(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0017】
図1Aと
図1Bには、一実施形態のヒンジ構造を容器8と蓋9に装着した状態を示している。この状態では、容器8が上端に有する開口81を、蓋9が塞いでいる。
図1Aと
図1Bに示す状態は、蓋9の開度0°の状態である。
【0018】
本実施形態のヒンジ構造は、下側部材1と、下側部材1の上方に位置する上側部材2と、下側部材1と上側部材2を回転自在に連結させる回転軸3と、下側部材1と上側部材2を連結させるリンク機構4とを備える。蓋9は、回転軸3まわりに回転する。
【0019】
まず、下側部材1について説明する。
【0020】
下側部材1は、容器8が上端に有するフランジ82に対して、固着される部材である。
【0021】
図1B、
図3A及び
図3Bに示すように、下側部材1は、フランジ82に対して移動不能に装着される固定部11と、上側部材2やリンク機構4に連結される連結部12とを、一体に備える。
【0022】
連結部12は、回転軸3が挿通される第一貫通孔121と、後述の軸部材5が挿通される第二貫通孔122とを、別々の箇所に備える。第一貫通孔121と第二貫通孔122は、互いに平行に位置する。第一貫通孔121は、第二貫通孔122よりも前方に位置し、かつ、第二貫通孔122よりも僅かに上方に位置する。つまり、第一貫通孔121は、第二貫通孔122の前斜め上方に位置する。
【0023】
第一貫通孔121と第二貫通孔122の位置関係は、これに限定されない。例えば、第一貫通孔121が、第二貫通孔122よりも前方に位置し、かつ、第二貫通孔122と同一の高さに位置することも可能である。
【0024】
なお、本説明中で用いる前方向は、本実施形態のヒンジ構造に対して容器8が位置する方向であり、後方向はその逆方向である。容器8に対して、下側部材1や上側部材2は後方に位置する。左右方向は、前後方向に対して直交する方向である。第一貫通孔121と第二貫通孔122は、左右方向に貫通する。
【0025】
本実施形態の下側部材1では、固定部11の後方に位置する連結部12を、左側連結部12aと右側連結部12bに分割させ、軽量化を図っている。左側連結部12aと右側連結部12bは、左右方向に距離をあけて互いに平行に位置する。なお、下側部材1の連結部12を、左側連結部12aと右側連結部12bに分割することは必須ではなく、連結部12を左右に分割しない構造を採用することも可能である。
【0026】
左側連結部12aは、左側の第一貫通孔121aと、左側の第二貫通孔122aを備える。右側連結部12bは、右側の第一貫通孔121bと、右側の第二貫通孔122bを備える。
【0027】
左側の第一貫通孔121aと右側の第一貫通孔121bは、左右方向に距離をあけて同一直線上に位置する。左側の第一貫通孔121aと右側の第一貫通孔121bで、回転軸3が挿通される第一貫通孔121を構成する。左側の第二貫通孔122aと右側の第二貫通孔122bは、左右方向に距離をあけて同一直線上に位置する。左側の第二貫通孔122aと右側の第二貫通孔122bで、軸部材5が挿通される第二貫通孔122を構成する。
【0028】
次に、上側部材2について説明する。
【0029】
上側部材2は、容器8の開口81を塞ぐように構成された蓋9に対して、固着される部材である。
【0030】
図1A、
図1B、
図4A及び
図4Bに示すように、上側部材2は、蓋9の周縁部に対して移動不能に装着される固定部21と、下側部材1とリンク機構4に対して連結される連結部22とを、一体に備える。
【0031】
連結部22は、回転軸3が挿通される貫通孔221と、リンク機構4に接続される接続部222とを、別々の箇所に備える。蓋9が開度0°の状態において、接続部222は、貫通孔221の前斜め上方に位置する。
【0032】
接続部222と貫通孔221の位置関係は、これに限定されない。例えば、接続部222に挿通させる後述のピン413が、貫通孔221の真上に位置することも可能である。
【0033】
本実施形態の上側部材2では、開度0°の状態において固定部21の後方に位置する連結部22を、左側連結部22aと右側連結部22bに分割させている。左側連結部22aと右側連結部22bは、左右方向に距離をあけて互いに平行に位置する。なお、上側部材2の連結部22を、左側連結部22aと右側連結部22bに分割することは必須ではなく、連結部22を左右に分割しない構造を採用することも可能である。
【0034】
左側連結部22aは、左側貫通孔221aと、左側接続片222aを備える。右側連結部22bは、右側貫通孔221bと、右側接続片222bを備える。
【0035】
左側貫通孔221aと右側貫通孔221bは、左右方向に距離をあけて一直線状に位置し、両貫通孔221a,221bで貫通孔221を構成する。左側接続片222aと右側接続片222bは、左右方向に距離をあけて位置し、両接続片222a,222bで接続部222を構成する。左側接続片222aと右側接続片222bには、ピン413を貫通させて設ける。
【0036】
次に、リンク機構4について説明する。
【0037】
リンク機構4は、下側部材1と上側部材2を、回転軸3とは異なる箇所で連結させる機構であり、互いに回転自在に連結される一対のリンク41,41と、捩りバネ式のバネ機構42を備える。リンク機構4は、3以上のリンク41,41…を備えることも可能である。
【0038】
一対のリンク41,41の一方は、軸部材5を介して下側部材1に1自由度で連結する第一リンク411であり、一対のリンク41,41の他方は、第一リンク411と上側部材2に対して共に1自由度で連結する第二リンク412である。
【0039】
第二リンク412は、
図6Aと
図6Bに示すように、長手方向の両端部に連結孔4121,4122を備えるアーム状の部材である。第二リンク412は、連結孔4121にピン413を挿通させることで、上側部材2が備える接続部222に対して、1自由度で回転自在に連結する。
【0040】
第一リンク411は、
図5Aと
図5Bに示すように、軸部材5が挿通される貫通孔4111と、第二リンク412に接続される接続部4112とを、別々の箇所に備える。蓋9の開度0°の状態において、接続部4112は、貫通孔4111より上方に位置する。
【0041】
本実施形態のリンク機構4では、第一リンク411を、左側のリンク半部411aと右側のリンク半部411bに分割させている。左側のリンク半部411aと右側のリンク半部411bは、左右方向に距離をあけて互いに平行に位置する。なお、第1リンク411を、左側のリンク半部411aと右側のリンク半部411bに分割することは必須ではなく、第一リンク411を左右に分割しない構造を採用することも可能である。
【0042】
左側のリンク半部411aは、左側貫通孔4111aと、左側接続片4112aを備える。右側のリンク半部411bは、右側貫通孔4111bと、右側接続片4112bを備える。
【0043】
左側貫通孔4111aと右側貫通孔4111bは、左右方向に距離をあけて一直線状に位置し、両貫通孔4111a,4111bで貫通孔4111を構成する。左側接続片4112aと右側接続片4112bは、左右方向に距離をあけて位置し、両接続片4112a,4112bで接続部4112を構成する。
【0044】
左側接続片4112aと右側接続片4112bには、ピン414を貫通させて設ける。第一リンク411と第二リンク412は、ピン414を介して1自由度で回転自在に連結する。
【0045】
さらに、本実施形態のリンク機構4は、蓋9を支持する上側部材2に対してバネ力を与えるように構成された捩りコイル式のバネ機構42を備える。
【0046】
バネ機構42は、第一捩りコイルバネ421と第二捩りコイルバネ422を備える。第一捩りコイルバネ421と第二捩りコイルバネ422は、共に軸部材5の外周を囲んで位置するため、バネ機構42全体が蓋9から大きく後方に突出することが、抑えられる(
図1A参照)。
【0047】
軸部材5は、
図1Aに示すように、第一端部51と第二端部52とを互いに反対側に有する。第一端部51は、第一リンク411を構成する左側のリンク半部411aから、さらに左側方に突出する部分である。第二端部52は、第一リンク411を構成する右側のリンク半部411bから、さらに右側方に突出する部分である。
【0048】
第一捩りコイルバネ421は、軸部材5の第一端部51の外周を囲んで位置する。第一捩りコイルバネ421の一端部は、左側のリンク半部411aに当たって係止し、第一捩りコイルバネ421の他端部は、第一端部51に当たって係止する。本実施形態では第一捩りコイルバネ421を露出させているが、
図1Aに想像線で示すようなカバー4113aを左側のリンク半部411aに装着し、第一捩りコイルバネ421をカバー4113aに収容することも好ましい。
【0049】
第二捩りコイルバネ422は、軸部材5の第二端部52の外周を囲んで位置する。第二捩りコイルバネ422の一端部は、右側のリンク半部411bに当たって係止し、第二捩りコイルバネ422の他端部は、第二端部52に当たって係止する。本実施形態では第二捩りコイルバネ422を露出させているが、
図1Aに想像線で示すようなカバー4113bを右側のリンク半部411bに装着し、第二捩りコイルバネ422をカバー4113bに収容することも好ましい。
【0050】
ここで、軸部材5は、下側部材1に対して回り止めされている。つまり、第一端部51は下側部材1に対して回り止めされている。そのため、第一リンク411が軸部材5まわりに回転して姿勢を変化させると、その変化に応じて第一捩りコイルバネ421が変形し、発揮するバネ力を変化させる。同様に、第二端部52は下側部材1に対して回り止めされているので、第一リンク411が軸部材5まわりに回転して姿勢を変化させると、その変化に応じて第二捩りコイルバネ422が変形し、発揮するバネ力を変化させる。
【0051】
第一捩りコイルバネ421と第二捩りコイルバネ422は共に、第一リンク411と第二リンク412を介して、上側部材2に対して蓋9を開く方向(即ち、蓋9を後方に向けて引っ張り上げる方向)にバネ力を与える。第一捩りコイルバネ421と第二捩りコイルバネ422が上側部材2に与えるバネ力が、蓋9の開動作を支援するためにバネ機構42が上側部材2に与えるバネ力である。
【0052】
前述したとおり、
図1Bには蓋9の開度0°の状態を示しており、
図2Aには蓋9の開度45°の状態(即ち、蓋9を回転軸3まわりに45°開いた状態)を示し、
図2Bには蓋9の開度100°の状態(即ち、蓋9を回転軸3まわりに100°開いた状態)を示している。
【0053】
本実施形態のヒンジ構造では、蓋9の開動作を支援するバネ力が、下側部材1に対する第一リンク411の姿勢に応じて変化する。蓋9の開閉に伴って第一リンク411の姿勢がどのように変化するかは、第二リンク412の長さを調整することで、調整可能である。
【0054】
そのため、蓋9の寸法形状や重量にあわせて、第二リンク412の長さやバネ機構42のバネ力を設定することで、蓋9の開動作を支援するためにバネ機構42が発揮するバネ力を、蓋9の開度に応じた適切な大きさに、漸次変化させていくことができる。
【0055】
図7には、バネ機構42のバネ力が変化する様子の一例を、グラフで示している。
図7の横軸は、蓋9の開度[°]である。縦軸は、トルク[kgf・mm]である。
図7中の曲線C1は、蓋9をその姿勢で支持するために必要なトルクが、蓋9の開度に応じて漸次変化する様子を示している。
図7中の曲線C2は、蓋9の開動作を支援するようにバネ機構42が作用させるトルクが、蓋9の開度に応じて漸次変化する様子を示している。
【0056】
本実施形態のヒンジ構造においては、
図7に示すように、蓋9の開動作を支援するように作用するトルクの曲線C2を、蓋9をその姿勢で支持するために要するトルクの曲線C1に近似させて設定することで、蓋9を閉じた状態から所定の範囲内(例えば開度0〜85°の範囲内)の任意の開度で蓋9を静止させ、蓋9の開度が前記所定の範囲を超えたときは、蓋9が自ずと後方に倒れるように設定することが可能となる。言い換えれば、本実施形態のヒンジ構造をいわゆる「フリーストップヒンジ」にすることが可能となる。
【0057】
なお、文献1に記載された従来のヒンジ機構を用いた場合には、蓋の開動作を支援するトルクは、前記蓋の開度が増加するに伴って、一直線状に減少する。そのため、従来のヒンジ構造は、フリーストップヒンジにすることが困難である。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態のヒンジ構造は、容器8に装着される下側部材1と、容器8の開口81を塞ぐための蓋9に装着される上側部材2と、下側部材1と上側部材2を回転自在に連結させる回転軸3と、下側部材1と上側部材2を回転軸3とは異なる箇所で連結させるリンク機構4とを備える。リンク機構4は、互いに回転自在に連結される複数のリンク41,41と、上側部材2に対して蓋9を開く方向にバネ力を与えるように構成された捩りコイル式のバネ機構42とを備える。
【0059】
本実施形態のヒンジ構造では、バネ機構42が捩りコイル式であることから、バネ機構42等が蓋9から大きく後方に突出することが抑えられる。加えて、従来技術のように回転軸3にバネを備えるのでなく、下側部材1と上側部材2を連結させるリンク機構4にバネ機構42を備えているので、バネ機構42が発揮するバネ力を、蓋9の姿勢に応じて適切に変化させることが可能である。
【0060】
本実施形態のヒンジ構造において、複数のリンク41,41は、軸部材5を介して下側部材1に連結する第一リンク411を含む。バネ機構42は、下側部材1に対する第一リンク411の姿勢に応じて、バネ力を変化させるように構成されている。
【0061】
そのため、本実施形態のヒンジ構造では、蓋9の姿勢に応じて第一リンク411の姿勢を変化させ、この第一リンク411の姿勢に応じて、バネ機構42が発揮するバネ力を変化させることができる。
【0062】
本実施形態のヒンジ構造において、リンク機構4は、蓋9が任意の姿勢で静止するように、下側部材1に対する第一リンク411の姿勢を変化させ、バネ力を変化させるように構成されている。
【0063】
そのため、本実施形態のヒンジ構造では、バネ機構42が蓋9から大きく後方に突出することを抑えたコンパクトな機構で、フリーストップヒンジを実現することができる。
【0064】
本実施形態のヒンジ構造において、複数のリンク41,41は、第一リンク411と上側部材2に対して連結する第二リンク412を、さらに含む。
【0065】
そのため、本実施形態のヒンジ構造では、第二リンク412の長さを設定することで、多様な種類の蓋9に対応してその開動作を最適に支援することができ、汎用性が高いという利点がある。
【0066】
本実施形態のヒンジ構造において、軸部材5は、第一リンク411から一側方に突出する第一端部51と、第一端部51とは反対の側方に突出する第二端部52とを有する。バネ機構42は、第一捩りコイルバネ421と第二捩りコイルバネ422を備える。第一捩りコイルバネ421が第一端部51の外周を囲んで位置する。第二捩りコイルバネ422が第二端部52の外周を囲んで位置する。複数のリンク41,41は、平面視(即ち、上方から視たとき)において、第一捩りコイルバネ421と第二捩りコイルバネ422の間に位置する。
【0067】
そのため、本実施形態のヒンジ構造は、構造全体がコンパクトであり、ヒンジ構造の取付スペース等の制約が少ないという利点がある。
【0068】
また、本実施形態のヒンジ構造の調整方法は、蓋9の寸法形状及び重量にあわせて、第二リンク412の長さを設定し、蓋9が任意の姿勢で静止するようにバネ力を調整する方法である。
【0069】
そのため、本実施形態のヒンジ構造の調整方法では、多様な種類の蓋9に対して、簡単な作業でフリーストップヒンジを実現することができる。また、多様な種類の蓋9に対して、低コストでフリーストップヒンジを実現することができる。
【0070】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記各例の実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更を行うことが可能である。
捩りコイルバネのバネ力によって、蓋の開動作を支援するヒンジ構造において、該バネ力を適切に変化させることを課題とする。ヒンジ構造は、容器(8)に装着される下側部材(1)と、蓋(9)に装着される上側部材(2)と、下側部材(1)と上側部材2を連結させる回転軸(3)と、下側部材(1)と上側部材(2)を回転軸(3)とは異なる箇所で連結させるリンク機構(4)とを備える。リンク機構(4)は、互いに回転自在に連結される複数のリンク(41)(41)と、上側部材(1)に対して蓋(9)を開く方向にバネ力を与えるように構成された捩りコイル式のバネ機構(42)とを備える。