(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る変位計測システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態に係る変位計測システムは、計測対象物の変位を計測するシステムである。ここで、「計測対象物」とは、変位計測の対象になる物体であり、例えば、免震構造建築物、制振構造建築物、耐震構造建築物の如き建築物、タワークレーンや足場等の仮設物、あるいはこれら以外の変位物体を含み得る。本実施の形態においては、計測対象物が免震構造建築物である場合について説明する。ここで、「免震構造建築物」とは、上部構造体と下部構造体の間に免震手段が介装されることによって構成された建築物である。「上部構造体」とは、例えば、免震手段によって鉛直荷重が支持される建物の柱や、免震手段を柱に接続するためのフランジ(以下、上部フランジ)を含む概念である。また、「下部構造体」とは、例えば、免震手段が設置される基礎(後述する免震基礎)や、免震手段を免震基礎に接続するためのフランジ(以下、下部フランジ)を含む概念である。また、「免震手段」とは、建物の鉛直方向荷重を支持しつつ、水平方向に柔軟に変位可能なものであって、具体的には、複数のゴムに金属板を挟んで積層して構成される積層構造体である。なお、必要に応じて、これら上部フランジ、免震手段、及び下部フランジを、「免震装置」(アイソレータ)と称する。
【0021】
このように構成された免震構造建築物に生じ得る各方向への変位のうち、特定の計測対象方向に沿った変位を変位計測システムによって計測する。ここで、「計測対象方向」とは、計測の対象になる方向であって、主として鉛直方向と水平方向の2つの方向が該当するが、この他にも、斜め方向等の任意の方向を計測対象方向とすることができる。計測対象方向が鉛直方向である場合における変位計測システムと、計測対象方向が水平方向である場合における変位計測システムとは、相互に異なる構造で構成することができ、以下では、前者のシステムを「鉛直変位計測システム」と称し、後者のシステムを「水平変位計測システム」と称する。ただし、これら2つのシステムを相互に区別する必要がない場合には、両者を「変位計測システム」と総称する。また、この変位計測システムに対して、さらに計測結果の取得や解析を行うための構成を付加した上位システムを構築することもできる。このような上位システムを「変位監視システム」と称する。
【0022】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る実施の形態の具体的内容について説明する。
【0023】
(構成)
図1は、本実施の形態に係る変位監視システム1を建物に設置した状態を概念的に示す説明図である。この
図1に示すように、建物の基礎部分には複数の免震装置10が配置されており、これら複数の免震装置10のうち、一部の複数の免震装置10の各々には鉛直変位計測システム20が配置され、他の一部の複数の免震装置10の各々には水平変位計測システム30が配置されている。また、複数の免震装置10の相互間には、複数の中継器40が配置され、基礎部分における外周近傍位置には1台の集約装置50が配置され、基礎部分の外部における集約装置50の近傍位置には送信装置60が配置され、建物の管理室等には監視装置70が配置されている。
【0024】
このような構成において、鉛直変位計測システム20によって免震構造建築物の鉛直変位が計測されると共に当該鉛直変位を含んだデータが無線送信され、水平変位計測システム30によって免震構造建築物の水平変位が計測されると共に当該水平変位を含んだデータが無線送信され、これらのデータが複数の中継器40による中継を経て、集約装置50によって受信される。そして、これらのデータが、集約装置50において集約された後、集約装置50から送信装置60を介して監視装置70に無線送信される。そして、この監視装置70に記憶されたプログラムによりデータの解析等が行われ、所定方法でユーザに対して解析結果の出力等が行われる。また、実際には、変位監視システム1には温度計測システム等の付加的な構成を含めることもできる。ただし、これら中継器40、集約装置50、送信装置60、及び監視装置70や、その他の付加的な構成要素に関して、その具体的な構成は、任意であり、例えば、本願発明者等による先願(特願2010−288765号)に記載された構成を採用することができるので、その詳細な説明は省略する。よって、以下では、鉛直変位計測システム20と水平変位計測システム30の構成を主に説明する。なお、この付加的な構成として先願に記載した構成は、各装置により計測されたデータあるいは受信されたデータを無線方式により送受信する構成であるが、本願ではこれらのデータを有線方式により送受信する構成を採用しても構わない。
【0025】
(構成−鉛直変位計測システム20)
次に、鉛直変位計測システム20の構成について説明する。
図2は、鉛直変位計測システム20を配置した免震装置10の平面図である。
図3は、鉛直変位計測システム20を配置した免震装置10の側面図であり、(a)は初期状態、(b)は
図2のX方向に平行な方向に変位した状態、(c)は(b)と逆方向に変位した状態、を示す図である。
図4は、地震発生前の状態における鉛直変位計測システム20及び免震装置10を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図5は、免震装置10が水平変形した際の鉛直変位計測システム20及び免震装置10の側面図である。これら各図に示すように、建物の基礎には、免震装置10を設置するための免震基礎3がコンクリート等により形成されており、この免震基礎3に免震装置10が設置され、この免震装置10によって建物の柱2が支持されている。
【0026】
ここで、1つの免震装置10に対して鉛直変位計測システム20が複数配置されている。この配置の数及び位置は、鉛直変位を計測する必要がある箇所の数及び位置に対応して決定することができ、本実施の形態においては、免震装置10の直径方向のうち、相互に直交する2つの直径方向に対応する箇所であって、免震装置10の外周の4つの箇所に配置されている。これら4つの箇所に配置された鉛直変位計測システム20は、免震装置10の中心点に対して対称に構成することができるため、以下では、特記する場合を除いて、
図2における最も右側に配置された鉛直変位計測システム20を対象として説明する。
【0027】
図4に示すように、鉛直変位計測システム20は、拘束プレート21、振れ止めプレート22、蝶番23、支持プレート24、計測板25、及び計測センサ26を備えて構成されている。なお、後述する
図7に示すように、計測センサ26は、実際には、さらに通信線26e及び送信機27を備えているが、
図7以外の図では図の簡略化のために、これら通信線26e及び送信機27を省略する。
【0028】
(構成−鉛直変位計測システム20−拘束プレート21)
拘束プレート21は、上部構造体に接続される拘束手段である。具体的には、拘束プレート21は、側面形状を略三角形状とするプレートであって、水平部21a、鉛直部21b、及び一対の補強部21cを備える。
【0029】
水平部21aは、上部フランジ11の底面に対して密接するように平行状に配置された板状部である。この水平部21aは、上部フランジ11を柱2に固定するためのボルトに対応する位置に形成されたネジ孔を有し、このネジ孔に当該ボルトを貫通させて柱2に締結することで、拘束プレート21が上部フランジ11に固定されている。このように上部フランジ11を柱2に固定するためのボルトを用いて拘束プレート21を固定することで、拘束プレート21を固定するための専用のボルト等を用意する必要がなくなり、鉛直変位計測システム20の設置が容易になる。この水平部21aの水平方向に沿った長さは、任意に決定することができる。例えば、計測センサ26を下部フランジ12から離れた位置に配置することでこれら両者の干渉を極力回避するためには、水平部21aを長くすることが好ましい。しかしながら、水平部21aを長くする程、鉛直変位計測システム20が全体として大きくなり免震装置10の周囲と干渉する等の問題を生じ得るため、過大にならない長さとする。
【0030】
鉛直部21bは、水平部21aの水平方向外端部において鉛直方向に沿うように配置された板状部である。このように鉛直部21bを後述する支持プレート24の鉛直部24aと共に鉛直方向に沿うように配置することで、計測センサ26を鉛直方向に沿って配置することができる。この鉛直部21bには、後述する蝶番23の蝶番片23cが鉛直方向に沿った向きで固定される。このため、鉛直部21bの鉛直方向に沿った長さや
図4のY方向に沿った幅は、少なくとも蝶番片23cを固定可能な程度の長さや幅となるように決定される。
【0031】
一対の補強部21cは、水平部21aの底面から鉛直部21bの免震装置10側の側面に至るものであって、鉛直方向に沿って配置された板状部である。これら一対の補強部21cは、各々が側面形状が略三角形状となるように形成され、
図4のY方向に沿った方向に並設されている。このように補強部21cを設けることにより、拘束プレート21の剛性が高められている。
【0032】
(構成−鉛直変位計測システム20−振れ止めプレート22)
振れ止めプレート22は、計測センサ26が免震装置10の円周方向に沿って移動することを防止するための移動防止手段である。具体的には、拘束プレート21の水平部21aの上面に対して直交するように、かつ、上部フランジ11の側面に対して略平行となるように配置された板状体として形成されており、水平部21aに溶接等によって固定されている。この振れ止めプレート22には、
図4のY方向に沿った2つの位置においてネジ孔が形成されており、このネジ孔を貫通して上部フランジ11の側面に至るようにネジを固定することで、振れ止めプレート22が上部フランジ11に固定されており、このことによって、拘束プレート21が免震装置10の円周方向に沿って回転することを防止する。
【0033】
(構成−鉛直変位計測システム20−蝶番23)
蝶番23は、免震構造建築物に直接的又は間接的に固定された手段であって、免震構造建築物が変形することによって所定方向に沿った当該免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態となる場合には、免震構造建築物に対する当該蝶番23の固定状態を維持しつつ、計測板25に対する計測センサ26の圧接を解除し、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態が解除された場合には、計測板25に対する計測センサ26の圧接を復帰可能とする、圧接解除手段である。
図6(a)は、閉鎖状態における蝶番23の側面図、
図6(b)は、開放状態における蝶番23の側面図である。この
図6(a)(b)に示すように、蝶番23は、一対の取り付け片23a、回転軸23b、及び蝶番片23cを備えて構成されており、一対の取り付け片23aは回転軸23bを中心として開閉可能となるように構成されている。ただし、この蝶番23は、特記する場合を除いて公知の蝶番と同様に構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0034】
ここで、一対の取り付け片23aにおける互いに対向する面のうち、一方の面には第一極磁石23d(例えばN極)、他方の面には第一極磁石23dに対して異極である第二極磁石23e(例えばS極)が、接着やボルト締め等によりそれぞれ固定されている。これら第一極磁石23d及び第二極磁石23eは、前記一対の取り付け片23aに対して当該一対の取り付け片23aを閉鎖する向きの力を付勢する蝶番閉鎖手段である。この蝶番23の具体的な動作については後述する。
【0035】
(構成−鉛直変位計測システム20−支持プレート24)
再び
図4において、支持プレート24は、計測手段に接続される支持手段である。具体的には、支持プレート24は、側面形状を略三角形状とするプレートであって、鉛直部24a及び一対の補強部24bを備える。
【0036】
鉛直部24aは、鉛直方向に沿うように、かつ、免震装置10の周方向に略沿うように配置された板状部である。このように鉛直部24aを上述した拘束プレート21の鉛直部21bと共に鉛直方向に沿うように配置することで、計測センサ26を鉛直方向に沿って配置することができる。この鉛直部24aには、上述した蝶番23の蝶番片23c及び計測センサ26が鉛直方向に沿った向きで固定される。このため、鉛直部24aの鉛直方向に沿った長さや
図4のY方向に沿った幅は、少なくとも蝶番片23c及び計測センサ26を固定可能な程度の長さや幅となるように決定される。
【0037】
一対の補強部24bは、鉛直部24aの免震装置10側の側面において、鉛直部24aに直交する向きで固定された板状部である。これら一対の補強部24bは、各々が、側面形状が略三角形状となるように形成され、
図4のY方向に沿った方向に並設されている。このように補強部24bを設けることにより、支持プレート24の剛性が高められている。
【0038】
(構成−鉛直変位計測システム20−計測板25)
計測板25は、計測対象方向に対して直交する面に沿って設けられた被圧接手段である。具体的には、計測板25は、免震基礎3の上面に敷設された金属板として構成されている。この計測板25は、水平方向に沿って配置されるものであり、本実施の形態においては、免震基礎3の上面が水平状となっているために、この上面に対して平行に配置されることで、水平方向に沿って配置されている。この免震基礎3に対する固定構造は任意であり、例えば、接着や、計測センサ26の移動を妨げない位置でのボルト固定により行うことができる。この計測板25の平面形状は、少なくとも計測センサ26の測定範囲であり、具体的には水平方向の計測範囲をカバーする形状となるように決定される。この測定範囲は、例えば、地震非発生時に免震装置10が変位し得る範囲として、経験値や実験等により決定することができる。ここで、
図3(b)の右側に示すように、地震発生時に計測板25よりも外側に移動した計測センサ26が、地震発生後に計測板25の上方位置にスムーズに復帰できるように、計測板25の外縁には、図示しない面取り部が形成されている。
【0039】
また、計測板25の上面は、計測センサ26の後述する圧接部26cによって圧接される被圧接部分となるので、計測センサ26が計測板25に対して圧接された状態で鉛直方向に対して直交する方向(すなわち水平方向)へ移動する際における抵抗であって、これら圧接部26cと計測板25の上面との相互間の接触抵抗を、極力低減させるものであることが好ましい。このため、計測板25の上面は、平滑面として形成することが好ましい。また、計測センサ26の圧接部26cによる圧接に対する耐摩耗性や、外部環境下における耐腐食性の高いことが好ましいため、本実施形態においては、計測板25をSUS板のような金属板として形成している。
【0040】
(構成−鉛直変位計測システム20−計測センサ26)
計測センサ26は、免震構造建築物が変位することにより当該免震構造建築物によって直接的又は間接的に鉛直方向に沿って押圧され、計測板25に対して圧接されることにより、変位を計測する計測手段である。
図7には、計測センサ26の側面図を示す。この
図7に示すように、計測センサ26は、いわゆるポテンショメータとして構成されており、センサ本体26a、シャフト26b、圧接部26c、スプリング26d、及び通信線26eを備えて構成されている。シャフト26bは、その長手方向に沿って移動可能であり、センサ本体26aに対するシャフト26bの移動量を、センサ本体26aの内部に収容した図示しない検知手段で検知することで、変位を計測することができる。ただし、このような計測構造については公知の構造を採用することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0041】
圧接部26cは、計測センサ26における計測板25との圧接部分である。具体的には、圧接部26cは、シャフト26bの先端部に溶接やねじ締結等の方法により固定されている。この圧接部26cは、当該圧接部26cと計測板25の上面との相互間の接触抵抗を、極力低減させるものであることが好ましい。このため、圧接部26cの底面は、水平な平滑面として形成することが好ましい。また、計測板25への圧接に対する耐摩耗性や、外部環境下における耐腐食性の高いことが好ましいため、本実施形態においては、圧接部26cをナットの如き金属部品を用いて形成している。
【0042】
スプリング26dは、圧接部26cを、計測対象方向(すなわち、鉛直変位計測システム20においては鉛直方向)に沿って押圧し、計測板25に対して圧接されるための、圧接力付加手段である。具体的には、スプリング26dは、計測センサ26のシャフト26bの外側において、シャフト26bの長手方向に沿った向きで、シャフト26bと同芯状となるように配置されている。このスプリング26dの一方の端部は、計測センサ26のセンサ本体26aにおけるシャフト26b側の端面に当接しており、他方の端部は、圧接部26cにおけるセンサ本体26a側の端面に当接していて、圧接部26cをセンサ本体26aから遠ざける方向(計測板25の上面に圧接される方向)に付勢している。このため、免震構造建築物が変位することに伴って、下部フランジ12に対する上部フランジ11の鉛直方向の位置が変動しても、計測センサ26の圧接部26cが常に計測板25の上面に圧接されるので、計測センサ26による鉛直変位の計測が可能となる。
【0043】
通信線26eは、計測センサ26の測定結果を外部に出力するための出力線路である。具体的には、通信線26eは、センサ本体26aにおけるシャフト26bとは反対側の端面から引き出されており、後述する送信機27に接続されている。
【0044】
(構成−鉛直変位計測システム20−送信機27)
送信機27は、計測センサ26の測定結果の入力を受け付けると共に、当該受け付けた測定結果を外部に無線送信するための送信手段である。具体的には、送信機27は、図示しない無線出力部及びアンテナを備えて構成されており、通信線26eを介して計測センサ26から受け付けた測定結果を、所定の無線信号に変換してアンテナを介して、
図1の中継器40に送信する。
【0045】
(動作−鉛直変位計測システム20)
次に、このように構成された鉛直変位計測システム20による鉛直変位計測動作について説明する。以下では、最初に、上記構成の説明と同様に、
図2における最も右側に配置された鉛直変位計測システム20に着目して、その動作を説明する。また、鉛直変位計測システム20の動作は、免震装置10の水平な変位の方向によって異なり得る。すなわち、
図2におけるX方向に平行な水平変位があった場合の動作(以下、水平平行動作)と、Y方向に平行な水平変位があった場合の動作(以下、水平直交動作)と、これら以外の方向の水平変位があった場合の動作(以下、水平複合動作)をとり得る。以下では、最初に、水平平行動作について説明する。
【0046】
(水平平行動作−鉛直変位計測システム20−地震非発生時)
この水平平行動作は、地震非発生時、地震発生中、地震終了後において、それぞれ異なり得るので、以下、これらを区別して順次説明する。
まず、地震非発生時の水平平行動作について説明する。最初に、鉛直変位計測システム20は、
図3(a)、4に示す状態に配置される。すなわち、蝶番23の一対の取り付け片23aは閉鎖された状態とされ、計測センサ26のシャフト26bは、鉛直方向に沿って配置され、水平面に沿って配置された計測板25に対して鉛直方向に沿って圧接された状態とされる。この状態においては、地震非発生時に免震装置10が温度変化等の様々な要因によって鉛直方向に変位すると、計測センサ26のシャフト26bが当該変位に応じて鉛直方向に沿って移動するため、この鉛直方向の変位がセンサ本体26aによって計測されて出力される。
【0047】
また、免震装置10が水平方向に変位した場合、計測センサ26の圧接部26cが計測板25の上面に接触しながら、この上面を水平方向に摺動するが、これら圧接部26cと計測板25の上面との相互間の接触抵抗が低減されていることから、この接触抵抗が障害になって免震構造建築物の変形が妨げられることがない。このため、水平方向への変位があっても、計測板25に対するシャフト26bの圧接状態が維持され、鉛直方向の変位の計測を継続して行うことができる。
【0048】
(水平平行動作−鉛直変位計測システム20−地震発生中)
次に、地震発生中の水平平行動作について説明する。まず、最初に、免震装置10が
図3(a)に示す状態から変位した場合(主として
図2のX方向に平行な方向に変位した場合)、この変位に伴って計測センサ26のシャフト26bが計測板25の上面を摺動し、やがて、
図3(b)の右側に示すように、免震基礎3及び計測板25の範囲を外れた位置に移動する。この状態においては、計測板25への計測センサ26のシャフト26bの圧接が解除され、計測が中止される。そして、このように圧接が解除されることで、計測センサ26が下部フランジ12等に対して接触することにより生じる抵抗がなくなり、免震装置10の水平方向への変形を妨げる力がなくなるため、免震装置10の本来的な機能が阻害されることを防止できる。特に、計測センサ26の下方には空間部が形成されるので、免震装置10が水平方向に加えて鉛直下方方向に変位したような場合であっても、計測センサ26が計測板25や免震基礎3に圧接されることがないため、免震装置10の水平方向及び鉛直下方方向への変形を妨げる力がなくなるため、免震装置10の本来的な機能が阻害されることを防止できる。
【0049】
次いで、免震装置10が
図3(b)に示す状態から
図3(a)に示す状態に変位した場合、免震基礎3及び計測板25の範囲を外れた位置に移動した計測センサ26が、免震基礎3及び計測板25の上方位置に復帰する。この際、上述したように、計測板25の外縁に図示しない面取り部が形成されているので、計測センサ26のシャフト26bが計測板25の側面に引っかかることがなく、計測板25の上方位置にスムーズに復帰する。
【0050】
さらに、免震装置10が
図3(a)に示す状態から
図3(c)に示す状態に変位した場合において、地震発生中に免震構造建築物が変形することによって所定方向に沿った当該免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態となる場合には、蝶番23の機能によって、計測板25への計測センサ26のシャフト26bの圧接が解除される。ここで、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態とは、例えば、鉛直変位計測システム20のいずれかの部分が、免震装置10やその他の物体と接触し、この接触により抵抗や反発力が生じることで、免震構造建築物の変形が円滑に行われなくなる状態をいう。より具体的には、本実施の形態では、
図5に示すように、計測センサ26が免震装置10に近づく方向に、下部フランジ12に対して上部フランジ11が水平変位することで、計測センサ26のシャフト26bが下部フランジ12に接触する状態が該当する。
【0051】
このような状態となった場合において、第一極磁石23dと第二極磁石23eとが相互に引き合う力よりも、一対の取り付け片23aを相互に引き離す方向の力が大きくなった場合には、蝶番23が自動的に開放状態になる。このことによって、支持プレート24及び計測センサ26が、蝶番23の回転軸23bを中心として免震装置10から離れる方向に回動するため、計測センサ26の計測板25に対する圧接が解除され、計測が中止される。そして、このように圧接が解除されることで、計測センサ26が下部フランジ12等に対して接触することにより生じる抵抗がなくなり、免震装置10の水平方向への変形を妨げる力がなくなるため、免震装置10の本来的な機能が阻害されることを防止できる。
【0052】
次いで、免震装置10が
図3(c)に示す状態から
図3(a)に示す状態に変位した場合において、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態が解除された場合には、計測板25に対する計測センサ26の圧接が復帰可能となる。ここで、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態が解除された場合とは、例えば、鉛直変位計測システム20のいずれかの部分が、免震装置10やその他の物体と接触しなくなった場合や、あるいは接触する場合であっても当該接触による抵抗や反発力が小さくなった場合であって、免震構造建築物の変形が円滑に行われ得る状態に戻った場合をいう。より具体的には、本実施の形態では、
図5に示す状態から、計測センサ26が免震装置10から遠ざかる方向に、下部フランジ12に対して上部フランジ11が水平変位することで、計測センサ26のシャフト26bが下部フランジ12に接触しない状態になった場合が該当する。
【0053】
このような状態においては、第一極磁石23dと第二極磁石23eとが相互に引き合う力により、一対の取り付け片23aが再び相互に引き寄せられて、蝶番23が自動的に閉鎖状態となる。これにより、計測センサ26のシャフト26bが、鉛直方向に沿って配置され、水平面に沿って配置された計測板25に対して鉛直方向に沿って圧接された状態となるため、鉛直変位の計測が再開可能となる。
【0054】
以降同様に、地震発生中に
図3(a)〜(c)の変位が繰り返されることに伴い、上記鉛直変位計測システム20の動作が繰り返される。
【0055】
(水平平行動作−鉛直変位計測システム20−地震終了後)
次に、地震終了後の水平平行動作について説明する。地震が終了し、免震装置10が初期状態に復帰した場合において、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態が解除された場合には、計測板25に対する計測センサ26の圧接が復帰可能となる。この動作は、上記した、免震装置10が
図3(c)に示す状態から
図3(a)に示す状態に変位した場合の動作と同じであるため、説明を省略する。なお、蝶番23が自動的に閉鎖状態とならない場合であっても、手動で一対の取り付け片23aを相互に合わせることで、再度蝶番23を閉鎖状態とすることが出来る。
【0056】
このため、従来のようにダイヤルゲージが免震装置10から完全に切り離されてしまう場合に比べて、蝶番23を自動的又は手動的に閉鎖するだけで計測を再開できるため、鉛直変位計測システム20を容易に計測可能状態に復帰させることが可能になる。また、鉛直変位計測システム20の各部位が、上部フランジ11や免震基礎3から完全に切り離されることなく、蝶番23を閉鎖するだけでこれら各部位の位置の初期位置に戻るため、鉛直変位計測システム20を正確な初期状態に復帰させることが可能になる。
【0057】
(水平直交動作−鉛直変位計測システム20)
図2における最も右側に配置された鉛直変位計測システム20の水平直交動作(免震装置10が
図2における上下方向に沿って水平に変位した場合の動作)について説明する。地震非発生時及び地震発生中において、免震装置10が変位した場合、計測センサ26の圧接部26cが計測板25の上面に接触しながら、この上面を水平方向に摺動するが、これら圧接部26cと計測板25の上面との相互間の接触抵抗が低減されていることから、この接触抵抗が障害になって免震構造建築物の変形が妨げられることがない。このため、水平方向への変位があっても、計測板25に対するシャフト26bの圧接状態が維持され、鉛直方向の変位の計測を継続して行うことができる。
【0058】
(水平複合動作−鉛直変位計測システム20)
図2における最も右側に配置された鉛直変位計測システム20の水平複合動作(免震装置10が
図2における上下方向及び左右方向以外の方向に沿って水平に変位した場合の動作)について説明する。地震非発生時及び地震発生中において、免震装置10が変位した場合、鉛直変位計測システム20は、上記した水平平行動作と水平直交動作を複合した動作を行う。すなわち、免震装置10の水平変位の方向が水平平行動作の方向に近い程、水平平行動作に近い動作を行い、免震装置10の水平変位の方向が水平直交動作の方向に近い程、水平直交動作に近い動作を行う。
【0059】
(動作−その他の鉛直変位計測システム20)
これまでの動作の説明においては、
図2に示す4つの鉛直変位計測システム20のうち、最も右側に配置された鉛直変位計測システム20を対象として説明した。以下では、他の3つの鉛直変位計測システム20を対象として説明する。
【0060】
まず、
図2の最も左側に配置された鉛直変位計測システム20は、上記最も右側に配置された鉛直変位計測システム20と対称的に動作する。すなわち、最も右側に配置された鉛直変位計測システム20が水平平行動作を行っている場合には、この動作に対称な水平平行動作を行い、最も右側に配置された鉛直変位計測システム20が水平直交動作を行っている場合には、この動作に対称な水平直交動作を行い、最も右側に配置された鉛直変位計測システム20が水平複合動作を行っている場合には、この動作に対称な水平複合動作を行う。
【0061】
また、
図2の中央に配置された2つの鉛直変位計測システム20は、最も右側に配置された鉛直変位計測システム20が水平平行動作を行っている場合には、水平直交動作を行い、最も右側に配置された鉛直変位計測システム20が水平直交動作を行っている場合には、水平平行動作を行い、最も右側に配置された鉛直変位計測システム20が水平複合動作を行っている場合には、水平複合動作を行う。
【0062】
(構成−水平変位計測システム30)
次に、水平変位計測システム30の構成について説明する。
図8は、水平変位計測システム30を配置した免震装置10の平面図である。
図9は、水平変位計測システム30を配置した免震装置10の側面図であり、(a)は初期状態、(b)は
図2のX方向に平行な方向に変位した状態、(c)は(b)と逆方向に変位した状態、を示す図である。
図10は、地震発生前の状態における水平変位計測システム30及び免震装置10を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図11は免震装置10が水平変形した際の水平変位計測システム30及び免震装置10の側面図である。これら各図に示すように、水平変位計測システム30は、1つの免震装置10に対して複数配置されている。この配置の数及び位置は、水平変位を計測する必要がある箇所の数及び位置に対応して決定することができ、本実施の形態においては、免震装置10の外周の2つの箇所に配置されている。
図8において、右側に示した水平変位計測システム30は、X方向の水平変位を計測するためのものであり、左右中央近傍に示した水平変位計測システム30は、Y方向の水平変位を計測するためのものである。これら2つの箇所に配置された水平変位計測システム30は、免震装置10に対する配置位置や配置角度を除いて、相互に同様に構成することができるため、以下では、特記する場合を除いて、
図8における右側に配置された水平変位計測システム30を対象として説明する。
【0063】
図10に示すように、水平変位計測システム30は、支持プレート31、振れ止めプレート32、蝶番33、計測板34、計測板支持プレート35、及び計測センサ36を備えて構成されている。なお、実際には、計測センサ36は、
図7に示した計測センサ26と同様に、さらに通信線26e及び送信機27を備えているが、各図においては、図の簡略化のために、これら通信線26e及び送信機27を省略する。
【0064】
(構成−水平変位計測システム30−支持プレート31)
支持プレート31は、計測手段に接続される支持手段である。具体的には、上部フランジ11の底面に対して密接するように平行状に配置された板状部である。このように計測センサ36を支持プレート31に沿うように配置することで、計測センサ36を水平方向に沿って配置することができる。これら上部フランジ11と支持プレート31には、相互に対応する位置にネジ孔が形成されており、支持プレート31のネジ孔を貫通させたボルトを上部フランジ11のネジ孔に締結することで、支持プレート31が上部フランジ11に固定されている。支持プレート31の水平方向に沿った長さは、上述した鉛直変位計測システム20の拘束プレート21の水平部の長さと同様に決定することができる。
【0065】
(構成−水平変位計測システム30−振れ止めプレート32)
振れ止めプレート32は、計測センサ36が免震装置10の円周方向に沿って移動することを防止するための移動防止手段である。具体的には、支持プレート31の上面に対して直交するように、かつ、上部フランジ11の側面に対して略平行となるように配置された板状体として形成されており、水平部に溶接等によって固定されている。この振れ止めプレート32には、当該振れ止めプレート32の長手方向に沿った2つの位置においてネジ孔が形成されており、このネジ孔を貫通して上部フランジ11の側面に至るようにネジを固定することで、振れ止めプレート32が上部フランジ11に固定されており、このことによって、支持プレート31が免震装置10の円周方向に沿って回転することを防止する。
【0066】
(構成−水平変位計測システム30−蝶番33)
蝶番33の構成は、上述の鉛直変位計測システム20の蝶番33と同様に構成することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0067】
(構成−水平変位計測システム30−計測板34)
計測板34は、計測対象方向に対して直交する面に沿って設けられた被圧接手段である。具体的には、計測板34は、計測板支持プレート35の側面であって免震装置10に近い方の面に敷設された金属板として構成されている。この計測板34は、鉛直方向に沿って配置されるものであり、本実施の形態においては、計測板支持プレート35の側面が鉛直状となっているために、この側面に対して平行に配置されることで、鉛直方向に沿って配置されている。計測板支持プレート35に対する計測板34の固定構造及び平面形状は、上述の鉛直変位計測システム20の計測板25と同様に構成することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0068】
(構成−水平変位計測システム30−計測板支持プレート35)
計測板支持プレート35は、計測板34に接続される保持手段である。具体的には、鉛直部35a、支持部35b、及び補強部35cを備える。
【0069】
鉛直部35aは、鉛直方向に沿うように、かつ、後述する計測センサ36のシャフト26bに直交する方向に略沿うように配置された板状部である。この鉛直部35aには、その底面は蝶番33に固定され、上部側面に計測板34が配置される。このため、側面の鉛直方向に沿った長さや
図10のY方向に沿った幅は、少なくとも蝶番33及び計測板34を固定可能な程度の長さや幅となるように決定される。
【0070】
支持部35bは、鉛直部35aの免震装置10側の側面において、鉛直部35aに直交する向きで固定された板状部である。この支持部35bは、側面形状が略三角形状となるように形成されている。このように支持部35bを設けることにより、計測板支持プレート35の剛性が高められている。
【0071】
補強部35cは、鉛直部35aの免震装置10とは反対側の側面において、鉛直部35aに直交する向きで固定された板状部である。この補強部35cは、側面形状が略長方形状となるように形成されている。このように補強部35cを設けることにより、計測板支持プレート35の剛性が高められると共に、蝶番33が開放した状態で当該補強部35cが免震基礎3に当接することで、計測板支持プレート35が完全に倒れることなく傾斜状に支持される。ただし、このように傾斜状に支持された状態における傾斜角度は、計測板支持プレート35に固定された計測板34が計測センサ36により圧接されることで、免震装置10の水平方向への変位が妨げられることがないように決定される。
【0072】
(構成−水平変位計測システム30−計測センサ36)
計測センサ36は、免震構造建築物が変位することにより当該免震構造建築物によって直接的又は間接的に水平方向に沿って押圧され、計測板34に対して圧接されることにより、変位を計測する計測手段である。ただし、計測センサ36については、上述の鉛直変位計測システム20の計測センサ26と同様に構成することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0073】
(動作−水平変位計測システム30)
次に、このように構成された水平変位計測システム30による水平変位計測動作について説明する。以下では、最初に、上記構成の説明と同様に、
図8における右側に配置された水平変位計測システム30に着目して、その動作を説明する。また、水平変位計測システム30の動作は、免震装置10の水平な変位の方向によって異なり得る。すなわち、
図8において、X方向に平行な水平変位があった場合の動作(以下、水平平行動作)と、Y方向に平行な水平変位があった場合の動作(以下、水平直交動作)と、これら以外の方向の水平変位があった場合の動作(以下、水平複合動作)をとり得る。以下では、最初に、水平平行動作について説明する。
【0074】
(水平平行動作−水平変位計測システム30−地震非発生時)
この水平平行動作は、地震非発生時、地震発生中、地震終了後において異なり得るので、以下、これらを区別して順次説明する。
まず、地震非発生時の水平平行動作について説明する。最初に、水平変位計測システム30は、
図8(a)、10に示す状態に配置される。すなわち、蝶番33の一対の取り付け片23aは閉鎖された状態とされ、計測センサ36のシャフト26bは、水平方向に沿って配置され、鉛直面に沿って配置された計測板34に対して水平方向に沿って圧接された状態とされる。この状態においては、地震非発生時に免震装置10が温度変化等の様々な要因によって水平方向に変位すると、計測センサ36のシャフト26bが当該変位に応じて水平方向に沿って移動するため、この水平方向の変位がセンサ本体26aによって計測されて計測器に出力される。
【0075】
また、免震装置10が鉛直方向に変位した場合、計測センサ36の圧接部26cが計測板34の上面に接触しながら、この上面を鉛直方向に摺動するが、これら圧接部26cと計測板34の上面との相互間の接触抵抗が低減されていることから、この接触抵抗が障害になって免震構造建築物の変形が妨げられることがない。このため、鉛直方向への変位があっても、計測板34に対するシャフト26bの圧接状態が維持され、水平方向の変位の計測を継続して行うことができる。
【0076】
(水平平行動作−水平変位計測システム30−地震発生中)
次に、地震発生中の水平平行動作について説明する。まず、最初に、免震装置10が
図9(a)に示す状態から
図9(b)に示す状態に変位した場合において、地震発生時に免震構造建築物が変形することによって所定方向に沿った当該免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態となる場合には、蝶番33の機能によって、計測板34への計測センサ36のシャフト26bの圧接が解除される。ここで、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態とは、例えば、水平変位計測システム30のいずれかの部分が、免震装置10やその他の物体と接触し、この接触による抵抗や反発力が生じることで、免震構造建築物の変形が円滑に行われなくなる状態をいう。より具体的には、本実施の形態では、
図11に示すように、免震装置10の水平方向の変位に伴って計測センサ36が計測板34に近づく方向に移動し、計測センサ36のシャフト26bが計測板34に圧接されることでセンサ本体26aに押し入れられ、このシャフト26bの移動量が当該シャフト26bのストロークの限界量に達して大きな反発力が生じ得る状態が該当する。
【0077】
このような状態となった場合において、第一極磁石23dと第二極磁石23eとが相互に引き合う力よりも、一対の取り付け片23aを相互に引き離す方向の力が大きくなった場合には、蝶番33が自動的に開放状態になる。このことによって、計測板支持プレート35及び計測板34が、蝶番33の回転軸23bを中心として免震装置10から離れる方向に回動するため、計測センサ36の計測板34に対する圧接が解除され、計測が中止される。そして、このように圧接が解除されることで、計測センサ36が計測板34に対して接触することにより生じる反発力がなくなり、免震装置10の水平方向への変形を妨げる力がなくなるため、免震装置10の本来的な機能が阻害されることを防止できる。
【0078】
次いで、免震装置10が
図9(b)に示す状態から
図9(a)に示す状態に変位した場合において、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態が解除された場合には、計測板34に対する計測センサ36の圧接が復帰可能となる。ここで、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態が解除された場合とは、例えば、水平変位計測システム30のいずれかの部分が、免震装置10やその他の物体と接触しなくなった場合や、あるいは接触する場合であっても当該接触による抵抗や反発力が小さくなった場合であって、免震構造建築物の変形が円滑に行われ得る状態に戻った場合をいう。より具体的には、本実施の形態では、
図11に示す状態から、計測センサ36が免震装置10に近づく方向に、下部フランジ12に対して上部フランジ11が水平変位することで、計測板34に対する計測センサ36のシャフト26bによる圧接状態が緩和され、シャフト26bの移動量が当該シャフト26bのストロークの限界量以下に復帰した状態が該当する。
【0079】
このような状態においては、第一極磁石23dと第二極磁石23eとが相互に引き合う力により、一対の取り付け片23aが再び相互に引き寄せられて、蝶番33が自動的に閉鎖状態となる。これにより、計測センサ36のシャフト26bが、水平方向に沿って配置され、鉛直面に沿って配置された計測板34に対して水平方向に沿って圧接された状態となるため、水平変位の計測が再開可能となる。
【0080】
次いで、免震装置10が
図9(a)に示す状態から
図9(c)に示す状態に変位した場合には、計測センサ36のシャフト26bが計測板34から離れる。
【0081】
その後、免震装置10が
図9(c)に示す状態から
図9(a)に示す状態に変位した場合には、計測センサ36のシャフト26bが計測板34に圧接し、初期状態に復帰する。
【0082】
以降同様に、地震発生中に
図9(a)〜9(c)の変位が繰り返されることに伴い、上記水平変位計測システム30の動作が繰り返される。
【0083】
(水平平行動作−水平変位計測システム30−地震終了後)
次に、地震終了後の水平平行動作について説明する。地震が終了し、免震装置10が初期状態に復帰した場合において、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態が解除された場合には、計測板34に対する計測センサ36の圧接が復帰可能となる。この動作は、上記した、免震装置10が
図9(c)に示す状態から
図9(a)に示す状態に変位した場合の動作と同じであるため、説明を省略する。なお、蝶番33が自動的に閉鎖状態とならない場合であっても、手動で一対の取り付け片23aを相互に合わせることで、再度蝶番33を閉鎖状態とすることが出来る。
【0084】
このため、従来のようにダイヤルゲージが免震装置10から完全に切り離されてしまう場合に比べて、蝶番33を自動的又は手動的に閉鎖するだけで計測を再開できるため、水平変位計測システム30を容易に計測可能状態に復帰させることが可能になる。また、水平変位計測システム30の各部位が、上部フランジ11や免震基礎3から完全に切り離されることなく、蝶番33を閉鎖するだけでこれら各部位の位置の初期位置に戻るため、水平変位計測システム30を正確な初期状態に復帰させることが可能になる。
【0085】
(水平直交動作−水平変位計測システム30)
図8における右側に配置された水平変位計測システム30の水平直交動作(免震装置10が
図8における上下方向に沿って水平に変位した場合の動作)について説明する。地震非発生時及び地震発生中において、免震装置10が変位した場合、計測センサ36の圧接部26cが計測板34の側面に接触しながら、この側面を水平方向に摺動するが、これら圧接部26cと計測板34の側面との相互間の接触抵抗が低減されていることから、この接触抵抗が障害になって免震構造建築物の変形が妨げられることがない。このため、水平方向への変位があっても、計測板34に対するシャフト26bの圧接状態が維持され、水平方向の変位の計測を継続して行うことができる。
【0086】
(水平複合動作−水平変位計測システム30)
図8における右側に配置された水平変位計測システム30の水平複合動作(免震装置10が
図8における上下方向及び左右方向以外の方向に沿って水平に変位した場合の動作)について説明する。地震非発生時及び地震発生中において、免震装置10が変位した場合、水平変位計測システム30は、上記した水平平行動作と水平直交動作を複合した動作を行う。すなわち、免震装置10の水平変位の方向が水平平行動作の方向に近い程、水平平行動作に近い動作を行い、免震装置10の水平変位の方向が水平直交動作の方向に近い程、水平直交動作に近い動作を行う。
【0087】
(動作−その他の水平変位計測システム30)
これまでの動作の説明においては、
図8に示す2つの水平変位計測システム30のうち、右側に配置された水平変位計測システム30を対象として説明した。以下では、他の1つの水平変位計測システム30を対象として説明する。
【0088】
図8の左右中央近傍に配置された水平変位計測システム30は、右側に配置された水平変位計測システム30が水平平行動作を行っている場合には、水平直交動作を行い、右側に配置された水平変位計測システム30が水平直交動作を行っている場合には、水平平行動作を行い、右側に配置された水平変位計測システム30が水平複合動作を行っている場合には、水平複合動作を行う。
【0089】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0090】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、少なくとも、従来と異なるシステムにより地震発生時における計測対象物の変形を妨げることなく、変位計測が可能になっている場合には、本発明の課題は解決されている。
【0091】
(寸法や材料について)
発明の詳細な説明や図面で説明した変位計測システムの各部の寸法、形状、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、比率等とすることができる。また、各部を構成する材料については、金属や樹脂を含む任意の材料を用いることができる。
【0092】
(免震装置の固定箇所)
上記実施の形態では、免震装置のフランジに変位計測システムの計測センサを固定した場合について説明したが、免震構造建築物のうち免震装置以外の部分(例えば、免震装置によって支持される建物の柱の下面)に固定してもよい。すなわち、計測センサの固定箇所は、免震装置と同じ変位が生じる箇所であって、変位が大きくなった場合には計測装置が免震装置と干渉するために計測装置の固定解除が必要になる箇所であってもよい。
【0093】
(免震装置10について)
本実施の形態では免震装置10として、複数のゴムに金属に金属板を挟んで積層して構成される積層構造体を例に挙げて説明したが、免震装置10はこのような構造に限られない。例えば、下部構造体の上面に滑り板を接着し、さらにこの滑り板の上面に上部構造体を設けることで、下部構造体に対して上部構造体が自在に摺動することが可能なすべり支承を採用することもできる。
【0094】
(被圧接手段について)
被圧接手段として、計測板25を用いた例について説明したが、例えば、鉛直変位計測システム20において、免震基礎3の上面が、計測板25の上面と同様の平滑性や耐摩耗性等を備えている場合等には、計測センサ26を、計測板25を介することなく免震基礎3の上面に直接圧接させてもよい。あるいは、水平変位計測システム30において、計測板支持プレート35の側面が、本実施形態における計測板34の側面と同様の平滑性や耐摩耗性等を備えている場合等には、計測センサ36を、計測板34を介することなく計測板支持プレート35の側面に直接圧接させてもよい。
【0095】
(計測手段について)
計測手段は、被圧接手段を圧接することにより変位を計測可能なものであればよく、ポテンショメータに類される計測センサ26以外にも、任意の機械式距離センサを利用することができる。
【0096】
(抵抗低減手段について)
抵抗低減手段のうち、計測センサ26における計測板25との圧接部分としては、圧接部26cと計測板25の上面との相互間の接触抵抗を、極力低減させるものである限りにおいて、上記実施形態で説明したものとは異なる様々な構造を採用することができる。例えば、シャフト26bの先端部に、計測板25に対して圧接するように配置された球状体として形成された金属球体と、この金属球体が自在に回転可能となるように保持する保持部とを設け、これら金属球体と保持部により圧接部分を構成してもよい。この場合には、圧接部26cと計測板25の上面との相互間の接触抵抗を、圧接部26cをナットの如き金属部品とした場合に比べて、より一層低減することができる。
【0097】
(圧接解除手段について)
本実施の形態においては、取り付け片23aにおける互いに対向する面に磁石を設けることで地震非発生時において蝶番23が閉鎖状態に維持されているが、磁石を用いなくとも他の蝶番閉鎖手段を採用することにより同様の効果を得ることができる。例えば、蝶番閉鎖手段として、磁石の代わりにバネを設けて、取り付け片23aにおける互いに対向する面同士を、当該バネを介して接続することにより、蝶番23が閉鎖状態となる向きに対してバネの応力が付勢するようにしてもよい。このことによって、地震発生時に直接的又は間接的に蝶番23に対して付加される外力(つまり、蝶番23が開放状態となる向きに付加される力)が、バネの縮む向きに付勢する応力(つまり、蝶番23を閉鎖状態に保つ力)よりも大きくなった際に、蝶番23が開放され、計測センサの計測板に対する圧接が解除される。他の方法としては、取り付け片23aにおける互いに対向する面を互いに嵌合し合う形状とすることで、一定以上の外力が付加された際に蝶番23を開放することが出来る。
【0098】
(鉛直変位計測システム20の拘束プレート21について)
拘束プレート21を介することなく、蝶番23の蝶番片23cを上部フランジ11に対して直接接続しても良い。すなわち、拘束プレート21の機能は、蝶番23の蝶番片23cを鉛直方向に沿った向きで固定することであるため、蝶番23の蝶番片23cを、上部フランジ11に直接固定したとしても蝶番23の蝶番片23cを鉛直方向に沿った向きで固定することが可能なのであれば、拘束プレート21を設ける必要はない。例えば、蝶番23の蝶番片23cに、
図4のY方向に沿った2つの位置においてネジ孔を形成し、このネジ孔を貫通して上部フランジ11の側面(本実施形態では振れ止めプレート22が接続される位置)に至るようにネジを固定することで、蝶番23の蝶番片23cを上部フランジ11に対して直接接続することが出来る。
【0099】
(水平変位計測システム30の支持プレート31について)
支持プレート31を介することなく、計測センサ36を上部フランジ11に対して直接接続しても良い。すなわち、支持プレート31の機能は、計測センサ36を水平方向に沿った向きで固定することであるため、計測センサ36を、上部フランジ11に直接固定したとしても計測センサ36を水平方向に沿った向きで固定することが可能なのであれば、支持プレート31を設ける必要はない。
【0100】
また、上部フランジ11を柱2に固定するためのボルトに対応する位置に形成されたネジ孔に当該ボルトを貫通させて柱2に締結することで、支持プレート31を上部フランジ11に固定しても良い。このように上部フランジ11を柱2に固定するためのボルトを用いて支持プレート31を固定することで、支持プレート31を固定するための専用のボルト等を用意する必要がなくなり、水平変位計測システム30の設置が容易になる。
【0101】
(計測板支持プレート35の補強部35cについて)
補強部35cは、計測板支持プレート35から免震基礎3の所定位置にかけて架設されたバネとしても良い。このバネは、計測板支持プレート35が蝶番23の回転軸23bを中心として回動する方向に沿って架設される。蝶番23が開放した際には、計測板支持プレート35と免震基礎3の相対距離が縮まり、これに伴いこれらの相互間に架設されたバネが圧縮され、蝶番23を閉鎖しようとする方向にバネの反発力が付勢される。したがって、免震構造建築物の変形が妨げられる所定状態が解除された場合には、この付勢されるバネの反発力により、計測板34に対する計測センサ36の圧接が自動的に復帰される。すなわち、この構造は、圧接解除手段及び蝶番閉鎖手段としても機能する。
【0102】
(鉛直変位計測システム20について)
圧接解除手段は、
図12のように拘束プレート81の幅方向に沿って並設された2つの支持柱82と、これらの支持柱82により回転可能に軸支された回転軸83と、回転軸83の回転を係止する係止部84から構成されることとしても良い。この場合において、回転軸83の外径における鉛直下方向の面には支持プレート85が固定されており、回転軸83の外径における鉛直上方向の面には係止部84に向けて突出する略半円形状の突起86が設けられている。また、係止部84は、拘束プレート81に固定されたものであって、回転軸83に設けられた突起86係脱自在に嵌合する凹形状として形成されている。
【0103】
このような構成において、地震非発生時には、支持プレート85に対して所定以上の外力が付加されることが無いため、回転軸83に設けられた突起86と係止部84とが嵌合した状態で固定されており、回転軸83は回転することなく固定されている。一方、地震発生中には、免震装置10の水平変形によって支持プレート85が免震装置10から離れる方向に対して押され、それに伴い支持プレート85に固定された回転軸83に対して回転する応力が付勢される。この応力が所定以上になった際には、突起86が係止部84を乗り越えることで回転軸83が回転し、これに伴い計測板25に対する計測センサ26の圧接が解除される。
【0104】
(水平変位計測システム90について)
圧接解除手段は、
図13のように免震基礎3に敷設されたレール91と、レール91の上部を敷設されたレール91に沿って自在に移動することが可能な計測板支持プレート92から構成されることとしても良い。この場合において、レール91の所定位置には鉛直上方向に向けて突出する所定の大きさの略三角形状の突起93が設けられており、計測板支持プレート92の所定位置には鉛直下方向に向けて突出する略逆三角形状の突起94が設けられている。このような構成において、地震非発生時には、計測板支持プレート92に対して所定以上の外力が付加されることが無いため、計測板支持プレート92は、当該突起93を乗り越えて免震装置10から離れる方向に移動すること無く初期位置において固定されている。一方、地震発生中には、免震装置10の水平変形によって計測板支持プレート92が免震装置10から離れる方向に対して押され、この押す力が所定以上になった際には、計測板支持プレート92は当該突起93を乗り越えて免震装置10から離れる方向に移動し、これに伴い計測板95に対する計測センサ96の圧接が解除される。
(付記)
付記1に記載の変位計測システムは、計測対象方向に対して直交する面に沿って設けられた被圧接手段と、前記計測対象物が変位することにより当該計測対象物によって直接的又は間接的に計測対象方向に沿って押圧され、前記被圧接手段に対して圧接されることにより、前記変位を計測する計測手段と、前記計測対象物に直接的又は間接的に固定された手段であって、前記計測対象物が変形することによって所定方向に沿った当該計測対象物の変形が妨げられる所定状態となる場合には、前記計測対象物に対する当該手段の固定状態を維持しつつ、前記被圧接手段に対する前記計測手段の圧接を解除し、前記計測対象物の変形が妨げられる前記所定状態が解除された場合には、前記被圧接手段に対する前記計測手段の圧接を復帰可能とする、圧接解除手段とを備えた。
また、付記2に記載の変位計測システムは、付記1に記載の変位計測システムにおいて、前記圧接解除手段は、相互に開閉自在である一対の取り付け片を有する蝶番と、前記一対の取り付け片に対して当該一対の取り付け片を閉鎖する向きの力を付勢する蝶番閉鎖手段とを備え、前記計測対象物の変形が妨げられる前記所定状態となる場合に、前記蝶番が前記蝶番閉鎖手段の付勢に抗して開放されることにより、前記被圧接手段に対する前記計測手段の圧接が解除され、前記計測対象物の変形が妨げられる前記所定状態が解除された場合に前記蝶番が閉鎖可能となることにより、前記被圧接手段に対する前記計測手段の圧接が復帰可能となる。
また、付記3の変位計測システムは、付記1又は2の変位計測システムにおいて、前記計測対象物は、上部構造体と下部構造体の間に免震手段が介装された免震構造建築物であって、前記計測対象方向は、鉛直方向であり、前記上部構造体に接続される拘束手段と、前記計測手段に接続される支持手段とを備え、前記拘束手段と前記支持手段との間に前記圧接解除手段が配置され、前記下部構造体に前記被圧接手段が配置され、前記計測手段は、前記上部構造体により、前記拘束手段、前記圧接解除手段、及び前記支持手段を介して、鉛直方向に沿って押圧されることにより、前記下部構造体に対する前記上部構造体の鉛直変位を計測し、前記圧接解除手段は、前記上部構造体に前記拘束手段を介して間接的に固定された手段であって、前記下部構造体に対して前記上部構造体が水平方向に沿って移動するように前記免震手段が変形することによって、前記所定方向である水平方向に沿った前記免震手段の変形が妨げられる所定状態となる場合には、前記上部構造体に対する当該圧接解除手段の固定状態を維持しつつ、前記被圧接手段に対する前記計測手段の圧接を解除し、前記免震手段の変形が妨げられる前記所定状態が解除された場合には、前記被圧接手段に対する前記計測手段の圧接を復帰可能とする手段である。
また、付記4の変位計測システムは、付記1又は2の変位計測システムにおいて、前記計測対象物は、上部構造体と下部構造体の間に免震手段が介装された免震構造建築物であって、前記計測対象方向は、水平方向であって、前記上部構造体に接続されるものであって、前記計測手段を支持する支持手段と、前記圧接解除手段に接続される保持手段とを備え、前記保持手段と前記下部構造体との間に前記圧接解除手段が配置され、前記計測手段は、前記上部構造体により、前記支持手段を介して、水平方向に沿って押圧されることにより、前記下部構造体に対する前記上部構造体の水平変位を計測し、前記圧接解除手段は、前記下部構造体に直接的又は間接的に固定された手段であって、前記下部構造体に対して前記上部構造体が水平方向に沿って移動するように前記免震手段が変形することによって、前記所定方向である水平方向に沿った前記免震手段の変形が妨げられる所定状態となる場合には、前記下部構造体に対する当該圧接解除手段の固定状態を維持しつつ、前記被圧接手段に対する前記計測手段の圧接を解除し、前記免震手段の変形が妨げられる前記所定状態が解除された場合には、前記被圧接手段に対する前記計測手段の圧接を復帰可能とする手段である。
(付記の効果)
付記1に記載の変位計測システムによれば、地震時における免震装置の変形を妨げることなく、長期間に渡る変位計測が可能になる。
付記2に記載の変位計測システムによれば、極めて簡易な構造により、計測対象物への固定状態を維持したまま、圧接の解除と復帰が可能になる。さらに、鉛直変位計測時の構成においては、蝶番を自動的に閉鎖することができる。
付記3に記載の変位計測システムによれば、地震時における免震装置の変形を妨げることなく、長期間に渡る鉛直変位計測が可能になる。
付記4に記載の変位計測システムによれば、地震時における免震装置の変形を妨げることなく、長期間に渡る水平変位計測が可能になる。