(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
路面上の撮影領域が車両の走行方向と交差するラインセンサからなり、当該撮影領域の一部を互いに重複させて、所定の走行距離ごとに撮影を行う第1及び第2の車載カメラと、
第1及び第2の車載カメラの撮影画像に基づいて、合成画像を生成する画像合成装置とを備えた路面撮影システムにおいて、
上記画像合成装置が、第1の車載カメラの撮影画像を1又は2以上のラインからなる多数の第1画像ブロックに区分する第1画像分割手段と、
第1画像ブロックに対応するように、第2の車載カメラの撮影画像を1又は2以上のラインからなる多数の第2画像ブロックに区分する第2画像分割手段と、
一部の第1画像ブロックについて、対応する第2画像ブロックとの比較を行って、第2画像ブロックとの重複幅を求める重複幅検出手段と、
残りの第1画像ブロックについて、上記重複幅検出手段により求められた上記重複幅に基づく補間演算を行って、対応する第2画像ブロックとの重複幅を求める重複幅補間手段と、
上記重複幅検出手段及び上記重複幅補間手段により求められた上記重複幅に基づいて、上記合成画像を生成する合成画像生成手段とを備えたことを特徴とする路面撮影システム。
上記重複幅補間手段は、上記一部の第1画像ブロックの重複幅を用いて線形補間することにより、上記残りの第1画像ブロックの重複幅を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の路面撮影システム。
トンネル壁面上の撮影領域が車両の走行方向と交差するラインセンサからなり、当該撮影領域の一部を互いに重複させて、所定の走行距離ごとに撮影を行う第1及び第2の車載カメラと、
第1及び第2の車載カメラの撮影画像に基づいて、合成画像を生成する画像合成装置とを備えたトンネル壁面撮影システムにおいて、
上記画像合成装置が、第1の車載カメラの撮影画像を1又は2以上のラインからなる多数の第1画像ブロックに区分する第1画像分割手段と、
第1画像ブロックに対応するように、第2の車載カメラの撮影画像を1又は2以上のラインからなる多数の第2画像ブロックに区分する第2画像分割手段と、
一部の第1画像ブロックについて、対応する第2画像ブロックとの比較を行って、第2画像ブロックとの重複幅を求める重複幅検出手段と、
残りの第1画像ブロックについて、上記重複幅検出手段により求められた上記重複幅に基づく補間演算を行って、対応する第2画像ブロックとの重複幅を求める重複幅補間手段と、
上記重複幅検出手段及び上記重複幅補間手段により求められた上記重複幅に基づいて、上記合成画像を生成する合成画像生成手段とを備えたことを特徴とするトンネル壁面撮影システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車載カメラの撮影画像を合成して路面の合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができる路面撮影システムを提供することを目的とする。特に、車両の揺れ等に起因して合成画像に画素の欠落や重複が生じるのを抑制しつつ、多数の車幅連結画像から車両の走行方向に視野が拡大された合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができる路面撮影システムを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、撮影領域の重複部分の長さに応じて、合成画像を生成する際の処理負荷をより低減させ、或いは、合成画像における走行方向の解像度を向上させることができる路面撮影システムを提供することを目的とする。また、本発明は、車両の振動の周期や振幅に応じて、合成画像を生成する際の処理負荷をより低減させ、或いは、合成画像における走行方向の解像度を向上させることができる路面撮影システムを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、車載カメラの撮影画像を合成してトンネル壁面の合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができるトンネル壁面撮影システムを提供することを目的とする。特に、車両の揺れ等に起因して合成画像に画素の欠落や重複が生じるのを抑制しつつ、多数の車幅連結画像から車両の走行方向に視野が拡大された合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができるトンネル壁面撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明による路面撮影システムは、路面上の撮影領域が車両の走行方向と交差するラインセンサからなり、当該撮影領域の一部を互いに重複させて、所定の走行距離ごとに撮影を行う第1及び第2の車載カメラと、第1及び第2の車載カメラの撮影画像に基づいて、合成画像を生成する画像合成装置とを備えた路面撮影システムであって、上記画像合成装置が、第1の車載カメラの撮影画像を1又は2以上のラインからなる多数の第1画像ブロックに区分する第1画像分割手段と、第1画像ブロックに対応するように、第2の車載カメラの撮影画像を1又は2以上のラインからなる多数の第2画像ブロックに区分する第2画像分割手段と、一部の第1画像ブロックについて、対応する第2画像ブロックとの比較を行って、第2画像ブロックとの重複幅を求める重複幅検出手段と、残りの第1画像ブロックについて、上記重複幅検出手段により求められた上記重複幅に基づく補間演算を行って、対応する第2画像ブロックとの重複幅を求める重複幅補間手段と、上記重複幅検出手段及び上記重複幅補間手段により求められた上記重複幅に基づいて、上記合成画像を生成する合成画像生成手段とを備えて構成される。
【0011】
この路面撮影システムの画像合成装置では、一部の第1画像ブロックについてだけ、対応する第2画像ブロックとの比較を行って第2画像ブロックとの重複幅を求め、残りの第1画像ブロックについては、補間演算により、対応する第2画像ブロックとの重複幅が求められる。合成画像は、この様にして求められた重複幅を用いて第1及び第2画像ブロックを連結することによって、車両の走行方向と交差する車幅方向に視野の広い多数の車幅連結画像を取得し、これらの車幅連結画像を車両の走行方向に関して連結することによって得られる。このため、全ての画像ブロックについて、第1及び第2車載カメラ間で画像ブロックを比較して重複幅を求める場合に比べ、多数の車幅連結画像から車両の走行方向に視野が拡大された合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができる。また、画像ブロックの比較により重複幅を求めて撮影画像を合成するので、車両の揺れ等に起因して合成画像に画素の欠落や重複が生じるのを抑制することができる。
【0012】
第2の本発明による路面撮影システムは、上記構成に加え、上記重複幅検出手段が、所定のブロック数をインターバル周期として、上記一部の第1画像ブロックを選択し、上記画像合成装置が、上記重複幅に基づいて、上記インターバル周期を決定するインターバル制御手段を有するように構成される。
【0013】
この様な構成によれば、重複幅検出手段又は重複幅補間手段により求められた重複幅に基づいてインターバル周期が定められるので、撮影領域の重複部分の長さに応じて、合成画像を生成する際の処理負荷をより低減させ、或いは、合成画像における走行方向の解像度を向上させることができる。
【0014】
第3の本発明による路面撮影システムは、上記構成に加え、上記重複幅補間手段が、上記一部の第1画像ブロックの重複幅を用いて線形補間することにより、上記残りの第1画像ブロックの重複幅を求めるように構成される。
【0015】
この様な構成によれば、一部の第1及び第2画像ブロックから求められた重複幅を用いて、残りの第1及び第2画像ブロックの重複幅を補間演算により求める際の処理負荷を低減させることができる。
【0016】
第4の本発明による路面撮影システムは、上記構成に加え、上記車両の振動を検出する振動検出装置を備え、上記重複幅検出手段が、所定のブロック数をインターバル周期として、上記一部の第1画像ブロックを選択し、上記画像合成装置が、上記振動検出装置の検出結果に基づいて、上記インターバル周期を決定するインターバル制御手段を有するように構成される。
【0017】
この様な構成によれば、車両の振動の検出結果に基づいてインターバル周期が定められるので、車両の振動の周期や振幅に応じて、合成画像を生成する際の処理負荷をより低減させ、或いは、合成画像における走行方向の解像度を向上させることができる。
【0018】
第5の本発明によるトンネル壁面撮影システムは、トンネル壁面上の撮影領域が車両の走行方向と交差するラインセンサからなり、当該撮影領域の一部を互いに重複させて、所定の走行距離ごとに撮影を行う第1及び第2の車載カメラと、第1及び第2の車載カメラの撮影画像に基づいて、合成画像を生成する画像合成装置とを備えたトンネル壁面撮影システムであって、上記画像合成装置が、第1の車載カメラの撮影画像を1又は2以上のラインからなる多数の第1画像ブロックに区分する第1画像分割手段と、第1画像ブロックに対応するように、第2の車載カメラの撮影画像を1又は2以上のラインからなる多数の第2画像ブロックに区分する第2画像分割手段と、一部の第1画像ブロックについて、対応する第2画像ブロックとの比較を行って、第2画像ブロックとの重複幅を求める重複幅検出手段と、残りの第1画像ブロックについて、上記重複幅検出手段により求められた上記重複幅に基づく補間演算を行って、対応する第2画像ブロックとの重複幅を求める重複幅補間手段と、上記重複幅検出手段及び上記重複幅補間手段により求められた上記重複幅に基づいて、上記合成画像を生成する合成画像生成手段とを備えて構成される。
【0019】
このトンネル壁面撮影システムの画像合成装置では、一部の第1画像ブロックについてだけ、対応する第2画像ブロックとの比較を行って第2画像ブロックとの重複幅を求め、残りの第1画像ブロックについては、補間演算により、対応する第2画像ブロックとの重複幅が求められる。合成画像は、この様にして求められた重複幅を用いて第1及び第2画像ブロックを連結することによって、車両の走行方向と交差する車幅方向に視野の広い多数の車幅連結画像を取得し、これらの車幅連結画像を車両の走行方向に関して連結することによって得られる。このため、全ての画像ブロックについて、第1及び第2車載カメラ間で画像ブロックを比較して重複幅を求める場合に比べ、多数の車幅連結画像から車両の走行方向に視野が拡大された合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができる。また、画像ブロックの重複幅を求めて撮影画像の合成画像を生成するので、車両の揺れ等に起因して合成画像に画素の欠落や重複が生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による路面撮影システムでは、車載カメラの撮影画像を合成して路面の合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができる。特に、車両の揺れ等に起因して合成画像に画素の欠落や重複が生じるのを抑制しつつ、多数の車幅連結画像から車両の走行方向に視野が拡大された合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができる。
【0021】
また、撮影領域の重複部分の長さに応じて、合成画像を生成する際の処理負荷をより低減させ、或いは、合成画像における走行方向の解像度を向上させることができる。さらに、車両の振動の周期や振幅に応じて、合成画像を生成する際の処理負荷をより低減させ、或いは、合成画像における走行方向の解像度を向上させることができる。
【0022】
また、本発明によるトンネル壁面撮影システムでは、車載カメラの撮影画像を合成してトンネル壁面の合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができる。特に、車両の揺れ等に起因して合成画像に画素の欠落や重複が生じるのを抑制しつつ、多数の車幅連結画像から車両の走行方向に視野が拡大された合成画像を生成する際の処理負荷を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<路面検査システム100>
図1は、本発明の実施の形態による路面撮影システム110を含む路面検査システム100の一構成例を示したシステム図である。この路面検査システム100は、路面撮影システム110及びひび割れ検出装置120からなり、舗装道路を走行する車両111の車載カメラ1a〜1cにより路面を撮影し、その撮影画像を解析することによって路面に生じたひび割れを検出する。
【0025】
路面撮影システム110は、車載カメラ1a〜1c及び振動検出装置2が設けられた車両111と、車載カメラ1a〜1cの撮影画像を合成して路面画像を生成する画像合成装置112により構成される。路面撮影は、路面上を所定の速度で走行しながら行われる。例えば、80km/h〜120km/h程度の車両速度で走行中に路面撮影が行われる。
【0026】
車載カメラ1a〜1cは、いずれも路面上の撮影領域が車両111の走行方向と交差するラインセンサからなる撮像装置であり、所定の走行距離ごとに撮影を行う。振動検出装置2は、車両111の走行方向に関する路面画像の解像度を調整するために、路面走行に伴って生じる車両111の振動を検出する揺れ検出センサであり、振動の周期及び振幅が検出される。例えば、振動検出装置2は、加速度センサからなる。
【0027】
画像合成装置112は、各車載カメラ1a〜1cにより取得された撮影画像の一部を互いに重複させて連結することにより、車両111の走行方向と交差する車幅方向に関して元の撮影画像に比べ視野の広い多数の車幅連結画像を生成する。路面画像は、この多数の車幅連結画像を連結することにより、車両111の走行方向に関して視野が拡大された合成画像として生成される。ひび割れ検出装置120は、この様な路面画像を解析することにより、路面のどこにどの様なひび割れが存在するのかを検出する。
【0028】
<路面撮影用の車両111>
図2は、
図1の車両111の構成例を示した外観図であり、車幅方向から車両111の左側面を見た様子が示されている。この車両111には、車載カメラ1a〜1cからなるカメラユニット1と、路面照明ユニット3及び4が設けられ、路面5上を概ね一定の速度で走行しながら路面撮影が行われる。
【0029】
路面照明ユニット3,4は、いずれも路面撮影のために路面5を照明する投光装置であり、路面5上の投光エリアが車両111の走行方向と交差する線状の光源装置からなる。路面照明ユニット3は、車両111の走行ラインに対し、左側エリア及び右側エリアを投光エリアとして照明する照明ユニットであり、路面照明ユニット4は、中央エリアを投光エリアとして照明する照明ユニットである。
【0030】
カメラユニット1は、路面照明ユニット3,4の照射光の路面5による反射光を受光して撮影画像を生成する。カメラユニット1、路面照明ユニット3及び4は、車両111のリア面に取り付けられている。カメラユニット1は、車両リア面の上部に配置され、路面照明ユニット3及び4は、路面5近くに配置されている。
【0031】
図3は、
図1の車両111の構成例を示した斜視図であり、車両111のリア面に取り付けられたカメラユニット1、路面照明ユニット31,32及び4が示されている。
図4は、
図1の車両111の構成例を示した外観図であり、走行方向から車両111のリア面を見た様子が示されている。
図4では、カメラユニット1の遮光カバーを取り外した状態が示されている。
【0032】
カメラユニット1には、外光を遮断するための遮光カバーが設けられ、遮光カバーを取り外せば、
図4に示すように、3つの車載カメラ1a〜1cが露出する。各車載カメラ1a〜1cは、多数の受光素子が直線状に配列された撮像素子からなるラインセンサにより構成され、路面上の撮影領域の一部を互いに重複させて撮影を行う。
【0033】
車載カメラ1a〜1cとしてラインセンサからなるカメラを用いることにより、路面照明装置を小型化することができる。また、2次元のイメージセンサを用いる場合に比べ、開口率を大きくすることができる。
【0034】
車載カメラ1bは、車両111の走行方向に対し、中央エリアを撮影領域として撮影を行う中央カメラであり、車両リア面の中央に配置されている。この車載カメラ1bは、撮影軸を直下に向けて配置されている。一方、車載カメラ1aは、車両111の走行方向に対し、左側エリアを撮影領域として撮影を行う左カメラであり、車両リア面の左側に配置されている。また、車載カメラ1cは、車両111の走行方向に対し、右側エリアを撮影領域として撮影を行う右カメラであり、車両リア面の右側に配置されている。車載カメラ1a,1cは、撮影軸がサイド側を向くように傾斜させて配置されている。
【0035】
路面照明ユニット3は、車両111の走行ラインに対し、左側エリアを照明するための路面照明ユニット31と、右側エリアを照明するための路面照明ユニット32により構成される。路面照明ユニット31,32,4には、それぞれ線状の光源装置31a,32a,4aと、照射光の光漏れを防ぐための遮光カバーが設けられている。
【0036】
各光源装置31a,32a,4aは、路面5上の投光エリアの一部が互いに重複するように配置されている。例えば、光源装置31a,32a,4aは、いずれも多数の白色LED(発光ダイオード)により構成される。
【0037】
図5は、
図1の車両111の内部構成の一例を示したブロック図である。この車両111は、車載カメラ1a〜1c、振動検出装置2、車速計10、車速パルス変換器11、撮影制御部12、撮影画像記憶部13、補正テーブル記憶部14及び検出データ記憶部15により構成される。
【0038】
車速計10は、車両111の走行速度を計測するための速度計測部であり、走行速度を示す車速パルスを生成する。車速パルス変換器11は、車速パルスを変換することにより、撮影タイミングを規定するための撮影制御パルスを生成し、撮影制御部12へ出力する。
【0039】
撮影制御部12は、撮影制御パルスに基づいて車載カメラ1a〜1cを制御し、所定の走行距離ごとに撮影画像を取得する。例えば、車両111が距離1mmを走行するごとに撮影画像が取得される。各車載カメラ1a〜1cの撮影は、撮影制御パルスに同期して行われ、取得された撮影画像は、撮影画像記憶部13内に順次に格納される。
【0040】
また、撮影制御部12は、撮影画像の幾何補正やシェーディング補正のためのキャリブレーション撮影を行い、取得した撮影画像から補正テーブルを生成し、補正テーブル記憶部14内に格納する。
【0041】
幾何補正は、車載カメラ1a〜1cのレンズの歪みや、車載カメラ1a〜1cを車両111に取り付ける際の取付誤差による歪みを除去するための歪み補正である。シェーディング補正は、照明の不均一さによる輝度むらを除去するための明るさ補正である。キャリブレーション撮影は、キャリブレーション用のチャートを路面上に配置し、このチャートを撮影することにより行われる。
【0042】
検出データ記憶部15には、振動検出装置2により検出された振動の周期及び振幅が検出データとして格納される。例えば、撮影画像記憶部13、補正テーブル記憶部14及び検出データ記憶部15は、SSD(Solid State Drive)により構成され、着脱可能な不揮発性記録媒体に撮影画像や補正テーブルが保持される。
【0043】
<画像合成装置112>
図6は、
図1の画像合成装置112の構成例を示したブロック図である。この画像合成装置112は、第1画像分割部20、第2画像分割部21、チェックブロック選択部22、補正処理部23、重複幅算出部24、重複幅補間部25、合成画像生成部26、路面画像記憶部27及びインターバル制御部28により構成される。
【0044】
第1画像分割部20は、中央カメラ、すなわち、車載カメラ1bの撮影画像を車両111から取得し、多数の第1画像ブロックに区分する。各第1画像ブロックは、1又は2以上のライン、すなわち、1又は2以上の撮影画像からなる。例えば、各第1画像ブロックは、数百ライン程度の撮影画像を積算した2次元画像からなる。
【0045】
第2画像分割部21は、左カメラ(車載カメラ1a)及び右カメラ(車載カメラ1c)の撮影画像を車両111から取得し、それぞれ多数の第2画像ブロックに区分する。第2画像ブロックは、第1画像ブロックに対応するように定められる。各第2画像ブロックは、1又は2以上のラインからなる。
【0046】
チェックブロック選択部22は、所定のブロック数をインターバル周期Tとして、一部の第1画像ブロックを、画像比較によって重複幅Wを求めるためのチェックブロックCBとして選択する。
【0047】
補正処理部23は、車両111から補正テーブルを取得し、補正テーブルに基づいて撮影画像の補正処理を行う。この補正処理は、幾何補正、画像幅の補正及びシェーディング補正からなる。画像幅の補正は、撮影領域の長さの不均一さによる歪みを補正するための画像サイズ補正である。
【0048】
車載カメラ1bは、撮影軸を下に向けて配置されるのに対し、車載カメラ1a,1cは、撮影軸がサイド側を向くように傾斜させて配置される。このため、撮影領域の車幅方向の長さを比較すれば、車載カメラ1a,1cの撮影領域は、車載カメラ1bの撮影領域に比べて長い。画像幅の補正では、撮影画像のサイズを調整することにより、この様な撮影領域の不均一さが補正される。
【0049】
重複幅算出部24は、チェックブロックCBについて、対応する第2画像ブロックとの比較を行って、第2画像ブロックとの重複幅Wを求める。この重複幅算出部24は、補正処理部23による補正後の画像ブロックに基づいて、重複幅Wを求める。例えば、重複幅Wは、チェックブロックCBから小領域を抽出し、この小領域に対し、第2画像ブロック内で輝度の分布が最も近い画像領域を検出することにより、求められる。チェックブロック選択部22及び重複幅算出部24は、重複幅検出部を構成している。
【0050】
重複幅補間部25は、残りの第1画像ブロックについて、重複幅算出部24により求められた重複幅Wに基づく補間演算を行って、対応する第2画像ブロックとの重複幅Wを求める。この重複幅補間部25は、チェックブロックCBの重複幅Wを用いて線形補間することにより、残りの第1画像ブロックの重複幅Wを求める。
【0051】
合成画像生成部26は、重複幅算出部24及び重複幅補間部25により求められた重複幅Wに基づいて、合成画像を生成する。合成画像は、重複幅Wだけ重複するように第1画像ブロックと第2画像ブロックとを連結することによって多数の車幅連結画像を作成し、これらの車幅連結画像を車両111の走行方向に関して連結することにより、生成される。この合成画像は、補正処理部23による補正後の画像ブロックに基づいて、作成される。路面画像記憶部27には、合成画像生成部26により生成された合成画像が路面画像として保持される。
【0052】
インターバル制御部28は、振動検出装置2の検出データを車両111から取得し、検出データに基づいて、インターバル周期Tを決定する。例えば、振動の周期が一定値を下回れば、インターバル周期Tを短くする制御が行われる。一方、振動の周期が一定値を上回れば、インターバル周期Tを長くする制御が行われる。
【0053】
この様に構成することにより、車両111の振動の検出結果に基づいてインターバル周期Tが定められるので、車両111の振動の周期に応じて、路面画像を生成する際の処理負荷をより低減させ、或いは、路面画像における走行方向の解像度を向上させることができる。
【0054】
図7は、
図4の車載カメラ1a〜1cを用いた路面撮影の様子を模式的に示した説明図である。車両111上の車載カメラ1a〜1cは、路面5からの高さがH
1であり、撮影領域A
1,B
1の一部を互いに重複させて撮影を行う。
【0055】
例えば、左カメラ(車載カメラ1a)は、車両111の走行ラインよりも左側のエリアを撮影領域A
1として撮影を行う。また、中央カメラ(車載カメラ1b)は、車両111の走行ラインの中央エリアを撮影領域B
1として撮影を行う。撮影領域A
1及び撮影領域B
1には、重複部分D1が生じている。
【0056】
各車載カメラ1a〜1cの撮影領域は、車幅方向に長い線状エリアからなり、5m程度の幅員の路面5をカバーすることができる。車両111が路面5の段差を通過すれば、車両111全体が上下方向に大きく揺れ、車載カメラ1a〜1cと路面5との距離が大きく変化する。
【0057】
図8は、
図7の状態から車両111が段差を通過した直後の様子を示した説明図である。
図7の状態から車両111が段差を通過することにより、車載カメラ1a〜1cの路面5からの高さがH
1からH
2に変化し、ΔHだけ低くなっている。このとき、車載カメラ1aの撮影領域A
2と、車載カメラ1bの撮影領域B
2とは、いずれも段差の通過前に比べて車幅方向の長さが短くなっている。
【0058】
このため、撮影領域A
2及びB
2間の重複部分D
2は、段差通過前の重複部分D
1に比べて短い。この様に、車載カメラ1a〜1c及び路面5間の距離が変化すれば、路面5上の撮影領域が車幅方向に拡大又は縮小し、隣接するカメラ間で撮影領域の重複部分の大きさも変化する。
【0059】
従来の路面撮影システムでは、車両111が路面5の段差を通過したことに起因して路面5上の撮影領域や重複部分が変化することが考慮されておらず、隣接するカメラ間で撮影画像を連結する際に、一定サイズの画像領域を重複させて各撮影画像が合成される。このため、路面画像に画素の欠落や重複が生じてしまう。
【0060】
図9は、従来の路面撮影システムにより生成された路面画像の一例を示した図である。この図には、路面5に設けられたマンホールの蓋付近を撮影した路面画像が示されている。この路面画像では、画素の欠落部分が車両111の走行方向に沿って生じている。
【0061】
これに対し、本実施の形態による路面撮影システム110では、画像ブロックの比較により重複幅Wを求めて撮影画像を合成するので、車両111の揺れ等に起因して路面画像に画素の欠落や重複が生じるのを抑制することができる。
【0062】
図10は、
図1の路面撮影システム110により生成された路面画像の一例を示した図である。この路面画像では、
図9に示したような画素の欠落部分が見られず、高品質の路面画像が得られている。
【0063】
図11は、
図6の画像合成装置112によりチェックブロックCB
1及びCB
2間の重複幅W
1,W
2を求める処理の一例を模式的に示した説明図である。この図では、中央カメラの撮影画像が多数の第1画像ブロックに区分して時系列に配列され、左カメラ及び右カメラの撮影画像が多数の第2画像ブロックに区分して時系列に配列されている。
【0064】
チェックブロックCB
1は、多数の第1画像ブロックの中からインターバル周期Tで自動的に選択される。チェックブロックCB
2は、チェックブロックCB
1に合わせて、多数の第2画像ブロックの中から選択される。
【0065】
チェックブロックCB
1及びCB
2間の重複幅W
1,W
2は、これらの画像ブロックを照合して求められる。具体的には、チェックブロックCB
1内の小領域P
1に対し、輝度分布が最も近い画像領域をチェックブロックCB
2内から検出することにより、求められる。例えば、チェックブロックCB
1の右端に小領域P
1を定め、小領域P
1と走行方向の位置が同一であり、かつ、車幅方向の長さが小領域P
1よりも大きいマッチング領域F
1をサーチして小領域P
1に最も近い画像領域を検出することにより、重複幅W
1が求められる。
【0066】
インターバル周期Tだけ撮影時刻が異なるチェックブロックCB
1,CB
2についても同様に、マッチング領域F
2内から小領域P
1に最も近い画像領域を検出することにより、重複幅W
2が求められる。チェックブロックCB
1,CB
2以外の第1及び第2画像ブロックの重複幅Wは、W
1,W
2を用いた線形補間により求められる。
【0067】
図12のステップS101〜S105は、
図1の路面検査システム100の動作の一例を示したフローチャートである。まず、車両111の撮影制御部12は、キャリブレーション用のチャート上を走行しながら当該チャートを撮影することにより、キャリブレーション撮影を行い、車載カメラ1a〜1cから取得した撮影画像に基づいて補正テーブルを作成し、補正テーブル記憶部14内に格納する(ステップS101,S102)。
【0068】
次に、撮影制御部12は、走行中の路面5を撮影し、車載カメラ1a〜1cから多数の撮影画像を取得して撮影画像記憶部13内に格納する(ステップS103)。次に、画像合成装置112は、車両111から車載カメラ1a〜1cの撮影画像及び補正テーブルを取得して撮影画像合成処理を行い、路面画像を生成する(ステップS104)。次に、ひび割れ検出装置120は、路面画像を解析し、路面5のひび割れ検出を行う(ステップS105)。
【0069】
図13のステップS201〜S206は、
図12の撮影画像合成処理(ステップS104)の処理手順を示したフローチャートである。まず、画像分割部20,21は、車載カメラ1a〜1cの撮影画像を多数の画像ブロックに区分する(ステップS201)。次に、補正処理部23は、補正テーブルに基づいて、撮影画像の歪み補正、画像幅の補正及びシェーディング補正を行う(ステップS202〜S204)。
【0070】
次に、重複幅算出部24及び重複幅補間部25は、画像ブロック間の重複幅Wを求める重複幅判別処理を行う(ステップS205)。次に、合成画像生成部26は、重複幅算出部24及び重複幅補間部25により求められた重複幅Wに基づいて、画像ブロックを合成し、路面画像を生成して路面画像記憶部27内に格納する(ステップS206)。
【0071】
図14のステップS301〜S307は、
図13の重複幅判別処理(ステップS205)の処理手順を示したフローチャートである。まず、チェックブロック選択部22は、多数の第1及び第2画像ブロックの中から、インターバル周期TでチェックブロックCB1,CB
2を選択する(ステップS301)。
【0072】
次に、重複幅算出部24は、チェックブロックCB1,CB
2を比較し、重複幅Wを算出する(ステップS302,S303)。重複幅補間部25は、線形補間により、残りの第1及び第2画像ブロックの重複幅Wを求める(ステップS304)。
【0073】
インターバル制御部28は、一定時間分の第1及び第2画像ブロックについて、重複幅Wが得られれば、車両111の振動周期を参照し、振動周期に応じてインターバル周期Tを調整する(ステップS305〜S307)。ステップS301からステップS307の処理手順は、一定時間分の第1及び第2画像ブロックについて重複幅Wが得られるごとに繰り返される。
【0074】
本実施の形態によれば、全ての画像ブロックについて、車載カメラ1a〜1c間で画像ブロックを比較して重複幅Wを求める場合に比べ、多数の車幅連結画像から車両111の走行方向に視野が拡大された路面画像を生成する際の処理負荷を低減させることができる。また、画像ブロックの比較により重複幅Wを求めて撮影画像を合成するので、車両111の揺れ等に起因して路面画像に画素の欠落や重複が生じるのを抑制することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、インターバル制御部28が、車両振動の検出結果に基づいて、インターバル周期Tを決定する場合の例について説明したが、本発明はインターバル周期Tの決定方法をこれに限定するものではない。例えば、重複幅算出部24又は重複幅補間部25により求められた重複幅Wに基づいて、インターバル周期Tを決定するような構成であっても良い。
【0076】
この様に構成することにより、撮影領域の重複部分の長さに応じて、路面画像を生成する際の処理負荷をより低減させ、或いは、路面画像における走行方向の解像度を向上させることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、舗装道路の路面5に生じたひび割れ等を検出するために、路面5を撮影して路面画像が生成される場合の例について説明した。しかしながら、本発明は、トンネル内の壁面に生じたひび割れ等を検出するために、トンネル壁面を撮影し、撮影画像を合成して壁面画像を生成するトンネル壁面撮影システムにも適用することができる。この様なトンネル壁面撮影システムでは、車幅方向に関して車両111がトンネル内のどこを走行しているのかによって、車載カメラとトンネル壁面との距離が大きく異なる。そこで、トンネル壁面までの距離を計測する壁面距離計測装置を車両111に設け、インターバル周期Tよりも十分に長い時間間隔で撮影画像を補正することが考えられる。
【0078】
また、本実施の形態では、画像合成装置112が車両111の外部に設けられる場合の例について説明したが、車両1内に画像合成装置112を設置するような構成であっても良い。
【0079】
また、本実施の形態では、チェックブロックCB以外の画像ブロックの重複幅Wを求める際の補間演算の例として線形補間を行う場合の例について説明したが、本発明は、補間演算をこれに限定するものではない。例えば、チェックブロックCBについて求められた3以上の重複幅Wを用いた多項式補間を行うような構成であっても良い。