(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938186
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】押圧ローラ及びこの押圧ローラを備えた巻取り機
(51)【国際特許分類】
B21C 47/26 20060101AFI20160609BHJP
B21C 47/24 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
B21C47/26 D
B21C47/24 D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-210186(P2011-210186)
(22)【出願日】2011年9月27日
(65)【公開番号】特開2013-71131(P2013-71131A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】511233522
【氏名又は名称】トート技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】小又 昇
【審査官】
長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−103047(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 45/00−49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状物が巻取られたロールの外周面を押圧する押圧ローラ体を複数備えた押圧ローラであって、
前記押圧ローラ体は、円筒状の芯金と、前記芯金の内周面に取り付けられた円筒状の軸受と、前記芯金の外周面に取り付けられた円筒状の弾性部材からなる押圧部とを備え、
前記押圧ローラ体の側面が互いに接するように、複数の押圧ローラ体が軸体に、並列に設けられ、
前記押圧ローラ体の押圧部の中心線方向の厚さ寸法が、前記帯状物の幅より小さく設定され、巻取られた一つの帯状物を複数の押圧ローラ体で押圧することを特徴とする押圧ローラ。
【請求項2】
前記押圧部は、中心線方向の両側面部にそれぞれ形成された一対のフランジ部と、前記中心線方向に押圧部を貫通するように形成された貫通孔とを備え、
前記フランジ部の外周面によって帯状物の外周面を押圧することを特徴とする請求項1に記載の押圧ローラ。
【請求項3】
前記押圧部は、中心線方向の両側面部にそれぞれ形成された一対のフランジ部と、前記フランジ部の外周面から径方向に形成されたスリット部を備え、前記フランジ部の外周面によって帯状物の外周面を押圧することを特徴とする請求項1に記載の押圧ローラ。
【請求項4】
前記一対のフランジ部の間の溝部が、帯状物の外周面を巻回し、締結するフープバンドが挿通可能に形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載の押圧ローラ。
【請求項5】
前記押圧部は、外周面に周面に沿って形成された溝部を備えることを特徴とする請求項1に記載の押圧ローラ。
【請求項6】
前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された押圧ローラを備える巻取り機であって、
所定の方向に回転することによって、所定の幅に切断された帯状物を巻取る巻取軸を有する巻取りロール体と、
前記巻取軸と平行に配設された軸体に回転可能に、側面が接して並設された複数の押圧ローラ体を有し、前記巻取りロール体に巻取られる帯状物を押圧する押圧ローラと、
前記軸体を保持するフレームと、
前記フレームを昇降させることによって巻取軸に対して、押圧ローラ体を進退させる昇降機構と、を少なくとも備えることを特徴とする巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧ローラ及びこの押圧ローラを用いた巻取り機に関し、例えば、スリッタによって所定の幅に切断された鋼板等の帯状物を巻取った際、巻取った帯状物の緩みを防止する押圧ローラ及びこの押圧ローラを備えた巻取り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、メーカにて製造された、例えば鋼板ロールを受け取って、前記鋼板をスリッタによって所定の長さ、所定の幅に切断すると共に、その帯状の鋼板(帯状物)を巻取る巻取り機が知られている。
【0003】
この巻取り機について、特許文献1に記載された巻取り装置の巻取り機を例にとって、
図10、
図11に基づいて説明する。
先ず、特許文献1に示された巻取り装置100は、
図10に示すように、鋼板ロールHRを支持してその鋼板Hを繰り出すアンコイラー101と、このアンコイラー101を介して繰り出された鋼板Hを上下から挾み込んで送り出すピンチロール102を備えている。
【0004】
また、前記ピンチロール102の下流側には、巻取られた鋼板Hの長さを計測するゲージロール103と、繰り出された鋼板Hを所定幅に切断するスリッタ104と、鋼板Hを切断するシャー105とを備えている。
更に、前記シャー105の下流側には、巻取り機108が設けられている。この巻取り機108は、繰り出された鋼板Hを巻取る巻取りロール体106と、該巻取りロール体106に巻取られた鋼板Hを押圧する押圧ローラ体107とを備えている。
【0005】
次に、前記巻取り機108について、
図11に基づいて説明する。
この巻取り機108は、固定フレーム110と、この固定フレーム110に設けられた軸受111を介して片持ち状に回転自在に軸支された回転軸112を有する巻取りロール体106と、この巻取りロール体106に巻取られる鋼板Hを押圧する押圧ローラ機構120と、巻取りロール体106に巻取られた鋼板Hによって形成される鋼板ロールR(
図10参照)を取出す取出し機構130とから構成されている。
なお、回転軸112の基端は、電動モータ113の出力軸に連結され、電動モータ113の回転が回転軸112に伝動されて巻取りロール体106が回転し、鋼板Hを巻き取ることができるように構成されている。
【0006】
また、前記押圧ローラ機構120は、巻取りロール体106の上方に位置して固定フレーム110に間隔をおいて設けられた複数本の押圧シリンダ121と、これらの各押圧シリンダ121のピストンロッド122に連結されたブラケット123と、ブラケット123に回転自在に軸支された複数個の押圧ローラ体107から構成されている。
この押圧ローラ体107は巻取りロール体106に巻き取られた鋼板Hの外周面を押圧することによって、巻取られた鋼板の緩みを防止するものであり、前記押圧シリンダ121を伸長作動させることにより、巻取りロール体106に巻き取られた鋼板Hに押圧ローラ体107を押付けて、巻き取られた鋼板Hの緩みを防止している。
【0007】
このように構成され巻取り装置100にあっては、鋼板ロールHRをアンコイラー101で支持し、その鋼板Hの一端をピンチロール102、ゲージロール103を経て巻取りロール体106に固定した後、巻取りロール体106を回転駆動させると同時に、スリッタ104を作動させる。
【0008】
これにより、所定幅に切断された鋼板Hを押圧ローラ体107との間で挟み込んで巻き取りロール体106に巻き取る。そして、前記ゲージロール103を介して設定長さの鋼板Hが巻取られたならば、シャー105で切断した後、鋼板ロールRを取出し機構130によって、巻取りロール体106から取出し、ユーザーに供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−190026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載された巻取り機の押圧ローラ体は、前記したように複数形成され、巻取られた鋼板のそれぞれの外周面を押圧するように間隔をおいて配設されている。このため、巻取られる鋼板の幅を変更した場合には、押圧ローラの位置や数を調整しなければならないという技術的課題があった。
【0011】
また、上記技術的課題を解決するために、1つの長尺な押圧ローラ体にて、巻取られた鋼板(複数の鋼板ロールR)の全てを押圧するように構成することも考えられる。
しかしながら、長尺な押圧ローラ体で巻取られた鋼板(複数の鋼板ロールR)の全てを押圧する場合、全ての鋼板ロールRを一様に押圧することができず、巻取られた鋼板に緩みが生じるという技術的課題があった。
即ち、鋼板の厚さ寸法に微少なばらつきがあるため、鋼板ロールRの径に大小が生じる。このように径に大小の差のある鋼板ロールRを、1つの長尺な押圧ローラ体で押圧すると、径の大きな鋼板ロールRは適切に押圧することができるものの、径の小さな鋼板ロールRは適切に押圧することができず、巻取られた鋼板に緩みが生じるという技術的課題があった。
【0012】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、スリッタによって所定の幅に切断された鋼板等の帯状物を巻取った際、巻取った帯状物の緩みを防止する押圧ローラ及びこの押圧ローラを備えた巻取り機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかる押圧ローラは、帯状物が巻取られたロールの外周面を押圧する押圧ローラ体を複数備えた押圧ローラであって、前記押圧ローラ体は、円筒状の芯金と、前記芯金の内周面に取り付けられた円筒状の軸受と、前記芯金の外周面に取り付けられた円筒状の弾性部材からなる押圧部とを備え、前記押圧ローラ体の側面が互いに接するように、複数の押圧ローラ体が軸体に、並列に設けられ
、前記押圧ローラ体の押圧部の中心線方向の厚さ寸法が、前記帯状物の幅より小さく設定され、巻取られた一つの帯状物を複数の押圧ローラ体で押圧することを特徴
としている。
このように、押圧ローラが、押圧ローラ体の側面が互いに接するように、複数の押圧ローラ体が軸体に、並列に設けられているため、巻取られる鋼板の幅を変更した場合であっても、押圧ローラ体の位置や数を調整する必要がない。
【0015】
また、前記押圧ローラ体の押圧部の中心線方向の厚さ寸法が、前記帯状物の幅より小さく設定され、巻取られた一つの帯状物を複数の押圧ローラ体で
押圧している。このように、押圧ローラ体の厚さ寸法を小さくすることにより、ロールの径にバラツキがあっても、より確実に押圧することができる。
【0016】
また、前記押圧部は、中心線方向の両側面部にそれぞれ形成された一対のフランジ部と、前記中心線
方向に押圧部を貫通するように形成された貫通孔とを備え、前記フランジ部の外周面によって帯状物の外周面を押圧することが望ましい。
このように、一対のフランジ部及び貫通孔が形成され、フランジ部の外周面が帯状物の外周面を押圧するため、押圧ローラ体(押圧部)は弾性変形し、巻取られた複数の帯状物の緩みを確実に防止することができる。
【0017】
また、前記押圧部は、中心線方向の両側面部にそれぞれ形成された一対のフランジ部と、前記フランジ部の外周面から径方向に形成されたスリット部を備え、前記フランジ部の外周面によって帯状物の外周面を押圧することが望ましい。
この場合においても、前記した場合と同様に、フランジ部の外周面が帯状物の外周面を押圧することにより、押圧ローラ体(押圧部)は弾性変形し、巻き取られた複数の帯状物の緩みを防止することができる。
【0018】
更に、前記一対のフランジ部の間の溝部が、帯状物の外周面を巻回し、締結するフープバンドが挿通可能に形成されていることが望ましい。
前記一対のフランジ部の間の溝部(隙間)が、帯状物の外周面を巻回し、締結するフープバンドが挿通可能に形成されているため、フランジ部の外周面が帯状物の外周面を押圧した状態で、この溝部(隙間)にフープバンドを通し、巻回、締結することができる。
その結果、巻き取られた帯状物を、安全にかつ容易に、更に緩みなくフープバンドで固定することができる。
また、前記押圧部は、外周面に周面に沿って形成された溝部を備えることが望ましい。この場合においても、フランジ部の外周面が帯状物の外周面を押圧することにより、押圧ローラ体(押圧部)は弾性変形し、巻き取られた複数の帯状物の緩みを防止することができる。
【0019】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかる巻取り機は、所定の方向に回転することによって、所定の幅に切断された帯状物を巻取る巻取軸を有する巻取りロール体と、前記巻取軸と平行に配設された軸体に回転可能に、側面が接して並設された複数の押圧ローラ体を有し、前記巻取りロール体に巻取られる帯状物を押圧する押圧ローラと、前記軸体を保持するフレームと、前記フレームを昇降させることによって巻取軸に対して、押圧ローラ体を進退させる昇降機構と、を少なくとも備えることを特徴としている。
【0020】
このような巻取り機によれば、複数の押圧ローラ体が軸体に回転可能に、その側面が接して並設されているため、帯状物の幅を変更した場合にも、押圧ローラ体の位置や数を調整することなく、いずれかの押圧ローラ体で、巻取られた帯状物を押圧することができる。
また、巻取られた帯状物の径に大小の差がある場合にも、押圧ローラ体の(押圧部)の弾性変形によって、巻取られた帯状物を適切に押圧することができ、巻取られた帯状物の緩みを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スリッタによって所定の幅に切断された鋼板等の帯状物を巻取った際、巻取った帯状物の緩みを防止する押圧ローラ及びこの押圧ローラを備えた巻取り機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る押圧ローラを備える巻取り機の斜視図
【
図4】押圧ロールにて、巻回された鋼板(ロール)を押圧した状態を示す斜視図
【
図6】本発明に係る押圧ローラ体の第1の変形例を示す押圧ローラ体の斜視図
【
図7】
図6に示された押圧ローラ体のII−II断面図
【
図8】本発明に係る押圧ローラ体の第2の変形例を示す押圧ローラ体の斜視図
【
図9】
図8に示された押圧ローラ体のIII−III断面図
【
図11】従来の押圧ローラを備える巻取り機概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる押圧ローラを備えた巻取り機について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
ここで、
図1は本発明の第1実施形態に係る押圧ローラを備える巻取り機の斜視図、
図2は
図1に示された押圧ローラ体の斜視図、
図3は
図2に示された押圧ローラ体のI−I断面図、
図4は押圧ロールにて巻回された鋼板(ロール)を押圧した状態を示す斜視図、
図5は押圧ロールの押圧した状態を示す要部拡大図である。
【0024】
この巻取り機1は、
図1に示すように、スリッタ(図示せず)にて所定の幅に切断され、幅方向に沿って並列した状態で送出された複数の帯状の鋼板(帯状物)S1〜S4を巻き取るものであり、押圧機構3を除き、基本的には従来と同様な構成を備えている。
即ち、この巻取り機1は、所定の方向(
図1矢印A方向)に回転することによって、所定の幅に切断された鋼板S1〜S4を巻取る巻取軸2を有する巻取りロール体R1〜R4と、この巻取りロール体R1〜R4に巻取られる鋼板S1〜S4を押圧する押圧ローラ機構3と、巻き取られた鋼板S1〜S4によって形成される巻取りロール体R1〜R4を取出す取出し機構(図示せず)とから構成されている。
尚、前記巻取軸2は、図示しないモータにより回転駆動されるように構成されている。
【0025】
前記押圧ローラ機構3は、巻取軸2と平行に配設された軸体4aと、前記軸体4aを保持するフレーム4bと、前記軸体4aに回転可能に、側面が互いに接して並設された複数の押圧ローラ体6、前記フレーム4bを昇降させることによって巻取軸2に対して、前記押圧ローラ体6を進退させる昇降機構5とを備えている。
【0026】
前記昇降機構5は、巻取りロール体R1〜R4の上方に位置する固定フレーム5aと、前記固定フレーム5aにシリンダ5b2が固定されると共に、ピストン5b1の先端が前記フレーム4bの上面に取付けられた押圧シリンダ5bと、前記フレーム4bの上面に立設され、前記フレーム4bの昇降を案内するガイド棒5c、5cとを備えている。
そして、前記押圧シリンダ5bのピストン5b1を伸長作動させることにより、巻取りロール体R1〜R4に巻取られた鋼板S1〜S4(巻取りロール体R1〜R4の外周面)に押圧ローラ体6を押付けることによって、巻取りロール体R1〜R4の緩みが防止される。
【0027】
更に、前記押圧ローラ体6について
図2、
図3に基づいて説明する。
この押圧ローラ体6は、
図2に示すように、円筒状の芯金6aと、芯金6aの内周面に取り付けられた円筒状の含油軸受6bと、芯金6aの外周面に取り付けられた円筒状の弾性部材からなる押圧部6cとによって、全体として円筒状に構成されている。
前記押圧ローラ体6(押圧部6c)の幅、すなわちローラ6(押圧部6c)における中心線方向の厚さWは、鋼板S1〜S4のそれぞれの幅よりも狭く設定され、複数の押圧ローラ体6(押圧部6c)で、巻取りロール体R1〜R4の夫々を押圧するように構成されている。
【0028】
また、前記押圧部6cは、中心線方向の両端にそれぞれ形成された一対のフランジ部6c1と、
中心線方向に貫通するように複数の貫通孔6c2とを備えている。このように一対のフランジ部6c1が形成されることにより、前記押圧部6cが弾性変形し易くなる。また、前記押圧部6cの中心線方向の両端に一対のフランジ部6c1が形成されることにより、前記押圧部6cの中心線方向の中央部に溝部6dが形成される。この溝部6dによって、押圧ローラ体6(押圧部6c)で巻取りロール体R1〜R4を押圧した状態で、前記溝部6dにフープバンド(図示せず)を通し、フープバンドを締結することができる。
即ち、巻取りロール体R1〜R4に緩みを発生させることなく、フープバンドを巻回し、締結でき、巻取りロール体R1〜R4に緩みなく固定できる。
【0029】
また、複数の貫通孔6c2が形成されているのは、フランジ部6c1をより弾性変形し易くするためである。尚、貫通孔6c2として断面が円形の場合を示したが、断面が円形のものに限定されるものでなく、三角形、矩形等の多角形形状であっても良い。
更に、押圧部6cの材質としては、天然ゴム、ウレタンゴム等の一般的なゴム素材を用いることがでる。特に、耐久性の観点から、ウレタンゴム等、耐久性のあるゴム素材を用いるのが好ましい。
【0030】
このように構成された押圧ローラ体6は、含油軸受6bを介して前記軸体4aに回転自在に挿入され、取り付けられる。この際、押圧ローラ体6の側面が互いに接するように、複数の押圧ローラ体6が並列に設けられている。即ち、隣接する押圧ローラ体6の押圧部6c(フランジ部6c1)側面は互いに接して、配置されている(
図5参照)。
【0031】
次に、
図4、
図5に基づいて、巻取り機の巻取り動作について説明する。尚、
図4は、押圧ロールにて巻回された鋼板を押圧した状態を示す斜視図であり、
図5は押圧ロールの押圧した状態を示す要部拡大図である。
巻取り機1は、従来と同様に巻取り装置の一部に組み込まれるものであり、鋼板ロールを巻取り装置のアンコイラーで支持し、その鋼板の一端をピンチロール、ゲージロールを経て、巻取り機1の巻取りロール体R1〜R4に固定する。その後、巻き取りロール体R1〜R4を回転駆動させると同時に、スリッタを作動させる(
図10参照)。
これにより、所定幅に切断された鋼板S1〜S4を押圧ローラ体6との間で挟み込んで巻取りロール体R1〜R4に巻き取る。
【0032】
更に、押圧ロール機構3にて、巻取りロール体R1〜R4(鋼板S1〜S4)の外周面を押圧した状態について説明する。
図4に示すように、所定幅に切断された鋼板S1〜S4を巻取りロール体R1〜R4に巻き取る際、押圧ロール機構3は昇降装置5(ピストンシリンダ5b)にてフレーム4bを
図4矢印B方向に下降させて、押圧ローラ体6を巻取りロール体R1〜R4の外周面に当接させ、鋼板S1〜S4を押圧する。
【0033】
具体的には、前記押圧ロール機構3は、押圧部6cのフランジ部6c1を当接させることによって鋼板S1〜S4を押圧する。このとき、フランジ部6c1は、鋼板S1〜S4に押圧されることによって弾性変形する。
そして、押圧ロール機構3にて鋼板S1〜S4を押圧した状態において、巻取軸2を更に
図4の矢印A方向に回転させることによって、鋼板S1〜S4の全体を巻取軸2に巻き取る。
【0034】
このとき、前記押圧ローラ体6の幅、すなわち押圧ローラ体6(押圧部6c)における中心線方向の厚さWは、鋼板S1〜S4(巻取りロール体R1〜R4)のそれぞれの幅WRよりも小さく設定されている。
即ち、
図5に示すように、巻取りロール体R1〜R4の夫々について、複数の押圧ローラ体6が押圧するため、隣接する巻取りロール体に跨る押圧ローラ体6が生じる。このとき隣接する巻取りロール体の径に差(段差)hが生じても、押圧ローラ体6(フランジ部6c1)の変形によって、径の大きな巻取りロール体、及び径の小さな巻取りロール体を適切に押圧することができ、巻取りロール体の緩みを防止することができる。
【0035】
そして、ゲージロールを介して設定長さの鋼板が巻取られたならば、シャーで切断した後、巻取りロール体と、鋼板S1〜S4の間に形成された隙間にフープバンド(図示略)を通すことによって、鋼板S1〜S4を緩まないように固定して、巻き取り機1から取り出す。
【0036】
次に、本発明に係る押圧ローラ体の第1の変形例をについて説明する。尚、
図6は本発明に係る押圧ローラ体の第1の変形例を斜視図であり、
図7は、
図6に示された押圧ローラ体の断面図である。なお、
図2,3に示した押圧ローラ体と同一、または相当する部材は同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
上記実施形態における押圧ローラ体6は、
図2,3に示すように、押圧部6cを備え、押圧部6cはフランジ部6c1と貫通孔6c2とを備えている。
これに対して、この第1の変形例にあっては、貫通孔6c2の代わりに、フランジ部6c1外周面から径方向に延びる複数のスリット部6c3が設けられている点に特徴がある。尚、前記スリット部6c3は、押圧部6cの外周面に少なくとも1つ形成されていればよい。
このようなスリット部6c3を有する押圧ローラ体であっても、前記実施形態における押圧ローラ体と同様の作用、効果を奏する。
【0038】
次に、本発明に係る押圧ローラ体の第2の変形例について、
図8、
図9に基づいて説明する。尚、
図8は、本発明に係る押圧ローラ体の第2の変形例を示す押圧ローラ体の斜視図、
図9は、
図8に示された押圧ローラ体の断面図である。なお、
図2,3に示した押圧ローラ体と同一、または相当する部材は同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
この第2の変形例にあっては、押圧部6cの外周面の周方向に、外周面の全周に亘って溝部6c4が形成されているに特徴がある。
図8、
図9には、前記溝部6c4が中心線方向に沿って複数形成されている場合を示しているが、前記溝部6c4は押圧部6cの外周面に少なくとも1つ形成されていればよい。
このような溝部6c4が形成された押圧ローラ体であっても、前記実施形態における押圧ローラ体と同様の作用、効果を奏する。
【0040】
尚、上記実施形態にあっては、押圧ローラ体の厚さが、鋼板S1〜S4(巻取りロール体R1〜R4)のそれぞれの幅WRよりも小さく設定されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記押圧ローラ体の押圧部の中心線方向の厚さ寸法が、前記帯状物の幅の2倍以下に設定されていれば良い。
即ち、押圧ローラ体の厚さ寸法が、前記帯状物の幅の2倍以下の場合には、一つの押圧ローラ体が、2つの帯状物を押圧することになる。この場合、巻取られた帯状物の径に大小の差(段差)があっても、押圧ローラ体の押圧部が弾性変形することによって、2つの帯状物(ロール)を適切に押圧することができ、巻取られた帯状物の緩みを防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 巻取り機
2 巻取軸
3 押圧ロール機構
4a 軸体
4b フレーム
5 昇降装置
6 押圧ローラ体
6a 芯金
6b 含油軸受
6c 押圧部
6c1 フランジ部
6c2 貫通孔
6c3 スリット部
6c4 溝部
6d 溝部
S1〜S4 鋼板
R1〜R4 巻取りロール体
W 押圧部の軸方向の厚さ
WR 巻取りロール体の幅