(Italy)製)により直接低温殺菌した。次いで、アイスクリーム機を、ミックスが4℃に達するまで、冷却した。続いて、アイスクリームミックスを、アイスクリーム機から取り出し、エージングし、これによってアイスクリームミックスのホイップ品質を向上させるために、16時間冷蔵庫(4℃)内に保存した。その後、アイスクリームミックスを、アイスクリーム機において12分間凍結させた。次いで、アイスクリームをボトルに充填し、硬化のために、−18℃のフリーザー内に直ちに入れた。アイスクリームを少なくとも3日間フリーザー内に放置した後、分析を開始した。
【0042】
実施例1及び比較例A
0.3重量%の安定剤組成物を含むアイスクリームミックスを、上述のとおりに調製した。
【0043】
実施例1において、安定剤組成物は、72重量%のMETHOCEL(商標)A4C FGメチルセルロースと、18重量%のWALOCEL(商標)CRT 20,000 GAカルボキシメチルセルロースと、10重量%のκ‐カラギーナンガムと、からなっていた。このミックスを、4℃で16時間静置した。ミックスは、均質に維持されていた。相分離はみられなかった。
【0044】
比較例Aにおいて、安定剤組成物は、80重量%のMETHOCEL(商標)A4C FGメチルセルロースと、20重量%のWALOCEL(商標)CRT 20,000 GAカルボキシメチルセルロースと、からなっていた。このミックスを4℃で16時間静置すると、相分離がみられた。
【0045】
実施例2〜5及び比較例B〜E
以下の表4に列挙されている0.3重量%の安定剤組成物を含むアイスクリームミックスを、上述のとおりに調製した。また、安定剤を含まない対照ミックスも調製した。比較例Eは、アイスクリームにおいて安定剤組成物として一般に用いられるローカストビーンガム、グアー及びκ‐カラギーナンの組合せを示す。比較例Dは、比較例Eにおいて利用されるローカストビーンガムの代わりに、CMCを利用する。また、比較例Dも、アイスクリームにおいて一般に用いられる安定剤組成物を示す。比較例D及びEにおいて利用される安定剤組成物の成分が、個別に又は更に上述した先行技術と組み合わせて推奨される。
【0046】
安定剤組成物の組成、並びに、ミックスから調製されたアイスクリームのオーバーラン%及びメルトバックを、以下の表4に列挙する。
【0047】
アイスクリームのオーバーラン
オーバーランは、上述したように調製された凍結アイスクリーム中の混入空気の量を表す。オーバーランは、次のように算出することができる。
オーバーラン%=100×(アイスクリームの容量−凍結されたアイスクリームを調製するのに用いられるアイスクリームミックスの容量)/アイスクリームを調製するのに用いられるアイスクリームミックスの容量)
【0048】
アイスクリームのメルトバック試験
試験を、22±2℃の一定温度及び55±5%の湿度において、気候室で行った。約80 mmの径及び約−19.2±1.3℃の温度の、350g±5gの円筒状アイスクリームブロックを、10 mmの径の円形開口部を備えたプラスチックグリッドであって、円の中心が互いから20 mm離れて位置しているグリッド上に置いた。測定前に、グリッドを−18℃で保存した。すべての試験において、アイスクリームブロックは、同じ温度及び同じ寸法であった。
【0049】
グリッドの下において、滴下した血清(アイスクリームの液体部分、以下同じ。)をペトリ皿に集め、10分ごとに、合計180分間秤量した。固形量は、所定の経過時間におけるパーセントとして表されるいわゆるメルトバックレベルとして、試料の出発質量を基準としている。
【0050】
【数1】
【0051】
【表4】
【0052】
表4の結果は、実施例2〜5並びに比較例A〜C及びEのすべてのアイスクリーム組成物のすべての測定されたメルトバック特性が類似し、消費者の要求を満たしていることを示す。
【0053】
実施例2〜5のアイスクリーム組成物は、比較例D及びEのアイスクリーム組成物よりも実質的により高いオーバーランを有する。比較例B及びCのアイスクリーム組成物は、実施例2〜5のアイスクリーム組成物と同様のオーバーランを有するが、更に下に示すように、比較例B及びCのアイスクリーム組成物は、実施例2〜5のアイスクリーム組成物よりも官能特性において劣っている。
【0054】
アイスクリームの凍解安定性
凍解安定性は、消費者の重要なパラメータである。アイスクリームが融点よりもわずかに低い温度に解凍し、再び凍結すると、氷晶の成長が促進される。大きな氷晶は、砂のように粗い口当たりとなり、望ましくない。凍解安定性試験では、アイスクリームを解凍し、連続して(22℃で15分、−18℃で45分)4回再び凍結させる。
【0055】
口当たりを、ISO 4120:2004に準じた三角試験を用い、訓練パネルによって調査した。この方法は、知覚可能な相違の結果(相違についての試験)、又は知覚可能な相違が、2つの試料AとBとの間に生じない(類似性についての試験)ことの決定に有効である。評価者は、1組の3試料(三つ組)を受け取り、2つの試料が似ており、1つの試料が異なっている(異様な試料とする。)ことを通知される。評価者は、選択が推測のみに基づいている場合であっても、異なっていると考えていることを報告する(強制選択試験)。これは、「相違がない」という報告が、この試験では認められないことを意味する。最低6人の評価者が相違についての試験に必要である。十分な数の総評価をもたらすのに必要な場合、反復評価を用いてもよい。
【0056】
等しい数の2つの試料A及びBの6つの可能な次の順序を用いる。
ABB AAB ABA BAA BBA BAB
【0057】
試料を、3桁の乱数を用いて符号化し、評価者間で6つのグループに無作為に分配させた。それぞれの順序を、評価者6人の最初のグループで1回、次いで、次のグループなどで用いた。三つ組を、評価者に同時に提示した。これらによって、反復評価が可能になった。約30gのそれぞれの試料を出した。−18℃の温度の冷却アイスクリームを、Styrofoam(商標)発泡体からなる箱内に、低温を維持するために氷嚢とともに保存した。試食が開始するとすぐに、アイスクリームをグラスに入れ、パネリストに直接渡した。水及び食パン(小麦澱粉及び水のみからなる。)を、口蓋中和剤(palate neutralizer)として出した。試験室は、ドイツ規格DIN 10962:1997の要件に準じて用意した。評価者を、それぞれのドイツ規格(DIN 10961:1996−08, DIN 10959: 1998−07)に準じて、選択し、訓練し、モニタリングした。
【0058】
上述した凍解安定性試験において、比較例Bのアイスクリーム組成物は、凍解サイクル後に顕著に多くの氷晶を含み、実施例3のアイスクリーム組成物よりも砂のような口当たりであることが分かった。7人の訓練評価者のうち、6人は、比較例Bと実施例3のアイスクリーム組成物との間の相違に気付いた。これらの試料間の相違は、統計的に有意であった。
【0059】
一方、8人の訓練評価者のうち、4人しか、実施例2と実施例3のアイスクリーム組成物との間の相違に気付かず、4人の訓練評価者は、相違に気付かなかった。実施例2と実施例3のアイスクリーム組成物との間の相違は、統計的に有意ではなかった。
【0060】
上述した凍解安定性試験において、比較例Cのアイスクリーム組成物は、実施例4のアイスクリーム組成物よりも凍解サイクル後に多くの氷晶を含んでいた。7人の訓練評価者のうち、5人は、比較例Cと実施例4のアイスクリーム組成物との間の相違に気付いた。これらの試料間の相違は、統計的に有意であった。比較例Cと実施例4との間の相違を識別した評価者の大半は、実施例4のアイスクリーム組成物よりも、比較例Cのアイスクリーム組成物の砂のような口当たりを相違として気付いた。
【0061】
8人の訓練評価者のうち、4人は、実施例4と実施例5のアイスクリーム組成物との間の相違に気付いたが、4人の訓練評価者は、相違に気付かなかった。
【0062】
【表5】
【0063】
アイスクリームのクリーミーさ及び水っぽさ
少なくとも6人の訓練評価者が、ドイツ規格DIN10967−1:1999−10に準じて、アイスクリーム試料の官能特性、とりわけ、クリーミーさ及び水っぽさを評価する試験に参加した。アイスクリーム試料を3桁の乱数を用いて無作為に符号化した。約30gのそれぞれの試料を出した。直接的な比較が可能になるように、パネリストは、並行して種々のアイスクリーム試料を試食した。−18℃の温度の冷却アイスクリームを、Styrofoam(商標)発泡体からなる箱内に、低温を維持するために氷嚢とともに保存した。試食が開始するとすぐに、アイスクリームをグラスに入れ、パネリストに直接渡した。パネリストは、試料が評価時に既に溶けていた場合、再度新しいアイスクリームを注文することができた。水及び食パン(小麦澱粉及び水のみからなる。)を、口蓋中和剤として出した。試験室は、ドイツ規格DIN 10962:1997の要件に準じて用意した。評価者を、それぞれのドイツ規格(DIN 10961:1996−08, DIN 10959: 1998−07)に準じて、選択し、訓練し、モニタリングした。クリーミーさ及び水っぽさのスコアを、以下の表6に列挙する。
【0064】
【表6】
【0065】
比較例Eは、参照試料の最良の官能特性を有していた(参照試料には、比較例E、比較例D、及び安定剤を含まない対照ミックスが含まれる。)。比較例D及びE、並びに、安定剤を含まない対照ミックスの特性を、以下の表7に示す。比較例Eのクリーミーさをスコア3とし、比較例Eの水っぽさをスコア0とした。
【0066】
次の試験では、評価者に、結果の比較可能性を保証するために、比較例Eに対して、実施例2〜5と比較例B及びCの試料を試験し、ランク付けさせた。これらの結果も以下の表7に列挙する。
【0067】
【表7】
【0068】
実施例2及び3と比較例Bの比較、並びに実施例4及び5と比較例Cの比較は、メチルセルロース、CMC及びカラギーナンが、メチルセルロースとカラギーナンのみの組合せの代わりに安定剤組成物として、組み合わせて用いられる場合、アイスクリーム組成物の所望のクリーミーさが増加し、及び/又は、アイスクリーム組成物の望ましくない水っぽさが減少することを示す。
【0069】
実施例6
表9に列挙されている安定剤の組成を用いて、更に上述したとおりに、アイスクリームを調製する。実施例6のアイスクリームを、実施例2及び3並びに比較例Eとともに、以下に説明するように、ヘドニック味覚試験により試験する。
【0070】
ヘドニック味覚試験
ヘドニック試験は、訓練を受けていない参加者による主観的な試験である。少なくとも30人の参加者に、アイスクリーム試料(約50g)を盲目的に試食し、試料の許容に関して匿名の質問表に記入するように依頼した。
【0071】
参加者に、以下の表8に示すように、1〜9の尺度で好みをランク付けするように依頼した。好みの尺度は、「好き」という区分(スコア9から6)、「どちらでもない」という回答(スコア5)、及びスコア4から1の「嫌い」という区分に分けることができる。ボランティアはそれぞれ、一度しか参加することができなかった。結果を以下の表9に列挙する。
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
表9の結果は、本発明の安定剤組成物を含むアイスクリームが、消費者からより好かれ、アイスクリームに一般に用いられる安定剤組成物を含む比較例Eの比較可能なアイスクリームよりも多くの消費者から好かれることを示す。