【実施例1】
【0015】
図1(A)は、この発明の実施例1に係る逆流防止装置の平面図であり、
図1(B)は、逆流防止装置1の断面図である。
図2は、逆流防止装置1に含まれる逆止弁10の拡大断面図である。
図3は、フロート式逆流防止弁20の本体5に環状弁座21及び弁座押え26を取り付けた状態を下流側から見た図であり、
図4は、フロート式逆流防止弁20の底板23の平面図である。なお、
図1(A)では、床面2等の図示を一部省略している。
【0016】
図1(A)及び
図1(B)に示すように、この実施例の逆流防止装置1は、建屋の床面2に発生する排水を河川や海などに排出する排水系統中に配設され、河川等から床面2に水が逆流してくるのを防止する。また、逆流防止装置1は、建屋の床面2側と排水管3側の気体の流れを遮断する。排水系統は、床面2に形成された凹部H、凹部Hの底面から下方に延びる排水管3等から構成されている。逆流防止装置1は、この排水管3の上端部に配設されている。
【0017】
逆流防止装置1は、本体5、本体5に取り付けられたディスク式逆止弁(以下、逆止弁という)10及びフロート式逆流防止弁(以下、逆流防止弁という)20等を備えている。本体5は、上下方向に貫通した断面が円形状の上流口7を有する内面段付きの円筒形状を呈する。また、本体5は、上端にフランジ5Aを有している。このフランジ5Aが取付具8にボルトB1によって固定されている。取付具8は、溶接4によって床面2(凹部H底面)に固定支持されている。
【0018】
逆止弁10は、逆止弁本体11、逆止弁本体11内に配設されたバネ受座12、コイルバネ13、弁体14等を備えている。逆止弁本体11は、上流開口部11Aと、下流開口部11Bと、これら開口部11A,11Bを連通する弁室11Cを有している。逆止弁本体11は、本体5の内面段付き部5Bと逆止弁押え18とに挟持(固定)されている。上流開口部11Aは、逆止弁押え18の内部と連通開口15A及び弁室11Cとを連通する。下流開口部11Bは、弁室11Cと上流口7とを連通する。逆止弁押え18は、上下方向に貫通した円筒形状であり、上端のフランジ18Aが本体5のフランジ5AにボルトB2によって固定されている。
【0019】
また、上流開口部11Aの弁室11C側には、環状弁座15が形成されている。環状弁座15は、連通開口15Aを有し、連通開口15Aを介して上流開口部11Aと弁室11Cとを連通する。さらに、弁室11Cの壁面には、ガイド部16が形成されている。ガイド部16は、弁室11Cの壁面の4箇所において上流開口部11Aから下流開口部11Bわたって形成され、弁体14の上下方向の移動をガイドする。なお、この実施例の環状弁座15及びガイド部16は、逆止弁本体11と一体形成されているが、別々に形成してもよい。また、逆止弁本体11の外周に形成された溝部内には、Oリング19が配設されている。Oリング19は、例えばゴム製のリングであり、本体5と逆止弁本体11との間を排水が漏れるのを防止する。
【0020】
バネ受座12は、円盤形状であり、凹部12Aでコイルバネ13を支持する。凹部12Aは、内径がコイルバネ13の外径とほぼ同一であり、コイルバネ13の水平方向の移動も規制する。バネ受座12は、端部がガイド部16に形成された溝部に嵌合することでガイド部16に支持されている。また、バネ受座12は、回止め用小ネジ(不図示)によって回転が規制されている。コイルバネ13は、弁体14を上方向に付勢する。弁体14は、円盤形状の底面の突出部がコイルバネ13の上端に緩嵌し、環状弁座15を開閉する。弁体14による環状弁座15の開閉動作については後述する。なお、本実施例の逆止弁10を構成する各部材は、Oリング19を除いて、例えばステンレス鋼等の金属製である。
【0021】
逆流防止弁20は、本体5に取り付けられた環状弁座21、4本のガイド棒22、ガイド棒22に取り付けられた底板23、環状弁座21とガイド棒22と底板23との内方に配設されたフロート24等を備えている。また、逆流防止弁20は、網カゴ25も備えている。
【0022】
環状弁座21は、例えばゴム製であり、中央に連通開口21Aを有している。環状弁座21は、弁座押え26(
図3参照)を介して本体5の下端に押圧固定されている。環状弁座21は、連通開口21Aを介して、上流側の上流口7と下流側の排水管3とを連通する。
【0023】
弁座押え26は、
図3に示すように、環状構造を有している。弁座押え26は、環状弁座21を固定する小ネジ27(
図1参照)を挿入するための小ネジ孔26A、及び、ガイド棒22を挿入するためのネジ孔26Bを有している。なお、弁座押え26は、
図1に示すように、小ネジ27によって、本体5に固定される。
【0024】
4本のガイド棒22は、ステンレス鋼等の金属製であり、上端部が本体5下端に等間隔に設けられた小ネジ孔26Bとねじ結合し、本体5に固定支持されている。この4本のガイド棒22は、フロート24を上下方向に案内する。なお、ガイド棒22は、少なくとも3本設けられていればよい。
【0025】
また、ガイド棒22の下端部は、底板23のガイド棒孔23A(
図4参照)を貫通した状態でナット28に螺合する。底板23は、板面が水平になるようにナット28によって支持され、フロート24の下方に位置してフロート24の移動の下限位置を規定する。なお、底板23の板面は、精密に水平支持される必要はなく略水平であればよい。また、底板23は、
図4に示すように排水を通過させるための複数の貫通孔23Bを有する。
【0026】
フロート24は、ステンレス鋼等の金属で形成され、
図1に示すように中空の球形状を呈する。フロート24は、排水よりも比重が軽く形成され、排水管3内の水位変化に伴って環状弁座21及び底板23間を上下方向に移動(浮上及び降下)する。フロート24は、降下した状態では、
図1に示すように底板23載った状態となる。また、フロート24は、浮上及び降下によって環状弁座21を開閉する。
【0027】
網カゴ25は、ステンレス鋼等の金属で形成された金網状のカゴであり、排水に含まれるゴミ等を収容する。これにより、排水管3内の詰まりを防止する。網カゴ25は、端部に底板23と同様にガイド棒22及びナット28によって支持される。
【0028】
図5(A)は、平常時に上流側から排水が流入してきた際の逆流防止装置1の動作状態を示す説明図であり、
図5(B)は、逆流時の逆流防止装置1の動作状態を示す説明図である。
【0029】
平常時において、排水が生じない場合、逆止弁10の弁体14は、
図1に示すように付勢力によって環状弁座15に当接し、環状弁座15を閉栓している状態となる。また、排水が生じた場合、弁体14は、
図5(A)に示すように床面2等から逆止弁押え18内に流入してきた排水の水頭圧によって付勢力に抗して降下する。これによって、環状弁座15が開栓された状態となる。そして、排水は、
図5(A)の矢印方向に沿って逆止弁押え18及び逆止弁15を通過して上流口7に流入する。
【0030】
また、平常時において、逆流防止弁20のフロート24は、自重などによって降下して
図1(
図5(A))に示すように底板23に載った(着地した)状態となり、環状弁座21は開栓される。これは、排水管3内の水位が、一般的に底板23の配置位置よりも低いからである。したがって、逆止弁10を通過して上流口7に流入した排水は、連通開口21A、ガイド棒22間や貫通孔23Bを通過して下流口9に流れ、最終的に河川等(下流)に排出される。
【0031】
一方、下流側からの水の逆流時の場合、逆止弁10の弁体14は、
図5(B)に示すように付勢力によって環状弁座15に当接し、環状弁座15を閉栓したままの状態である。一方、逆流防止弁20のフロート24は、排水管3内の水位が下流側から環状弁座21に向かって上昇するので、例えば下部略半分が水没した状態で浮力等によって浮上する。これにより、フロート24は、
図5(B)に示すように環状弁座21を閉栓した状態となる。
【0032】
したがって、環状弁座21よりも上流側に水が逆流して床面2などに溢れ出すこと(溢水)を確実に防止することができる。なお、フロート24は、精密な球形状でなくてもよく、環状弁座21を閉栓できる程度の略球形状であればよい。
【0033】
また、上述のように排水時を除いて逆止弁10は閉弁している状態となるので、逆止弁10の上流側と下流側との間の気体の移動が遮断される。したがって、排水系統の排水枡等で発生したガスなどが、逆止弁10よりも上流側の建屋に流入(逆流)することを防止できる。また、建屋内で発生した火災等によって生じた煙などが、排水系統に漏れ出して別の建屋に流入(逆流)することも防止することができる。しかも、逆止弁10は、金属製であるので火災等によっても相当な高温にならない限り溶解しない。したがって、火災発生時においても弁座の閉栓状態を維持することができ、より確実に上流側と下流側の気体の移動を遮断できる。
【0034】
しかも、この実施例では、環状弁座15及び弁体14が金属で形成されているので、環状弁座15が弁体14によって完全に閉栓(密閉)されない状態となる。これによって、逆流時にフロート24が損傷すること、例えば、環状弁座21に勢いよく当接して変形すること、を防止できる。逆流水が一気に押し寄せてくる場合などにおいては空気も逆流してくる。そのため、この空気は逆止弁10の下方付近に溜まっていく。したがって、逆止弁10よりも下流側の気圧は、上流側の気圧よりも高くなっていく。ここで、環状弁座15は完全に閉栓されていないため、この気圧差によって逆止弁10の環状弁座15(連通開口15A)を通過して下流側から上流側に少なからず空気が移動していく。そのため、逆止弁10の下流側の気圧が徐々に下がっていくとともに逆流時の水位が徐々に高くなっていく。これに伴ってフロート24も徐々に上昇して環状弁座21を閉栓する。したがって、上述したようにフロート24の損傷を防止することができる。
【0035】
以上のように、フロート式逆流防止弁の上流側に逆止弁を配設することで、排水機能を維持しつつ、排水の逆流を防止し且つ気体の移動を遮断することができる。
【実施例3】
【0039】
この実施例は、逆流防止装置が2つの排水管の間に設けられる構成において前述の実施例1と異なる。また、取付具を用いて2つの排水管の間に設けられる構成において前述の実施例2と異なる。この異なる構成について
図7を用いて説明する。その他の構成については実施例1と同様であるため説明は省略する。
【0040】
図7は、この発明の実施例3に係る逆流防止装置101の断面図である。逆流防止装置101の本体51は、排水管31から突出した上端外周が取付具400とねじ結合している。取付具400は、略円筒形状であり、内周に設けられた雌ネジ400Aが排水管31の端部の外周に設けられた雄ネジ31Aにねじ結合している。これにより、取付具400を介して逆流防止装置101が排水管31に取り付けられた状態となる。逆止弁10は、本体51上端に接続されるように、逆止弁押え181と取付具400の内面段付き部400Bとで挟持される。逆止弁押え181は、上端のフランジ181AがネジB4によって固定される。
【0041】
また、取付具400の上端には図示しない上流側の排水管が、取付具400に外嵌するようにねじ結合する。
【0042】
[その他の実施例]
前述の実施例では、上流口を介して逆止弁と逆流防止弁とを接続しているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、逆止弁の下流開口部に逆流防止弁の環状弁座を配置するようにしてもよい。また、逆止弁本体を弁体押さえを用いて固定しているが、固定できる構成であれば特にこれに限定されるものではない。例えば、逆止弁本体を溶接によって本体に固定するようにしてもよい。
【0043】
また、前述の実施例では、単一のコイルバネを用いて弁体を付勢しているが、上方向に付勢できるものであれば特にこれに限定されるものではない。さらに、弁体は、ディスク(円盤)形状であるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、逆止弁の環状弁座への当接面が曲面となる碗型形状であってもよく、矩形の板形状であってもよい。また、逆止弁は、コイルバネを用いたリフト式であるが、スイング式など種々の方式の逆止弁を適用可能である。
【0044】
さらに、前述の実施例では、Oリングを除いて逆止弁を構成する部材が金属製であったが、火災時においても弁座の閉栓を維持できるように、少なくとも弁座、弁体及び付勢部材を含めた弁体が弁座を閉栓するための部材が金属で形成されていればよい。
【0045】
また、前述の実施例のフロート及び底板は、互いの固着を防止するため金属製であることが望ましい。逆流自体は、頻繁に発生するものではないため、フロートは基本的に底板に載っている状態が多く、樹脂などで形成された場合には底板と固着し易いためである。
【0046】
さらに、前述の実施例では、フロートの下限位置を規定する規定部材として底板を用いているが、下限位置を規定できるものであれば特にこれに限定されるものではない。例えば、フロートが着地する凹部を有する椀型の規定部材であってもよい。