(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938245
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
G08B17/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-61837(P2012-61837)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-196284(P2013-196284A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹下 敦
(72)【発明者】
【氏名】大上 佳一郎
【審査官】
山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−098166(JP,A)
【文献】
特開平06−111152(JP,A)
【文献】
特開平11−073587(JP,A)
【文献】
特開平07−095665(JP,A)
【文献】
特開平08−276029(JP,A)
【文献】
特開平05−242375(JP,A)
【文献】
特開2004−145464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
23/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火報回線に接続された複数の火災感知器と、
制御回線に接続された複数の被制御装置と、
前記火報回線を介して前記火災感知器からの火災信号を受信する火災受信回路と、前記制御回線を介して前記被制御装置を制御する制御装置回路と、前記火災受信回路および制御装置回路を監視制御する制御部とを有する火災受信機と、を備えた火災報知設備において、
増設制御回線を介して増設被制御装置と接続される増設制御装置回路が内部に設けられ、前記火災受信機と別体に形成された増設ボックスを複数備え、
信号線を介して、前記複数の増設制御装置回路のうち1つを前記制御部と接続するとともに、前記増設ボックス同士を、前記信号線を介して接続し、前記制御部が、前記増設制御装置回路を監視制御する
ことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
火報回線に接続された複数の火災感知器と、
制御回線に接続された複数の被制御装置と、
前記火報回線を介して前記火災感知器からの火災信号を受信する火災受信回路と、前記制御回線を介して前記被制御装置を制御する制御装置回路と、前記火災受信回路および制御装置回路を監視制御する制御部とを有する火災受信機と、を備えた火災報知設備において、
増設制御回線を介して増設被制御装置と接続される増設制御装置回路が内部に設けられ、前記火災受信機と別体に形成された増設ボックスを複数備え、
前記火災受信機内に設けられた前記制御装置回路と、前記増設ボックス内に設けられた前記増設制御装置回路を、信号線を介して接続し、
前記制御部が、前記増設制御装置回路を監視制御する
ことを特徴とする火災報知設備。
【請求項3】
前記増設制御装置回路は、前記制御部または前記制御装置回路と通信する通信部と、前記増設被制御装置をオン、オフ動作させる移報接点と、前記通信部および移報接点を監視制御する動作部とを備えたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はP型火災受信機を備えた火災報知設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防護領域に設置された火災感知器と防災センター等に設置されたP型火災受信機を備えた火災報知設備がある。この火災報知設備は、火災感知器が火災を検出または、発信機が利用者によって押下されることで内部接点が閉じられ、火報回線が略短絡し、火報回線にかかる電圧を低下させる。
【0003】
P型火災受信機は、火報回線にかかる電圧の低下を検出すると火災警報を行うと共に、対応する防護領域の防排煙装置や防火戸などの被制御装置を動作させる連動制御信号を出力する。(特許文献1参照)。
【0004】
このような火災報知設備に用いられるP型火災受信機は、設置される建物に応じて、火災感知器や発信機が接続される火報回線、及び、防排煙装置、エレベータ制御盤や、避難誘導装置が接続される制御回線の回線数をあらかじめ用意した状態で出荷される。回線数に合わせて火災受信回路、制御装置回路(基板)の必要数が用意されるので、その数に対応した筐体の火災受信機を選定し、現場に設置する。
【0005】
しかし、現場によってはレイアウト変更等の設計変更に伴い、特に制御回線が足りない場合が生じることがあり、新たに回線数を増加させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−174263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
P型火災受信機の筐体によっては、新たに制御回線を増設するための基板を設置するスペースが無い場合があり、制御回線の回線数を容易に増加できるものが望まれていた。
【0008】
また、P型火災受信機の場合、回線単位で機器が接続されるため、単純に回線数を増加させると、受信機から建物内へ敷設される配線数が膨大な量となるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、火報回線に接続された複数の火災感知器と、制御回線に接続された複数の被制御装置と、火報回線を介して火災感知器からの火災信号を受信する火災受信回路と、制御回線を介して被制御装置を制御する制御装置回路と、火災受信回路および制御装置回路を監視制御する制御部とを有する火災受信機と、を備えた火災報知設備において、増設制御回線を介して増設被制御装置と接続される増設制御装置回路が内部に設けられ、火災受信機と別体に形成された増設ボックスを複数備え、信号線を介して、複数の増設制御装置回路のうち1つを制御部と接続するとともに、増設ボックス同士を、信号線を介して接続し、制御部が、増設制御装置回路を監視制御することを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、火報回線に接続された複数の火災感知器と、制御回線に接続された複数の被制御装置と、火報回線を介して火災感知器からの火災信号を受信する火災受信回路と、制御回線を介して被制御装置を制御する制御装置回路と、火災受信回路および制御装置回路を監視制御する制御部とを有する火災受信機と、を備えた火災報知設備において、増設制御回線を介して増設被制御装置と接続される増設制御装置回路が内部に設けられ、火災受信機と別体に形成された増設ボックスを複数備え、火災受信機内に設けられた制御装置回路と、増設ボックス内に設けられた増設制御装置回路を、信号線を介して接続し、制御部が、増設制御装置回路を監視制御することを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、増設制御装置回路は、制御部または制御装置回路と通信する通信部と、増設被制御装置をオン、オフ動作させる移報接点と、通信部および移報接点を監視制御する動作部とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
P型火災受信機と別体に形成され、内部に増設制御装置回路を備えた増設ボックスを設け、増設制御装置回路を介して増設被制御装置をP型火災受信機と接続できるので、容易に制御回線を増設できる。
【0013】
また、P型火災受信機と増設ボックスの間を少ない信号線で接続できるので、P型火災受信機を用いた火災報知設備の配線数を削減できるという効果が得られる。
また、複数の増設制御装置回路を1対の信号線で互いに接続可能としたので、増設被制御装置を遠隔地にまとめて増設したい場合でも、P型火災受信機を用いた火災報知設備の配線数を削減できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1を示した火災報知設備の構成図
【
図2】本発明の実施形態1の増設ボックスの詳細な構成図
【
図3】本発明の実施形態2を示した火災報知設備の構成図
【
図4】本発明の実施形態2の増設ボックスの詳細な構成図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、本発明の火災報知設備100の実施形態1を、
図1及び
図2を用いて説明する。
なお、各図において、各線L1、L2、L3は通常1対の配線が用いられるが、便宜上1本の線として表現したものである。
【0016】
1は回線単位で火災を監視するP型火災受信機1である。P型火災受信機1は、火報回線L1を介して火災感知器2が接続され、制御回線L2を介して被制御装置3が接続されている。火報回線L1は、火災受信回路4を介して火災受信機1と接続され、建物内の各防護領域へ向けて敷設されている。火報回線L1には、各防護領域に設けられ、火災を検出すると内部接点を閉じる火災感知器2や、利用者が押下すると内部接点を閉じる発信機5が接続されている。火災受信回路4は、火報回線L1に接続された火災感知器2や発信機5が内部接点を閉じると、回線が略短絡して電圧低下することによりその電圧低下を検出し、後述する制御部12に火災信号を出力する。
【0017】
制御回線L2は、制御装置回路6を介して火災受信機1と接続され、火報回線L1と同様に各防護領域へ向けて敷設されている。制御回線L2には、各防護領域に設けられた火災感知器2や発信機5に対応する被制御装置3が接続されている。被制御装置3は、火災受信機1から出力される制御信号により制御装置回路6に設けられた移報接点(図示せず)がオンになると電源接続されて動作する装置であって、例えば、防排煙装置、防火戸、エレベータの制御を行うEV盤や避難誘導を行う非常警報装置がある。
【0018】
制御装置回路6は、後述する増設制御装置回路8と同様の構成であり、制御部12と接続される通信部13と、被制御装置3を動作させる移報接点15を複数備え、P型火災受信機1内に設けられている。
【0019】
P型火災受信機1は、火災や火災が発生した地区を表示する表示部9と、各種操作を行う操作部10と、火災感知器2と被制御装置3の動作に関する対応関係を記憶する記憶部11と、各信号の送受信等を制御する制御部12とからなる。
【0020】
表示部9はP型火災受信機1の盤面に設けられたLED等の光源からなり、各防護領域に敷設された火報回線L1や制御回線L2に対応して設けられる。そして表示部9は、火報回線L1に接続された火災感知器2や、制御回線L2に接続された被制御装置3である防排煙装置が動作すると、制御部12によって対応するLED等が点灯制御されるものである。
操作部10は、P型火災受信機1の盤面に設けられ、火災検出による火災警報の停止等を行う各種操作スイッチからなる。
【0021】
記憶部11は、各防護領域に敷設された火報回線L1に対応して動作する制御回線L2の対応関係が記憶されている。この記憶部11は、火災受信機1の出荷時や現場での設置時にデータベースツールを利用して、火報回線L1と制御回線L2の動作に関する対応関係を書き換え可能なものとなっている。
【0022】
制御部12は、火災感知器2からの火災信号を受信して火災を断定すると、表示部9のLEDを点灯させると共に、記憶部11に記憶された対応関係に応じて対応する被制御装置3を動作させる連動制御信号を送信するものである。
【0023】
7は、P型火災受信機と別体に形成された増設ボックス7で、内部に増設制御装置回路8が設けられている。増設制御装置回路8は、P型火災受信機1から送信される連動制御信号を受信する通信部13と、受信した連動制御信号に対応する移報接点を動作させる動作部14と、制御線L2に接続された被制御装置3を動作させる移報接点15を備えている。増設制御装置回路8の通信部13は、火災受信機1の制御部12と信号線L3でそれぞれ接続されている。
【0024】
続いて、実施形態1における火災報知設備100の設置時の説明をする。
P型火災受信機1は、設置される物件の規模に応じて、あらかじめ対応する回線数を設定して出荷される。その後、施工者によって火災感知器2や被制御装置3と共に設置される。このとき、レイアウト変更により設置する被制御装置3の数が増加した場合、P型火災受信機1とは別体に形成された増設ボックス7を新たに設置し、P型火災受信機の制御部12と、増設ボックス7内に設けられた増設制御装置回路8の通信部13を信号線L3によって接続する。そして、増設制御回路8から制御回線L2を増設し、増設被制御装置としての被制御装置3と制御回路L2を接続する。
【0025】
その後、出荷時のP型火災受信機1の記憶部11には、火報回線L1と増設された制御回線L2との対応関係が入力されていないので、施工者はデータベースツール等を用いて記憶部11に火報回線L1と制御回線L2との動作に関する対応関係を入力する。
【0026】
より詳しく述べると、防護領域に設置された火災感知器2に対応する増設被制御装置を動作させるために、防護領域に敷設された火報回線L1と、増設被制御装置が接続された制御回線L2を動作させるための移報接点15の動作関係を、記憶部11に記憶させる。
このように、P型火災受信機1の設置現場において、被制御装置3が増えた場合でも、移報接点を容易に増設できるので、汎用性が向上する。
【0027】
次に、実施形態1における火災報知設備100の火災時の動作を説明する。
防護領域に火災が発生すると、火災が発生した防護領域内に設置された火災感知器2が火災を検出して内部接点を閉じる。火災感知器2が内部接点を閉じると、火報回線L1が略短絡して電圧が低下する。この電圧低下を検出すると、火災受信回路4が制御部12に火災信号を出力する。制御部12は、火災受信回路4から火災信号を受信すると、火災を検出した回路と対応する表示部9を点灯制御する。更に制御部12は、記憶部11に記憶された火報回線L1と制御回線L2の対応関係から、対応する制御回線L2が接続された移報接点15を動作させる連動制御信号を、信号線L3を介して、制御装置回路6及び増設制御回路8に送信する。その後、通信部13がP型火災受信機100から連動制御信号を受信すると、制御装置回路6及び増設制御回路8の動作部14は、受信した連動制御信号の情報と自身の移報接点15の情報を照らし合わせる。そして動作部14は、受信した連動制御信号と対応する移報接点15を有している場合、連動制御信号と対応する移報接点15を動作させ、対応する移報接点15を有していない場合、何もしない。このように、火災が発生した防護領域が、レイアウト変更によって新たに被制御装置3が設置された空間であった場合でも、火報回線L1と新たに増設された制御回線L2の対応関係が記憶部11に記憶されているので、対応する移報接点15を動作させる連動制御信号を送信して、確実に被制御装置3を動作させることができる。
【0028】
[実施形態2]
次に、本発明の火災報知設備101の実施形態2を、
図3、
図4を用いて説明する。
火災報知設備101は、主に増設制御装置回路8の接続方法が実施の形態1の火災報知設備100と異なり、他の構成は共通している。そこで、
図3、
図4において実施の形態1の火災報知設備100と同一のものには同一の符号を付し、以下において実施の形態1と異なる部分のみを説明する。
【0029】
本実施形態2のP型火災受信機101は、制御装置回路6を増設制御装置回路8’と同じ回路とし、増設ボックス7を複数設け、さらに増設ボックス同士を信号線L3で接続した。
【0030】
増設制御装置回路8’は、P型火災受信機101の制御部12または、増設制御装置回路8’同士を互いに接続可能な通信部13’を設けた。そして制御部は、記憶部11に記憶された火報回線L1と制御回線L2の対応関係から、対応する制御回線L2が接続された移報接点15を動作させる連動制御信号を、信号線L3を介して、制御装置回路6及び増設制御回路8’に送信する。その後、通信部13’がP型火災受信機101から連動制御信号を受信すると、動作部14’は、受信した連動制御信号の情報と自身の移報接点15の情報を照らし合わせる。そして動作部14’は、受信した連動制御信号と対応する移報接点15を有している場合、連動制御信号と対応する移報接点15を動作させ、対応する移報接点15を有していない場合、何もしない。このように、P型火災受信機101の制御部または、増設制御装置回路8’同士を互いに接続可能な通信部13’を備え、互いに信号線L3で接続することで、火災受信機101から敷設される信号線L3が1対で済む。従って、防災センターから離れた位置に被制御装置3を増設する場合であっても、敷設する信号線L3の配線数を削減できる。
【0031】
また、近年筐体の小型化が進んでおり、以前よりP型火災受信機が設置されていた物件をリニューアルする場合、建物内に敷設されている配線数は変わらず、P型火災受信機の筐体のみが小型化される場合がある。つまり、P型火災受信機に接続される配線数は変わらないため、新機種の筐体内への配線の引き込みが物理的に困難な場合が生じる。
この場合においても、本願発明の増設ボックスをP型火災受信機1の近くに設けることで、制御回線の一部を増設ボックスに引き込んで設置することができるという効果が得られる。
【0032】
また、実施形態2の増設ボックス7内に設けられた増設制御装置回路は、火災受信機1の制御部12に接続されているが、例えば
図3の破線で示す様に、火災受信機1内の増設制御装置回路8’と接続しても良い。
【0033】
なお、実施例の火災報知設備ではP型火災受信機を用いて説明したが、R型火災受信機を備えた火災報知設備に適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
100,101 火災報知設備、1 P型火災受信機、2 火災感知器、3 被制御装置、4 火災受信回路、5 発信機、6 制御装置回路、7 増設ボックス、8 増設制御装置回路、9 表示部、10 操作部、11 記憶部、12 制御部、13,13’ 通信部、14 動作部、15 移報接点、L1 火報回線、L2 制御回線、L3 信号線。