(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマッサージ機における施療子としての揉み玉を被施療者に対し進退させる機構では、前記特許文献に示されるように、傾動に伴う揉み玉の進退度合、すなわち揉み玉及び駆動機構部(もみ玉ユニット)の傾動角度を把握するために、駆動機構部と一体に傾動する略扇形のスケールと、駆動機構部と共に傾動するスケールに対し固定され動かない箇所に取付けられる検出部(センサ)とからなるロータリエンコーダが用いられていた。
【0005】
こうしたロータリエンコーダとしては、スケールに光を通過させるスリットを多数設け、検出部でスケールの動きに伴う通過光の断続状態を検出することで傾動角度を取得可能とする光学式のものが一般的に用いられている。
【0006】
ただし、こうしたロータリエンコーダのうち、スケールは駆動機構部のハウジング外周部に設けられるなど、駆動機構部の傾動中心とスケールとの距離が大きく、また傾動中心をなす軸などの部品とスケールとの間に別の複数の部品が介在することで、こうした部品の精度の影響を受けやすいものとなっていた。このため、部品の形状や組付けの精度がよくない場合、スケールの各スリットが傾動中心からの距離を同じくする状態や、スケールが傾動中心軸に対し直交して検出部との位置関係を一定とする状態を維持できなくなり、これに伴い、スケールの各スリットごとに検出部との位置関係が変化して、駆動機構部の傾動角度の検出精度低下を招き、揉み玉の進退の制御を適切に行えなくなる危険性がある。こうした検出精度の低下を防ぐため、部品寸法精度と組立精度を高くしたり、スケールとそのスリットを大きくして多少の位置ずれが生じても精度を維持しやすい構造とすることもできるが、精度を高めたり部品が大きくなる分、コスト高になってしまうという課題を有していた。
【0007】
さらに、前記特許文献で示される従来のマッサージ機におけるメカユニットでは、背もたれ部内のガイドレールにその左右両端部を支えられつつ昇降するメカユニットの中央に駆動機構部を傾動可能に配置する関係上、駆動機構部の左右に、その傾動中心軸を軸受等を介して支持する組付台をそれぞれ配した構造を採っており、これら左右の組付台を所定の連結部材で連結して一体のメカユニットベースとされる構成である。そして、このメカユニットベースは、あたかも左右の組付台の間に生じさせた開口部分に駆動機構部を配置した構成となっている。
【0008】
このように、メカユニットベースは組付台を別の連結部材で連結し、且つ開口部分の存在する構成となっていることから、剛性を得にくく、また、メカユニットベースは昇降移動させるために軽量化を図る必要があり、高い剛性を付与しにくいこともあり、施療の際に揉み玉の受ける反力でメカユニットベースの変形を招きやすかった。メカユニットベースにわずかでも変形が生じると、従来のロータリエンコーダの配置構造では、スケールが検出部に対する正しい向きから傾くなど、スケールと検出部との位置関係が変化することで、検出精度に悪影響が及び、スケールの動きを検出部で適切に読取れなくなる、という課題を有していた。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、ロータリエンコーダのスケール部の配置を適切に設定して、駆動機構部の部品精度等の影響を極力抑えつつ、駆動機構部の傾動状態を高精度に検出でき、施療子の進退制御を正確に行えるマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るマッサージ機は、背もたれ部に当該背もたれ部の上下方向に昇降移動可能として内蔵され、被施療者に対し施療子を動かして施療を実行する施療機構を備えるマッサージ機において、前記施療機構が、背もたれ部内部のガイドフレームに昇降移動可能に支持されるベース部と、ベース部に対し傾動可能に取付けられて施療子を作動させる駆動機構部と、ベース部に対して駆動機構部を傾動させ、施療子の被施療者側への突出量を調整可能とする傾動機構と、前記駆動機構部のベース部に対する傾動角度変位を検出するロータリエンコーダとを有し、前記駆動機構部が、前記ベース部に支持される軸に取付けられて、当該軸を傾動中心として傾動可能に配設され、前記ロータリエンコーダが、前記駆動機構部側に取付けられるスケール部と、前記ベース部側に取付けられる検出部とからなり、スケール部のベース部に対する傾動角度変位を検出部で検出し、前記スケール部が、前記駆動機構部の側方で駆動機構部に対し固定されると共に、一部を前記軸の円筒面状の外周面に常に摺接させて、駆動機構部と共に傾動しつつ、前記軸周りの回動以外の移動の自由度を有しない状態とされるものである。
【0011】
このように本発明によれば、ベース部に対する駆動機構部の傾動角度を検出するロータリエンコーダのスケール部が、駆動機構部の傾動中心となる軸に摺接し、駆動機構部が傾動する際に、スケール部が軸外周の円筒面に接触しながら傾動する状態となって、その傾動に係る動きを軸で拘束され、移動の自由度をこの軸周りの回動のみに制限されることにより、駆動機構部の傾動と同時に傾動するスケール部が、正確に駆動機構部の傾動中心周りに傾動することとなり、ロータリエンコーダでの傾動角度の検出に際し、仮に、駆動機構部各部の部品精度や組立精度の影響で、駆動機構部の軸周りの傾動に他の動き成分が加わる状態になったとしても、そうした動きの変化がスケール部に反映されず、スケール部が検出部に対し適切な位置関係を維持しつつ駆動機構部の傾動に対応して傾動でき、ロータリエンコーダとして適切に傾動角度の検出を行って、施療子の進退に係る制御の正確な実行が図れる。
【0012】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記ロータリエンコーダのスケール部が、前記駆動機構部における施療子とは離れた側で且つ前記軸と直交する向きから軸に近接して摺接状態とされると共に、当該摺接状態で当接した駆動機構部の所定箇所に対し軸と直交する他の向きから所定の係止部材を用いて係止されて、駆動機構部に固定されるものである。
【0013】
このように本発明によれば、ロータリエンコーダのスケール部を駆動機構部の傾動中心の軸に対し所定方向から近接させて摺接させると共に、当接した駆動機構部の所定箇所に係止部材で係止し固定して、スケール部を駆動機構部と一体に傾動し且つ軸による拘束を受ける状態とすることにより、既に駆動機構部が傾動可能に配設されている状況で、後からスケール部を適切な位置に無理なく配設することができ、駆動機構部の傾動角度を高い精度で検出可能としつつ、当初から駆動機構部にスケール部を一体に固定しない分、駆動機構部のベース部への組付けが容易となり、後からの駆動機構部へのスケール部の固定も容易であることと合わせて、組立ての能率を高められ、製造コストの低減が図れる。
【0014】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記ベース部が、中央に貫通孔を有する所定形状の金属平板における外周部分の複数箇所及び前記貫通孔周縁部の複数箇所を、曲げ加工で少なくとも板厚より大きい高さ寸法分、起立状態として得られる、略矩形状の外周形状及び略矩形開口形状の開口部を有する成形体とされ、前記ベース部の外周における各起立部分は、折曲げ線方向の長さを、起立部分の折曲げ線と略平行となる開口部の辺の略全長に相当する寸法以上となるようにして折曲げ形成されてなり、前記駆動機構部が、前記軸へ取付けられた状態で、前記ベース部の開口部を通って傾動可能とされるものである。
【0015】
このように本発明によれば、ベース部を金属板の折曲げで略矩形状の外周形状及び略矩形状の開口部を有するものとして形成し、シンプル且つ軽量ながら十分な剛性を確保できる構造が得られることにより、駆動機構部の傾動や施療子の作動に伴い駆動機構部が力を受けても、ベース部では各起立部分が曲げ応力に対する抵抗材として働くこととなり、ベース部の変形を確実に抑えられ、駆動機構部とベース部との位置関係を不用意に変化させず、ロータリエンコーダによる駆動機構部の傾動角度の検出に悪影響が及ばない。また、ベース部が金属板からなる一体構造で、剛性を高めつつも軽量で簡略な構造にでき、製造コストも抑えられる。
【0016】
また、本発明に係るマッサージ機は必要に応じて、前記ベース部の外周における起立部分のうち、前記軸と直交する向きの二つの起立部分からそれぞれ外方に突出する所定の軸周りに回動可能として複数のローラが配設され、前記施療機構の昇降移動に伴い、前記複数のローラのうち、第一の組をなす複数のローラが、前記ガイドフレームの所定の一面に接触して転動すると共に、第二の組をなす複数のローラが、ガイドフレームの前記一面の反対側となる他面に接触して転動するものである。
【0017】
このように本発明によれば、ベース部外周の起立部分に配設した複数のローラがガイドフレームを挟んだ状態で転動しつつ、施療機構の昇降移動がなされることで、施療機構とガイドフレームとの位置関係が変化せず、背もたれ部で施療機構を適切に昇降移動させられると共に、ガイドフレームで確実に施療機構を支持して正確に施療を実行できる。さらに、ベース部が確実にガイドフレームに位置決めされた状態で支持され、駆動機構部の傾動に際しベース部が不用意に動くことはなく、ロータリエンコーダでの傾動角度の検出に悪影響を与えるのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係るマッサージ機を前記
図1ないし
図14に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るマッサージ機1は、着座した被施療者を支える椅子状のものであり、詳細には、床面上に載置されて椅子全体を安定的に支持する基台部11と、この基台部11の上方で被施療者の臀部を支える座部12と、この座部12の後側で被施療者の背中を支える背もたれ部13と、座部12の左右両側で被施療者の肘や前腕部を支える肘掛部14と、座部12の前側で被施療者の脚を支える脚支持部15と、マッサージ動作に係る各種操作入力を受付けるリモコン30と、搭載されている複数の施療機構によるマッサージ動作を操作入力や記録情報等の内容に基づいて制御する制御部40とを備える構成である。
【0020】
前記基台部11は、椅子各部をなす前記座部12、背もたれ部13、肘掛部14、及び脚支持部15を一体に取付けられてこれらを支持するものである。また、前記座部12は、基台部11に対し座面の傾斜角度を調整可能として取付けられ、座面にて被施療者の臀部や太腿部を支えつつ内蔵の施療機構でマッサージを実行するものである。この座部12の施療機構としては、空気の給排で動作する臀部用エアセル71、及び太腿用エアセル72を備える構成である。これらエアセルを空気の給排で動作させるエアポンプ70が座部12下側のスペースに配設される。
【0021】
前記背もたれ部13は、人の背中形状に合せた表面形状とされて前記基台部11及び座部12に対し傾斜角度を調整可能として配設され、その内部に、マッサージを実行する施療機構を備える構成である。
背もたれ部13内部には、施療子としての左右一対の揉み玉51とこれを動作させる駆動機構部60が一体となったメカユニット50と、このメカユニット50を背もたれ部13上下方向に移動可能に支持しつつ、背もたれ部の各部を内部から支える枠状の背もたれ部フレーム13aと、前記エアポンプ70による空気の給排で動作する背中用エアセル73及び腰用エアセル74とがそれぞれ配設される構成である。このうちメカユニット50、背中用エアセル73、及び腰用エアセル74が、それぞれマッサージを実行する施療機構をなす。
【0022】
なお、この背もたれ部13の左右両側部には、被施療者に面する内面側にエアセル等の施療機構を設けた一対の側壁部を突出配設して、被施療者の上腕部等に対して側方からマッサージを行えるようにすることもできる。
【0023】
前記背もたれ部フレーム13aは、メカユニット50を背もたれ部13上下方向に移動可能とし且つ他方向への動きは拘束して支持する左右一対のガイドフレーム20間に、複数の横フレームを横方向に掛渡して一体に連結して、略梯子状のフレーム構造とされるものである。
【0024】
前記ガイドフレーム20は、略コ字状の断面形状を有すると共に、人の背中形状に合せた背もたれ部13の表面に沿う長手方向形状とされてなり、一対を背もたれ部内部左右にそれぞれ配設される構成である。この対をなす二つのガイドフレーム20に挟まれる配置で、前記メカユニット50がガイドフレーム20に沿って移動可能に配設される。このガイドフレーム20の内周に、樹脂製のラック21がメカユニット50の上下動範囲にわたる長さとして配設される。
【0025】
前記メカユニット50は、揉み、叩き等の刺激を被施療者に与える施療子としての左右一対の揉み玉51と、この揉み玉51を突出状態で支持する左右一対の揉み玉支持アーム52と、この揉み玉支持アーム52を介して揉み玉51を揉み、叩き等のマッサージ動作に対応させて駆動する駆動機構部60と、背もたれ部上下方向に直交する軸線を中心として駆動機構部60を傾動可能に支持するベース部53と、駆動機構部60のベース部53に対する傾動状態を検出するロータリエンコーダ54と、ベース部53側端部に回動可能に配設され、駆動源としての昇降モータ57により回転駆動されてガイドフレーム20を上下に走行し、ベース部53をガイドフレーム20に対し移動させる駆動ローラ55と、ベース部53側部に駆動ローラ55の回転中心軸と平行な軸を中心に回動可能として取付けられ、ガイドフレーム20の外周面に転がり接触する弾性材製のローラ56a、56bとを備える構成である。
【0026】
前記駆動機構部60は、ベース部53に対し傾動可能に支持されるハウジング61と、このハウジング61と一体に配設され、制御部40の制御に基づいて揉み玉51に揉み動作を行わせるための駆動力を発生させる揉みモータ62と、同じくハウジング61と一体に配設され、制御部40の制御に基づいて揉み玉51に叩き動作を行わせるための駆動力を発生させる叩きモータ63と、ハウジング61に内蔵されて、これら揉みモータ62、叩きモータ63からの運動を揉み玉支持アーム52を介して揉み玉51に伝達する揉み機構及び叩き機構(図示を省略)とを備える、公知のマッサージ機に用いられるものと同様の機構であり、詳細な説明を省略する。
【0027】
なお、ハウジング61には、駆動機構部60の傾動中心を同じく中心とする所定ピッチ円径で且つ所定円弧長さの、歯車の一部を切出した形状の歯部67が固定配設される。この歯部67は、駆動機構部60と一体に傾動する揉み玉51に対し、背もたれ部13にもたれた場合の被施療者の背面位置を越えて突出可能となる傾動範囲を与えることのできる、十分な円弧長さとして形成される。
【0028】
前記ベース部53は、一枚の金属平板の曲げ加工で得られる、略矩形状の外周形状及び略矩形状の開口部53bを有する成形体であり、中央部分の開口部53bに配置した駆動機構部60を傾動可能に支持する構成である。この他、ベース部53には、制御部40の制御に基づいてメカユニット昇降用の駆動力を発生させる昇降モータ57と、駆動機構部60を傾動させる駆動力を発生させる進退モータ58とが取付けられる構成である。
【0029】
このベース部53による駆動機構部60の詳細な支持構成を説明すると、ベース部53に、昇降用回転軸53aがその軸方向を背もたれ部上下方向に対し直交する向きとして回動可能に軸支されてなり、この昇降用回転軸53a周りに駆動機構部60のハウジング61が相対回動可能に支持されることで、ベース部53が駆動機構部60を、昇降用回転軸53aを傾動中心として、開口部53bを通って傾動可能となるように支持する仕組みである。
【0030】
このベース部53自体は、詳細には、中央に貫通孔を有する一枚の金属平板における外周部分の一部及び前記貫通孔周縁部の一部を、曲げ加工で、メカユニット50の支持状態で被施療者に面しない側となる方へ起立状態とすることにより、略矩形状の外周形状及び略矩形状の開口部53bを有する成形体とされるものである。素材としての金属平板の外周部分における四箇所を折曲げることで、最終形状における矩形状の外形をなす各辺に、金属板の板厚を大きく上回る所定高さ寸法の起立部分53c、53d、53e、53fが配置される形状となっている。
【0031】
これらのベース部53の外周における各起立部分53c、53d、53e、53fは、折曲げ線方向の長さを、起立部分の折曲げ線と略平行となる開口部53bの辺の略全長に相当する寸法以上となるようにして折曲げ形成される。詳細には、金属平板の外周部分のうち対向する二箇所が、外周縁から貫通孔周縁に至る範囲を起立部分53c、53dとして折曲げられており、起立部分53c、53dが直接前記開口部53bに面する状態とされる。これら外周であり且つ開口部53bに面する二箇所の起立部分53c、53dが、ベース部53における背もたれ部上下方向の端部となる。この他の外周の二箇所の起立部分53e、53fは、ベース部53の側端部としてガイドフレーム20に面する。
【0032】
さらに、外周部分であり且つ貫通孔周縁である二箇所を折曲げて起立部分53c、53dを形成する一方で、別途対向する貫通孔周縁部の二箇所をそれぞれ折曲げて起立部分53g、53hを形成することで、略矩形状の開口部53bを生じさせ、この開口部53bの周縁となる各辺に起立部分53c、53d、53g、53hが配置された形状を得ている。
【0033】
これらのベース部53の開口部53b周縁における各起立部分53c、53d、53g、53hは、折曲げ線方向の長さを、少なくとも起立部分53c、53d、53g、53hのある開口部の辺の略全長に相当する寸法となるようにして折曲げ形成されてなり、このうち外周であり且つ開口部53bに面する上下方向端部の二箇所の起立部分53c、53dは、その長さを外周の一辺全体に及ぶものとされて、開口部の辺を超える長さとなっている。
【0034】
なお、ベース部53における背もたれ部上下方向の端部となる各起立部分53c、53dには、金属平板での貫通孔形状の設定で、横方向の中央部分で折曲げ部分を切欠き除去したような凹部53iを配置することにより、このベース部端部の各起立部分53c、53dが駆動機構部60や揉み玉51、被施療者の首部分等と接触するのを避けられる。
【0035】
さらに、このうちの背もたれ部下方向の端部となる起立部分53dの先端側所定範囲を、所定の傾斜角度で他部分に対し折曲げて傾斜部53jとしている。この傾斜部53jにより、誤ってメカユニット50とマッサージ機座部との間の隙間に何かの物体が入り込んだ場合でも、傾斜部の存在により、物体が過剰に隙間の奥側へ向うのを阻止でき、物体が隙間からスムーズに抜けられることとなり、下降するメカユニットと座部とで物体、特に人の頭部等を挟むような危険な事態に至るのを防止できる。
【0036】
この他、ベース部53の側端部となる左右の起立部分53e、53fには、外方に突出する状態に折曲げ形成されるストッパ部53kが設けられており、このストッパ部53kはガイドフレーム20の外面に接触可能な突出量とされる。ベース部53側部をガイドフレーム20に係合させる駆動ローラ55等が破損してメカユニット50がガイドフレーム20の拘束を受けにくい事態に至っても、ストッパ部53kがガイドフレーム20に接触することで、ベース部53をはじめとするメカユニット50が背もたれ部13の被施療者に接する表面側に動くことはなく、安全を確保できる。
【0037】
こうしてベース部53を一枚の金属板の折曲げで形成し、駆動機構部60を取囲む各部を当初から一体としつつ、曲げで生じさせた起立部分により剛性を確保することで、構造を簡略化できると共に軽量化も図れる。
【0038】
このベース部53に取付けられる昇降モータ57は、昇降用回転軸53aを介してベース部53側端部の駆動ローラ55を回転駆動し、駆動ローラ55がガイドフレーム20を上下に走行するようにして、メカユニット50をガイドフレーム20に対し昇降移動させるものである。また、進退モータ58は、制御部40の制御に基づいて、連動する傾動用歯車58aを回転させ、この傾動用歯車58aと噛合している駆動機構部60側の歯部67を移動させることで、駆動機構部60をベース部53に対し傾動させ、これにより揉み玉51位置を被施療者に対し進退させ、揉み玉51の被施療者側への突出量、すなわち、施療の強さを調整するものである。
【0039】
前記ロータリエンコーダ54は、駆動機構部60の側方となるベース部53の開口部周縁部に取付けられる検出部54aと、駆動機構部60の側部に取付けられる略扇形板状のスケール部54bとからなり、スケール部54bの傾動した量を検出部54aで検出して制御部40へ信号を出力し、制御部40で駆動機構部60のベース部53に対する傾動角度から揉み玉51の進退量を取得可能とするものである。
【0040】
このスケール部54bの、最も昇降用回転軸53aから離れた位置となる円弧状外周部分近傍には、公知のロータリエンコーダの場合と同様に、スリット等の被検出部54cが、傾動角度検出の分解能に対応する大きさ及び間隔で放射状に複数配設される構成である。これら被検出部54cの配置の中心は、スケール部54bの取付状態で昇降用回転軸53aの中心位置、すなわち駆動機構部60の傾動中心と一致することとなる。また、スケール部54bにおける略扇形の要となる部分には略半円筒面状の摺動面54dが形成される構成である。
【0041】
スケール部54bは、駆動機構部60のハウジング61側部に突出する取付部61aに取付けられると共に、駆動機構部60の傾動中心に一致する前記昇降用回転軸53aの外周面に対し、摺動面54dを常に接触させた状態とされる。
【0042】
詳細には、スケール部54bは、ベース部53に支持された状態の駆動機構部60における揉み玉51から離れた背面側で且つ昇降用回転軸53aと直交する向きから、昇降用回転軸53aに近接して摺動面54dと昇降用回転軸53aとを摺接状態とされると共に、この軸への摺接状態で当接した駆動機構部60の取付部61aに対し、軸に近接させた方向とは略直角となる、昇降用回転軸53aと直交する他の向きから、係止部材としてのねじ61bを用いてねじ止めされて、駆動機構部60に固定される仕組みである。
【0043】
こうして、スケール部54bの摺動面54dと昇降用回転軸53aの外周面とが常に接触する状態とされることで、スケール部54bは軸周りに回動する動き以外を行わないよう拘束される、すなわち、スケール部54bが昇降用回転軸53a周りの回動以外の移動の自由度を有しない状態とされる構成である。
【0044】
なお、検出部54aとスケール部54bの被検出部54cとの組合わせによる傾動角度の検出は、光や磁気などその用いる検出手段は問わず、選択した検出手段に応じた検出部54aと被検出部54cを採用することができる。
【0045】
また、スケール部54bにおいて、昇降用回転軸53aを中心として放射状に配置された状態となるスリット等の被検出部54cを、公知のロータリエンコーダに見られるように、径方向に複数組設けると共に、対応する検出部54aの検出機構も、被検出部54cに合せて複数組設けるようにして、検出結果から傾動の方向を識別したり、可動範囲の限界位置を把握できるようにしてもよい。
【0046】
さらに、ベース部53には、前記昇降モータ57及び昇降用回転軸53aと共に、昇降用回転軸53aの回転を減速して伝達されて回転するスケール歯車57aと、ロータリエンコーダ54の検出部54aと並べて取付けられて、スケール歯車57aの回転変位を検出する昇降変位検出部57bとが配設される構成である。スケール歯車57aの回転した量を昇降変位検出部57bで検出して制御部40へ信号を出力すると、昇降用回転軸53a及び駆動ローラ55の回転数に対応しているスケール歯車57aの回転変位から、制御部40がガイドフレーム20上におけるメカユニット50の昇降に係る変位を取得可能となる仕組みである。
【0047】
このように駆動機構部60の側方となるベース部53の開口部周縁部に、ロータリエンコーダ54の検出部54aと並べて昇降変位検出部57bを設けるようにすることで、ロータリエンコーダ54の検出部54aからの信号と昇降変位検出部57bからの信号を制御部40にそれぞれ出力する各信号処理回路を、一つの回路基板53lにまとめてベース部53上に配置することができ、ベース部53上の各部品のレイアウトをより簡略にできると共に、回路基板53lと制御部40間の配線を大幅に省略、単純化可能となる。
【0048】
前記駆動ローラ55は、ベース部53の側端部下寄りで、駆動機構部60の傾動の中心を兼ねる昇降用回転軸53aの端部に取付けられ、昇降用回転軸53aを中心としてベース部53に対し回動可能として配設され、ベース部53の起立部分53e、53f寄りの端部を円筒面状、残りの他部分を歯車状のピニオンギヤ部55aとして形成される構成である。この駆動ローラ55は、昇降モータ57が一体の減速機構を介して昇降用回転軸53aを回転駆動することにより、この昇降用回転軸53aと共に回転する仕組みである。
【0049】
この駆動ローラ55に加え、ベース部53側端部上側にはガイドローラ59がそれぞれ回動可能に取付けられている。これら駆動ローラ55とガイドローラ59をガイドフレーム20に挿嵌すると共に、駆動ローラ55のピニオンギヤ部55aをガイドフレーム20のラック21と噛合させることで、ベース部53側端部がガイドフレーム20に支持され、ベース部53は背もたれ部上下方向に移動可能で且つ他方向への動きを拘束されることとなる。
【0050】
さらに、ベース部53側端部における駆動ローラ55とガイドローラ59の各近傍には、ローラ56a、56bが起立部分53e、53fで支持されつつ回動可能に配設される。これらローラ56a、56bは、駆動ローラ55とガイドローラ59がガイドフレーム20に挿嵌された状態で、ガイドフレーム20におけるラック21のある面の裏側にあたる外周面に転がり接触する。
【0051】
各ローラ56a、56bは、ベース部53側端部における各駆動ローラ55と各ガイドローラ59にそれぞれ一つずつ対応させて配設され、各駆動ローラ55や各ガイドローラ59の配置位置に対し、これらの位置とガイドフレーム20を隔てた反対側に配設される。
【0052】
各ローラ56a、56bは、最も近い駆動ローラ55又はガイドローラ59との間隔をそれぞれ維持し、駆動ローラ55とガイドローラ59がガイドフレーム20に挿嵌される状態で、ガイドフレーム20の外周面に転がり接触し、駆動ローラ55とローラ56aとの間、並びに、ガイドローラ59とローラ56bとの間に、それぞれガイドフレーム20の一部が挟まれることで、駆動ローラ55とガイドローラ59がガイドフレーム20からの離隔を阻止され、ガイドフレーム20に接して動く状態が得られる。
【0053】
メカユニット50は、ベース部53の側端部における駆動ローラ55やガイドローラ59を一対のガイドフレーム20にそれぞれ上下移動可能に支持されることで、ガイドフレーム20に挟まれる配置状態となる。
そして、駆動ローラ55が、昇降モータ57による駆動に伴って回転することで、ラック21との噛合位置を変えてガイドフレーム20を走行する状態となり、同時にベース部53を含むメカユニット50全体をガイドフレーム20に沿って背もたれ部13の上下に移動させ、背もたれ部13における揉み玉51の位置(揉み玉による施療対象部位)を上下に変えられる仕組みとなっている。
【0054】
そして、メカユニット50は、設定されたマッサージの内容に応じて、制御部40による制御で、昇降モータ57を作動させて背もたれ部13の上下に移動し、揉み玉51の上下位置を調整されると共に、進退モータ58の作動による揉み玉51と駆動機構部60の傾動で、揉み玉51の被施療者側への突出量を調整されて、揉み玉51をマッサージの対象箇所に位置させる。揉み玉51の移動後、又はこうした揉み玉51の移動と並行して、制御部40が、マッサージの種類に応じて、メカユニット50における駆動機構部60の揉み、叩き用のモータを作動させ、揉み玉51に設定された揉みや叩き等のマッサージに対応した動きを行わせることとなる。
【0055】
前記肘掛部14は、座部12の両側に配設され、背もたれ部13がリクライニング角度を変化させたり、座部12が傾動した場合でも、被施療者の前腕を安定的に支持するよう形成される構成である。この肘掛部14にも、前記エアポンプ70による空気の給排で動作するエアセルを配設して、被施療者の前腕部に対しマッサージを行える構成としてかまわない。
【0056】
前記脚支持部15は、座部12の前側に位置し、座部12前端付近を中心として傾動可能に配設され、内蔵のアクチュエータ(図示を省略)により傾斜角度を調整されるものである。この脚支持部15にも、前記エアポンプ70による空気の給排で動作する脚用エアセルや、上下に移動しつつ脚を押圧するローラ等の施療機構を配設するようにしてかまわない。
【0057】
前記リモコン30は、マッサージ機に対する各種操作入力を受付ける多数のスイッチや表示部を備え、マッサージ機1の側部におけるスタンド31に着脱自在に設置され、マッサージに係る操作入力を制御部40に送信するものである。なお、リモコン30のスイッチや表示部の位置を被施療者にとって最適位置とするために、スタンド31の位置は調整可能となっている。
【0058】
前記制御部40は、あらかじめ被施療者の身体各部位置検出を実行して得られた検出結果に基づいて、施療機構やマッサージ機の他の各可動部分を被施療者に対応した状態に調整すると共に、施療機構や他の各可動部分に対し、リモコン操作やあらかじめ記録設定された施療内容、また前記検出結果の情報に基づいて、適切な施療の実行のための制御を行うものである。
【0059】
この制御部40は、そのハードウェア構成として、CPUやメモリ、入出力インターフェース等を備えるコンピュータとなっており、メモリ等に格納されるプログラムにより、コンピュータを制御部40として動作させる仕組みである。この制御部40をなすコンピュータは、CPUやメモリ、ROM等を一体的に形成されたマイクロコンピュータとしてもかまわない。
【0060】
この制御部40をなすコンピュータのユニットは、座部12直下等のマッサージ機1内部の所定のスペースに配設され、リモコン30と通信可能な状態とされると共に、メカユニット50の各種モータや、座部12や背もたれ部13、脚支持部15を傾動させる各アクチュエータ、エアポンプ70とそれぞれ電気的に接続され、被施療者の身体各部位置検出の際にはあらかじめ設定された位置検出用プログラムに基づく制御信号出力により、また、マッサージ実行の際には設定されたマッサージのデータに基づく制御信号出力により、これらの駆動機構の作動を制御する。
【0061】
加えて、制御部40は、メカユニット50や各アクチュエータの変位量を出力するエンコーダ等の信号出力手段とも電気的に接続されており、メカユニット50の状態や、座部12、背もたれ部13、及び脚支持部15の傾斜等の状態を把握しつつ、モータやアクチュエータ等の駆動手段の作動制御を行うこととなる。
【0062】
この他、制御部40は、公知のマッサージ機と同様に、マッサージに先立つ被施療者の身体各部位置検出として、メカユニット50を制御し、メカユニット50を背もたれ部13における初期位置からガイドフレーム20に沿って移動させ、揉み玉51を被施療者に沿って動かす過程で、背もたれ部13にもたれた被施療者側からの揉み玉51に対する圧力の変化や揉み玉51の傾き変化等を順次取得し、この情報に基づいて、被施療者の肩位置、背骨のライン、腰位置を検出することもできる。
【0063】
次に、本実施形態に係るマッサージ機のメカユニットにおける駆動機構部の傾動調整状態について説明する。前提として、マッサージ機1に被施療者が着座して背中を背もたれ部13にもたれさせた状態で、マッサージ機1の主電源が入とされ、マッサージ機1が起動して、被施療者の体形検出などのマッサージ開始前の準備動作や、背もたれ部13等の傾斜角度調整等が完了し、さらに、被施療者によりマッサージコース等の動作状態指示が入力されて、制御部40が被施療者に対する揉み玉による施療を既に実行しているか、これから施療を実行しようとしているものとする。
【0064】
揉み玉51による施療の場合、設定された施療内容に応じて、制御部40は、昇降モータ57を作動させて各駆動ローラ55を回転させ、ガイドフレーム20に対しメカユニット50全体を上下に移動させ、揉み玉51の上下位置を調整する。
【0065】
この際、駆動ローラ55とローラ56a、並びに、ガイドローラ59とローラ56bが、それぞれガイドフレーム20の一部を挟んだ状態としていることで、駆動ローラ55とラック21とがこれらローラ56a、56bで離隔を阻止されて噛合状態を確実に維持し、回転する駆動ローラ55がガイドフレーム20に対し確実に上下動できる。これにより、メカユニット50全体を正確に上下動させられ、揉み玉51を正確に所望の上下方向位置に調整できる。
【0066】
そして、これらローラ56a、56bの存在でガイドフレーム20の形状精度に関わりなく駆動ローラ55をラック21寄りに位置させてピニオンギヤ部55aとラック21の噛合状態を維持できる。このため、ガイドフレームを高精度に形成し且つ外力に対しその形状を厳密に維持できる高い剛性を確保する必要がなく、ガイドフレーム構造の簡略化、軽量化が図れる。
【0067】
また、制御部40は、進退モータ58を作動させて駆動制御部60をベース部53に対し傾動させ、揉み玉51を被施療者に対し進退させて、揉み玉51の被施療者側への突出量を調整して、揉み玉51を施療対象箇所に位置させる。この後、又はこうした揉み玉51の移動と並行して、制御部40は、施療の種類に応じて、揉みモータ62及び/又は叩きモータ63を作動させ、設定された揉みや叩き等のマッサージに対応した動きを揉み玉51に行わせる。
【0068】
揉み玉51の被施療者側への突出量調整にあたり、制御部40は、あらかじめ設定された量、又は、被施療者による入力指示に従って調整された量だけ、揉み玉51を被施療者に対し進退させるように、進退モータ58を作動させて駆動制御部60を傾動させる。制御部40は、ロータリエンコーダ54からの信号出力で揉み玉51及び駆動制御部60の傾動角度を監視し、駆動制御部60が傾動終了位置に到達したと判定すると、進退モータ58に対し作動停止の制御指令を送出して、進退モータ58を停止状態とし、駆動機構部60の傾動を停止させて、揉み玉51を適切な位置に保持することとなる。
【0069】
駆動機構部60を傾動させる中、仮に、駆動機構部各部の部品精度や組立精度が高くないことや、揉み玉51に被施療者側から強い力が加わり、駆動機構部60が傾動に対する抵抗あるいは傾動を促進させようとする力を受けて、駆動機構部自体に歪みを生じたことにより、駆動機構部60の傾動に他の動き成分が加わる状態になったとしても、ロータリエンコーダ54のスケール部54bは常に昇降用回転軸53aに摺接してこれに拘束され、軸周りの回動のみ行うものとなっていることで、スケール部54bは駆動機構部60の傾動以外の動きの影響を受けることなく傾動し、検出部54aに対し適切な位置関係を維持できることで、スケール部54bの傾動を検出部54aで正しく検出でき、制御部40において駆動機構部60の傾動角度に基づく揉み玉51の進退移動量を正確に取得可能となる。
【0070】
また、駆動機構部60が力を受けるのに伴い、駆動機構部60を支える昇降用回転軸53a及びベース部53に強い応力が加わっても、ベース部53における開口部53b周囲に一体の起立部分53c、〜、53hを十分に配置した剛性の高い構造により、ベース部のゆがみが生じにくく、ロータリエンコーダ54による傾動角度の検出も問題なく行え、検出した傾動角度に基づいて制御部40で適切に傾動を制御できる。
【0071】
この他、駆動機構部60が傾動用歯車58aと歯部67との噛合に基づいて傾動させられる限界位置まで傾動した場合には、ロータリエンコーダ54の検出部54aが、スケール部54bにおける被検出部54cのうち、傾動限界点を示すものを検出して対応する信号を出力し、制御部40はこれを受けて傾動終了を判定し、進退モータ58を停止させ、揉み玉51及び駆動機構部60を停止させる。
【0072】
このように、本実施形態に係るマッサージ機は、ベース部53に対する駆動機構部60の傾動角度を検出するロータリエンコーダ54のスケール部54bが、駆動機構部60の傾動中心となる昇降用回転軸53aに常に摺接し、駆動機構部60が傾動する際に、スケール部54bが軸外周の円筒面に接触しながら傾動する状態となって、その傾動に係る動きを昇降用回転軸53aで拘束され、移動の自由度をこの軸周りの回動のみに制限されることから、駆動機構部60の傾動と同時に傾動するスケール部54bが、正確に駆動機構部60の傾動中心周りに傾動することとなり、ロータリエンコーダ54での傾動角度の検出に際し、仮に、駆動機構部60各部の低い部品精度や組立精度の影響、あるいは、揉み玉側から加わる力による駆動機構部60の歪みの影響で、駆動機構部60の軸周りの傾動に他の動き成分が加わる状態になったとしても、そうした動きの変化がスケール部54bに反映されず、スケール部54bが検出部54aに対し適切な位置関係を維持しつつ駆動機構部60の傾動に対応して傾動でき、ロータリエンコーダ54として適切に傾動角度の検出を行って、揉み玉51の進退に係る制御の正確な実行が図れる。