(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダンプトラックの走行操作は運転室に設けたシフトレバーをオペレータが操作することによって行われる。このシフトレバーは、後進位置(R)、中立位置(N)、前進位置(F)の3段階に変位する。また、運転室には操舵手段としてのステアリングハンドルが備えられており、ダンプトラックの走行操作はステアリングハンドルおよびシフトレバーを操作することにより行う。ダンプトラックはシフトレバーにより前進または後進をするが、ステアリングハンドルを操舵することにより、左右の斜め前方或いは左右の斜め後方にダンプトラックを走行させる。
【0007】
前述した特許文献1の技術では、ダンプトラックの後方の視野のみがモニタに表示される。このとき、ステアリングハンドルの操舵角度が大きい場合には、後方のカメラの視野だけでは、これから走行しようとする方向の視野を十分に確保することができず、安全性を確保することができない。つまり、ステアリングハンドルの操舵角度が大きい場合には、ダンプトラックは斜め方向に後進するが、後方のカメラの画像だけでは側方が死角となって、視野の確保が不十分となる。このために、ダンプトラックの周囲を十分に安全に監視することができなくなる。
【0008】
そこで、本発明は、運搬車両の走行方向に応じた画像をモニタに表示させることで、運搬車両の走行時における安全性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の運搬車両の周囲監視装置は、運搬車両の少なくとも後方および左右側方を視野とするカメラと、前記運搬車両の運転室に備えられるモニタと、前記運転室に備えられ、前記運搬車両の前進および後進を操作するシフトレバーと、前記運搬車両の左右の方向の操舵情報であるステアリング情報と前記シフトレバーの情報とに基づいて、前記運搬車両の走行方向に応じた1または複数のカメラ画像を前記モニタに表示させるコントローラと、を備え
、前記コントローラは、前記運搬車両が停止しているときに、前記モニタの画面の領域を2つに分割して、1つの領域に前記後方および左右側方のうちの1つのカメラからのカメラ画像を表示し、他の領域に前記各カメラで取得したカメラ画像に基づいて、上方視点となるように視点変換した仮想視点画像を表示させる制御を行うことを特徴とする。
【0010】
この運搬車両の周囲監視装置によれば、運搬車両の後方および左右側方の合計3台のカメラを設置している。そして、ステアリング情報とシフトレバー情報とに基づいて、3台のカメラのうち何れか1台または複数台のカメラ画像をモニタに表示している。これにより、運搬車両の走行方向に応じて必要な視野を得ることができ、死角を少なくすることができる。このため、十分な安全性を確保することができる。
また、カメラの画像を上方視点となるように変換した仮想視点画像(俯瞰画像)により、運搬車両の周囲を見下ろした形で表示することができる。シフトレバーが後進操作となっているときに、モニタには後方のカメラと仮想視点画像との両者を表示することで、運搬車両の周囲の状況と運搬機械の後方の状況とを表示させることができる。これにより、安全性の向上を図ることができる。
【0011】
また、前記コントローラは、前記ステアリング情報の左右の操舵角度が所定角度未満であり、且つ前記シフトレバーが後進操作のときには前記モニタの画面に前記後方のカメラからのカメラ画像だけを表示し、前記ステアリング情報の左右の操舵角度が前記所定角度以上であり、且つ前記シフトレバーが後進操作のときには
前記1つの領域に前記後方のカメラからのカメラ画像を表示し、
前記他の領域に前記ステアリング情報に応じた左右側方の何れかのカメラからのカメラ画像を表示させる制御を行うことを特徴とする。
【0012】
ステアリングの操舵角度が小さいときには後方のカメラ画像のみがモニタに表示される。モニタの画面の表示領域はそれほど大きくないことから、後方に直進するときにはモニタの画面に後方の状況だけを表示することで、良好な視認性を得ることができる。一方、ステアリングの操舵角度が所定角度以上のときには、後方の視野と左右の何れかの側方の視野との両者を表示することで、斜め方向に進行しているときに、周囲の状況を正確に認識することができ、安全性の向上を図ることができる。
【0015】
また、
前記コントローラは、前記運搬車両の速度が所定速度以上となったときに、前記仮想視点画像から前記カメラ画像に切り換えて前記モニタに表示させる制御を行うことを特徴とする。
例えば、前記コントローラは、前記運搬車両の速度が所定速度未満のときに前記他の領域に前記仮想視点画像を表示し、前記運搬車両の速度が所定速度以上のときに前記左右側方の何れかのカメラからのカメラ画像を前記他の領域に表示させる制御を
行う。
【0016】
仮想視点画像は運搬車両の周囲を表示することができるが、運搬車両を中心として比較的狭い領域が表示範囲となる。運搬車両が停止或いは低速に移動するときには、仮想視点画像を表示することが望ましいが、運搬車両が高速に走行するときには、走行方向に応じたカメラ画像を表示することで、運搬車両の速度に応じた適切なカメラ画像をモニタに表示することができる。
【0017】
また、前記コントローラは、前記ステアリング情報の左右の操舵角度が所定角度未満であり、且つ前記シフトレバーが前進操作のときには前記モニタの画面に前記運搬車両の前方に設置されるカメラからのカメラ画像だけを表示し、前記ステアリング情報の左右の操舵角度が前記所定角度以上であり、且つ前記シフトレバーが前進操作のときには前記モニタの画面の領域を2つに分割して、1つの領域に前記前方に設置されるカメラからのカメラ画像を表示し、他の領域に前記ステアリング情報に応じた左右側方の何れかのカメラからのカメラ画像を表示させる制御を行うことを特徴とする。
【0018】
運搬車両には前方にも死角が生じる部分があるため、前方にカメラを設置する。そして、運搬車両を斜め方向に移動するときには、前方のカメラと左右側方のカメラとをモニタに表示することで、運搬車両の走行方向に応じた適切な画像が表示される。これにより、運搬車両の安全性の向上を図ることができる。
【0019】
また、
前記運搬車両は、積載物を積載するためのベッセルを有し、前記コントローラは、前記ベッセルを傾斜状態にして積載物を排土するときには、前記ベッセルの操作情報に基づいて、前記モニタに前記後方のカメラの映像を映し出すことを特徴とする。
【0020】
ベッセルの積載物を排土するときには、運搬車両の後方の状況をオペレータが認識することが極めて重要になる。このために、ベッセル操作情報に基づいて、後方カメラのカメラ画像を表示することで、排土時にオペレータに運搬車両の後方の状況を認識させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、ステアリング情報とシフトレバー情報とに基づいて、3台のカメラのうち何れか1台または複数台のカメラ画像をモニタに表示している。これにより、進行方向に応じて必要な視野を得ることができ、死角を少なくすることができる。従って、運搬車両の周囲の状況を正確に認識でき、安全性の向上を図ることができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。ここでは、ベッセル(荷台)を設けた運搬車両としてダンプトラックを適用している。
図1はダンプトラック1の全体構成を示している。ダンプトラック1としてはリジットダンプとアーティキュレートダンプとがあるが、何れを適用してもよい。なお、本実施形態で、「左」とは運転室から見た左方であり、「右」とは運転室から見た右方である。
【0024】
図1はダンプトラック1の左側の側面図を示しており、この図に示すように、ダンプトラック1は車体フレーム2と前輪3と後輪4とベッセル5とホイストシリンダ6と運転室7と4台のカメラ(前方カメラ8F、右方カメラ8R、左方カメラ8L、後方カメラ8B)とを有している。なお、
図1は左側方からダンプトラック1を示しているため、右方カメラ8Rは
図1には表れていないが、左方カメラ8Lの裏側に右方カメラ8Rが配置されている。また、後方カメラ8Bはダンプトラック1の後輪4の土砂等が付着しない位置に配置する。
【0025】
車体フレーム2はダンプトラック1の本体を形成するものであり、車体フレーム2の前方には前輪3が設けられており、後方には後輪4が設けられている。ベッセル5は荷台であり、土砂や鉱物等を積載する。ホイストシリンダ6は左右一対に設けられており、伸縮可能なホイストシリンダ6によりベッセル5を起伏させる。
【0026】
運転室7はオペレータが搭乗してダンプトラック1を操作するものであり、運転室7には所定の情報を表示するために、後述するモニタ14が配置されている。また、ダンプトラック1を操作する操作手段として、ダンプトラック1を前進または後進させるシフトレバー21、ダンプトラック1の走行方向を左右に変えるステアリングハンドル22、ダンプトラック1を加速させるためのアクセルペダル等が設けられている。オペレータは運転室7に搭乗して、各種操作手段の操作を行なうことで、ダンプトラック1を任意の方向に走行させる。また、必要に応じて、モニタを確認する。
【0027】
ダンプトラック1の周囲を監視するために設けられる4つのカメラのうち前方カメラ8Fはダンプトラック1の前方から斜め下方に向けた範囲を視野としている。右方カメラ8Rはダンプトラック1の右側部に取り付けられており、ダンプトラック1の右側部から斜め下方に向けた範囲を視野としている。左方カメラ8Lはダンプトラック1の左側部に取り付けられており、ダンプトラック1の左側部から斜め下方に向けた範囲を視野としている。後方カメラ8Bはダンプトラック1の後方に配置され、斜め下方に向けた範囲を視野とする。
【0028】
そして、各カメラ(前方カメラ8F、右方カメラ8R、左方カメラ8L、後方カメラ8B)はダンプトラック1から所定の範囲を視野範囲としているが、各カメラの一部にはダンプトラック1の一部(車体2や前輪3、後輪4等)が表示されるようにしている。
【0029】
ダンプトラック1に設置される4台のカメラ8F、8L、8R、8Bはそれぞれ異なる方向を視野としている。これら4台のカメラ8F、8L、8R、8Bは撮影する方向が概ね90度異なるようにしている。これにより、ダンプトラック1のほぼ全周に渡る視野を得ることができる。
【0030】
また、4台のカメラ8F、8L、8R、8Bはそれぞれ斜め下方を視野としており、例えば、
図1に示すように、前方カメラ8Fは接地面をLとしたときに角度θを持った斜め下方に対物レンズの光軸を向けている。これにより、接地面Lに対して角度θを持ったカメラ画像を得ることができる。この接地面Lを仮想平面とした画像は、仮想視点VFの光軸が垂直方向(水平面と直交する方向)になるように座標変換した画像が仮想視点画像として生成される。つまり、仮想視点VFから接地面Lを見下ろした仮想的な画像が仮想視点画像となる。この仮想視点画像が俯瞰画像となる。
【0031】
図2は車体コントローラ20と表示コントローラ30とにより構成されるコントローラを示しており、表示コントローラ30がモニタ14に接続される。モニタ14は運転室7に配置されるものであり、搭乗するオペレータの前方の視界を妨げない位置に配置される。このモニタ14は情報を表示するための表示部15と所定の情報を入力するための入力部16とを有して構成している。
【0032】
表示部15には4台のカメラ8F、8L、8R、8Bが撮影した画像(カメラスルー画像)を表示することもでき、視点変換した仮想視点画像を表示することもできる。カメラスルー画像および仮想視点画像は両者とも画像データであり、この画像データが表示部15に表示される。表示部15は縦横に所定の表示領域を有しており、表示部15の全体にカメラスルー画像或いは仮想視点画像を表示することもできるが、この表示領域を2つに分割して、それぞれ異なる画像を表示することができる。
【0033】
車体コントローラ20は主に車体制御部20Cを有して構成される。車体コントローラ20の車体制御部20Cにはシフトレバー情報とステアリング情報と走行速度情報とベッセル操作情報とが入力されている。シフトレバー情報は運転室7に設けられているシフトレバー21に関する情報である。シフトレバー21は前進(F)、中立(N)、後進(R)の3段階に変化する。従って、シフトレバー21が「F」のときにはダンプトラック1は前進し、「N」のときにはダンプトラック1は停止し、「R」のときにはダンプトラック1は後進する。シフトレバー情報はシフトレバー21が「F」、「N」、「R」の何れの位置に入っているかの情報である。このシフトレバー情報は車体コントローラ20に入力される。
【0034】
また、運転室7にはステアリングハンドル22が設けられており、オペレータがステアリングハンドル22を操舵することにより、ダンプトラック1を任意の方向に走行させることができる。車体コントローラ20にはステアリングハンドル22の操舵角度がステアリング情報として入力される。
【0035】
ダンプトラック1の前輪3および後輪4の回転速度からダンプトラック1の速度を検出する速度検出手段23が設けられており、この速度検出手段23によりダンプトラック1の走行速度を示す走行速度情報が得られる。この走行速度情報が車体コントローラ20に入力される。ベッセル操作情報は運転室7に設けられるベッセル操作手段24により制御されるホイストシリンダ6の伸縮情報を示しており、ホイストシリンダ6が伸張状態のときにはベッセル5が傾斜することにより、積載物が排土される。一方、ホイストシリンダ6が収縮状態のときには、ベッセル5は平行となっており、積載物が排土されることはない。車体コントローラ20はシフトレバー情報とステアリング情報と走行速度情報とベッセル操作情報とを車体情報として表示コントローラ30に入力させる。
【0036】
表示コントローラ30はモニタ14に表示させる内容を制御する装置である。この表示コントローラ30は記憶保持部31と画像補正部32と視点変換部33と画像合成部34と表示画像生成部35と画像選択部36とを備えて構成している。また、表示コントローラ30には後方カメラ8B、左方カメラ8L、右方カメラ8R、前方カメラ8Fが撮影している映像(カメラ画像)が入力される。カメラ画像は連続的に取得されるものであり、これにより各カメラの映像を動画としてリアルタイムに認識することができる。
【0037】
記憶保持部31は4台のカメラ8F、8L、8R、8Bの撮影画角やレンズ歪み等のカメラ光学系パラメータ、搭載位置・姿勢情報、仮想視点画像に変換する際の仮想視点情報、表示画像用のシンボルマークM(後述する)や縮尺値等の各種情報を記憶している。記憶保持部31は画像補正部32と視点変換部33と画像合成部34と表示画像生成部35と画像選択部36とに情報を出力している。
【0038】
画像補正部32は4台のカメラ8F、8L、8R、8Bに接続されており、これら4台のカメラ8F、8L、8R、8Bから取り込んだ画像データに対して、記憶保持部31に記憶されているカメラ光学系パラメータ等に基づいて、収差補正やコントラスト補正、色調補正等の画像補正を行う。これにより、画像データの画質を向上させている。画像補正部32が補正処理した画像データは視点変換部33と画像選択部36とに出力される。
【0039】
視点変換部33は、画像補正部32が補正処理した各画像データ(前方画像、右方画像、左方画像、後方画像)に基づいて、これらの画像を上方視点となるように視点変換を行う。4台のカメラ8F、8L、8R、8Bは接地面Lに対して斜め下方に視野を向けて撮影し、このときに得られる画像データを画像変換処理して、仮想視点VFからの画像(仮想視点画像)に変換することができる。仮想視点画像は視点を上方位置とした俯瞰画像になり、この俯瞰画像に基づいてダンプトラック1の周囲の状況が正確に認識できるようになる。なお、4台のカメラ8F、8L、8R、8Bの撮影視野の境界を重複させることで、ダンプトラック1の周囲の状況に死角をなくすことができる。
【0040】
前方画像、右方画像、左方画像、後方画像のうち、前方画像については運転室7からオペレータが視認することができるため、前方カメラ8Fを設置せずに前方画像を省略することもできる。一方、右方画像、左方画像、後方画像の3つの画像は必須の画像(カメラスルー画像)であり、仮想視点画像を生成するときも3つの画像に基づいて生成してもよい。ただし、運転室7の視野前方にも死角を生じる場合があり、前方カメラ8Fを設置することで、この死角部分を表示することができる。
【0041】
画像合成部34は、4台のカメラ8F、8L、8R、8Bの画像データを、ダンプトラック1のキャラクタをシンボルマークMとして中心に配置し、このシンボルマークを中心として前後および左右に領域を4分割する。例えば、
図3に示すように、ダンプトラック1のシンボルマークMを中心に上側の領域A1には前方の仮想視点画像、左側の領域A2には左方の仮想視点画像、右側の領域A3には右方の仮想視点画像、下側の領域A4には後方の仮想視点画像を割り当てて表示を行う。これにより、ダンプトラック1を中心とした仮想視点画像(俯瞰画像)を生成することができる。なお、
図3において、Hは作業員を示している。
【0042】
図2に戻って、画像補正部32からは画像選択部36に対しても、4台のカメラ8F、8L、8R、8Bが撮影した画像データが入力される。これら4つの画像データはカメラスルー画像としてカメラが直接的に捕らえている画像のデータになる。画像選択部36は、車体コントローラ20から出力される車体情報に基づいて、前方、右方、左方、後方の4つの画像データのうち何れか1つまたは複数の画像データを選択する。選択した画像データは表示画像生成部35に入力される。
【0043】
表示画像生成部35は、モニタ14の表示部15に表示される表示画像を生成する。この表示画像としては、画像合成部34により生成される仮想視点画像を表示画像とすることができる。また、画像選択部36により選択された1つの画像データを表示することもできる。前述したように、表示部15の表示領域は複数に分割することができる。よって、前後左右の画像データのうち2つの画像データを分割したそれぞれの領域に表示することもでき、また1つの領域は前後左右の画像データを表示し、もう1つの領域には仮想視点画像を表示することができる。
【0044】
次に、動作について説明する。オペレータは運転室7に搭乗して、ダンプトラック1を稼動させる。初期的にはダンプトラック1は停止しており、前輪3および後輪4の回転速度はゼロになっている。従って、速度ゼロの走行速度情報が車体コントローラ20に入力される。また、シフトレバーは中立位置(N)に入っているため、ダンプトラック1は停止している状態になる。
【0045】
このとき、表示コントローラ30は4台のカメラを用いて、前方画像、右方画像、左方画像、後方画像の4つの画像を入力して、画像補正部32により収差補正やコントラスト補正等を行う。そして、前方画像、右方画像、左方画像、後方画像の4つの画像は視点変換部33により仮想視点画像に変換される。その後、画像合成部34は、ダンプトラック1のシンボルマークMを中心にして、領域A1に前方の仮想視点画像、領域A2に左方の仮想視点画像、領域A3に右方の仮想視点画像、領域A4に後方の仮想視点画像を合成する。これにより、仮想視点画像が生成される。
【0046】
図3はモニタ14の表示例を示しており、表示部15は2つの領域に分割されている。表示部15の1つの領域には仮想視点画像が表示される。この仮想視点画像をモニタ14に表示することで、ダンプトラック1の全周に渡って上方から見下ろした画像が表示される。オペレータは表示部15に表示されている仮想視点画像を視認することで、ダンプトラック1と固定的或いは動的な障害物(例えば、作業員等)との間隔を一見して正確に把握することができる。
図3の仮想視点画像にはダンプトラック1の周囲に接近した位置に作業員Hが映し出されている。
【0047】
この仮想視点画像はダンプトラック1が停止しているときに表示することが特に有効である。モニタ14の表示部15に表示されている仮想視点画像をオペレータが視認することで、ダンプトラック1の周囲に動的或いは固定的な障害物があるか否かを確認でき、安全が確認されたときにダンプトラック1を走行させるようにする。
図3の場合には、作業員Hがダンプトラック1の近傍に位置していることから、ダンプトラック1のオペレータは作業員Hの存在に配慮をして、ダンプトラック1を走行させる。
【0048】
一方、表示部15の2つの領域のうちもう1つの領域(他の領域)には後方画像のカメラスルー画像、つまり視点変換を行っていない後方画像が表示される。この後方画像には作業員Hが映し出されており、またダンプトラック1の一部(リンク機構等)が後方画像に含まれている。従って、表示画像生成部35は2つの領域のうち1つの領域に仮想視点画像を表示し、もう1つの領域に後方画像のカメラスルー画像を表示するような表示画像を構成して、表示部15に表示させる。
【0049】
本実施形態の例では、表示部15に仮想視点画像と後方画像とを表示させているが、後方画像に代えて左方画像、右方画像、前方画像を表示させてもよい。また、表示部15の表示領域全体に仮想視点画像を表示させてもよい。ダンプトラック1が停止状態から走行状態に移行するときに最も注意すべきはダンプトラック1の周囲の状況であり、表示部15に仮想視点画像を表示させることで、安全性を確保できる。また、仮想視点画像と共に後方のカメラスルー画像を表示することで、ダンプトラック1の走行方向の視野をオペレータが認識することができる。
【0050】
運転室7に搭乗したオペレータは、シフトレバー21やステアリングハンドル22、アクセルペダルを操作することで、ダンプトラック1を任意の方向に走行させる。例えば、ダンプトラック1のベッセル5に積載されている土砂を積み下ろす位置までダンプトラック1を走行させて、ベッセル5の土砂を排土する。通常、ダンプトラック1が排土を行うときには、ダンプトラック1を所定の排土位置まで後進させた後に、ベッセル5の土砂を排土する。
【0051】
運転室7に搭乗したオペレータの前方の視界は良好であるが、後方についてはベッセル5が視界を妨げるため、殆どが死角になる。つまり、ダンプトラック1の後方については殆ど目視することができない。ダンプトラック1が後進するときには、真っ直ぐ後進する場合もあるが、斜め後方に後進する場合もある。
【0052】
前述したように、ダンプトラック1が停止しているときには仮想視点画像をモニタ14の表示部15に表示させることが望ましい。ただし、仮想視点画像はダンプトラック1を中心として狭小な範囲の画像となっているため、仮想視点画像の表示範囲の外側の視野を得るためには、前方カメラ8F、右方カメラ8R、左方カメラ8L、後方カメラ8Bが撮影している画像データ(カメラスルー画像)を表示することが必要な場合もある。このカメラスルー画像を表示部15に表示させることで、走行方向の状況を表示して、オペレータに了知させることができる。
【0053】
従って、運転室7に搭乗しているオペレータがアクセルペダルを操作することで、走行速度が速くなるが、この走行情報は車体コントローラ20から表示画像生成部35に入力される。表示画像生成部35は走行情報を認識して、走行速度が予め設定した所定速度以上になったときに、仮想視点画像よりもカメラスルー画像を優先的に表示するように制御する。
【0054】
運転室7に搭乗しているオペレータが、シフトレバーを「R」に入れたときに、シフトレバー情報が表示コントローラ30に入力される。また、走行速度情報およびステアリング情報も車体コントローラ20に入力される。走行速度が所定速度以上であり、シフトレバーが「R」であり、且つステアリング情報が示す操舵角度が所定角度未満であるときには、画像選択部36は後方画像を選択して、表示画像生成部35は後方画像のカメラスルー画像のみを表示させる。このときの表示部15の表示内容を
図4に示す。この場合も、表示されている画像は後方画像であることを示す「BACK」を表示させるようにしている。
【0055】
一方、運転室7に搭乗しているオペレータがシフトレバーを「R」に入れ、且つステアリングハンドル22が左に大きな操舵角度となっているときには、シフトレバー情報およびステアリング情報に基づいて、画像選択部36は後方画像および左方画像を選択する。そして、表示画像生成部35は表示部15を2分割して、1つの領域に後方画像を表示し、もう1つの領域に左方画像を表示する。
【0056】
図5はその表示例であり、表示部15を2分割したうちの1つの領域に左方画像を表示している。この左方画像にも車体の一部(タイヤ等)が映し出されている。また、もう1つの領域の後方画像を表示する。ダンプトラック1を斜め左後方に走行させるときに、後方画像だけでは左方に死角を生じる場合がある。そこで、左方画像も表示することで、ダンプトラック1の走行方向に応じた最適な画像を表示させることができる。
【0057】
つまり、後方カメラ8Bの視野角は所定範囲であり、ダンプトラック1を左斜め後方に走行させるときには、後方カメラ8Bの視野角のみではダンプトラック1の走行方向に死角を生じることがある。そこで、後方カメラ8Bの後方画像だけでなく、左方カメラ8Lの左方画像も表示部15に表示することで、ダンプトラック1の走行方向の視野を確実に表示することができる。
【0058】
図5の場合では、後方カメラ8Bに作業員Hが映し出されているが、左方カメラ8Lにも別の作業員Hが映し出されている。後方カメラ8Bでは左方カメラ8Lに映し出される別の作業員Hは映し出されない。そこで、ダンプトラック1を斜め左後方に走行させるときには、後方画像および左方画像を表示部15に表示して走行方向の安全性を確保することができる。
【0059】
ダンプトラック1を右斜め後方に走行させるときも同様であり、シフトレバーが「R」に入っており、且つステアリングハンドル22が右に大きな操舵角度となっているときには、画像選択部36は後方画像と右方画像とを選択する。そして、
図6に示すように、表示画像生成部35が後方画像と右方画像とを表示部15に表示させる。これにより、ダンプトラック1を右斜め後方に走行させるときでも、十分に広い視野を確保することができる。
【0060】
左斜め前方にダンプトラック1を走行させるときも同様であり、
図7に示すように、画像選択部36は前方画像と左方画像とを選択して、表示画像生成部35が領域を分割した前方画像と左方画像とを表示することで、走行方向に応じた画像を表示部15に表示させることができる。右斜め前方にダンプトラック1を走行させるときも同様であり、
図8に示すように、前方画像と右方画像とを表示部15に表示させる。
【0061】
従って、ダンプトラック1の少なくとも後方および左右側方にカメラ8B、8L、8Rを配置し、シフトレバー情報とステアリング情報とに基づいて、画像選択部36がダンプトラック1の走行方向に応じて1または複数の画像データを選択する。シフトレバーを「R」に入れたときに、ステアリングの操舵角度が小さければ、後方カメラ8Bの視野を映し出す後方画像だけで足りるが、ステアリングの操舵角度が予め設定した角度以上になったときは後方カメラ8Bの後方画像だけでなく、操舵方向の右方カメラ8Rの右方画像または左方カメラ8Lの左方画像も表示することで、ダンプトラック1の走行方向について広範な視野を得ることができる。これにより、ダンプトラック1を走行させるときの安全性を確保することができる。
【0062】
しかも、オペレータに格別の操作を要求することなく、ダンプトラック1を走行させるために必要なシフトレバーの操作およびステアリングハンドル22の操作を行なうだけで、表示部15にはダンプトラック1の走行方向に応じた最適なカメラの画像が自動的に選択される。これにより、オペレータに煩わしい操作を要求することなく、本実施形態の目的を達成することができる。
【0063】
また、ダンプトラック1を停止しているときには、ダンプトラック1の全周を見渡せる仮想視点画像を表示し、ダンプトラック1を走行させて所定速度以上になったときに仮想視点画像を非表示状態にして、カメラスルー画像を表示させている。これにより、ダンプトラック1の稼動状態によって、表示の態様を変更することで、ダンプトラック1の状況に応じて最適な情報を表示部15に表示させることができる。
【0064】
なお、仮想視点画像からカメラスルー画像に切り替えるのは、走行速度が所定速度以上になったときとしているが、所定速度は任意に予め設定できる。また、ステアリングハンドル22の操舵角度が所定角度以上のときに、後方画像だけでなく左方画像または右方画像を表示させているが、所定角度は任意に予め設定することができる。これらの所定速度および所定角度は予め記憶保持部31に記憶されている。
【0065】
ところで、ダンプトラック1を停止状態にしているとき(シフトレバーが「N」のとき)にベッセル5に積載された土砂等を排土する。これは、ベッセル5の操作レバーを用いて行うが、オペレータが操作レバーを用いてベッセル5を傾斜させるときには、ベッセル操作情報が車体コントローラ20に入力される。
【0066】
車体コントローラ20に入力されたベッセル操作情報に基づいて、ベッセル5が傾斜した状態のときには、画像選択部36は後方カメラ8Bが撮影している後方画像を選択する。従って、表示部15には後方画像が表示される。ベッセル5の排土操作を行うときには、後方の状況が極めて重要になるため、表示部15に仮想視点画像が表示されていたとしても、表示部15に強制的に後方画像を表示するようにする。これにより、オペレータは後方視野を確認しながら排土操作を行うことができる。
【0067】
前述したように、各カメラ8F、8R、8L、8Bのカメラスルー画像に、その方向性を明示するための方向情報を重畳して表示している。つまり、後方画像には「BACK」の文字を、左方画像には「LEFT」の文字を、右方画像には「RIGHT」の文字を、前方画像には「FRONT」の文字を画像データに重畳させている。これにより、表示されている画像の方向をオペレータに直感的に把握させている。なお、仮想視点画像については一見して仮想視点画像であることが認識できるため、方向情報を重畳させていないが、重畳させるようにしてもよい。
【0068】
また、以上においては、モニタ14の表示部15を最大で2分割した場合を説明したが、3分割、4分割にしてもよい。例えば、表示部15を4分割したときに、4つの領域に前方画像、左方画像、右方画像、後方画像を表示することができる。これらはカメラスルー画像であり、ダンプトラック1が何れの方向に走行したとしても、走行方向に応じた画像が表示される。
【0069】
ただし、モニタ14のサイズは小型であるため、表示部15を4分割して、前方画像、左方画像、右方画像、後方画像を表示すると、狭小な表示領域に多くの画像データが表示されることになる。これにより、視認性が低下する。従って、走行方向に応じた画像のみを選択して表示させることが望ましい。一方で、視認性が低下したとしても、前方画像、左方画像、右方画像、後方画像の4つの画像を表示させたい場合もある。その場合には、入力部16を用いて、手動で4つの画像を表示させるようにしてもよい。