特許第5938304号(P5938304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938304
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】排水の処理方法および排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/24 20060101AFI20160609BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20160609BHJP
   C02F 3/30 20060101ALI20160609BHJP
   C02F 9/08 20060101ALI20160609BHJP
   C02F 9/14 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C02F1/24 B
   C02F1/24 A
   C02F1/52 H
   C02F3/30 Z
   C02F9/08
   C02F9/14
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-190236(P2012-190236)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-46253(P2014-46253A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】木村 太一
(72)【発明者】
【氏名】作山 晃
(72)【発明者】
【氏名】根本 義徳
(72)【発明者】
【氏名】原 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−038636(JP,A)
【文献】 特開2005−040733(JP,A)
【文献】 特開昭61−033285(JP,A)
【文献】 特開昭49−048155(JP,A)
【文献】 特開2000−084568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの製造時に排出される、ポリマー由来の浮遊物質を含む排水の処理方法であって、
上記排水中の上記浮遊物質を第1浮上分離槽において浮上分離する第1分離工程、
上記第1分離工程において分離した上記浮遊物質を第2浮上分離槽において浮上分離する第2分離工程、
上記第2分離工程において分離した上記浮遊物質を真空乾燥する乾燥工程
記第1分離工程で得られる処理水を第1ろ過器においてろ過する第1ろ過工程、および、
上記第1ろ過器を逆洗して得られる逆洗水に含まれる上記浮遊物質を加圧浮上分離槽において加圧浮上分離し、分離された上記浮遊物質を上記第2浮上分離槽に送る加圧浮上分離工程を含むことを特徴とする排水の処理方法。
【請求項2】
上記加圧浮上分離工程で得られる処理水を第2ろ過器においてろ過し、該第2ろ過器を逆洗して得られる逆洗水を上記加圧浮上分離槽に送る第2ろ過工程をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の排水の処理方法。
【請求項3】
上記第2分離工程で得られる処理水は、上記加圧浮上分離槽に送られることを特徴とする請求項またはに記載の排水の処理方法。
【請求項4】
ポリマーの製造時に排出される、ポリマー由来の浮遊物質を含む排水の処理を行う排水処理装置であって、
上記排水中の上記浮遊物質を浮上分離する第1浮上分離槽、
上記第1浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を浮上分離する第2浮上分離槽、
上記第2浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を真空乾燥する乾燥機
記第1浮上分離槽から得られる処理水をろ過する第1ろ過器、および
上記第1ろ過器を逆洗して得られる逆洗水に含まれる上記浮遊物質を加圧浮上分離する加圧浮上分離槽を含み、
上記第2浮上分離槽では、さらに、上記加圧浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を浮上分離することを特徴とする排水処理装置。
【請求項5】
上記加圧浮上分離槽から得られる処理水をろ過する第2ろ過器をさらに含み、
上記加圧浮上分離槽では、さらに、上記第2ろ過器を逆洗して得られる逆洗水に含まれる上記浮遊物質を加圧浮上分離することを特徴とする請求項に記載の排水処理装置。
【請求項6】
ポリマーの製造時に排出される、ポリマー由来の浮遊物質を含む排水の処理方法であって、
上記排水中の上記浮遊物質を第1浮上分離槽において浮上分離する第1分離工程、
上記第1分離工程において分離した上記浮遊物質を第2浮上分離槽において浮上分離する第2分離工程、
上記第2分離工程において分離した上記浮遊物質を真空乾燥する乾燥工程、
上記第1分離工程で得られる処理水に残留する上記浮遊物質を加圧浮上分離槽において加圧浮上分離する加圧浮上分離工程、
上記加圧浮上分離工程で得られる処理水をろ過器においてろ過するろ過工程、
上記ろ過工程で得られるろ液に対して嫌気性生物処理を行う嫌気性生物処理工程、
上記嫌気性生物処理工程後の処理水に対して好気性生物処理を行う好気性生物処理工程、および
上記好気性生物処理工程後の処理水に対して凝集剤を添加して、形成される凝集物を沈殿分離する凝集沈殿工程を含むことを特徴とする排水の処理方法。
【請求項7】
上記ろ過工程後に、上記ろ過器を逆洗して得られる逆洗水を上記加圧浮上分離槽に送ることを特徴とする請求項に記載の排水の処理方法。
【請求項8】
上記加圧浮上分離工程では、加圧浮上分離した浮遊物質を上記第2浮上分離槽に送ることを特徴とする請求項またはに記載の排水の処理方法。
【請求項9】
上記第2分離工程で得られる処理水は、上記加圧浮上分離槽に送られることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の排水の処理方法。
【請求項10】
ポリマーの製造時に排出される、ポリマー由来の浮遊物質を含む排水の処理を行う排水処理装置であって、
上記排水中の上記浮遊物質を浮上分離する第1浮上分離槽、
上記第1浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を浮上分離する第2浮上分離槽、
上記第2浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を真空乾燥する乾燥機、
上記第1浮上分離槽から得られる処理水に残留する上記浮遊物質を加圧浮上分離する加圧浮上分離槽、
上記加圧浮上分離槽から得られる処理水をろ過するろ過器、
上記ろ過器からのろ液に対して嫌気性生物処理を行う嫌気性生物処理槽、
上記嫌気性生物処理槽から得られる処理水に対して好気性生物処理を行う好気性生物処理槽、および
上記好気性生物処理槽から得られる処理水に対して凝集剤を添加することにより形成される凝集物を沈殿分離する凝集沈殿槽を含むことを特徴とする排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理方法および排水処理装置に関し、詳細には、ポリマー由来の浮遊物質を含む排水の処理方法および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工場でポリマーを大量生産する際に排出される排水は、ポリマー由来のSS(浮遊物質)が多かったり、COD(化学的酸素要求量)およびBOD(生物化学的酸素要求量)が高かったりする場合が少なくない。このような排水を無処理で排出した場合、周辺環境への影響は計り知れない。そのため、種々の排水処理方法が開発されてきている。例えば特許文献1には、合成樹脂等の有機物質含有排水は、通常凝集浮上分離によって処理が行われることが記載されている。また特許文献1には、樹脂を含有する排水に、窒素含有化合物およびポリアクリルアミド系ポリマーを添加して、凝集物を形成させ、これを分離させる工程を含む廃水の処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−84568号公報(2000年3月28日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SSの多い排水は環境への影響が大きいため、環境への影響がより小さくなる排水処理が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリマー由来の浮遊物質が極めて少ない処理排水が得られるとともに、分離したポリマー由来の浮遊物質を再生プラスチックの原料として再利用できるようにする排水の処理方法および排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る排水の処理方法は、上記課題を解決するために、ポリマーの製造時に排出される、ポリマー由来の浮遊物質を含む排水の処理方法であって、上記排水中の上記浮遊物質を第1浮上分離槽において浮上分離する第1分離工程、上記第1分離工程において分離した上記浮遊物質を第2浮上分離槽において浮上分離する第2分離工程、上記第2分離工程において分離した上記浮遊物質を真空乾燥する乾燥工程、および、上記第1分離工程で得られる処理水を第1ろ過器においてろ過する第1ろ過工程を含む構成を有している。
【0007】
上記構成によれば、排水中の浮遊物質を第1浮上分離槽において浮上分離した後、浮上分離した浮遊物質を取り除くことにより得られる処理水をろ過することにより、残留する浮遊物質を取り除くことができる。これにより、浮遊物質の極めて少ない処理排水を得ることができる。また、浮上分離を2回行うことにより浮遊物質を濃縮し、真空乾燥することにより、再生ポリマーとして再利用可能な、ウェット状の浮遊物質を効率よく生成することができる。排水処理により回収された浮遊物質を再利用することにより、環境への負荷をさらに小さくすることができる。
【0008】
本発明に係る排水の処理方法は、上記第1ろ過器を逆洗して得られる逆洗水に含まれる上記浮遊物質を加圧浮上分離槽において加圧浮上分離し、分離された上記浮遊物質を上記第2浮上分離槽に送る加圧浮上分離工程をさらに含むことが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、第1分離工程において回収できなかった浮遊物質についても、第2分離工程に供される浮遊物質に含ませることができる。そのため、最終的により多くの浮遊物質を回収することができ、再生ポリマーとして再利用可能な浮遊物質をより多く得ることができる。
【0010】
本発明に係る排水の処理方法は、上記加圧浮上分離工程で得られる処理水を第2ろ過器においてろ過し、該第2ろ過器を逆洗して得られる逆洗水を上記加圧浮上分離槽に送る第2ろ過工程をさらに含むことが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、加圧浮上分離工程において分離されなかった浮遊物質を、再度加圧浮上分離に供することができる。そのため、最終的により多くの浮遊物質を回収することができ、再生ポリマーとして再利用可能な浮遊物質をより多く得ることができる。
【0012】
本発明に係る排水の処理方法において、上記第2分離工程で得られる処理水は、上記加圧浮上分離槽に送られることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、第2分離工程において回収できなかった浮遊物質を、加圧浮上分離工程を経た後、再度第2分離工程における分離に供するができる。そのため、最終的により多くの浮遊物質を回収することができ、再生ポリマーとして再利用可能な浮遊物質をより多く得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る排水処理装置は、上記課題を解決するために、ポリマーの製造時に排出される、ポリマー由来の浮遊物質を含む排水の処理を行う排水処理装置であって、上記排水中の上記浮遊物質を浮上分離する第1浮上分離槽、上記第1浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を浮上分離する第2浮上分離槽、上記第2浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を真空乾燥する乾燥機、および上記第1浮上分離槽から得られる処理水をろ過する第1ろ過器を含む構成を有している。
【0015】
上記構成によれば、上述の排水の処理方法と同様の効果を得ることができる排水処理装置を提供することができる。
【0016】
本発明に係る排水処理装置は、上記第1ろ過器を逆洗して得られる逆洗水に含まれる上記浮遊物質を加圧浮上分離する加圧浮上分離槽をさらに含み、上記第2浮上分離槽では、さらに、上記加圧浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を浮上分離することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、最終的により多くの浮遊物質を回収することができ、再生ポリマーとして再利用可能な浮遊物質をより多く得ることができる排水処理装置を提供することができる。
【0018】
本発明に係る排水処理装置は、上記加圧浮上分離槽から得られる処理水をろ過する第2ろ過器をさらに含み、上記加圧浮上分離槽では、さらに、上記第2ろ過器を逆洗して得られる逆洗水に含まれる上記浮遊物質を加圧浮上分離することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、最終的により多くの浮遊物質を回収することができ、再生ポリマーとして再利用可能な浮遊物質をより多く得ることができる排水処理装置を提供することができる。
【0020】
本発明に係る排水の処理方法の別の態様は、上記課題を解決するために、ポリマーの製造時に排出される、ポリマー由来の浮遊物質を含む排水の処理方法であって、上記排水中の上記浮遊物質を第1浮上分離槽において浮上分離する第1分離工程、上記第1分離工程において分離した上記浮遊物質を第2浮上分離槽において浮上分離する第2分離工程、上記第2分離工程において分離した上記浮遊物質を真空乾燥する乾燥工程、上記第1分離工程で得られる処理水に残留する上記浮遊物質を加圧浮上分離槽において加圧浮上分離する加圧浮上分離工程、上記加圧浮上分離工程で得られる処理水をろ過器においてろ過するろ過工程、上記ろ過工程で得られるろ液に対して嫌気性生物処理を行う嫌気性生物処理工程、上記嫌気性生物処理工程後の処理水に対して好気性生物処理を行う好気性生物処理工程、および上記好気性生物処理工程後の処理水に対して凝集剤を添加して、形成される凝集物を沈殿分離する凝集沈殿工程を含む構成を有している。
【0021】
上記構成によれば、排水中の浮遊物質を第1浮上分離槽において浮上分離し、浮上分離した浮遊物質を取り除くことにより得られる処理水に残留する浮遊物質を加圧浮上分離槽において加圧浮上分離する。さらに、加圧浮上分離した浮遊物質を取り除くことにより得られる処理水をろ過することにより、残留する浮遊物質をさらに取り除くことができる。これにより、浮遊物質の量が比較的に多い排水を処理する場合においても、浮遊物質の極めて少ない処理排水を得ることができる。また、CODおよびBODの値が高い排水であっても、嫌気性生物処理および好気性生物処理を行うとともに、凝集沈殿処理を行うことにより、CODおよびBODの値が極めて低い処理排水を得ることができる。さらに、浮上分離を2回行うことにより浮遊物質を濃縮し、真空乾燥することにより、再生ポリマーとして再利用可能な、ウェット状の浮遊物質を効率よく生成することができる。
【0022】
本発明に係る排水の処理方法は、上記ろ過工程後に、上記ろ過器を逆洗して得られる逆洗水を上記加圧浮上分離槽に送ることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、加圧浮上分離工程において分離されなかった浮遊物質を、再度加圧浮上分離に供することができる。そのため、最終的により多くの浮遊物質を回収することができ、再生ポリマーとして再利用可能な浮遊物質をより多く得ることができる。
【0024】
本発明に係る排水の処理方法において、上記加圧浮上分離工程では、加圧浮上分離した浮遊物質を上記第2浮上分離槽に送ることが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、第1分離工程において回収できなかった浮遊物質についても、第2分離工程に供される浮遊物質に含ませることができる。そのため、最終的により多くの浮遊物質を回収することができ、再生ポリマーとして再利用可能な浮遊物質をより多く得ることができる。
【0026】
本発明に係る排水の処理方法において、上記第2分離工程で得られる処理水は、上記加圧浮上分離槽に送られることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、第2分離工程において回収できなかった浮遊物質を、加圧浮上分離工程を経た後、再度第2分離工程における分離に供するができる。そのため、最終的により多くの浮遊物質を回収することができ、再生ポリマーとして再利用可能な浮遊物質をより多く得ることができる。
【0028】
また、本発明に係る排水処理装置の別の態様は、上記課題を解決するために、ポリマーの製造時に排出される、ポリマー由来の浮遊物質を含む排水の処理を行う排水処理装置であって、上記排水中の上記浮遊物質を浮上分離する第1浮上分離槽、上記第1浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を浮上分離する第2浮上分離槽、上記第2浮上分離槽から回収した上記浮遊物質を真空乾燥する乾燥機、上記第1浮上分離槽から得られる処理水に残留する上記浮遊物質を加圧浮上分離する加圧浮上分離槽、上記加圧浮上分離槽から得られる処理水をろ過するろ過器、上記ろ過器からのろ液に対して嫌気性生物処理を行う嫌気性生物処理槽、上記嫌気性生物処理槽から得られる処理水に対して好気性生物処理を行う好気性生物処理槽、および上記好気性生物処理槽から得られる処理水に対して凝集剤を添加することにより形成される凝集物を沈殿分離する凝集沈殿槽を含む構成を有している。
【0029】
上記構成によれば、上述の排水の処理方法と同様の効果を得ることができる排水処理装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る排水の処理方法によれば、ポリマー由来の浮遊物質が極めて少ない処理排水が得られるとともに、分離したポリマー由来の浮遊物質を再生プラスチックの原料として再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1の実施形態における排水処理のプロセスフローを示す図である。
図2】第2の実施形態における排水処理のプロセスフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔実施の形態1〕
本発明に係る排水処理装置および排水処理方法の一実施形態について、図1に基づいて説明すれば以下の通りである。
【0033】
図1は、本実施形態における排水処理装置1を用いて行われる排水処理のプロセスフローを示す模式図である。
【0034】
本実施形態における排水処理装置1は、浮上分離槽(第1浮上分離槽)11、浮上分離槽(第2浮上分離槽)12、真空乾燥機(乾燥機)13、砂ろ過器(第1ろ過器)14、加圧浮上分離槽15、砂ろ過器(第2ろ過器)16、および最終中和槽(中和槽)17を含んで構成されている。
【0035】
排水処理装置1を用いて処理される排水10は、ポリマー由来の浮遊物質(以下、SSという)を含み、CODおよびBODが比較的低い排水(例えば、CODcrが200mg/L以下、BODが100mg/L以下)である。このような排水は、例えば、重合反応により得られたポリマーについて複数回の洗浄を行った後の排水であり、重合開始剤および連鎖移動剤等が除去されている排水が想定される。なお、本明細書におけるポリマーとは、水に浮くまたは水中に浮遊する粒子を含む重合体が意図される。このようなポリマーとしては、フッ化ビニリデン系重合体および熱膨張性マイクロスフェア(例えば特許文献WO2010/070987に開示されたもの)が例示されるが、これらに限定されるものではない。以下、排水処理装置1を用いて行われる排水処理の流れについて説明する。
【0036】
(第1浮上分離工程)
排水10は、まず浮上分離槽11に送られる。排水10を浮上分離槽11において滞留させることにより、排水10に含まれるポリマー由来のSSを浮上分離する。浮上分離槽11としては、従来公知の一般的な浮上分離槽を用いることができる。例えば、浮上スカムを掻き取るためのスクレーパーが設けられている浮上分離槽を用いることができる。なお、浮上分離槽11は、微細気泡を発生させる加圧水発生装置を備えるような加圧型の浮上分離槽である必要はない。浮上分離槽11における滞留時間は、排水10の性状に応じて適宜決定すればよい。
【0037】
浮上分離したSSは、SSスカム18として浮上分離槽12に送られる。一方、SSスカム18を排水10から取り除くことにより得られる清澄水(処理水)19は、砂ろ過器14に送られる。
【0038】
(第2浮上分離工程)
第2浮上分離工程では、浮上分離槽11から送られたSSスカム18を浮上分離槽12において滞留させることにより、SSスカム18からSSを浮上分離する。浮上分離したSSは、SSスカム18よりもSSが濃縮されたSSスカム20として回収される。浮上分離槽12としては、従来公知の一般的な浮上分離槽を用いることができ、浮上分離槽11と同じ構成であってもよい。浮上分離槽12における滞留時間は、SSスカム18に応じて適宜決定すればよい。
【0039】
回収されたSSスカム20は、真空乾燥機13に送られる。一方、SSスカム18からSSを取り除くことにより得られる清澄水21は、加圧浮上分離槽15に送られる。
【0040】
(乾燥工程)
乾燥工程では、浮上分離槽12から送られたSSスカム20を真空乾燥することにより、ポリマー由来のSSウェット28を生成する。真空乾燥機13としては、減圧可能な乾燥機であればよく、従来公知の真空乾燥機を用いることができる。なかでも、攪拌パドルなどの攪拌装置が配設された、攪拌型の真空乾燥機を用いることが好ましい。乾燥時間および乾燥温度は、SSスカム20の性状および目的とするSSウェットの性状に応じて適宜決定すればよい。SSスカム20には様々な粒径のポリマー由来のSSが含まれている。そのため、フィルターろ過による乾燥を行うと、フィルターの目詰まりが生じやすくなる。真空乾燥機を用いることにより、このような問題を回避することができるため、効率よくSSウェットを生成することができる。本工程で得られるSSウェット28は、再生プラスチックの原料として好適に再利用できる。
【0041】
(第1ろ過工程)
浮上分離槽11において排水10からSSを取り除くが、得られる清澄水19にはSSが残留している。そこで、清澄水19は砂ろ過器14に送られ、ろ過される。これにより、清澄水19に残留していたSSがろ材に捕集される。その結果、SS含量が低減している処理水23がろ液として得られる。すなわち、SSが極めて少ない(例えば、20mg/L以下)処理排水を得ることができる。
【0042】
砂ろ過器としては、ろ材の種類および構成により、単層ろ過方式、および多層(2層)ろ過方式がある。また、ろ過圧力のかけ方によって重力ろ過方式、および圧力ろ過方式がある。ろ過水量およびろ過に供する清澄水19の性状を考慮すると、砂ろ過器14としては逆洗の効率を考慮して単層の重力ろ過方式を用いることが好ましい。ろ材についても種々あるが、アンスラサイトと、粒径の異なる2種類の砂と、砂利とを組合せて用いることが好ましい。
【0043】
処理水23は、放流前に中和処理を行うために、最終中和槽17へ送られる。
【0044】
一方、砂ろ過器14のろ材に捕集されたSSは、砂ろ過器14を逆先することにより回収される。砂ろ過器14を逆洗して得られる逆洗水22は、加圧浮上分離槽15に送られる。
【0045】
(加圧浮上分離工程)
加圧浮上分離工程では、逆洗水22を加圧浮上分離槽15に滞留させることにより、逆洗水22に含まれているSSを加圧浮上分離する。ここで「加圧浮上分離する」とは、微細気泡を発生させる加圧水発生装置を備える加圧浮上分離槽において浮上分離することをいう。加圧浮上分離槽は、従来公知の一般的な加圧浮上分離槽を用いることができる。加圧水発生装置は、加圧浮上処理水の一部を還流し、これに圧縮空気を溶解させて加圧浮上分離槽に注入する方法を採用するものが一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0046】
加圧浮上分離したSSは、SSスカム26として浮上分離槽12に送られる。これにより、加圧浮上分離槽15において加圧浮上分離したSSは、本処理方法の同じ実施サイクルまたは別サイクルにおける第2浮上分離工程において、SSスカム18とともに浮上分離に供される。これにより、第1分離工程において回収できなかったSSについても、第2分離工程に供されるSSスカムに含ませることができ、最終的により多くのSSウェットを得ることができる。
【0047】
一方、浮上分離したSSを逆洗水22から取り除くことにより得られる清澄水24は、砂ろ過器16に送られる。
【0048】
なお、加圧浮上分離工程においては、本処理方法の同じ実施サイクルまたは別サイクルにある第2浮上分離工程において浮上分離槽12から送られてくる清澄水21も、加圧浮上分離に供される。したがって、第2分離工程において回収できなかったSSを、再度第2分離工程における分離にまわすことができる。これにより、最終的により多くのSSウェットを得ることができる。
【0049】
(第2ろ過工程)
加圧浮上分離工程において逆洗水22からSSスカム26を取り除くことにより得られる清澄水24にはSSが少なからず残留している。そこで、清澄水24は砂ろ過器16に送られ、ろ過される。これにより、清澄水24に残留していたSSが砂ろ過器16のろ材に捕集される。砂ろ過器16としては、砂ろ過器14と同様の構成の砂ろ過器を使用できる。
【0050】
砂ろ過器16のろ材に捕集されたSSは、砂ろ過器16を逆先することにより回収される。砂ろ過器16を逆洗して得られる逆洗水25は、再度、加圧浮上分離槽15に送られる。これにより、砂ろ過器16に捕集された、逆洗水25に含まれるSSは、本処理方法の別のサイクルにある加圧浮上分離工程において、逆洗水22とともに加圧浮上分離に供される。その結果、一度加圧浮上分離工程において分離されなかったSSを、最終的に浮上分離槽12に送ることができる。これにより、最終的により多くのSSウェットを得ることができる。また、再度加圧浮上分離に供しているため、濃縮した状態で浮上分離槽12に送ることができる。
【0051】
砂ろ過器16のろ液として得られる処理水27は、SSを含む砂ろ過器14の逆洗水22に由来するものであるが、加圧浮上分離工程および第2ろ過工程を経ることにより、SSの含量が極めて少ない処理排水となっている。処理水27は、放流前に中和処理を行うために、最終中和槽17へ送られる。
【0052】
(中和工程)
中和工程では、一連の工程によりSSの量が少なくなった処理水を放流するために、中和処理を行う。中和処理を行う最終中和槽は、従来公知の一般的な中和槽を用いることができる。例えば、pHを調整するための酸またはアルカリを供給する供給手段が備わっていてもよく、最終中和槽内のpHを確認するためのpH確認手段が備わっていてもよい。中和処理のために供給する酸およびアルカリに特に制限はなく、塩酸および水酸化ナトリウムなど、中和処理において一般的に使用されているものを用いればよい。中和処理がなされた処理排水29は、放流点から外部に放流される。以上の一連の工程により、処理排水29はSSが極めて少ない処理排水であるため、放流点近隣の環境への影響を最小限にすることができる。
【0053】
なお、上述した被処理物の処理槽間の移送、処理槽からろ過器への移送は、直接送られる場合に限らず、被処理物を一時的に留めておく貯留槽等を経由して送られるものであってもよい。貯留槽では、移送する被処理物の量を調節したり、複数の処理槽から送られてくる複数の被処理物を一つにまとめたりする役割も果たすことができる。また、被処理物の処理槽間の移送、処理槽からろ過器への移送手段は、特に限定されるものではなく、ポンプなどの一般的な移送手段を用いればよい。また、各処理槽の容積は、処理対象となる排水の量および性状により適宜決定すればよい。
【0054】
〔実施の形態2〕
本発明に係る排水処理装置および排水処理方法の他の実施形態について、図2に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態で用いたものと同じ機能を有する部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
図2は、本実施形態における排水処理装置2を用いて行われる排水処理のプロセスフローを示す模式図である。
【0056】
本実施形態における排水処理装置2は、浮上分離槽(第1浮上分離槽)11、浮上分離槽12、真空乾燥機13、加圧浮上分離槽15、砂ろ過器16、嫌気性生物処理槽32、好気性生物処理槽33、凝集槽34、凝集沈殿槽35、フィルタープレス36、および最終中和槽17を含んで構成されている。
【0057】
排水処理装置2を用いて処理される排水30は、ポリマー由来のSSを含み、CODが比較的高い排水(例えば、CODcrが平均4300mg/L)である。このような排水は、例えば、重合反応により得られたポリマーのスラリーを脱水することにより得られる排水であり、重合開始剤および連鎖移動剤等を多く含む排水が想定される。以下、排水処理装置2を用いて行われる排水処理の流れについて説明する。
【0058】
(第1浮上分離工程)
排水30は、まず浮上分離槽11に送られる。排水30を浮上分離槽11において滞留させることにより、排水30に含まれるポリマー由来のSSを浮上分離する。浮上分離槽11における滞留時間は、排水30の性状に応じて適宜決定すればよい。
【0059】
浮上分離したSSは、SSスカム37として浮上分離槽12に送られる。一方、SSスカム37を排水30から取り除くことにより得られる清澄水(処理水)40は、加圧浮上分離槽15に送られる。
【0060】
(浮上分離工程2)
第2浮上分離工程では、浮上分離槽11から送られたSSスカム37を浮上分離槽12において滞留させることにより、SSスカム37からSSを浮上分離する。浮上分離したSSは、SSスカム37よりもSSが濃縮されたSSスカム38として回収される。浮上分離槽12における滞留時間は、SSスカム37の性状に応じて適宜決定すればよい。
【0061】
回収されたSSスカム38は、真空乾燥機13に送られる。一方、SSスカム37からSSを取り除くことにより得られる清澄水41は、加圧浮上分離槽15に送られる。
【0062】
(乾燥工程)
乾燥工程では、浮上分離槽12から送られたSSスカム38を真空乾燥することにより、ポリマー由来のSSウェット39を生成する。本工程で得られるSSウェット39は、再生プラスチックの原料として好適に再利用できる。
【0063】
(加圧浮上分離工程)
加圧浮上分離工程では、浮上分離槽11から送られてくる清澄水40を加圧浮上分離槽15に滞留させることにより、清澄水40に残留するSSを加圧浮上分離する。加圧浮上分離したSSは、SSスカム42として浮上分離槽12に送られる。これにより、加圧浮上分離槽15において加圧浮上分離したSSは、本処理方法の同じ実施サイクルまたは別サイクルにおける第2浮上分離工程において、SSスカム37とともに浮上分離に供される。これにより、第1分離工程において回収できなかったSSについても、第2分離工程に供されるSSスカムに含ませることができ、最終的により多くのSSウェットを得ることができる。
【0064】
一方、浮上分離したSSを清澄水40から取り除くことにより得られる清澄水43は、砂ろ過器16に送られる。
【0065】
なお、加圧浮上分離工程においては、本処理方法の同じ実施サイクルまたは別サイクルにある第2浮上分離工程において浮上分離槽12から送られてくる清澄水41も、加圧浮上分離に供される。したがって、第2分離工程において回収できなかったSSを、再度第2分離工程における分離にまわすことができる。これにより、最終的により多くのSSウェットを得ることができる。
【0066】
(ろ過工程)
加圧浮上分離工程において清澄水40からSSを取り除くことにより得られる清澄水43にはSSが少なからず残留している。そこで、清澄水43は砂ろ過器16に送られ、ろ過される。これにより、清澄水43に残留していたSSが砂ろ過器16のろ材に捕集される。その結果、SS含量が低減している処理水45がろ液として得られる。処理水45は、嫌気性生物処理槽32に送られる。
【0067】
砂ろ過器16のろ材に捕集されたSSは、砂ろ過器16を逆先することにより回収される。砂ろ過器16を逆洗して得られる逆洗水44は、再度、加圧浮上分離槽15に送られる。これにより、砂ろ過器16に捕集された、逆洗水44に含まれるSSは、本処理方法における別の実施サイクルにある加圧浮上分離工程において、清澄水40とともに加圧浮上分離に供される。その結果、一度加圧浮上分離工程において分離されなかったSSを、最終的に浮上分離槽12に送ることができる。これにより、最終的により多くのSSウェットを得ることができる。また、再度加圧浮上分離に供しているため、濃縮した状態で浮上分離槽12に送ることができる。
【0068】
(嫌気性生物処理工程)
砂ろ過器16から送られてくる処理水45は、嫌気性生物処理槽32において、嫌気的な生物処理に供される。嫌気性生物処理槽32は、排水を嫌気的に生物処理するための処理槽であり、有機物の分解効率に優れるものであれば、従来公知の嫌気性生物処理方式の処理槽が使用できる。嫌気性生物処理槽32としては、酸生成反応とバイオガス生成反応とを同一槽で行う1槽式でも、各反応を別の槽で行う2層式でもよい。また、嫌気性生物処理槽32は浮遊方式、汚泥床方式など任意の方式でよく、また、担体添加型、造粒汚泥型であってもよい。嫌気性生物処理槽32における滞留時間は、処理水45の性状に応じて適宜決定すればよい。
【0069】
処理水45を嫌気性生物処理して得られる処理水46は、好気性生物処理槽33に送られる。
【0070】
なお、嫌気性生物処理工程において発生したメタンガス等のバイオガスは、脱硫塔などを介して従来公知のガス処理を行った後、大気に放散される。
【0071】
(好気性生物処理工程)
嫌気性生物処理槽32から送られてくる処理水46は、好気性生物処理槽33において、好気的な生物処理に供される。好気性生物処理槽33は、排水を好気的に生物処理するための処理槽であり、有機物の分解効率に優れるものであれば、従来公知の好気性生物処理方式の処理槽が使用できる。好気性生物処理槽33としては、例えば、活性汚泥を槽内に浮遊状態で保持する浮遊方式、活性汚泥を担体に付着させて保持する生物膜方式などを採用することができる。好気性状態で微生物的に有機物を分解する好気性生物処理槽33としては、槽内に酸素(空気)を供給するための散気管、曝気機などの酸素ガス供給手段が設けられた曝気槽を用いることができる。好気性生物処理槽33は1槽式でも、多槽式でもよく、また、1槽式で槽内に仕切り壁を設けたものでもよい。好気性生物処理槽33における滞留時間は、処理水46の性状に応じて適宜決定すればよい。
【0072】
処理水46を好気性生物処理して得られる処理水47は、凝集槽34に送られる。
【0073】
(沈殿分離工程)
好気性生物処理後の処理水47は、生物由来のSS、高分子有機物質およびリンを除去するために、凝集処理される。好気性生物処理後の処理水47の凝集処理には、従来公知の凝集槽34が用いられる。この凝集槽34は1槽のみでもよく、2槽以上を多段に設けたものでもよい。
【0074】
凝集槽は一般に凝集剤を被処理水に十分に接触させるための急速撹拌槽および凝集フロックを成長させる緩速撹拌槽で構成される。したがって、2槽以上の凝集槽を多段に設ける場合、前段の凝集槽を急速撹拌槽とし、後段の凝集槽を緩速撹拌槽とすることが好ましい。
【0075】
凝集剤としては、処理水47中の濁質を捕捉、凝集する効果があるものであれば特に限定するのもではなく、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄、ポリシリカ鉄(PSI)などの、無機系もしくは無機高分子系凝集剤、またはポリアクリルアミドなどの有機高分子系凝集剤を用いることができる。
【0076】
また、リンを除去するために、塩化カルシウムのリン除去剤を添加する。
【0077】
凝集処理時は、必要に応じてpH調整剤を添加して、用いる凝集剤に好適なpHに調整する。
【0078】
凝集が進んだ処理水48は続く凝集沈殿槽35に送られる。凝集沈殿槽35では、凝集フロックが沈殿して、上澄みである処理水49と凝集汚泥50とに分離される。凝集沈殿槽35は、従来公知の凝集沈殿槽を用いることができ、例えば、横流式沈殿槽および中心駆動式沈殿槽などを用いることができる。
【0079】
処理水49は、最終中和槽17へと送られる。一方、凝集汚泥50は、フィルタープレス36に送られる。
【0080】
(脱水工程)
脱水工程では、沈殿分離工程において得られた凝集沈殿物である凝集汚泥を脱水処理し、含水率が低下した脱水汚泥を生成する。本実施形態では、フィルタープレス36を用いて脱水処理を行っているが、脱水処理を行えるものであればこれにフィルタープレスに限定されるものではない。例えば、ベルトプレス等の他の加圧式脱水機または遠心脱水機等の機械的脱水装置を用いてもよい。フィルタープレス36に送られてきた凝集汚泥50は、含水率が40〜50%となるように脱水される。脱水により得られる脱水汚泥52は、外部に搬送され、埋め立て処理される。
【0081】
(中和工程)
中和工程では、一連の工程によりSSの量が少なくなり、BODcrおよびCODの値が小さくなった処理水を放流するために、中和処理を行う。中和処理がなされた処理排水51は、放流点から外部に放流される。以上の一連の工程により、処理排水51はSSが極めて少なく、BODcrおよびCODの値が極めて小さい処理排水であるため、放流点近隣の環境への影響を最小限にすることができる。
【0082】
なお、上述した被処理物の処理槽間の移送、処理槽からろ過器への移送は、直接送られる場合に限らず、被処理物を一時的に留めておく貯留槽等を経由して送られるものであってもよい。貯留槽では、移送する被処理物の量を調節したり、複数の処理槽から送られてくる複数の被処理物を一つにまとめたりする役割も果たすことができる。また、被処理物の処理槽間の移送、処理槽からろ過器への移送手段は、特に限定されるものではなく、ポンプなどの一般的な移送手段を用いればよい。また、各処理槽の容積は、処理対象となる排水の量および性状により適宜決定すればよい。
【0083】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0084】
〔実施例1:EWCLの排水処理〕
ポリマー由来のSSを含む低COD排水について、上述の排水処理装置1と同様の構成を有する排水処理装置を用いて排水処理を行った。本実施例で処理したEWCLは、CODcr:200mg/L以下、BOD:100mg/L以下、SS:平均500mg/L、総リン量(T−P):2mg/L以下の排水である。
【0085】
まず、EWCLを、最大流量80m/hで第1の浮上分離槽に送り、滞留時間を1時間として、ポリマー由来のSSを浮上分離した。浮上分離したSSスカムを回収した後、このSSスカムを第2の浮上分離槽に送り、滞留時間を30分としてSSを再度浮上分離することで、SSを濃縮した。濃縮したSSを真空乾燥機に送り、真空乾燥することにより、含水率50%のSSウェットを得た。得られたSSウェットは、再生ポリマーとしてリサイクルされる。
【0086】
第1の浮上分離槽においてSSを分離したことにより得られた清澄水では、SSの濃度が100ppmまで低下していた。この清澄水を、40m/hの流量で砂ろ過器に通して、SSをさらに除去した。その結果、ろ液として得られる排水中のSSの濃度が20ppm以下となっていた。この排水を最終中和槽で中和した後、場外へ排出した。
【0087】
なお、砂ろ過器で捕集した分のSSについては、逆洗水として排出した後、加圧浮上分離槽に送り、さらに分離処理を行った。
【0088】
〔実施例2:EWCHの排水処理〕
ポリマー由来のSSを含む高COD排水について、上述の排水処理装置2と同様の構成を有する排水処理装置を用いて排水処理を行った。本実施例で処理したEWCHは、CODcr:平均4300mg/L、BOD:平均4000mg/L、SS:1000mg/L、総リン量(T−P):平均70mg/Lの排水である。
【0089】
まず、EWCHを、最大流量80m/hで第1の浮上分離槽に送り、滞留時間を1時間として、ポリマー由来のSSを浮上分離した。浮上分離したSSスカムを回収した後、このSSスカムを第2の浮上分離槽に送り、滞留時間を30分としてSSを再度浮上分離することで、SSを濃縮した。濃縮したSSを真空乾燥機に送り、真空乾燥することにより、含水率50%のSSウェットを得た。得られたSSウェットは、再生ポリマーとしてリサイクルされる。
【0090】
第1の浮上分離槽においてSSを分離したことにより得られた清澄水では、SSの濃度が平均400ppmまで低下していた。この清澄水を加圧浮上分離槽に送り、滞留時間を30分としてSSを加圧浮上分離した。加圧浮上分離したSSスカムを第2の浮上分離槽に送り、滞留時間を30分としてSSを再度浮上分離することで、SSを濃縮した。濃縮したSSを真空乾燥機に送り、真空乾燥することにより、含水率50%のSSウェットを得た。得られたSSウェットは、再生ポリマーとしてリサイクルされる。
【0091】
加圧浮上分離槽においてSSを分離したことにより得られた清澄水では、SSの濃度が平均100ppmまで低下していた。この清澄水を、30m/hの流量で砂ろ過器に通して、SSをさらに除去した。その結果、ろ液として得られる排水中のSSの濃度が20ppm以下となっていた。この排水を、25m/hの流量で嫌気性生物処理槽に送った。嫌気性生物処理槽において、滞留時間を7.5時間として生物処理を行った。その結果、排水のCODcrおよびBODが、それぞれ平均900mg/Lおよび平均850mg/Lまで低下した。さらに、排水を、25m/hの流量で嫌気性生物処理槽から好気性生物処理槽に送り、滞留時間を3時間として生物処理を行った。その結果、排水のCODcrおよびBODが、それぞれ100mg/L以下および100mg/L以下まで低下した。次いで、排水を凝集槽へ送り、凝集槽において、排水に塩化カルシウムおよび高分子凝集剤を添加した。これにより、排水中に含まれるリンおよび生物由来のSSを凝集させた。これらを含む排水を凝集沈殿槽へ送り、凝集沈殿槽において凝集物を沈殿分離した。これにより、T−Pが1.6mg/Lにまで低下した。この排水を最終中和槽で中和した後、場外へ排出した。
【0092】
一方、凝集沈殿槽において沈殿した汚泥は、フィルタープレスに送られ、含水率75%まで脱水された後、埋め立て処分される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、ポリマーを大量に生産する製造業の分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
11 浮上分離槽(第1浮上分離槽)
12 浮上分離槽(第2浮上分離槽)
13 真空乾燥機(乾燥機)
14 砂ろ過器(第1ろ過器)
15 加圧浮上分離槽
16 砂ろ過器(ろ過器、第2ろ過器)
17 最終中和槽(中和槽)
32 嫌気性生物処理槽
33 好気性生物処理槽
34 凝集槽
35 凝集沈殿槽
36 フィルタープレス
図1
図2