特許第5938191号(P5938191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938191
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】ガラス封止型サーミスタとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/04 20060101AFI20160609BHJP
   H01C 1/028 20060101ALI20160609BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20160609BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   H01C7/04
   H01C1/028
   H01L23/30 G
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-244386(P2011-244386)
(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公開番号】特開2013-102032(P2013-102032A)
(43)【公開日】2013年5月23日
【審査請求日】2013年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】河浦 貴志
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 浩靖
(72)【発明者】
【氏名】高久 晃一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 航一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 種昭
(72)【発明者】
【氏名】越水 和人
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−006627(JP,A)
【文献】 特開2001−135745(JP,A)
【文献】 特開2002−267540(JP,A)
【文献】 特開2011−232066(JP,A)
【文献】 実開昭61−079503(JP,U)
【文献】 特開2005−150538(JP,A)
【文献】 特開昭58−141507(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/157365(WO,A1)
【文献】 実開昭58−193602(JP,U)
【文献】 特開2002−289407(JP,A)
【文献】 特開2009−099662(JP,A)
【文献】 特開2006−030025(JP,A)
【文献】 特開昭63−190301(JP,A)
【文献】 特開平08−321404(JP,A)
【文献】 実開昭49−026936(JP,U)
【文献】 特開平10−242317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/04
H01C 1/028
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスの温度を測定するためのガラス封止型サーミスタであって、
サーミスタ素子と該サーミスタ素子に接続されたリード線とを有するセンサ部と、
前記センサ部を囲繞した状態で、リード線封着されたガラス封止体と、
前記ガラス封止体を囲繞し、前記ガラス封止体と組み合わせられた状態で、前記ガラス封止体に対し圧着された金属製の締め付け部材と、
を備え、
前記ガラス封止体は、前記サーミスタ素子を囲繞する第1ガラス封止体と、前記リード線を各別に囲繞した状態で、前記第1ガラス封止体に熱溶着部を介して溶着されるとともに前記リード線に密接および圧接され第2ガラス封止体と、を有し、
前記締め付け部材は、前記第2ガラス封止体が各別に挿通された貫通孔を有し、
前記締め付け部材は、前記第2ガラス封止体よりも熱膨張係数が大きい材料により構成されるとともに、少なくとも前記第2ガラス封止体を囲繞した状態で、少なくとも前記第2ガラス封止体に圧着されていることを特徴とするガラス封止型サーミスタ。
【請求項2】
前記締め付け部材は、前記第2ガラス封止体を囲繞するとともに、隣接する第1ガラス封止体の一部を囲繞することを特徴とする請求項1に記載のガラス封止型サーミスタ。
【請求項3】
水素ガスの温度を測定するためのガラス封止型サーミスタの製造方法であって、
サーミスタ素子と該サーミスタ素子に接続されたリード線とを有するセンサ部と、前記サーミスタ素子を囲繞する第1ガラス封止体、及び前記リード線を各別に囲繞する第2ガラス封止体を有するガラス封止体と、前記第2ガラス封止体を各別に挿通させる貫通孔を有し、少なくとも前記第2ガラス封止体を囲繞可能な形態をなす金属製の締め付け部材と、を用意し、
前記サーミスタ素子を前記第1ガラス封止体で封着し、
前記サーミスタ素子が封着された前記第1ガラス封止体から外部へ延出する前記リード線の外側に前記第2ガラス封止体を配置し、前記貫通孔内に前記第2ガラス封止体を挿通して、少なくとも前記第2ガラス封止体の外側に前記締め付け部材を配置した後、所定の熱処理を行うことで、前記第1ガラス封止体と前記第2ガラス封止体とを溶着し、前記リード線と前記第2ガラス封止体とを封着させるとともに、少なくとも前記第2ガラス封止体に対して前記締め付け部材を圧着させて圧縮応力を与えることを特徴とするガラス封止型サーミスタの製造方法。
【請求項4】
前記ガラス封止体に用いるガラス種を定め、
定めた前記ガラス種の熱膨張係数と略同等となる熱膨張係数を有する前記サーミスタ素子を複数選定し、
複数選定された前記サーミスタ素子のうち最もヤング率の小さいサーミスタ素子を用いることを特徴とする請求項3に記載のガラス封止型サーミスタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラス封止型サーミスタとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オイルや薬品等が存在する環境下において温度測定をする場合に、温度検出素子としてのサーミスタ素子がオイルや薬品等により汚染されないように、サーミスタ素子およびサーミスタ素子に接続されたリード線の一部をガラスで囲繞し封止したガラス封止型サーミスタが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−235306号公報
【特許文献2】特開平11−83641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水素ガスの温度を測定するために従来の前記ガラス封止型サーミスタを用いると、水素分子が極めて小さいため、水素がガラス封止体とリード線との間の界面の微小な隙間を通ってサーミスタ素子にまで到達し、サーミスタ素子を構成する酸化物から酸素を奪い取り、サーミスタ素子の特性を徐々に変えてしまうため、耐久性に劣るという課題がある。
【0005】
そのため、従来、水素雰囲気下でサーミスタ素子を用いて温度検出をする場合には、サーミスタ素子を、水素を透過しない材料(例えば、ステンレスやアルミニウム合金)等で覆い、サーミスタ素子を水素から隔離して使用している。
【0006】
しかしながら、この方法では、部品点数の増加、コストアップ、センサの大型化を招くという課題がある。さらに、センサの大型化は、該センサを取り付ける相手部品まで大型化するという課題もある。
【0007】
そこで、この発明は、水素雰囲気下での使用において耐久性に優れるガラス封止型サーミスタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るガラス封止型サーミスタでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、水素ガスの温度を測定するためのガラス封止型サーミスタであって、サーミスタ素子(例えば、後述する実施例におけるサーミスタ素子2)と該サーミスタ素子に接続されたリード線(例えば、後述する実施例におけるリード線3)とを有するセンサ部(例えば、後述する実施例におけるセンサ部8,11)と、前記センサ部を囲繞した状態で、リード線封着されたガラス封止体(例えば、後述する実施例における第1ガラス封止体4、第2ガラス封止体5、ガラス封止体9)と、前記ガラス封止体を囲繞し、前記ガラス封止体と組み合わせられた状態で、前記ガラス封止体に対し圧着された金属製の締め付け部材(例えば、後述する実施例における締め付け部材6、締め付けリング10)と、を備え、前記ガラス封止体は、前記サーミスタ素子を囲繞する第1ガラス封止体(例えば、後述する実施例における第1ガラス封止体4)と、前記リード線を各別に囲繞した状態で、前記第1ガラス封止体に熱溶着部を介して溶着されるとともに前記リード線に密接および圧接され第2ガラス封止体(例えば、後述する実施例における第2ガラス封止体5)と、を有し、前記締め付け部材は、前記第2ガラス封止体が各別に挿通された貫通孔を有し、前記締め付け部材は、前記第2ガラス封止体よりも熱膨張係数が大きい材料により構成されるとともに、少なくとも前記第2ガラス封止体を囲繞した状態で、少なくとも前記第2ガラス封止体に圧着されていることを特徴とするガラス封止型サーミスタ(例えば、後述する実施例におけるガラス封止型サーミスタ1)である。
【0010】
請求項に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記締め付け部材は、前記第2ガラス封止体を囲繞するとともに、隣接する第1ガラス封止体の一部を囲繞することを特徴とする。
【0011】
請求項に係る発明は、水素ガスの温度を測定するためのガラス封止型サーミスタ(例えば、後述する実施例におけるガラス封止型サーミスタ1)の製造方法であって、サーミスタ素子(例えば、後述する実施例におけるサーミスタ素子2)と該サーミスタ素子に接続されたリード線(例えば、後述する実施例におけるリード線3)とを有するセンサ部(例えば、後述する実施例におけるセンサ部8,11)と、前記サーミスタ素子を囲繞する第1ガラス封止体(例えば、後述する実施例における第1ガラス封止体4)、及び前記リード線を囲繞する第2ガラス封止体(例えば、後述する実施例における第2ガラス封止体5)を有するガラス封止体と、前記第2ガラス封止体を各別に挿通させる貫通孔を有し、少なくとも前記第2ガラス封止体を囲繞可能な形態をなす金属製の締め付け部材と、を用意し、前記サーミスタ素子を前記第1ガラス封止体で封着し、前記サーミスタ素子が封着された前記第1ガラス封止体から外部へ延出する前記リード線の外側に前記第2ガラス封止体を配置し、前記貫通孔内に前記第2ガラス封止体を挿通して、少なくとも前記第2ガラス封止体の外側に前記締め付け部材を配置した後、所定の熱処理を行うことで、前記第1ガラス封止体と前記第2ガラス封止体とを溶着し、前記リード線と前記第2ガラス封止体とを封着させるとともに、少なくとも前記第2ガラス封止体に対して前記締め付け部材を圧着させて圧縮応力を与えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記ガラス封止体は、前記サーミスタ素子を囲繞する第1ガラス封止体(例えば、後述する実施例における第1ガラス封止体4)と、前記リード線を囲繞する第2ガラス封止体(例えば、後述する実施例における第2ガラス封止体5)とからなり、前記締め付け部材は、少なくとも第2ガラス封止体を囲繞可能な形態をなし、前記サーミスタ素子を前記第1ガラス封止体で封着し、前記サーミスタ素子が封着された前記第1ガラス封止体から外部へ延出する前記リード線の外側に前記第2ガラス封止体を配置し、少なくとも前記第2ガラス封止体の外側に前記締め付け部材を配置した後、前記所定の熱処理を行うことで、前記第1ガラス封止体と前記第2ガラス封止体とを溶着し、前記リード線と前記第2ガラス封止体とを封着させるとともに、少なくとも前記第2ガラス封止体に対して前記締め付け部材を圧着させて圧縮応力を与えることを特徴とする。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項に記載の発明において、前記ガラス封止体に用いるガラス種を定め、定めた前記ガラス種の熱膨張係数と略同等となる熱膨張係数を有する前記サーミスタ素子を複数選定し、複数選定された前記サーミスタ素子のうち最もヤング率の小さいサーミスタ素子を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、熱処理後、締め付け部材からガラス封止体に作用する圧縮応力により、ガラス封止体がリード線に隙間なく密接し圧接するので、リード線とガラス封止体とを隙間なく確実に封着することができる。その結果、温度測定の対象である水素が、ガラス封止体とリード線との界面を通ってサーミスタ素子に向かって侵入することができなくなり、サーミスタ素子の特性が長期に亘って安定するので、ガラス封止型サーミスタの耐久性が向上する。
また、部品点数の増加を最小限に抑えて、生産装置や相手部品の小型化、コストアップの抑制を図ることができる。
【0015】
また、熱処理により第1ガラス封止体と第2ガラス封止体とが溶着して一体となり、また、締め付け部材から第2ガラス封止体に作用する圧縮応力により、第2ガラス封止体がリード線に隙間なく密接し圧接するので、リード線と第2ガラス封止体とを隙間なく確実に封着することができる。
【0016】
請求項に係る発明によれば、締め付け部材から第1ガラス封止体の一部と第2ガラス封止体に作用する圧縮応力により、第1ガラス封止体の一部と第2ガラス封止体がリード線に隙間なく密接し圧接するので、第1ガラス封止体の一部および第2ガラス封止体とリード線とを隙間なく確実に封着することができる。
【0017】
請求項に係る発明によれば、請求項1に記載のガラス封止型サーミスタを容易に製造することができる。
請求項に係る発明によれば、熱処理後にガラス封止体のガラス自体が内部応力により損傷するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明に係るガラス封止型サーミスタを備えた水素タンクの概略断面図である。
図2】前記水素タンクの口部に取り付けられるインタンクバルブの概略側面図である。
図3】この発明の実施例1におけるガラス封止型サーミスタの断面図である。
図4図3のA−A矢視図である
図5】この発明の実施例2におけるガラス封止型サーミスタの断面図である。
図6】この発明の実施例3におけるガラス封止型サーミスタの断面図である。
図7】この発明の実施例3の変形例におけるガラス封止型サーミスタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明に係るガラス封止型サーミスタの実施例を図1から図6の図面を参照して説明する。
この発明に係るガラス封止型サーミスタは、例えば、図1に示すように、水素タンク50内に収容された水素ガスの温度を測定するための温度センサとして使用することができる。
【0020】
図1において、水素タンク50は、内側が水素ガスの貯蔵室51となる略円筒状のアルミニウム合金製のライナー52と、ライナー52の外表面を被覆する繊維強化プラスチック製の補強層53とを備えて構成されており、水素タンク50の口部54には、インタンクバルブ55が取り付けられている。
【0021】
インタンクバルブ55は、水素タンク50内の水素ガスを外部に供給したり、外部から水素タンク50に水素ガスを充填するときに開く弁であり、水素タンク50の外側に露出する接続部56と、口部54内にシール状態に挿入された本体部57と、本体部57から貯蔵室51内に向かって突出し、弁開閉駆動用アクチュエータとして機能するソレノイド部58とを備えている。
【0022】
さらに、図2に示すように、インタンクバルブ55の本体部57には、ソレノイド部58から離間してマウント部59が貯蔵室51内に向かって突設されている。そして、このマウント部59にブラケット60を介して電子基板61が取り付けられ、電子基板61に、水素タンク50内の水素ガスの温度を測定するための本発明に係るガラス封止型サーミスタ1が実装されている。なお、図2において、符号3はガラス封止型サーミスタ1のリード線を示している。
【0023】
<実施例1>
初めに、この発明に係るガラス封止型サーミスタ(以下、サーミスタと略す)1の実施例1を図3図4の図面を参照して説明する。
実施例1のサーミスタ1は、両面に電極を有するサーミスタ素子2と、サーミスタ素子2の各電極に接続され互いに並行に配置されて同一方向へ延びる一対の金属製のリード線3と、サーミスタ素子2およびリード線3の一部を囲繞する円柱状をなすガラス製の第1ガラス封止体4と、前記第1ガラス封止体4から露出し外方へ延びる各リード線3の一部を囲繞する2つのガラス製の第2ガラス封止体5と、2つの第2ガラス封止体5を囲繞する金属製の締め付け部材6とを備えている。なお、サーミスタ素子2と、リード線3のうち第1ガラス封止体4および第2ガラス封止体5により囲繞されている部分は、サーミスタ1のセンサ部8を構成している。したがって、第1ガラス封止体4および第2ガラス封止体5はセンサ部8を囲繞している。
【0024】
第1ガラス封止体4と第2ガラス封止体5は、互いに溶着して一体化されている。第2ガラス封止体5は中空円筒状をなし、各第2ガラス封止体5にリード線3が1本ずつ挿通されている。締め付け部材6の軸方向長さは、第2ガラス封止体5の軸方向長さと略同一であり、締め付け部材6には、第2ガラス封止体5を挿通させる貫通孔7が2つ設けられ、各貫通孔7にそれぞれ第2ガラス封止体5が1本ずつ挿通されている。締め付け部材6は、第2ガラス封止体5を締め上げるように装着されており、貫通孔7の内周面が第2ガラス封止体5の外周面に圧着している。これにより、第2ガラス封止体5の内周面はリード線3の外周面に隙間なく密接し圧接している。
【0025】
次に、このサーミスタ1の製造方法を説明する。
まず、サーミスタ素子2に2本のリード線3を接続し、これらの周囲に配置したガラス素材を加熱溶融して第1ガラス封止体4を形成することによって、サーミスタ素子2と2本のリード線3の一部とが第1ガラス封止体4によって囲繞されたユニット(以下、センサユニットと称す)を形成しておく。なお、このセンサユニットの形態において、2本のリード線3は互いに並行に配置されて同一方向へ延び、第1ガラス封止体4から外方へ突出している。
【0026】
次に、センサユニットの2本のリード線3を、予め中空円筒状に形成された2つの第2ガラス封止体5に挿通し、第2ガラス封止体5を第1ガラス封止体4に接触するように配置する。なお、第2ガラス封止体5の内径はリード線3の外径とほぼ同径で、リード線3を挿通可能な大きさに設定されている。
【0027】
次に、締め付け部材6の2つの貫通孔7に、リード線3が挿通された第2ガラス封止体5を挿通するようにして、第2ガラス封止体5の外側に締め付け部材6をセットする。なお、締め付け部材6の2つの貫通孔7の中心間距離は、予め前記センサユニットの2本のリード線3の中心間距離に一致させておく。また、貫通孔7の内径は第2ガラス封止体5の外径とほぼ同径で、第2ガラス封止体5を挿通可能な大きさに設定されている。
このようにして図3の完成品と同様の配置で組み合わせた後、所定の温度で加熱し、第2ガラス封止体5と第1ガラス封止体4とを溶着させて一体化する。
【0028】
この後、常温まで冷却すると、ガラス製の第2ガラス封止体5よりも金属製の締め付け部材6の方が熱膨張係数が大きいことから、この熱膨張係数の違いにより、締め付け部材6の収縮が第2ガラス封止体5よりも大きく、その結果、締め付け部材6は第2ガラス封止体5に圧着し、第2ガラス封止体5に圧縮応力を付与する。第2ガラス封止体5に伝わった圧縮応力により、第2ガラス封止体5はリード線3に密接し圧接される。なお、ガラスに内部応力を残さないために、冷却は自然冷却が望ましい。
この製造方法によれば、実施例1のサーミスタ1を容易に製造することができる。
【0029】
このようにして製造された実施例1のサーミスタ1は、(a)サーミスタ素子2とサーミスタ素子2に接続されたリード線3とを有するセンサ部8と、(b)センサ部8を囲繞し所定の熱処理によりリード線と封着されるガラス封止体(第1ガラス封止体4、第2ガラス封止体5)と、(c)前記ガラス封止体を囲繞し、前記ガラス封止体と組み合わせられた後、所定の熱処理を加えられて収縮することで前記ガラス封止体に対し圧着して圧縮応力を与える金属製の締め付け部材6と、を備えるガラス封止型サーミスタ(請求項1に係るガラス封止型サーミスタ)ということができる。
【0030】
また、実施例1のサーミスタ1においては、前記ガラス封止体は、サーミスタ素子2を囲繞する第1ガラス封止体4と、リード線3を囲繞し所定の熱処理により第1ガラス封止体4に溶着されるとともにリード線3に密接および圧接される第2ガラス封止体5とからなり、締め付け部材6は、少なくとも第2ガラス封止体5を囲繞するガラス封止型サーミスタ(請求項2に係るガラス封止型サーミスタ)ということができる。
【0031】
この実施例1のサーミスタ1によれば、熱処理により第1ガラス封止体4と第2ガラス封止体5とが溶着して一体となり、また、締め付け部材6から第2ガラス封止体5に作用する圧縮応力により、第2ガラス封止体5がリード線3に隙間なく密接し圧接するので、リード線3と第2ガラス封止体5とを隙間なく確実に封着することができる。その結果、温度測定の対象である水素ガスが、第2ガラス封止体5とリード線3との界面を通ってサーミスタ素子2に向かって侵入することができなくなり、サーミスタ2が還元されなくなる。これにより、サーミスタ素子2の特性が長期に亘って安定するので、ガラス封止型サーミスタの耐久性が向上する。
また、部品点数の増加を第2ガラス封止体5と締め付け部材6だけの最小限に抑えて、生産装置や相手部品の小型化、コストアップの抑制を図ることができる。
【0032】
<実施例2>
次に、この発明に係るガラス封止型サーミスタ1の実施例2を図5の図面を参照して説明する。
実施例2が実施例1と相違する点は締め付け部材6の形態にある。詳述すると、実施例2の締め付け部材6は、第2ガラス封止体5を囲繞するだけでなく、第1ガラス封止体4の一部(第2ガラス封止体5に近い側の端部)も囲繞している。つまり、実施例2の締め付け部材6は、第1ガラス封止体4の端部を囲繞する第1囲繞部6bと、第2ガラス封止体5を囲繞する第2囲繞部6aとを備えている。第2囲繞部6aは実施例1における締め付け部材6に相当する部分であり、第1囲繞部6bの端部には、第1ガラス封止体4の端部に対応する形状の凹部6cが形成されている。
その他の構成は、実施例1のサーミスタ1と同じであるので、同一態様部分に同一符号を付して、説明を省略する。また、製造方法についても、実施例1のサーミスタ1の製造方法と同じであるので、説明を省略する。
【0033】
この実施例2のサーミスタ1によれば、前述した実施例1におけるサーミスタ1の作用に加えて、熱処理後の締め付け部材6が第2ガラス封止体5だけでなく第1ガラス封止体4の端部をも締め付けるので、その圧縮応力により第1ガラス封止体4が、第1ガラス封止体4内に配置されているリード線3であって第2ガラス封止体5に近い部分に、密接および圧接される。その結果、リード線3と第1ガラス封止体4との封着をより確実にすることができ、第1ガラス封止体4内への水素侵入の防止をより確実にすることができる。
【0034】
<実施例3>
次に、この発明に係るガラス封止型サーミスタ1の実施例3を図6の図面を参照して説明する。
実施例3のサーミスタ1は、両面に電極を有するサーミスタ素子2と、サーミスタ素子2の各電極に接続され同軸上に配置されて互いに離間する方向へ延びる一対の金属製のリード線3と、サーミスタ素子2および両リード線3においてサーミスタ素子2との接続側の端部を囲繞する円柱状をなすガラス製のガラス封止体9と、ガラス封止体9を囲繞する金属製で円筒状の締め付けリング(締め付け部材)10とを備えている。なお、サーミスタ素子2とリード線3のうちガラス封止体9によって囲繞されている部分は、サーミスタ1のセンサ部11を構成している。したがって、ガラス封止体9はセンサ部11を囲繞している。
【0035】
締め付けリング10の軸方向長さはガラス封止体9の軸方向長さと略同一である。締め付けリング10は、ガラス封止体9を締め上げるように装着されており、締め付けリング10の内周面がガラス封止体9の外周面に圧着している。これにより、ガラス封止体9はリード線3の外周面に隙間なく密接し圧接している。
【0036】
次に、このサーミスタ1の製造方法を説明する。
まず、サーミスタ素子2に2本のリード線3を接続し、これらの周囲に配置したガラス素材を加熱溶融してガラス封止体9を形成することによって、サーミスタ素子2と2本のリード線3の一部とがガラス封止体9によって囲繞されたユニット(以下、センサユニットと称す)を形成しておく。なお、このセンサユニットの形態において、2本のリード線3は同軸上に配置されて互いに離間する方向へ延び、ガラス封止体9から外方へ突出している。
【0037】
次に、ガラス封止体9の外側に締め付けリング10をセットする。なお、締め付けリング10の内径はガラス封止体9の外径とほぼ同径で、ガラス封止体9を挿通可能な大きさに設定されている。
このようにして図6の完成品と同様の配置で組み合わせた後、所定の温度で加熱し、その後、常温まで冷却する。なお、ガラスに内部応力を残さないために、冷却は自然冷却が望ましい。
【0038】
すると、ガラス製のガラス封止体9よりも金属製の締め付けリング10の方が熱膨張係数が大きいことから、この熱膨張係数の違いにより、締め付けリング10の収縮がガラス封止体9よりも大きく、その結果、締め付けリング10はガラス封止体9に圧着し、ガラス封止体9に圧縮応力を付与する。ガラス封止体9に伝わった圧縮応力により、ガラス封止体9はリード線3に密接し圧接される。その結果、リード線3とガラス封止体9とを隙間なく封着することができる。
この製造方法によれば、実施例3のサーミスタ1を容易に製造することができる。
【0039】
このようにして製造された実施例3のサーミスタ1は、(a)サーミスタ素子2とサーミスタ素子2に接続されたリード線3とを有するセンサ部11と、(b)センサ部11を囲繞し所定の熱処理によりリード線と封着されるガラス封止体9と、(c)ガラス封止体9を囲繞し、ガラス封止体9と組み合わせられた後、所定の熱処理を加えられて収縮することでガラス封止体9に対し圧着して圧縮応力を与える金属製の締め付けリング10と、を備えるガラス封止型サーミスタ(請求項1に係るガラス封止型サーミスタ)ということができる。
【0040】
この実施例3のサーミスタ1によれば、締め付けリング10からガラス封止体9に作用する圧縮応力により、ガラス封止体9がリード線3に隙間なく密接し圧接するので、リード線3とガラス封止体9とを隙間なく確実に封着することができる。その結果、温度測定の対象である水素ガスが、ガラス封止体9とリード線3との界面を通ってサーミスタ素子2に向かって侵入することができなくなり、サーミスタ2が還元されなくなる。これにより、サーミスタ素子2の特性が長期に亘って安定するので、ガラス封止型サーミスタの耐久性が向上する。
また、部品点数の増加を締め付けリング10だけの最小限に抑えて、生産装置や相手部品の小型化、コストアップの抑制を図ることができる。
【0041】
さらに、実施例3の変形例として、図7に示すように、一対のリード線3をサーミスタ素子2の一方側(図7において右側)にのみ延在させてセンサ部11を形成してもよい。そのうえで、前記実施例3と同様に、ガラス封止体9と、円筒状の締め付けリング(締め付け部材)10を備えている。この変形例に係るサーミスタ1も実施例3によるものと同様の作用効果が奏される。
【0042】
ところで、実施例1から実施例3およびその変形例のサーミスタ1においては、ガラス封止体の内部応力割れに留意しなければならない。
サーミスタ1において、サーミスタ素子2を囲繞するガラス封止体の熱膨張係数とサーミスタ素子2の熱膨張係数に差があるほど、サーミスタ素子2の内部応力が大きくなることは容易に理解できるところである。
したがって、サーミスタ素子2を囲繞するガラス封止体とサーミスタ素子2の熱膨張係数を可能な限り近付けることが、ガラス封止体の内部応力割れを抑制するための条件の1つとなる。
【0043】
ところで、出願人は、多くの実験を通して、サーミスタ素子2のヤング率が小さいほど、内部の残留応力が小さくなるという特性を知得している。表1および表2に、サーミスタ素子2に対して光弾性を用いた実験により応力測定を行ったときの実験結果の一例を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1と表2は、互いに直交する方向で応力測定をした結果であり、いずれの表も、ヤング率が同一のサンプル群毎に複数のサンプルの応力測定値の平均値をまとめたものである。例えば、サンプルAは、ヤング率が150(GPa)であるサーミスタ素子2であり、表1の0度方向の応力測定ではサンプルAの応力平均値は11.1(MPa)であり、表2の90度方向の応力測定ではサンプルAの応力平均値は7.1(MPa)である。
【0047】
表1および表2から、ガラス封止体のヤング率が小さいほど、内部の残留応力が小さいことがわかる。
したがって、サーミスタ素子2の熱膨張係数が同じ場合には、ヤング率が小さいサーミスタ素子2を選択することが、サーミスタ素子2の内部応力割れを抑制する条件の1つとなる。
【0048】
そこで、前述した実施例1〜3のサーミスタ素子2の製造方法を実施する際には、次の手順でサーミスタ素子2を選定する。
まず初めに、サーミスタ素子2を囲繞するガラス封止体(実施例1,2では第1ガラス封止体4、実施例3ではガラス封止体9)に用いるガラス種を定める。
次に、定めた前記ガラス種の熱膨張係数と略同等となる熱膨張係数を有するサーミスタ素子2を複数選定する。
次に、複数選定されたサーミスタ素子2のうちで最もヤング率の小さいサーミスタ素子2を選択する。
そして、選択されたサーミスタ素子2と前記ガラス封止体を用いて、前述した実施例1〜3のサーミスタ素子2の製造方法を実施する。
この製造方法によれば、ガラス封止体の内部応力割れを回避することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ガラス封止型サーミスタ
2 サーミスタ素子
3 リード線
4 第1ガラス封止体
5 第2ガラス封止体
6 締め付け部材
8 センサ部
9 ガラス封止体
10 締め付けリング(締め付け部材)
11 センサ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7