【実施例1】
【0016】
図1〜6において本発明に係る貯水槽1は、中間仕切り部2によって上下二分割されており、下支柱部材3の上端支持部5に上支柱部材6を立設状態に連結して構成されるプレキャストコンクリート製の内壁支柱部材7と、全体が一体に形成されたプレキャストコンクリート製の外壁支柱部材9と、該内壁支柱部材7と該外壁支柱部材9の上下方向の中間高さ位置に配設されて前記中間仕切り部2を構成するプレキャストコンクリート製の中間スラブ10と、該内壁支柱部材7と該外壁支柱部材9の上端側位置で貯水槽頂板部11を構成するプレキャストコンクリート製の上部スラブ12とを具えている。
【0017】
前記下支柱部材3は、
図6〜11に示すように、その左右の立面13,15の上部に、前記中間スラブ10の端部分16,16を下方から支持する中間受部17,17が設けられると共に、前記上支柱部材6の左右の立面19,20の上部には、前記上部スラブ12の端部分21,21を下方から支持する上部受部22,22が設けられている。
【0018】
又、前記外壁支柱部材9は
図6、
図12〜13に示すように、全体が一体に形成されると共に、前記貯水槽の内部側に位置する内側の立面23の上下方向の中間高さ位置には、前記中間スラブ10の端部分16を下方から支持する中間受部25が設けられると共に、該内側の立面23の上部には、前記上部スラブ12の端部分21を下方から支持する上部受部26が設けられている。
【0019】
そして前記内壁支柱部材7は、
図2、
図4、
図14に示すように、その前後の立面27,29としての継手面部30,30相互を当接状態にして1列に並設されることにより内壁支柱部材列31を形成でき、該内壁支柱部材列31が左右方向に所要間隔で並列されることにより内壁支柱部材列並列体32を構成できる。又、前記外壁支柱部材9は、該内壁支柱部材列並列体32を構成する両外側の内壁支柱部材列31a,31aに沿って、且つ、該内壁支柱部材列31a,31aと所要間隔を置いて、前後の立面33,33としての継手面部35,35相互を当接状態にして並設されることにより外壁支柱部材列34を構成できる。本実施例においては、前記内壁支柱部材列並列体32の外周の全体を囲むように該継手面部35,35相互を当接状態にして並設されることにより、
図1〜4に示すように外壁囲枠体36を構成できるようになされている。
【0020】
又、前記中間スラブ10が、
図4、
図7〜9に示すように、同一高さで対向する前記中間受部17,17間に、本実施例においてはその側部37,37相互を当接させて架設されると共に、
図13に示すように、同一高さにある前記中間受部17と前記中間受部25間に、本実施例においてはその側部37,37相互を当接させて架設されることによって前記中間仕切り部2が構成される如くなされている。
【0021】
該中間仕切り部2は、より具体的には
図4に示すように、前記内壁支柱部材列31の延長方向の両端側の部分53,53においては、矩形板状を呈する前記中間スラブ10aを架設して構成されると共に、該両端側の部分間55においては、前記延長方向で見た両側部分が内側に向けて欠切されることによって欠切開口部56,56が形成された中間スラブ10bを架設して構成されている。そして、該延長方向で見て隣り合う該欠切開口部56,56の合致によって、貯水槽底部を目視観察するための開口部57が形成されている。なお、該両端側の部分間55に架設される中間スラブ10bには、その中央部分等に円形孔や角形孔等の開口が設けられることもある。かかる開口や前記開口部57は、貯水や空気の上下移動も可能とする。
【0022】
そしてこのように、両端側の部分53,53においては矩形板状を呈する中間スラブ10aを配設しているため、前記延長方向の土圧に対する抵抗力の大きい上下二槽の貯水槽を構築できることとなる。なお、構造耐力上有害でない限り、該矩形板状の中間スラブ10aには、下の貯水部に水が流入する際の該下の貯水部内の空気をより円滑に上昇させる等の目的で、適宜小孔が設けられることがある。
【0023】
そして、前記上部スラブ12が、同一高さで対向する前記第1の上部受部22,22間に、側部39,39相互を当接させて架設されると共に、同一高さにある前記上部受部22と前記上部受部26間に、側部39,39相互を当接させて架設されることによって、
図2に示す水槽頂板部40が構成される如くなされている。
【0024】
かかる構成を有する貯水槽1によるときは、前記外壁支柱部材9が一体に構成されているために、土圧に対する抵抗力が大なる貯水槽1を構築できるのは元より、上支柱部材6を立設するに先立って、
図3に示すように広い作業スペースを確保して前記中間スラブ10を障害なく所要に架設でき、これによって前記中間仕切り部2を容易に構成できることとなる。その後、前記上支柱部材6を下支柱部材3の上端に立設させるのであるが、この立設施工は、構成された該中間仕切り部2を足場にして能率良く容易に施工できることとなる。
【0025】
図10〜11においては、上下方向に突出する連結筋42を、上支柱部材6の下部に埋設したスリーブ43に挿入し且つ該スリーブ43内に無収縮モルタルやグラウト等の充填材45を充填することによって、下支柱部材3の上端に上支柱部材6を立設状態に連結してなる内壁支柱部材7が示されている。又、
図10〜11においては、垂直に植立された接合用ボルト46を前記端部分16,16に設けた上下方向の貫通挿入孔47に挿入した後、該貫通挿入孔47に、前記と同様の充填材45を充填することによって、該端部分16,16を前記第1の中間受部17,17に固定している。同様にして、前記端部分16を前記外壁支柱部材9の中間受部25に固定すると共に、前記端部分21を前記上部受部22,26に固定している。
【0026】
図7、
図9において、符号41は、立設状態の上支柱部材6を垂直状態で仮支持するためのサポート装置である。
【0027】
図15〜16、
図17〜18、
図19〜20は、前記下支柱部材3の上端に上支柱部材6を立設状態にして内壁支柱部材7を構成するに際して用いる、該上支柱部材6の他の態様を示すものであり、左右の立面の19,20の下部の両側に側部支持部49,49が突設されている。
【0028】
又
図21〜23は、前記下支柱部材3の上端に上支柱部材6を立設状態にして内壁支柱部材7を構成するに際して、前記スリーブ43を下支柱部材3の上部に設ける一方、上下方向に突出する連結鉄筋42を上支柱部材6の下端に突設した場合を示しており、上支柱部材6の左右の立面19,20の下側部分に、側部支持片49,49が突設されている。
【0029】
図24は、前記貯水槽1のコーナ部分に配設される外壁支柱部材9を示すと共に、
図25は、前記内壁支柱部材列31の両端部に連結される外壁支柱部材9を示している。
【0030】
本発明に係る貯水槽1は、前記内壁支柱部材列並列体32の延長方向で見た両端部分50,50(
図3〜4)を、プレキャストコンクリート製や現場打ちコンクリート製の平板状の端面板で閉じることもある。更に、本発明に係る貯水槽1の、前記内壁支柱部材列並列体32の延長方向で見た両端部分は施工現場の地形によっては、平面視で直線状ではなく段階状に形成されることもある。
【0031】
図26は、本発明に係るL型部材51の一例を示すものであり、所要間隔を置いて立設された対向する支柱部材4,4(本実施例においては前記下支柱部材3,3)の上端支持部5,5で下方から支持されるL字状形態を呈し、プレキャストコンクリート製である。より具体的には、該対向する支柱部材4,4の内の何れか一方の支柱部材4aの上端支持部5に載置されて立設状態とされ且つ該上端支持部5に固定される垂直立壁部8(本実施例においては上支柱部材6)の下部18に、先端部分14(本実施例においては端部分16)が、該対向する支柱部材4,4の他方4bの上端支持部5で下方から支持され且つ該先端部分14が該上端支持部5に固定される水平スラブ24(本実施例においては中間スラブ10)が突設されてなるL字状形態を呈している。該L型部材51の前記下部18と前記先端部分14(端部分16)を前記対向する上端支持部5,5に載置すれば、該L型部材51を安定した立設状態で自立させることができる。
【0032】
図27〜30は、前記L型部材51の配置状態の一例を示すものであり、該L型部材51は、前記内壁支柱部材列並列体32を構成する少なくとも一列の内壁支柱部材列31を構成するために用いることができる。又、前記2列の外壁支柱部材列34,34の双方又は一方を構成するために用いることができる。又、該内壁支柱部材列31のみを構成するためや該外壁支柱部材列34のみを構成するために用いられることもある。かかることから、内壁支柱部材列31の全て及び2列の外壁支柱部材列34,34を、該L型部材51を配設して構成できる他、全ての内壁支柱部材列31及び2列の外壁支柱部材列34,34から選択された複数列を構成するために該L型部材を用いることができる。或いは、これらのうちの一列のみ(内壁支柱部材列31又は外壁支柱部材列34)を構成するために該L型部材51を用いることができる。更には、該一列を構成する内側支柱部材31の一部のみや外側支柱部材の一部のみに該L型部材51を用いることもできる。
【0033】
図31〜32は、前記L型部材51とU型部材52とを組み合わせて用いた場合を示すものであり、この場合は、独立した中間スラブ10を一切用いることなく貯水槽1を構成できることとなる。
【0034】
かかる構成を有するL型部材51は、小形化できるために運搬が容易であり、又、前記のように上支柱部材6と前記中間スラブ10を独立部材とする場合に比し、貯水槽の強度向上を図り得る。更に該L型部材51は、前記の上支柱部材6と前記中間スラブ10とを一体化してなるため、該L型部材51を前記のように架設しさえすれば、上支柱部材6と中間スラブ10の双方を位置決め設置できるため、該上支柱部材6と該中間スラブ10を個別に位置決め設置する場合に比し、貯水槽の組立て施工能率の向上を達成できる。そして該L型部材51を、両外壁支柱部材列34,34の内の一方のみを構成するために配設するときも、該L型部材51を設置する前においては、その設置すべき部分の下部空間を、鉄筋等の資材置き場として有効活用できると共に、資材置き場として役目が終わった後は、前記と同様に、該L型部材51を施工性よく設置できる。
【0035】
かかる構成を有するL型部材51は、例えば
図33に示すように複数段に積重されることもある。このように構成する場合は、貯水槽1を多槽に構築でき、貯水槽容積を増大させることができる。
【0036】
その他、本発明に係る貯水槽1は、前記内壁支柱部材列31及び外壁支柱部材列34の少なくとも一列を構成する内壁支柱部材7の全部又はその一部、外壁支柱部材9の全部又はその一部のみを、前記下支柱部材3の上端に上支柱部材6を立設状態に連結した上下連結型支柱として構成できる。然して、この中には、外壁支柱部材列34のみや内壁支柱部材列31の所要数の列のみを前記上下連結型支柱を用いて構成するものが含まれることになる。
【0037】
図34はその一例を示すものであり、外壁支柱部材列34は、全体が一体に構成された外壁支柱部材9を用いて構成する一方、内支柱並列体32は、全体が一体に構成された内壁支柱部材7aを一列に並設して構成された内壁支柱部材列31aと、前記上下連結型の内壁支柱部材7bを一列に並設して構成された内壁支柱部材列31bを交互に所要間隔で並設して構成されている。このように構成する場合も、隣り合う内壁支柱部材列31a,31a間や該内壁支柱部材列31aと前記外壁支柱部材列34との間には、上支柱部材6を立設する前において、広い作業スペースを形成できることになるため、中間スラブ10の架設作業を容易化できる。
【0038】
図35は、他の例を示すものであり、前記内支柱並列体32は、全体が一体に構成された内壁支柱部材7aを一列に並設して構成された内壁支柱部材列31aのみを所要間隔で並設して構成されており、前記外壁支柱部材列34を構成する前記外壁支柱部材9は、前記上下連結型に構成されている。この場合、
図36に示すように、該外壁支柱部材9を構成する前記下支柱部材3と中間スラブ10とがL字状に一体化されることもある。このように構成する場合は、該一体化されたL字状部材60によって、土圧に対する貯水槽1の強度向上を期待できる。
【0039】
又、前記中間仕切り部2を、例えば
図3〜4に示すように、前記内壁支柱部材列31の延長方向の両端側の部分53,53においては、矩形板状を呈する前記中間スラブ10aを架設して構成すると共に、該両端側の部分間55においては、前記延長方向で見た両側部分が内側に向けて欠切されることによって欠切開口部56,56が形成された中間スラブ10bを架設して構成する場合は、該欠切開口部56が形成された中間スラブ10bが存する部分においては、前記内壁支柱部材7を構成する上支柱部材6を
図7、
図9に示すようにサポート装置41で仮支持することが難しい。そのため、該中間スラブ10bが存する場所では、全体が一体に構成された内壁支柱部材7aを立設することとし、矩形板状を呈する前記中間スラブ10aが存する部分においては、上支柱部材6を
図7、
図9に示すようにサポート装置41で仮支持することが容易であるため、この部分では、前記上下連結型の支柱からなる内壁支柱部材7bを立設することがある。
【0040】
又、前記貯水槽1を構築する前記L型部材の所要のものには、その上支柱部材6や中間スラブ10に適宜、
図26に一点鎖線で示すような連通開口59が設けることがある。