(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について、添付の図を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の各図においては、同一部分には同一符号を付し、そして、以下の説明では、一度説明したものについては、重複を避けるため、その説明を省略する。
【0010】
まず、
図1は、本発明の一実施の形態になる投写型映像表示装置の要部構成の一例を示す上面図(
図1(A))、及び、側面図(
図1(B))であり、ここでは、各図中には、ローカル右手直角座標系が導入されている。即ち、
図1(A)では、多重反射素子(ロッドレンズ)の長手方向をZ軸、当該Z軸に直交する面内において紙面に平行な軸をX軸、そして、当該紙面の裏から表に向かう軸をY軸とする。また、
図1(B)では、上記Z軸に直交する面内において前記紙面に平行な軸をY軸とし、そして、当該紙面表から裏に向かう軸をX軸としている。即ち、
図1(A)は投写型映像表示装置をY軸方向から見た上面図、そして、
図1(B)は投写型映像表示装置をX軸方向から見た側面図である。
【0011】
これらの図において、放電ランプ1とリフレクタ2は、白色光を放射するための光源を構成している。なお、放電ランプ1としては、例えば、超高圧水銀ランプ等を使用することができる。即ち、超高圧水銀ランプは白色光を効率良く放射し、かつ、その輝度は極めて高く、その放射光は。集光性に優れたリフレクタ2である鏡面により、効率良く集光することができる。より具体的には、このリフレクタ2は、第一焦点(短焦点)と第二焦点(長焦点)を持つ楕円(但し、半円)を回転した楕円回転面により構成されており、その内表面には、赤外線を透過すると共に可視光を効率良く反射する誘電体の多層膜を形成しており、第一焦点(短焦点)に配置された放電ランプ1から放射される光のうち、可視光成分を第二焦点(長焦点)に向けて反射する。
【0012】
また、上述した光源のZ軸方向の後方には、集光光学素子である多重反射素子(ロッドレンズ)13が配置されており、上記放電ランプ1から射出した光は、リフレクタ2で捕獲・集光され、多重反射素子(ロッドレンズ)13に入射する。この多重反射素子13は、例えば、硝子の四角柱、又は、反射ミラーを4枚貼り合わせた中空の素子で構成されており、その入射面(図の左端部)は、上記楕円面鏡2の第二焦点(長焦点)、即ち、リフレクタで反射された可視光成分が集光する位置の近傍に配置されると共に、その射出面は、X軸方向に長く、Y軸方向に短い形状をしており、そのアスペクト比は、以下に述べる光変調素子であるDMD10のアスペクト比と同一となるように設定されている。即ち、多重反射素子13の射出面のX軸方向の長さを「C」、Y軸方向の長さを「D」、DMD10のX軸方向の長さを「E」、Y軸方向の長さを「F」とすると、C/D=E/Fを満たす。これにより、多重反射素子13内で複数回反射した光線は、その射出面では、DMD10に相似で均一な強度の光分布となる。
【0013】
多重反射素子13の射出面近傍には、回転式の色フィルタであるカラーホイール4が配置されている。このカラーホイール4は、それぞれ、R(赤)、G(緑)、B(青)、C(シアン)、Y(黄)、W(白)の光のみを透過する6種類の扇状の透過型のカラーフィルタを、円周(回転)方向に順番に配置して構成され、かつ、その回転制御が可能な円盤状の色フィルタである。また、このカラーホイール4は、上記の6種類のカラーフィルタに代え、R(赤)、G(緑)、B(青)からなる3種類のカラーフィルタでも実現することが出来るが、しかしながら、明るさを改善するために、上述した6色のカラーフィルタを用いたカラーホイール4を採用することが好ましい。
【0014】
上述したカラーホイール4を回転することで、光源から出射した白色光は、時系列的に6色(R(赤)、G(緑)、B(青)、C(シアン)、Y(黄)、W(白))の光に分解される。その後、このカラーホイール4から射出した光は、当該射出光を集光する照明光学要素を構成するリレーレンズ5、12、8、更には、TIRプリズム9を介して、DMD10上に照射される。
【0015】
ここで、上記照明光学要素を構成するリレーレンズ5、12、8に働きについて述べると、まず、リレーレンズ5は、多重反射素子(ロッドレンズ)13から射出してカラーホイール4を透過した光をリレーレンズ12に集光することで、光の発散を防ぐ働きをする。リレーレンズ12は、カラーホイール4の射出面で均一になった光分布を、DMD10の面上に拡大する働きをする。リレーレンズ8は、上記リレーレンズ12からの光を略平行にする働きを持っている。そして、TIRプリズム9は、入射した光を全反射し、もって、DMD10へと導く。
【0016】
ここで、DMD10は、個々の微小ミラーの傾きを制御できる2次元ミラーアレイからなる反射型光変調素子であり、各々のミラーの傾きはオン状態とオフ状態の2種類の状態をとる。このDMD10に照明光を当てた場合、オン状態の微小ミラーは照明光を投写レンズ11に向けて反射し(以下、「オン光」と呼ぶ)、オフ状態の微小ミラーは照明光を投写レンズ11外に反射する(以下、「オフ光」と呼ぶ)。即ち、オン光のみが、投写レンズ11を介して、例えば、スクリーン等の上に拡大投写されることとなる。
【0017】
また、DMD10の微小ミラーの各々が、投写画像の最小構成要素(画素)に対応しており、オン状態の微小ミラーに対応する画素は白く、オフ状態の微小ミラーに対応する画素は黒く投写される。また、オン状態の時間を変化させることにより、投射される映像に階調を持たせることが出来る。即ち、各微小ミラーのオン状態の時間を制御することで、映像表示を行う。
【0018】
このDMD10は、図に符号100で示す制御装置(例えば、マイコンやメモリにより構成される)により、上述したカラーホイール4の回転と同期が取られており、これにより、カラーホイール4の各色光毎に画像信号に基づいた画像を表示すると共に、TIRプリズム9から入射した光を投写レンズ11の方向へ反射する。即ち、DMD10で反射した後の光線は、TIRプリズム9の全反射角を満たさない角度となるため、TIRプリズム9を透過し、投写レンズ11に入射する。尚、ここでは、光がカラーホイール4を射出した後、TIRプリズム9を透過してDMD10の表面に至るまでの光学系を、照明光学系という。
【0019】
続いて、上述したカラーホイール4と、DMD10におけるスポークタイムとの関係を、
図2を参照しながら説明する。
【0020】
図2は、多重反射素子(ロッドレンズ)13の射出面での光分布31と、カラーホイール4の面上での光分布31を示す図である。即ち、多重反射素子(ロッドレンズ)13の射出面での光分布31は、X軸方向=C、Y軸方向=Dであり、そして、カラーホイール4の面上に等倍に投影されて光分布31’となり、X軸方向=C’、Y軸方向=D’(C’/D’=C/D)となる。換言すれば、多重反射素子13の射出面の形状は、そのまま、多重反射素子13の近傍に配置されたカラーホイール4の面上に投影され、相似形となる。
【0021】
一方、カラーホイール4の各色フィルタの境界(
図2では、一例としてRG間のみを示す)では、上述した光分布31’は当該境界を跨って投射され、混色を避けるため、光を遮断している(具体的には、DMD10をオフ状態とする)。この遮断している時間をスポークタイムと言い、スポークタイムでは、出射光は損失となり、当該スポークタイムを最小にすることが必要となる。
【0022】
スポークタイムを減らすためには、例えば、
図3(A)にも示すように、多重反射素子(ロッドレンズ)13から出射された光のカラーホイール4面上の光分布31’において、回転するホイール4の各色フィルタ間の境界BLの移動方向(図の例では、矢印で示すように上方に移動する)に複数の矩形領域(本例では、3つの領域31’−1、31’−2、31’−3)に分割し、そして、これらの領域に対応するDMD10の微小ミラーをオフ状態(本例では、領域31’−2がオフ状態)とすると共に、他の領域は、それぞれの色光に対応し、投写画像の最小構成要素(画素)をオン又はオフ状態に制御する。なお、境界BLは回転(移動)することから、当該境界BL(一点鎖線)が領域31’−1内に存在する時には、当該領域31’−1の全ての画素をオフ状態とすると共に、他の領域31’−2、31’−3画素は、投写画像に応じて、オン又はオフ状態に制御する。また、境界BL(一点鎖線)が領域31’−3内に存在する時には、当該領域31’−3の全ての画素をオフ状態とすると共に、他の領域31’−1、31’−2画素は、投写画像に応じて、オン又はオフ状態に制御する。これにより、スポークタイムを低減することが可能になり、スポークタイムによる光の損失を低減することが出来る。
【0023】
なお、上記では、カラーホイール4面上の光分布31’を3つの領域に分けた場合について説明したが、更に、より多くの領域に分割することにより、スポークタイムを更に低減し、スポークタイムによる光の損失をより低減することが出来ることは、当業者であれば明らかであろう。そして、
図3(B)にも示すように、色フィルタ間の境界BLの移動に合わせて、DMD10の微小ミラーをオフ状態とすることによれば、スポークタイムを最小にすることが可能となる。なお、この時、DMD10上の、オフ状態とした微小ミラー(ライン状に並ぶ)を挟んで上下に分割される領域の画素は、投写画像に応じて、オン又はオフ状態に制御する。なお、上述したDMD10におけるスポークタイムを低減する動作は、上述した制御装置100により、予めメモリ内に格納したソフトウェアに基づいて実行される。
【0024】
続いて、上述した投写型映像表示装置における、更なる、光損失を低減するための構造について説明する。
【0025】
添付の
図4は、多重反射素子(ロッドレンズ)13から出射した光の一部がカラーホイール4の面上で反射することを防止するための構造を示して。ここで、上述したように、放電ランプ1としては、例えば、超高圧水銀ランプなど、白色光を高効率で放射するものが一般的に採用されるが、多重反射素子(ロッドレンズ)13から出射した光の一部、特に、赤外成分光がカラーホイール4上で反射すると、当該反射光は、再び、多重反射素子(ロッドレンズ)13内に戻り、その内部を伝播して放電ランプ1に到達し、当該放電ランプ1の温度を上昇させる、ランプの寿命を短縮してしまう。
【0026】
そこで、かかるカラーホイール4上での赤外成分光の反射を低減するため、
図4(A)に示すように、多重反射素子(ロッドレンズ)13からカラーホイール4の表面上への光の投射角度を、垂直から僅かな角度(α)傾斜させ、もって、カラーホイール4上での反射光が、再び、多重反射素子(ロッドレンズ)13内に戻らないようにする。
【0027】
あるいは、
図4(B)にも示すように、多重反射素子(ロッドレンズ)13の射出口をカラーホイール4の表面に対して僅かな角度(α)傾斜させる。これによっても、上記の実施例と同様、カラーホイール4上での反射光が、再び、多重反射素子(ロッドレンズ)13内に戻らないようにし、もって、当該放電ランプ1の温度の上昇を防止し、ランプの長寿命化を図る。なお、上述した傾斜角度(α)は、種々の実験の結果、1〜10度に設定することにより所要の効果を得ることを確認し、また、光の外部への漏出により光の利用効率の低減をも考慮して、特に、1〜3度に設定することが好ましいことが分かった。
【0028】
続いて、光がカラーホイール4を射出した後、TIRプリズム9を透過してDMD10の表面に至るまでの光学系を、即ち、照明光学系を構成する照明光学要素について、その配置関係を含めた設計手法と共に、以下に詳細に説明する。なお、照明光学要素は、本実施例では、上述したように、複数のリレーレンズ5、12、8を含んで構成されている。
【0029】
なお、ここでは、本発明の理解のため、まず、従来技術における問題点について説明する。即ち、従来技術になる投写型映像表示装置では、空間変調素子(本実施例では、DMD10に対応する)は、発光面と実質的に共役な関係に配置されるものとし、その間に、回転型色フィルタからの出射光を集光して空間変調素子空間変調素子を照射する照明光学要素が設けられている。なお、当該発光面とは、上記空間変調素子を構成するガラスロッドにおける光の入射と反対側の出射面である。
【0030】
しかしながら、本発明の発明者等による検討によれば、投写型映像表示装置にかかる設計手法を採用した場合、空間変調素子を構成するガラスロッドの出射面から出た光は、その近傍に配置された回転型色フィルタ(本実施例では、カラーホイール4)上に投射され、その結果、回転型色フィルタの入射面とは反対側の面に発光面を形成する。そのため、ガラスロッドの出射面と回転型色フィルタとが極めて近接して配置されている場合には、ガラスロッドの出射面と回転型色フィルタの入射面とは反対側の面に形成される発光面とは一致する。
【0031】
しかしながら、ガラスロッドの出射面と回転型色フィルタとの接触を考慮した場合、これらの間にはある程度の隙間を設ける必要があり、かかる場合には、上述したように、ガラスロッドの発光面(即ち、出射面)と回転型色フィルタ上の発光面とは一致しなくなる。更には、上述したように、特に、カラーホイール4上で反射した赤外成分光の放電ランプ1への戻りを低減するため、多重反射素子(ロッドレンズ)13の射出口をカラーホイール4の表面に対して僅かな角度(α)傾斜させた場合(
図4(A)を参照)、又は、多重反射素子(ロッドレンズ)13の射出口をカラーホイール4の表面に対して僅かな角度(α)傾斜させた場合(
図4(B)を参照)には、多重反射素子(ロッドレンズ)13の射出口(即ち、発光面)とカラーホイール4の表面での発光面は、その大きさや形状においても、僅かではあるが変化してしまうこととなる。しかしながら、この僅かな変化により、その後の照明光学系(即ち、複数のリレーレンズ5、12、8やTIRプリズム9を含む)により空間変調素子であるDMD10上に投射される発光面の拡大像は、当該DMD10の実効的な光変調面(即ち、その上で光変調を行うことが出来る最大の面)と一致しなくなり、これでは、光の利用効率の低減を招いてしまうこととなる。
【0032】
そこで、本発明になる投写型映像表示装置における照明光学要素の設計手法について、以下に
図5(A)及び(B)を参照しながら、詳細に説明する。
【0033】
上述したように、放電ランプ1を含む光源から放射されて多重反射素子(ロッドレンズ)13を通り、その射出口から出射した光は、カラーホイール4上に投射され、入射面とは反対側の面に発光面31’(X軸方向=C’、Y軸方向=D’(C’/D’=C/D))を形成する。そこで、当該カラーホイール4上の発光面31’を基準として、上記照明光学要素である複数のリレーレンズ5、12、8を設計する。即ち、DMD10は、当該カラーホイール4上の発光面31’と実質的に共役な関係となるように配置されている。換言すれば、DMD10の実効的な光変調面(Y軸方向=F、Z軸方向=E)に対し、C’/D’=E/Fの関係を満たすこととなる。
【0034】
かかる設計手法によれば、カラーホイール4上の発光面31’をDMD10上の実効的な光変調面と、確実に一致させることが可能となり、投写型映像表示装置における光の利用効率を更に向上することが可能となり、更には、上記
図4(A)及び(B)に示したカラーホイール4上での赤外成分光の反射を低減する構造を採用した場合にいても、光の利用効率の更なる向上が可能となる。
【0035】
以上に詳述した本発明の実施の形態になる投写型映像表示装置では、カラーホイール4からの各色光により所望の画像を形成するための光変調素子の一例として、個々の微小ミラーの傾きを制御できる2次元ミラーアレイからなる、所謂、反射型光変調素子であるDMDを採用した構成について述べたが、本発明は、これに限定されることなく、これに代えて、例えば、強誘電性液晶パネルであり、ON/OFFの2つの状態をスイッチする双安定素子である液晶パネルを使用することも可能であり、なお、その場合には、照明光学系の一部を構成するTIRプリズム9は不要となろう。加えて、上述した投写型映像表示装置では、回転式の色フィルタであるカラーホイール4として、複数の透過型のカラーフィルタから構成されたものについて説明したが、本発明は、これに限定されることなく、これに代えて、例えば、反射型の色フィルタを用いることも可能である。
【0036】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細を説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成と置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加し、これを削除し、置換することも可能である。