特許第5938223号(P5938223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938223
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】配線回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20160609BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20160609BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20160609BHJP
   H05K 1/05 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   G11B21/21 D
   G11B5/60 P
   H05K1/02 D
   H05K1/02 E
   H05K1/02 B
   H05K1/05 Z
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-27545(P2012-27545)
(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公開番号】特開2013-164887(P2013-164887A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(72)【発明者】
【氏名】井原 輝一
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−103357(JP,A)
【文献】 特開2003−308668(JP,A)
【文献】 実開平03−048268(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/56−5/60
G11B 21/16−21/26
H05K 1/00−1/02
H05K 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および第2の面を有し、第1の部分と前記第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを含む絶縁層と、
前記絶縁層の前記第1の面上に形成され、予め定められたパターンを有する導体層と、
前記第1の部分と前記第2の部分との境界に重なるように、前記絶縁層の前記第1の面上の一部領域に形成される補強層とを備え、
前記導体層の少なくとも一部は、前記第1の部分と前記第2の部分との境界に重なるように、前記絶縁層の一面上の前記一部領域を除く他の領域に形成される、配線回路基板。
【請求項2】
第1の面および第2の面を有し、第1の部分と前記第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを含む絶縁層と、
前記絶縁層の前記第1の面上に形成され、予め定められたパターンを有する導体層と、
前記第1の部分と前記第2の部分との境界に重なるように、前記絶縁層の前記第1の面上の一部領域に形成される補強層とを備え、
前記補強層は銅を含む、配線回路基板。
【請求項3】
前記絶縁層の前記第1の面上の前記一部領域は平坦に形成され、前記絶縁層の前記第2の面上に前記第1の部分と前記第2の部分との境界による段差部が形成される、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記導体層の少なくとも一部は、前記第2の部分に重なるように形成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記補強層はポリイミド樹脂を含む、請求項1記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記絶縁層の前記第2の面上に設けられ、前記絶縁層を支持する支持基板をさらに備え、
前記導体層は、磁気ヘッドに電気的に接続可能に構成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項7】
第1の面および第2の面を有する第1の絶縁層の前記第1の面上に予め定められたパターンを有する導体層を形成するステップと、
前記第1の絶縁層を加工することにより、第1の部分と前記第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを形成するステップと、
前記第1の部分と前記第2の部分との境界に重なるように、前記第1の絶縁層の前記第1の面上の一部領域に補強層を形成するステップとを備え、
前記第1の絶縁層を加工するステップは、前記導体層の少なくとも一部に重なるように前記第1の絶縁層の前記第2の面の予め定められた領域をエッチングすることにより開口部とともに前記第2の部分を形成するステップを含む、配線回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記導体層の一部を覆うように前記第1の絶縁層の前記第1の面上に第2の絶縁層を形成するステップをさらに備え、
前記補強層は前記第2の絶縁層と同じ材料により形成され、
前記第2の絶縁層を形成するステップと前記補強層を形成するステップとが同時に行われる、請求項7記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項9】
第1の面および第2の面を有する絶縁層の前記第1の面上に予め定められたパターンを有する導体層を形成するステップと、
前記絶縁層を加工することにより、第1の部分と前記第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを形成するステップと、
前記第1の部分と前記第2の部分との境界に重なるように、前記絶縁層の前記第1の面上の一部領域に補強層を形成するステップとを備え、
前記補強層は前記導体層と同じ材料により形成され、
前記導体層を形成するステップと前記補強層を形成するステップとが同時に行われる、配線回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁層を加工するステップは、前記導体層の少なくとも一部に重なるように前記絶縁層の前記第2の面の予め定められた領域をエッチングすることにより前記第2の部分を形成するステップを含む、請求項9記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項11】
第1の面および第2の面を有する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成される配線パターンと、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上で前記配線パターンの端部につながるように形成される電極パッドと、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成される補強層と、
前記配線パターンを覆いかつ前記電極パッドを覆わないように前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成される第2の絶縁層とを備え、
前記第1の絶縁層は、一方向に並ぶように位置する第1、第2および第3の部分を含み、
前記第2の部分は、前記第1の部分と前記第3の部分との間に位置し、前記第1および第3の部分よりも小さな厚みを有し、
前記配線パターンは、前記第1の部分の前記第1の面上に形成された第1の導体層を含み、
前記電極パッドは、
前記第1の部分と前記第2の部分との境界に重なるように前記第1の面の第1の領域に形成された第2の導体層と、
前記第2の導体層を被覆するめっき層とを含み、
前記第1および第2の導体層は、互いに連続しかつ前記第1の面に接触し、
前記補強層は、前記第2の部分と前記第3の部分との境界に重なるように前記第1の面の第2の領域に形成され、前記第1の面に接触する、配線回路基板。
【請求項12】
第1の面および第2の面を有する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成される配線パターンと、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上で前記配線パターンの端部につながるように形成される電極パッドと、
前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成される補強層と、
前記配線パターンを覆いかつ前記電極パッドを覆わないように前記第1の絶縁層の前記第1の面上に形成される第2の絶縁層とを備え、
前記第1の絶縁層は、一方向に並ぶように位置する第1、第2および第3の部分を含み、
前記第2の部分は、前記第1の部分と前記第3の部分との間に位置し、前記第1および第3の部分よりも小さな厚みを有し、
前記配線パターンは、前記第1の部分の前記第1の面上に形成された第1の導体層を含み、
前記電極パッドは、
前記第1の部分と前記第2の部分との境界に重なるように前記第1の面の第1の領域に形成された第2の導体層と、
前記第2の導体層を被覆するめっき層とを含み、
前記第1および第2の導体層は、互いに連続しかつ前記第1の面に接触し、
前記補強層は、前記第2の部分と前記第3の部分との境界に重なるように前記第1の面の第2の領域に形成され、前記第1の面に接触し、
前記第2の部分は、開口部を有し、
前記電極パッドの一部は、前記開口部内に位置する、配線回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ装置等のドライブ装置にはアクチュエータが用いられる。このようなアクチュエータは、回転軸に回転可能に設けられるアームと、アームに取り付けられる磁気ヘッド用のサスペンション基板とを備える。サスペンション基板は、磁気ディスクの所望のトラックに磁気ヘッドを位置決めするための配線回路基板である。
【0003】
特許文献1および2には、金属支持基板、ベース絶縁層および導体パターンを含むサスペンション基板が記載されている。このサスペンション基板においては、金属支持基板上にベース絶縁層が形成されている。また、ベース絶縁層上に所定のパターンを有する導体パターンが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−108575号公報
【特許文献2】特開2010−108576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サスペンション基板の導体パターンにおける誘電損失を低減するために、ベース絶縁層の一部の厚みが小さく設定される場合がある。この場合、ベース絶縁層に大きい厚みを有する部分と小さい厚みを有する部分とにより段差部が形成される。段差部には応力が集中しやすいため、クラック等の損傷が発生する可能性が高くなる。
【0006】
本発明の目的は、絶縁層の段差部での損傷の発生が防止された配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1の発明に係る配線回路基板は、第1の面および第2の面を有し、第1の部分と第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを含む絶縁層と、絶縁層の第1の面上に形成され、予め定められたパターンを有する導体層と、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、絶縁層の第1の面上の一部領域に形成される補強層とを備え、導体層の少なくとも一部は、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、絶縁層の一面上の一部領域を除く他の領域に形成されるものである。
【0008】
その配線回路基板においては、第1の部分の厚みよりも第2の部分の厚みが小さい。この場合、第1の部分と第2の部分との境界に段差部が形成される。段差部には応力が集中しやすいため、損傷が発生する可能性が高い。
【0009】
1の部分と第2の部分との境界に重なるように、絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層が形成される。それにより、絶縁層における第1の部分と第2の部分との境界およびその周辺の部分が補強層により補強される。その結果、段差部に集中する応力が補強層により分散され、絶縁層の段差部での損傷の発生が防止される。
導体層の少なくとも一部は、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、絶縁層の一面上の一部領域を除く他の領域に形成される。この場合、補強層および導体層により絶縁層の段差部が補強される。それにより、絶縁層の段差部での損傷の発生が十分に防止される。
第2の発明に係る配線回路基板は、第1の面および第2の面を有し、第1の部分と第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを含む絶縁層と、絶縁層の第1の面上に形成され、予め定められたパターンを有する導体層と、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、絶縁層の第1の面上の一部領域に形成される補強層とを備え、補強層は銅を含む。
その配線回路基板においては、第1の部分の厚みよりも第2の部分の厚みが小さい。この場合、第1の部分と第2の部分との境界に段差部が形成される。段差部には応力が集中しやすいため、損傷が発生する可能性が高い。
第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層が形成される。それにより、絶縁層における第1の部分と第2の部分との境界およびその周辺の部分が補強層により補強される。その結果、段差部に集中する応力が補強層により分散され、絶縁層の段差部での損傷の発生が防止される。
補強層は銅を含む。この場合、第1の部分と第2の部分との境界における絶縁層の屈曲が防止される。それにより、絶縁層の段差部での損傷の発生が十分に防止される。
【0010】
絶縁層の第1の面上の一部領域は平坦に形成され、絶縁層の第2の面上に第1の部分と第2の部分との境界による段差部が形成されてもよい。
【0011】
この場合、補強層が平坦に形成される。それにより、補強層を絶縁層の第1の面上に容易に形成することができる。また、補強層に段差部が形成されない。それにより、補強層に損傷が発生することが防止される。
【0012】
体層の少なくとも一部は、第2の部分に重なるように形成されてもよい。
【0013】
この場合、導体層の少なくとも一部が、小さい厚みを有する絶縁層の第2の部分に重なる。それにより、導体層における誘電損失を低減することができる。
【0016】
強層はポリイミド樹脂を含んでもよい。
【0017】
この場合、配線回路基板のフレキシブル性の低下が抑制される。
【0020】
線回路基板は、絶縁層の第2の面上に設けられ、絶縁層を支持する支持基板をさらに備え、導体層は、磁気ヘッドに電気的に接続可能に構成されてもよい。
【0021】
この場合、配線回路基板をハードディスクドライブ装置等のドライブ装置のサスペンション基板として用いることができる。
【0022】
第3の発明に係る配線回路基板の製造方法は、第1の面および第2の面を有する第1の絶縁層の第1の面上に予め定められたパターンを有する導体層を形成するステップと、第1の絶縁層を加工することにより、第1の部分と第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを形成するステップと、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、第1の絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層を形成するステップとを備え、第1の絶縁層を加工するステップは、導体層の少なくとも一部に重なるように第1の絶縁層の第2の面の予め定められた領域をエッチングすることにより開口部とともに第2の部分を形成するステップを含む
【0023】
その配線回路基板の製造方法においては、第1の面および第2の面を有する第1の絶縁層の第1の面上に予め定められたパターンを有する導体層が形成される。また、第1の絶縁層を加工することにより、第1の部分と第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とが形成される。また、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、第1の絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層が形成される。
【0024】
上記のように作製された配線回路基板においては、第1の部分の厚みよりも第2の部分の厚みが小さい。この場合、第1の部分と第2の部分との境界に段差部が形成される。段差部には応力が集中しやすいため、損傷が発生する可能性が高い。
【0025】
1の部分と第2の部分との境界に重なるように、第1の絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層が形成される。それにより、第1の絶縁層における第1の部分と第2の部分との境界およびその周辺の部分が補強層により補強される。その結果、段差部に集中する応力が補強層により分散され、第1の絶縁層の段差部での損傷の発生が防止される。
第1の絶縁層を加工するステップは、導体層の少なくとも一部に重なるように第1の絶縁層の第2の面の予め定められた領域をエッチングすることにより開口部とともに第2の部分を形成するステップを含む。
この場合、第1の絶縁層の加工時には、第1の絶縁層の第2の面の予め定められた領域がエッチングされる。それにより、第1の絶縁層のエッチングされた部分の厚みが他の部分に比べて小さくなり、第1の部分と第2の部分とが形成される。開口部および第2の部分は、導体層の少なくとも一部に重なるように形成される。それにより、導体層における誘電損失を十分に低減することができる。
【0030】
線回路基板の製造方法は、導体層の一部を覆うように第1の絶縁層の第1の面上に第2の絶縁層を形成するステップをさらに備え、補強層は第2の絶縁層と同じ材料により形成され、第2の絶縁層を形成するステップと補強層を形成するステップとが同時に行われてもよい。
【0031】
この場合、配線回路基板の製造時に、補強層を第2の絶縁層と同じ工程で形成することができる。それにより、配線回路基板の製造時に、補強層を形成するための工程を個別に設ける必要がなくなる。その結果、補強層の形成による製造工程数および製造コストの増加が防止される。
【0032】
第4の発明に係る配線回路基板の製造方法は、第1の面および第2の面を有する絶縁層の第1の面上に予め定められたパターンを有する導体層を形成するステップと、絶縁層を加工することにより、第1の部分と第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを形成するステップと、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層を形成するステップとを備え、補強層は導体層と同じ材料により形成され、導体層を形成するステップと補強層を形成するステップとが同時に行われる。
【0033】
その配線回路基板の製造方法においては、第1の面および第2の面を有する絶縁層の第1の面上に予め定められたパターンを有する導体層が形成される。また、絶縁層を加工することにより、第1の部分と第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とが形成される。また、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層が形成される。
上記のように作製された配線回路基板においては、第1の部分の厚みよりも第2の部分の厚みが小さい。この場合、第1の部分と第2の部分との境界に段差部が形成される。段差部には応力が集中しやすいため、損傷が発生する可能性が高い。
第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層が形成される。それにより、絶縁層における第1の部分と第2の部分との境界およびその周辺の部分が補強層により補強される。その結果、段差部に集中する応力が補強層により分散され、絶縁層の段差部での損傷の発生が防止される。
補強層は導体層と同じ材料により形成され、導体層を形成するステップと補強層を形成するステップとが同時に行われる。
この場合、配線回路基板の製造時に、補強層を導体層と同じ工程で形成することができる。それにより、配線回路基板の製造時に、補強層を形成するための工程を個別に設ける必要がなくなる。その結果、補強層の形成による製造工程数および製造コストの増加が防止される。
絶縁層を加工するステップは、導体層の少なくとも一部に重なるように絶縁層の第2の面の予め定められた領域をエッチングすることにより第2の部分を形成するステップを含んでもよい。
この場合、絶縁層の加工時には、絶縁層の第2の面の予め定められた領域がエッチングされる。それにより、絶縁層のエッチングされた部分の厚みが他の部分に比べて小さくなり、第1の部分と第2の部分とが形成される。第2の部分は、導体層の少なくとも一部に重なるように形成される。それにより、導体層における誘電損失を低減することができる。
第5の発明に係る配線回路基板は、第1の面および第2の面を有する第1の絶縁層と、第1の絶縁層の第1の面上に形成される配線パターンと、第1の絶縁層の第1の面上で配線パターンの端部につながるように形成される電極パッドと、第1の絶縁層の第1の面上に形成される補強層と、配線パターンを覆いかつ電極パッドを覆わないように第1の絶縁層の第1の面上に形成される第2の絶縁層とを備え、第1の絶縁層は、一方向に並ぶように位置する第1、第2および第3の部分を含み、第2の部分は、第1の部分と第3の部分との間に位置し、第1および第3の部分よりも小さな厚みを有し、配線パターンは、第1の部分の第1の面上に形成された第1の導体層を含み、電極パッドは、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように第1の面の第1の領域に形成された第2の導体層と、第2の導体層を被覆するめっき層とを含み、第1および第2の導体層は、互いに連続しかつ第1の面に接触し、補強層は、第2の部分と第3の部分との境界に重なるように第1の面の第2の領域に形成され、第1の面に接触する。
第6の発明に係る配線回路基板は、第1の面および第2の面を有する第1の絶縁層と、第1の絶縁層の第1の面上に形成される配線パターンと、第1の絶縁層の第1の面上で配線パターンの端部につながるように形成される電極パッドと、第1の絶縁層の第1の面上に形成される補強層と、配線パターンを覆いかつ電極パッドを覆わないように第1の絶縁層の第1の面上に形成される第2の絶縁層とを備え、第1の絶縁層は、一方向に並ぶように位置する第1、第2および第3の部分を含み、第2の部分は、第1の部分と第3の部分との間に位置し、第1および第3の部分よりも小さな厚みを有し、配線パターンは、第1の部分の第1の面上に形成された第1の導体層を含み、電極パッドは、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように第1の面の第1の領域に形成された第2の導体層と、第2の導体層を被覆するめっき層とを含み、第1および第2の導体層は、互いに連続しかつ第1の面に接触し、補強層は、第2の部分と第3の部分との境界に重なるように第1の面の第2の領域に形成され、第1の面に接触し、第2の部分は、開口部を有し、電極パッドの一部は、開口部内に位置する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、配線回路基板における絶縁層の段差部での損傷の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板の上面図である。
図2図1のサスペンション基板の下面図である。
図3】主として図1のタング部の構造を示す縦断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板の製造工程を示す縦断面図である。
図6】サスペンション基板の他の構成例を示す縦断面図である。
図7】サスペンション基板のさらに他の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板および配線回路基板の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0037】
[1]実施の形態
まず、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板の一例として、ハードディスクドライブ装置のアクチュエータに用いられるサスペンション基板の構造およびその製造方法について説明する。
【0038】
(1)サスペンション基板の構造
図1は本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板の上面図であり、図2図1のサスペンション基板の下面図である。
【0039】
図1および図2に示すように、本例のサスペンション基板1は、主として金属支持基板10、第1の絶縁層11および第2の絶縁層12からなる。第1の絶縁層11は上面および下面を有する。第1の絶縁層11の上面上には、図1に太い点線で示すように、書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2が形成される。書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2を覆うように、第1の絶縁層11の上面の一部に第2の絶縁層12が形成されている。
【0040】
サスペンション基板1の先端部には、略U字状の開口部H1が形成されることにより磁気ヘッド搭載部(以下、タング部と呼ぶ)14が設けられている。タング部14は、サスペンション基板1における他の部分に対して所定の角度をなすように破線Rの箇所で折り曲げ加工される。
【0041】
金属支持基板10は、金属製の長尺状基板を加工することにより形成される。図2に示すように、金属支持基板10は、第1の絶縁層11の外周縁部に沿って延びるように第1の絶縁層11の下面に形成される。また、金属支持基板10は、タング部14の外周縁部に沿って延びるように第1の絶縁層11の下面に形成される。
【0042】
タング部14の端部には4つの電極パッド21,22,23,24が一方向に沿って並ぶように形成される。また、タング部14には、4つの電極パッド21,22,23,24が並ぶ方向に平行に延びる矩形の開口部H2が形成される。
【0043】
第1の絶縁層11は、大きい厚みを有する部分(以下、厚肉部分と呼ぶ。)と小さい厚みを有する部分(以下、薄肉部分と呼ぶ。)とを含む。タング部14においては、厚肉部分と薄肉部分との境界に重なるように、第1の絶縁層11の上面に略U字形状の補強層40が形成される。タング部14の詳細な構造については後述する。
【0044】
サスペンション基板1の中央部からタング部14までの間の領域においては、円形または楕円形状を有する複数の開口部H3が形成されている。サスペンション基板1の後端部には4つの電極パッド31,32,33,34が形成されている。タング部14上の電極パッド21〜24とサスペンション基板1の後端部の電極パッド31〜34とは、それぞれ書込用配線パターンW1、読取用配線パターンR1、書込用配線パターンW2、読取用配線パターンR2により電気的に接続されている。
【0045】
サスペンション基板1を備える図示しないハードディスク装置においては、磁気ディスクに対する情報の書込み時に一対の書込用配線パターンW1,W2に電流が流れる。また、磁気ディスクに対する情報の読込み時に一対の読取用配線パターンR1,R2に電流が流れる。
【0046】
(2)タング部14およびその周辺部の構造
図3は、主として図1のタング部14の構造を示す縦断面図である。図3の縦断面図は、図1および図2のサスペンション基板1のA−A線縦断面図に相当する。
【0047】
図3に示すように、第1の絶縁層11は、厚みD1を有する厚肉部分A1と厚肉部分A1の厚みD1よりも小さい厚みD2を有する薄肉部分A2とを含む。厚肉部分A1の下面上に金属支持基板10が設けられている。薄肉部分A2の下面上には金属支持基板10が設けられない。
【0048】
タング部14において、開口部H2は薄肉部分A2に形成される。各電極パッド21,22,23,24の少なくとも一部が開口部H2および薄肉部分A2に重なる。そのため、開口部H2においては、各電極パッド21,22,23,24の一部が下方の空間に露出する。それにより、各電極パッド21,22,23,24においては、誘電損失が十分に低減される。図3では、電極パッド22の端部が下方の空間に露出する状態が図示される。
【0049】
厚肉部分A1と薄肉部分A2との境界ABには、段差部が形成される。段差部には、応力が集中しやすいため、クラック等の損傷が発生する可能性が高くなる。そこで、本実施の形態では、厚肉部分A1と薄肉部分A2との境界ABに重なるように、第1の絶縁層11の上面上の少なくとも一部の領域に補強層40が形成される。
【0050】
(3)サスペンション基板1の製造方法
図4および図5は、本発明の一実施の形態に係るサスペンション基板1の製造方法を示す縦断面図である。図4および図5の縦断面図は、サスペンション基板1の各製造工程における図1および図2のA−A線縦断面図に相当する。
【0051】
初めに、ステンレス鋼(SUS)からなる長尺状基板を金属支持基板10として用意する。金属支持基板10としては、ステンレス鋼に代えてアルミニウム(Al)等の他の金属材料からなる長尺状基板を用いてもよい。金属支持基板10の厚みは例えば15μm以上25μm以下である。
【0052】
続いて、図4(a)に示すように、金属支持基板10上に感光性のポリイミド樹脂からなる第1の絶縁層11を形成する。第1の絶縁層11は、ポリイミド樹脂に代えて、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂等の他の樹脂材料により構成されてもよい。第1の絶縁層11の厚みD1は例えば8μm以上12μm以下である。
【0053】
その後、図4(b)に示すように、第1の絶縁層11の上面における予め定められた領域に、階調露光により図1の開口部H1,H2,H3にそれぞれ対応する複数の凹部を形成する。この場合、露光に用いる光の階調(強度)を調整することにより、複数の凹部の深さを調整することができる。それにより、複数の凹部の形成領域における第1の絶縁層11の厚みは、例えば0.5μm以上7μm以下に調整される。図4(b)では、図1の開口部H1,H2にそれぞれ対応する凹部G1,G2のみが図示される。なお、第1の絶縁層11の上面を局部的にエッチングすることにより凹部G1,G2を形成してもよい。
【0054】
次に、図4(c)に示すように、第1の絶縁層11上に予め定められたパターンを有する導体層9を形成する。本例の導体層9は、銅(Cu)からなり、4本の線状の導体パターンを含む。各導体パターンの一部(一端部)は、凹部G2内に位置する。
【0055】
導体層9の厚みは例えば7μm以上15μm以下である。導体層9は、例えばセミアディティブ法を用いて形成してもよく、サブトラクティブ法等の他の方法を用いて形成してもよい。導体層9は、銅に限らず、金(Au)、アルミニウム等の他の金属、または銅合金、アルミニウム合金等の合金を用いて形成することができる。
【0056】
続いて、図4(d)に示すように、第1の絶縁層11の上面における予め定められた領域に、ポリイミド樹脂からなる第2の絶縁層12および補強層40を形成する。ポリイミド樹脂からなる第2の絶縁層12および補強層40の厚みは例えば2μm以上15μm以下である。
【0057】
第2の絶縁層12の形成領域は、導体層9における各導体パターンの両端部を除く部分を覆うように設定される。第2の絶縁層12により覆われる4本の導体パターンの部分がそれぞれ書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2として構成される。
【0058】
補強層40の形成領域は、後述する第1の絶縁層11のエッチング工程で形成される境界ABを中心として厚肉部分A1側に一定幅D3の範囲、および境界ABを中心として薄肉部分A2側に一定幅D4の範囲に設定される。図4(d)では境界ABが太い点線の矢印で示される。一定幅D3,D4はそれぞれ10μm以上に設定される。本例では、一定幅D3,D4はそれぞれ30μmである。
【0059】
なお、第1の絶縁層11の上面においては、補強層40は、図1の電極パッド21〜24,31〜34および開口部H1,H2,H3の形成領域を除く全ての領域に形成されてもよい。この場合、補強層40のうち導体層9を覆う部分が、第2の絶縁層12として機能する。
【0060】
次に、図5(a)に示すように、第1の絶縁層11の下面上の予め定められた領域に位置する金属支持基板10の部分をエッチングにより除去する。これにより、金属支持基板10に開口部10nが形成され、第1の絶縁層11の下面の一部が開口部10n内の空間に露出する。
【0061】
この状態で、図1の開口部H1,H2,H3(図1)を形成するために、第1の絶縁層11の下面上の予め定められた領域をエッチングする。この場合、第1の絶縁層11においては、金属支持基板10の開口部10n内の空間に露出する部分が一定量エッチングされる。一方、第1の絶縁層11の下面上の金属支持基板10が重なる領域はエッチングされない。
【0062】
第1の絶縁層11の上面に形成される複数の凹部G1,G2の形成領域は、第1の絶縁層11の下面上の開口部10n内の領域に重なる。それにより、第1の絶縁層11の一部が一定量エッチングされることにより、上記の複数の凹部の形成領域に図1の開口部H1,H2,H3が形成される。第1の絶縁層11に開口部H1,H2,H3(図1)が形成されることにより、第1の絶縁層11のエッチングが停止される。図5(b)では、図1の開口部H1,H2のみが図示される。
【0063】
開口部H1,H2,H3の形成後には、図5(b)に示すように、エッチングされない部分の第1の絶縁層11の厚みD1に比べて、エッチングされる部分の第1の絶縁層11の厚みD2が小さくなる。それにより、厚肉部分A1および薄肉部分A2が形成される。薄肉部分A2の厚みD2は例えば1μm以上5μm以下である。このように、開口部H1,H2,H3が、薄肉部分A2に形成される。
【0064】
最後に、図5(c)に示すように、導体層9における各導体パターンの両端部の表面を覆うように金めっきPを形成する。それにより、図1図3に示すように、タング部14に4つの電極パッド21,22,23,24が形成される。また、サスペンション基板1の後端部に4つの電極パッド31,32,33,34が形成される。図5(c)には、電極パッド22が図示される。
【0065】
(4)効果
(4−a)上記のサスペンション基板1においては、厚肉部分A1の厚みD1よりも薄肉部分A2の厚みD2が小さい。この場合、厚肉部分A1と薄肉部分A2との境界ABに段差部が形成される。段差部には応力が集中しやすいため、損傷が発生する可能性が高い。
【0066】
このような場合でも、境界ABに重なるように、第1の絶縁層11の上面に補強層40が形成される。それにより、厚肉部分A1と薄肉部分A2との境界ABおよびその周辺の部分が補強層40により補強される。その結果、段差部に集中する応力が補強層40により分散され、第1の絶縁層11の段差部での損傷の発生が防止される。
【0067】
(4−b)第1の絶縁層11の上面上の補強層40が形成される領域は、平坦に形成されている。これにより、補強層40が平坦に形成される。それにより、補強層40を第1の絶縁層11の上面上に容易に形成することができる。また、補強層40に段差が形成されないので、補強層40に損傷が発生することが防止される。
【0068】
(4−c)図3の例では、第1の絶縁層11における補強層40が形成されていない部分にも、厚肉部分A1と薄肉部分A2との境界ABが形成されている。この境界ABを覆うように、導体層9が形成されている。この場合、第1の絶縁層11における段差部が、補強層40および導体層9により補強される。したがって、第1の絶縁層11の段差部での損傷の発生が十分に防止される。
【0069】
(4−d)図4および図5の例では、第2の絶縁層12および補強層40が同じ材料(ポリイミド樹脂)により形成される。これにより、サスペンション基板1の製造時には、補強層40を第2の絶縁層12と同じ工程で形成することができる(図4(d)参照)。したがって、補強層40を形成するための工程を個別に設ける必要がなくなる。その結果、補強層40の形成による製造工程数および製造コストの増加が防止される。
【0070】
(4−e)上記のサスペンション基板1においては、ポリイミド樹脂からなる補強層40が用いられる。ポリイミド樹脂からなる補強層40は十分なフレキシブル性を有する。それにより、サスペンション基板1のフレキシブル性の低下が抑制される。
【0071】
(5)他の構成例
上記では、サスペンション基板1にポリイミド樹脂からなる補強層40を用いる例を説明した。これに限らず、サスペンション基板1に銅(Cu)からなる補強層を用いてもよい。図6は、サスペンション基板1の他の構成例を示す縦断面図である。図6の縦断面図は、図1および図2のサスペンション基板1のA−A線縦断面図に相当する。
【0072】
図6の例では、境界ABに重なるように、第1の絶縁層11の上面に銅からなる補強層41が形成される。銅からなる補強層41の厚みは例えば7μm以上15μm以下である。
【0073】
補強層41の形成領域は、上記の補強層40の形成領域と同様に、境界ABを中心として厚肉部分A1側に一定幅D3の範囲、および境界ABを中心として薄肉部分A2側に一定幅D4の範囲に設定される。一定幅D3,D4はそれぞれ10μm以上に設定される。本例では、一定幅D3,D4はそれぞれ30μmである。
【0074】
銅からなる補強層41を用いる場合には、補強層41が大気中に露出していると、補強層41が腐食する可能性がある。そこで、本例では、補強層41を保護するために露出する補強層41の表面に金めっきPが形成される。金めっきPに代えてポリイミド樹脂等の樹脂材料を用いることにより、補強層41の表面部分が覆われてもよい。
【0075】
本例では、導体層9および補強層41が同じ材料(銅)により形成される。これにより、サスペンション基板1の製造時には、補強層41を導体層9と同じ工程で形成することができる(図4(c)参照)。また、導体層9の各導体パターンの両端部に金めっきPを形成する工程と同じ工程で、補強層41の表面に金めっきPを形成することができる(図5(c)参照)。したがって、補強層41を形成するための工程および補強層41に金めっきPを形成するための工程を個別に設ける必要がなくなる。その結果、補強層41の形成および補強層41への金めっきPの形成による製造工程数および製造コストの増加が防止される。
【0076】
また、銅からなる補強層41が用いられる場合には、補強層41により厚肉部分A1と薄肉部分A2との境界ABにおける第1の絶縁層11の屈曲が防止される。その結果、第1の絶縁層11の段差部での損傷の発生が十分に防止される。
【0077】
(6)さらに他の構成例
導体層9の形成領域においては、第1の絶縁層11の厚みを小さくすることにより、誘電損失を低減することができる。そこで、例えば電極パッド21,22,23,24の下部に位置する第1の絶縁層11の厚みが、導体層9に重ならない第1の絶縁層11の他の部分の厚みに比べて小さく設計される場合がある。
【0078】
図7は、サスペンション基板1のさらに他の構成例を示す縦断面図である。図7の縦断面図は、図1および図2のサスペンション基板1のA−A線縦断面図に相当する。
【0079】
図7(a)に示されるサスペンション基板1は、第1の絶縁層11に開口部H2が形成されていない点を除いて、図3のサスペンション基板1と同じ構成を有する。また、図7(b)に示されるサスペンション基板1は、第1の絶縁層11に開口部H2が形成されていない点を除いて、図6のサスペンション基板1と同じ構成を有する。
【0080】
図7(a),(b)のサスペンション基板1においても、境界ABに重なるように第1の絶縁層11の上面上にそれぞれ補強層40,41が形成される。これにより、段差部に集中する応力が補強層40,41により分散され、第1の絶縁層11の段差部での損傷の発生が十分に防止される。
【0081】
(7)他の実施の形態
上記の実施の形態では、厚肉部分A1の下部に金属支持基板10が形成される構成について説明した。これに限らず、厚肉部分A1の下部には、金属支持基板10が形成されなくてもよい。
【0082】
(8)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0083】
上記実施の形態においては、サスペンション基板1が配線回路基板の例であり、第1の絶縁層11が第1の絶縁層の例であり、第1の絶縁層11の上面が第1の面の例であり、第1の絶縁層11の下面が第2の面の例であり、厚肉部分A1が第1の部分の例であり、薄肉部分A2が第2の部分の例であり、厚みD1が第1の部分の厚みの例であり、厚みD2が第2の部分の厚みの例である。
【0084】
また、導体層9が導体層の例であり、厚肉部分A1と薄肉部分A2との境界ABが第1の部分と第2の部分との境界の例であり、第2の絶縁層12が第2の絶縁層の例であり、金属支持基板10が支持基板の例である。
【0085】
さらに、第1の絶縁層11の上面上の境界ABを中心として厚肉部分A1側に一定幅D3の範囲、および境界ABを中心として薄肉部分A2側に一定幅D4の範囲が一部領域の例である。
【0086】
請求項の各構成要素として、上記実施の形態に記載された構成要素の他、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【0087】
[2]実施例
図3図5を用いて説明した製造方法に従って、図7(a)の構造を有するサスペンション基板1を実施例1に係るサスペンション基板として作製した。
【0088】
実施例1に係るサスペンション基板においては、金属支持基板10の厚みは18μmである。第1の絶縁層11の厚肉部分A1の厚みD1は10μmであり、第1の絶縁層11の薄肉部分A2の厚みD2は3μmである。書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2の厚みは10μmである。ポリイミド樹脂からなる補強層40の厚みは5μmである。また、実施例1に係るサスペンション基板においては、図7(a)の幅D3に対応する幅が30μmに設定され、図7(a)の幅D4に対応する幅が30μmに設定される。
【0089】
ポリイミド樹脂からなる補強層40に代えて、銅からなる補強層41を用いる点を除いて、実施例1と同様に、図7(b)の構造を有するサスペンション基板1を実施例2に係るサスペンション基板として作製した。
【0090】
実施例2に係るサスペンション基板においては、金属支持基板10の厚みは18μmである。第1の絶縁層11の厚肉部分A1の厚みD1は10μmであり、第1の絶縁層11の薄肉部分A2の厚みD2は3μmである。書込用配線パターンW1,W2および読取用配線パターンR1,R2の厚みは10μmである。銅からなる補強層41の厚みは10μmである。また、実施例2に係るサスペンション基板においては、図7(b)の幅D3に対応する幅が30μmに設定され、図7(b)の幅D4に対応する幅が30μmに設定される。
【0091】
上記のように作製した実施例1および2に係るサスペンション基板をそれぞれハードディスク装置に取り付けた。この状態で、ハードディスク装置を一定時間動作させた後、実施例1および2に係るサスペンション基板をそれぞれハードディスク装置から取り外した。取り外された実施例1および2に係るサスペンション基板を視認した。その結果、実施例1および2に係るサスペンション基板のいずれにも、補強層40,41に重なる境界ABの部分にクラック等の損傷は発生していなかった。
[3]参考形態
(1)第1の参考形態に係る配線回路基板は、第1の面および第2の面を有し、第1の部分と第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを含む第1の絶縁層と、第1の絶縁層の第1の面上に形成され、予め定められたパターンを有する導体層と、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、第1の絶縁層の第1の面上の一部領域に形成される補強層とを備えるものである。
その配線回路基板においては、第1の部分の厚みよりも第2の部分の厚みが小さい。この場合、第1の部分と第2の部分との境界に段差部が形成される。段差部には応力が集中しやすいため、損傷が発生する可能性が高い。
第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、第1の絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層が形成される。それにより、第1の絶縁層における第1の部分と第2の部分との境界およびその周辺の部分が補強層により補強される。その結果、段差部に集中する応力が補強層により分散され、第1の絶縁層の段差部での損傷の発生が防止される。
(2)第1の絶縁層の第1の面上の一部領域は平坦に形成され、第1の絶縁層の第2の面上に第1の部分と第2の部分との境界による段差部が形成されてもよい。
この場合、補強層が平坦に形成される。それにより、補強層を第1の絶縁層の第1の面上に容易に形成することができる。また、補強層に段差部が形成されない。それにより、補強層に損傷が発生することが防止される。
(3)導体層の少なくとも一部は、第2の部分に重なるように形成されてもよい。
この場合、導体層の少なくとも一部が、小さい厚みを有する第1の絶縁層の第2の部分に重なる。それにより、導体層における誘電損失を低減することができる。
(4)導体層の少なくとも一部は、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、第1の絶縁層の一面上の一部領域を除く他の領域に形成されてもよい。
この場合、補強層および導体層により第1の絶縁層の段差部が補強される。それにより、第1の絶縁層の段差部での損傷の発生が十分に防止される。
(5)補強層はポリイミド樹脂を含んでもよい。
この場合、配線回路基板のフレキシブル性の低下が抑制される。
(6)補強層は銅を含んでもよい。
この場合、第1の部分と第2の部分との境界における第1の絶縁層の屈曲が防止される。それにより、第1の絶縁層の段差部での損傷の発生が十分に防止される。
(7)配線回路基板は、第1の絶縁層の第2の面上に設けられ、第1の絶縁層を支持する支持基板をさらに備え、導体層は、磁気ヘッドに電気的に接続可能に構成されてもよい。
この場合、配線回路基板をハードディスクドライブ装置等のドライブ装置のサスペンション基板として用いることができる。
(8)第2の参考形態に係る配線回路基板の製造方法は、第1の面および第2の面を有する第1の絶縁層の第1の面上に予め定められたパターンを有する導体層を形成するステップと、第1の絶縁層を加工することにより、第1の部分と第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とを形成するステップと、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、第1の絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層を形成するステップとを備えるものである。
その配線回路基板の製造方法においては、第1の面および第2の面を有する第1の絶縁層の第1の面上に予め定められたパターンを有する導体層が形成される。また、第1の絶縁層を加工することにより、第1の部分と第1の部分の厚みよりも小さい厚みを有する第2の部分とが形成される。また、第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、第1の絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層が形成される。
上記のように作製された配線回路基板においては、第1の部分の厚みよりも第2の部分の厚みが小さい。この場合、第1の部分と第2の部分との境界に段差部が形成される。段差部には応力が集中しやすいため、損傷が発生する可能性が高い。
第1の部分と第2の部分との境界に重なるように、第1の絶縁層の第1の面上の一部領域に補強層が形成される。それにより、第1の絶縁層における第1の部分と第2の部分との境界およびその周辺の部分が補強層により補強される。その結果、段差部に集中する応力が補強層により分散され、第1の絶縁層の段差部での損傷の発生が防止される。
(9)第1の絶縁層を加工するステップは、導体層の少なくとも一部に重なるように第1の絶縁層の第2の面の予め定められた領域をエッチングすることにより開口部とともに第2の部分を形成するステップを含んでもよい。
この場合、第1の絶縁層の加工時には、第1の絶縁層の第2の面の予め定められた領域がエッチングされる。それにより、第1の絶縁層のエッチングされた部分の厚みが他の部分に比べて小さくなり、第1の部分と第2の部分とが形成される。開口部および第2の部分は、導体層の少なくとも一部に重なるように形成される。それにより、導体層における誘電損失を十分に低減することができる。
(10)第1の絶縁層を加工するステップは、導体層の少なくとも一部に重なるように第1の絶縁層の第2の面の予め定められた領域をエッチングすることにより第2の部分を形成するステップを含んでもよい。
この場合、第1の絶縁層の加工時には、第1の絶縁層の第2の面の予め定められた領域がエッチングされる。それにより、第1の絶縁層のエッチングされた部分の厚みが他の部分に比べて小さくなり、第1の部分と第2の部分とが形成される。第2の部分は、導体層の少なくとも一部に重なるように形成される。それにより、導体層における誘電損失を低減することができる。
(11)配線回路基板の製造方法は、導体層の一部を覆うように第1の絶縁層の第1の面上に第2の絶縁層を形成するステップをさらに備え、補強層は第2の絶縁層と同じ材料により形成され、第2の絶縁層を形成するステップと補強層を形成するステップとが同時に行われてもよい。
この場合、配線回路基板の製造時に、補強層を第2の絶縁層と同じ工程で形成することができる。それにより、配線回路基板の製造時に、補強層を形成するための工程を個別に設ける必要がなくなる。その結果、補強層の形成による製造工程数および製造コストの増加が防止される。
(12)補強層は導体層と同じ材料により形成され、導体層を形成するステップと補強層を形成するステップとが同時に行われてもよい。
この場合、配線回路基板の製造時に、補強層を導体層と同じ工程で形成することができる。それにより、配線回路基板の製造時に、補強層を形成するための工程を個別に設ける必要がなくなる。その結果、補強層の形成による製造工程数および製造コストの増加が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、種々の電気機器または電子機器等に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 サスペンション基板
9 導体層
10 金属支持基板
11 第1の絶縁層
12 第2の絶縁層
14 タング部
21,22,23,24,31,32,33,34 電極パッド
40,41 補強層
A1 厚肉部分
A2 薄肉部分
AB 境界
D1,D2 厚み
D3,D4 幅
G1,G2 凹部
H1,H2,H3 開口部
P 金めっき
R1,R2 読取用配線パターン
W1,W2 書込用配線パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7