特許第5938238号(P5938238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーヤ レンズ マニュファクチャリング フィリピン インクの特許一覧

<>
  • 特許5938238-光学部材の製造方法 図000003
  • 特許5938238-光学部材の製造方法 図000004
  • 特許5938238-光学部材の製造方法 図000005
  • 特許5938238-光学部材の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938238
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】光学部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20160609BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20160609BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20160609BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   G02B1/14
   B05D3/00 F
   B05D1/02 Z
   G02C7/02
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-52327(P2012-52327)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-186349(P2013-186349A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】313001099
【氏名又は名称】イーエイチエス レンズ フィリピン インク
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】星野 悠太
(72)【発明者】
【氏名】立野 大地
(72)【発明者】
【氏名】駒井 秀紀
【審査官】 南 宏輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−140745(JP,A)
【文献】 特開2008−225439(JP,A)
【文献】 特開2007−229648(JP,A)
【文献】 特開2010−031294(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0071203(US,A1)
【文献】 特開2013−205562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10−1/18
G02C 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材の製造方法であって、
レンズ基材の湾曲凹面を鉛直上向きとした状態で、ハードコート層を形成するための液状をなすハードコート層形成材料を、前記湾曲凹面を覆うように供給することと、
前記レンズ基材の前記湾曲凹面を鉛直下向きとなるよう反転させることと、
前記ハードコート層形成材料を加熱して前記ハードコート層を形成することと、
を有し、
前記反転の後に鉛直下向きとされた前記湾曲凹面を前記ハードコート層形成材料が流下して、前記ハードコート層に該ハードコート層の中心部よりも縁部において膜厚が厚くなる厚膜部が形成されることを特徴とする光学部材の製造方法
【請求項2】
前記供給することは、スプレーコート法を用いて行われる請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項3】
前記ハードコート層形成材料は、一般式(1):(R1)nSi(X1)4−n(一般式(1)中、R1は重合可能な官能基を有する炭素数が2以上の有機基、X1は、加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)で表わされる有機ケイ素化合物を溶媒に溶解させたものである請求項1または2に記載の光学部材の製造方法。
【請求項4】
前記ハードコート層は、その中心部における平均厚さが5.0μm以上、50μm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
【請求項5】
前記レンズ基材は、前記湾曲凹面に対向する湾曲凸面を含み、
前記加熱工程に先立って、前記ハードコート層を形成するためのハードコート層形成材料を、前記レンズ基材の前記湾曲凸面に供給することを有する、請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、眼鏡等に用いるプラスチックレンズとして、近年、薄型化を実現するために高屈折率のものが活発に研究・開発されている。
プラスチックレンズは、従来のガラスレンズと比較して、軽量、かつ加工性に優れ、さらに、比較的衝撃に対しても優れた強度を発揮するという長所を有する。一方、硬度が低いことに起因してガラスレンズよりも耐摩擦性および耐候性に劣るという短所を有する。
【0003】
そのため、特に、プラスチックレンズをメガネレンズに適用する際には、プラスチックレンズ上にハードコート層と呼ばれる硬化膜を形成することが一般に行われている。
さらに、プラスチックレンズをメガネレンズに適用する場合、ハードコート層上に反射防止層が形成されることが一般的であるが、反射防止層とハードコート層との屈折率差が大き過ぎると干渉縞が発生するため、ハードコート層の構成材料としても高屈折率のものが求められている。
【0004】
このような高屈折率を実現するハードコート層としては、例えば、有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)と金属酸化物とを含有するハードコート材料を用いて形成したものが知られている。
より具体的には、有機ケイ素化合物またはその加水分解物と、金属酸化物(複合酸化物ゾル)とを含有するハードコート層形成材料を用意し、このハードコート材料をプラスチックレンズ上に供給した後、加熱することでゲル化させてハードコート層を得るゾル・ゲル法が知られている。
【0005】
また、このようなハードコート層を備えるメガネレンズでは、上述した干渉縞が発生する原因として、膜厚が不均一なハードコート層が形成されていることも挙げられるため、かかる問題点を解決することを目的に、特許文献1に示すように、メガネレンズの使用領域においてハードコート層を均一な膜厚で形成する方法が提案されている。
特許文献1に記載の方法では、予め、ある成膜条件でサンプルに対してハードコート層を形成し、形成されたハードコート層の膜厚をデータベースに用いて、成膜条件と膜厚との関係を求め、得られた関係に基づいてメガネレンズにハードコート層を形成する。
しかしながら、かかる方法では、成膜条件と膜厚との関係を示すデータベースを作成するには、複数のサンプルに対してハードコート層を形成して成膜条件と膜厚との関係を求める必要があり、時間と手間を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−33021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、時間と手間を要することなく、メガネレンズの使用領域において、均一な膜厚のハードコート層が形成された光学部材を製造することができる光学部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光学部材の製造方法は、
レンズ基材の湾曲凹面を鉛直上向きとした状態で、ハードコート層を形成するための液状をなすハードコート層形成材料を、前記湾曲凹面を覆うように供給することと、
前記レンズ基材の前記湾曲凹面を鉛直下向きとなるよう反転させることと、
前記ハードコート層形成材料を加熱して前記ハードコート層を形成することと、を有することを特徴とする。
【0009】
湾曲凹面を鉛直上向きとした状態で液状のハードコート層形成材料を塗布し、レンズ基材を反転させると、湾曲凹面をハードコート層形成材料が流下する。これにより、眼鏡として適切な光学性能が要求されるレンズの中心部の膜厚が均一となる。したがって、時間と手間を要することなく、メガネレンズの使用領域において、均一な膜厚のハードコート層が形成された光学部材を製造することができる。
【0010】
本発明の光学部材の製造方法では、前記反転工程の後に、鉛直下向きとされた前記湾曲凹面を前記ハードコート層形成材料が流下して、前記湾曲凹面の縁部に留まることで、前記ハードコート層には、その中心部よりも縁部において膜厚が厚くなる厚膜部が形成されることが好ましい。
これにより、時間と手間を要することなく、メガネレンズの使用領域において、均一な膜厚のハードコート層が形成された光学部材を製造することができる。
【0011】
本発明の光学部材の製造方法では、前記供給することは、スプレーコート法を用いて行われることが好ましい。
スプレーコート法は、比較的厚い膜厚のハードコート層を形成するのに適しており、さらに、液状をなすハードコート層形成材料を、鉛直上向きとされた湾曲凹面に均一に供給することができる。
【0012】
本発明の光学部材の製造方法では、前記ハードコート層形成材料は、一般式(1):(RSi(X4−n(一般式(1)中、Rは重合可能な官能基を有する炭素数が2以上の有機基、Xは、加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)で表わされる有機ケイ素化合物を溶媒に溶解させたものであることが好ましい。
本発明の光学部材の製造方法は、ハードコート層形成材料がゾルである場合に、より好適に適用される。
本発明の光学部材の製造方法では、前記ハードコート層は、その中心部における平均厚さが5.0μm以上、50μm以下であることが好ましい。
かかる範囲の膜厚を有するハードコート層を形成する際に、特に、ハードコート層に厚膜部が形成されることとなる。
【0013】
本発明の光学部材の製造方法では、前記レンズ基材は、前記湾曲凹面に対向する湾曲凸面を含み、
前記加熱工程に先立って、前記ハードコート層を形成するためのハードコート層形成材料を、前記レンズ基材の前記湾曲凸面に供給することを有することが好ましい。
これにより、時間と手間を要することなく、メガネレンズの使用領域において、湾曲凹面および湾曲凸面の両方に、均一な膜厚のハードコート層が形成された光学部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の光学部材の製造方法により製造される光学部材をメガネレンズに適用した第1実施形態を示す図である。
図2】本発明の光学部材の製造方法を適用したメガネレンズの製造方法の第1実施形態を説明するための縦断面図である。
図3】本発明の光学部材の製造方法により製造される光学部材をメガネレンズに適用した第2実施形態を示す図である。
図4】本発明の光学部材の製造方法を適用したメガネレンズの製造方法の第2実施形態を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の光学部材の製造方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、本発明の光学部材の製造方法により製造される光学部材を、メガネに装着されるメガネレンズに適用した場合を一例に説明する。
まず、本発明の光学部材の製造方法を説明するのに先立って、本発明の光学部材の製造方法を適用して製造されたメガネレンズの第1実施形態ついて説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の光学部材の製造方法により製造される光学部材をメガネレンズに適用した第1実施形態を示す図((a)平面図、(b)図1(a)中に示すA−A線断面図)である。なお、以下では、図1(b)中の、メガネレンズの物体側(メガネレンズの装用時において、相対的に視認する物体に近い側)を「上」と言い、メガネレンズの眼球側(メガネレンズの装用時において、相対的に眼球に近い側)を「下」と言う。また、図1中では、説明の便宜上、メガネレンズを構成する部材の大きさおよび厚さ等を誇張して模式的に図示しており、各部材の大きさおよび厚さ等は実際とは大きく異なる。
【0017】
図1に示すように、メガネレンズ1は、メガネに装着されるプラスチックレンズであり、湾曲凹面61および湾曲凸面62を有するレンズ基材6と、レンズ基材6の湾曲凹面61を覆うように形成されたハードコート層4とを有している。
レンズ基材6は、本実施形態では、プラスチックで構成され、湾曲凹面21および湾曲凸面22を有する母材2と、母材2の湾曲凹面21を覆うように形成されたプライマー層3とを有している。
【0018】
母材2は、プラスチックで構成され、メガネレンズ1の母材(基材)となるものである。
この母材2は、図1に示すように、平面視で、真円状をなしており、その下面が湾曲凹面21で構成され、上面が湾曲凸面22で構成されており、これら湾曲凹面21および湾曲凸面22により光が透過する透過面を構成する。
【0019】
母材2の構成材料としては、例えば、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、スルフィド結合を有するモノマーの単独重合体、スルフィドと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ポリスルフィドと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ポリジスルフィドと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体等が挙げられる。
【0020】
なお、母材2の構成材料として、屈折率が1.6以上程度の比較的高屈折率なものを用いた際に、本実施形態のように、メガネレンズ1をプライマー層3とハードコート層4とを備える構成とすることで、メガネレンズ1を干渉縞の発生が的確に抑制または防止されたものとすることができる。
プライマー層3は、母材2の湾曲凹面21を覆うように形成され、これにより、母材2とハードコート層4との間に積層されることから、母材2とハードコート層4との密着性を確保するとともに、母材2の耐衝撃性の向上を図るための機能を発揮するためものである。
【0021】
本実施形態では、このプライマー層3の下面も、母材2の湾曲凹面21の形状に追従するように設けられており、湾曲凹面61を構成している。
プライマー層3の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アミノ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂およびこれらの混合物もしくは共重合体等の樹脂材料が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系樹脂およびポリエステル系樹脂であるのが好ましい。これにより、母材2およびハードコート層4とプライマー層3との密着性を向上させることができる。
【0022】
また、プライマー層3は、前記樹脂材料の他に、さらに金属酸化物を含んでいてもよい。これにより、プライマー層3の屈折率をより高くすることができ、その含有量等を設定することにより、プライマー層3を所望の高さの屈折率を有するものとすることができる。
金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Tiの酸化物が挙げられ、かかる酸化物のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、金属酸化物は、金属酸化物の微粒子からなるゾルであってもよい。
【0023】
また、プライマー層3の平均厚さは、特に限定されないが、300〜1000nmであるのが好ましく、500〜700nmであるのがより好ましい。
なお、このプライマー層3は、母材2とハードコート層4との組み合わせによっては、その形成を省略することができる。すなわち、レンズ基材6を、母材2により単独で構成されるものとすることができる。
【0024】
ハードコート層4は、レンズ基材6(プライマー層3)の下面である湾曲凹面61を覆うように設けられ、母材2の耐摩擦性および耐候性の向上を図るための機能を有するものである。
本発明では、このハードコート層4を、後述する本発明の光学部材の製造方法(ゾル・ゲル法)で製造するため、その縁部における膜厚は、中心部における膜厚よりも厚くなる。すなわち、縁部において、その中心部よりも膜厚が厚くなる厚膜部5が形成される。
【0025】
しかしながら、厚膜部5よりも中心側の中心部では、均一な膜厚でハードコート層4が形成され、厚膜部5がメガネレンズの使用領域よりも外側に形成されるため、メガネレンズの使用領域において、干渉縞が生じてしまうのを確実に防止することができる。
このハードコート層4は、有機ケイ素化合物(シランカップリング剤)と金属酸化物とを含有する組成物(ハードコート材料)を用いて形成されたものである。
【0026】
有機ケイ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、一般式(1):(RSi(X4−n(一般式(1)中、Rは重合可能な官能基を有する炭素数が2以上の有機基、Xは加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)で表わされるものが用いられる。これにより、有機ケイ素化合物同士が官能基Rを介して架橋(連結)することとなるため、ハードコート層4は、優れた耐摩擦性および耐候性を発揮するものとなる。
【0027】
なお、前記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物の詳細については、後述するメガネレンズの製造方法(本発明の光学部材の製造方法)において説明する。
また、ハードコート層4に含まれる金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、Al、Ti、Sb、Zr、Si、Ce、Fe、In、Sn等の金属の酸化物が挙げられ、かかる酸化物のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に、TiO、ZrO、CeO、ZnO、SnOおよびITO(インジウム−スズ複合酸化物)であるのが好ましい。これらの金属酸化物がハードコート層4に含まれる構成とすることにより、ハードコート層4の屈折率を比較的高く設定することができるようになるため、高屈折率の母材2を用いた際にも適用可能となる。
【0028】
また、ハードコート層4の中心部における平均厚さは、好ましくは5.0μm以上、20μm以下、より好ましくは10μm以上、25μmに設定される。これにより、ハードコート層4は、優れた強度を有するものとなる。また、かかる範囲の膜厚を有するハードコート層4を形成する際に、特に、後述するメガネレンズ1の製造方法において、ハードコート層4に厚膜部が形成されることとなる。
【0029】
なお、母材2の構成材料として、屈折率が1.6以上程度の比較的高屈折率なものを用いた際に、本実施形態のように、メガネレンズ1をプライマー層3とハードコート層4とを備える構成とすることで、メガネレンズ1を干渉縞の発生が的確に抑制または防止されたものとすることができる。
また、ハードコート層4を覆うように、さらに反射防止層が形成されていてもよい。
【0030】
この反射防止層としては、例えば、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、TaO、Ta、NbO、Nb、NbO、Nb、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOのような無機物で構成されるものが挙げられる。
なお、このような反射防止層は、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法およびスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0031】
反射防止層の平均厚さは、特に限定されないが、50〜150nmであるのが好ましく、70〜120nmであるのがより好ましい。
さらに、反射防止層を覆うように、撥水性の防汚層を形成するようにしてもよい。
このような防汚層は、例えば、反射防止層上に、フッ素を含有する有機ケイ素化合物で構成される単分子膜を形成することにより得ることができる。
【0032】
フッ素を含有する有機ケイ素化合物としては、一般式(2):RSiX(一般式(2)中、Rはフッ素を含有する炭素数が1以上の有機基、Xは、加水分解基を表わす。)で表わされるものが挙げられる。
また、防汚層は、例えば、フッ素を含有する有機ケイ素化合物を溶媒に溶解した防汚層形成用材料を調製し、その後、この防汚層形成用材料を反射防止層上に塗布法を用いて塗布した後、乾燥することにより得ることができる。また、塗布法としては、例えば、インクジェット法ディッピング法、スピンコート法等が挙げられる。
防汚層の平均厚さは、特に限定されないが、0.001〜0.5μmであるのが好ましく、0.001〜0.03μmであるのがより好ましい。
以上のようなメガネレンズ1は、本発明の光学部材の製造方法を適用して、以下のようなメガネレンズの製造方法により製造することができる。
【0033】
本発明の光学部材の製造方法は、湾曲凹面を有するレンズ基材と、湾曲凹面を覆うように形成されたハードコート層とを有する光学部材の製造方法であり、レンズ基材を用意し、湾曲凹面を鉛直上向きとした状態で、ハードコート層を形成するための液状をなすハードコート層形成材料を、塗布法を用いて湾曲凹面に供給する供給工程と、レンズ基材を、上下反転させて湾曲凹面を鉛直下向きとする反転工程と、ハードコート層形成材料を加熱してハードコート層を形成する加熱工程とを有する。
【0034】
以下、本発明の光学部材の製造方法を適用して、メガネレンズを製造する各工程について順次、詳述する。
図2は、本発明の光学部材の製造方法を適用したメガネレンズの製造方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、図2の矢印gは、鉛直方向(重力の作用する方向)を示す。
【0035】
[A]まず、母材2の湾曲凹面(下面)21に、プライマー層3が形成されたレンズ基材6を用意する。
このプライマー層3の形成は、例えば、プライマー層3の構成材料を溶媒に、溶解させたプライマー層形成材料を調製し、その後、このプライマー層形成材料を母材2上に塗布法を用いて塗布した後、乾燥することにより行うことができる。
なお、プライマー層3の構成材料が溶媒に溶解しない場合は、前記構成材料を分散させたプライマー層形成材料とすることができる。
【0036】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルまたはプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコール類等が挙げられ、これらの単独溶媒または混合溶媒として用いることができる。
【0037】
なお、プライマー層形成材料には、その他、レベリング剤として、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンの共重合体またはポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等が含まれていてもよい。
また、プライマー層3の形成に用いられる塗布法をとしては、ディッピング法、スピンコート法およびスプレー法等が挙げられる。
上記のようにして、湾曲凹面61を有するレンズ基材6が用意される。
【0038】
[B]次に、レンズ基材6(プライマー層3)の湾曲凹面61を覆うようにしてハードコート層4を形成する。
[B−1]まず、レンズ基材6の湾曲凹面61を鉛直上向きとした状態で、ハードコート層を形成するための液状をなすハードコート層形成材料を、塗布法を用いて湾曲凹面61に供給して液状被膜41を形成する。(供給工程)。なお、「鉛直」は、重力の作用する方向を意味する。すなわち、「鉛直上方」は重力の作用する方向において相対的に上側を意味し、「鉛直下方」は重力の作用する方向において相対的に下側を意味する。
【0039】
ハードコート層形成材料は、一般式(1):(RSi(X4−n(一般式(1)中、Rは重合可能な官能基を有する炭素数が2以上の有機基、Xは、加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)で表わされる有機ケイ素化合物を溶媒に溶解させた液状をなすもの(ゾル)である。本発明の光学部材の製造方法は、このようにハードコート層形成材料がゾルである場合に、より好適に適用される。
前記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物としては、例えば、重合可能な官能基としてアミノ基を有するものが挙げられ、具体的には、下記一般式(1A)で表わされるものが挙げられる。
【0040】
(RSi(X4−n・・・(1A)
(一般式(1A)中、Rはアミノ基を有する1価の炭素数2以上の炭化水素基、Xは加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)
【0041】
一般式(1A)において、Rはアミノ基を有する1価の炭素数2以上の炭化水素基であり、例えば、γ−アミノプロピル基、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル基、N−フェニル−γ−アミノプロピル基などが挙げられる。
なお、前記一般式(1A)において、nは1または2の整数を示し、Rが複数ある場合(n=2)には複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0042】
一般式(1A)で表わされる有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ―アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルジエトキシメチルシランなどのアミノ系のシランカップリング剤が挙げられる。
さらに、前記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物としては、例えば、重合可能な官能基としてイソシアネート基を有するものが挙げられ、具体的には、下記一般式(1B)で表わされるものが挙げられる。
【0043】
(RSi(X4−n・・・(1B)
(一般式(1B)中、Rはイソシアネート基を有する1価の炭素数2以上の炭化水素基、Xは加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)
【0044】
一般式(1B)において、Rはイソシアネート基を有する1価の炭素数2以上の炭化水素基であり、例えば、イソシアネートメチル基、α−イソシアネートエチル基、β−イソシアネートエチル基、α−イソシアネートプロピル基、β−イソシアネートプロピル基、γ−イソシアネートプロピル基などが挙げられる。
また、一般式(1B)において、nは1または2の整数を示し、Rが複数ある場合には複数のRはたがいに同一でも異なっていてもよく、Xが複数ある場合には複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0045】
一般式(1B)で表わされる化合物の具体例としては、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルジエトキシメチルシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤が挙げられる。
さらに、前記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物としては、例えば、重合可能な官能基としてエポキシ基を有するものが挙げられ、具体的には、下記一般式(1C)で表わされるものが挙げられる。
【0046】
(RSi(X4−n・・・(1C)
(一般式(1C)中、Rはエポキシ基を有する1価の炭素数2以上の炭化水素基、Xは加水分解基を表わし、nは1または2の整数を表す。)
【0047】
一般式(1C)において、Rはエポキシ基を有する1価の炭素数2以上の炭化水素基である。
なお、前記一般式(1C)において、nは1または2の整数を示し、Rが複数ある場合には複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、Xが複数ある場合には複数のXは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0048】
一般式(1C)で表わされる化合物の具体例としては、例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0049】
また、ハードコート層形成材料は、加水分解・重縮合反応を促進するための硬化触媒や、レンズ基材への塗布時の濡れ性を向上させ、平滑性を向上させる目的で各種の溶媒および界面活性剤等を含有していてもよい。さらに、ハードコート層形成材料には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等もハードコート層の物性に影響を与えない限り添加することができる。
硬化触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、乳酸等の有機酸が挙げられる。
【0050】
また、ハードコート層形成材料に用いられる溶媒、すなわち有機ケイ素化合物を溶解させる溶媒としては、例えば、水、有機溶媒またはこれらの混合溶媒が挙げられる。具体的には、純水、超純水、イオン交換水などの水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類、アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、iso−オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類などが挙げられる。
【0051】
また、ハードコート層形成材料を湾曲凹面61に供給する塗布法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スリットコーター法、転写法等が挙げられるが、中でも、スプレーコート法であるのが好ましい(図2(a)参照。)。スプレーコート法は、上述したような比較的厚い膜厚のハードコート層4を形成するのに適しており、さらに、液状をなすハードコート層形成材料(ゾル)を、鉛直上向きとされた湾曲凹面61に均一に供給することができる。
【0052】
[B−2]次いで、図2(b)に示すように、レンズ基材6を、上下反転させて湾曲凹面61を鉛直下向きとする(反転工程)。
ここで、前記工程[B−1]における湾曲凹面61への液状をなすハードコート層形成材料の供給の後、湾曲凹面61を鉛直上向きとする状態を維持していると、鉛直上向きとされた湾曲凹面61をハードコート層形成材料が流下して、湾曲凹面61の中央部側に留まることから、この状態でハードコート層形成材料を加熱してハードコート層を形成すると、湾曲凹面61の中央部に厚膜部が形成されることとなる。
【0053】
これに対して、本発明では、ハードコート層形成材料の供給の後に、レンズ基材6を上下反転させて湾曲凹面61を鉛直下向きとする。そのため、反転工程の後に、鉛直下向きとされた湾曲凹面61をハードコート層形成材料が流下して、湾曲凹面61の縁部にハードコート層形成材料が留まることとなる。そのため、この状態で次工程[B−3]において、ハードコート層形成材料を加熱してハードコート層4を形成することで、湾曲凹面61の縁部に厚膜部5を形成することができる。
【0054】
なお、本工程では、湾曲凹面61が鉛直下向きとなっていれば良いが、図2(b)に示すように、端面63の高さが、その左右方向の縁部において同一となっているのが好ましい。すなわち、湾曲凹面61の接線が鉛直方向に対して垂直となっているのが好ましい。これにより、湾曲凹面61の縁部に偏在させた状態で、より均一な膜厚の厚膜部5を形成することができる。
【0055】
[B−3]次いで、図2(c)に示すように、ハードコート層形成材料を加熱してハードコート層4を形成する(加熱工程)。
ハードコート層形成材料を加熱することで、前記一般式(1)で表わされる有機ケイ素化合物が有する加水分解基Xが、加水分解・重縮合反応してシロキサンオリゴマーが生成することによりゲル化するいわゆるゾル・ゲル法により、ハードコート層4が形成される。
【0056】
このようなハードコート層形成材料の加熱によるハードコート層4の形成の際に、前記工程[B−2]において、湾曲凹面61を鉛直下向きとしているため、湾曲凹面61の縁部にハードコート層形成材料が留まっている。そのため、本工程において、液状被膜(ハードコート層形成材料)41を加熱することにより、湾曲凹面61の縁部に厚膜部5を備えるハードコート層4が形成される。
【0057】
本発明の光学部材の製造方法では、このように湾曲凹面61の縁部に厚膜部5を備えるハードコート層4が形成されるが、厚膜部5よりも中心側の中心部では、均一な膜厚でハードコート層4が形成され、厚膜部5がメガネレンズの使用領域よりも外側に形成される。そのため、メガネレンズの使用領域において、干渉縞が生じてしまうのを確実に防止することができる。
【0058】
このように本発明によれば、ハードコート層形成材料を湾曲凹面61に供給した後、レンズ基材6を上下反転させて湾曲凹面61を鉛直下向きとし、その後、ハードコート層形成材料を加熱してハードコート層を4形成するという比較的簡単な工程で、メガネレンズ1の使用領域において、均一な膜厚のハードコート層4を形成することができる。
また、ハードコート層形成材料を加熱する方法は、特に限定されないが、第1の加熱温度で加熱した後、第2の加熱温度で加熱するのが好ましい。
【0059】
第1の加熱温度は、好ましくは90〜110℃程度に設定され、より好ましくは100±5℃程度に設定される。
第1の加熱温度による加熱時間は、1〜10分程度に設定され、より好ましくは5〜10分程度に設定される。
また、第2の加熱温度は、好ましくは110〜130℃程度に設定され、より好ましくは120±5℃程度に設定される。
【0060】
第2の加熱温度による加熱時間は、1〜2時間程度に設定され、より好ましくは1.5±0.2時間程度に設定される。
さらに、加熱する際の雰囲気は、特に限定されないが、酸素含有雰囲気下または窒素ガスのような不活性ガス雰囲気下とされる。
上記のような条件で加熱することにより、加水分解・重縮合反応を確実に進行させることができるため、優れた膜強度を有するハードコート層4を形成することができる。
【0061】
<第2実施形態>
次に、本発明の光学部材の製造方法を適用して製造されたメガネレンズの第2実施形態ついて説明する。
図3は、本発明の光学部材の製造方法により製造される光学部材をメガネレンズに適用した第2実施形態を示す図((a)平面図、(b)図3(a)中に示すA−A線断面図)、図4は、本発明の光学部材の製造方法を適用したメガネレンズの製造方法の第2実施形態を説明するための縦断面図である。なお、以下では、図3(b)、図4中の上側を「上」と言い、下側を「下」と言う。また、図3、4中では、説明の便宜上、メガネレンズを構成する部材の大きさおよび厚さ等を誇張して模式的に図示しており、各部材の大きさおよび厚さ等は実際とは大きく異なる。
【0062】
以下、第2実施形態のメガネレンズ1について、前記第1実施形態のメガネレンズ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図3に示すメガネレンズ1は、母材2の湾曲凸面22を覆うように形成されたプライマー層3’をも有するレンズ基材6の湾曲凸面62に、さらにハードコート層4’が形成されていること以外は、図1に示すメガネレンズ1と同様である。
【0063】
すなわち、第2実施形態のメガネレンズ1では、母材2の湾曲凹面21および湾曲凸面22に、それぞれ、プライマー層3およびプライマー層3’が形成され、さらに、母材2、プライマー層3およびプライマー層3’で構成されるレンズ基材6の湾曲凹面61および湾曲凸面62に、それぞれ、ハードコート層4およびハードコート層4’が形成されている。
そして、ハードコート層4、4’の双方において、その縁部に中心部よりも膜厚が厚くなる厚膜部5、5’が形成されている。
【0064】
このような第2実施形態のメガネレンズ1においても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、メガネレンズの使用領域において、干渉縞が生じてしまうのを確実に防止することができる。
なお、このような第2実施形態のメガネレンズ1は、前記工程[A]において、母材2の湾曲面21、22の双方に、プライマー層3、3’を形成するともに、前記工程[B−2]において、レンズ基材6を、上下反転させて湾曲凹面61を鉛直下向きとした後に、ハードコート層形成材料を、塗布法を用いて湾曲凸面62に供給する(凸面供給工程)ことにより製造することができる。
【0065】
すなわち、図4に示すように、前記工程[B−3]に先立って、母材2およびプライマー層3、3’を有するレンズ基材6の鉛直上向きとされた湾曲凸面62に、ハードコート層形成材料を、塗布法を用いて供給して液状被膜41’を形成することにより、第2実施形態のメガネレンズ1を製造することができる。
このように、湾曲凹面61を鉛直下向き、すなわち湾曲凸面62を鉛直上向きとした状態でハードコート層形成材料を湾曲凸面62に供給すると、湾曲凸面62をハードコート層形成材料が流下して、湾曲凸面62の縁部にハードコート層形成材料が留まることとなる。そのため、この状態で前記[B−3]において、ハードコート層形成材料を加熱してハードコート層4’を形成することで、湾曲凸面62の縁部に厚膜部5’を形成することができる。
【0066】
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のメガネレンズ1と同様である。
なお、光学部材は、前記各実施形態で説明したメガネレンズに限定されず、光を透過させる各種レンズに適用することができ、例えば、テレビ、プロジェクター、コンピュータディスプレイ等が有するレンズに適用することができる。
以上、本発明の光学部材の製造方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の光学部材の製造方法では、前記実施形態の構成に限定されず、工程の順序が前後してもよい。また、任意の目的の工程が1または2以上追加されていてもよく、不要な工程を削除してもよい。
【実施例】
【0067】
1.ハードコート層形成材料の調製
ステンレス製容器内に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、「TSL8350」)46重量部、0.05N−HCl42重量部を投入し、十分に撹拌した後、SiOゾル(日揮触媒化成製 固形分20%)86重量部、シリコーン系界面活性剤(東レダウコーニング製「L7604」)を300ppm、Fe系触媒0.2重量部、Al系触媒0.8重量部を加え十分に撹拌した後、固形分が25%となるようにMeOHを混合・撹拌し、ハードコート層形成材料を得た。
【0068】
2.積層体(メガネレンズ)の製造
(実施例)
<1> まず、レンズ基材として、屈折率1.67の眼鏡用のプラスチックレンズ基材(セイコーオプティカルプロダクツ社製、「セイコースーパーソブリン(SSV)」)を用意し、濡れ性向上のために、レンズ基材が有する湾曲凹面と湾曲凸面との両面に、低圧水銀ランプ(UV)を30秒間照射した。
【0069】
<2> 次に、レンズ基材の湾曲凹面を上向きに設置した状態で、超音波スプレーコート装置(Sono−tech社製、「ExactaCoat」)を用いて、前記1.で調整したハードコート層形成材料を、湾曲凹面の上側から塗布(供給)して、塗膜形成した。
<3> 次に、レンズ基材を、上下反転させて、湾曲凹面を下向きに設置しなおし、その後、上向きとなった湾曲凸面の上側から、前記工程<2>と同様にして、前記1.で調整したハードコート層形成材料を塗布(供給)して、塗膜形成した。
<4> 次に、湾曲凹面が下向き(湾曲凸面が上向き)となった状態で、80℃×30分の条件で加熱することで、塗膜を乾燥させることにより、レンズ基材の湾曲凹面および湾曲凸面の双方にハードコート層が形成された実施例のハードコートつきレンズを得た。
【0070】
(比較例)
<1’> まず、前記工程<1>と同様にして、レンズ基材が有する湾曲凹面と湾曲凸面との両面にUV処理を施した。
<2’> 次に、レンズ基材の湾曲凸面を上向きに設置した状態で、超音波スプレーコート装置(Sono−tech社製、「ExactaCoat」)を用いて、前記1.で調整したハードコート層形成材料を、湾曲凹面の上側から塗布(供給)して、塗膜形成した。
【0071】
<3’> 次に、レンズ基材を、上下反転させて、湾曲凸面を下向きに設置しなおし、その後、上向きとなった湾曲凹面の上側から、前記工程<2‘>と同様にして、前記1.で調整したハードコート層形成材料を塗布(供給)して、塗膜形成した。
<4’> 次に、湾曲凸面が下向き(湾曲凹面が上向き)となった状態で、80℃×30分の条件で加熱することで、塗膜を乾燥させることにより、レンズ基材の湾曲凹面および湾曲凸面の双方にハードコート層が形成された比較例のハードコートつきレンズを得た。
【0072】
3.ハードコート層の膜厚に関する評価
実施例および各比較例で得られたハードコートつきレンズについて、その厚さ方向に、ミクロトーム(Richert-Nissei ULTRACUT N)を用いることにより、観察断面を作成した後、走査型電子顕微鏡により観察断面を観察し、レンズ基材の湾曲凹面および湾曲凸面の双方に形成されたハードコート層の膜厚を、その中心部および縁部についてそれぞれ測定した。
なお、ハードコート層の縁部における膜厚は、レンズの端面から内側7mmの位置における膜厚とした。
この結果を、表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1から明らかなように、実施例のハードコートつきレンズでは、中心部から縁部(レンズの端面から内側7mmの位置)に至るまで、湾曲凸面側および湾曲凹面側の双方において、ハードコート層が均一な膜厚で形成されていることが明らかとなった。
なお、レンズの端面から内側7mmの位置よりも端面側の位置を観察したところ、中心部および縁部よりもその膜厚が厚くなった厚膜部が観察された。
【0075】
これに対して、比較例のハードコートつきレンズでは、湾曲凸面側および湾曲凹面側の双方において、ハードコート層の膜厚が、中心部と縁部(レンズの端面から内側7mmの位置の)とでは不均一なものとなっていた。
以上のことから、実施例のハードコートつきレンズの製造方法によれば、時間と手間を要することなく、レンズの使用領域において、均一な膜厚のハードコート層を形成し得ることが判った。
【符号の説明】
【0076】
1…メガネレンズ 2…母材 21、61…湾曲凹面 22、62…湾曲凸面 3、3’…プライマー層 4、4’…ハードコート層 41、41’…液状被膜 5、5’…厚膜部 6…レンズ基材 63…端面
図1
図2
図3
図4