(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるシート付コネクタの斜視図、
図2は本発明の第1の実施の形態におけるシート付コネクタの四面図、
図3は本発明の第1の実施の形態におけるシート付コネクタの断面図であって
図2におけるA−A矢視断面図である。なお、
図2において、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図であり、
図3において、(a)はケーブルを接続していない状態の図、(b)はケーブルを接続した状態の図である。
【0023】
図において、1は本実施の形態におけるシート付コネクタとしてのコネクタであって、具体的には、ケーブル用コネクタである。該コネクタ1は、図示されない回路基板等の基板の面に実装され、フレキシブル回路基板、フレキシブルフラットケーブル等と称され、相手方接続体としての平板状ケーブル101と嵌合し、該平板状ケーブル101が備える相手方端子としての図示されない導電線と電気的に接続するために使用される。また、前記平板状ケーブル101は、例えば、FPC、FFC等と称される平板状の可撓(とう)性ケーブルであるが、導電線を備える平板状のケーブルであれば、いかなる種類のものであってもよい。
【0024】
なお、本実施の形態において、コネクタ1の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、コネクタ1が図に示される姿勢である場合に適切であるが、コネクタ1の姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0025】
前記コネクタ1は、合成樹脂等の誘電性材料によって一体的に形成されたハウジング11と、金属等の導電性材料によって一体的に形成され、前記ハウジング11に保持され、平板状ケーブル101の導電線と電気的に接続する複数の端子61とを有する。
【0026】
そして、前記ハウジング11は、下部12、上部15、左右の側部16、並びに、前記下部12、上部15及び側部16の間に形成され、前方(
図2(c)における左方)から平板状ケーブル101の端部を挿入して嵌合するための嵌合部としての挿入口33を有する。前記下部12の下面は、コネクタ1が実装される基板の表面に対向する実装面である。本実施の形態においては、便宜上、前記挿入口33の入口側の面、すなわち、嵌合面をコネクタ1又はハウジング11の前面11aと呼び、前記挿入口33の奥側の面をコネクタ1又はハウジング11の後面11bと呼ぶこととする。
【0027】
また、前記ハウジング11には前記端子61が装填(てん)される端子受入溝14が複数形成されている。該端子受入溝14は、例えば、ピッチが約0.5〔mm〕で合計7本形成され、各端子受入溝14には端子61が1つずつ装填されるようになっている。各端子61は、
図3(a)に示されるように、前後方向に延在し、端子受入溝14内に固定される本体部66と、該本体部66の前端から斜め後方に向って延出する上腕部65と、前記本体部66の後端から後方に向って延出する基板接続部としてのテール部68とを有する。なお、必ずしもすべての端子受入溝14に端子61が装填される必要はなく、平板状ケーブル101の導電線の配列に対応させて、端子61を適宜省略することができる。
【0028】
そして、前記テール部68は、ハウジング11の後面11bより後方に延出し、その底面が基板の面に形成された図示されない接続パッドに、はんだ付等の導電性の固着手段によって固着される。これにより、端子61は、前記接続パッドに接続された図示されない導電トレースに電気的に接続される。また、上腕部65の自由端、すなわち、先端は、平板状ケーブル101の下面と接触する接触部65aとして機能する。
【0029】
また、平板状ケーブル101は、細長い帯状の形状を備える誘電性の薄板部材である基板部と、該基板部の一面に配設された複数本の図示されない導電線とを有する。なお、
図3(b)においては、平板状ケーブル101におけるコネクタ1の挿入口33に挿入される先端部の近傍部分のみが示されており、他の部分は省略されている。また、前記導電線は、例えば、銅等の導電性金属から成る箔(はく)状の線状体であり、所定のピッチ、例えば、0.5〔mm〕程度で並列に配設され、電気的絶縁性を示すフィルム状の絶縁層によって表面が被覆されているが、平板状ケーブル101における前端から所定の長さに亘(わた)る範囲では、前記絶縁層が除去され、導電線面が露出し、相手方端子として機能する。そして、導電線の露出した面が下側となるようにして、前記挿入口33に挿入されるものとする。
【0030】
ここで、上腕部65は、端子受入溝14内において上下方向に拘束されていないので、上下方向に変位可能となっている。そのため、上腕部65は、先端が自由端となっているカンチレバー状のばね部材として機能する。これにより、接触部65aは、上腕部65のばね部材としての機能によって、上下方向に弾性的に変位可能である。したがって、接触部65aは、上腕部65が発揮するばね力によって、平板状ケーブル101の下面において露出する相手方端子としての導電線に互いに押圧されるので、導電線との接触が確実に維持される。
【0031】
また、前記ハウジング11の側部16には、コネクタ1を基板に確実に取付けるための取付用補助金具71が取付けられている。該取付用補助金具71は、好ましくは、金属板に打抜き加工、折曲げ加工等の加工を施して形成されたものであり、その下端の底面が基板の面に接続される接続面として機能し、はんだ付等の固着手段によって基板の面に固着され、ハウジング11を基板に固定する部材である。これにより、コネクタ1の基板への取付が強固となり、コネクタ1が基板から離脱することが防止される。また、前記取付用補助金具71の本体部は、その一端がハウジング11の側部16に形成された補助金具固定凹部16aに収容されて固定される。
【0032】
本実施の形態においては、前記ハウジング11の上部15の上面にシート41が貼付されている。該シート41は、ノイズを抑制する部材であるから、ノイズの最も発生しやすい箇所、または最も影響を受ける箇所、すなわち、端子61と相手方端子との接触箇所に近接した部位に貼付することが望まれる。また、貼付作業の容易性を考慮すると、シート41をハウジング11の外面に貼付することが望まれる。また、コネクタ1は、図示されない基板の表面に実装されるとともに、平板状ケーブル101が挿入されて嵌合されるので、ハウジング11の実装面及び嵌合面にシート41を貼付することは、実質的に不可能である。そして、
図3(b)から分かるように、端子61の接触部65aは、ハウジング11の上部15に近接した位置で、相手方端子としての平板状ケーブル101の導電線と接触している。したがって、本実施の形態においては、ハウジング11の上部15の上面にシート41が貼付されることとなる。
【0033】
なお、図に示される例において、前記シート41は、前記上部15の上面のほぼ全体を覆うように貼付されているが、必ずしも、上部15の上面の全体を覆う必要はなく、端子61と、相手方端子としての平板状ケーブル101の導電線との接触箇所の真上に対応する部分を覆っていればよい。
【0034】
つまり、
図3に示される例では、シート41は、上部15の上面における前端から後端までの範囲を覆っているが、接触部65aが平板状ケーブル101の下面において露出する相手方端子としての導電線と接触する箇所の直上に位置する上部15の上面の部分のみをシート41が覆っていてもよい。換言すると、シート41は、端子61と相手方端子との接触箇所の真上に対応する部分を少なくとも覆うように、上部15の上面に貼付されていればよい。
【0035】
また、上部15の上面だけでなく、例えば、側部16の側面、後面11b等にもシート41を貼付してもよい。つまり、該シート41は、端子61と相手方端子との接触箇所の真上に対応する部分を少なくとも覆うように、上部15の上面に貼付されていれば、ハウジング11の外面におけるその他の部分(実装面及び嵌合面は除く)に更に貼付されていてもよい。換言すると、シート41は、ハウジング11の外面であって端子61と相手方端子との接触箇所の真上に対応する部分を少なくとも覆うように貼付されていれば、ハウジング11の外面におけるその他の部分に更に貼付されていてもよい。
【0036】
次に、前記シート41の構成について詳細に説明する。
【0037】
本発明におけるシートは、導電性フィラーと樹脂とからなる導電誘電層に、軟磁性粉末と樹脂とからなる軟磁性層を積層した電磁波干渉抑制体であって、前記導電誘電層の表面電気抵抗が0.5〜20Ω・cmであり、前記軟磁性層の100MHzの複素比透磁率の実数部が20〜45であることを特徴とする電磁波干渉抑制体である。
【0038】
図4は本発明の第1の実施の形態におけるシートの層構造を示す模式断面図である。
【0039】
図に示されるように、シート41は、軟磁性層42と導電誘電層43とを積層して成る2層構造を有する。なお、前記導電誘電層43の下には、粘着層44が付加され、さらに、該粘着層44の下には剥(はく)離紙45が付加されているが、前記粘着層44は、シート41をハウジング11の外面に貼付するために便宜的に付加されたものであり、前記剥離紙45は、粘着層44が不必要に他の部材に付着することを防止するために便宜的に付加されたものであって、いずれも適宜省略することができる。また、前記シート41の厚さは、例えば、約100〔μm〕であるが、適宜変更することができる。さらに、前記シート41は、任意の平面形状、任意のサイズに裁断することができる。なお、本実施の形態においては、軟磁性層と導電誘電層の2層構造のシートを備えるが、軟磁性層を複数層にしたり、導電誘電層を複数層にしたり、さらにそれらを組み合わせてもよく、少なくとも軟磁性層と導電誘電層が各1層を備えるシートであればよい。
【0040】
前記軟磁性層42は、樹脂から成るマトリックス(母材)に磁性体が充填された材料から成り、前記導電誘電層43は、樹脂から成るマトリックスに誘電体が充填された材料から成る。なお、前記軟磁性層42及び導電誘電層43のマトリックスである樹脂は、熱硬化性樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等である。 そして、軟磁性層42の磁性体は、マグネタイト(磁鉄鉱)、Ni−Zn系フェライト、Mn−Zn系フェライト等のフェライト、又は、センダスト、ケイ素鋼若しくはカルボニル鉄である。また、導電誘電層43の誘電体は、導電性カーボン又はグラファイトである。さらに、軟磁性層42及び導電誘電層43のバインダーは、フェノール樹脂系接着剤であって、シート41が貼付されたコネクタ1を基板に実装する際に行われる約240〔℃〕のはんだリフロー工程にも耐え得るように、耐熱温度が約160〔℃〕となっている。また、耐熱温度が低い場合は、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル熱可塑性系エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、シリコーン系エラストマー等を用いてもよい。
【0041】
さらに、本実施の形態においては、シート41が貼付されたコネクタ1を基板に実装する際に行われる約240〔℃〕のはんだリフロー工程にも耐え得るように、軟磁性層42と導電誘電層43とを熱圧着しているが、前記軟磁性層42と導電誘電層43とは、いかなる方法で接合してもよく、例えば、接着剤(フェノール樹脂系接着剤等)を使用して接合してもよい。
【0042】
また、前記粘着層44は、アクリル樹脂系接着剤又はエポキシ樹脂系接着剤から成る。アクリル樹脂系接着剤から成る粘着層44は、耐熱温度が比較的低く、約80〔℃〕であり、また、粘着力が比較的弱く、さらに、導電誘電層43側の面(図における上側面)とハウジング11に貼付される面(図における下側面)とでは粘着力が異なり、後者の方がより粘着力が弱く、剥離しやすくなっている。一方、熱硬化性樹脂型接着剤であるエポキシ樹脂系接着剤から成る粘着層44は、耐熱温度が比較的高く、約240〔℃〕のはんだリフロー工程にも耐え得るように約160〔℃〕であり、また、粘着力が比較的強い。
【0043】
そして、シート41における軟磁性層42及び導電誘電層43の並び方は、図に示されるように、ハウジング11の外面に粘着される粘着層44の側から、導電誘電層43の次に軟磁性層42、という順番である。つまり、シート41をハウジング11の外面に貼付した状態で、誘電性材料から成るハウジング11に隣接して導電誘電層43が存在し、該導電誘電層43に隣接して軟磁性層42が存在するように積層されており、軟磁性層42は周波数100MHzの透磁率の実数部μr’が20〜45であり、導電誘電層は四探針法(JIS K 7194―1994)の電気抵抗値が0.5〜20Ω・cmとなっている。
【0044】
また、導電誘電層43の誘電率は、ハウジング11の誘電率より高くなるように設定されている。前記導電誘電層43の比誘電率実数部(εr‘)は、周波数1〔GHz〕で測定すると、50〜160である。そして、透磁率及び誘電率の測定は外径7〔mm〕、内径3〔mm〕、厚み1.4〜2.5〔mm〕の円筒ドーナッツ状の測定用成型体を同軸管Sパラメータ測定により求めている。
【0045】
このような構造のシート41を、ハウジング11の外面であって端子61と相手方端子との接触箇所に最も接近した箇所を少なくとも覆うように、ハウジング11の外面に貼付することによって、端子61及び相手方端子に信号が伝送されることにより生じるノイズを効果的に抑制することができる。なお、前記シート41は、平板状ケーブル101が含む図示されないグランドライン、図示されない基板が含むグランドライン、前記基板が装着された機器の金属シャーシ等に接続されていない。つまり、前記シート41は、接地されていない。
【0046】
ここに、信号伝送線路にシートを貼付した場合は、伝送信号の反射(S11)と近傍における電界強度及び磁界強度はトレードオフの関係になる。すなわち、シートをハウジングに貼付にしたことによるインピーダンス変化に応じて反射(S11)が増加するため伝送信号が減衰する、これに伴いコネクタ1の近傍における電界強度と磁界強度は低下するが、S11の増加は信号伝送の障害となる。一方、有限サイズのシートが伝送線路に伝搬する信号の1/4波長と共振したとき、貼付したシートがアンテナ放射するので、近傍の電界強度及び磁界強度が大きくなる。
【0047】
本願発明の発明者は鋭意検討の結果、反射(S11)を−10dB以下に抑制すると共に近傍における電界強度と磁界強度を低下させ、さらにアンテナ放射を抑制するコネクタ構造を実現させた。
【0048】
次に、前記シート41を使用した実験例について説明する。
【0049】
図5は本発明の第1の実施の形態におけるシートを貼付したコネクタ近傍の電界強度及び磁界強度を測定するための装置の概要を説明する図、
図6は本発明の実施の形態における測定値を示す表である。
【0050】
図5に示されるような装置を用い、シート41をハウジング11の上部15の上面に貼付した場合にコネクタ1の近傍における電界強度及び磁界強度の減衰と反射(S11)を測定した。
【0051】
図において、80は検査対象部であり、一対の基板91と、各基板91の表面に実装されたコネクタ1と、両端が各コネクタ1に接続された平板状ケーブル101とを含んでいる。そして、一方(図における左方)のコネクタ1におけるハウジング11の上部15の上面には、シート41が貼付されている。
【0052】
また、コネクタ1の端子61のテール部68が導通している基板91の導電トレース92の1本には、信号発生器81が接続されている。該信号発生器81は、所定の周波数の信号を発生する機器であり、これにより、1本の導電トレース92、該導電トレース92に接続された端子61、該端子61と接触している平板状ケーブル101の導電線を通って所定の周波数の信号が伝送される。
【0053】
そして、コネクタ1の近傍における電界強度及び磁界強度は、プローブ85によって検出され、測定装置であるEMI(Electro Magnetic Interference)テスタ82に送信される。シート41が貼付されているコネクタ1の近傍における電界強度及び磁界強度と、シート41が貼付されていないコネクタ1の近傍における電界強度及び磁界強度とを測定して比較することによって、シート41による電界強度及び磁界強度の減衰を測定することができる。
【0054】
また、83は、EMIテスタ82に接続されたスペクトラムアナライザ(Spectrum Analyzer)であって、プローブ85によって検出された電界強度及び磁界強度の周波数分布を表示することができる。さらに、84は、EMIテスタ82及びスペクトラムアナライザ83に接続されたパーソナルコンピュータ等の端末装置であって、EMIテスタ82及びスペクトラムアナライザ83の動作を制御するとともに、EMIテスタ82及びスペクトラムアナライザ83の測定データを記憶手段に保存する。
【0055】
シートの製作は、導電性炭素繊維(以下、炭素繊維と呼ぶ)をスチレン系熱可塑性エラストマと混合した。本発明では炭素繊維(繊維径1〜2μm、長さ約300μm、比重2.3)を用いた。
【0056】
導電誘電シートの作製は、スチレン系熱可塑性エラストマを有機溶剤シクロヘキサノンに溶解した溶液に、炭素繊維の添加し、ホモミキサーで撹拌混合し液体塗料を作製した。溶剤乾燥後の厚みが30μmとなるようにポリエステルフィルムに塗工,溶剤乾燥後に温度120℃、圧力100kg/cm
2で加圧成形し、電気抵抗が0.5Ω・cm、2.0Ω・cm、5.0Ω・cm、10.0Ω・cm、14.0Ωcm、厚み20μmの5水準の導電誘電シートを得た。尚、電気抵抗を変化させるために、導電性炭素繊維の含有量を変化させた。
【0057】
磁性シートは、軟磁性扁平金属粉末(Fe−Si−Al合金、平均板径40μm,平均厚み1μm)を導電誘電シート同様に添加し、スチレン系熱可塑性エラストマーに混合、塗工・乾燥後に加圧成形し80μmの磁性シート3水準作の磁性シートを作製した。磁性シートの100MHzにおける複素比透磁率実数部μr‘は25、30、40、であった。尚、複素比透磁率を変化させるために、軟磁性扁平金属粉末の含有量を変化させた。
【0058】
得られた導電誘電シートと軟磁性シートを積層したシートをコネクタハウジング11の上部に貼付したときの近傍の電界強度と磁界強度及び反射(S11)を測定した。
【0059】
図6に、実施例1〜6、比較例1〜5のシートの構成と、導電誘電シートと軟磁性シートからなる積層シート41をコネクタハウジングに貼付した近傍の電界強度と磁界強度及び反射(S11)を測定した結果が示されている。
【0060】
なお、実施例に示される測定値、減衰はシートを貼付しない状態を基準とし単位は(dB)であり−(マイナス)標記は減衰量を示し、そして正の標記はアンテナ放射である。さらに、反射(S11)を示す単位は(dB)である。
【0061】
実施例1)
導電誘電シート厚み20μm、電気抵抗14Ω・cmと軟磁性シート厚み80μm、100MHzの透磁率μr‘が25を積層したシート41をハウジング11の上部に貼付したときのハウジング近傍の100〜3000MHz電界強度は、0〜−2.2dBの減衰を示し、100〜3000MHzの磁界強度は0〜−2.1dBの減衰であり、全ての周波数帯でアンテナ放射は無い。100〜3000MHzの反射(S11)は−13.1〜−21.1dBであり、信号伝送性も問題無く、優れた特性を示した。
【0062】
実施例2)
導電誘電シート厚み20μm、電気抵抗5Ω・cmと軟磁性シート厚み80μm、100MHzの透磁率μr‘が30を積層したシート41をハウジング11の上部に貼付したときのハウジング近傍の100〜3000MHz電界強度は、−0.1〜−1.8dBの減衰を示し、100〜3000MHzの磁界強度は−0.2〜−3.0dBの減衰であり、全ての周波数帯でアンテナ放射は無い。100〜3000MHzの反射(S11)は−11.2〜−18.4dBであり、信号伝送性も問題無く、優れた特性を示した。
【0063】
実施例3)
導電誘電シート厚み20μm、電気抵抗10Ω・cmと軟磁性シート厚み80μm、100MHzの透磁率μr‘が40を積層したシート41をハウジング11の上部に貼付したときのハウジング近傍の100〜3000MHz電界強度は、0〜−2.6dBの減衰を示し、100〜3000MHzの磁界強度は0〜−2.0dBの減衰であり、全ての周波数帯でアンテナ放射は無い。100〜3000MHzの反射(S11)は−14.3〜−22.1dBであり、信号伝送性も問題無く、優れた特性を示した。
【0064】
実施例4)
導電誘電シート厚み20μm、電気抵抗2Ω・cmと軟磁性シート厚み80μm、100MHzの透磁率μr‘が40を積層したシート41をハウジング11の上部に貼付したときのハウジング近傍の100〜3000MHz電界強度は、−0.1〜−2.7dBの減衰を示し、100〜3000MHzの磁界強度は0〜−3.1dBの減衰であり、全ての周波数帯でアンテナ放射は無い。100〜3000MHzの反射(S11)は−12.8〜−20.2dBであり、信号伝送性も問題無く、優れた特性を示した。
【0065】
実施例5)
導電誘電シート厚み20μm、電気抵抗0.5Ω・cmと軟磁性シート厚み80μm、100MHzの透磁率μr‘が40を積層したシート41をハウジング11の上部に貼付したときのハウジング近傍の100〜3000MHz電界強度は、−1.2〜−4.0dBの減衰を示し、100〜3000MHzの磁界強度は−1.0〜−3.0dBの減衰であり、全ての周波数帯でアンテナ放射は無い。100〜3000MHzの反射(S11)は−10.4〜−19.3dBであり、信号伝送性も問題無く、優れた特性を示した。
【0066】
比較例1)
銅製の導電性金属から成る箔(はく)厚み20μmをハウジング11に貼付したときのハウジング近傍の電界強度と磁界強度及び反射(S11)を測定した。その結果、100〜3000MHzの反射S11が−1.6〜−8.7dBと大きいためシグナルインテグリティが低下した。
【0067】
比較例2)
比較例1同様に銅製の導電性金属から成る箔(はく)厚み20μmをハウジング11に添付し、銅箔とグランドを接続したときのハウジング近傍の電界強度と磁界強度及び反射(S11)を測定した。その結果、100〜3000MHzの反射S11が−2.7〜−18.5dBであり、グランド接続の効果は認められるが、反射(S11)が大きい帯域が存在するためシグナルインテグリティが低下する。
【0068】
比較例3)
導電性炭素繊維の添加を高くした導電誘電シート、厚み30μm、電気抵抗0.3Ω・cmをハウジング11の上部に貼付したときの100〜3000MHzの近傍電界強度と磁界強度及び反射S11を測定した。反射S11が−5.3〜−13.1dBであり、比較例1及び2同様シグナルインテグリティが低下する。
【0069】
比較例4)
実施例5の導電誘電シート単層(軟磁性シートなし)、厚さ20μmをハウジング11の上部に貼付したときの100〜3000MHzの近傍電界強度と磁界強度及び反射S11を測定した。反射S11が −7.9〜−9.2dBであり、比較例1及び2同様シグナルインテグリティが低下する。
【0070】
比較例5)
軟磁性扁平金属粉末(Fe−Si−Al合金,平均板径40μm,平均厚み1μm)の添加を高くした軟磁性シート単層(導電誘電シートなし)、厚さ100μm、100MHzの複素比透磁率実数部μr‘100をハウジング11の上部に貼付したときの100〜3000MHzの近傍電界強度と磁界強度及び反射S11を測定した。反射S11が −12.7〜−19.3dB、近傍の電界強度が0.6〜−4.4、近傍の磁界強度は1.7〜−6.0であり3000MHzにおいて磁界放射が確認された。
【0071】
得られたシートの諸特性を
図6(表)に示す。
【0072】
本発明におけるシートはいずれも、3000MHzの電界強度において、減衰が−0.7〜−4.0dBであり、磁界強度において−1.4〜−3.0dBと電界と磁界の両方を減衰するものである。そして、反射S11が−15.0dBより小さいものであり、総合的なバランスに優れたものである。
【0073】
これにより、簡単な構造でありながら、確実にノイズを抑制することができ、シグナルインテグリティへの影響を抑制することができる。さらなる高性能化や抑制周波数を調整するために、例えば本積層シートを複数に積層したり、各層の厚みを調整してもよい。
また、コネクタ1のコストを低減することができ、耐久性を向上させ、信頼性を高めることもできる。
【0074】
また、シート41は、ハウジング11に隣接して導電誘電層43が存在し、導電誘電層43に隣接して軟磁性層42が存在するように積層されている。したがって、コネクタ1の近傍における電界強度及び磁界強度を効果的に減衰させることができ、確実にノイズを抑制することができる。
【0075】
さらに、シート41は、端子61と相手方端子としての導電線との接触箇所の真上に対応する部分を少なくとも覆うように、ハウジング11の外面に貼付される。これにより、ノイズが発生しやすい端子61と導電線との接触箇所に近接した部位にシート41を配設することができ、より効果的にノイズを抑制することができる。
【0076】
さらに、シート41は、ハウジング11の外面であって、嵌合面及び実装面を除く面に貼付される。これにより、容易にシート41を貼付することができ、コネクタ1のコストを低減することができる。
【0077】
さらに、ハウジング11は誘電性材料から成り、導電誘電層43の誘電率はハウジング11の誘電率よりも高い。これにより、コネクタ1の近傍における電界強度を効果的に減衰させることができ、より確実にノイズを抑制することができる。
【0078】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0079】
図7は本発明の第2の実施の形態におけるシート付コネクタの斜視図、
図8は本発明の第2の実施の形態におけるシート付コネクタの三面図、
図9は本発明の第2の実施の形態におけるシート付コネクタの断面図であって
図8におけるB−B矢視断面図である。なお、
図7において、(a)はシートを貼付した後の状態を示す図、(b)はシートを貼付する前の状態を示す図であり、
図8において、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0080】
図において、201は本実施の形態におけるシート付コネクタとしてのコネクタであって、具体的には、ケーブル用コネクタである。該コネクタ201は、図示されない回路基板等の基板の面に実装され、前記第1の実施の形態と同様に、相手方接続体としての平板状ケーブル101と嵌合し、該平板状ケーブル101が備える相手方端子としての図示されない導電線と電気的に接続するために使用される。
【0081】
前記コネクタ201は、合成樹脂等の誘電性材料によって一体的に形成されたハウジング211と、金属等の導電性材料によって一体的に形成され、平板状ケーブル101の図示されない導電線と電気的に接続する複数の端子261とを有する。なお、前記ハウジング211は、固定的なハウジング本体217と、該ハウジング本体217に姿勢変化可能に取付けられたアクチュエータ221とを含んでいる。すなわち、該アクチュエータ221は、回転して姿勢を変化させ、第1位置としての開位置及び第2位置としての閉位置になるように前記ハウジング本体217に取付けられている。
【0082】
そして、該ハウジング本体217は、下部212、上部215、左右の側部216、並びに、前記下部212、上部215及び側部216の間に形成され、前方(
図8(c)における左方)から平板状ケーブル101の端部を挿入して嵌合するための嵌合部としての挿入口233を有する。前記下部212の下面は、コネクタ201が実装される基板の表面に対向する実装面である。本実施の形態においては、便宜上、前記挿入口233の入口側の面、すなわち、嵌合面をコネクタ201又はハウジング211の前面211aと呼び、前記挿入口233の奥側の面をコネクタ201又はハウジング211の後面211bと呼ぶこととする。
【0083】
また、前記ハウジング本体217には端子261が装填される端子受入溝214が複数形成されている。該端子受入溝214は、例えば、ピッチが約0.5〔mm〕で合計14本形成され、各端子受入溝214には端子261が1つずつ装填されるようになっている。なお、必ずしもすべての端子受入溝214に端子261が装填される必要はなく、平板状ケーブル101の導電線の配列に対応させて、端子261を適宜省略することができる。
【0084】
前記ハウジング本体217の側部216には、平板状ケーブル101の挿抜方向に延在するスリット状の補助金具収容凹部216aが形成され、コネクタ1を基板に確実に取付けるための取付用補助金具281が前記補助金具収容凹部216aに挿入されてハウジング211に取付けられる。前記取付用補助金具281は、好ましくは、金属板に打抜き加工、折曲げ加工等の加工を施して形成されたものであり、その下端の底面が基板の面に接続される接続面として機能し、はんだ付等の固着手段によって基板の面に固着され、ハウジング211を基板に固定する部材である。これにより、コネクタ201の基板への取付が強固となり、コネクタ201が基板から離脱することが防止される。
【0085】
また、前記アクチュエータ221は、略方形の厚板状の部材であるアクチュエータ胴体部222、該アクチュエータ胴体部222の下面に形成された押圧部223を有する。該押圧部223は、アクチュエータ221が閉位置になったときに、前記挿入口233から挿入された平板状ケーブル101を下方、すなわち、下部212の方向に向けて押圧する部分である。なお、押圧部223におけるアクチュエータ221が閉位置になったときの下側の面は、ケーブル押圧面であり、挿入口233から挿入された平板状ケーブル101の上側の面、すなわち、導電線の露出する側と反対側の面に当接する。また、前記押圧部223は、アクチュエータ221が開位置となったときには、平板状ケーブル101の挿抜を可能にする。
【0086】
さらに、前記押圧部223における後端側の部分(
図9における右端側)には、前記端子261の上腕部263を収容するための収容溝224が複数形成されている。なお、該収容溝224の数及び位置は、前記端子受入溝214と対応する。また、前記アクチュエータ221は、各収容溝224内を横断し、押圧部223同士を連結して幅方向に延在する軸部248を有する。該軸部248の収容溝224内に位置する部分は、端子261の上腕部263と係合する。
【0087】
前記端子261は金属板を打抜くことによって形成され、ハウジング211の幅方向(
図8(a)及び(b)における左右方向)に1列に並ぶように配列され、装填される。そして、前記端子261は、その後端部分に位置し、上下方向に延在する本体部266と、該本体部266の上端から前方(
図8(c)における左方)に向かって延出するアクチュエータ保持腕部としての上腕部263と、前記本体部266の下端から下方に向かって延出する基板接続部としてのテール部268と、前記本体部266の下端から前方に向かって延出する下腕部265とを有する。
【0088】
該下腕部265は、上腕部263と対向して配設されている。そして、下腕部265の自由端、すなわち、先端には、アクチュエータ221が閉位置になったときに、平板状ケーブル101の導電線と接触する接触部265aが形成されている。また、前記下腕部265は、後端が本体部266に拘束され、かつ、先端が自由端となっているカンチレバー状のばね部材として機能する。
【0089】
図9に示されるように、ハウジング本体217の下部212における下腕部265の先端に対応する部位には、前記下部212を厚さ方向に貫通する開口であるハウジング下部開口219bが形成されている。したがって、下腕部265の先端は、拘束されることなく、上下方向に変位可能となっている。これにより、接触部265aは、下腕部265が発揮するばね力によって、平板状ケーブル101の導電線に押圧されるので、導電線との接触が確実に維持される。
【0090】
なお、ハウジング本体217の上部215と、閉位置にあるアクチュエータ221のアクチュエータ胴体部222との間には、間隙(げき)としてハウジング上部開口219aが形成されている。該ハウジング上部開口219aは、ハウジング211の前後方向(
図8(c)における左右方向)に関して、ハウジング下部開口219bとほぼ対応する部位に位置する。したがって、アクチュエータ221が閉位置になったときに、各端子261に対応する端子受入溝214において、接触部265aの上下は、ハウジング上部開口219a及びハウジング下部開口219bが位置するので、開放された状態となっている。つまり、端子261と相手方端子としての平板状ケーブル101の導電線との接触箇所の上下には、ハウジング211が存在していない。
【0091】
本実施の形態において、シート41は、ハウジング211が含むアクチュエータ221のアクチュエータ胴体部222の上面に貼付され、かつ、アクチュエータ胴体部222の上面から後方に延出するようにはみ出た部分がハウジング上部開口219aを閉止するように覆っている。前記シート41は、ノイズを抑制する部材であるから、ノイズの最も発生しやすい箇所、すなわち、端子261と相手方端子との接触箇所に近接した部位に貼付することが望まれる。また、貼付作業の容易性を考慮すると、シート41をハウジング211の外面に貼付することが望まれる。また、コネクタ201は、図示されない基板の表面に実装されるとともに、平板状ケーブル101が挿入されて嵌合されるので、ハウジング211の実装面及び嵌合面にシート41を貼付することも、実質的に不可能である。そして、
図9から分かるように、端子261の接触部265aは、ハウジング上部開口219aに対応した位置で、相手方端子としての平板状ケーブル101の導電線と接触している。したがって、本実施の形態においては、ハウジング上部開口219aを覆うように、アクチュエータ胴体部222の上面にシート41が貼付されることとなる。
【0092】
なお、図に示される例において、前記シート41は、アクチュエータ221のアクチュエータ胴体部222の上面に貼付されているが、必ずしも、アクチュエータ胴体部222の上面である必要はなく、例えば、ハウジング本体217の上部215の上面に貼付され、該上部215の上面から前方に延出するようにはみ出た部分がハウジング上部開口219aを覆うようにしてもよい。すなわち、端子261と、相手方端子としての平板状ケーブル101の導電線との接触箇所の真上に対応する部分をシート41が覆っていればよい。換言すると、シート41は、端子261と相手方端子との接触箇所の真上に対応する部分を少なくとも覆うように、ハウジング211の外面に貼付されていればよい。
【0093】
なお、その他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0094】
このように、本実施の形態において、コネクタ201は、平板状ケーブル101と嵌合するハウジング211と、ハウジング211に保持され、平板状ケーブル101の相手方端子としての導電線と接触する端子261と、ハウジング211に貼付されるシート41とを有し、シート41は、軟磁性層42と導電誘電層43とを積層して成る層構造を備える。
【0095】
これにより、簡単な構造でありながら、確実にノイズを抑制することができ、シグナルインテグリティへの影響を抑制することができる。また、コネクタ201のコストを低減することができ、耐久性を向上させ、信頼性を高めることもできる。
【0096】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0097】
図10は本発明の第3の実施の形態におけるシート付コネクタの斜視図、
図11は本発明の第3の実施の形態におけるシート付コネクタの三面図、
図12は本発明の第3の実施の形態におけるシート付コネクタと相手方コネクタとの嵌合作業を説明する図、
図13は本発明の第3の実施の形態におけるシート付コネクタと相手方コネクタとが嵌合した状態を示す図である。なお、
図10において、(a)はシートを貼付した後の状態を示す図、(b)はシートを貼付する前の状態を示す図であり、
図11において、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図であり、
図12において、(a)は相手方コネクタを示す斜視図、(b)はシート付コネクタを示す斜視図、(c)はシート付コネクタと相手方コネクタとが嵌合した状態を示す斜視図であり、
図13において、(a)は平面図、(b)は断面図であって(a)におけるC−C矢視断面図である。
【0098】
図において、301は本実施の形態におけるシート付コネクタとしてのコネクタであって、具体的には、基板対基板コネクタの一方としてのコネクタである。該コネクタ301は、図示されない回路基板等の基板の面に実装され、図示されない相手方基板の面に実装される基板対基板コネクタの他方である相手方接続体としての相手方コネクタ401と嵌合して電気的に接続するために使用される。
【0099】
そして、前記コネクタ301は、合成樹脂等の誘電性材料によって一体的に形成されたハウジング311と、金属等の導電性材料によって一体的に形成され、相手方コネクタ401の相手方端子461と電気的に接続する複数の端子361とを有する。
【0100】
前記ハウジング311は、図に示されるように、概略直方体である概略長方形の厚板状の形状を備え、相手方コネクタ401が嵌入される側、すなわち、嵌合側(
図11(b)における上側)には、周囲が囲まれた概略長方形の凹部312が形成されている。そして、該凹部312内には島部としての凸部313がハウジング311と一体的に形成され、また、前記凸部313の両側には該凸部313と平行に延在する側壁部315がハウジング311と一体的に形成されている。この場合、前記凸部313及び側壁部315は、凹部312の底面から上方に向けて突出し、ハウジング311の長手方向に延在する。これにより、前記凸部313の両側には、凹部312の一部として、ハウジング311の長手方向に延在する細長い挿入凹部である凹溝部312aが凸部313と側壁部315との間に形成される。なお、図に示される例において、前記凸部313は単数であるが、複数であってもよく、その数はいくつであってもよい。
【0101】
ここで、前記凸部313の両側の側面には凹溝状の端子収容キャビティ314が形成され、前記側壁部315には上面及び両側の側面に跨(またが)るようにして凹溝状の端子収容キャビティ314が形成されている。なお、前記凸部313に形成された端子収容キャビティ314と側壁部315に形成された端子収容キャビティ314とは、凹溝部312aの底面において連結され互いに一体化している。
【0102】
前記端子収容キャビティ314は、例えば、約0.4〔mm〕のピッチで左右両側に20個ずつ形成され、各端子収容キャビティ314には端子361が1つずつ装填されるようになっている。なお、必ずしもすべての端子収容キャビティ314に端子361が装填される必要はなく、相手方端子461の配列に対応させて、端子361を適宜省略することができる。
【0103】
該端子361は、導電性の金属板に打抜き、曲げ等の加工を施すことによって一体的に形成された部材であり、本体部366と、該本体部366の下端に接続されたテール部368と、前記本体部366の上端に接続された上腕部363と、該上腕部363に接続された下腕部365とを有する。
【0104】
そして、前記本体部366は、上下方向、すなわち、ハウジング311の厚さ方向に延在し、側壁部315に形成された端子収容キャビティ314に嵌入されて保持される部分である。また、前記テール部368は、本体部366に対して曲げて接続され、基板上の導電トレースに連結された接続パッドにはんだ付等によって接続される。さらに、前記下腕部365は、上腕部363の内方端に下方に向けて曲げられ、かつ、U字状の側面形状を備える部分である。そして、下腕部365の自由端、すなわち、先端には、相手方コネクタ401と嵌合したときに相手方端子461と接触する接触部としての第1接触部365a1が形成されている。また、下腕部365の基端、すなわち、上腕部363に接続される側の端部には、相手方コネクタ401と嵌合したときに相手方端子461と接触する接触部としての第2接触部365a2が、前記第1接触部365a1と対向して、形成されている。
【0105】
なお、前記端子361は、金属板に加工を施すことによって一体的に形成された部材であるので、ある程度の弾性を備える。そして、下腕部365の形状から明らかなように、互いに向合う第1接触部365a1と第2接触部365a2との間隔は、弾性的に変化可能である。すなわち、第1接触部365a1と第2接触部365a2との間に相手方コネクタ401の相手方端子461が挿入されると、それにより、第1接触部365a1と第2接触部365a2との間隔は弾性的に伸長する。
【0106】
また、前記ハウジング311の長手方向両端には嵌合ガイド部としての突出端部321が各々配設されている。各突出端部321には、前記凹部312の一部として突出端凹部322が形成されている。該突出端凹部322は、略長方形の凹部であり、各凹溝部312aの長手方向両端に接続されている。そして、前記突出端凹部322は、コネクタ301及び相手方コネクタ401が嵌合された状態において、該相手方コネクタ401が備える相手方突出端部422が挿入されるガイド凹部として機能する。
【0107】
本実施の形態において、シート41は、ハウジング311の側壁部315及び突出端部321の外側の側面に貼付され、ハウジング311の側面を全周に亘って覆っている。つまり、コネクタ301の嵌合面(
図11(b)における上面)及び実装面(
図11(b)における下面)を除いて、側面のほぼ全面を覆うように、貼付されている。したがって、
図10(a)及び(b)を比較すると明らかなように、側壁部315の外側の側面に形成された端子収容キャビティ314及び該端子収容キャビティ314内に収容された端子361の本体部366は、シート41によって覆われている。
【0108】
前記相手方コネクタ401は、合成樹脂等の誘電性材料によって一体的に形成された相手方ハウジング411と、金属等の導電性材料によって一体的に形成され、コネクタ301の端子361と電気的に接続する複数の相手方端子461とを有する。
【0109】
前記相手方ハウジング411は、
図12に示されるように、概略直方体である概略長方形の厚板状の形状を備え、コネクタ301に嵌入される側、すなわち、嵌合側(
図13(b)における下側)には、相手方ハウジング411の長手方向に延在する細長い凹溝部413と、該凹溝部413の外側を画定するとともに、相手方ハウジング411の長手方向に延在する細長い挿入凸部としての相手方凸部412とが一体的に形成されている。該相手方凸部412は、凹溝部413の両側に沿って、かつ、相手方ハウジング411の両側に沿って形成されている。また、各相手方凸部412には、相手方端子461が配設されている。凹溝部413は、相手方基板に実装される側、すなわち、実装側(
図13(b)における上側)の面が閉止されている。なお、図に示される例において、相手方凸部412は2本であるが、単数であってもよく、その数はいくつであってもよい。
【0110】
なお、前記相手方凸部412には、その両側の側面及び上面に跨るようにして端子収容キャビティ414が形成され、前記相手方端子461は端子収容キャビティ414内に収容される。該端子収容キャビティ414は、凹溝部413の左右両側に、例えば、約0.4〔mm〕のピッチで20個ずつ形成され、各端子収容キャビティ414には相手方端子461が1つずつ装填されるようになっている。なお、必ずしもすべての端子収容キャビティ414に相手方端子461が装填される必要はなく、端子361の配列に対応させて、相手方端子461を適宜省略することができる。
【0111】
前記相手方端子461は、導電性の金属板に打抜き、曲げ等の加工を施すことによって一体的に形成された部材であり、第2接触部としても機能する本体部466と、該本体部466の下端に接続されたテール部468と、前記本体部466の上端に接続された腕部465とを有する。
【0112】
そして、前記本体部466は、上下方向、すなわち、相手方ハウジング411の厚さ方向に延在し、前記端子収容キャビティ414に嵌入されて保持されるとともに、端子361の第2接触部365a2と接触する部分である。また、前記テール部468は、本体部466に対して曲げて接続され、相手方基板上の導電トレースに連結された接続パッドにはんだ付等によって接続される。さらに、前記腕部465は、本体部466に対して曲げて接続され、かつ、L字状の側面形状を備える部分である。そして、腕部465には、端子361の第1接触部365a1が接触する。
【0113】
また、前記相手方ハウジング411の長手方向両端には相手方嵌合ガイド部としての相手方突出端部422が各々配設されている。該相手方突出端部422は、相手方ハウジング411の短手方向に延在し、両端が各相手方凸部412の長手方向両端に接続された肉厚の部材であり、その上面は略長方形の平面である。そして、前記相手方突出端部422は、コネクタ301及び相手方コネクタ401が嵌合された状態において、前記コネクタ301が備える突出端部321の突出端凹部322に挿入される部分である。
【0114】
なお、相手方ハウジング411には、シート41が貼付されていない。
【0115】
前記コネクタ301と相手方コネクタ401とを嵌合する場合には、
図12(a)及び(b)に示されるように、コネクタ301の嵌合面と相手方コネクタ401の嵌合面とを対向させた状態とし、相手方コネクタ401の左右の相手方凸部412の位置がコネクタ301の左右の凹溝部312aの位置と合致し、かつ、相手方コネクタ401の相手方突出端部422のそれぞれの位置がコネクタ301の突出端凹部322のそれぞれの位置と合致するように位置合せを行う。この場合、コネクタ301及び相手方コネクタ401は、あらかじめ基板及び相手方基板の表面に実装されているのが一般的であるが、ここでは、説明の都合上、基板及び相手方基板の図示が省略されている。
【0116】
この状態で、相手方コネクタ401をコネクタ301に接近する方向、すなわち、嵌合方向に相対的に移動させると、相手方コネクタ401の相手方凸部412及び相手方突出端部422がコネクタ301の凹溝部312a内及び突出端凹部322内に挿入される。そして、各端子361の第1接触部365a1と第2接触部365a2との間に相手方端子461が挿入され、端子361の第1接触部365a1と相手方端子461の腕部465とが接触し、端子361の第2接触部365a2と相手方端子461の本体部466とが接触する。
【0117】
これにより、端子361と相手方端子461とが導通した状態となる。その結果、端子361のテール部368が接続された基板上の接続パッドに接続された導電トレースと、相手方端子461のテール部468が接続された相手方基板上の接続パッドに接続された導電トレースとが導通する。この場合、端子361の第1接触部365a1と第2接触部365a2との間隔は、相手方端子461が挿入されることによって弾性的に伸張されるので、その反力として発生するばね力により、第1接触部365a1が腕部465に押圧され、かつ、第2接触部365a2が本体部466に押圧される。したがって、端子361と相手方端子461との導通状態が確実に維持される。
【0118】
前述のように、シート41は、コネクタ301の嵌合面及び実装面を除いて、側面のほぼ全面を覆うように貼付されている。前記シート41は、ノイズを抑制する部材であるから、ノイズの最も発生しやすい箇所、すなわち、端子361と相手方端子461との接触箇所に最も近接した部位に貼付することが望まれる。また、貼付作業の容易性を考慮すると、シート41をハウジング311の外面に貼付することが望まれる。
【0119】
なお、コネクタ301及び相手方コネクタ401が嵌合されると、相手方コネクタ401の相手方ハウジング411が、ハウジング311の凹部312内に進入して収容された状態になるので、ハウジング311及び相手方ハウジング411の嵌合面、並びに、相手方ハウジング411の側面にシート41を貼付することは、実質的に不可能である。また、コネクタ301及び相手方コネクタ401は、図示されない基板及び相手方基板の表面に実装されているので、ハウジング311及び相手方ハウジング411の実装面にシート41を貼付することも、実質的に不可能である。
【0120】
したがって、本実施の形態においては、ハウジング311の側壁部315の外側の側面にシート41が貼付されることとなる。
【0121】
図に示される例において、前記シート41は、側壁部315の外側の側面のほぼ全体を覆うように貼付されているが、必ずしも、側壁部315の厚さ方向の全体に亘って側壁部315の外側の側面を覆う必要はなく、端子361の第1接触部365a1及び第2接触部365a2が相手方端子461と接触する箇所に対応する部分を覆っていればよい。すなわち、コネクタ301の幅方向の中心から観て、端子361と相手方端子461との接触箇所の真上に対応する部分を覆っていればよい。また、図に示される例において、前記シート41は、ハウジング311の突出端部321の外側の側面にも貼付されているが、必ずしも、突出端部321の外側の側面に貼付される必要はない。換言すると、シート41は、端子361と相手方端子461との接触箇所の真上に対応する部分を少なくとも覆うように、ハウジング311の外面に貼付されていればよい。
【0122】
なお、その他の点の構成については、前記第1及び第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0123】
このように、本実施の形態において、コネクタ301は、相手方コネクタ401と嵌合するハウジング311と、ハウジング311に保持され、相手方コネクタ401の相手方端子461と接触する端子361と、ハウジング311に貼付されるシート41とを有し、シート41は、軟磁性層42と導電誘電層43とを積層して成る層構造を備える。
【0124】
これにより、簡単な構造でありながら、確実にノイズを抑制することができ、シグナルインテグリティへの影響を抑制することができる。また、コネクタ301のコストを低減することができ、耐久性を向上させ、信頼性を高めることもできる。
【0125】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。