特許第5938221号(P5938221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938221
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】セメント質成形体
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20160609BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20160609BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20160609BHJP
   C04B 14/48 20060101ALI20160609BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20160609BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B18/14 Z
   C04B14/06 Z
   C04B14/48 Z
   C04B24/26 E
   E04B1/61 502L
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-20008(P2012-20008)
(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-159492(P2013-159492A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】300082335
【氏名又は名称】太平洋プレコン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】横山 滋
(72)【発明者】
【氏名】小林 征之
(72)【発明者】
【氏名】辻 正哲
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−270756(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3147166(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/61
E04C 2/30
C04B 7/00− 32/02
C04B 40/00− 40/06
C04B103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のセメント質成形体と嵌合構造を介して接合するための接合部分と、該接合部分以外の本体部分を有するセメント質成形体であって、少なくとも上記接合部分と上記本体部分の境界を含む領域が、100N/mm2以上の圧縮強度を有するセメント組成物の硬化体(ただし、上記圧縮強度の値は、φ50×100mmの寸法を有する、上記セメント組成物の硬化体における値である。)からなり、かつ、上記接合部分と上記本体部分の境界における単位幅当たりの上記本体部分の断面積と、上記セメント組成物の硬化体の引張強度の積の30%以上の単位幅当たりの引張力を上記接合部分に加えても破断しないものであり、
上記接合部分は、上記他のセメント質成形体との接合面に凸部と凹部が交互に形成されたものであり、
上記接合部分の上記凸部の各々に、当該凸部から上記本体部分に亘って1本以上の補強筋が配設されており、かつ、上記補強筋の断面積と上記補強筋の降伏強度の積よりも大きな引張力を上記接合部分に加えても破断しないものであり、
上記補強筋の直径が、3〜16mmであり、かつ、上記凸部の根元から上記補強筋の端部までの距離が、上記補強筋の直径に対して3〜10倍であり、
上記セメント組成物は、直径が0.05〜0.5mm、長さが5〜25mm、およびアスペクト比(繊維長/繊維直径)が20〜150の金属繊維を含み、
上記金属繊維の配合量が、上記セメント組成物中の体積百分率で、0.5〜3%であることを特徴とするセメント質成形体。
【請求項2】
上記セメント組成物は、上記金属繊維に加えて、セメント、ポゾラン質微粉末、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)、粒径2mm以下の骨材水、及び減水剤を含み、
上記セメントは、ブレーン比表面積が2,500〜4,500cm2/gのものであり、
上記ポゾラン質微粉末は、BET比表面積が5〜15m2/gのものであり、
上記無機粉末は、ブレーン比表面積が4,500〜20,000cm2/gで、かつ、上記セメントとのブレーン比表面積の差が1,000cm2/g以上のものであり、
上記ポゾラン質微粉末の配合量が、上記セメント100質量部に対して5〜50質量部であり、
上記無機粉末の配合量が、上記セメント100質量部に対して5〜55質量部であり、
上記骨材の配合量が、上記セメント100質量部に対して50〜250質量部であり、
上記水の配合量が、上記セメント100質量部に対して10〜35質量部であり、
上記減水剤の配合量が、上記セメント100質量部に対して、固形分換算で0.1〜4質量部である請求項1に記載のセメント質成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント質成形体、及び、該セメント質成形体を組み合わせてなる接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋等の補強筋を有するコンクリート成形体同士を接合するに際して、コンクリート成形体から予め露出させておいた補強筋同士、または、コンクリート成形体からはつり出した補強筋同士を、スリーブジョイント、重ね継手等の接合手段を用いて接合していた。
しかし、この方法は、接合に労力と時間がかかるという問題がある。このため、接合を効率的に行うための方法が検討されている。
一例として、鉄筋を有するコンクリート製の第1部材と、鉄筋を有するコンクリート製の第2部材との接合方法であって、前記第1部材の鉄筋と前記第2部材の鉄筋とを接続する接続部材を、前記第1部材及び前記第2部材の一方に、前記接続部材の軸方向に移動可能に挿入しておき、前記接続部材を、前記第1部材及び前記第2部材の他方から離間させた状態で、前記第1及び第2部材を建て込む工程と、前記接続部材を、前記第1部材及び前記第2部材の他方に接近させ、前記第1部材及び前記第2部材の他方の鉄筋にネジ式の第1機械式継手により継手する工程と、前記接続部材を、前記第1部材及び前記第2部材の一方の鉄筋にネジ式又はスリーブ式の第2機械式継手により継手する工程と、を実施するコンクリート部材の接合方法が、提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−1934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート成形体同士を接合するための従来の方法は、上述のとおり、一般的には、コンクリート成形体中の補強筋を利用して作業を行なうものであり、少なからぬ労力及び作業時間を要するものである。
補強筋を利用せずに、例えば、コンクリート成形体同士を嵌合させるだけで、接合部分の十分な強度を確保することは、従来、困難とされていた。
本発明は、上述の事情に鑑みて、セメント質成形体中の補強筋同士を直接つなぐ作業を行なう必要がなく、簡易な作業でかつ短い作業時間で、大きな強度(特に、引張力に対する抵抗力)を有する接合構造体を構築することのできるセメント質成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、他のセメント質成形体と嵌合構造を介して接合するための接合部分と、該接合部分以外の本体部分を有するセメント質成形体であって、少なくとも上記接合部分と上記本体部分の境界を含む領域が、100N/mm2以上の圧縮強度を有するセメント組成物の硬化体(ただし、上記圧縮強度の値は、φ50×100mmの寸法を有する、上記セメント組成物の硬化体における値である。)からなり、かつ、上記接合部分と上記本体部分の境界における単位幅当たりの上記本体部分の断面積と、上記セメント組成物の硬化体の引張強度の積の30%以上の単位幅当たりの引張力を上記接合部分に加えても破断しないものであり、上記接合部分は、上記他のセメント質成形体との接合面に凸部と凹部が交互に形成されたものであり、上記接合部分の上記凸部の各々に、当該凸部から上記本体部分に亘って1本以上の補強筋が配設されており、かつ、上記補強筋の断面積と上記補強筋の降伏強度の積よりも大きな引張力を上記接合部分に加えても破断しないものであり、上記補強筋の直径が、3〜16mmであり、かつ、上記凸部の根元から上記補強筋の端部までの距離が、上記補強筋の直径に対して3〜10倍であり、上記セメント組成物が、直径が0.05〜0.5mm、長さが5〜25mm、およびアスペクト比(繊維長/繊維直径)が20〜150の金属繊維を含み、上記金属繊維の配合量が、上記セメント組成物中の体積百分率で、0.5〜3%であるセメント質成形体によれば、上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[2]を提供するものである。
[1] 他のセメント質成形体と嵌合構造を介して接合するための接合部分と、該接合部分以外の本体部分を有するセメント質成形体であって、少なくとも上記接合部分と上記本体部分の境界を含む領域が、100N/mm2以上の圧縮強度を有するセメント組成物の硬化体(ただし、上記圧縮強度の値は、φ50×100mmの寸法を有する、上記セメント組成物の硬化体における値である。)からなり、かつ、上記接合部分と上記本体部分の境界における単位幅当たりの上記本体部分の断面積と、上記セメント組成物の硬化体の引張強度の積の30%以上の単位幅当たりの引張力を上記接合部分に加えても破断しないものであり、上記接合部分は、上記他のセメント質成形体との接合面に凸部と凹部が交互に形成されたものであり、上記接合部分の上記凸部の各々に、当該凸部から上記本体部分に亘って1本以上の補強筋が配設されており、かつ、上記補強筋の断面積と上記補強筋の降伏強度の積よりも大きな引張力を上記接合部分に加えても破断しないものであり、上記補強筋の直径が、3〜16mmであり、かつ、上記凸部の根元から上記補強筋の端部までの距離が、上記補強筋の直径に対して3〜10倍であり、上記セメント組成物は、直径が0.05〜0.5mm、長さが5〜25mm、およびアスペクト比(繊維長/繊維直径)が20〜150の金属繊維を含み、上記金属繊維の配合量が、上記セメント組成物中の体積百分率で、0.5〜3%であることを特徴とするセメント質成形体。
[2] 上記セメント組成物は、上記金属繊維に加えて、セメント、ポゾラン質微粉末、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)、粒径2mm以下の骨材水、及び減水剤を含み、上記セメントは、ブレーン比表面積が2,500〜4,500cm2/gのものであり、上記ポゾラン質微粉末は、BET比表面積が5〜15m2/gのものであり、上記無機粉末は、ブレーン比表面積が4,500〜20,000cm2/gで、かつ、上記セメントとのブレーン比表面積の差が1,000cm2/g以上のものであり、上記ポゾラン質微粉末の配合量が、上記セメント100質量部に対して5〜50質量部であり、上記無機粉末の配合量が、上記セメント100質量部に対して5〜55質量部であり、上記骨材の配合量が、上記セメント100質量部に対して50〜250質量部であり、上記水の配合量が、上記セメント100質量部に対して10〜35質量部であり、上記減水剤の配合量が、上記セメント100質量部に対して、固形分換算で0.1〜4質量部である上記[1]に記載のセメント質成形体。
また、本明細書は、以下の[3]〜[8]を開示するものである。
[3] 他のセメント質成形体と嵌合構造を介して接合するための接合部分と、該接合部分以外の本体部分を有するセメント質成形体であって、少なくとも上記接合部分と上記本体部分の境界を含む領域が、100N/mm2以上の圧縮強度を有するセメント組成物の硬化体(ただし、上記圧縮強度の値は、φ50×100mmの寸法を有する、上記セメント組成物の硬化体における値である。)からなり、かつ、上記接合部分と上記本体部分の境界における単位幅当たりの上記本体部分の断面積と、上記セメント組成物の硬化体の引張強度の積の30%以上の単位幅当たりの引張力を上記接合部分に加えても破断しないものであり、上記接合部分は、上記他のセメント質成形体との接合面に凸部と凹部が交互に形成されたものであり、上記接合部分の上記凸部の各々に、補強筋が配設されていないことを特徴とするセメント質成形体。
[4] 他のセメント質成形体と嵌合構造を介して接合するための接合部分と、該接合部分以外の本体部分を有するセメント質成形体であって、少なくとも上記接合部分と上記本体部分の境界を含む領域が、100N/mm2以上の圧縮強度を有するセメント組成物の硬化体(ただし、上記圧縮強度の値は、φ50×100mmの寸法を有する、上記セメント組成物の硬化体における値である。)からなり、かつ、上記接合部分と上記本体部分の境界における単位幅当たりの上記本体部分の断面積と、上記セメント組成物の硬化体の引張強度の積の30%以上の単位幅当たりの引張力を上記接合部分に加えても破断しないものであり、上記接合部分は、上記他のセメント質成形体との接合面に垂直な一対の面の各々に、凸部及び/又は凹部が形成されたものであることを特徴とするセメント質成形体。
[5] 上記[4]に記載のセメント質成形体と、該セメント質成形体の上記凸部及び/又は凹部と嵌合しうる凹部及び/又は凸部を有する一対のセメント質補助部材を組み合わせてなる接合構造体であって、上記セメント質成形体同士を、上記接合部分同士が対向するように組み合わせると共に、上記一対のセメント質補助部材の上記凹部及び/又は凸部を、上記組み合わせた2つのセメント質成形体の上記凸部及び/又は凹部に嵌合させてなることを特徴とする接合構造体。
[6] 少なくとも上記接合部分において、上記セメント質成形体と上記セメント質補助部材の両方に補強筋が配設されており、かつ、上記補強筋の断面積と上記補強筋の降伏強度(ただし、上記セメント質成形体がプレストレストコンクリートである場合、降伏強度に代えて、プレストレストコンクリートの補強筋であるPC鋼材の耐力を用いるものとする。)の積よりも大きな引張力を上記接合部分に加えても破断しないものである上記[5]に記載の接合構造体。
[7] 上記接合部分において、上記セメント質成形体と上記セメント質補助部材のいずれにも補強筋が配設されていない上記[5]に記載の接合構造体。
[8] 上記セメント質成形体及び上記セメント質補助部材は、セメント、ポゾラン質微粉末、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)、粒径2mm以下の骨材、金属繊維水、及び減水剤を含むセメント組成物の硬化体からなる上記[5]〜[7]のいずれかに記載の接合構造体。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセメント質成形体によればセメント質成形体中に補強筋が含まれているものの、該補強筋同士を直接つなぐ作業を行なう必要がなく、簡易な作業でかつ短い作業時間で、大きな強度(特に、引張力に対する抵抗力)を有する接合構造体を構築することができる。
本発明のセメント質成形体を用いて構築される接合構造体としては、例えば、型枠、プレハブ構造物等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のセメント質成形体の一例を示す平面図である。
図2図1に示すセメント質成形体を部分的に拡大して示す平面図である。
図3】本発明のセメント質成形体を組み合わせてなる接合構造体の一例を示す平面図である。
図4】本発明のセメント質成形体の接合部分の他の例を示す断面図である。
図5図4に示す接合部分にさらに補助補強筋を配設した一例を示す断面図である。
図6図4に示す接合部分にさらに補助補強筋を配設した他の例を示す断面図である。
図7セメント質成形体を組み合わせ、かつ、セメント質補助部材を用いてなる接合構造体の一例を示す断面図である。
図8図7に示す接合部分をさらに固定具を用いて締着した場合の一例を示す断面図である。
図9セメント質成形体を組み合わせ、かつ、セメント質補助部材を用いてなる接合構造体の他の例を示す断面図である。
図10セメント質成形体を組み合わせ、かつ、セメント質補助部材を用いてなる接合構造体の他の例を示す断面図である。
図11図10に示す接合構造体を構成するセメント質成形体の接合部分の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明のセメント質成形体及び接合構造体を説明する。
図1中、本発明のセメント質成形体1は、材料の構成としては、100N/mm2以上の圧縮強度を有するセメント組成物の硬化体2(以下、セメント質硬化体ともいう。)の中に、補強筋8、9を配設してなるものである。
また、本発明のセメント質成形体1は、外観としては、他のセメント質成形体と嵌合構造を介して接合するための接合部分3と、接合部分3以外の本体部分4を有するものである。
なお、本発明において、100N/mm2以上の圧縮強度を有するセメント組成物の硬化体は、本発明のセメント質成形体の、少なくとも接合部分と本体部分の境界を含む領域に用いられていれば良く、本発明のセメント質成形体の全体に用いても良いし、本発明のセメント質成形体の一部(接合部分と本体部分の境界を含む部分)に用いても良い。また、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも、接合部分と本体部分の境界を含む領域と、接合部分とが、100N/mm2以上の圧縮強度を有するセメント質硬化体であるものであり、本発明の特に好ましい実施形態は、100N/mm以上の圧縮強度を有する組成物の硬化体を本発明のセメント質成形体の全体に用いたものである。
本発明において、接合部分3は、接合部分3と本体部分4の境界における本体部分4の単位幅当たりの断面積と、セメント質硬化体2の引張強度(引張応力)の積の30%以上の単位幅当たりの引張力を、接合部分3に加えても破断しないものである。
【0010】
ここで、「接合部分3と本体部分4の境界における本体部分4の断面積」とは、接合部分3を形成する凹凸の凹部の底を結ぶ線(凹部の底同士を結んでなる連続線;図1に示す例では1本の直線)で、セメント質成形体を切断した場合における、本体部分4の断面積をいう。
接合部分3の破断時の単位幅当たりの引張力は、接合部分3と本体部分4の境界における本体部分4の単位幅当たりの断面積と、セメント質硬化体2の引張強度の積に対する割合として、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0011】
本発明のセメント質成形体1の接合部分の一例は、図1に示すように、他のセメント質成形体との接合面5に凸部6と凹部7が交互に形成されたものである
セメント質成形体1が、型枠(例えば、コンクリート構造体の打設及び成形用の型枠)である場合、セメント質成形体1の寸法は、例えば、長さ(図1にて左右方向に延びる、凹凸を有しない辺の寸法)が10〜300cm、幅(図1にて上下方向に延びる、凹凸を有する辺の寸法)が10〜300cm、厚さが1〜15cmである。この場合、隣り合う2つの凸部6の中心点の間の距離は、例えば、2〜30cmである。凸部6の高さ(凸部の根元から頂点までの距離;図1中の左右方向の距離)は、例えば、2〜30cmである。
【0012】
補強筋8は、図1中に点線で示すように、セメント質成形体1の一方の接合部分3の凸部6(図1中の左端の凸部)の中に一端を有し、本体部分4の領域内を通過し、他方の接合部分の凸部(図1中の右端の凸部)の中に他端を有するものであり、図1に示す例では、凸部6毎に2本ずつ配設されている。
凸部6毎に配設される補強筋8の本数は、1本以上であればよく特に限定されないが、接合部分3における引張力への抵抗性を向上させる観点から、好ましくは2本以上である。また、該本数の上限値は、特に限定されないが、凸部6の通常の大きさを考慮すると、好ましくは25本である。該本数は、より好ましくは2〜4本、さらに好ましくは2〜3本、特に好ましくは2本である。
補強筋8の径は、通常、3〜51mm、好ましくは6〜16mm、より好ましくは6〜13mmである。
補強筋9は、図1中に点線で示すように、本体部分4の領域内において、補強筋8に対して垂直に交差するように、適宜の間隔を空けて複数配設されている。補強筋9間の間隔は、想定される引張力の大きさに応じて定めることが好ましい。なお、補強筋8と補強筋9の鉛直方向の位置関係は、例えば、図4に示す補強筋15と補強筋16の位置関係と同様に、互いに接するように定めることができる。この場合、補強筋8と補強筋9は、その接点で固着されていてもよい。
なお、補強筋9は、2方向の引張力が作用する場合に必要である。補強筋8の延びる方向にのみ引張力が作用する場合には、補強筋9を配設する必要はない。
【0013】
凸部6の根元から補強筋8の端部までの距離(図2中の符号A)は、補強筋の直径に対して、好ましくは2〜15倍、より好ましくは3〜10倍、さらに好ましくは5〜10倍である。なお、該値は、従来技術では20倍以上に定めることが必要であったが、本発明では、20倍未満に定めることが可能である。
【0014】
図3に、図1に示すセメント質成形体1と、セメント質成形体1の接合部分3に嵌合するように構成したセメント質成形体10(本発明のセメント質成形体の他の例)を組み合わせてなる接合構造の一例を示す。このように左右の方向にセメント質成形体1とセメント質成形体10を交互に配置させることによって、所望の長さ(例えば、型枠の用途における幅)の接合構造体を構築することができる。
また、図3中、セメント質成形体1、10の上端の辺及び下端の辺(図3中の凹凸を有しない辺)の各々に、左端の辺及び右端の辺と同様の凹凸を形成させることもできる。この場合、上下方向に対しても、セメント質成形体1とセメント質成形体10を交互に配置させることによって、所望の長さ(例えば、型枠の用途における高さ)の接合構造体を構築することができる。
【0015】
セメント質成形体1において、接合部分3の厚さは、本体部分4の厚さと同じでもよいし、本体部分4の厚さより大きくてもよい。
接合部分の厚さを本体部分の厚さより大きく定めた一例を、図4に示す。なお、図4に示す例は、接合部分の厚さを図4に示すものに定めた以外は図1図3に示す例と同様に構成されている。
図4中、セメント質成形体11の接合部分13の断面は、本体部分12の端部から厚さが漸増し、次いで、一定の厚さを保って接合部分13の端部に至るように形成されている。この場合、接合部分13の端部(接合面14)の厚さは、例えば、本体部分12の厚さに対して、1倍を超え、4倍以下(好ましくは、2〜3倍)になるように定められる。
なお、図4中、符号15、16は補強筋を示す。また、図3及び図4中の符号C、C’で示す点線は、接合部分の厚さを本体部分の厚さより大きく定めた場合における、接合部分と本体部分の境界を示す。
また、本発明においては、図5及び図6に示すように、セメント質成形体の接合部分の中に、補強筋以外の補助補強筋を配設することもできる。
図5中、補助補強筋17は、円盤状のものであり、補強筋15の端部に、補強筋15の延びる方向に対して垂直となるように固着されている。
図6中、補助補強筋18は、螺旋状の線体であり、接合部分13の領域内の補強筋15の周囲を取り巻くように配設されている。
なお、図5及び図6中、図4と同じ名称を有する各部には、図4と同じ符号を付している。
本発明で用いられる補強筋及び補助補強筋の材質は、例えば、鋼、アラミド繊維、炭素繊維等である。
【0016】
セメント質成形体補強筋を含まない場合、セメント質成形体を形成するセメント組成物の硬化体の圧縮強度は、接合部分における引張力に対する優れた抵抗性を確保する観点から、好ましくは120N/mm2以上、より好ましくは150N/mm2以上、さらに好ましくは180N/mm2以上、特に好ましくは200N/mm2以上である。
【0017】
次に、セメント質成形体の他の実施形態例を説明する。
図7中、セメント質成形体21は、一定の厚さを有する板状の本体部分22と、本体部分22よりも大きな断面積を有するように上部及び下部が凸部として形成されている接合部分23とからなる。2つのセメント質成形体21同士を、接合部分23の接合面を当接させて突き合わせるとともに、これら2つのセメント質成形体21によって形成された上方に突出した凸部と下方に突出した凸部の各々に対して、断面形状が略コの字状であるセメント質補助部材24を嵌合させることによって、接合構造体が形成されている。
セメント質成形体21の内部には、図1に示すものと同様に、本体部分22及び接合部分23に亘って、補強筋25が配設されている。また、補強筋25の延びる方向に対して垂直に延びるように、補強筋26が配設されている。
突き合わせた2つのセメント質成形体21は、補強筋25の断面積と補強筋25の降伏強度の積よりも大きな引張力を、これら2つのセメント質成形体21の当接面に垂直な方向(図7中の左右の方向)に加えても破断しないものである。
ここで、セメント質成形体21がプレストレストコンクリートである場合、降伏強度に代えて、補強筋25(PC鋼材)の耐力を用いるものとする。また、この場合、セメント質補助部材24も、プレストレストコンクリートによって構成することができる。
セメント質補助部材24の内部にも、セメント質成形体21の補強筋25に対して、鉛直方向の投影が重なるように、補強筋27が配設されている。また、補強筋27の延びる方向に対して垂直に延びるように、補強筋28が配設されている。
なお、補強筋26、28は、図1に示す補強筋9と同様に、省くことができる場合がある。
【0018】
この接合構造体における一方のセメント質成形体21の中の補強筋25と、補強筋27との、補強筋25に垂直な方向における投影が重なる部分の長さ(図7中の符号Dで示す長さ)は、補強筋25の直径に対して、好ましくは2〜15倍、より好ましくは3〜10倍、さらに好ましくは5〜10倍である。
【0019】
図7に示す形態に対して、さらに、固着具を追加することができる。例えば、図8に示すように、突き合わせた2つのセメント質成形体21の各々に対して、セメント質成形体21及び一対のセメント質補助部材24の中を貫通するようにボルト29を挿通させ、これらのボルト29の各々をナット30で締着することによって、堅固な接合構造体を得ることができる。
【0020】
図7に示す形態に代えて、例えば、図9図10に示す形態を採用することもできる。
図9中、セメント質成形体31は、一定の厚さを有する板状の本体部分32と、本体部分32よりも大きな厚さを有する接合部分33とからなり、本体部分32から接合部分33に亘って、断面が略L字状に形成されている。そして、2つのセメント質成形体31を、接合部分33の接合面を当接させて突き合わせ、この突き合わせた2つの接合部分33によって形成された凸部に、断面形状が略コの字状であるセメント質補助部材34を嵌合させることによって、接合構造体が形成されている。なお、図9中、符号35〜38は補強筋を示す。
図9に示す接合構造体における一方のセメント質成形体31の中の補強筋35と、補強筋37との、補強筋35に垂直な方向における投影が重なる部分の長さ(図9中の符号Eで示す長さ)は、補強筋35の直径に対して、好ましくは2〜15倍、より好ましくは3〜10倍、さらに好ましくは5〜10倍である。
図10中、セメント質成形体41は、一定の厚さを有しかつ平坦な面を有する板状の本体部分42と、一定の厚さを有しかつ凹凸(溝が連なる形状)の面を有する板状の接合部分43とからなる。そして、2つのセメント質成形体41を、接合部分43同士が対向するように配置させ、これら2つの接合部分43の凹凸に、セメント質補助部材44を嵌合させることによって、接合構造体が形成されている。なお、図10中、符号45〜46は補強筋を示す。
図10に示す接合構造体における一方のセメント質成形体41の中の補強筋45と、補強筋46との、補強筋45に垂直な方向における投影が重なる部分の長さ(図10中の符号Fで示す長さ)は、補強筋45の直径に対して、好ましくは2〜15倍、より好ましくは3〜10倍、さらに好ましくは5〜10倍である。
接合部分43の凹凸は、例えば、図11に示すように、台形が一定の距離を置いて連続的に連なる断面を有するように形成することができる。
図9図10に示す実施形態例においても、図7に示す実施形態例と同様に、突き合わせた2つのセメント質成形体31、41は、補強筋35、45の断面積と補強筋35、45の降伏強度の積よりも大きな引張力を、これら2つのセメント質成形体31、41の当接面に垂直な方向(図9図10中の左右の方向)に加えても破断しないものである。ここで、セメント質成形体31、41がプレストレストコンクリートである場合、降伏強度に代えて、補強筋35、45であるPC鋼材の耐力を用いるものとする。
図7図10に示す実施形態例において、セメント質補助部材の好ましい材質の例として、本発明で規定する成分組成を有するセメント組成物の硬化体が挙げられる。
また、図7図9及び図10に示す実施形態例において、セメント質成形体とセメント質補助部材の間には、通常、エポキシ樹脂からなる接着剤層を介在させる。
【0021】
次に、本発明のセメント質成形体および図7図11に示す形態を有するセメント質成形体を形成するためのセメント組成物(以下、「本発明で用いられるセメント組成物」という。)について、説明する。
本発明で用いられるセメント組成物は、セメント、ポゾラン質微粉末、該ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末(ただし、セメントを除く。)、粒径2mm以下の骨材、金属繊維水、及び減水剤を含む。
本発明で用いられるセメント組成物は、金属繊維と共に、有機質繊維を含むことができる。
本発明で用いられるセメント組成物は、平均粒度1mm以下の繊維状又は薄片状の粒子を含むことができる。
セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント等が挙げられる。
セメントのブレーン比表面積は、硬化後の強度発現性等の観点から、好ましくは2,500〜5,000cm2/g、より好ましくは3,000〜4,500cm2/gである。
【0022】
ポゾラン質微粉末としては、例えば、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ等が挙げられる。
ポゾラン質微粉末のBET比表面積は、硬化後の強度発現性等の観点から、好ましくは5〜25m2/g、より好ましくは5〜15m2/gである。
ポゾラン質微粉末の配合量は、硬化後の強度発現性等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部である。
【0023】
ポゾラン質微粉末よりも大きな粒径を有する無機粉末としては、例えば、スラグ、石灰石粉末、長石類、ムライト類、アルミナ粉末、石英粉末、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。
該無機粉末のブレーン比表面積は、硬化後の強度発現性等の観点から、好ましくは3,000〜30,000cm2/g、より好ましくは4,500〜20,000cm2/gである。
該無機粉末とセメントとのブレーン比表面積の差は、硬化後の強度発現性等の観点から、好ましくは1,000cm2/g以上、より好ましくは2,000cm2/g以上である。
該無機粉末の配合量は、硬化後の強度発現性等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは5〜55質量部、より好ましくは10〜55質量部である。
【0024】
本発明においては、硬化後の強度発現性等を向上させるために、無機粉末として、粒度の異なる2種の無機粉末(小さな粒度を有する無機粉末A、及び大きな粒度を有する無機粉末B)を併用することができる。
この場合、無機粉末A及び無機粉末Bは、同じ種類の粉末(例えば、石灰石粉末)を使用してもよいし、異なる種類の粉末(例えば、石灰石粉末及び石英粉末)を使用してもよい。
無機粉末Aのブレーン比表面積は、好ましくは5,000〜30,000cm2/g、より好ましくは6,000〜20,000cm2/gである。無機粉末Aは、セメントよりも大きなブレーン比表面積を有することが好ましい。
無機粉末Aと、セメント及び無機粉末Bとのブレーン比表面積の差(換言すれば、無機粉末Aと、セメントと無機粉末Bのうちブレーン比表面積の大きい方とのブレーン比表面積の差)は、好ましくは1,000cm2/g以上、より好ましくは2,000cm2/g以上である。
【0025】
無機粉末Bのブレーン比表面積は、好ましくは2,500〜5,000cm2/gである。
セメントと無機粉末Bの間のブレーン比表面積の差は、好ましくは100cm2/g以上、より好ましくは200cm2/g以上である。
無機粉末Aの配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜45質量部である。無機粉末Bの配合量は、セメント100質量部に対して、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは5〜35質量部である。無機粉末Aと無機粉末Bの合計量は、セメント100質量部に対して、好ましくは5〜55質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
【0026】
粒径2mm以下の細骨材としては、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂又はこれらの混合物等を使用することができる。
該細骨材の配合量は、硬化後の強度発現性等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは80〜200質量部である。
【0027】
金属繊維としては、例えば、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。
金属繊維の寸法は、好ましくは、直径が0.01〜1mmで、長さが2〜30mmであり、より好ましくは、直径が0.05〜0.5mmで、長さが5〜25mmである。また、金属繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは40〜150である。
金属繊維の配合量は、セメント組成物中の体積百分率で、好ましくは4%以下、より好ましくは0.5〜3%、特に好ましくは1〜3%である。
有機質繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
有機質繊維の寸法は、好ましくは、直径が0.005〜1mmで、長さが2〜30mmであり、より好ましくは、直径が0.01〜0.5mmで、長さが5〜25mmである。
有機質繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は、好ましくは20〜200、より好ましくは30〜150である。
有機質繊維の配合量は、セメント組成物中の体積百分率で、好ましくは10%以下、より好ましくは1〜9%、特に好ましくは2〜8%である。
【0028】
平均粒度1mm以下の繊維状又は薄片状の粒子の例としては、以下のものが挙げられる。
繊維状の粒子としては、例えば、ウォラストナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられる。繊維状の粒子としては、硬化後の靭性を高める観点から、長さ/直径の比で表される針状度が3以上のものを用いることが好ましい。
薄片状の粒子としては、例えば、マイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
なお、繊維状又は薄片状の粒子における粒度とは、その最大寸法の大きさ(特に、繊維状粒子ではその長さ)である。
繊維状又は薄片状の粒子の配合量(これらの粒子を併用する場合は、合計量)は、セメント100質量部に対して、好ましくは35質量部以下、より好ましくは5〜25質量部である。
【0029】
水量は、セメント100質量部に対して、好ましくは10〜35質量部、より好ましくは12〜30質量部である。
減水剤としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することができる。これらのうち、減水効果の大きな高性能減水剤または高性能AE減水剤が好ましく、ポリカルボン酸系の高性能減水剤または高性能AE減水剤がより好ましい。
減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して、固形分換算で好ましくは0.1〜4質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。
なお、減水剤は、液状と粉末状のいずれでも使用することができる。
【0030】
前記の各材料の混練方法は、特に限定されるものではなく、例えば、(1)水、減水剤以外の材料を予め混合して、プレミックス材を調製しておき、該プレミックス材、水及び減水剤をミキサに投入し、混練する方法、(2)粉末状の減水剤を用意し、水以外の材料を予め混合して、プレミックス材を調製しておき、該プレミックス材及び水をミキサに投入し、混練する方法、(3)各材料を各々個別にミキサに投入し、混練する方法、等が挙げられる。
混練に用いるミキサは、通常のコンクリートの混練に用いられるどのタイプのものでもよく、例えば、オムニミキサ、揺動型ミキサ、パンタイプミキサ、二軸練りミキサ等が挙げられる。
本発明で用いられるセメント組成物及びその硬化体の物性は、次のとおりである。
セメント組成物は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において15回の落下運動を行なわないで測定したフロー値(以下、「0打フロー値」と称する。)が、230mm以上であり、流動性に優れるものである。
セメント組成物の硬化体は、100N/mm2以上の圧縮強度と、20N/mm2以上の曲げ強度を発現するものである。なお、該圧縮強度の好ましい値は、上述のとおりである。
セメント組成物の養生方法は、特に限定されるものではなく、例えば、気中養生、湿空養生、水中養生、加熱促進養生(例えば、蒸気養生、オートクレーブ養生)等の慣用手段またはこれらを組み合わせたものを採用することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々の実施形態を採ることができる。
[使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント;低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製;ブレーン比表面積:3,200cm2/g)
(2)ポゾラン質微粉末;シリカフューム(BET比表面積:10m2/g)
(3)無機粉末;石英粉末(ブレーン比表面積:7,500cm2/g)
(4)細骨材;珪砂(最大粒径:0.6mm)
(5)金属繊維;鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:13mm)
(6)水;水道水
(7)減水剤;ポリカルボン酸系高性能減水剤
【0032】
[実施例1]
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム31質量部、石英粉末39質量部、鋼繊維2体積%(セメント組成物中の割合)、珪砂120質量部、高性能減水剤1.0質量部(固形分換算)、水22質量部をオムニミキサに投入し混練して、セメント組成物を調製した。
セメント組成物の0打フロー値は、260mmであった。
セメント組成物を型枠(φ50×100mm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)とした。これらの硬化体(3本)の圧縮強度の平均値は、210N/mm2であった。
セメント組成物を型枠(4×4×16cm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生し、硬化体(3本)とした。これらの硬化体(3本)の曲げ強度の平均値は、40N/mm2であった。
【0033】
調製したセメント組成物を用いて、図1図4に示す薄肉部分(本体部分)の厚さが20mm、厚肉部分(接合部分)の厚さが60mmであるセメント質成形体1の一部(図1中の左端の辺の凸部の数及び右端の辺の凸部の数が、各々、2個のもの)を作製した。セメント質成形体1の寸法は、本体部分の長さ(図1中の凹凸を有しない辺の寸法)が200mm、幅(凹凸を有する辺の寸法)が100mm、厚さが20mm、凸部6間の間隔が50mm、凸部6の根元から補強筋の端部までの長さ(図2中の符号Aで示す長さ)が48mm、凸部6の根元から頂部までの長さ(図2中の符号Bで示す長さ)が54mmであった。また、材質が鋼である補強筋8、9の直径は6mmであった。
次に、このセメント質成形体1と嵌合しうるセメント質成形体10(図3参照)を作製した。セメント質成形体10は、接合部分の形状が異なる以外はセメント質成形体11と同じものである。
セメント質成形体1とセメント質成形体10を嵌合させて、接合構造体を得た。なお、セメント質成形体1とセメント質成形体10の接合面には、エポキシ樹脂からなる接着剤層を形成させた。
この接合構造体に対して、80N/秒の速度で引張力を増大させながら、破断するまで引張力を加えた。 その結果、補強筋8の断面積(126.7mm2)と補強筋8の降伏強度(375.7N/mm2)の積(47,594N)よりも大きな引張力(75,000N)を接合部3に加えるまで、接合構造体は破断しなかった。
【0034】
参考例1
補強筋8、9を配設しない以外は実施例1と同様に構成した2種のセメント質成形体を用いて、接合構造体を得た後、この接合構造体に対して引張力を加えた。
その結果、接合部分と本体部分の境界における単位幅(1cm)当たりの本体部分の断面積(2cm2)と、セメント組成物の硬化体の引張強度(13.8N/mm2)の積の98%の単位幅当たりの引張力(2,705N)を接合部分に加えるまで、接合構造体は破断しなかった。
【0035】
参考例2
実施例1で調製したセメント組成物と同じセメント組成物を用いて、図10図11に示すセメント質成形体41及びセメント質補助部材44と同様に構成したセメント質成形体及びセメント質補助部材を作製した。
セメント質成形体の寸法は、長さ(図10中の左右方向の長さ)が200mm、幅(図10中、紙面と垂直な方向の長さの寸法)が100mm、厚さ(図10中の上下方向の長さ)が20mm、接合部分の長さ(図10中の符号Fの長さ)が50mmであった。また、接合部分43の凹凸を形成する断面(図11参照)は、台形の形状の高さが1mm、根元の幅が3mm、上辺の幅が2mm、当該台形の形状同士を結ぶ直線部分の長さが2mmであった。
セメント質補助部材44は、凹凸の位置がセメント質成形体41と異なる以外はセメント質成形体41と同様にして作製した。
セメント質成形体41及びセメント質補助部材44の中に配設した、材質が鋼である補強筋の直径は、6mmであった。補強筋は、セメント質成形体41とセメント質補助部材44のいずれについても、幅方向(図10中、紙面に垂直な方向)の縁からの間隔が12.5mmで、幅方向の補強筋相互の間隔が25mmとなるように、4本配設した。
セメント質成形体41とセメント質補助部材44を嵌合させて、図10に示す接合構造体を得た。なお、セメント質成形体41とセメント質補助部材44の当接面には、エポキシ樹脂からなる接着剤層を形成させた。
この接合構造体に対して、80N/秒の速度で引張力を増大させながら、破断するまで水平方向に引張力を加えた。
その結果、補強筋の断面積(126.7mm2)と補強筋の降伏強度(375.7N/mm2)の積(47,594N)よりも大きな引張力(75,000N)を接合部に加えるまで、接合構造体は破断しなかった。
【0036】
参考例3
補強筋を配設しない以外は参考例2と同様に構成した2種のセメント質成形体を組み合わせて、接合構造体を得た。この接合構造体に、参考例2と同様にして引張力を加えた。
その結果、接合部分43と本体部分42の境界における単位幅(1cm)当たりの本体部分42の断面積(2cm2)と、セメント組成物の硬化体の引張強度(13.8N/mm2)の積の100%の単位幅当たりの引張力(2,760N)を接合部分43に加えるまで、接合構造体は破断しなかった。
【符号の説明】
【0037】
1,10,11,21,31,41 セメント質成形体
2 セメント質硬化体
3,13,23,33,43 接合部分
4,12,22,32,42 本体部分
5,14 接合面
6 凸部
7 凹部
8,9,15,16,25〜28,35〜38,45〜46 補強筋
17,18 補助補強筋
24,34,44 セメント質補助部材
29 ボルト
30 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11