特許第5938247号(P5938247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938247
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】真空断熱パネルの製造方法及び断熱工法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20160609BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   E04B1/80 100Q
   E04B1/76 400F
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-65247(P2012-65247)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-194470(P2013-194470A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋丸
(72)【発明者】
【氏名】小林 淳可
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−332543(JP,A)
【文献】 特許第4791657(JP,B2)
【文献】 特開2002−235895(JP,A)
【文献】 特開2005−315385(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/104873(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/76−1/80
F16L59/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体中に真空断熱材を収容させてなる真空断熱パネルを作製する真空断熱パネルの製造方法であって、
板状の真空断熱材と、該真空断熱材よりも大面積で前記真空断熱材よりも厚みが厚い板状形状を有する板状発泡体とを用い、
該板状発泡体として内部に前記真空断熱材を収容可能な真空断熱材収容室を有し該真空断熱材収容室に側方から前記真空断熱材を収容させうるように側面部において前記真空断熱材収容室を開口させている板状発泡体を用い、
前記開口を通じて前記真空断熱材収容室に前記真空断熱材を収容させて前記真空断熱パネルを作製し、
且つ、前記板状発泡体が平面視矩形であり、該板状発泡体には前記真空断熱材収容室を開口させている側面部と対向する側面部に前記開口に突入可能な大きさを有する凸部が備えられていることを特徴とする真空断熱パネルの製造方法。
【請求項2】
発泡体中に真空断熱材を収容させてなる真空断熱パネルを作製する真空断熱パネルの製造方法であって、
板状の真空断熱材と、該真空断熱材よりも大面積で前記真空断熱材よりも厚みが厚い板状形状を有する板状発泡体とを用い、
該板状発泡体として内部に前記真空断熱材を収容可能な真空断熱材収容室を有し該真空断熱材収容室に側方から前記真空断熱材を収容させうるように側面部において前記真空断熱材収容室を開口させている板状発泡体を用い、
前記開口を通じて前記真空断熱材収容室に前記真空断熱材を収容させて前記真空断熱パネルを作製し、
且つ、前記板状発泡体が、前記側面部に開口した前記真空断熱材収容室を複数備えていることを特徴とする真空断熱パネルの製造方法。
【請求項3】
熱融着可能なガス非透過性のシートで形成された外装材中に芯材が減圧密封されて前記板状に形成されている前記真空断熱材を用い、該真空断熱材として前記芯材の密封されている部分よりも外側に前記シートの端縁部どうしが熱融着されてなる合掌シールが形成されている真空断熱材を用い、該真空断熱材を前記合掌シールを折り畳んで前記真空断熱材収容室に収容させる請求項1又は2記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項4】
建築物の壁内、床下、又は、天井裏に複数の断熱パネルを配列する断熱工法であって、
前記断熱パネルとして、請求項1乃至のいずれか1項に記載の真空断熱パネルの製造方法によって得られた真空断熱パネルを用いることを特徴とする断熱工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱パネルの製造方法、及び、断熱工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点から省エネルギーが強く望まれており、建築物についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。
特に、一般家屋やビル等においては、空調が必要なエリアと他のエリアとの間を効率良く断熱することが求められており、部屋間を仕切る内壁に対する断熱性の要望が高まっている。
【0003】
このような中、優れた断熱性能を有する材料として、ガス非透過性のシートで形成された袋体中に芯材が減圧密封されてなる真空断熱材の利用が検討されている。
しかしながら、真空断熱材は、真空が破壊されると断熱性能が低下し、その効力が十分に発揮されないことから、施工現場において慎重な取り扱いが求められる。
このことを改善する方法として、真空断熱材を発泡体中に収容させてなる板状の真空断熱パネルが検討されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、連続供給される2枚の帯状の面材の内の一方に発泡性の原料を塗布するとともに他方に真空断熱材を接着固定させておいて発泡体中に埋設させて収容させた真空断熱材が前記発泡体ごと2枚の面材の内側にサンドイッチされた真空断熱パネルを製造する製造方法が開示されている。
また、発泡体中に収容された真空断熱材が前記発泡体ごと2枚の面材の内側にサンドイッチされた真空断熱パネルを製造する製造方法については下記特許文献2などにも記載されている。
さらに、下記特許文献3には、所謂発泡スチロールなどと呼ばれる発泡性樹脂ビーズ成形体を形成させるのに際して成形型内に真空断熱材を収容させることで真空断熱材の全面が発泡体で覆われた真空断熱パネルを作製することについて記載されている。
【0005】
しかし、これらの方法では、予め発泡体と真空断熱材とを完全に一体化させるために、大掛かりな設備を必要とする上に、得られた真空断熱パネルの内部で真空断熱材の真空が何等かの原因で破れたとしてもそのことを発見することが難しく、仮に、発見できたとしても真空断熱材を取替えることが難しい。
即ち、これらの真空断熱パネルは、簡便な方法で得ることが難しく、断熱性に優れた壁や床を確実に形成させることが難しいという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−161794号公報
【特許文献2】特開2006−105314号公報
【特許文献3】特開2005−238552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決することと課題としており、簡便な方法で真空断熱パネルを作製することができ、断熱性に優れた壁や床などを確実に形成させ得る真空断熱パネルを作製するのに適した真空断熱パネルの製造方法を提供し、ひいては、建築物の壁、床、又は、天井に優れた断熱性を確実に付与しうる断熱工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための真空断熱パネルの製造方法に係る本発明は、発泡体中に真空断熱材を収容させてなる真空断熱パネルを作製する真空断熱パネルの製造方法であって、 板状の真空断熱材と、該真空断熱材よりも大面積で前記真空断熱材よりも厚みが厚い板状形状を有する板状発泡体とを用い、該板状発泡体として内部に前記真空断熱材を収容可能な真空断熱材収容室を有し該真空断熱材収容室に側方から前記真空断熱材を収容させうるように側面部において前記真空断熱材収容室を開口させている板状発泡体を用い、前記開口を通じて前記真空断熱材収容室に前記真空断熱材を収容させて前記真空断熱パネルを作製することを特徴としている。
【0009】
なお、本発明の真空断熱パネルの製造方法においては、熱融着可能なガス非透過性のシートで形成された袋体中に芯材が減圧密封されて前記板状に形成されている前記真空断熱材を用いることが好ましく、該真空断熱材として前記芯材の密封されている部分よりも外側に前記シートの端縁部どうしが熱融着されてなる合掌シールが形成されている真空断熱材を用いて該真空断熱材を前記合掌シールを折り畳んで前記真空断熱材収容室に収容させることが好ましい。
【0010】
また、本発明の真空断熱パネルの製造方法においては、前記板状発泡体が平面視矩形であり、該板状発泡体には前記真空断熱材収容室を開口させている側面部と対向する側面部に前記開口に突入可能な大きさを有する凸部が備えられている。
【0011】
また、本発明の真空断熱パネルの製造方法においては、前記板状発泡体が、前記側面部に開口した前記真空断熱材収容室を複数備えている。
【0012】
そして、断熱工法に係る本発明は、建築物の壁内、床下、又は、天井裏に複数の断熱パネルを配列する断熱工法であって、該断熱パネルとして上記のような製造方法によって得られた真空断熱パネルを用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば板状の真空断熱材を、該真空断熱材よりも大面積で前記真空断熱材よりも厚みが厚い板状発泡体に形成された真空断熱材収容室に収容させるだけで真空断熱パネルを作製することができ、該真空断熱材収容室が板状発泡体の側面部に開口されているために、前記真空断熱材収容室を前面や背面に開口させた場合に比べて開口面積を小さくすることができ該開口を蓋体などで塞ぐ必要性を低減させうる。
即ち、簡便な方法で真空断熱パネルを作製することができる。
しかも、板状発泡体への真空断熱材の収容を、施工現場などでも実施することができ、その際には、真空断熱材に異常がないかどうかを確認しつつ真空断熱パネルを作製することができる。
従って、本発明によれば断熱性に優れた壁や床などを確実に形成させ得る。
【0014】
また、上記のような本発明の好ましい態様によれば、真空断熱材の前記合掌シールを折り畳んで前記真空断熱材収容室に収容させることから、この合掌シールのために真空断熱材収容室やその開口面積を広く確保させておく必要性がなく、真空断熱材収容室に対する真空断熱材の占有率を向上させることができる。
即ち、上記のような好ましい態様によれば、より断熱性に優れた真空断熱パネルを作製し得る。
【0015】
また、上記のような本発明の好ましい態様によれば、前記板状発泡体が平面視矩形であり、該板状発泡体には前記真空断熱材収容室を開口させている側面部と対向する側面部に前記開口に突入可能な凸部が備えられていることから、当該真空断熱パネルを並べて配置する際に、一つの真空断熱パネルの前記凸部で別の真空断熱パネルの前記開口を閉塞させることができ断熱性の向上を図りうるとともに前記凸部と前記開口との嵌合によってこれらの真空断熱パネルに位置ズレが生じることを防止し得る。
即ち、上記のような好ましい態様によれば、得られる真空断熱パネルを作業の簡略化された断熱工法により有用なものとし得る。
【0016】
また、上記のような本発明の好ましい態様によれば、前記板状発泡体が、前記側面部に開口した前記真空断熱材収容室を複数備えていることで、単独の真空断熱材収容室を備えた真空断熱パネルを複数接合させる手間を削減させ得る。
また、上記のような本発明の好ましい態様においては、必要に応じてこの複数の真空断熱材収容室を備えた板状発泡体を切断して用いることもでき、例えば、単独の真空断熱材収容室を備えた複数の板状発泡体に加工して用いることができる。
即ち、上記のような本発明の好ましい態様によれば、得られる真空断熱パネルの応用範囲を拡大させうる。
【0017】
また、本発明の断熱工法によれば、上記のような製造方法で得られた真空断熱パネルを用いることから建築物の壁、床、又は、天井に優れた断熱性を確実に付与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)真空断熱材を示す概略斜視図。(b)真空断熱材を示す概略正面図。(c)真空断熱材の断面構造を示す概略断面図(図(b)のX−X’線矢視断面図)。
図2】板状発泡体と真空断熱材とを用いて真空断熱パネルを作製する様子を示した概略斜視図。
図3】第一実施形態の真空断熱パネルとその施工方法を示した概略正面図。
図4】(a)第二実施形態の真空断熱パネルを示す概略正面図。(b)第三実施形態の真空断熱パネルを示す概略正面図。
図5】第四実施形態の真空断熱パネルを示す概略正面図。
図6】断熱工法を説明するための概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本実施形態の真空断熱パネルの製造方法に用いられる真空断熱材について説明する。
図1(a)は、本実施形態の真空断熱パネルに用いる真空断熱材10を示す概略斜視図であり、図1(b)は、この真空断熱材10の概略正面図である。
そして、図1(c)は、図1(b)において仮想線で示したX−X’線矢視断面を示した概略断面図である。
【0020】
この断面図にも示されているように、前記真空断熱材(符号10)は、芯材(符号11)と該芯材を減圧密封するためのガス非透過性のシートからなる外装材(符号12)とを備え、全体形状が矩形板状となっている。
本実施形態における前記芯材としては、特に限定されるものではないが、通常、気層比率90%前後の多孔体をシート状または板状に加工したものを採用することができ、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォームなどの連続気泡体や、グラスウールやロックウール、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維などの繊維体、パーライトや湿式シリカ、乾式シリカなどの粉体といった従来公知の素材が用いられてなる芯材を利用することができる。
【0021】
また、前記外装材も特に限定がされるものではないが、表面保護層/ガスバリア層/ヒートシール層の3層構造を有する金属ラミネートフィルムなどを用いることができ、該外装材として金属ラミネートフィルムを用いる場合には、前記ヒートシール層が、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂あるいはそれらの混合樹脂で形成されたものを採用することができる。
また、前記金属ラミネートフィルムとしては、前記ガスバリア層がアルミニウム箔や銅箔などの金属箔、アルミニウムや銅等の金属原子の蒸着膜によって形成されたものを採用することができる。
さらに、前記金属ラミネートフィルムとしては、前記表面保護層が、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等で形成されたものを採用することができる。
【0022】
なお、本実施形態の真空断熱パネルは、この板状の真空断熱材と、該真空断熱材よりも大面積で前記真空断熱材よりも厚みが厚い板状形状を有し、内部に前記真空断熱材を収容可能な真空断熱材収容室を有している板状発泡体とを用いて構成されている。
この板状発泡体としては、特に限定するものではないが、ポリスチレン発泡体、ポリスチレンとポリオレフィンとの複合発泡体、アクリル系発泡体、塩化ビニル発泡体、硬質ウレタン発泡体等で一体形成されたもの、あるいは、これらの発泡体で形成された複数の分割片をホットメルト接着剤、反応硬化型接着剤、感圧接着剤といった接着剤で接合して形成させたものを採用することができる。
なお、板状発泡体を分割片の接合体とする場合には、前記接着剤の他に釘、ネジ等での接合方法やテープ止め、相欠き、蟻継ぎ、腰掛け蟻継ぎ、腰掛け鎌継ぎ、台持ち継ぎ、追掛け大せん継ぎなどの継手止めによる接合方法を採用することができる。
【0023】
なお、前記板状発泡体としては、比較的割れ難いものが好ましくポリスチレン発泡体とポリオレフィンとの複合発泡体、アクリル系発泡体、塩化ビニル発泡体などの樹脂発泡体が好ましい。
なかでも塩化ビニル発泡体は難燃性が高いために特に好ましい。
【0024】
(第一実施形態)
以下に、真空断熱パネルの製造方法に係る第一の実施形態について説明する。
本実施形態においては、図1に示すように前記真空断熱材10の前記外装材としてガス非透過性のアルミラミネートフィルムからなる袋体12が採用されている。
そして、前記芯材11には、平面視における輪郭形状が略正方形となる矩形板状の多孔質体が採用されている。
【0025】
前記袋体12は、前記芯材11を収容可能な内容積を有しており、より具体的には、平面視略正方形の前記芯材11の一辺の長さよりも広幅で、前記一辺の長さの2倍以上の長さを有する長方形のアルミラミネートフィルムが長手方向中央部に折り目を設ける形で前記ヒートシール層を内向きにして半折され、且つ、前記折り目を介して一方側と他方側とをそれぞれの端縁を揃えるようにして重ね合わせ、前記折り目を除いた3辺の内の2辺が熱融着によってヒートシールされて袋状に形成されたものである。
そして、前記真空断熱材10は、前記袋体12のヒートシールがされていない開口箇所から該袋体内部に前記芯材11を収容させて内部を真空引きした後に該開口箇所を他の2辺と同様にヒートシールすることによって該袋体中に芯材を減圧密封させたものである。
【0026】
従って、本実施形態の真空断熱材10は、前記アルミラミネートフィルムが合掌状態でヒートシールされることによって形成された合掌シール12aが4つの側面部の内の3つの側面部において形成されており、該合掌シール12aが前記芯材11の密封されている部分の外縁から外側に向けて突出するように形成されている。
即ち、本実施形態の真空断熱材は、芯材11の密封されている部分よりも外側に合掌シール12aを有することでその平面視における形状が前記芯材11よりも一回り大きな矩形となっている。
【0027】
なお、前記のような長方形のアルミラミネートフィルムに代えて、例えば、前記芯材11よりも一回り大きな正方形の2枚のアルミラミネートフィルムを前記ヒートシール層を内向きにして2枚重ね合わせ、一辺を開口させて残り3辺をシールすることによって得られる袋体も図に示している袋体12と同様に真空断熱材の外装材として利用可能である。
このような場合には、開口部をシールして得られる真空断熱材には、芯材の密封されている部分の外側に全周にわたって合掌シールが形成されることになるが、当該合掌シールは2枚のアルミラミネートフィルムによって形成されているためにこの突出した合掌シール12aを芯材収容部分に沿わせて折り畳んで用いることができ、実用上の問題を生じるおそれは低い。
【0028】
例えば、図2を参照しつつ真空断熱パネルの製造方法について説明すると、この第一実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法においては、前記板状の真空断熱材10は、前記合掌シール12aを折り畳んで略芯材11と同等の大きさにして用いる。
【0029】
また、本実施形態においては、真空断熱材10よりも一回り大きく、且つ、真空断熱材10よりも厚みの厚い矩形板状の板状発泡体20を用い、且つ、前記真空断熱材10を側方から前記真空断熱材収容室21に収容させうるように側面部において前記真空断熱材収容室21を開口させている前記板状発泡体20を用いる。
そして、前記開口21aを通じて前記真空断熱材収容室21に前記真空断熱材10を収容させて真空断熱パネル1を作製する。
【0030】
この真空断熱パネル1の製造方法においては、前記真空断熱材収容室21に真空断熱材10を挿入する操作だけで真空断熱パネルを形成させることから、従来の製造方法に比べて簡便に真空断熱パネルを作製することができる。
また、仮に板状発泡体20を複数の分割片の接合体とするような場合でも当該板状発泡体を形成容易であることから、連続供給される2枚の帯状の面材の内の一方に発泡性の原料を塗布するとともに他方に真空断熱材を接着固定させておいて発泡体で覆われた真空断熱材を2枚の面材の内側にサンドイッチさせるような従来の真空断熱パネルの製造方法のように大掛かりな設備や専用設備を用いる必要性を低減させ得る。
また、本実施形態においては、予め発泡された発泡体を利用するため従来の方法のように発泡に際しての発熱等で真空断熱材の外装材が損傷を受けることを防止することができ、真空断熱パネルの断熱効果を長期にわたって維持することが可能となる。
【0031】
さらに本実施形態においては、板状発泡体と真空断熱材との複合化を簡便に行えることから、真空断熱パネルを施工現場で作製することが可能となる。
そして、真空断熱材を板状発泡体で覆って断熱工事を施工することができるため、真空断熱材だけを使って施工する場合に比べて慎重な作業を必要とせず、作業者の負担を軽減させうる。
しかも、板状発泡体20への真空断熱材10の収容を、施工現場などでも実施することができることから真空断熱材10に異常がないかどうかを確認しつつ真空断熱パネルを作製することができ、断熱性に優れた壁や床などを確実に形成させ得る。
【0032】
また、本実施形態においては前記板状発泡体20の真空断熱材収容室21が当該板状発泡体20の側面部に開口されているために、前記真空断熱材収容室を前面や背面に開口させた場合に比べて開口面積を小さくすることができ前記開口21aを蓋体などで塞ぐ必要性を低減させることができる。
即ち、本実施形態においては簡便な方法で真空断熱パネルを作製することができる。
【0033】
さらに、本実施形態においては、前記合掌シール12aを折り畳んで真空断熱材10を前記真空断熱材収容室21に収容させることから、この合掌シール12aのために真空断熱材収容室21や前記開口21aの開口面積を広く確保させておく必要性が低く、真空断熱材収容室21に対する真空断熱材10の占有率を向上させることができる。
即ち、本実施形態においては、真空断熱パネル1をより断熱性に優れたものとすることができる。
【0034】
なお、合掌シール12aを折り畳んで真空断熱材10を前記真空断熱材収容室21に収容させる際には、この合掌シール12aの付け根部分などが板状発泡体やその他の部材、工具など触れ合うおそれが高くなるため、必要であれば、この合掌シール12aを物理的損傷から保護するためのシートで真空断熱材10の表面を覆ってもよく、合掌シール12aの折り畳み箇所にシートを貼着させてもよい。
【0035】
次いで、この第一実施形態の製造方法で得られた真空断熱パネル1の使用方法について、図3を参照しつつ説明する。
この第一実施形態の真空断熱パネル1を形成している前記板状発泡体20は、平面視矩形であり、該板状発泡体20には前記真空断熱材収容室21を開口させている側面部と対向する側面部に前記開口21aに突入可能な凸部22(凸条22)が備えられている。
従って、図3に示すように、前記開口21aを上向きにして一つの真空断熱パネル1aを縦置きにし、その上に、同様に開口21aを上向きにした別の真空断熱パネル1bを設置して2枚の真空断熱パネル1a,1bを上下に並べて配置する際に、上側の真空断熱パネル1bの前記凸部22を下側の真空断熱パネル1aの前記開口21aに突入させて前記凸部22で前記開口21aを閉塞させることができる。
即ち、本実施形態においては、断熱性の向上を図りうるとともに前記凸部22と前記開口21aとの凹凸嵌合によって2枚の真空断熱パネル1a,1bに位置ズレが生じることを防止し得る。
即ち、本実施形態の真空断熱パネル1によって作業の簡略化された断熱工法が提供されうる。
【0036】
なお、上記のような効果をより確実に得るためには、通常、前記凸部22の突出高さを、5〜20mm程度(例えば10mm程度)とすればよい。
【0037】
(第二実施形態)
次いで、図4(a)を参照しつつ本発明の第二の実施形態について説明する。
この第二実施形態の真空断熱パネル1は、前記第一実施形態の真空断熱パネルを横並びに2枚並べた場合と略同じ面積を有する平面視長方形の板状発泡体20が用いられて形成される。
また、この長方形の板状発泡体20は、その長辺側の側面部に開口した前記真空断熱材収容室21を複数備えており、本実施形態においては、当該板状発泡体20に第一真空断熱材収容室21’と第二真空断熱材収容室21”との2つの真空断熱材収容室が備えられている。
従って、この第二実施形態においては、前記第一真空断熱材収容室21’と前記第二真空断熱材収容室21”とのそれぞれに真空断熱材10を1枚ずつ収容させることで第一実施形態の真空断熱パネル2枚分の大きさを有する真空断熱パネルを得ることができる。
【0038】
なお、この第二実施形態において作製される真空断熱パネル1は、この長方形の板状発泡体20の長辺側の側面部に開口した前記真空断熱材収容室21を第一真空断熱材収容室21’と第二真空断熱材収容室21”との2つ備えている点以外は、第一実施形態の真空断熱パネルと同様に形成されている。
【0039】
本第二実施形態の真空断熱パネル1は、図にも示されているように第一真空断熱材収容室21’と第二真空断熱材収容室21”とが同じ側面部において開口しており、これらの真空断熱材収容室21’,21”を仕切る仕切部23が前記板状発泡体20に形成されている。
そして、この仕切部23は、前記板状発泡体20のその他の部分と同様に樹脂発泡体で形成されており、板状発泡体20の長手方向中央部を横断するように形成されている。
従って、本第二実施形態の真空断熱パネル1は、仕切部23を通るようにして板状発泡体20を切断することで第一真空断熱材収容室側と第二真空断熱材収容室側とに分断可能に形成されている。
【0040】
即ち、この第二実施形態の真空断熱パネル1は、一度に第一実施形態の真空断熱パネル2枚分の敷設面積を確保することが出来るばかりでなく必要に応じて第一実施形態の真空断熱パネルとしても利用可能に形成されており、柔軟な利用が可能になっている。
【0041】
この真空断熱パネルを複数に分断して利用可能となる点に関して言えば、前記第一真空断熱材収容室21’と前記第二真空断熱材収容室21”とが開口する側面部を異ならせていてもよく、例えば、前記第一真空断熱材収容室21’を一方の長辺側に開口させ、第二真空断熱材収容室21”をこの第一真空断熱材収容室21’が開口している側とは異なる長辺側において開口させたり、或いは、この第二真空断熱材収容室21”を短辺側に開口させたりしても分断可能となる点については同じである。
さらには、前記第一真空断熱材収容室21’を一方の短辺側に開口させ、前記第二真空断熱材収容室21”を他方の短辺側に開口させても仕切部23を切断して2つの真空断熱パネルに分断可能となる点については同じである。
しかし、そのような場合には、当該真空断熱パネルを持ち運びする際に、いずれかの真空断熱材収容室の開口から真空断熱材が落下することを防止しようとすると、残りの開口から収容させた真空断熱材を落下させやすくなるおそれがある。
従って、持ち運び容易とする上においては、複数の真空断熱材収容室を備えさせる場合には、同じ側面部において開口させる方が好ましいといえる。
【0042】
(第三実施形態)
次いで、図4(b)を参照しつつ第三の実施形態について説明する。
この第三実施形態においても、一つの板状発泡体20に複数の真空断熱材10を収容させる点においては第二実施形態と共通している。
一方で、この第三実施形態においては、一つの真空断熱材収容室21に複数枚の真空断熱材10を収容させうる板状発泡体20を用いる点がこれまでに例示の態様とは異なっており、具体的には、これまで例示の真空断熱材10を3枚収容可能な板状発泡体20を用いている。
この第三実施形態においても、第二実施形態と同様に一枚板状発泡体20に複数の真空断熱材10を収容させることで第一実施形態の真空断熱パネル複数枚分の大きさを有する真空断熱パネルを得ることができ、施工時には一度に第一実施形態の真空断熱パネル複数枚分の敷設面積を確保することが出来る。
しかも、この第三実施形態の真空断熱パネル1は、収容する真空断熱材10の数に対する開口面積が第二実施形態の真空断熱パネルに比べて小さく、断熱性の観点からは有利であるといえる。
【0043】
なお、本実施形態においては、前記真空断熱材10が3枚連設されたものを予め用意しておいて、これを前記板状発泡体20に収容させたり、あるいは、これまで例示の真空断熱材10の3倍の面積を有する長板状の真空断熱材を前記板状発泡体20に収容させたりすることも可能である。
また、ここでは詳述しないが、例えば、複数の真空断熱材を収容可能な真空断熱材収容室を複数設けた板状発泡体を用いることで第二実施形態のように分断可能な真空断熱パネルを形成させることも可能である。
【0044】
(第四実施形態)
次いで、図5を参照しつつ第四実施形態について説明する。
この第四実施形態においては、矩形板状で、一つの角部を介して隣り合う2辺において真空断熱材収容室を開口させている板状発泡体20を用いる点においてこれまで例示の態様と異なっている。
また、この第四実施形態で用いる板状発泡体20は、前記開口している2辺以外の残りの2辺において前記開口21aに突入可能な凸部22が形成されている。
従って、この第四実施形態においては、板状発泡体20に真空断熱材10を収容させるための開口21aが二箇所設けられていることになり、真空断熱材10の収容作業(真空断熱パネル1の製造作業)を容易にさせ得る。
しかも、この第四実施形態において得られる真空断熱パネル1は、一つの角部を介して隣り合う2辺に開口21aを有し、前記角部の対角となる角部を介して隣り合う2辺に凸部22を有しているために、当該真空断熱パネル1を縦横に配列する際に前記開口21aと前記凸部22を用いて縦横両方において隣り合う真空断熱パネルどうしの間で凹凸嵌合をさせることが出来る点において優れている。
【0045】
(その他の事例)
なお、本発明は、上記例示以外の種々の態様を採用することができる。
例えば、板状発泡体は、矩形板状である必要はなく、三角形、五角形以上の多角形、円形、L字型あるいはこれらを組み合わせてなる任意の形状とすることができる。
【0046】
(断熱工法)
このような真空断熱パネルの製造方法によって得られた真空断熱パネルは、例えば、図6に示すような断熱工法に有用であるといえる。
この図6は、床の断熱工法について示した図であり符号100は大引を表し、符合110は、前記大引100の上に張り渡された合板を表し、符号120は、前記大引100の延在する方向と直交するように前記合板110の上に固定された根太を表している。
そして、本実施形態によって得られる真空断熱パネル1は前記根太間に落とし込む形で用いられうる。
【0047】
例えば、前記根太120が303mmピッチで配置されるようであれば、前記真空断熱パネル1は、幅250〜280mm、長さ303mmの整数倍とすることで前記根太間敷設に好適なものとなる。
また、根太材として45mm角材や60mm角材が用いられる場合を考えると、前記真空断熱パネル1は、厚み45mm以下(例えば30〜40mm)とすることが好ましい。
また、根太材として60mm角材が用いられるような場合を考えると、内法が243mmとなることから、前記真空断熱パネル1に収容させる真空断熱材10の幅は240mm以下(例えば、200〜220mm)として、必要に応じて板状発泡体を切断すれば根太間に落とし込めるようにしておくことが好ましい。
【0048】
このような断熱工法が採用される場合には、この根太上にさらに合板が張られて床仕上げ材が張られることになるが、その際に仮に作業者に踏まれるようなことがあっても、本実施形態の真空断熱パネル1は、表面が発泡体で保護されているために内部の真空断熱材にダメージが及ぶことを抑制することができる。
即ち、本実施形態においては建築物の床に優れた断熱性を確実に付与しうる。
【0049】
なお、本実施形態の真空断熱パネルは、根太間のみならず、大引間に配して床断熱に利用することができる。
また、本実施形態の真空断熱パネルは根太間や大引間といった床下のみならず壁内や天井裏に複数配列して建築物の断熱構造を形成させることができる。
例えば、軸組建築物であれば、垂木、梁、柱、間柱などの間に配列することができ、ツーバイフォーなどの木造枠組壁構法による建築物であれば、枠材間に複数配列して床、天井、外壁、内壁などに断熱構造を形成させることができる。
【0050】
また、本実施形態の製造方法によって得られる真空断熱パネルは、コンクリート土間にヒーターを埋設した床下暖房を備えた建築物の前記土間コンクリート中に埋設して利用することも可能であり、各種断熱工法に利用可能なものである。
【符号の説明】
【0051】
1 真空断熱パネル
10 真空断熱材
11 芯材
12 袋体
12a 合掌シール
20 板状発泡体
21 真空断熱材収容室
21a 開口
22 凸部
23 仕切部
120 根太
図1
図2
図3
図4
図5
図6