特許第5938345号(P5938345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5938345プラスチック製品を調製する方法、及びそれを用いて作製されるプラスチック製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938345
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】プラスチック製品を調製する方法、及びそれを用いて作製されるプラスチック製品
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/20 20060101AFI20160609BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C23C18/20 A
   C23C18/16 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-505042(P2012-505042)
(86)(22)【出願日】2010年11月13日
(65)【公表番号】特表2012-523501(P2012-523501A)
(43)【公表日】2012年10月4日
(86)【国際出願番号】CN2010078700
(87)【国際公開番号】WO2011103755
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2011年10月14日
【審判番号】不服2014-26168(P2014-26168/J1)
【審判請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】201010117125.4
(32)【優先日】2010年2月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】312013284
【氏名又は名称】シェンチェン ビーワイディー オート アールアンドディー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505327398
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】ゴン・チン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ・リャン
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ・ウェイフォン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ション
【合議体】
【審判長】 木村 孔一
【審判官】 鈴木 正紀
【審判官】 宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−124701(JP,A)
【文献】 特開2004−238471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-18/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
促進剤が分散されたプラスチックから作製されるプラスチック基材を提供する工程であって、
前記促進剤が、式AMより表され、
式AMにおいて、Aは、元素の周期律表の第10族及び第11族から選択される少なくとも1つの元素であり;Mは、Fe、Co、Mn、Al、Ga、In、Tl、及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1つの三価金属元素であり;Bは、ホウ素であり;Oは、酸素であり;xは0〜2であり;yは、0.01〜2であり、zは、1〜4ある工程と;
前記プラスチック基材の表面上の所定の領域に照射を行って、前記所定の領域中の前記促進剤を露出させる工程と;
前記プラスチック基材の表面上の照射領域にめっきを施して、前記所定の領域上に第1の金属層を形成する工程と;
前記第1の金属層にめっきを施して、前記第1の金属層上に第2の金属層を形成する工程とを含み、
前記プラスチックが、熱可塑性プラスチック及び熱硬化性プラスチックからなる群より選択され、
前記促進剤が、前記プラスチック基材に均一に分布し、
前記プラスチック基材の表面上の照射領域にレーザが照射され、
前記プラスチック基材の表面上の照射領域に銅めっき又はニッケルめっきが施され、
前記第1の金属層に電気めっき又は化学めっきが施され、
前記レーザの波長が、157nm〜10.6μmであり、走査速度が、500mm/s〜8,000mm/sであり、走査ステップが、3μm〜9μmであり、走査時間遅延が、30μs〜100μsであり、周波数が、30kHz〜40kHzであり、出力が、3W〜4Wであり、充填距離が、10μm〜50μmであることを特徴とするプラスチック製品を調製する方法。
【請求項2】
第1の金属層が、Ni層であり、且つ第2の金属層が、Cu−Ni層又はCu−Ni−Au層であるか、或いは第1の金属層が、Cu層であり、且つ第2の金属層が、Ni層又はNi−Au層である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各Ni層の厚さが、0.1μm〜50μmであり;各Cu層の厚さが、0.1μm〜100μmであり;且つ各Au層の厚さが、0.01μm〜10μmである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
促進剤の平均直径が、20nm〜100μmである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式AMで表される促進剤が、CuFe0.50.52.5、CuAl0.50.52.5、CuGa0.50.52.5、CuB、及びCuB0.7からなる群より選択され請求項1に記載の方法。
【請求項6】
熱可塑性プラスチックが、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ芳香族エーテル、ポリエステル−イミド、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン複合材、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリベンズイミダゾール、液晶ポリマー、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択され;熱硬化性プラスチックが、フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
促進剤の量が、プラスチック基材の1重量%〜40重量%であり、前記プラスチック基材が、酸化防止剤、光安定剤、潤滑剤、及び無機充填剤からなる群より選択される少なくとも1つの添加剤を更に含む請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2010年2月26日に中華人民共和国国家知識産権局に出願された中国特許出願第201010117125.4号の優先権及びその利益を主張し、前記出願の全体を参照することにより本願に援用する。
【0002】
本開示は、プラスチック製品を調製する方法、及び該方法を用いて作製されるプラスチック製品に関する。
【背景技術】
【0003】
金属化プロセスは、コーティング又は析出により、プラスチック基材等の非金属基材上に金属層を形成するために用いられる。理論に縛られるものではないが、金属化プロセスは、電気信号及び/又は磁気信号を伝達又は伝送する基材の能力を改善することができると考えられている。
【0004】
電磁気信号伝導経路として表面上に金属層を有するプラスチック基材は、自動車、製造業、コンピュータ、遠距離通信等で広く用いられている。金属層の選択的形成は、かかるプラスチック製品を調製するための重要なプロセスの1つである。金属層を形成する従来の方法は、通常、後続の化学めっきを実施できるように、プラスチック基材の表面上に触媒中心として金属コアを形成することにより行われる。しかし、設備に対する厳格な要件が必要とされる場合、前記金属コアの形成に関連するプロセスは、複雑になると同時に、エネルギー消費量も高くなる。更に、コーティング層とプラスチック基材との間の接着力も低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、先行技術に存在する問題点のうちの少なくとも1つを解決することにある。したがって、プラスチック製品を調製する方法であって、少ないエネルギー消費量でプラスチックの金属化が容易に実施され、且つ金属層とプラスチック基材との間の接着力が高い方法を提供する。更に、前記方法を用いて作製されるプラスチック製品であって、コーティング層とプラスチック基材又は非金属基材との間の接着力が高いプラスチック製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様によれば、プラスチック製品を調製する方法が提供される。前記方法は、促進剤が分散されたプラスチックから作製されるプラスチック基材を提供する工程と;前記プラスチック基材の表面上の所定の領域に照射を行って、前記所定の領域中の前記促進剤を露出させる工程と;前記プラスチック基材の表面上の照射領域にめっきを施して、前記所定の領域上に第1の金属層を形成する工程と;前記第1の金属層にめっきを施して、前記第1の金属層上に第2の金属層を形成する工程とを含む。前記促進剤は、式AM及び/又はA’M’により表される。式AMにおいて、Aは、元素の周期律表の第10族及び第11族から選択される少なくとも1つの元素であり;Mは、Fe、Co、Mn、Al、Ga、In、Tl、及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1つの三価金属元素であり;Oは、酸素であり;xは0〜2であり;yは、0.01〜2であり、zは、1〜4である。式A’M’において、A’は、元素の周期律表の第9族、第10族、及び第11族から選択される少なくとも1つの元素であり;M’は、Cr、Mo、W、Se、Te、及びPoからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;Oは、酸素であり;mは、0.01〜2であり;nは、2〜4である。
【0007】
本開示の別の態様によれば、促進剤を含むプラスチック基材と;前記プラスチック基材の表面上に第1の金属層及び第2の金属層とを含むプラスチック製品が提供される。前記促進剤は、式AM及び/又はA’M’により表される。式AMにおいて、Aは、元素の周期律表の第10族及び第11族から選択される少なくとも1つの元素であり;Mは、Fe、Co、Mn、Al、Ga、In、Tl、及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1つの三価金属元素であり;Oは、酸素であり;xは0〜2であり;yは、0.01〜2であり、zは、1〜4である。式A’M’において、A’は、元素の周期律表の第9族、第10族、及び第11族から選択される少なくとも1つの元素であり;M’は、Cr、Mo、W、Se、Te、及びPoからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;Oは、酸素であり;mは、0.01〜2であり;nは、2〜4である。
【0008】
促進剤を含有する表面上で選択的化学めっきを直接実施することができ、且つ、金属酸化物である一般式AM及び/又はA’M’により表される促進剤が純金属に還元されなければ、プラスチックを分解することはないということを本発明者らは見出した。本開示の実施形態によれば、前記促進剤は、プラスチック基材に均一に分布することができ、且つ多くのエネルギーを消費することなしに前記促進剤を純金属に還元されるため、前記プラスチック基材の表面上の所定の領域を例えばレーザで気化させて促進剤を露出させることができる。更に、電気めっき又は化学めっきを施して、所望の金属層を形成することで、簡単なプロセス、低エネルギー消費量、及び低コストで表面を選択的に金属化することができる。更に、化学めっき後のコーティング層とプラスチック基材との間の接着力を高めて、それから製造されるプラスチック製品の品質を向上させるように、プラスチック基材中に促進剤を均一に分布させることができる。
【0009】
本開示の実施形態の更なる態様及び利点について、以下にその一部を記載するが、これらは、以下の記載から一部明らかになる、又は本開示の実施形態を実施することによって理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態についてより詳細に言及する。本明細書に記載される実施形態は、説明的、例示的なものであり、本開示の概要を理解するために用いられる。前記実施形態は、本開示を限定するものであると解釈されるべきではない。同一若しくは類似の要素、又は同一若しくは類似の機能を有する要素は、明細書全体を通して類似の符号により示される。
【0011】
本開示の例示的、非限定的な実施形態において、プラスチック製品を調製する方法を提供する。前記方法は、促進剤が分散されたプラスチックから作製されるプラスチック基材を提供する工程を含んでいてもよい。前記促進剤は、式AMを有していてもよく、式中、Aは、元素の周期律表の第10族及び第11族から選択される少なくとも1つの元素であり;Mは、Fe、Co、Mn、Al、Ga、In、Tl、及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1つの三価金属元素であり;Oは、酸素であり;xは0〜2であり;yは、0.01〜2であり、zは、1〜4である。前記促進剤は、別の式A’M’を有していてもよく、式中、A’は、元素の周期律表の第9族、第10族、及び第11族から選択される少なくとも1つの元素であり;M’は、Cr、Mo、W、Se、Te、及びPoからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;Oは、酸素であり;mは、0.01〜2であり;nは、2〜4である。前記方法は、前記プラスチック基材の表面上の所定の領域に、任意でレーザにより照射を行って、前記促進剤の少なくとも一部を露出させる工程と;前記プラスチック基材の表面上の照射領域にめっきを施して、前記所定の領域上に第1の金属層を形成する工程と;前記第1の金属層にめっきを施して、前記第1の金属層上に第2の金属層を形成する工程とを更に含んでいてもよい。
【0012】
促進剤
例示的、非限定的な実施形態において、促進剤は、式AMを有していてもよく、式中、Aは、元素の周期律表の第10族及び第11族から選択される少なくとも1つの元素であり;Mは、Fe、Co、Mn、Al、Ga、In、Tl、及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1つの三価金属元素であり;Oは、酸素であり;xは0〜2であり;yは、0.01〜2であり、zは、1〜4である。前記促進剤は、別の式A’M’を有していてもよく、式中、A’は、元素の周期律表の第9族、第10族、及び第11族から選択される少なくとも1つの元素であり;M’は、Cr、Mo、W、Se、Te、及びPoからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり;Oは、酸素であり;mは、0.01〜2であり;nは、2〜4である。例えば、前記促進剤は、式AMを有していてもよく、式中、Aは、Cu又はNiであってもよい。特に、好適な促進剤は、CuFe0.50.52.5、CuNi0.50.52.5、CuAl0.50.52.5、CuGa0.50.52.5、CuB、及びCuB0.7からなる群より選択することができる。前記促進剤は、別の式A’M’を有していてもよく、式中、A’は、Co、Ni、又はCuであってもよい。特に、好適な促進剤としては、CuMo0.7、CuMo0.52.5、CuMoO、CuWO、又はCuSeOを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0013】
理論に縛られるものではないが、一般式AM又はA’M’により表される促進剤は、直接銅めっき又はニッケルめっきに有利な場合があり、プラスチックの分解を防ぐか又は軽減するよう機能することができると考えられる。
【0014】
非限定的な実施形態において、促進剤の平均直径は、約20nm〜約100μmであってもよく、好ましくは約50nm〜約10μmであり、更に好ましくは約200nm〜約4μmである。促進剤の量は、プラスチック基材の約1重量%〜約40重量%であってもよく、特に好ましくは約1重量%〜約30重量%であり、更に好ましくは約2重量%〜約15重量%である。
【0015】
更なる例示的、非限定的な実施形態において、促進剤は、プラスチック中に均一に分散することができる。理論に縛られるものではないが、プラスチック中に促進剤が均一に分散することは、金属層とプラスチック基材とを強力に接着させるのに役立つと考えられている。
【0016】
促進剤は、当業者に周知である任意の化合物であってもよい。促進剤は、市販品であってもよく、例えば、Guangzhou Weibo Chemical Co.,Ltd.,P.R.C.から市販されているCuWO、又は株式会社ミツワ化学から市販されているCuSeOであってもよい。更に、促進剤は、自ら調製してもよく、好適な促進剤の調製方法は、当業者に周知である。例えば、CuGa0.50.52.5を調製する方法は、58gのCuO、34gのGa、14gのBを混合及びボールミル粉砕して、混合物を形成する工程と;約1,000℃の温度で約2時間、前記混合物を焼成して、平均粒径が約1.0μm〜約2.5μmであり、且つICP−AESにより試験したときの組成がCuGa0.50.52.5である促進剤を形成する工程とを含む。同様に、CuMoOを調製する方法は、36gのCuO及び65gのMoOを混合及びボールミル粉砕して、混合物を形成する工程と;約800℃の温度で約2時間、前記混合物を焼成して、XRDにより試験したときの組成がCuMoOである促進剤を形成する工程とを含む。
【0017】
化学めっき用の核又は粒として用いることができるのは、純Cu及び純Pd等の純金属を除く、ナノ−CuOは、化学めっき中にプラスチック表面上の金属原子が化学析出する速度を大幅に向上させ得ることが、多くの研究により示されている。Aladin Reagent Co.,Ltd.から市販されている平均粒径約40nmのナノ−CuO粒子は、従来の化学めっき溶液中で、ナノ−CuO粒子の表面上におけるCu析出速度を上昇させ得ることを本発明者らは見出した。しかし、ナノ−CuOは、プラスチックの分解を引き起こすこともある。多くの実験を行うことにより、一般式AM又はA’M’により表される促進剤を表面処理に用いることができ、且つ前記促進剤は、長期間プラスチック中に留まりながらもプラスチックの分解を引き起こすことなしに、促進剤の表面上におけるCu又はNiの化学析出を促進できることを本発明者らは見出した。
【0018】
本開示の実施形態によれば、促進剤は、プラスチック基材中に均一に分布することができ、また、後続の化学めっきを前記促進剤の表面上で直接実施することができるように、前記促進剤と前記プラスチック基材との間の接着力が非常に高い。結果として、コーティング層とプラスチック基材との間の接着力を著しく高めることができる。
【0019】
プラスチック
例示的、非限定的な実施形態において、プラスチックは、熱可塑性プラスチックであっても、熱硬化性プラスチックであってもよい。前記熱可塑性プラスチックは、ポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、ポリアミド、ポリ芳香族エーテル、ポリエステル−イミド、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン複合材(PC/ABS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PSU)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、液晶ポリマー(LCP)、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択することができる。前記ポリオレフィンは、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、又はポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)(ABS)から選択することができる。前記ポリエステルは、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリ(ジアリルイソフタレート)(PDAIP)、ポリ(ジアリルフタレート)(PDAP)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、又はポリブチレンテレフタレート(PBT)から選択することができる。前記ポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジポアミド(PA−66)、ポリ(ヘキサメチレンアゼロアミド)(PA−69)、ポリヘキサメチレンスクシンアミド(PA−64)、ポリ(ヘキサメチレンドデカノアミド)(PA−612)、ポリ(ヘキサメチレンセバコアミド)(PA−610)、ポリ(デカメチレンセバコアミド)(PA−1010)、ポリウンデカノアミド(PA−11)、ポリドデカノアミド(PA−12)、ポリカプリルラクタム(PA−8)、ポリ(9−アミノノナン酸)(PA−9)、ポリカプロラクタム(PA−6)、ポリ(p−フェニテンテレフタルアミド)(PPTA)、ポリ−m−キシレンアジポアミド(MXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6T)、又はポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(PA9T)から選択することができる。前記液晶ポリマー(LCP)は、剛直な鎖を含み、且つ液相中で高度に秩序立った構造の領域を形成することができるポリマーであってもよい。前記熱硬化性プラスチックは、フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択することができる。
【0020】
プラスチック中における促進剤の分散
例示的、非限定的な実施形態において、混合し、次いで、限定されるものではないが、任意で行われる成形プロセスにより、プラスチック中に促進剤を分散させることができる。幾つかの実施形態では、密閉式混合機、単軸押出成形機、二軸押出成形機、又は混合機を用いることにより、プラスチック中に促進剤を分散させることができる。幾つかの実施形態では、「プラスチック基材」という用語は、促進剤が配置又は分散されたプラスチックを意味する。促進剤をプラスチックに分散させた後、射出成形、吹込成形、抽出成形、又はホットプレス成形により、様々な種類の形状にプラスチック基材を成形することができる。
【0021】
添加剤
例示的、非限定的な実施形態において、プラスチック基材は、酸化防止剤、光安定剤、潤滑剤、及び無機充填剤からなる群より選択される、少なくとも1つの周知の市販されている添加剤を更に含んでもよい。
【0022】
非限定的な実施形態において、前記酸化防止剤は、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な酸化防止剤1098、1076、1010、又は168であってもよい。前記酸化防止剤の量は、プラスチック基材の約0.01重量%〜約2重量%であってもよい。前記酸化防止剤は、プラスチック基材の耐酸化性を高めることができる。
【0023】
前記光安定剤は、任意の市販されている光安定剤であってもよく、特に、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な光安定剤944等のヒンダードアミン光安定剤である。前記光安定剤の量は、プラスチック基材の約0.01重量%〜約2重量%であってもよい。前記光安定剤は、プラスチック基材の光安定性を高めることができる。
【0024】
非限定的な実施形態において、前記潤滑剤は、メチルポリシロキサン、エチレンと酢酸ビニルとから形成されるEVAワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸塩、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択することができる。前記潤滑剤の量は、プラスチック基材の約0.01重量%〜約2重量%であってもよい。前記潤滑剤は、プラスチック基材を均一に混合することができるように、プラスチックの流動性を高めることができる。
【0025】
非限定的な実施形態において、前記無機充填剤は、タルカムパウダー、炭酸カルシウム、グラスファイバー、ケイ酸カルシウム繊維、酸化スズ、及びカーボンブラックからなる群より選択することができる。グラスファイバーは、レーザを照射されるとプラスチック基材のエッチング深さを増加させることができ、これは、化学銅めっき中のCuの接着にとって好ましい。酸化スズ、特に、ナノ酸化スズ、又はカーボンブラックは、レーザのエネルギー利用率を高めることができる。更なる実施形態において、前記無機充填剤は、ガラスビーズ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、真珠粉末、ウォラストナイト、珪藻土、カオリン、微粉炭、陶磁器用粘土、雲母、油頁岩灰、アルミノケイ酸、アルミナ、カーボンファイバー、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択することができ;特に、環境及びヒトの健康に対して有害な元素であるCr等を含まないものである。前記無機充填剤の量は、プラスチック基材の約1重量%〜約70重量%であってもよい。
【0026】
照射
例示的、非限定的な実施形態において、プラスチック基材の表面上の所定の領域に照射を行って、促進剤の少なくとも一部を露出させる。本開示の実施形態によれば、本開示の方法によって、プラスチック基材の表面上に所望のパターンを形成することができる。ある実施形態では、プラスチック基材の表面上の所定の領域をレーザで曝露することにより照射を行ってもよい。ある実施形態では、プラスチック基材の表面上の所定の領域に、任意でレーザを照射して、促進剤を露出させてもよい。レーザ装置は、COレーザマーキングシステム等の従来の赤外レーザであってもよい。非限定的な実施形態において、レーザの波長は、約157nm〜約10.6μm、走査速度は、約500mm/s〜約8,000mm/s、走査ステップは、約3μm〜約9μm、走査時間遅延は、約30μs〜約100μs、周波数は、約30kHz〜約40kHz、出力は、約3W〜約4W、充填距離は、約10μm〜約50μmであってもよい。本開示の幾つかの実施形態によれば、レーザの出力は、促進剤を変化させたり、劣化させたり、促進剤が純金属に還元されたりすることなしに、促進剤を露出させるのに十分な程度であればよい。
【0027】
非限定的な実施形態において、促進剤を露出させて、凹凸のある空隙を有する微視的に粗い表面を形成できるように、プラスチック基材の厚さは、約500μm超であってよく、前記プラスチック基材の照射部分の深さは、約20μm未満であってよい。後続の化学銅めっきプロセス又は化学ニッケルめっきプロセス中、銅又はニッケルは、前記粗い表面の空隙に埋め込まれて、プラスチック基材と強力に接着することができる。ある実施形態では、促進剤を含まない領域は、照射されない。理論に縛られるものではないが、これらの領域は、析出速度が遅く、且つ接着力が低い可能性があると考えられる。前記領域に僅かに金属が析出する可能性があるものの、例えば、限定するものではないが、超音波洗浄により前記金属を容易に除去することができる。このように、理論に縛られるものではないが、プラスチック基材の表面上の必要な領域において金属化を制御することができると考えられる。
【0028】
前記所定の領域は、プラスチック基材の表面全体であってもよく、プラスチック基材の表面の一部であってもよい。
【0029】
プラスチック基材の気化により、プラスチック煙が生じ、それが落下して、露出した促進剤を被覆することがある。更なる例示的、非限定的な実施形態では、換気装置を用いて、照射プロセス中に発生又は導入された霧を除去してもよい。更に、幾つかの非限定的な実施形態では、レーザ照射後に、プラスチック基材を超音波洗浄してもよい。
【0030】
本開示の実施形態によれば、促進剤が存在しないプラスチック基材の表面上には、化学めっき析出物は、実質的に存在しない。したがって、電気めっき速度は、非常に遅く、接着力も低い。たとえ少量の化学析出物が存在していたとしても、容易に除去することができる。したがって、本開示によれば、直接選択的表面金属化法を容易に行うことができる。
【0031】
第1のめっき
ある実施形態では、照射後、プラスチック基材の表面上の所定の領域において、促進剤を露出させることができる。前記促進剤の表面上で化学銅めっき及び/又は化学ニッケルめっきを実施することにより、プラスチック基材とめっき層とを比較的強力に接着させることができる。
【0032】
非限定的な実施形態では、レーザ照射後、照射領域において促進剤を露出させることができる。その後、前記促進剤の表面上で銅めっき又はニッケルめっきを実施してもよい。銅めっき又はニッケルめっき法は、当業者に周知であり、例えば、照射されたプラスチック基材を銅めっき溶液又はニッケルめっき溶液(下記)と接触させる方法が挙げられる。理論に縛られるものではないが、露出した促進剤は、銅イオン又はニッケルイオンを銅粉末又はニッケル粉末に還元するのに適している可能性があると考えられ、前記銅粉末又はニッケル粉末は、前記促進剤の表面を被覆し、前記促進剤の表面上に高密度の銅層又はニッケル層を速やかに形成することができる。
【0033】
更なるめっき
非限定的な実施形態において、第1のめっき後、銅層又はニッケル層に、1以上の化学めっき層又は電気めっき層を適用してもよい。例えば、促進剤の表面上に第1のニッケル層を形成した後、化学めっきにより前記第1のニッケル層上に銅層を形成してもよく、次いで、化学めっきにより前記銅層上に第2のニッケル層を形成して、Ni−Cu−Ni構造を有する複合プラスチック製品を形成してもよい。特に、フラッシュめっきにより前記複合プラスチック製品上に金層を形成して、Ni−Cu−Ni−Au構造を有するプラスチック製品を形成してもよい。
【0034】
更なる例示的、非限定的な実施形態において、促進剤の表面上に第1の銅層を形成した後、めっきにより前記第1の銅層上にニッケル層を形成して、Cu−Ni構造を形成してもよい。特に、フラッシュめっきにより前記Cu−Ni層上に金層を形成して、Cu−Ni−Au構造を形成してもよい。
【0035】
幾つかの非限定的な実施形態において、ニッケル層の厚さは、約0.1μm〜約50μm、特に、約1μm〜約10μm、更に、約2μm〜約3μmであってもよい。銅層の厚さは、約0.1μm〜約100μm、特に、約1μm〜約50μm、更に、約5μm〜約30μmであってもよい。金層の厚さは、約0.01μm〜約10μm、特に、約0.01μm〜約2μm、更には、約0.1μm〜約1μmであってもよい。
【0036】
化学銅めっき溶液、化学ニッケルめっき溶液、電気銅めっき溶液、電気ニッケルめっき溶液、及び金フラッシュめっき溶液は、当業者に周知である。非限定的な実施形態において、化学銅めっき溶液は、銅塩及び還元剤を含んでいてもよく、pH値は、約12〜約13である。前記還元剤は、銅イオンを純銅に還元することができる。前記還元剤は、グリオキシル酸、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択することができる。別の実施形態では、NaOH及びHSOによりpH値が約12.5〜約13に調整されている化学めっき溶液は、0.12mol/LのCuSO・5HO、0.14mol/LのNaEDTA・2HO、10mg/Lのフェロシアン化カリウム、10mg/Lの2,2’−ビピリジン、及び約0.10mol/Lのグリオキシル酸(HCOCOOH)溶液を含んでもよい。非限定的な実施形態において、銅めっきは、約10分間〜約240分間実施してもよい。約85℃〜約90℃の温度で、NaOHによりpH値が約5.2に調整されている化学めっき溶液は、23g/Lの硫酸ニッケル、18g/Lの次亜リン酸ナトリウム、20g/Lの乳酸、及び15g/Lのリンゴ酸を含んでもよい。非限定的な実施形態において、ニッケルめっきは、約8分間〜約15分間実施してもよい。
【0037】
金フラッシュめっきは、当業者に周知である。非限定的な実施形態において、フラッシュめっき溶液は、BG−24中性金めっき溶液であってもよく、これは、Shenzhen Jingyanchuang Chemical Company,P.R.C.から市販されている。
【0038】
プラスチック製品は、上記プラスチック基材と、前記プラスチック基材の表面上に存在する第1の金属層及び第2の金属層とを含む。前記第1の金属層は、Ni層であり、且つ前記第2の金属層は、Cu−Ni層又はCu−Ni−Au層であるか、或いは、前記第1の金属層は、Cu層であり、且つ前記第2の金属層は、Ni層又はNi−Au層である。各ニッケル層の厚さは、約0.1μm〜約50μmであり、各銅層の厚さは、約0.1μm〜約100μmであり、各金層の厚さは、約0.01μm〜約10μmである。
【実施例】
【0039】
本開示の幾つかの実施例により、本開示の更なる詳細を以下に示す。
【0040】
(実施例1)
プラスチック製品を調製する方法は、以下の工程を含む。
【0041】
a)高速ボール粉砕機内で約10時間CuFe0.50.52.5をボールミル粉砕して、平均直径約700nmの粉末を形成し;次いで、重量比約100:10:30:0.2で、PP樹脂、CuFe0.50.52.5粉末、ケイ酸カルシウム繊維、及び酸化防止剤1010を高速混合機内で混合して、混合物を調製し;次いで、Nanjing Rubber&Plastics Machinery Plant Co.,Ltd.,P.R.C.から入手可能な二軸押出成形機により前記混合物を押出成形及び造粒し、次いで、射出成形して、LED(発光ダイオード)ランプ用回路基板の基材を形成した。
【0042】
b)Shenzhen TEC−H LASER Technology Co.,Ltd.,P.R.C.から入手可能なDPF−M12赤外レーザ(波長:約1,064nm、走査速度:約1,000mm/s、走査ステップサイズ:約9μm、走査時間遅延:約30μs、周波数:約40kHz、出力:約3W、及び充填距離:約50μm)により、前記基材上に金属回路パターンを形成した。次いで、前記プラスチック製品の表面を超音波洗浄した。
【0043】
c)化学ニッケルめっき溶液に約10分間、前記基材を浸漬して、厚さ約3μmの第1のニッケル層を形成し;次いで、化学銅めっき溶液に約4時間、前記基材を浸漬して、前記第1のニッケル層上に厚さ約13μmの銅層を形成し;その後、前記化学ニッケルめっき溶液に約10分間、前記基材を再度浸漬して、前記銅層上に厚さ約3μmの第2のニッケル層を形成し;最後に、前記基材にフラッシュめっきを施して、前記第2のニッケル層上に厚さ約0.03μmの金層を形成し、LEDランプの回路基板用基材としてのプラスチック製品を形成した。前記銅めっき溶液は、約0.12mol/LのCuSO・5HOと、約0.14mol/LのNaEDTA・2HOと、約10mg/Lのフェロシアン化カリウムと、約10mg/Lの2,2’−ビピリジンと、約0.10mol/Lのグリオキシル酸(HCOCOOH)とを含有し、pH値は、NaOH及びHSOにより約12.5〜約13に調整した。前記ニッケルめっき溶液は、約23g/Lの硫酸ニッケルと、約18g/Lの次亜リン酸ナトリウムと、約20g/Lの乳酸と、約15g/Lのリンゴ酸とを含有し、pH値は、NaOHにより約5.2に調整した。金ストライクめっき溶液は、Shenzhen Jingyanchuang Chemical Company,P.R.C.から市販されているBG−24中性金めっき溶液を用いた。
【0044】
(実施例2)
実施例2の方法は、以下の点を除いて実施例1と実質的に同様である。
【0045】
工程a)において、CuBをボールミル粉砕して、平均直径約800nmの粉末を形成し;前記粉末を乾燥させ、重量比約20:100:30:0.2で、前記粉末をPEEK樹脂、グラスファイバー、及び酸化防止剤168を高速混合機内で混合して、混合物を調製し:次いで、前記混合物を押出成形及び造粒し、次いで、射出成形して、基材を形成した。
【0046】
工程c)において、化学ニッケルめっき溶液に約8分間、前記基材を浸漬して、厚さ約2μmの第1のニッケル層を形成し;その後、化学銅めっき溶液に約4時間、前記基材を浸漬して、前記第1のニッケル層上に厚さ約13μmの銅層を形成し;次いで、前記化学ニッケルめっき溶液に約10分間、前記基材を再度浸漬して、前記銅層上に厚さ約3μmの第2のニッケル層を形成し;最後に、前記基材にフラッシュめっきを施して、前記第2のニッケル層上に厚さ約0.03μmの金層を形成し、自動車モータの電子コネクタ用シェルとしてのプラスチック製品を形成した。
【0047】
参考例3)
参考例3の方法は、以下の点を除いて実施例1と実質的に同様である。
【0048】
工程a)において、CuWOをボールミル粉砕して、平均直径約800nmの粉末を形成し;前記粉末を乾燥させ、重量比約10:100:30:0.2:0.1で、前記粉末をPES樹脂、チタン酸カリウムウイスカ、酸化防止剤1010、及びポリエチレンワックスを高速混合機内で混合して、混合物を調製し:次いで、前記混合物を押出成形及び造粒し、次いで、射出成形して、基材を形成した。
【0049】
工程c)において、化学銅めっき溶液に約3時間、前記基材を浸漬して、厚さ約5μmの銅層を形成し;次いで、化学ニッケルめっき溶液に約10分間、前記基材を浸漬して、前記銅層上に厚さ約3μmのニッケル層を形成し、電子コネクタ用シェルとしてのプラスチック製品を形成した。
【0050】
参考例4)
参考例4の方法は、以下の点を除いて実施例1と実質的に同様である。
【0051】
工程a)において、CuMo0.52.5をボールミル粉砕して、平均直径約900nmの粉末を形成し;前記粉末を乾燥させ、重量比約10:100:0.2:0.1で、前記粉末をPC樹脂、酸化防止剤1076、及びポリエチレンワックスを高速混合機内で混合して、混合物を調製し:次いで、前記混合物を押出成形及び造粒し、次いで、吹込成形して、基材を形成した。
【0052】
工程c)において、化学ニッケルめっき溶液に約10分間、前記基材を浸漬して、厚さ約3μmの第1のニッケル層を形成し;次いで、化学銅めっき溶液に約2時間、前記基材を浸漬して、前記第1のニッケル層上に厚さ約6μmの銅層を形成し;最後に、化学ニッケルめっき溶液に約12分間、前記基材を再度浸漬して、前記銅層上に厚さ約4μmの第2のニッケル層を形成し;自動車の電子部品用シェルとしてのプラスチック製品を形成した。
【0053】
(実施例5)
実施例5の方法は、以下の点を除いて実施例1と実質的に同様である。
【0054】
工程a)において、CuNi0.50.52.5をボールミル粉砕して、平均直径約900nmの粉末を形成し;前記粉末を乾燥させ、重量比約10:100:10:0.2:0.1で、前記粉末をPPO樹脂、ケイ酸カルシウム繊維、酸化防止剤1076、及びポリエチレンワックスを高速混合機内で混合して、混合物を調製し、次いで、二軸押出成形機により前記混合物を押出成形及び造粒し、次いで、射出成形して、基材を形成した。
【0055】
工程c)において、化学ニッケルめっき溶液に約8分間、前記基材を浸漬して、厚さ約2μmの第1のニッケル層を形成し;次いで、化学銅めっき溶液に約4時間、前記基材を浸漬して、前記第1のニッケル層上に厚さ約15μmの銅層を形成し;次いで、前記化学ニッケルめっき溶液に約10分間、前記基材を再度浸漬して、前記銅層上に厚さ約3μmの第2のニッケル層を形成し;最後に、前記基材にフラッシュめっきを施して、前記第2のニッケル層上に厚さ約0.03μmの金層を形成し;太陽電池の屋外コネクタ用シェルとしてのプラスチック製品を形成した。
【0056】
(実施例6)
プラスチック製品を調製する方法は、以下の工程を含む。
【0057】
a)約58gのCuO、約34gのGa、及び約14gのB粉末を均一に混合し;高速ボール粉砕機内にて約12時間、蒸留水中で前記粉末をボールミル粉砕して、第1の混合物を形成し;次いで、前記第1の混合物を乾燥させ、約1,000℃の温度で約2時間焼成して、粒子を形成し;前記粒子の平均粒径が約900nmに達するまで、高速で前記粒子をボールミル粉砕し;X線回折(XRD)及びICP−AESにより前記粒子を試験したところ、組成は、CuGa0.50.52.5であった。
【0058】
b)PPS樹脂、CuGa0.50.52.5粒子、酸化防止剤1076、及びポリエチレンワックスを、重量比約100:10:0.2:0.1で混合して、第2の混合物を形成し;次いで、前記第2の混合物を押出成形及び造粒し、次いで、射出成形して、基材を形成した。
【0059】
c)実施例1の工程b)と実質的に同様の方法により、前記基材上に金属回路パターンを形成した。
【0060】
d)化学銅めっき溶液に約3時間、前記基材を浸漬して、厚さ約12μmの銅層を形成し;次いで、化学ニッケルめっき溶液に約10分間、前記基材を浸漬して、前記第1の銅層上に厚さ約3μmのニッケル層を形成し;電子コネクタ用シェルとしてのプラスチック製品を形成した。
【0061】
参考例7)
プラスチック製品を調製する方法は、以下の工程を含む。
【0062】
a)約36gのCuO、約65gのMoO粉末を均一に混合し;高速ボール粉砕機内にて約12時間、蒸留水中で前記粉末をボールミル粉砕して、第1の混合物を形成し;前記第1の混合物を乾燥させ、約800℃の温度で約2時間焼成して、粒子を形成し;平均粒径が約900nmに達するまで、前記粒子をボールミル粉砕し;XRDにより前記粒子を試験したところ、組成は、CuMoOであった。
【0063】
b)PA6T樹脂、CuMoO、酸化防止剤1076、及びポリエチレンワックスを、重量比約100:10:0.2:0.1で混合して、第2の混合物を形成し;次いで、前記第2の混合物を押出成形及び造粒し、次いで、射出成形して、基材を形成した。
【0064】
c)実施例1の工程b)と実質的に同様の方法により、前記基材上に金属回路パターンを形成した。
【0065】
d)化学ニッケルめっき溶液に約8分間、前記基材を浸漬して、厚さ約2μmの第1のニッケル層を形成し;次いで、化学銅めっき溶液に約4時間、前記基材を浸漬して、前記第1のニッケル層上に厚さ約15μmの銅層を形成し;次いで、化学ニッケルめっき溶液に約10分間、前記基材を浸漬して、前記銅層上に厚さ約3μmの第2のニッケル層を形成し;最後に、前記基材にフラッシュめっきを施して、前記第2のニッケル層上に厚さ約0.03μmの金層を形成し;自動車の屋外コネクタ用シェルとしてのプラスチック製品を形成した。
【0066】
説明のための実施例を示し、記載してきたが、本開示の趣旨及び原理から逸脱することなしに、特許請求の範囲及びその均等物の範囲内における変更、改変、及び修正を行うことができることが当業者に理解されるであろう。