特許第5938309号(P5938309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938309
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】太陽電池パネルのリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20160609BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20160609BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20160609BHJP
【FI】
   B09B3/00 Z
   B09B5/00 ZZAB
   H01L31/04 500
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-200257(P2012-200257)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-54593(P2014-54593A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】599114760
【氏名又は名称】東芝環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111110
【弁理士】
【氏名又は名称】美甘 徹也
(74)【代理人】
【識別番号】100159938
【弁理士】
【氏名又は名称】砂井 正之
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 昇
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−059793(JP,A)
【文献】 特開2002−159956(JP,A)
【文献】 特開2002−164558(JP,A)
【文献】 特開2002−373587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00−1/10
H01L 31/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に積層された層状構造体の金属成分を分別回収する廃太陽電池パネルのリサイクル方法であって、
リサイクルを対象とする前記廃太陽電池パネルの含有金属成分情報を検出し、
当該リサイクルを対象とする廃太陽電池パネルを「有用金属を回収する廃太陽電池パネル」と「有害金属を回収する廃太陽電池パネル」に分類し、
線径が1.5mm以上で、線長が20mm以上で、回転数が1000rpm以上で、材質としてピアノ線、高鋼線又はステンレス線を使用する金属製ローラーブラシを用いて、前記「有用金属を回収する廃太陽電池パネル」を対象に有用金属を含有する前記層状構造体を前記ガラス基板より分離し
離した前記層状構造体と前記ガラス基板を分別して前記層状構造体を回収することを特徴とする太陽電池パネルのリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルのガラス基板上に積層されている層状構造体に含有する有用金属、有害金属などを分別回収する太陽電池パネルのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルは、発電の高効率化や長寿命化などの性能向上を目的として、またパネル単価低減などを目的に、各製造メーカは独自の開発を行っている。そのため、各製造メーカの開発思想により、太陽電池パネルに使用されている金属成分は多様化の方向で進んでおり、様々な金属が使用されているのが現状である。
【0003】
これら金属成分のリサイクルを重視するには、これら廃太陽電池パネルに含有する金属成分を有用金属、有害金属などに分類し、これらを効率よく分離回収することが必須条件となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−173099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の図4には、破砕歯群が設けられるトップローラーと外周面が平坦なボトムローラーからなるロールクラッシヤーによる破砕構造が記載されている。
【0006】
特許文献1では、トップローラーとボトムローラーに間に廃太陽電池パネルを挟み、廃太陽電池パネルを粉砕するものである。そして、その後には、軟化工程、分離工程、電極リボン除去工程、粉砕工程などの複雑な工程により、ガラスのリサイクルを行うものである。しかしながら、ガラスのリサイクルのみならず、廃太陽電池パネルのガラス基板上に積層された層状構造体には有用な金属成分が含有されており、それのリサイクルが要望されている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、太陽電池パネルのガラス基板上に積層されている層状構造体に含有する有用金属、有害金属などを効率よく分別回収する太陽電池パネルのリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の太陽電池パネルのリサイクル方法は、上記目的を達成するための方法である。
【0009】
実施形態の太陽電池パネルのリサイクル方法は、ガラス基板上に積層された層状構造体の金属成分を分別回収する廃太陽電池パネルのリサイクル方法であって、リサイクルを対象とする前記廃太陽電池パネルの含有金属成分を検出し、当該リサイクルを対象とする廃太陽電池パネルを「有用金属を回収する廃太陽電池パネル」と「有害金属を回収する廃太陽電池パネル」に分類し、
線径が1.5mm以上で、線長が20mm以上で、回転数が1000rpm以上で、材質としてピアノ線、高鋼線又はステンレス線を使用する金属製ローラーブラシを用いて、前記有用金属を含有する前記廃太陽電池パネルの前記層状構造体を前記ガラス基板より分離し、分離した前記層状構造体と前記ガラス基板を分別して前記層状構造体を回収することを特徴とする。
【0010】
実施形態の太陽電池パネルのリサイクル方法によれは、廃太陽電池パネルのガラス基板上に積層されている層状構造体に含有する金属成分だけを分離してリサイクルに供することができる。また、製造メーカ毎に異なる廃太陽電池パネルに含有する金属成分を予め測定し、その測定結果に基づいてガラス基板より分離した層状構造体の回収成分を仕分けするため、その仕分け処理が容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1太陽電池パネルのリサイクル装置の構成を示す構成図である。
図2金属成分を含有する層状構造体をガラス基板より分離する機構を示す構成図である。
図3金属製ローラーブラシの構造を表す構成図である。
図4】実施形態の金属成分を含有する層状構造体をガラス基板より分離する工程を表すフローチャートである。
図5】金属製ローラーブラシと金属製ローラーブラシ以外の削り手段による分離率を比較する実験結果を示すグラフである。
図6】金属製ローラーブラシの線径dの違いによる分離率の実験結果を示すグラフである。
図7】金属製ローラーブラシの線長Lの違いによる分離率の実験結果を示すグラフ である。
図8】実施形態の複数の金属製ローラーブラシを用いた分離構造を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態に係る太陽電池パネルのリサイクル方法を説明する。
【0013】
図1は、実施形態で使用する太陽電池パネルのリサイクル装置の構成を示す図である。この太陽電池パネルのリサイクル装置は、廃太陽電池パネル10(以下単に太陽電池パネルと称する)、金属製ローラーブラシ20、平板状底台30、回収フード40、センサー50、吸引ポンプ60A,60B、サイクロン70A,70B、電磁弁80、収容箱A,Bなどによって構成されている。
【0014】
ガラス基板に積層された層状構造体を有する太陽電池パネル10は、平板状底台30の上面に固定されている。この太陽電池パネル10に対し、平板状底台30の上方に設置されたセンサー50から蛍光X線が照射され、この蛍光X線の反射光により太陽電池パネル10の層状構造体に含有されている金属成分の定性及び定量が測定される。太陽電池パネル10に含有されている金属成分は、製造メーカ毎に異なるため、予めその含有金属成分を検出することで、後の仕分け処理を容易に行うことができるように構成されている。そのため、センサー50で測定された含有金属成分の情報は、電磁弁80に供給される。
【0015】
その後、太陽電池パネル10を固定した平板状底台30は、金属製ローラーブラシ20の取り付け位置まで、図示しない搬送ローラによって搬送される。そして、回転する金属製ローラーブラシ20により太陽電池パネル10の表面だけが削られる。つまり、金属成分を含有する層状構造体だけがガラス基板より分離される。太陽電池パネル10の表面を削る場合、平板状底台30を固定して、金属製ローラーブラシ20を水平移動するものでも良いし、金属製ローラーブラシ20を固定して、平板状底台30を移動するものでも良い。
【0016】
ここで金属製ローラーブラシ20は、図3に示すように、ブラシの線径(d)>1.5mm、及びブラシの線長(L)>20mmであることが、後の実験結果に示すように好ましい。金属ブラシ(ブラシ部分)の材質としては、ピアノ線、高鋼線の他、耐食性を有するステンレス線を使用すると好ましい。なお、金属製ローラーブラシ20による削り量は、太陽電池パネル10の層状構造体の高さに応じて(層状構造体の高さ以下に)設定される。
【0017】
このような金属製ローラーブラシ20を用いてガラス基板より分離された層状構造体の回収成分は、回収フード40を介して電磁弁80に排出される。電磁弁80は、センサー50から予め受信した含有金属成分の情報に基づいて仕分けを行い、「重比重成分」は吸引ポンプ60A、サイクロン70Aにより回収箱Aに回収される。また、電磁弁80の仕分けによって、「軽比重成分」は吸引ポンプ60B、サイクロン70Bにより回収箱Bに回収される。なお、回収された「重比重成分」から各金属毎に分別する工程は、周知に方法を用いて行うものとする。
【0018】
図2は、金属成分を含有する層状構造体をガラス基板より分離する機構の拡大図である。太陽電池パネル10は、平板状底台30に形成された小穴の減圧チャックによりしっかりと吸着固定されている。太陽電池パネル10の表面の層状構造体は、平板状底台30と相反する垂直方向から、少なくとも1基の回転する金属製ローラーブラシ20により削られ、層状構造体だけが厚み方向(層状)に分離される。分離された層状構造体の回収成分は、回収フード40に吸い取られ、電磁弁80に送られる。金属製ローラーブラシ20は、図示しない駆動モータによって回転しており、その回転速度は、1000rpm以上が好ましい。なお、ここでは太陽電池パネル10の層状構造体を削る動作は、金属製ローラーブラシ20を固定して、平板状底台30を移動する構造としている。
【0019】
図4は、実施形態に係る金属成分を含有する層状構造体をガラス基板より分離する工程を表すフローチャートである。図4の工程には省略しているが、太陽電池パネル10にはアルミニウム製の枠、集電BOXが取り付けられているので、それらは金属製ローラーブラシによる分離工程前には太陽電池パネル10から外される。
【0020】
実施形態に係わる太陽電池パネルのリサイクル方法は、大分すると層状構造体を構成する金属成分情報をあらかじめ検知する工程と、金属成分を含有する層状構造体だけをガラス基板より分離する工程と、層状構造体を分別回収する工程からなる。
【0021】
先ず、図1に示すように、ガラス基板に積層された層状構造体を有する太陽電池パネル10は、平板状底台30にしっかりと固定される。次に、太陽電池パネル10の層状構造体を構成する金属成分をあらかじめ検知するため、センサー50から蛍光X線を照射して、その反射光から含有金属成分の定性及び定量を測定すると共に、パネル製造情報なども一緒に読み取る(図4のステップS10)。
【0022】
ここで測定・検出される情報とは、蛍光X線による測定情報や、製造メーカ、製造番号、製造年月日、コードなどの太陽電池パネル10に印字された例えば銘板などの情報、又は太陽電池パネル10に組み込まれた記憶媒体からの読み取り可能な電子情報である。これら測定情報又は印字された銘板情報、又は記憶媒体から読み取った情報は、電磁弁80に出力される(図4のステップS20)。電磁弁80は、これにより自動(場合により手動)で操作され、回収箱Aまたは回収箱Bに分別回収できるループが形成される。
【0023】
次に、太陽電池パネル10は、固定された平板状底台30ごと金属製ローラーブラシ20の下に移動される。そして、平板状底台30と相反する垂直方向から、回転する金属製ローラーブラシ20により太陽電池パネル10の層状構造体だけを厚み方向に分離する(図4のステップS30)。この時、太陽電池パネル10の進行方向に対して、回転する金属製ローラーブラシ20の回転方向および回転数は任意に調整が可能であり、ここでは回収効率を良くするため、回転数は1000rpm以上に設定される。
【0024】
次に、ガラス基板より分離された層状構造体の回収成分は、回収フード40を介して電磁弁80に排出される。電磁弁80は、センサー50から予め受信した含有金属成分の情報に基づいて仕分けを行い、「重比重成分」は吸引ポンプ60A、サイクロン70Aにより回収箱Aに回収される。また、電磁弁80の仕分けによって、「軽比重成分」は吸引ポンプ60B、サイクロン70Bにより回収箱Bに回収される(図4のステップS40)。
【0025】
電磁弁80は、センサー50から予め受信した含有金属成分の情報に基づいて通過する金属の回収成分を仕分けしてリサイクル用に分別回収する。有用でない「軽比重成分」は、廃棄するように回収される。
【0026】
ここで「重比重成分」とは、層状構造体を構成する、例えば電池成分、電極成分、集電極成分、封止成分、接着成分である。また、「軽比重成分」とは、保護シート(バックシート)成分である。
【0027】
次に、実施形態に関する実験結果を、図5乃至図7を参照して説明する。
【0028】
図5は、金属製ローラーブラシと金属製ローラーブラシ以外の削り手段による分離率(ガラス基板からの剥離/分離できた比率)を比較するものである。図5に示すように、削り手段が切削刃タイプの分離率は81%、砥石タイプの分離率は45%、金属スポンジタイプの分離率は38%であった。これに対して実施形態で使用した金属製ローラーブラシ20の分離率は100%であった。この実験結果から明らかなように、金属製ローラーブラシ20により有用金属を含有する層状構造体を厚み方向に分離する方法は、分離率が極めて高く、削り手段として最適なものであることが判る。
【0029】
図6は、金属製ローラーブラシ20の線径dの違いによる分離率(ガラス基板からの剥離/分離できた比率)を示すものである。金属製ローラーブラシの線径dが0.5mmでは分離率が40%で、線径dが1mmでは分離率が65%であった。金属製ローラーブラシの線径dが1.5mm以上では、分離率が100%であった。したがって、金属製ローラーブラシの線径dが1.5mm以上を使用すると、極めて高い分離率が得られることが判った。
【0030】
図7は、金属製ローラーブラシの線長Lの違いによる分離率(ガラス基板からの剥離/分離できた比率)を示すものである。金属製ローラーブラシの線長Lが10mmでは分離率が30%で、線長Lが15mmでは分離率が45%であった。金属製ローラーブラシの線長Lが20mm以上では、分離率が100%であった。したがって、金属製ローラーブラシの線長Lが20mm以上を使用すると、極めて高い分離率が得られることが判った。
【0031】
以上の説明した通り、本実施形態による太陽電池パネルのリサイクル方法によれば、廃太陽電池パネルのガラス基板上に積層されている層状構造体に含有している金属成分だけを分離してリサイクルに供することができる。
【0032】
また、製造メーカ毎に異なる廃太陽電池パネルに含有されている金属成分を予め測定し、その測定結果に基づいてガラス基板より分離した層状構造体の回収成分を仕分けするため、その仕分け処理が容易に行うことができる。
【0033】
また、金属製ローラーブラシにより、層状構造体だけを厚み方向に分離する方法であるため、極めて高い分離率(ガラス基板からの剥離/分離できた比率)で分離作業を行うことができる。
【0034】
金属製ローラーブラシのブラシの線径(d)>1.5mm、及びブラシの線長(L)>20mmとすることで、極めて高い分離率(ガラス基板からの剥離/分離できた比率)で分離作業を行うことができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0036】
例えば、金属製ローラーブラシ20は、図8に示すように複数設けて、有用な金属成分を有する層状構造体をガラス基板より分離するようにしても良い。この場合、複数の金属製ローラーブラシ20は、共に同じ回転数であることが好ましい。また、金属製ローラーブラシ20の一つは、太陽電池パネルの進行方向に対し逆回転であることが望ましい。
【0037】
また、リサイクルを対象とする廃太陽電池パネルに上述した含有金属成分の情報が、例えば銘板又は記憶媒体から得ることができるのであれば、センサー50での測定が省略される。
【0038】
また、センサー50による含有金属成分の測定では、ガラス面およびその背面の両方向から、蛍光X線の照射により含有金属成分の定性及び定量を測定しても良い。
【0039】
更にまた、リサイクルを対象とする廃太陽電池パネルを「有用金属を回収する廃太陽電池パネル」と「有害金属を回収する廃太陽電池パネル」に分類し、「有用金属を回収する廃太陽電池パネル」を対象に、有用金属を含有する層状構造体をガラス基板より分離する工程に進めても良い。
【符号の説明】
【0040】
10‥太陽電池パネル
20‥金属製ローラーブラシ
30‥平板状底台
40‥層状構造体回収フード
50‥センサー
60A、60B‥吸引ポンプ
70A、70B‥サイクロン
80‥電磁弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8