(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938202
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】電力変換装置用部品
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20160609BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20160609BHJP
H02M 7/155 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
H02M1/08 C
H02M1/08 341A
H02M7/12 X
H02M7/155 D
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-268924(P2011-268924)
(22)【出願日】2011年12月8日
(65)【公開番号】特開2013-121282(P2013-121282A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】金 宏信
(72)【発明者】
【氏名】飛田 正幸
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−519692(JP,A)
【文献】
特開2011−024390(JP,A)
【文献】
特開2000−068297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00− 7/98
H02M 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された4つのスイッチング素子と、
4つの前記スイッチング素子をそれぞれ駆動するための4つの駆動回路と、
正極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続された第1のコンデンサと、
負極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続された第2のコンデンサと、
正極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障時に、前記第2のコンデンサに印加される電圧に基づいて、正極側の2つの前記スイッチング素子を駆動するための2つの前記駆動回路に電源を供給し、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障時に、前記第1のコンデンサに印加される電圧に基づいて、負極側の2つの前記スイッチング素子を駆動するための2つの前記駆動回路に電源を供給する電源供給手段と
を備えたことを特徴とする電力変換装置用部品。
【請求項2】
前記電源供給手段は、
前記第1のコンデンサに印加される電圧を変換する第1の電圧変換手段と、
前記第2のコンデンサに印加される電圧を変換する第2の電圧変換手段と、
前記第1の電圧変換手段又は前記第2の電圧変換手段の少なくとも1つにより変換された電圧に基づいて、4つの前記駆動回路に電源を供給する電源供給回路と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置用部品。
【請求項3】
4つの前記スイッチング素子は、正極側の2つの前記スイッチング素子の接続点が正極側に接続され、負極側の2つの前記スイッチング素子の接続点が負極側に接続され、
4つの前記スイッチング素子のそれぞれの故障を検出する4つの故障検出手段と、
4つの前記故障検出手段により、正極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障を検出した場合、正極側の2つの前記スイッチング素子のうち負極側の前記スイッチング素子をオンにし、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障を検出した場合、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち正極側の前記スイッチング素子をオンにする制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置用部品。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、正極部及び負極部を本体の両面から圧接するような構造であること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置用部品。
【請求項5】
4つのスイッチング素子が直列に接続され、第1のコンデンサが正極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続され、第2のコンデンサが負極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続され、4つの前記スイッチング素子をそれぞれ駆動するための4つの駆動回路が設けられた電力変換装置用部品の電源を供給する電源供給方法であって、
正極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障時に、前記第2のコンデンサに印加される電圧に基づいて、正極側の2つの前記スイッチング素子を駆動するための2つの前記駆動回路に電源を供給し、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障時に、前記第1のコンデンサに印加される電圧に基づいて、負極側の2つの前記スイッチング素子を駆動するための2つの前記駆動回路に電源を供給すること
を特徴とする電力変換装置用部品の電源供給方法。
【請求項6】
4つのスイッチング素子が直列に接続され、第1のコンデンサが正極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続され、第2のコンデンサが負極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続され、4つの前記スイッチング素子をそれぞれ駆動するための4つの駆動回路が設けられた電力変換装置用部品を制御する制御方法であって、
正極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障時に、前記第2のコンデンサに印加される電圧に基づいて、正極側の2つの前記スイッチング素子を駆動するための2つの前記駆動回路に電源を供給し、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障時に、前記第1のコンデンサに印加される電圧に基づいて、負極側の2つの前記スイッチング素子を駆動するための2つの前記駆動回路に電源を供給すること
を特徴とする電力変換装置用部品の制御方法。
【請求項7】
正極側の2つの前記スイッチング素子の接続点が正極側に接続され、負極側の2つの前記スイッチング素子の接続点が負極側に接続され、
4つの前記スイッチング素子のそれぞれの故障を検出し、
正極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障を検出した場合、正極側の2つの前記スイッチング素子のうち負極側の前記スイッチング素子をオンにし、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障を検出した場合、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち正極側の前記スイッチング素子をオンにすること
を特徴とする請求項6に記載の電力変換装置用部品の制御方法。
【請求項8】
正極側の2つのスイッチング素子の接続点が正極側に接続され、負極側の2つのスイッチング素子の接続点が負極側に接続され、直列に接続された4つのスイッチング素子と、
4つの前記スイッチング素子をそれぞれ駆動するための4つの駆動回路と、
正極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続された第1のコンデンサと、
負極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続された第2のコンデンサと、
前記第1のコンデンサ又は前記第2のコンデンサの少なくとも1つに印加される電圧に基づいて、4つの前記駆動回路に電源を供給する電源供給手段と、
4つの前記スイッチング素子のそれぞれの故障を検出する4つの故障検出手段と、
4つの前記故障検出手段により、正極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障を検出した場合、正極側の2つの前記スイッチング素子のうち負極側の前記スイッチング素子をオンにし、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障を検出した場合、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち正極側の前記スイッチング素子をオンにする制御手段と
を備えたことを特徴とする電力変換装置用部品。
【請求項9】
4つのスイッチング素子が直列に接続され、正極側の2つの前記スイッチング素子の接続点が正極側に接続され、負極側の2つの前記スイッチング素子の接続点が負極側に接続され、第1のコンデンサが正極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続され、第2のコンデンサが負極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続され、4つの前記スイッチング素子をそれぞれ駆動するための4つの駆動回路が設けられた電力変換装置用部品を制御する制御方法であって、
前記第1のコンデンサ又は前記第2のコンデンサの少なくとも1つに印加される電圧に基づいて、4つの前記駆動回路に電源を供給し、
4つの前記スイッチング素子のそれぞれの故障を検出し、
正極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障を検出した場合、正極側の2つの前記スイッチング素子のうち負極側の前記スイッチング素子をオンにし、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障を検出した場合、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち正極側の前記スイッチング素子をオンにすること
を特徴とする電力変換装置用部品の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に用いる部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力変換装置の回路として、MMC(modular multilevel converter)回路が知られている。MMC回路は、複数の単位モジュールが直列に接続される構成であるため、MMC回路に印加される直流電力は高電圧になる。このため、この高電圧の直流電力を、制御電源として各単位モジュールに直接供給することは困難である。そこで、各単位モジュールで、制御電源を作る主回路給電方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、単位モジュールは、IGBT(insulated gate bipolar transistor)などのスイッチング素子で構成されている。スイッチング素子が故障した場合、電力変換装置の運転を継続するためには、スイッチング素子が故障した単位モジュールの端子間を短絡する必要がある。そこで、単位モジュールの出力間に機械スイッチを設け、スイッチング素子が故障した場合に、この機械スイッチを投入する回路が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−519692号公報
【特許文献2】特開2011−193615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、主回路給電方式の単位モジュール(電力変換装置用部品)で、スイッチング素子が故障した場合に、単位モジュール内の制御電源の供給を継続することについて考慮されたものは知られていない。このため、スイッチング素子が故障しても、このような単位モジュールは、制御電源が作り出せない。このため、制御電源が落ちることにより、スイッチング素子による故障に対応する動作ができない。従って、故障した単位モジュールを切り離すために機械スイッチが必要となる。しかし、このように機械スイッチを設けた場合、単位モジュールの大型化又はコストの増大を招く。
【0006】
そこで、本発明の目的は、複数のスイッチング素子が直列に接続された回路を備え、スイッチング素子が故障しても制御電源の供給を継続することのできる電力変換装置用部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点に従った電力変換装置用部品は、直列に接続された4つのスイッチング素子と、4つの前記スイッチング素子をそれぞれ駆動するための4つの駆動回路と、正極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続された第1のコンデンサと、負極側の2つの前記スイッチング素子と並列に接続された第2のコンデンサと、
正極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障時に、前記第2のコンデンサに印加される電圧に基づいて、正極側の2つの前記スイッチング素子を駆動するための2つの前記駆動回路に電源を供給し、負極側の2つの前記スイッチング素子のうち少なくとも1つの故障時に、前記第1のコンデンサに印加される電圧に基づいて、負極側の2つの前記スイッチング素子を駆動するための2つの前記駆動回路に電源を供給する電源供給手段とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のスイッチング素子が直列に接続された回路を備え、スイッチング素子が故障しても制御電源の供給を継続することのできる電力変換装置用部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る単位モジュールの構成を示す構成図。
【
図2】実施形態に係る単位モジュールを用いた電力変換装置の構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る単位モジュール1の構成を示す構成図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
【0012】
単位モジュール1は、電力変換装置に用いられる部品である。電力変換装置は、上位制御装置20により制御される。
【0013】
単位モジュール1は、4つのスイッチング素子2a,2b,2c,2dと、4つの還流ダイオード3a,3b,3c,3dと、4つの駆動回路4a,4b,4c,4dと、4つの故障検出回路5a,5b,5c,5dと、2つのコンデンサ6a,6bと、主回路給電回路7a,7bと、モジュール内電源8と、素子制御回路9とを備えている。
【0014】
4つのスイッチング素子2a〜2dは、直列に接続されている。スイッチング素子2aは、最も正極側に位置している。スイッチング素子2bは、2番目に正極側に位置している。スイッチング素子2cは、2番目に負極側に位置している。スイッチング素子2dは、最も負極側に位置している。従って、スイッチング素子2a及びスイッチング素子2dは、外側に位置する外側素子である。スイッチング素子2b及びスイッチング素子2cは、内側に位置する内側素子である。スイッチング素子2a〜2dは、圧接型(平型)パッケージのIGBTである。
【0015】
ここで、圧接型パッケージは、配線など(例えば、ワイヤーボンディング)を使わずに、2つの電極板をスイッチング素子本体の両面から圧接するような構造になっている。従って、圧接型パッケージのスイッチング素子は、スイッチング素子の内部で損傷が生じると、電極間が短絡した状態になる。
【0016】
正極側に設けられた2つのスイッチング素子2a,2bの接続点は、正極側に設けられた他の単位モジュール1の負極側と接続される。負極側に設けられた2つのスイッチング素子2c,2dの接続点は、負極側に設けられた他の単位モジュール1の正極側と接続される。
【0017】
4つの還流ダイオード3a〜3dは、それぞれ4つのスイッチング素子2a〜2dと逆並列に接続されている。
【0018】
4つの駆動回路4a〜4dは、それぞれ4つのスイッチング素子2a〜2dに対応して設けられている。駆動回路4a〜4dは、対応するスイッチング素子2a〜2dをオン・オフするための回路である。
【0019】
4つの故障検出回路5a〜5dは、それぞれ4つのスイッチング素子2a〜2dに対応して設けられている。故障検出回路5a〜5dは、対応するスイッチング素子2a〜2dの故障を検出するための回路である。なお、故障検出回路5a〜5dは、スイッチング素子2a〜2dの故障をどのように検出してもよい。例えば、故障検出回路5a〜5dは、スイッチング素子2a〜2dの電圧又は電流に基づいて故障を検出する。
【0020】
コンデンサ6aは、正極側に位置する直列接続された2つのスイッチング素子2a,2bの両端に接続されている。コンデンサ6bは、負極側に位置する直列接続された2つのスイッチング素子2c,2dの両端に接続されている。
【0021】
2つの主回路給電回路7a,7bは、それぞれコンデンサ6a,6bの両端子と接続されている。主回路給電回路7a,7bは、コンデンサ6a,6bに印加される直流の高電圧をモジュール内電源8に供給するための低電圧に一定に制御する。
【0022】
モジュール内電源8は、2つの主回路給電回路7a,7bから供給される電力を4つの駆動回路4a〜4d及び素子制御回路9に電源として供給するための電力に変換する。モジュール内電源8は、変換した電力を4つの駆動回路4a〜4dに供給する。モジュール内電源8は、変圧器などを介して駆動回路4a〜4dに電力を供給することで、4つの駆動回路4a〜4dの互いの絶縁を確保する。
【0023】
素子制御回路9は、4つのスイッチング素子2a〜2dを駆動するための制御をする。素子制御回路9は、上位制御装置20から受信する光信号に基づいて、スイッチング素子2a〜2dに対応する駆動回路4a〜4dにそれぞれ駆動信号を送信することで、スイッチング素子2a〜2dの駆動を制御する。スイッチング素子2a〜2dは、駆動信号に応じて、オン又はオフされる。素子制御回路9は、故障検出回路5a〜5dにより検出された故障信号に基づいて、故障に対応するようにスイッチング素子2a〜2dの駆動を制御する。
【0024】
次に、スイッチング素子2a〜2dが故障した場合における素子制御回路9の制御による単位モジュール1の動作について説明する。
【0025】
今、スイッチング素子2aが破損したとする。スイッチング素子2aは、圧接型パッケージの構造であるため、端子間が短絡された状態になる。
【0026】
しかし、スイッチング素子2aの破損により、隣接するスイッチング素子2bに短絡電流が流れても、スイッチング素子2bが必ずしも破損するとは限らない。
【0027】
そこで、素子制御回路9は、スイッチング素子2aが故障したことを検出すると、スイッチング素子2bを常時オンにするための駆動信号を出力する。これにより、正極側に隣接する単位モジュール1から流入する電流は、スイッチング素子2bに流れる。スイッチング素子2bに流れた電流は、オン時のスイッチング素子2cを流れて、負極側に隣接する単位モジュール1に流れる。同様に、素子制御回路9は、スイッチング素子2dが故障したことを検出すると、スイッチング素子2cを常時オンにするための駆動信号を出力する。
【0028】
即ち、素子制御回路9は、外側に位置するスイッチング素子2a,2dの故障を検出すると、その故障したスイッチング素子2a,2dと接続されている内側に位置するスイッチング素子2b,2cを常時オンにするための駆動信号を出力する。
【0029】
また、素子制御回路9は、内側に位置するスイッチング素子2b,2cの故障を検出した場合も、その故障したスイッチング素子2b,2cを常時オンにするための駆動信号を出力する。これにより、故障した内側に位置するスイッチング素子2b,2cを確実に短絡状態にすることができる。
【0030】
図2は、本実施形態に係る単位モジュール1を用いた電力変換装置30の構成を示す構成図である。
【0031】
電力変換装置30は、6つのアーム21up,21um,21vp,21vm,21wp,21wmと、6つのバッファリアクトル22up,22um,22vp,22vm,22wp,22wmと、直流電源23とを備えている。
【0032】
電力変換装置30の交流側は、変圧器24を介して、交流電力系統と接続されている。電力変換装置30の直流側は、直流電源23と接続されている。電力変換装置30は、直流電源23から供給される直流電力を三相交流電力に変換する。
【0033】
各アーム21up〜21wmは、複数の単位モジュール1が直列に接続された構成である。U相正極側アーム21upとU相負極側アーム21umは、三相交流のU相についての構成である。V相正極側アーム21vpとV相負極側アーム21vmは、三相交流のV相についての構成である。W相正極側アーム21wpとW相負極側アーム21wmは、三相交流のW相についての構成である。
【0034】
各アーム21up〜21wmを構成する単位モジュール1は、シリアル通信方式で接続されている。シリアル通信方式は、各単位モジュール1を光ファイバーでシリアルに接続する。上位制御装置20は、光ファイバーに複数の単位モジュール1の信号を乗せて送信する。各単位モジュール1は、受信した信号から自己に必要な信号を取り込む。
【0035】
バッファリアクトル22up〜22wmは、電力変換装置30の回路に一定の直流電流を流すためのインピーダンスである。
【0036】
U相正極側バッファリアクトル22upとU相負極側バッファリアクトル22umは、直列に接続されている。U相正極側バッファリアクトル22upとU相負極側バッファリアクトル22umとの接続点は、三相交流のU相と接続される。U相正極側バッファリアクトル22upの正極側には、U相正極側アーム21upが接続されている。U相負極側バッファリアクトル22umの負極側には、U相負極側アーム21umが接続されている。
【0037】
V相正極側バッファリアクトル22vpとV相負極側バッファリアクトル22vmは、直列に接続されている。V相正極側バッファリアクトル22vpとV相負極側バッファリアクトル22vmとの接続点は、三相交流のV相と接続される。V相正極側バッファリアクトル22vpの正極側には、V相正極側アーム21vpが接続されている。V相負極側バッファリアクトル22vmの負極側には、V相負極側アーム21vmが接続されている。
【0038】
W相正極側バッファリアクトル22wpとW相負極側バッファリアクトル22wmは、直列に接続されている。W相正極側バッファリアクトル22wpとW相負極側バッファリアクトル22wmとの接続点は、三相交流のW相と接続される。W相正極側バッファリアクトル22wpの正極側には、W相正極側アーム21wpが接続されている。W相負極側バッファリアクトル22wmの負極側には、W相負極側アーム21wmが接続されている。
【0039】
本実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0040】
単位モジュール1には、2つの主回路給電回路7a,7bを設けている。2つの主回路給電回路7a,7bは、別々の2つのコンデンサ6a,6bに印加される電圧により、モジュール内電源8に電力を供給する。2つのコンデンサ6a,6bは、異なる2組の直列接続された2つのスイッチング素子2a〜2dにそれぞれ設けられている。
【0041】
従って、正極側のコンデンサ6aが設けられている2つのスイッチング素子2a,2bが故障しても、負極側のコンデンサ6bが設けられている2つのスイッチング素子2c,2dが正常であれば、主回路給電回路7bからモジュール内電源8に電力供給することができる。これにより、モジュール内電源8は、駆動回路4a〜4d及び素子制御回路9に制御電源の供給を継続することができる。同様に、負極側のコンデンサ6bが設けられている2つのスイッチング素子2c,2dが故障しても、モジュール内電源8は、駆動回路4a〜4d及び素子制御回路9に制御電源の供給を継続することができる。即ち、単位モジュール1は、一部のスイッチング素子2a〜2dが故障しても、単位モジュール1内の回路の制御電源をモジュール内電源8により確保することができる。従って、単位モジュール1は、内部の制御電源の冗長性が高い構成とすることができる。
【0042】
また、スイッチング素子2a〜2dを圧接型パッケージにすることで、素子制御回路9の制御によらずに、スイッチング素子2a〜2dの故障時に端子間が短絡状態になる。これにより、スイッチング素子2a〜2dの故障時に、素子制御回路9による故障時の制御によらずに、電力変換装置30の運転が継続できる。
【0043】
さらに、単位モジュール1では、一部のスイッチング素子が故障しても、制御電源の供給を継続することができる。このため、単位モジュール1の端子間に、故障した場合に電力変換回路から自身を切り離すための機械スイッチなどを設ける必要がない。従って、単位モジュール1の小型化又は低コスト化を図ることができる。
【0044】
なお、実施形態では、故障検出回路5a〜5dを駆動回路4a〜4dの外部に設ける構成としたが、駆動回路4a〜4dの内部に設けてもよい。また、この場合に、駆動回路4a〜4dの一機能として故障検出回路5a〜5dと同等の機能を有するのであれば、ハードウェアとして分離されていなくてもよい。
【0045】
また、実施形態では、スイッチング素子2a〜2dは、圧接型パッケージとしたが、端子型パッケージ又はモジュール型パッケージなど、どのような構造でもよい。素子制御回路9に、上述したスイッチング素子2a〜2dの故障に対応する機能を設けることで、圧接型以外のパッケージでも、電力変換装置の運転を継続させることができる。
【0046】
さらに、実施形態では、単位モジュール1を用いた電力変換装置30は、直流電力を交流電力に変換する構成としたが、交流電力を直流電力に変換する構成としてもよいし、直流電力と交流電力を相互に変換する構成としてもよい。また、電力変換装置30は、単相交流電力と直流電力との変換をする構成としてもよい。この場合、
図2に示す電力変換装置30の構成から1相分のアーム及びバッファリアクトルを取り除くことで、単相交流電力と直流電力との変換をする構成とすることができる。
【0047】
また、実施形態では、主回路給電回路7a,7b及びモジュール内電源8を別々の構成としたが、一体化させた構成としてもよい。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…単位モジュール、2a,2b,2c,2d…スイッチング素子、3a,3b,3c,3d…還流ダイオード、4a,4b,4c,4d…駆動回路、5a,5b,5c,5d…故障検出回路、6a,6b…コンデンサ、7a,7b…主回路給電回路、8…モジュール内電源、9…素子制御回路、20…上位制御装置、21up,21um,21vp,21vm,21wp,21wm…アーム、22up,22um,22vp,22vm,22wp,22wm…バッファリアクトル、23…直流電源、24…変圧器、30…電力変換装置。