特許第5938205号(P5938205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリオン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5938205-ALCパネルの取付構造 図000003
  • 特許5938205-ALCパネルの取付構造 図000004
  • 特許5938205-ALCパネルの取付構造 図000005
  • 特許5938205-ALCパネルの取付構造 図000006
  • 特許5938205-ALCパネルの取付構造 図000007
  • 特許5938205-ALCパネルの取付構造 図000008
  • 特許5938205-ALCパネルの取付構造 図000009
  • 特許5938205-ALCパネルの取付構造 図000010
  • 特許5938205-ALCパネルの取付構造 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938205
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】ALCパネルの取付構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/94 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   E04B2/94
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-283337(P2011-283337)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133610(P2013-133610A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185949
【氏名又は名称】クリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】家田 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛
(72)【発明者】
【氏名】水谷 吉克
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−266439(JP,A)
【文献】 特開2011−111816(JP,A)
【文献】 特開2008−014052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/94
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主筋(2a)と副筋(2b)とからなる格子状の補強鉄筋マットを2枚連結させて形成したカゴ状補強鉄筋(2)をパネル母材に埋設したALCパネル(1)を、建物躯体に支承するALCパネルの取付構造において、
ALCパネル(1)の下端側のパネル短辺小口面付近にある前記2枚の補強鉄筋マットのそれぞれ最端の副筋(2bb)のみに跨って、アンカー金具として挿通域(4c)を備えた鉄筋製の井桁状係止具(4)がパネル短辺小口面と平行にパネル幅方向の中央位置に溶接固定され、該パネル短辺小口面から該挿通域(4c)に連通するとともに該挿通域(4c)よりもさらにパネル内部に向かって奥まで延びる連通孔(10)がパネル母材に穿設形成され、建物の下側躯体(12)に直接または間接に固定されて上方へ突出したひとつの棒状支持部材(5)が、該連通孔(10)に該挿通域(4c)よりも奥まで遊挿されることにより、ALCパネル(1)の下端側がパネル幅方向の中央位置で支承されている、
および/または、
ALCパネル(1)の上端側のパネル短辺小口面付近にある前記2枚の補強鉄筋マットのそれぞれ最端の副筋(2bb)のみに跨って、アンカー金具として挿通域(4c)を備えた鉄筋製の井桁状係止具(4)がパネル短辺小口面と平行に2つ以上溶接固定され、該パネル短辺小口面から該挿通域(4c)に連通するとともに該挿通域(4c)よりもさらにパネル内部に向かって奥まで延びる連通孔(11)がパネル母材に穿設形成され、建物の上側躯体(13)に直接または台座を介して固定され、または台座を介して係止されて下方へ突出した2つ以上の棒状支持部材(5)が、それぞれ該連通孔(11)に該挿通域(4c)よりも奥まで遊挿されることにより、ALCパネル(1)の上端側がパネル幅方向の2カ所以上で支承されていることを特徴とするALCパネルの取付構造
【請求項2】
前記ALCパネル(1)の上端側のパネル短辺小口面付近にある井桁状係止具(4)は、パネル幅方向において、中央位置を挟んだ両側に1つずつ配置されている請求項1記載のALCパネルの取付構造
【請求項3】
前記各連通孔(10,11)におけるパネル短辺小口面から挿通域(4c)に連通する入口側孔(10a,11a)のパネル厚さ方向の寸法およびパネル幅方向の寸法が、前記棒状支持部材(5)の円柱状の棒状部の外径に比べて、それぞれ10〜25mm大きい請求項1または2記載のALCパネルの取付構造。
【請求項4】
建物の上側躯体(13)に台座(6)を介して係止された前記各棒状支持部材(5)は、円盤状の基部(9)と基部から立設される棒状部とから構成され、棒状部が台座(6)の貫通孔(6c)に挿通され、基部(9)が台座(6)に係止しており固定はされておらず、当該各棒状支持部材(5)はALCパネル(1)の面内方向あるいは壁面外方向に動くことができるようになっている請求項1〜3のいずれか一項に記載のALCパネルの取付構造
【請求項5】
前記井桁状係止具(4)は、長軸片(4a)と短軸片(4b)とをそれぞれ2本ずつ用いて、それらが井桁状になるように組まれており、前記最端の2本の副筋(2bb)を連結するように、その長軸片(4a)の端部がそれぞれの該副筋(2bb)に溶接固定されることにより、前記挿通域(4c)を四角形に形成したものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のALCパネルの取付構造。
【請求項6】
前記挿通域(4c)のパネル厚さ方向の長さ(W)およびパネル幅方向の長さ(L)が、前記棒状支持部材(5)の円柱状の棒状部の外径に比べて、それぞれ0.5〜3mm大きい請求項5記載のALCパネルの取付構造。
【請求項7】
前記挿通域(4c)は、パネル幅方向の長さ(L)とパネル厚さ方向の長さ(W)とが同一に構成されている請求項6記載のALCパネルの取付構造。
【請求項8】
前記挿通域(4c)は、パネル幅方向の長さ(L)がパネル厚さ方向の長さ(W)より長い長方形に構成されている請求項6記載のALCパネルの取付構造。
【請求項9】
前記井桁状係止具(4)は、長軸片(4a)、短軸片(4b)ともに同じ長さの4本の軸片を用いて、それらの4つの軸片の端部を前記最端の副筋(2bb)に、たすき掛けするように交差させて連結させることにより、前記挿通域(4c)を菱形に形成したものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のALCパネルの取付構造。
【請求項10】
前記井桁状係止具(4)を構成する軸片(4a,4b)として、直径が2〜5mmの鉄筋棒材又は幅が2〜5mm、厚さ2〜5mmの鉄筋板材が使用されている請求項5〜9のいずれか一項に記載のALCパネルの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ALCパネルの取付構造およびこれに用いるALCパネルに関し、さらに詳しくは、外壁・間仕切壁・隔て壁・袖壁などの建物の壁として好適に用いられるALCパネルおよびこれに用いたALCパネルおよびこれを用いたALCパネルの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビル・一般住宅などにおける外壁・間仕切壁・隔て壁・袖壁などの建物の壁には、ALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)が用いられている。建物躯体へのALCパネルの取付構造としては、特許文献1〜4に記載されているものが知られている。
【0003】
特許文献1には、布基礎へのALCパネルの取付構造が記載されている。
具体的には、布基礎上面に長尺鋼板を敷設固定し、その上に短尺のL字型の係止部材を溶接固定するとともに、ALCパネルの下部をその係止部材に係止させた構造が記載されている。
この取付構造において、係止部材がL字型であるため、ALCパネルの取付後には係止部材の一部がパネル壁面に配置される。この係止部材がパネル壁面の外に露出されると、ALCパネルの美感が損なわれるため、石膏ボードなどの内装材でこの部分を覆い隠す必要が生じる。
また、この部分がパネル壁面の外に露出すると、風雨にされされた場合に腐食しやすくなるため、係止部材に防錆処理を施す必要が生じる。したがって、施工コストが増加する問題があった。
【0004】
これに対し、特許文献2〜4には、ALCパネルを建物躯体に取り付けるための取付金具がパネル壁面の外に露出しないようにしたALCパネルの取付構造が記載されている。
【0005】
特許文献2、3には、床スラブ上に固定された台座を介してボルトによりALCパネルの下部がその下端短辺小口面で床スラブへ取り付けられたALCパネルの取付構造が記載されている。
具体的には、金属板で形成された断面がコ字状あるいはロ字状の本体部とこの本体部のパネル下端短辺小口面に平行に配置された底面から立設された雌ネジ部とを有するアンカー金具がALCパネルの下端短辺小口面の近傍に埋設され、この雌ネジ部がパネル下端短辺小口面に開口されて、この雌ネジ部に上記のボルトが螺合されることによりALCパネルの下部が床スラブへ取り付けられている。
このとき、埋設されたアンカー金具の本体部底面から立設された両側面はそれぞれ2本以上の副筋に掛かる長さに構成されており、両側面がそれぞれ2本以上の副筋に溶接固定され、アンカー金具が側面全体で補強鉄筋全体およびパネル母材と一体化されることにより、高い取付強度が発揮されるように構成されている。
【0006】
特許文献4には、ALCパネルの上端短辺小口面からパネル内部に向かってパネル母材に穿設形成された挿入孔内に、天井側の建物躯体に固定された棒状体が遊挿されることによりALCパネルの上部が建物躯体に取り付けられた構造が記載されている。
【0007】
また、この特許文献4には、金属板で形成された断面がロ字状の本体部とこの本体部のパネル上端短辺小口面に平行に配置された底面と上面との間に架設された筒状体とを有するアンカー金具が、ALCパネルの上端短辺小口面の近傍に埋設されている。
そして、パネル上端短辺小口面に開口された筒状体に上記棒状体が遊挿されることにより、ALCパネルの上部が建物躯体に取り付けられた構造が記載されている。
このとき、埋設されたアンカー金具の両側面の幅はそれぞれ2本以上の副筋に掛かる長さに構成されており、両側面がそれぞれ2本以上の副筋に溶接固定されることにより、アンカー金具が側面全体で補強鉄筋全体およびパネル母材と一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−169020号公報
【特許文献2】特開2009−097184号公報
【特許文献3】特開2011−026827号公報
【特許文献4】特開2011−111816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2、3に記載されたALCパネルの取付構造では、パネル下端短辺小口面でのパネル壁面外方向のアンカー金具引抜せん断力に対して、台座を介して床スラブ上に固定されたボルトとALCパネル内の2本以上の副筋に両側面が溶接固定された埋設アンカー金具とが一体となって埋設アンカー金具の側面全体で抵抗することにより高い取付強度が発揮されるが、それ故、アンカー金具が大型になって重くなる(約1.5kg)。
これにより、アンカー金具の取り扱い性が悪くなるという問題があった。また、これにより、ALCパネル全体の重量も増加する。
【0010】
特許文献4に記載されるALCパネルの取付構造において、パネル母材に穿設形成された挿入孔内に天井側の建物躯体に固定された棒状体が単に遊挿される構造では、パネル上端短辺小口面でのパネル壁面外方向のアンカー金具引抜せん断力に対して、十分な耐力が確保できないという問題があった。
【0011】
また、特許文献4に記載されるALCパネルの取付構造において、ALCパネルの上端短辺小口面の近傍に埋設されたアンカー金具の筒状体に上記棒状体が遊挿される構造では、パネル上端短辺小口面でのパネル壁面外方向のアンカー金具引抜せん断力に対して、棒状体が全長に渡ってアンカー金具の筒状体で拘束され、筒状体に作用した全ての荷重がアンカー金具の側面全体で抵抗することになるため高い取付強度が発揮される一方で、アンカー金具が大型で重くなり、引いてはALCパネル全体としても重量が増加するという問題があった。
なお、この構造において、アンカー金具の筒状体に棒状体が遊挿されているのは、地震などにより建物躯体が層間変形したときに棒状体が筒状体内で上下摺動してパネルをロッキングさせるためである。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、アンカー金具の軽量化を図ることが可能であるとともにパネル壁面外方向のアンカー金具引抜せん断力に対して十分な耐力が確保されるALCパネルおよびこれに用いたALCパネルの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、
主筋と副筋とからなる格子状の補強鉄筋マットを2枚連結させて形成したカゴ状補強鉄筋をパネル母材に埋設したALCパネルを、建物躯体に支承するALCパネルの取付構造において、
ALCパネルの下端側のパネル短辺小口面付近にある前記2枚の補強鉄筋マットのそれぞれ最端の副筋のみに跨って、アンカー金具として挿通域を備えた鉄筋製の井桁状係止具がパネル短辺小口面と平行にパネル幅方向の中央位置に溶接固定され、該パネル短辺小口面から該挿通域に連通するとともに該挿通域よりもさらにパネル内部に向かって奥まで延びる連通孔がパネル母材に穿設形成され、建物の下側躯体に直接または間接に固定されて上方へ突出したひとつの棒状支持部材が、該連通孔に該挿通域よりも奥まで遊挿されることにより、ALCパネルの下端側がパネル幅方向の中央位置で支承されている、
および/または、
ALCパネルの上端側のパネル短辺小口面付近にある前記2枚の補強鉄筋マットのそれぞれ最端副筋のみに跨って、アンカー金具として挿通域を備えた鉄筋製の井桁状係止具がパネル短辺小口面と平行に2つ以上溶接固定され、該パネル短辺小口面から該挿通域に連通するとともに該挿通域よりもさらにパネル内部に向かって奥まで延びる連通孔がパネル母材に穿設形成され、建物の上側躯体に直接または台座を介して固定され、または台座を介して係止されて下方へ突出した2つ以上の棒状支持部材が、それぞれ該連通孔に該挿通域よりも奥まで遊挿されることにより、ALCパネルの上端側がパネル幅方向の2カ所以上で支承されていることを特徴とするALCパネルの取付構造を採用した。
【0014】
このとき好ましい条件として、前記ALCパネルの上端側のパネル短辺小口面付近にある井桁状係止具は、パネル幅方向において、中央位置を挟んだ両側にひとつずつ配置されているALCパネルとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るALCパネルの取付構造によれば、ALCパネルに埋設するアンカー金具として井桁状係止具を用いたことにより、従来に比べてアンカー金具の埋設によるALCパネル重量の増加が極めて小さくなる。
さらに建物躯体に固定された棒状支持部材の外径よりもこの棒状支持部材が挿通されるパネル短辺小口面の連通孔の内径やこれに連通する井桁状係止具の挿通域が大きく構成されているので、パネル短辺小口面でのパネル壁面外方向へのアンカー引抜せん断力がかかっても、棒状支持部材はこの連通孔やその挿通域には拘束されないでパネル壁面外方向に遊動することができるようになる。
そして、このとき、棒状支持部材は井桁状係止具の挿通域の内周縁、すなわち井桁状係止具の長軸片または短軸片に当接する。
これにより、パネル壁面外方向への棒状支持部材の引抜せん断が井桁状係止具を介して最端の副筋からカゴ状補強鉄筋全体に伝達されるため、前記せん断力に対する十分なパネル強度が確保されようになる。
【0017】
従来技術における特許文献4のように棒状体がアンカー内部の筒状体で拘束されていると、アンカー金具にその引抜せん断力が働いたときに、棒状体のこじり力も含めてアンカー金具の筒状体全体で棒状体が拘束されるため、より大きな荷重がアンカー金具に加わることになり、アンカー金具の負担荷重がより大きくなっていた。
その点、棒状支持部材(棒状体)がパネル内部で遊動できる本発明の構成にすることにより、井桁状係止具(アンカー金具)にかかる負担荷重が小さくなるため、アンカー金具を井桁状係止具のように小さくて軽量なものにすることができた。
【0018】
このように、棒状支持部材がパネル母材の連通孔や井桁状係止具の挿通域に遊挿されていると、パネルがロッキングする際に挿通域内における棒状支持部材の上下摺動が容易となり、棒状支持部材の拘束が緩和されるのでパネル壁面外方向への棒状支持部材がより遊動しやすくなる。
さらに、井桁状係止具の挿通域の内周縁、すなわち井桁状係止具の挿通域を構成している長軸片または短軸片に棒状支持部材が当接することにより、井桁状係止具を介して最端の副筋からカゴ状補強鉄筋全体への棒状支持部材の引抜せん断力の伝達効率が高まる。
また、ALCパネルの上端側が2カ所以上で支承されているとともにALCパネルの下端側がパネル幅方向の中央位置で支承されていると、地震などにより建物躯体が層間変形したときにALCパネルはスムーズにロッキングしてその層間変形に追従することができる。
【0019】
この際、井桁状係止具の挿通域のパネル幅方向の長さがパネル厚さ方向の長さよりも大きく設定されていれば、層間変形時には棒状支持部材がパネル幅方向に遊動しやすくなるので、ALCパネルのロッキング性能とパネル壁面外方向のアンカー金具の引抜せん断力の伝達性能とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明におけるALCパネルの透視分解斜視図である。
図2図1のパネル下端側の要部の拡大斜視図である。
図3】本発明におけるALCパネルの取付構造の透視分解斜視図である。
図4図1のパネル下端側の要部の正面側拡大断面図である。
図5図4のパネル上端側の要部の側面側拡大断面図であり、パネル壁面外方向の力が 作用していない状態図(a)と作用している状態図(b)である。
図6】ALCパネル上端側の取付構造の他の実施例の斜視図である。
図7】ALCパネル上端側の取付構造の他の実施例の斜視図である。
図8】棒状支持部材でパネル短辺小口面の2カ所を支承した取付構造について行うパネ ル壁面外方向への棒状支持部材の引抜せん断試験の概略模式図である。
図9】棒状支持部材でパネル短辺小口面の1カ所を支承(支持)した取付構造について 行うパネル壁面外方向への棒状支持部材の引抜せん断試験の概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るALCパネルの透視分解斜視図であり、ALCパネル1については、パネルの輪郭を点線で示し、ALCパネル内に埋設されている部材を実線で示している。
図1において、ALCパネル1はその長さ方向に沿って配置される主筋2aと幅方向に沿って配置される副筋2bとからなる格子状の2枚の補強鉄筋マットをスペーサー3で連結させて形成したカゴ状補強鉄筋2が埋設されており、一方のパネル短辺小口面付近(図1において下端側)にある2枚の補強鉄筋マットのそれぞれ最端の副筋2bbに跨って、建物躯体に直接または間接に固定される棒状支持部材5(図2参照)が挿通する挿通域4cを備えた井桁状係止具4がパネル短辺小口面と平行にパネル幅方向の中央位置に溶接固定されている。
さらに、図1のALCパネル1は、他方のパネル短辺小口面付近(図1において上端側)にある2枚の補強鉄筋マットのそれぞれ最端の副筋2bbに跨って、建物躯体に直接または間接に固定される棒状支持部材5(図5参照)を挿通する挿通域4cを備えた井桁状係止具4がパネル短辺小口面と平行に2つ以上溶接固定されている。
【0022】
井桁状係止具4は、図1および図2に示すように、長軸片4aと短軸片4bとをそれぞれ2本ずつ用いて、それらが井桁状になるように組まれており、そして、カゴ状補強鉄筋2の最端の2本の副筋2bbを連結するように、その長軸片4aの端部がそれぞれの副筋2bbに溶接固定されている。
この長軸片4aと短軸片4bにより形成される四角形の挿通域4cは、図2に示すように、パネル幅方向の長さLとパネル厚さ方向の長さWを有し、パネル幅方向の長さLとパネル厚さ方向の長さWとは同一、あるいは、パネル幅方向の長さLがパネル厚さ方向の長さWより長い長方形に構成されている。
さらに、パネル幅方向の長さLおよびパネル厚さ方向の長さWは、いずれも、この挿通域4cに挿通される棒状支持部材5の外径より大きく構成されており、棒状支持部材5はこの挿通域4cに対し、その内周縁(長軸片4aまたは短軸片4b)との間で所定の隙間がある状態で挿入(遊挿)される。
【0023】
井桁状係止具4として、図2に示すものの他に、長軸片4a、短軸片4bともに同じ長さの4本の軸片を用いて、それらの4つの軸片の端部を補強鉄筋マットのそれぞれ最端の副筋2bbに、たすき掛けするように交差させて連結させることにより、挿通域4cを菱形に形成したものも使用できる。
なお、井桁状係止具4を構成する部材としては、直径が2〜5mmの鉄筋棒材や幅が2〜5mm、厚さ2〜5mmの鉄筋板材などを使用することができる。
【0024】
次に、このALCパネル1を建物躯体に取り付けた際に発揮される効果について、その取付構造とともに詳細に説明する。
図3〜5は、本発明の実施形態に係るALCパネルの取付構造に関するものである。図3は、本発明の実施形態に係るALCパネルの取付構造の透視分解斜視図であり、ALCパネル1については、パネル母材の輪郭を点線で示し、ALCパネル1内に埋設されている部材を実線で示している。
【0025】
図3図4および図5に示すように、本発明の実施形態に係るALCパネル1の取付構造は、前述のALCパネル1を建物の上側躯体13に埋設された埋込みプレート8に固定されたフラットバー7を介して固定された2本の棒状支持部材5によりALCパネル1の上端側が2カ所で支承される、および/または、建物の下側躯体12に埋設された埋込みプレート8に固定されたフラットバー7に固定されたハット型の台座6を介して固定されたひとつの棒状支持部材5によりALCパネル1の下端側が1カ所で支承されている。
なお、この取付構造に用いるALCパネルは、図1および図3に示すように、前述の井桁状係止具4が、一方のパネル短辺小口面付近(図3において下端側)にはパネル幅方向の中央位置にひとつ、および/または、他方のパネル短辺小口面付近(図3において上端側)にはパネル幅方向に2つ以上埋設されている。
さらに、本発明の実施形態では、ALCパネル1の他方のパネル短辺小口面付近(図3において上端側)において、パネル幅方向の中央位置から両端部に向かって均等若しくはほぼ均等な位置にそれぞれひとつずつ合計2つの井桁状係止具4が配置されている。
【0026】
図5に示すように、ALCパネル1には、一方の短辺小口面(パネル上端側)から形成された入口側孔11aが井桁状係止具4の挿通域4cに連通し、さらに、その挿通域4cよりもパネル内部に向かって奥側孔11bが穿設されて連通孔11が形成されている。
また、図4に示すように、ALCパネル1の他方の短辺小口面(パネル下端側)から形成された入口側孔10aが井桁状係止具4の挿通域4cに連通し、さらに、その挿通域4cよりもパネル内部に向かって奥側孔10bが穿設されて連通孔10が形成されている。
【0027】
そして、図3に示すように、上側躯体13のフラットバー7に固定された2本の棒状支持部材5と下側躯体12のフラットバー7にハット型台座を介して固定されたひとつの棒状支持部材5とを、それぞれのパネル短辺小口面から形成された挿通孔10、11に遊挿させて、建物躯体にパネルが上下端で支承される取付構造となっている。
【0028】
上側躯体13に固定される棒状支持部材5は円盤状の基部9から立設される棒状部とから構成されており、円盤状の基部9が上側躯体13への固定面となり上側躯体13にフラットバー7を介して固定されている。
また、棒状支持部材5は連通孔11(入口側孔11a,奥側孔11b)および挿通域4cに遊挿されている。
一方、下側躯体12に固定される棒状支持部材5には円盤状の基部はなく、棒状部がハット型の台座に溶接固定されている。
【0029】
ハット型の台座6は、ALCパネル1が下端短辺小口面で載置される載置部6aと載置部6aの幅方向両端より延設形成された一対の脚部6bとにより構成されている。
脚部6bは、載置部6aの載置面の同一方向に直角に曲げ加工された折曲片よりなり、その先端はさらに外側に開く方向にさらに直角に曲げ加工されている。
脚部6bの先端は載置部6aの載置面に平行な面を有しており、この面がフラットバー7に固定されている。
下側躯体12に固定される棒状持部材5は、その棒状部が載置部6aの中央位置に溶接固定されて、ハット型の台座6と一体化されている。
そして、ALCパネル1の下端側は、パネルの幅方向中央位置がハット型の台座6に載置されていることで、それ以外の部位(パネル角部等)においてもハット型の台座6の高さと同等の隙間が確保されている。
【0030】
このALCパネルの取付構造によれば、地震などで建物躯体が層間変形したときに、ハット型の台座6があるALCパネル1の幅方向の中央位置を中心としてパネル幅方向の両側が上下するようなロッキングをすることができる。
このため、この取付構造によるALCパネル1は、建物躯体の層間変形に対して優れた追従性能を発揮できるとともに、前記隙間が確保されているためパネル角部とフラットバー7または下側躯体12とが干渉して、カケや割れを発生させるおそれがない。
さらに、パネル上端側において、井桁状係止具4がパネル幅方向の中心を挟んで両端方向に均等若しくはほぼ均等な位置にひとつずつ配置されているため、ALCパネル1は左右バランス良くスムーズにロッキングすることが可能となる。
また、パネル上端側が2つの棒状支持部材5で支承されているため、パネル幅方向の中央位置を中心軸としてパネルが回転(どんでん返し)することもない。
【0031】
棒状支持部材5の棒状部の外径に比べて、井桁状係止具4の挿通域4cのパネル厚さ方向の長さWおよびパネル幅方向の長さLを、それぞれ0.5mm以上大きくしておくと好ましく、さらに、1.0mm以上3mm以下であると望ましい。
このように余裕を設けておくことで、棒状支持部材5はこの連通孔10,11とこれに連通する井桁状係止具4の挿通域4cにおいて完全には拘束されない状態となる。
これにより、図5(b)に示すように、パネル短辺小口面でのパネル壁面外方向への棒状支持部材5の引抜せん断力がかかっても、ALCパネル1の内部で棒状支持部材5がパネル壁面外方向に遊動することができる。
結果的に、パネル壁面外方向への棒状支持部材の引抜せん断力がパネル短辺小口面で作用したときに、棒状支持部材5は井桁状係止具の挿通域4cの内周縁(短軸片4b)に当接するため、パネル壁面外方向のせん断力が井桁状係止具(短軸片4b)を介してALCパネル1の最端の副筋2bbに伝達され、さらに、この副筋2bbからカゴ状補強鉄筋2全体に伝達される。これにより、パネル壁面外方向への棒状支持部材の引抜せん断力に対して十分な耐力が確保されるようになる。
【0032】
また、井桁状係止具4の挿通域4cのパネル厚さ方向の長さWに比べて、パネルの連通孔10,11の入口側孔10a,11aのパネル厚さ方向の寸法をさらに大きくすると、図5(b)に示すように、パネル壁面外方向への棒状支持部材の引抜せん断力が作用したときであっても、井桁状係止具4の挿通域4cの内周縁(短軸片4b)に棒状支持部材5が当接して、入口側孔10a,11aのパネル短辺小口側の開口端付近に当接しないようにすることができる。
パネル短辺小口側の開口端付近は、補強鉄筋が配置されていないとともにパネル厚さ方向にはALC母材のかぶりが小さくパネル母材の強度も低いため、棒状支持部材5のこじりによりパネル母材の破壊が起こり易い部分である。
そこで、前述の理由により、このALCの母材部分に棒状支持部材5が直接当接しないようにすることで、パネル母材の表面の破壊を防止することができる。
【0033】
図4または図5に示すように、棒状支持部材5の棒状部の外径に比べて、パネル母材の連通孔10,11における入口側孔10a,11aのパネル厚さ方向および幅方向との寸法差が10mm〜25mm以下であると好ましい。
なお、入口側孔10a,11aは、例えば円形に形成しても、パネル幅方向に長い長方形または楕円としても良い。
【0034】
このように、井桁状係止具4の挿通域4cのパネル幅方向の長さLに比べて、パネルの連通孔10,11の入口側孔10a,11aのパネル幅方向の寸法を5〜20mm大きめにしておくと、地震などにより建物に層間変形が生じてパネルがロッキングする際に、井桁状係止具4の挿通域4cの内周縁(長軸片4a)に棒状支持部材5が当接して母材へは直接当接することがなくなり、パネル母材にカケや割れを生じることを防止できる。
【0035】
このように、本発明ではALCパネル1に埋設される従来のアンカー金具に代えて井桁状係止具4を採用しても、パネル壁面外方向への棒状支持部材の引抜せん断力に対して十分な耐力が確保されるとともに、従来のアンカー金具に比べて軽量化が図られる。
【0036】
ALCパネル1は、特に限定されるものではないが、通常、幅300〜610mm、長さ1500〜4000mm、厚さ75〜150mmの範囲に設定される。
このとき、ALCパネル1に埋設されるカゴ状補強鉄筋2が、ALCパネル1の各短辺小口面からの距離(かぶり)が5〜40mmの範囲内に埋設されていれば、井桁状係止具4は、同様の距離(かぶり)の範囲に埋設されるため、パネル短辺小口面の表面にひびや割れが生じにくい。
【0037】
上記範囲の大きさのALCパネル1を支承する棒状支持部材5は、ALCパネル1内に埋設された補強鉄筋との前記かぶりを考慮して、その長さが60〜150mmの範囲内であることが好ましく、また、その外径は10〜15mmの範囲内であることが好ましい。棒状支持部材5は鋼材などの剛体で形成され、棒状部分はパネル短辺小口面に形成される連通孔10,11内や井桁状係止具の挿通域4c内でロッキング時に上下摺動しやすいように円柱状であることが好ましい。
【0038】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、棒状支持部材5は上側躯体13のフラットバー7に直接固定されているが、図6図7に示すように、フラットバー7に固定された台座6を介して間接的に上側躯体13に固定され図6)、または係止され(図7ていても良い。
図6のALCパネル(上端側)の取付構造では、ハット型の台座6の載置部6aに棒状部が溶接固定された棒状支持部材5が使用されている。
一方、図7では、棒状支持部材5の棒状部がハット型の台座6の貫通孔6cに挿通されて、棒状支持部材5の円盤状の基部9がハット型の台座6の載置部6aに係止しており(固定はされていない)、その棒状支持部材5はハット型の台座6に拘束されずにALCパネル1の面内方向あるいは壁面外方向に自由に動くことができるようになっている。
これにより、パネルのロッキングがよりスムーズになり建物躯体の層間変形に対する追従性が一層向上する。
【0040】
また、本発明の実施形態ではALCパネル1の上端側において、2本の棒状支持部材5により2カ所でパネルを支承されているが、パネル幅方向に3本以上の棒状支持部材5により3カ所以上でパネルを支承しても良い。
【実施例】
【0041】
<ALCパネルの上端側取付構造の棒状支持部材の引抜せん断強度について>
本発明では、ALCパネルの上端側は、2つ以上の棒状支持部材により2カ所以上で支承される。そこで、2本の棒状支持部材により2カ所で支承された取付構造の棒状支持部材の引抜せん断強度を測定した。
図8は、棒状支持部材5の引抜せん断強度試験の概略模式図である。
具体的には、ALCパネル1を試験用鉄骨架台21上に水平に配置し、ALCパネル1の上端短辺小口面から300mmの位置でパネル壁面を挟持して、ALCパネル1を試験用鉄骨架台21に固定した。
次いで、ALCパネル1の上端短辺小口面の2カ所に2本の棒状支持部材5を遊挿し、その2本の棒状支持部材5を連結板22で連結し、油圧ジャッキ23を用いて連結板22の中央位置を上方に変位させた。
このときの最大荷重を棒状支持部材の引抜せん断強度とした。ALCパネル1の寸法は、幅:600mm、長さ:2490mm、厚さ:100mmとした。
【0042】
(実施例1)
本発明の実施形態のALCパネル上端側の取付構造に対応する。
具体的には、図1(図中でパネル上側)に示すように2つの井桁状係止具4をカゴ状補強鉄筋2の最端の副筋2bbに溶接固定したALCパネルを得た。
そして、2本の棒状支持部材5によりパネルが支承される位置は、パネル幅方向の中央位置を中心にその両側に対称となる位置とした。
そして、そのALCパネル1の短辺小口面から井桁状係止具4の挿通域4cと連通する連通孔11を挿通孔よりもさらに奥まで穿設形成した。
この連通孔11および挿通域4cに棒状支持部材5を遊挿し、それらの2本の棒状支持部材5を連結板22で連結し、油圧ジャッキ23を用いて連結板22の中央位置を上方に変位させた。
【0043】
井桁状係止具4は、長軸片(長さ:70mm、直径:3.2mm)と短軸片(長さ30mm、直径:2.6mm)との綱棒を用いて、中心部に挿通域4c(パネル幅方向の長さL:16mm、パネル厚さ方向の長さW:16mm)が形成されるように井桁状に組み付けて溶接した。
棒状支持部材5の棒状部は長さ:135mm、外径:15.0mmとした。
また、パネル短辺小口面から穿設形成した連通孔11の入口側孔(円形孔)は内径30mm、深さ30mm、奥側孔(円形孔)は内径15.5mmとした。
【0044】
(比較例1)
従来のアンカー金具および本発明における井桁状係止具を用いないで、カゴ状補強鉄筋2が埋設されただけのALCパネル1を使用して、その短辺小口面から実施例1と同じ位置および同じ深さの通し孔をパネル内部に向かって穿設形成した。
この通し孔に2本の棒状支持部材5を遊挿し、それらの棒状支持部材5を連結板22で連結し、油圧ジャッキ23を用いて連結板22の中央位置を上方に変位させた。
なお、棒状支持部材5は、実施例1と同じものを用いた。
また、パネル短辺小口面から穿設形成した通し孔(円形孔)の入口側孔(円形孔)は内径30mm、深さ30mm、奥側孔(円形孔)は内径15.5mmとした。
【0045】
<ALCパネルの下端側の取付構造の棒状支持部材の引抜せん断強度について>
本発明では、ALCパネルの下端側は、台座6を介してひとつの棒状支持部材5によりパネル幅方向の中央位置で1カ所で支承されている。
そこで、ひとつの棒状支持部材5によりパネル幅方向の中央位置で1カ所で支承(支持)された取付構造の棒状支持部材の引抜せん断強度を比較値とした。
図9は、その棒状支持部材の引抜せん断強度試験の概略模式図である。
具体的には、図9のようにALCパネル1を試験用鉄骨架台21上に水平に配置し、ALCパネル1の短辺小口面から300mmの位置でパネル壁面を挟持して、ALCパネル1を試験用鉄骨架台21に固定した。
次いで、ALCパネル1の短辺小口面のパネル幅方向中央位置の1カ所に、ひとつの棒状支持部材5を遊挿し、この棒状支持部材5を油圧ジャッキ23を用いて上方に変位させた。
このときの最大荷重を棒状支持部材の引抜せん断強度とした。ALCパネル1の寸法は、幅:600mm、長さ:2490mm、厚さ:100mmとした。
【0046】
(実施例2)
本発明における実施形態のALCパネルの下端側の取付構造に対応する。
具体的には、図1に示すように、パネル幅方向の中央位置において井桁状係止具4をカゴ状補強鉄筋2の最端の副筋2bbに溶接固定したALCパネル1を得た。
そして、そのALCパネル1の短辺小口面から井桁状係止具4の挿通域4cと連通する連通孔10を挿通孔よりもさらに奥まで穿設形成した。
この連通孔10および挿通域4cに棒状支持部材5を遊挿し、この棒状支持部材5を油圧ジャッキ23を用いて上方に変位させた。
【0047】
井桁状係止具4は、長軸片(長さ:70mm、直径:3.2mm)と短軸片(長さ30mm、直径:2.6mm)との綱棒を用いて、中心部に挿通域4c(パネル幅方向の長さL:16mm、パネル厚さ方向の長さW:16mm)が形成されるように井桁状に組み付けて溶接した。
棒状支持部材5の棒状部は長さ:135mm、外径:15.0mmとした。
また、パネル短辺小口面から穿設形成した連通孔11の入口側孔(円形孔)は内径30mm、奥側孔(円形孔)は内径15.5mmとした。
【0048】
(比較例2)
従来のアンカー金具および本発明における井桁状係止具を用いないで、その短辺小口面から実施例2と同じ位置および同じ深さの通し孔をパネル内部に向かって穿設形成した。
この通し孔に棒状支持部材5を遊挿し、油圧ジャッキ23を用いて棒状支持部材5を上方に変位させた。
なお、棒状支持部材5は、実施例2と同じものを用いた。
また、パネル短辺小口面から穿設形成した通し孔(円形孔)の入口側孔(円形孔)は内径30mm、深さ30mm、奥側孔(円形孔)は内径15.5mmとした。
【0049】
【表1】
【0050】
以上の試験結果を表1にまとめた。
表1によれば、本発明における井桁状係止具4を用いたことにより、ALCパネルの上端側および下端側において、棒状支持部材のパネル壁面外方向への十分な引抜せん断強度が確保されていることが確認できた。
さらに、従来のアンカー金具と違って、井桁状係止具4の採用によりALCパネルにおけるアンカー金具に関わる重量を大幅に軽減することができた。
【符号の説明】
【0051】
1 ALCパネル
2 カゴ状補強鉄筋
2a 主筋
2b 副筋
2bb 最端の副筋
3 スペーサ
4 井桁状係止具
4a 長軸片
4b 短軸片
4c 挿通域
L パネル幅方向の長さ
W パネル厚さ方向の長さ
5 棒状支持部材
6 ハット型の台座
6a 載置部
6b 脚部
6c 貫通孔
7 フラットバー
8 埋設プレート
9 円盤状の基部
10,11連通孔
10a、11a 入口側孔
10b、11b 奥側孔
12 下側の建物駆体
13 上側の建物駆体
20 せん断試験装置
21 鉄骨架台
22 連結板
23 油圧ジャッキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9