特許第5938325号(P5938325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938325
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】医療台
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/00 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   A61G13/00 Q
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-222434(P2012-222434)
(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-73254(P2014-73254A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022541
【氏名又は名称】アトムメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】松原 一雄
(72)【発明者】
【氏名】松原 照巳
(72)【発明者】
【氏名】川上 秀生
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智美
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 友
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4168099(US,A)
【文献】 特表2004−511260(JP,A)
【文献】 特開平10−234781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の背部を支持する背板と、患者の臀部を支持する座板と、患者の脚部を支持する左右一対の支脚器と、これら背板、座板、支脚器の角度や位置を変更することにより患者の姿勢を変化させる作動機構部とを備え、前記座板が取り付けられる座板フレームに、前記座板の前方を延長するように接続される脚受け板が着脱可能に設けられており、前記座板フレームには、前記脚受け板の着脱状態を検出するセンサが設けられ、該センサにより前記脚受け板の前記座板フレームへの装着が検出された状態では、前記作動機構部内に複数備えられる各機構の駆動部の少なくとも一部の駆動を制限するインターロック回路が設けられていることを特徴とする医療台。
【請求項2】
前記作動機構部は、前記背板を起立姿勢と倒伏姿勢との間で往復回動する背板駆動部を備えており、前記脚受け板の装着時においては、該脚受け板の未装着時と比べて前記背板駆動部による前記背板の回動範囲が小さく制限されることを特徴とする請求項1記載の医療台。
【請求項3】
前記駆動部のうちの複数を駆動することにより、任意の診察姿勢から初期状態の座位姿勢へと復帰させる終了操作部が設けられており、前記脚受け板の装着時においては、前記終了操作部による前記駆動部の駆動が禁止されることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療台。
【請求項4】
前記脚受け板に、前記座板に向けて延出する挿入ロッドが取り付けられ、前記座板フレームには、前記挿入ロッドが挿入される通路孔が設けられており、前記脚受け板は、前記挿入ロッドを前記通路孔内に挿入することにより前記床板フレームに装着される構成とされ、前記通路孔には、その内部に前記センサの検出部が出入可能に設けられ、前記検出部は、前記通路孔内に挿入された前記挿入ロッドに当接して前記検出部が押し込まれることにより、前記脚受け板の装着状態を検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の医療台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産科・婦人科における医療行為に用いられる検診台、分娩台などの医療台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から産科・婦人科において、分娩、診察、治療等の際に患者の体を支える医療台が用いられている。そして、このような医療台は、患者の背部を支持する背板、患者の臀部を支持する座板、脚部を支持する支脚器等を備えており、これらの角度や位置を変更することにより、患者の姿勢を座位から仰臥位で脚部を開脚した診察姿勢へ移行できるようになっている。
【0003】
ところで、診察姿勢において診察や施術を行った後に、患者を長時間安静に保つことが必要な場合がある。この場合、患者は、長時間同じ仰臥姿勢を強要されることは苦痛を伴うことから、横臥姿勢や伏臥姿勢などの楽な姿勢で安静に保つことが望まれる。
そこで、特許文献1には、患者の下半身を支持する平坦なマット状の下半身支持部を備える医療台が開示されている。この医療台では、患者の上半身を支持する上半身支持部とともに、下半身支持部をほぼ水平状態として、ほぼ平坦なマット面を形成することができる。下半身支持部は、座板の下方に折り畳まれた状態で収納されており、使用時に組み立てることにより平坦なマット面を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐313240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の医療台により、患者を楽な姿勢で安静に保つことができるようになったが、より簡便に平坦なマット面を形成することができる医療台が望まれている。そして、その医療台は、操作が簡単であるとともに、患者が安静にしている状態であるので安全性に配慮したものである必要がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成により平坦なマット面を形成することができるとともに、安全性の高い医療台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の医療台は、患者の背部を支持する背板と、患者の臀部を支持する座板と、患者の脚部を支持する左右一対の支脚器と、これら背板、座板、支脚器の角度や位置を変更することにより患者の姿勢を変化させる作動機構部とを備え、前記座板が取り付けられる座板フレームに、前記座板の前方を延長するように接続される脚受け板が着脱可能に設けられており、前記座板フレームには、前記脚受け板の着脱状態を検出するセンサが設けられ、該センサにより前記脚受け板の前記座板フレームへの装着が検出された状態では、前記作動機構部内に複数備えられる各機構の駆動部の少なくとも一部の駆動を制限するインターロック回路が設けられていることを特徴とする。
【0008】
医療台本体に脚受け板を着脱可能に設けることで、特許文献1に開示の医療台のように複雑な機構を必要としない。また、背板の倒伏状態で脚受け板を装着することにより容易に平坦なマット面を形成することができ、患者を横臥姿勢や伏臥姿勢などの楽な姿勢で安静に保つことができる。
しかし、脚受け板が装着された状態で背板を起立姿勢に戻そうとすると、横になって安静にしていた患者の上半身が無理やりに起こされることになる。この場合、患者に負担を与えるだけでなく、危険を伴う。
そこで、本発明の医療台は、脚受け板の着脱状態を検出するセンサと、その検出信号により作動するインターロック回路とを設け、脚受け板の装着時においては、たとえ各機構の駆動部の操作部が誤って操作されても、患者の姿勢を大きく変化させることがないように作動機構部の駆動を制限している。したがって、不意な姿勢変更による患者への負担や危険を確実に回避することができ、安全を確保することができる。
【0009】
本発明の医療台において、前記作動機構部は、前記背板を起立姿勢と倒伏姿勢との間で往復回動する背板駆動部を備えており、前記脚受け板の装着時においては、該脚受け板の未装着時と比べて前記背板駆動部による前記背板の回動範囲が小さく制限される。
脚受け板の装着時において背板の回動範囲を制限することにしたので、背板の操作部が限度を超えて操作されても、設定された回動範囲を超えて背板の姿勢が変更されないようになっている。したがって、患者の姿勢を大きく変更するような動作が制限され、背板の不意な姿勢変更による患者への負担や危険を確実に回避することができる。
【0010】
本発明の医療台において、前記駆動部のうちの複数を駆動することにより任意の診察姿勢から初期状態の座位姿勢へと復帰させる終了操作部が設けられており、前記脚受け板の装着時においては、前記終了操作部による前記駆動部の駆動が禁止される。
検診終了後に終了操作部を操作することにより、複数の駆動部を個々に操作することなく、これらを駆動して医療台の姿勢を任意の診察姿勢(背板倒伏状態)から初期状態の座位姿勢(背板起立状態)へと復帰させることができる。しかし、脚受け板の装着時において終了操作部が操作された場合、不意な姿勢変更による患者への負担や危険が生じる。そこで、脚受け板の装着時においては、終了操作部が操作されても終了操作部による駆動部の駆動を禁止することとしている。
【0011】
本発明の医療台において、前記脚受け板に、前記座板に向けて延出する挿入ロッドが取り付けられ、前記座板フレームには、前記挿入ロッドが挿入される通路孔が設けられており、前記脚受け板は、前記挿入ロッドを前記通路孔内に挿入することにより前記床板フレームに装着される構成とされ、前記通路孔には、その内部に前記センサの検出部が出入可能に設けられ、前記検出部は、前記通路孔内に挿入された前記挿入ロッドに当接して前記検出部が押し込まれることにより、前記脚受け板の装着状態を検出することを特徴とする。
この場合、挿入ロッドと通路孔という簡単な構成により脚受け板の着脱を行うことができるとともに、挿入ロッドの抜き挿しにより、脚受け板の着脱状態を確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、医療台本体に脚受け板を着脱可能に設けることで、簡単な構成により平坦なマット面を形成することができ、患者を楽な姿勢で安静に保つことができる。また、脚受け板の装着時において患者の姿勢が大きく変更されることを禁止するインターロック回路を設けることにより、不意な姿勢変更による患者への負担や危険を確実に回避することができ、安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した一実施形態における検診台の背板倒伏状態での斜視図であり、脚受け板を装着した状態を示す。
図2図1に示す背板倒伏状態の検診台から脚受け板を取り外した状態を示す。
図3図2に示す背板倒伏状態の検診台の上面図である。
図4図1に示す背板倒伏状態の検診台の上面図である。
図5図3に示す検診台のA‐A線に沿う要部断面図である。
図6図4に示す検診台のB‐B線に沿う要部断面図である。
図7】インターロック回路の接続を説明するブロック図である。
図8図1に示す検診台の背板起立状態での斜視図である。
図9図8に示す検診台の正面図である。
図10図8に示す検診台の右側面図である。
図11図1に示す検診台の背板倒伏状態での上面図であって、ロック機構を明示するためにその他の部分を省略したものである。
図12】コントローラの斜視図である。
図13図12に示すコントローラのF矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の医療台を婦人科用、産科用などの検診台(以下、単に「検診台」という。)に適用した一実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
[検診台の全体構成]
図8〜10に示すように、検診台1は、床上に設置される基台2の上に、患者の背部を支持する背板11と、患者の臀部を支持する座板12と、患者の左右両側の脚部をそれぞれ支持する左右一対の支脚器3a,3bと、これら背板11、座板12、支脚器3a,3bの角度や位置を変更することにより患者の姿勢を変化させる作動機構部5が備えられている。作動機構部5の一部には、図11に示す背板フレーム13が垂直回動可能に支持され、この背板フレーム13の下端部に座板フレーム14が背板フレーム13に対して相対的に垂直回動可能に支持されている。そして、背板フレーム13の表面に患者の背部を支持する背板11が取り付けられ、座板フレーム14に患者の臀部を支持する座板12が、座板フレーム14に沿って前後方向に往復移動自在に支持されている。
【0016】
また、作動機構部5には、背板11を起立姿勢と倒伏姿勢との間で往復回動する背板駆動部51が設けられている。この背板駆動部51は、背板フレーム13の下端部を上下移動するための駆動シリンダにより構成されており、この駆動シリンダを作動することにより、背板フレーム13の下端部を上下移動して起立姿勢と倒伏姿勢との間で垂直回動することができる。そして、この背板フレーム13の移動に対して、座板フレーム14は、ほぼ水平状態に維持されるように支持されており、背板フレーム13の移動に伴い、座板フレーム14に沿って座板12が前後方向に移動して、患者が円滑に姿勢変化できるようになっている。
また、本発明の医療台本体は、この実施形態では、基台2、作動機構部5、及び背板フレーム13、座板フレーム14などにより形成されており、この医療台本体に、支脚器3a,3bが支持されている。具体的には、図11に示すように、患者の両側の脚部を支持する左右一対の支脚器3a,3bが、支持アーム4a,4bを介して背板フレーム13の下部に配置される取り付け部15に揺動自在に取り付けられており、これら支脚器3a,3bは、患者の脚部の重さが加わることで自重により開脚されるようになっている。なお、支脚器3a,3bは、各支持アーム4a,4bの基端部に設けられたロック機構6a,6bにより、任意の開脚位置で停止させることができるようになっている。
また、医療台本体には、図1図4に示すように、座板12の前方を延長するように接続される脚受け板27が着脱可能に設けられており、背板11の倒伏状態において脚受け板27を装着することにより、平坦なマット面を形成することができる。
【0017】
なお、検診台1には、図12及び図13に示すように、作動機構部5内の昇降駆動部(図示略)、背板駆動部51等の駆動部を遠隔操作するためのコントローラ9が備えられている。このコントローラ9は、上面に複数のスイッチペダル91〜93,97〜99(本発明でいう操作部)と、検診台1の医療台本体との間で赤外線通信を行う発信部94〜96とを有している。また、医療台本体の基台2には、図1及び図8に示すように発信部94〜96の受信部17が設けられている。コントローラ9には、図13に示すように発信部94〜96が三箇所設けられているので、医療台本体の前方の広い範囲で通信可能となっている。
そして、基台2の前方等の床上にコントローラ9を置いて、医者又は看護師が足でスイッチペダル91〜93,97〜99を操作することにより、背板11及び座板12の全体の昇降、背板11の回動等の作動を制御することができる。
【0018】
例えば、スイッチペダル91は背板11及び座板12の全体の上下位置を調整するための昇降ペダルであり、スイッチペダル92は支脚器3a,3bを任意の開脚位置で停止するためのロックペダル、スイッチペダル93は背板11を起立姿勢と倒伏姿勢との間で移行操作するための背板操作ペダルである。
また、スイッチペダル98は、作動機構部5の複数の駆動部を駆動することにより、検診台1を任意の診察姿勢から初期状態の座位姿勢に復帰させるための終了ペダル(本発明でいう、終了操作部)である。診察終了後にスイッチペダル98を操作することにより、背板11等を駆動する複数のスイッチペダル91〜93を操作することなく複数の駆動部を個々に駆動して、検診台1を任意の診察姿勢(背板倒伏状態)から図8図10に示す初期状態の座位姿勢(背板起立状態)へと復帰させることができる。
なお、スイッチペダル97,99は検診台1を特定の診察姿勢に移行するための診察ペダルであり、各スイッチペダル97,99を操作することにより、検診台1の姿勢を予め設定された診察姿勢へと変更することができる。
【0019】
また、図1図4及び図8図10に示す符号21a、21bは、肘受け又は手受けとしてそれぞれ機能することができる左右一対の腕受けである。腕受け21a,21bは軸22によって回動可能に支持されており、図8図10に示す背板起立状態においてほぼ水平になる第1の状態と、背板11に対してほぼ平行になるように持ち上げられた第2の状態との間を手動により往復回動させることができる。
【0020】
[脚受け板の構成]
図1及び図4に示すように、脚受け板27は、座板12の前方を延長するように、座板12の下部に設けられた座板フレーム14に着脱可能に設けられる。
脚受け板27には、その背面に座板12に向けて延出するように設けられた略U字型の挿入ロッド28が取り付けられている。この挿入ロッド28は、図5及び図6に示すように、パイプ状の中空部材により形成されており、左右対称に並べられた両先端部にプラグ29が嵌め込まれて封止されている。また、プラグ29は、先端が球状面で形成されている。
座板フレーム14には、挿入ロッド28の両端部28a,28bに係合する一対のパイプ部材18が取り付けられている。そして、各パイプ部材18の内部に設けられた通路孔19a,19b内に、挿入ロッド28の両端部28a,28bを挿入することにより、脚受け板27を座板フレーム14に装着することができるようになっている。
【0021】
また、座板フレーム14には、脚受け板27の着脱状態を検出するセンサ55が設けられている。センサ55は、マイクロスイッチ等の汎用品を用いて製作することができる。
パイプ部材18には、その一部を切欠いた切欠き部53が設けられており、センサ55は、図5及び図6に示すように、切欠き部53を介して通路孔19a,19b内に検出部56が出入可能に配置されている。また、通路孔19a,19bの入口側付近には、板ばねで形成されたレバー57が挿入ロッド28の挿入方向に沿って配置されており、センサ55の検出部56は、レバー57を介して上向きに押込まれることにより、挿入ロッド28の挿入を検出する。具体的には、挿入ロッド28の両端部28a,28bを通路孔19a,19b内に挿入すると、挿入ロッド28の先端部に設けられたプラグ29によりレバー57が上向きに押されて検出部56を押し込むこととなり、センサ55が脚受け板27の装着状態を検出する。また、挿入ロッド28の両端部28a,28bを通路孔19a,19b内から抜き去ると、レバー57による検出部56の押し込みが解除され、センサ55が脚受け板27の脱離状態を検出する。
【0022】
また、作動機構部5の制御部には、図7に示すように、センサ55の検出信号により、各駆動部の駆動を制限するインターロック回路が組み込まれている。
インターロック回路は、センサ55により脚受け板27の座板フレーム14への装着が検出された状態では、作動機構部5内の少なくとも一部の駆動部の駆動を制限する。例えば、脚受け板27の装着時においては、背板駆動部51による背板11の回動範囲が、脚受け板27の未装着時と比べて小さく制限される。この場合、背板駆動部51の駆動は、背板11が水平面に対して−10°以上20°以下の範囲内で回動するように制限され、背板操作ペダル(スイッチペダル93)が限度を超えて操作されても、背板駆動部51の駆動は、設定された背板11の回動範囲内での駆動に止められ、回動範囲を超えては動作しないようになっている。
また、脚受け板27の装着時においては、検診台1の初期状態への復帰操作を行う終了ペダル(スイッチペダル98)による作動機構部5内の各駆動部の駆動が禁止されるとともに、特定の診察姿勢へと変更する診察ペダル(スイッチペダル97,99)による各駆動部の駆動も禁止される。したがって、各スイッチペダル97〜99が誤って操作されても、各駆動部は動作しない。
一方、座板フレーム14から脚受け板27が取り外されると、センサ55がそれを検出して、各駆動部の駆動制限が解除されるようになっている。
【0023】
[検診台全体の動作]
図8図10に示すように、座板12が最下方位置で水平状態、背板11が起立状態となった座位姿勢の初期状態において、患者は、背部及び臀部を預けるようにして座板12の上に深く座る。また、患者の左右の脚部をそれぞれ支脚器3a,3bの上に載置する。
次いで、医者又は看護師は、患者の診察を目的として、操作手段を操作することにより、検診台1を診察姿勢に移行する。具体的には、スイッチペダル97又は99を操作することにより作動機構部5の複数の駆動部を個々に駆動し、起立姿勢の背板11を倒して、座板12とともに全体をほぼ水平状態にした任意の診察姿勢へと移行する。そして、この背板11を水平状態に移行する際に、閉脚状態になっていた左右一対の支脚器3a,3bは、患者の脚部の重量が加わるため、背板11の姿勢の変化に伴って、自重により左右に拡がり開脚姿勢となる。この際、医師等は、スイッチペダル92を操作することにより、支脚器3a,3bを任意の開脚位置で停止させることができる。
なお、患者の体型や診察の状況等により必要な場合には、全体の上下位置や背板11の回動位置を微調整することができる。例えば、全体の上下位置は、スイッチペダル91を操作して昇降駆動部を駆動することにより微調整することができる。また、背板11の回動位置は、スイッチペダル93を操作して駆動シリンダ51を駆動することにより微調整することができる。
【0024】
また、診察終了後に背板11を初期状態の起立姿勢に戻すときは、スイッチペダル98を操作することにより、検診台1を、背板倒伏状態(診察姿勢)から図8図10に示す背板起立状態(座位姿勢)に復帰させることができる。なお、スイッチペダル98が操作されると、ロック機構6a,6bによる支持アーム4a,4bのロックが自動的に解除されるようになっており、支持アーム4a,4b及び支脚器3a,3bは自由に回動できるようになる。したがって、患者は、自分の意思で支脚器3a,3bを閉脚できるようになり、背板11の起立姿勢への変化に伴って、楽な姿勢を保ちながら座位姿勢へと移行することができる。
【0025】
[脚受け板の着脱動作]
背板11を起立姿勢とした初期状態の検診台1においては、図8図10に示すように、左右一対の支脚器3a,3bが座板12の前方に配置されている。この起立姿勢の背板11を倒して倒伏姿勢とし、座板12とともに検診台1のマット面をほぼ水平状態とすると、左右一対の支脚器3a,3bは背板11とともに移動して、図1図4に示すように、座板12の上方位置に配置されるようになる。そして、この状態で診察が行われた後、患者を楽な姿勢で安静に保つことができるようにするため、脚受け板27の装着が行われる。
【0026】
脚受け板27は、図1図4に示すように、座板12の前方側から装着され、挿入ロッド28を座板フレーム14の通路孔19a,19bに挿入することにより装着される。この際、センサ55が脚受け板27の装着状態を検出し、インターロック回路により作動機構部5の駆動が制限される。そして、各駆動部の操作部が操作されても、患者の姿勢を大きく変化させることがないように一部の駆動部の駆動が制限される。
また、検診台1を、背板11を起立姿勢とする初期状態に戻すには、まず脚受け板27を座板フレーム14から取り外す。具体的には、脚受け板27を座板12の前方方向に引っ張り、通路孔19a,19b内から挿入ロッド28を抜き取る。この際、センサ55が脚受け板27の離脱を検出し、作動機構部5の駆動制限が解除される。したがって、作動機構部5の背板駆動部51等を自由に作動させることができるようになる。
【0027】
このように、脚受け板27を着脱可能に設けた検診台1においては、背板11の倒伏状態で脚受け板27を装着することにより、複雑な機構を必要とせずに、容易に平坦なマット面を形成することができ、患者を横臥姿勢や伏臥姿勢などの楽な姿勢で安静に保つことができる。
また、作動機構部5の制御部には、脚受け板27の着脱状態の検出によるインターロック回路が設けられており、脚受け板27の装着時においては、たとえ背板駆動部51等の駆動部の操作部が誤って操作されても、その駆動が制限され、検診台1の姿勢が大きく変更されないようになっている。したがって、不意な姿勢変更等による患者への負担や危険を確実に回避することができ、安全を確保することができる。
また、脚受け板27の装着時においては、背板駆動部51による背板11の回動範囲が小さく制限されることから、脚受け板27を装着したまま背板11を起立状態とすることが禁止される。したがって、脚受け板27の取り外し忘れ等の確認不足により脚受け板27と支脚器3a,3bとが接触して破損するなどのヒューマンエラーを防止することができ、医師等は、特別な手順を伴うことなく、常に適切な手順を追って操作することができる。
なお、脚受け板27の着脱状態を検出するセンサ55には、マイクロスイッチ等の汎用品を用いて構成することができ、簡単な構成で安価に製作することができる。
【0028】
以上において、本発明の一実施例について詳細に説明したが、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に基づいて各種の変更および修正が可能である。
例えば、上述の実施例においては、本発明を検診台1に適用したが、本発明は分娩台などの他の医療台にも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 検診台(医療台)
2 基台
3a,3b 支脚器
4a,4b 支持アーム
5 作動機構部
6a,6b ロック機構
9 コントローラ
11 背板
12 座板
13 背板フレーム
14 座板フレーム
15 取り付け部
17 受信部
18 パイプ部材
19a,19b 通路孔
21a,21b 腕受け
22 軸
27 脚受け板
28 挿入ロッド
28a,28b 両端部
29 プラグ
51 背板駆動部
53 切欠き部
55 センサ
56 検出部
57 レバー
91〜93,97〜99 スイッチペダル
94〜96 送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13