(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938320
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】工作機械の据え付け構造
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/00 20060101AFI20160609BHJP
G12B 5/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
B23Q1/00 T
G12B5/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-207328(P2012-207328)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-61563(P2014-61563A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久雄
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正弥
【審査官】
五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−114838(JP,A)
【文献】
特開平03−239438(JP,A)
【文献】
特開平04−111731(JP,A)
【文献】
特開2002−213685(JP,A)
【文献】
特開2005−342882(JP,A)
【文献】
特開2012−139811(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0035770(US,A1)
【文献】
西独国特許出願公開第2210038(DE,A)
【文献】
仏国特許発明第975554(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00
G12B 5/00
F16M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械のベッドと据付面との間に基礎ブロックを介設するようにした工作機械の据え付け構造において、
ベッドと基礎ブロックとの間にはこれらの双方に連結されるとともにベッドの高さ位置を調節可能な高さ位置調節ユニットが設けられ、
据付面と基礎ブロックとの間にはこれらの双方に連結されるとともにベッドの水平方向における位置を調節可能な水平位置調節ユニットが設けられている、
ことを特徴とする工作機械の据え付け構造。
【請求項2】
前記高さ位置調節ユニットは、
ベッドに設けられて上下方向に延びる第1の縦ねじ孔が形成された延設部と、
前記第1の縦ねじ孔に螺合される中空状のボルトであってその先端が前記基礎ブロックの頂面に形成された凹部にて支持される第1のボルトと、
前記第1のボルトの内部に対してその上端側から挿通されるとともに前記基礎ブロックの頂面に形成された第2の縦ねじ孔に螺合されて同第1のボルトと基礎ブロックとを連結する第2のボルトと、を備え、
前記第1の縦ねじ孔に対する前記第1のボルトの締め込み量に応じてベッドの高さ位置が調節可能とされている、
請求項1に記載の工作機械の据え付け構造。
【請求項3】
前記第1のボルトの孔内には前記第2のボルトが螺合される雌ねじが形成されている、
請求項2に記載の工作機械の据え付け構造。
【請求項4】
前記水平位置調節ユニットは、
当該据付面に固定される部材であって水平方向に延びる挿入孔が形成された固定ブロックと、
前記挿入孔に挿入される第1のねじ部材と、
基礎ブロックの側面に形成された第1の横ねじ孔に螺合されるねじ部を有するとともにその基端に前記第1のねじ部材の先端が螺合される第2の横ねじ孔が形成された第2のねじ部材と、を備え、
前記第2の横ねじ孔に対する前記第1のねじ部材の締め込み量に応じてベッドの水平方向における位置が調節可能とされている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の工作機械の据え付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマシニングセンタや旋盤等の工作機械の据え付け構造に関し、工作機械のベッドと据付面との間に基礎ブロックを介設することによって当該据付面に工作機械が据え付けられるようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の工作機械の据え付け構造としては、例えば特許文献1に記載の構造がある。
図9に示すように、床面等の据付面F上に複数の扁平な基礎ブロック111が載置されている。工作機械のベッド103のねじ孔には上下方向に延びる複数のボルト119が螺合されており、これらボルト119の先端が各基礎ブロック111の頂面によって支持されている。このように、据付面Fとベッド103との間に基礎ブロック111を介設することによって当該据付面Fに工作機械が据え付けられている。
【0003】
そして、工作機械の水平度の調整を行なう場合には、ボルト119の締め込み量を変更することによって各ボルト119が設けられている部位の高さ位置を調節するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6―281094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の構造においては、基礎ブロック111の頂面によってボルト119を支持する構造とされている。そのため、例えば地震等によって据付面Fが大きく振動した場合には、ボルト119と基礎ブロック111とが相対変位し、ボルト119が基礎ブロック111から脱落してベッド103を含む工作機械全体が所定の据え付け位置から変位するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、据付面が大きく振動した場合であってもベッドが基礎ブロックに対して変位することを好適に抑制することのできる工作機械の据え付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に従う工作機械の据え付け構造では、工作機械のベッドと据付面との間に基礎ブロックが介設されている。また、ベッドと基礎ブロックとの間にはこれらの双方に連結されるとともにベッドの高さ位置を調節可能な高さ位置調節ユニットが設けられ、据付面と基礎ブロックとの間にはこれらの双方に連結されるとともにベッドの水平方向における位置を調節可能な水平位置調節ユニットが設けられている。
【0008】
こうした構成によれば、地震等によって据付面が大きく振動した場合であっても、高さ位置調節ユニットによってベッドと基礎ブロックとが一体化されているため、ベッドが基礎ブロックに対して変位することが好適に抑制される。しかも、水平位置調節ユニットによって基礎ブロックの水平方向における位置が所望の位置とされた状態で据付面と基礎ブロックとが一体化される。このため、ベッドの水平方向位置を調節するユニットからベッドに対して水平方向に沿った力が直接作用することはなく、ベッドに歪みが生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、据付面が大きく振動した場合であってもベッドが基礎ブロックに対して変位することを好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の側面構造を示す側面図。
【
図2】
図1のA−A線に沿った断面構造を示す断面図。
【
図3】
図2のB部についてB1方向から視た一部断面構造と一部側面構造とを併せ示す図。
【
図4】(a)は同実施形態における高さ位置調節ユニットの断面構造を示す断面図、(b)は第1のボルトの先端を中心として拡大した拡大断面図。
【
図5】
図3の矢印D方向から視た第1基礎ブロック及び第1固定ブロックを中心とした正面構造を示す正面図。
【
図6】
図2のC部についてC1方向から視た側面構造を示す側面図。
【
図7】
図6のE−E線に沿った断面構造を示す断面図。
【
図8】
図6の矢印G方向から視た第2基礎ブロック及び第2固定ブロックを中心とした正面構造を示す正面図。
【
図9】従来の工作機械の据え付け構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1〜
図8を参照して、本発明をマシニングセンタの据付構造として具体化した一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、据付面F上には、工作機械前部側に位置する左右2つの第1基礎ブロック11と、工作機械後部側に位置する左右2つの第2基礎ブロック31とが載置されており、これら基礎ブロック11、31の上には略直方体状をなすベッド3が支持されている。これら基礎ブロック11、31はベッド3の四隅に対応して設けられている。このベッド3上にマシニングセンタ1の機械本体2が搭載されている。
【0012】
まず、第1基礎ブロック11を含む据付構造について説明する。
図3に示すように、ベッド3と第1基礎ブロック11との間にはこれらの双方に連結されるとともにベッド3の高さ位置を調節可能な高さ位置調節ユニット10が設けられている。
【0013】
また、据付面Fと第1基礎ブロック11との間にはこれらの双方に連結されるとともにベッド3の水平方向における位置を調節可能な水平位置調節ユニット20が設けられている。
【0014】
まず、高さ位置調節ユニット10の構成について説明する。
図4(a)、(b)に示すように、第1基礎ブロック11の頂面11aには円錐状凹部11bが形成されており、この円錐状凹部11bの中心には第2の縦ねじ孔11cが形成されている。
【0015】
ベッド3からは延設部4が延びており、この延設部4にはインサート部材5が固設されている。このインサート部材5には第1の縦ねじ孔5aが形成されている。この第1の縦ねじ孔5aには中空状の第1のボルト13が螺合されている。第1のボルト13の軸心位置には挿通孔13bが形成されており、同挿通孔13bの下端部には雌ねじ13cが形成されている。第1のボルト13の先端は半球状とされており、第1基礎ブロック11の上記円錐状凹部11bによって支持されている。
【0016】
この第1の縦ねじ孔5aの挿通孔13bにはその上端側から第2のボルト15が挿通されており、同第2のボルト15の先端のねじ部が上記雌ねじ13c及び第2の縦ねじ孔11cに螺合されている。そして、第1の縦ねじ孔5aに対する第1のボルト13の締め込み量に応じて当該第1基礎ブロック11の位置におけるベッド3の高さ位置が調節可能とされている。また、第1のボルト13の雌ねじ13c及び第2の縦ねじ孔11cに対する第2のボルト15の螺合によって第1基礎ブロック11と第1のボルト13とが固定される。その結果、第1基礎ブロック11とベッド3の延設部4とが固定される。
【0017】
また、インサート部材5の上側において第1のボルト13にはロックナット17が螺合されており、第1のボルト13の回り止めがなされている。
次に、水平位置調節ユニット20の構成について説明する。
【0018】
図3及び
図5に示すように、第1基礎ブロック11の前側面には、水平方向に延びる第1の横ねじ孔11dが形成されている。
この第1の横ねじ孔11dには第2のねじ部材25が螺合されている。第2のねじ部材25にはロックナット27bが螺合されており、第2のねじ部材25の回り止めがなされている。
【0019】
第2のねじ部材25の基端には同第2のねじ部材25の軸線方向に沿って延びる第2の横ねじ孔25aが形成されている。この第2の横ねじ孔25aに第1のねじ部材23の先端が螺合されている。
【0020】
据付面F上には第1固定ブロック21がアンカボルト29によって固設されている。この第1固定ブロック21には水平方向に延びる挿入孔21aが形成されている。この挿入孔21aは上下方向に対して長い長円形状とされている。また、この挿入孔21aには前記第1のねじ部材23が挿入されている。
【0021】
また、第1のねじ部材23には第1固定ブロック21を挟むようにロックナット27aがワッシャ28を介して螺合されており、第1のねじ部材23の回り止めがなされている。
【0022】
そして、第2の横ねじ孔25aに対する第1のねじ部材23の締め込み量に応じてベッド3の水平方向における位置が調節可能とされている。
次に、第2基礎ブロック31を含む据付構造について説明する。尚、
図2に示すように第2基礎ブロック31を含む据付構造は左右対称である。
【0023】
図6に示すように、ベッド3と第2基礎ブロック31との間にはこれらの双方に連結されるとともにベッド3の高さ位置を調節可能な高さ位置調節ユニット30が設けられている。この高さ位置調節ユニット30は上述した高さ位置調節ユニット10と同様な構成を有している。
【0024】
また、据付面Fと第2基礎ブロック31との間にはこれら据付面F及び第2基礎ブロック31の双方に連結されて第2基礎ブロック31を据付面Fに固定する固定ユニット40が設けられている。
【0025】
次に、固定ユニット40の構成について説明する。
図6〜
図8に示すように、第2基礎ブロック31の後側面には、水平方向に延びるプレート43の基端がボルト44によって連結されている。このプレート43はベッド3の外側に向けて延びている。
【0026】
据付面F上には第2固定ブロック41がアンカボルト49によって固設されている。この第2固定ブロック41に上記プレート43の先端がボルト45によって連結されている。
【0027】
次に、本実施形態の作用について説明する。
機械本体2の水平度の調節に際しては、4つの基礎ブロック11、31のうち、所要の基礎ブロック11、31において、ロックナット17が緩められ、第2のボルト15が第2の縦ねじ孔11cから外された状態とされる。この状態において、第1の縦ねじ孔5aに対する第1のボルト13の締め込み量を変更することによって当該基礎ブロック11、31の位置におけるベッド3の高さ位置が調節される。そして、調節がなされた後には、ロックナット17が締め付けられるとともに第2のボルト15が第2の縦ねじ孔11cに締め付けられる。
【0028】
この状態においては、ベッド3が高さ位置調節ユニット10、30を介して基礎ブロック11、31に連結されているため、地震等によって据付面Fが大きく振動した場合であっても、ベッド3が基礎ブロック11、31に対して変位することが好適に抑制される。
【0029】
更に、ロックナット27aが緩められた状態において、第2の横ねじ孔25aに対する第1のねじ部材23の締め込み量に応じてベッド3の水平方向における位置が調節される。尚、据付面Fに微細な凹凸があり、第1基礎ブロック11と第1固定ブロック21との高さにずれが生じる場合であっても、第1基礎ブロック11に連結される第1のねじ部材23と第1固定ブロック21との高さのずれが長円状をなす挿入孔21aによって吸収される。
【0030】
以上説明した本実施形態に係る工作機械の据え付け構造によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)マシニングセンタ1の据え付け構造では、機械本体2が搭載されるベッド3と据付面Fとの間に基礎ブロック11、31を介設することによって当該据付面Fにマシニングセンタ1が据え付けられる。また、ベッド3と基礎ブロック11、31との間にはこれらの双方に連結されるとともにベッド3の高さ位置を調節可能な高さ位置調節ユニット10、30が設けられている。また、据付面Fと第1基礎ブロック11との間にはこれらの双方に連結されるとともにベッド3の水平方向における位置を調節可能な水平位置調節ユニット20が設けられている。
【0031】
こうした構成によれば、地震等によって据付面Fが大きく振動した場合であっても、ベッド3と基礎ブロック11、31とが一体化されているため、ベッド3が基礎ブロック11、31に対して変位することが好適に抑制される。しかも、水平位置調節ユニット20によって第1基礎ブロック11の水平方向における位置が所望の位置とされた状態で据付面Fと第1基礎ブロック11とが一体化される。このため、ベッド3の水平方向位置を調節するユニットからベッド3に対して水平方向に沿った力が直接作用することはなく、ベッド3に歪みが生じることを抑制することができる。
【0032】
従って、据付面Fが大きく振動した場合であってもベッド3が基礎ブロック11、31に対して変位することを好適に抑制することができる。
(2)第2の横ねじ孔25aに対する第1のねじ部材23の締め込み量に応じてベッド3の水平方向における位置が調節可能とされている。このため、例えばベッド3を直接押したり、引いたりするようにした調節ユニットを用い場合とは異なり、水平位置調節ユニット20に対してベッド3の位置がずれることが好適に抑制され、ベッド3に対して水平位置調節ユニット20から過大な応力が生じることが抑制される。従って、ベッド3に歪みが生じることを好適に抑制することができる。
【0033】
尚、本発明に係る工作機械の据え付け構造は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0034】
・第1のボルト13の挿通孔13bの下端部に形成された雌ねじ13cを省略することもできる。この場合、第2のボルト15の頭部15aをワッシャ15bを介して第1のボルト13の頭部13aに押し当てることによってこれらボルト13、15が互いに固定される。
【0035】
・上記実施形態では、2つの第1基礎ブロック11と、2つの第2基礎ブロック31とを備える構成について例示したが、第2基礎ブロックを第1基礎ブロックに置換することもできる。すなわち、3つ或いは4つの基礎ブロックを第1基礎ブロックとすることもできる。
【0036】
・基礎ブロックの数は4つに限られるものではなく、3つや5つ以上であってもよい。
・ベッド3の直下に機械本体2からのオイルを回収するオイルパンが設けられる構成の場合には、基礎ブロック11、31が載置される据付面Fはオイルパンの内部底面とされる。
【符号の説明】
【0037】
1…機械装置、2…機械本体、3,103…ベッド、4…延設部、5…インサート部材、5a…第1の縦ねじ孔、9…オイルパン、10…高さ位置調節ユニット、11,111…第1基礎ブロック、11a…頂面、11b…円錐状凹部、11c…第2の縦ねじ孔、11d…第1の横ねじ孔、13…第1のボルト、13a…頭部、13b…挿通孔、13c…雌ねじ、15…第2のボルト、15a…頭部、15b…ワッシャ、17…ロックナット、20…水平位置調節ユニット、21…第1固定ブロック、21a…挿入孔、23…第1のねじ部材、25…第2のねじ部材、25a…第2の横ねじ孔、27a,27b…ロックナット、28…ワッシャ、29…アンカボルト、30…高さ位置調節ユニット、31…第2基礎ブロック、31d…横ねじ孔、40…固定ユニット、41…第2固定ブロック、43…プレート、44…ボルト、45…ボルト、49…アンカボルト、119…ボルト、F…据付面。