(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938215
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】圧力容器
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20160609BHJP
F17C 1/06 20060101ALI20160609BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20160609BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F17C1/06
F16J12/00 A
F16J12/00 Z
F16F7/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-3651(P2012-3651)
(22)【出願日】2012年1月12日
(65)【公開番号】特開2013-142453(P2013-142453A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】岸田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】東條 千太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 純三
(72)【発明者】
【氏名】西 泰博
【審査官】
浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−220425(JP,A)
【文献】
特開2009−108971(JP,A)
【文献】
特表2002−542443(JP,A)
【文献】
特開2001−114334(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/114178(WO,A1)
【文献】
特開2009−041710(JP,A)
【文献】
特開2001−21099(JP,A)
【文献】
特開2006−46645(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0169704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/123
B65D 81/02
F16F 7/00
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ライナの外周面を補強繊維層で被覆した圧力容器であって、
前記補強繊維層の外側で圧力容器の上、下の肩部から胴部の一部にかけて肩部表面並びに胴部表面から突出する衝撃緩衝部材が配置され、この衝撃緩衝部材の表面に外部繊維材を網目状に巻き付けることにより、衝撃緩衝部材の一部が前記外部繊維材よりも外側に露出するようにして容器に取り付けられていることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記衝撃緩衝部材を巻き付ける外部繊維材はガラス繊維であり、前記補強繊維層は炭素繊維層が形成される請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記衝撃緩衝部材が発泡ウレタンである請求項1または請求項2のいずれかに記載の圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素等の高圧ガスを充填する圧力容器に関し、さらに詳細には金属ライナの外側に補強繊維層を設けた圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より高圧ガスを充填するための圧力容器の種類の一つに、複合容器と呼ばれるものがある。複合容器では、耐圧性を増強するためにアルミニウム合金等からなる金属ライナの外周面を樹脂含浸補強繊維層(繊維強化プラスチック層)で被覆してある。
補強繊維層は、例えば特許文献1に記載されるように、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等をライナ胴部の外面を周方向に巻くフープ巻層と、ライナ中心線方向に対し所定の配向角で巻くヘリカル巻層とからなる。フープ巻は周方向応力に対する耐圧強度を高め、ヘリカル巻は配向角に応じて中心軸方向に対する耐圧強度を高めている。
【0003】
一方、圧力容器は、輸送中や取扱中に、誤って斜めに落下したり、水平に落下したりしてしまうことがある。そのため、安全の観点から耐圧強度とともに、耐衝撃性についても十分な強度が求められている。耐衝撃性についての具体的な検査項目として、斜め落下を想定した斜め落下試験と、水平落下を想定した水平落下試験とが行われている。
【0004】
圧力容器の耐衝撃性を高めるために、圧力容器の肩部に剛性の発泡体等の衝撃緩衝部材(損傷軽減材料)を内装したものが特許文献2に提案されている。
【0005】
上記特許文献2に開示された圧力容器は、容器の外周面に、補強繊維層となる均一な繊維複合材料の外殻が設けられ、この外殻の主肉厚部と、副肉厚部との間に衝撃緩衝部材が挟み込まれた構造にしてある。衝撃緩衝部材の外側にある副肉厚部は衝撃緩衝部材の全表面が覆うように形成されている。
この文献によれば、斜め落下により肩部に衝撃が加わったときでも、当該衝撃緩衝部材が物理的に変形することで衝撃が吸収されるとともに、損傷を受けたことを視覚的に検出することが容易になるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−340291号公報
【特許文献2】特許第3491175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
衝撃緩衝部材が外殻の主肉厚部と副肉厚部とに挟み込まれた特許文献2に開示されている圧力容器では、副肉厚部を構成する外殻はフィラメントワインディング法によって巻き付けることにより形成される。副肉厚部を衝撃緩衝部材の表面全体を覆うように巻き付けると、巻き付けた繊維素材の張力によって衝撃緩衝部材は圧縮された状態となり、その弾性反発力が損なわれることになる。
【0008】
また、上記衝撃緩衝部材は容器肩部において外殻の副肉厚部の内側に組み込まれているので、容器が斜めに落下したとき肩部に受ける衝撃を吸収できるが、容器が水平落下(容器の胴部が水平になった姿勢での落下)したときには衝撃緩衝部材は役に立たず、胴部(および胴部を覆う外殻)が衝撃を受けてしまい、肩部の衝撃緩衝部材によって損傷を防ぐことができなかった。
【0009】
そこで、本発明は容器の肩部からの落下でだけでなく水平姿勢での落下でも、大きな緩衝効果を発揮することができる圧力容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。
すなわち、本発明の圧力容器は、金属ライナの外周面を補強繊維層で被覆した圧力容器であって、補強繊維層の外側で圧力容器の上、下の肩部から胴部の一部にかけて肩部表面並びに胴部表面から突出する衝撃緩衝部材が配置され、この衝撃緩衝部材の表面に外部繊維材を網目状に巻き付けることにより、衝撃緩衝部材の一部が
前記外部繊維材よりも外側に露出するようにして容器に取り付けられている構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧力容器の上側肩部と下側肩部とから、それぞれ胴部の一部にかけて肩部表面並びに胴部表面から突出する衝撃緩衝部材が設けられているので、圧力容器が肩部から斜め落下した場合に、肩部表面に突出する衝撃緩衝部材によりその衝撃が緩和され、容器への衝撃を吸収することができる。ここで外部繊維材は全面にわたり巻き付けるのではなく、網目状に巻き付けるので、衝撃緩衝部材の露出部分の弾性復元力が損なわれておらず、十分な衝撃吸収力を温存させることができているので、衝撃を確実に吸収することができる。また、網目状に巻き付けることで外部繊維材の使用量を大幅に低減でき、容器の軽量化を図ることができる。さらに、衝撃緩衝部材が上下両側の胴部の側面からも外方に突出して形成されているので、圧力容器が水平姿勢で落下した場合でも、衝撃緩衝部材によりその衝撃が緩和されて容器の破損を防止することができる。
【0012】
また、本発明において、衝撃緩衝部材を巻き付ける外部繊維材はガラス繊維であり、補強繊維層には炭素繊維層が形成されるようにしてもよい。
補強繊維層には、強度が強い炭素繊維層を用い、外側の外部繊維材はガラス繊維層とするようにして補強繊維層と外部繊維材とを異なる材料にすることで、耐圧性能を持たせるだけでなく、ガラス繊維層は衝撃を受けることにより白化するので、衝撃を受けた場所を特定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る圧力容器の一実施形態を一部断面で示した側面図。
【
図2】本発明における衝撃緩衝部材の衝撃吸収エネルギーを説明するための図。
【
図3】本発明に係る圧力容器の他の実施形態を一部断面で示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において本発明の圧力容器の実施例を、図面に基づいて具体的に説明する。
図1で示すように、本発明の圧力容器Aは、金属ライナ1(具体的にはアルミライナ)と、その外周面を被覆する補強繊維層2を備えている。なお、図示は省略するが、金属ライナ1に接する最も内側層には電食を防止する目的のための薄い樹脂層または樹脂含浸ガラス繊維層(絶縁層)が形成され、これを除いた補強繊維層2が当該絶縁層の上に後述するように複数層形成される。補強繊維層2は強度が樹脂層やガラス繊維層よりもはるかに強い炭素繊維層にしてある。
【0015】
金属ライナ1は、円筒状の胴部1aの一端部(上側)に椀状の肩部1bを介して小径の口部1cが一体に形成されており、この口部1cの内面にバルブなどを接続するためのネジ1dが形成されている。また、胴部1aの他端部(下側)にも椀状の肩部1bを介して小径の口部1cが一体的に形成されており、この口部1cの内面に封止プラグ3を取り付けるためのネジ1dが形成されている。
【0016】
金属ライナ1は、例えばJIS−A6061等のアルミニウム合金製のブランク材から成形され、成形後に熱処理が施されている。
【0017】
補強繊維層2の炭素繊維層は、高剛性の炭素繊維束に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて金属ライナ1の外周面に複数層巻き付けて、熱硬化性樹脂を硬化させることにより形成される。この補強繊維層2は、炭素繊維束をフィラメントワインディング法で金属ライナ1の胴部1aの外面に周方向に巻くフープ巻層と、金属ライナ1の胴部1aから肩部1b、1bや両端の口部近傍を折返すように中心軸方向に対し所定の配向角で巻くヘリカル巻層とからなる。このフープ巻層とヘリカル巻層とを交互に複数層重ねることによって補強繊維層2が形成されている。
【0018】
さらに、補強繊維層2の外側で圧力容器Aの上、下の肩部から胴部の一部にかけて肩部表面並びに胴部表面から外方に突出する衝撃緩衝部材4が設けられている。衝撃緩衝部材4は、弾性樹脂体で形成されており、例えば発泡ウレタン樹脂が好適である。
【0019】
衝撃緩衝部材4は、その表面を帯状の外部繊維材5により網目状に巻き付けることにより、衝撃緩衝部材4の一部が露出されるようにして取り付けられている。この場合、巻き付けられる外部繊維材5は衝撃緩衝部材4の表面の一部に食い込むが、衝撃緩衝部材4の他の部分は、その原形を保持して圧縮による歪みが生じないような粗い網目で巻き付けられている。したがって、衝撃緩衝部材4は本来の弾性復元力をあまり損なわない状態で取り付けられている。
【0020】
衝撃緩衝部材4を巻き付ける外部繊維材5としてガラス繊維が使用され、
図1に示すように、ヘリカル巻で胴部外周面とともに巻き付けられている。なお、
図1の左半分に示す側面図は、外部繊維材5のヘリカル巻の様相を側面視で正確に写実的に表示するものでなく、便宜上その概要を示したものである。
【0021】
上記のごとく構成された圧力容器Aは、上部、下部の肩部から胴部の一部にかけてそれぞれ肩部表面並びに胴部表面から突出する衝撃緩衝部材4が設けられているので、圧力容器Aが誤って肩部から落下した場合に、肩部表面に突出する衝撃緩衝部材4によりその衝撃が緩和され、容器Aへの衝撃を吸収して破損を防止することができる。また、上下両側の衝撃緩衝部材4は胴部の側面からも外方に突出して形成されているので、圧力容器Aが水平姿勢で落下した場合でも、衝撃緩衝部材4によりその衝撃が緩和されて容器の破損を防止することができる。
この場合、特に本発明では、外部繊維材5は、衝撃緩衝部材4に対して圧縮による歪みが生じないような粗い網目で巻き付けられているので、衝撃緩衝部材4はその弾性復元力、すなわち衝撃吸収エネルギーをほとんど損なわない状態で取り付けられており、これにより弾性復元力を最大限に発揮して落下時の衝撃を緩和することができる。また、網目状に巻き付けることで外部繊維材の使用量を大幅に低減でき容器の軽量化が図られているため、落下時の衝撃エネルギー自体を低減することもできる。
さらに、衝撃を受けた部分は衝撃緩衝部材4の凹みやガラス繊維からなる外部繊維材5の白化として視認でき、損傷場所を特定することができる。
【0022】
図2は衝撃緩衝部材4の応力−歪曲線であり、
図2(a)は、外部繊維材5によって衝撃緩衝部材4を20%(0.2)まで歪ませた(圧縮させた)状態になるように巻き付けた後、容器落下により60%まで歪んだときの衝撃緩衝部材4の吸収エネルギーを示すものである。また、
図2(b)は、衝撃緩衝部材4が露出している部分(ひずみが0%の部分)について、容器落下により同様に60%まで歪んだときの衝撃緩衝部材4の吸収エネルギーを示すものである。それぞれの図において、ハッチングされた部分が衝撃吸収エネルギーを示す。
この
図2(a)、(b)の対比によって、衝撃緩衝部材4の一部を歪まないように巻き付けた場合の方が衝撃に対する吸収エネルギーを大きく利用できることがわかる。
【0023】
また上記実施例では、圧力容器Aの両端部に口部1c、1cを形成した形態を示したが、
図3に示すように、容器の下部側を底壁(底部)で閉じた形態の圧力容器であってもよいことは勿論である。この場合、容器Aの下部側のコーナー部分が先の実施例における下部肩部に相当する。
【0024】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものでない。例えば、圧力容器の胴部が長い場合は、胴部の中間部分に胴部側方に突出する衝撃緩衝部材を増設してもよい。その他本発明ではその目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、高圧ガスを充填する圧力容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
A 圧力容器
1 金属ライナ
2 補強繊維層
4 衝撃緩衝部材
5 外部繊維材