特許第5938204号(P5938204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938204
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】車両用前照灯装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20160609BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160609BHJP
【FI】
   F21S8/12 291
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-279682(P2011-279682)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-131372(P2013-131372A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116182
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 照雄
(72)【発明者】
【氏名】永縄 祐仁
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−048948(JP,A)
【文献】 特開2007−287610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10−8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の光源と、
2の光源と、
前記第1の光源から出射された光を反射するリフレクタと、
前記リフレクタに反射された光を通過させることにより第1の領域に光を照射し、前記第2の光源から出射された光を直接通過させることにより前記第1の領域の上側を含む第2の領域に光を照射する投射レンズと、
前記第1の光源から出射された光の一部と前記第2の光源から出射された光の一部を共通の端縁により遮蔽して前記第1の領域と前記第2の領域が重なる領域にカットオフラインを形成するシェードと、
を備えている、
車両用前照灯装置。
【請求項2】
1の光源と、
2の光源と、
前記第1の光源から出射された光を反射するリフレクタと、
前記リフレクタに反射された光を通過させることにより第1の領域に光を照射し、前記第2の光源から出射された光を直接通過させることにより前記第1の領域の上側を含む第2の領域に光を照射する投射レンズと、
第1の位置と第2の位置との間で変位可能であるシェードと、
を備えており、
前記第1位置において、前記シェードは、前記第1の光源から出射された光の一部と前記第2の光源から出射された光の一部を共通の端縁により遮蔽し、
前記第2位置において、前記シェードは、前記第1の光源から出射された光と前記第2の光源から出射された光を遮蔽しない、
車両用前照灯装置。
【請求項3】
前記第2の光源は、それぞれが前記第2の領域に含まれる複数の部分領域の一つに光を照射する複数の発光素子を備えており、
前記複数の発光素子による光の照射を選択的に制御して前記第2の領域内に所定の照射領域を形成する制御手段を備えている、
請求項1または2に記載の車両用前照灯装置。
【請求項4】
前記第1の光源は、少なくとも1つの発光素子である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用前照灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の前照灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、ロービーム照射用の光源とハイビーム照射用の光源を一つの灯具ユニット内に配置し、共通の投射レンズを通じて照射させる構成としたものが知られている(例えば特許文献1参照)。ロービーム照射用光源から出射された光は、前方に配置されたシェードを通過することにより一部が遮られ、カットオフラインを有するロービーム配光パターンが形成される。ハイビーム照射用の光源はシェードの近傍に配置されており、点灯されることによりカットオフラインから上方のみを照射するように構成されている。ハイビーム配光パターンは、ロービーム配光パターンにハイビーム照射用の光源により照射される領域が付加されたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロービーム照射用の光源としては単一の光源が用いられることが多く、ロービーム配光パターン内は一様に照射されることとなる。しかしながら前走車のグレアを防止しつつ前方視認性をより高めるために、ロービーム配光パターン内のカットオフライン近傍(直下)をより明るく照射したいという要望がある。
【0005】
上記の要望に対する方策としては、ロービーム配光パターンを形成するために点灯している光源に加え、カットオフライン近傍のみを選択的に照射する光源を付加することが考えられる。またはロービームの照射レンジ内をマトリクス状に分割して得られる複数の部分領域をそれぞれ照射可能な複数の発光素子(例えば発光ダイオードアレイ)で光源を構成し、カットオフライン近傍のみの照度を高めるように対応する発光素子を調光制御することが考えられる。しかしながらいずれの方策も部品コストや制御負荷の上昇を避けることができない。
【0006】
よって本発明は、部品コストや制御負荷の上昇を伴うことなく、ロービーム配光パターン内におけるカットオフライン近傍をより明るく照射することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採りうる一態様は、車両用前照灯装置であって、
投射レンズと、
ロービーム配光パターンのカットオフラインの下側を含む第1の領域を前記投射レンズを通じて照射する第1の光源と、
前記カットオフラインの上側を含む第2の領域を前記投射レンズを通じて照射する第2の光源と、
前記第2の光源から出射された光の一部を遮蔽して前記第2の領域に形成される遮光領域の下端縁を規定するとともに、移動可能とされたシェードと、
前記遮光領域の下端縁が前記第2の領域内で上下方向に移動するように前記シェードの位置を制御する制御手段とを備え、
所定の位置に配置された前記シェードにより規定される前記遮光領域の前記下端縁が、前記第1の領域と前記第2の領域が重なる領域において前記カットオフラインを形成する。
【0008】
このような構成によれば、遮光領域の下端縁すなわちカットオフラインの下方の一部を第1の光源と第2の光源とで照射できる。そのためロービーム配光パターン内のカットオフライン近傍をより明るく照射することができ、前方視認性が向上する。一方でハイビーム照射領域における照射不要部分はシェードにより遮光領域とされるため、第2の光源の発光が前走車や歩行者にグレアを与えることはない。
【0009】
前記第2の光源は、それぞれが前記第2の領域に含まれる複数の部分領域の一つを照射する複数の発光素子を備えており、前記制御手段は、前記複数の発光素子による光の照射を制御して前記第2の領域内に所定の照射領域を形成する構成としてもよい。
【0010】
このような構成によれば、遮光領域に含まれる部分領域に対応する発光素子を消灯させることにより、消費電力を最小限に抑えることができる。またカットオフラインの下方でロービームと重複して照射する領域を選択したり移動したりすることができる。
【0011】
前記第1の光源を少なくとも1つの発光素子とすれば、前照灯装置の小型化・軽量化や省電力化が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品コストや制御負荷の上昇を伴うことなく、ロービーム配光パターン内におけるカットオフライン近傍をより明るく照射することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る前照灯装置の構成を示す部分断面図である。
図2図1の前照灯装置における灯具ユニットを構成する要素間の位置関係を模式的に示す図である。
図3図2の灯具ユニットにおける第2光源ユニットの構成を模式的に示す図である。
図4図1の前照灯装置より照射される光によって形成される配光パターンを模式的に示す図である。
図5図1の前照灯装置による調光制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照しつつ本発明について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
本発明の一実施形態に係る前照灯装置12の一部を垂直面で切断して左側方から見た構成を図1に示す。前照灯装置12は、車両の前部右寄りに配置される右前照灯ユニットの一部を構成し、ランプボディ23、透光カバー24、および灯具ユニット30を備えている。
【0016】
透光カバー24は透光性を有する樹脂等によって形成されている。透光カバー24は、ランプボディ23の前端に装着されて灯具ユニット30が収容される灯室を形成している。
【0017】
灯具ユニット30は、投射レンズ32、ホルダ36、姿勢調節機構37、第1光源ユニット40、第2光源ユニット50、シェード機構60、および制御部70を備えている。
【0018】
灯具ユニット30は、いわゆるプロジェクタ型の灯具ユニットであり、第1光源ユニット40と第2光源ユニット50のそれぞれから出射された光を共通の投射レンズ32を通じて車両の前方へ投射するものである。
【0019】
ホルダ36は熱伝導性の高い金属等の材料から成り、上面36aに第1光源ユニット40を、前面36bに第2光源ユニット50を支持している。ホルダ36の前面36bからはアーム36cが前方に延在しており、その前端部に投射レンズ32が支持されている。
【0020】
ホルダ36の後部にはフランジ36dが形成されており、その後方には放熱フィン36eが設けられている。放熱フィン36eは、第1光源ユニット40および第2光源ユニット50から発生する熱を効率よく逃がすための適宜の形状および配置とされている。
【0021】
灯具ユニット30は、姿勢調節機構37を介してランプボディ23に固定されている。姿勢調節機構37はボルト部材37aとナット部材37bを備えており、ボルト部材37aの後端部はランプボディ23にねじ止め固定されている。ボルト部材37aの前端部はナット部材37aを介してホルダ36のフランジ36dに固定されている。複数箇所に設けられた姿勢調節機構37においてナット部材37bのボルト部材37aに対する螺合位置を調節することにより、灯具ユニット30の灯室内における姿勢を調整することができる。
【0022】
シェード機構60は、シェード61、支持部材62、および駆動機構63を備えている。シェード61は、支持部材62を介して駆動機構63が備える回動軸63aに支持されている。
【0023】
制御部70は、制御線43、53、および73を介して、それぞれ第1光源ユニット40、第2光源ユニット50、およびシェード機構60と通信可能に接続されている。
【0024】
また制御部70は、車両が備える統合制御部と通信可能に接続されている。統合制御部は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM等を備え、車両における様々な制御を実行するものである。
【0025】
制御部70は本発明における制御手段の少なくとも一部として機能するものであり、その少なくとも一部は、コンピュータのプロセッサやメモリをはじめとする素子や機械装置、電気回路といったハードウェアで構成され、またはコンピュータプログラム等のソフトウェアで構成される。制御部70がハードウェアとソフトウェアの組合せにより構成されうることは勿論である。
【0026】
図2の(a)は、灯具ユニット30を構成する各要素間の位置関係を模式的に示す図である。符号Axは、車両の前後方向に延びる灯具ユニット30の光軸を示している。
【0027】
第1光源ユニット40は、基板41上に実装された光源42、およびリフレクタ44を備えている。本実施形態においては、光源41として発光素子としての白色LED(発光ダイオード)を用いている。
【0028】
リフレクタ44は、光軸Axを中心軸とする略楕円球面状の反射面を有している。光源42は反射面の鉛直断面を構成する楕円の第1焦点に配置されており、これにより光源42からの光が上記楕円の第2焦点Fに収束するようになっている。
【0029】
投射レンズ32は前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであり、光軸Ax上に配置されている。投射レンズ32は、後側焦点がリフレクタ44の反射面の第2焦点Fに一致するように配置されており、後側焦点上の像を鉛直仮想スクリーン上に反転像として投射するように構成されている。
【0030】
光源42は制御線43を介して制御部70との間に電流回路を形成している。制御部70は、制御線43を通じて光源42への電流を供給し、または遮断することによって、光源42の点消灯を制御する。
【0031】
第2光源ユニット50は、基板51上に実装された下側発光素子アレイ52Lおよび上側発光素子アレイ52Uを備えている。第2光源ユニット50を車両前方から見た構成を図3に模式的に示す。
【0032】
下側発光素子アレイ52Lは、車両右側から左側に向かって配列された第1下側発光素子52L−1〜第13下側発光素子52L−13を備えている。上側発光素子アレイ52Uは、車両右側から左側に向かって配列された第1上側発光素子52U−1〜第13上側発光素子52U−13を備えている。以降の説明においては、第1下側発光素子52L−1〜第13下側発光素子52L−13および第1上側発光素子52U−1〜第13上側発光素子52U−13を、必要に応じて「発光素子52」と総称する。
【0033】
各発光素子は、同一の高さと同一の幅を有する直方体状に形成されている。図示は省略しているが、各発光素子は光源および薄膜を有している。光源は1mm角程度の発光面を有する白色LED(発光ダイオード)であり、薄膜はこの発光面を覆うように設けられている。
【0034】
図3においては各発光素子に番号を記し、第1下側発光素子52L−1、第13下側発光素子52L−13、第1上側発光素子52U−1、第13上側発光素子52U−13以外の発光素子については参照番号の表示を省略している。例えば下側発光素子アレイ52Lにおいて番号7が記された発光素子は、第7下側発光素子52L−7を意味し、上側発光素子アレイ52Uにおいて番号12が記された発光素子は、第12上側発光素子52U−12を意味している。
【0035】
各発光素子は制御線53を介して制御部70との間に電流回路を形成している。図3においては、第1下側発光素子52L−1、第13下側発光素子52L−13、第1上側発光素子52U−1、第13上側発光素子52U−13以外の発光素子については制御線53の図示を省略している。制御部70は、制御線53を通じて供給される電流の量を調整することにより、各発光素子の点消灯および点灯時における光度を制御することができる。
【0036】
シェード機構60のシェード61は、第2光源ユニット50の前方に配置されている。制御部70が制御線73を通じて駆動機構63の動作を制御することにより、図2の(a)に実線で示す上端位置P1と二点鎖線で示す下端位置P2との間で移動可能とされている。
【0037】
シェード61が上端位置P1に位置する場合、第2光源ユニット50から出射された光の一部のみが前方に通過可能とされる。シェード61が下端位置P2に位置する場合、第2光源ユニット50から出射された光は全て投射レンズ32への通過を許容される。
【0038】
図2の(b)は、シェード61の上端部を車両の前方から見た構成を示す図である。シェード61は、第1水平上端面61a、第2水平上端面61b、および傾斜上端面61cを備えている。第1水平上端面61aは、鉛直線V−Vの車幅方向右側(図の左側)において水平線H−Hに沿って延在している。第2水平上端面61bは、鉛直線V−Vの車幅方向左側(図の右側)において水平線H−Hのやや上方において水平に延在している。傾斜上端面61cは、第1水平上端面61aと第2水平上端面61bを接続するように傾斜して延在している。傾斜上端部61cの傾斜角は、例えば45度である。
【0039】
車両前部の左寄りに配置される左前照灯ユニットは、右前照灯ユニットと左右対称に構成されており、詳細な説明は省略する。なお灯具ユニット30におけるシェード61の形状、および第2光源ユニット50における下側発光素子アレイ52Lと上側発光素子アレイ52Uの配列は左右対称でなく、左右の前照灯ユニットで同一の構成となる。
【0040】
シェード61が上端位置P1に位置する場合、第1光源ユニット40の光源42から出射された光の一部はシェード61の上端部により遮光され、図4の(a)に符号PLで示すロービーム配光パターンを車両前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成する。
【0041】
ロービーム配光パターンPLは、左右の前照灯ユニットの第1光源ユニット40からの照射光の合成によって形成される。ロービーム配光パターンPLは左側配光パターン(車両が左車線を走行することを義務付けられている地域において使用)であり、その上端縁に第1カットオフラインCL1、第2カットオフラインCL2、および第3カットオフラインCL3を有している。第1カットオフラインCL1と第2カットオフラインCL2は、鉛直線V−Vを境にして左右段違いで水平方向に延在している。以降の説明においては、必要に応じて第1〜3カットオフラインCL1〜CL3を「カットオフラインCL」と総称する。
【0042】
第1カットオフラインCL1は、シェード61の第1水平上端面61aにより形成されて水平線H−Hに沿って延在しており、自車線側カットオフラインとして利用される。第2カットオフラインCL2は、シェード61の第2水平上端面61bにより形成されて水平線H−Hのやや下方において水平に延在しており、対向車線側カットオフラインとして利用される。第3カットオフラインCL3は、シェード61の傾斜上端面61cにより形成される。第1カットオフラインCL1の右端部から右下方に向かって斜めに延在し、第2カットオフラインCL2の左端部に接続している。
【0043】
シェード61が下端位置P2に位置する場合、第2光源ユニット50から出射される光はシェード61により遮られることがないため、図4の(a)に符号PAで示される付加配光パターンが、ロービーム配光パターンPLに加えて形成される。
【0044】
付加配光パターンPAは、左右の前照灯ユニットの第2光源ユニット50が備える全ての発光素子52からの照射光によって形成される配光パターンとして定義される。付加配光パターンPAは水平線(H−H線)を含み、下端が第1カットオフラインCL1上に位置するよう水平方向に延在する帯状に形成される。
【0045】
図4の(b)に付加配光パターンPAと、下側発光素子アレイ52Lおよび上側発光素子アレイ52Uの関係を示す。この例では、付加配光パターンPAは各々略同一の形状と面積を有する26個の部分領域に分割されており、上側部分領域U1〜U13と下側部分領域L1〜L13とを含んでいる。下側部分領域L1〜L13はH−H線近傍に位置し、上側部分領域U1〜U13はその上方に位置している。
【0046】
下側部分領域L1は、右前照灯ユニットの第1下側発光素子52L−1および左前照灯ユニットの第1下側発光素子52L−1を光源像とした投影像の合成として形成される。換言すると、これらの発光素子からの照射光の合成によって形成される。他の部分領域についても同様に、左右の前照灯ユニットの対応する発光素子からの照射光の合成によって形成される。
【0047】
例えば下側部分領域L9は、左右の第9下側発光素子52L−9からの照射光の合成によって形成される。また上側部分領域U11は、左右の第11上側発光素子52U−11からの照射光の合成によって形成される。各発光素子からの照射光は投影レンズ32を通過するため、部分領域の配列と図3に示した発光素子の配列とは上下左右が逆転している。
【0048】
制御部70は、各発光素子52への電流供給・遮断を選択的に行なうことにより、各部分領域を選択的に照射領域または非照射領域とすることができる。例えば付加配光パターンPA内に前走車が検出された場合など、当該前走車が位置する部分領域を選択的に非照射領域とすることにより、前方視認性を確保しつつ前走車に与えるグレアを抑制することができる。
【0049】
すなわち第1光源ユニット40の光源42は、本発明の第1の光源として機能し、ロービーム配光パターンPLのカットオフラインCLの下側を含む第1の領域を投射レンズ32を通じて照射する。また第2光源ユニット50の発光素子52は、本発明の第2の光源として機能し、カットオフラインCLの上側を含む第2の領域を投射レンズ32を通じて照射する。
【0050】
図5の(a)は、シェード61と上側発光素子アレイ52Uおよび下側発光素子アレイ52Lの位置関係を車両前方から見た図である。
【0051】
車両の統合制御部よりハイビーム照射を指示する信号が入力されると、制御部70はシェード機構60の駆動機構63を制御し、シェード61を図2の(a)に示す下端位置P2に移動させる。これにより図5の(a)に示すように、上側発光素子アレイ52Uおよび下側発光素子アレイ52Lに対する遮光状態が解除される。一方制御部70は、第2光源ユニット50が備える複数の発光素子52による光の照射を制御し、付加配光パターンPAに含まれる複数の部分領域U1〜U13、L1〜L13の少なくとも一つを選択的に照射領域とする。
【0052】
車両の統合制御部よりロービーム照射を指示する信号が入力されると、制御部70はシェード機構60の駆動機構63を制御し、シェード61を図2の(a)に示す上端位置P1に移動させる。このとき図5の(a)に示すように、上側発光素子アレイ52Uは完全にシェード61により覆われる。下側発光素子アレイ52Lについては、第8下側発光素子52−8〜第13下側発光素子52−13がシェード61により完全に覆われる。第1下側発光素子52−1〜第7下側発光素子52−7は、シェード61の第1水平上端面61aおよび傾斜上端面61cによりそれらの一部のみが覆われる。
【0053】
この結果、図5の(b)に示すように、付加配光パターンPAの一部を覆うように遮光領域Sが形成される。上側部分領域U1〜U13および下側部分領域U8〜U13は完全に遮光領域Sに含まれる。下側部分領域U1〜U7については、第1水平上端面61aおよび傾斜上端面61cにより形成される第1カットオフラインCL1および第3カットオフラインCL3の上方に位置する部分のみが遮光領域Sに含まれる。
【0054】
すなわちシェード61は、発光素子52から出射された光の一部を遮蔽して付加配光パターンPA内に形成される遮光領域Sの下端縁を規定している。制御部70は、シェード61の位置を制御することにより、付加配光パターンPA内で遮光領域の下端縁を上下方向に移動させている。
【0055】
図4の(a)に示すように、本実施形態においては、第1光源ユニット40の光源42により照射される領域と、第2光源ユニット50の発光素子52により照射される領域の一部が重なるように構成されている。そしてシェード61が所定の位置としての上端位置P1に配置されたとき、シェード61により形成される遮光領域Sの下端縁が、当該重なる領域においてカットオフラインCLを形成するように構成されている。
【0056】
したがって下側部分領域L1〜L7の一部は、第1カットオフラインCL1および第3カットオフラインCL3の下方にてロービーム配光パターンPLと重なる照射領域となる。これによりロービーム配光パターンPL内において自車線側のカットオフラインCL近傍をより明るく照射することができ、当該領域の前方視認性が向上する。一方、ハイビーム照射領域における不要な部分はシェード61により遮光領域Sとされているため、第2光源ユニット50の発光素子52の発光が前走車や歩行者にグレアを与えることはない。
【0057】
また第2光源ユニット50を構成する複数の発光素子52は選択的な点消灯が可能であるため、遮光領域Sに含まれる部分領域(図5の(b)の例では、上側部分領域U1〜U13と下側部分領域L8〜L13)に対応する発光素子52を消灯させることにより、消費電力を最小限に抑えることができる。
【0058】
ロービーム配光パターンPL内に含まれている付加配光パターンPAの部分領域に対応する発光素子52を選択的に点消灯することにより、第1カットオフラインCL1および第3カットオフラインCL3の下方において照射領域の位置をさらに選択したり移動したりすることもできる。
【0059】
ロービーム照射状態とハイビーム照射状態の切替は、制御部70によるシェード61の上端位置P1と下端位置P2間の位置移動のみによりなされうるため、制御負荷の上昇を最小限に抑えることができる。またロービーム照射用の光源42には従来の汎用品を用いることができるため、部品コストの上昇も最小限に抑えることができる。
【0060】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0061】
シェード61の第2水平上端面61bは、必ずしも対向する下側発光素子アレイ52Lの発光素子を完全に覆うことを要しない。第1水平上端面61aおよび傾斜上端面61cのように、対向する下側発光素子アレイ52Lの発光素子の一部を覆う構成とすることにより、ロービーム配光パターンPL内における対向車線側のカットオフラインCL2の下方もより明るく照射することができる。
【0062】
第1光源ユニット40の光源42には、白熱ランプ、ハロゲンランプ、放電ランプ等のランプ光源を用いてもよい。同様に、第2光源ユニット50を構成する複数の発光素子52には、少なくとも一つのランプ光源を用いてもよい。
【0063】
付加配光パターンPAに含まれる部分領域の数は、上記の構成に限られるものではない。水平方向(図4(a)におけるH−H線方向)に二つ以上の任意の数を選択することができる。また垂直方向(図4の(a)におけるV−V線方向)に部分領域が一列のみ並ぶ構成としてもよい。
【0064】
付加配光パターンPAに含まれる部分領域の形状は、上記の構成に限られるものではない。各部分領域の面積と形状の少なくとも一方は互いに相違してもよい。
【符号の説明】
【0065】
32:投射レンズ、42:光源、52U:上側発光素子アレイ、52L:下側発光素子アレイ、61:シェード、70:制御部、CL:カットオフライン、PA:付加配光パターン、PL:ロービーム配光パターン、S:遮光領域、SB:下端縁
図1
図2
図3
図4
図5