(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主油圧ポンプと、この主油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動し、ロッド室及びボトム室をそれぞれ有するブームシリンダ及びアームシリンダと、上記主油圧ポンプから上記ブームシリンダに供給される圧油の流れを制御するブーム用方向制御弁、及び上記主油圧ポンプから上記アームシリンダに供給される圧油の流れを制御するアーム用方向制御弁と、上記ブーム用方向制御弁を切り換え操作するブーム用操作装置、及び上記アーム用方向制御弁を切り換え操作するアーム用操作装置と、上記ブームシリンダの上記ロッド室の圧が所定圧以上の高圧となったときに、上記ブームシリンダの上記ロッド室と上記アームシリンダの上記ボトム室とを連通させる切換弁とを備えた油圧ショベルの油圧駆動装置において、
上記ブームシリンダのロッド圧を検出する第1圧力検出部、及び上記アームシリンダのボトム圧を検出する第2圧力検出部と、
上記第1圧力検出部で検出された上記ブームシリンダのロッド圧と上記第2圧力検出部で検出された上記アームシリンダのボトム圧との差圧が所定圧以上のときに、上記ブームシリンダの上記ロッド室と上記アームシリンダの上記ボトム室とを連通させる上記切換弁の開口面積が小さくなるように上記切換弁を制御する開口制御部とを備えたことを特徴とする油圧ショベルの油圧駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術においては、ブーム上げ・アームクラウド複合操作による掘削作業が実施されているときに、すなわちブームシリンダ、アームシリンダの複合操作が実施されているときに、切換弁が最大開口面積に保持されている状態でブームシリンダのロッド室とアームシリンダのボトム室との差圧が大きいと、ブームシリンダのロッド室の圧油が開口面積の大きい切換弁を通過する際に、機体にショックを発生する。このショックにより操作性が低下する。また、精度の高い作業を実施している場合には、ショックにより作業精度が劣化しやすくなっていた。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実情からなされたもので、その目的は、ブーム上げ・アームクラウド複合操作に際し、ブームシリンダのロッド圧とアームシリンダのボトム圧との差圧に応じて機体に発生するショックを抑えることができる油圧ショベルの油圧駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、主油圧ポンプと、この主油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動し、ロッド室及びボトム室をそれぞれ有するブームシリンダ及びアームシリンダと、上記主油圧ポンプから上記ブームシリンダに供給される圧油の流れを制御するブーム用方向制御弁、及び上記主油圧ポンプから上記アームシリンダに供給される圧油の流れを制御するアーム用方向制御弁と、上記ブーム用方向制御弁を切り換え操作するブーム用操作装置、及び上記アーム用方向制御弁を切り換え操作するアーム用操作装置と、上記ブームシリンダの上記ロッド室の圧が所定圧以上の高圧となったときに、上記ブームシリンダの上記ロッド室と上記アームシリンダの上記ボトム室とを連通させる切換弁とを備えた油圧ショベルの油圧駆動装置において、上記ブームシリンダのロッド圧を検出する第1圧力検出部、及び上記アームシリンダのボトム圧を検出する第2圧力検出部と、上記第1圧力検出部で検出された上記ブームシリンダのロッド圧と上記第2圧力検出部で検出された上記アームシリンダのボトム圧との差圧が所定圧以上のときに、上記ブームシリンダの上記ロッド室と上記アームシリンダの上記ボトム室とを連通させる上記切換弁の開口面積が小さくなるように上記切換弁を制御する開口制御部とを備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、第1圧力検出部と第2圧力検出部によって、ブームシリンダのロッド圧とアームシリンダのボトム圧との差圧が所定圧以上であることが検出されたときには、開口制御部によって開口面積が小さくなるように切換弁が制御される。すなわち、ブームシリンダのロッド室からアームシリンダのボトム室に送られる圧油の切換弁における通過流量が、切換弁が最大開口面積に保持されている場合に比べて少なくなる。これによりブーム上げ・アームクラウド複合操作に際し、ブームシリンダのロッド圧とアームシリンダのボトム圧との差圧に応じて機体に発生するショックを抑えることができる。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、ブーム上げに際しての上記ブーム用操作装置の操作量を検出する第1操作量検出部、及びアームクラウドに際しての上記アーム用操作装置の操作量を検出する第2操作量検出部を備え、上記開口制御部は、上記第1操作量検出部と上記第2操作量検出部とから出力される信号に応じて、上記ブーム用操作装置と上記アーム用操作装置がそれぞれブーム上げ、及びアームクラウドの操作がされたかどうかを判別する判別部と、上記第1圧力検出部で検出された上記ブームシリンダのロッド圧と上記第2圧力検出部で検出された上記アームシリンダのボトム圧との差圧を求める演算部と、この演算部で求めた差圧が上記所定圧以上のときに上記切換弁の開口面積が最大よりも小さな開口となるような開口面積を出力するように設定された第1関数発生部とを含み、当該開口制御部は、上記判別部で上記ブーム用操作装置と上記アーム用操作装置がそれぞれブーム上げ、及びアームクラウドの操作がされたと判別したとき、上記第1関数発生部から出力される開口面積に応じて上記切換弁を制御することを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、第1操作量検出部と第2操作量検出部とにより、ブーム上げ・アームクラウド複合操作が実施されているときのみ、開口制御部によって切換弁の開口面積を小さくする制御を実施させることができる。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、上記開口制御部は、上記第1操作量検出部の操作量と開口面積の関係が設定された第2関数発生部と、上記第2操作量検出部の操作量と開口面積の関係が設定された第3関数発生部と、上記第1関数発生部、上記第2関数発生部、及び上記第3関数発生部からそれぞれ出力される開口面積の最小値を選択する最小値選択部とを含み、当該開口制御部は、上記判別部で上記ブーム用操作装置と上記アーム用操作装置がそれぞれブーム上げ、及びアームクラウドの操作がされたと判別したとき、上記最小値選択部から出力される開口面積となるように上記切換弁を制御することを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、ブーム上げ操作に関係する第2関数発生部における設定と、アームクラウド操作に関係する第3関数発生部における設定のそれぞれを、当該油圧ショベルで実施されるブーム上げ・アームクラウド複合操作による掘削作業を考慮して設定することにより、掘削作業の高い作業精度を得ることができるとともに、掘削作業時の機体のショックを抑えることができる。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、上記第1圧力検出部が第1圧力センサから成り、上記第2圧力検出部が第2圧力センサから成り、上記第1操作量検出部が第3圧力センサから成り、上記第2操作量検出部が第4圧力センサから成り、上記切換弁の制御ポートに、この切換弁の開口面積を制御するパイロット圧を供給可能な電磁弁を備え、上記開口制御部が、上記電磁弁を制御する制御信号を出力するコントローラから成り、このコントローラは、上記判別部と、上記演算部と、上記第1関数発生部と、上記第2関数発生部と、上記第3関数発生部と、上記最小値選択部とを含むとともに、上記判別部で上記ブーム用操作装置と上記アーム用操作装置がそれぞれブーム上げ、及びアームクラウドの操作がされたと判別されたときに、上記切換弁の開口面積の制御の実施を許可する許可部と、この許可部で上記切換弁の開口面積の制御が許可されたときに、上記最小値選択部から出力される開口面積に相応する制御信号を上記電磁弁に出力する出力部とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ブーム上げ・アームクラウド複合操作に際し、ブームシリンダのロッド圧とアームシリンダのボトム圧との差圧が大きい場合に、第1圧力検出部、第2圧力検出部と、開口制御部とによって、開口面積が小さくなるように切換弁を制御することにより、ブームシリンダのロッド室からアームシリンダのボトム室に送られる圧油が切換弁を通過する際に生じる機体のショックを抑えることができる。これにより、従来に比べて操作性を向上させることができ、高い作業精度を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る油圧ショベルの油圧駆動装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る油圧駆動装置が備えられる油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に設けられる旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に装着されるブーム3と、このブーム3に上下方向の回動可能に装着されるアーム4と、このアーム4に上下方向の回動可能に装着されるバケット5とを備えている。ブーム3、アーム4、及びバケット5はフロント作業機を構成している。また、ブーム3を駆動するブームシリンダ6と、アーム4を駆動するアームシリンダ7と、バケット5を駆動するバケットシリンダ8とを備えている。
【0018】
このように構成される油圧ショベルでは、土砂の掘削作業時等には、ブームシリンダ6は同
図1の矢印13に示すように伸長し、ブーム3が矢印12に示すように回動してブーム上げが行われる。また、このブーム上げ操作とともに、アームシリンダ7が矢印9に示すように伸長し、アーム4が矢印11に示すように回動して、アームクラウド操作が行われる。さらに、このようなブーム上げ・アームクラウド複合操作とともに、バケットシリンダ8を矢印10方向に伸長させて、矢印11に示すようにバケット5を回動させることが行われる。これらの動作により所望の掘削作業等が行われる。
【0019】
図2に示すように、ブームシリンダ6はボトム室6a及びロッド室6bを備え、ボトム室6aに圧油が供給されることにより、当該ブームシリンダ6が伸長してブーム上げが実施され、ロッド室6bに圧油が供給されることにより、当該ブームシリンダ6が収縮してブーム下げが実施される。アームシリンダ7もボトム室7a及びロッド室7bを備え、ボトム室7aに圧油が供給されることにより、アームクラウドが実施され、ロッド室7bに圧油が供給されることによりアームダンプが実施される。
【0020】
このようなブームシリンダ6及びアームシリンダ7を含む本実施形態に係る油圧駆動装置は、同
図2に示すように、エンジン20と、このエンジン20によって駆動される主油圧ポンプ21、及びパイロットポンプ22とを備えている。また、本実施形態は、主油圧ポンプ21からブームシリンダ6に供給される圧油の流れを制御するブーム用方向制御弁23と、主油圧ポンプ21からアームシリンダ7に供給される圧油の流れを制御するアーム用方向制御弁24と、ブーム用方向制御弁23を切り換え操作するブーム用操作装置25と、アーム用方向制御弁24を切り換え操作するアーム用方向制御弁26とを備えている。
【0021】
ブーム用操作装置25はパイロットポンプ22に接続され、操作に応じて発生したパイロット圧をパイロット管路25a,25bのいずれかを介してブーム用方向制御弁23の制御ポートに供給し、このブーム用方向制御弁23を同
図2の左位置、あるいは右位置に切り換える。同様に、アーム用操作装置26もパイロットポンプ22に接続され、操作に応じて発生したパイロット圧をパイロット管路26a,26bのいずれかを介してアーム用方向制御弁24の制御ポートに供給し、このアーム用方向制御弁24を同
図2の左位置、あるいは右位置に切り換える。
【0022】
また、本実施形態は、ブームシリンダ6のロッド室6bの圧が所定圧以上の高圧となったときに、ブームシリンダ6のロッド室6bとアームシリンダ7のボトム室7aとを連通させる切換弁57を含む連通制御部を備えている。
【0023】
この連通制御部は、
図2に示すように、ブームシリンダ6のロッド室6bとアームシリンダ7のボトム室7aとを連通可能な連通路40と、この連通路40中に設けられ、ブームシリンダ6のロッド室6bの圧が所定圧より低いときに連通路40を遮断し、所定圧以上の高圧となったときに連通路40を連通状態に保持する前述の切換弁57とを含んでいる。切換弁57は、管路57bを介して導かれるパイロット圧により切り換えられるパイロット式の切換弁から成っている。また、アームシリンダ7のボトム室7aからブームシリンダ6のロッド室6b方向への圧油の流れを阻止する逆止弁41を含んでいる。ブームシリンダ6のロッド室6bとタンク43とを結ぶ管路56上には、オーバーロードリリーフ弁80を設けてある。切換弁57を遮断位置から連通位置に切り換えるためのばね57aによる設定圧は、オーバーロードリリーフ弁80の設定圧よりも低くく設定されている。
【0024】
また、本実施形態に係る油圧駆動装置は、ブームシリンダ6のロッド圧を検出する第1圧力検出部、すなわち第1圧力センサ67dと、アームシリンダ7のボトム圧を検出する第2圧力検出部、すなわち第2圧力センサ67cとを備えている。また、本実施形態は、第1圧力センサ67dで検出されたブームシリンダ6のロッド圧と第2圧力センサ67cで検出されたアームシリンダ7のボトム圧との差圧ΔPが所定圧S以上のときに、開口面積が小さくなるように切換弁57を制御する開口制御部を備えている。
【0025】
また、本実施形態は、ブーム上げに際してのブーム用操作装置25の操作量を検出する第1操作量検出部、すなわち第3圧力センサ67bと、アームクラウドに際してのアーム用操作装置26の操作量を検出する第2操作量検出部、すなわち第4圧力センサ67aとを備えている。
【0026】
また、本実施形態は、パイロット管路57bを介して切換弁57の制御ポートに、切換弁57の開口面積を制御するパイロット圧、すなわち管路69aを介して導かれるパイロットポンプ22に基づくパイロット圧を供給可能な電磁弁69を備えている。
【0027】
上述した開口制御部は、電磁弁69を制御する制御信号を出力するコントローラ68から成っている。ブームシリンダ6のロッド圧が所定圧よりも低いときには、コントローラ68から電磁弁69に出力される制御信号の値が小さく、パイロット管路57bに導かれるパイロット圧による力が切換弁57のばね57aの力よりも弱く保たれる。これによって切換弁57は
図2の左位置に保たれ、連通路40は遮断される。したがって、この状態では、ブームシリンダ6のロッド室6bからの圧油がアームシリンダ57のボトム室57aへ供給されることがない。また、ブームシリンダ6のロッド圧が所定圧よりも高くなったときには、コントローラ68から電磁弁69に出力される制御信号の値が大きくなり、パイロット管路57bに導かれるパイロット圧による力が切換弁57のばね57aの力よりも強くなる。これによって切換弁57は
図2の右位置に切り換えられ、連通路40は連通する。したがってこの状態になると、ブームシリンダ6のロッド室6bからの圧油をアームシリンダ7のボトム室7aに再生供給することができる。
【0028】
図3に示すように、本実施形態に備えられるコントローラ68は、ブーム上げに際してのブーム用操作装置25の操作量を検出する第3圧力センサ67bの検出信号と、アームクラウドに際してのアーム用操作装置26の操作量を検出する第4圧力センサ67aの検出信号が入力され、ブーム用操作装置25とアーム用操作装置26の双方が操作されて、ブーム上げ・アームクラウド複合操作が行われようとしているかどうかを判別する判別部93と、第4圧力センサ67dで検出されたブームシリンダ6のロッド圧と、第2圧力センサ67cで検出されたアームシリンダ6のボトム圧との差圧ΔPを求める演算部90と、この演算部90で求めた差圧ΔPが予め定められる所定圧S以上のときに、切換弁57の開口面積が最大よりも小さな開口となるような開口面積を、すなわち、最大開口面積Mよりも小さな開口面積を出力するように設定された第1関数発生部91とを含んでいる。また、同
図3に示すように、本実施形態は、判別部93でブーム用操作装置25とアーム用操作装置26の双方が操作されたと判別されたときに、切換弁57の開口面積の制御の実施を許可する許可部、すなわちスイッチング部92と、このスイッチング部92で切換弁57の開口面積の制御が許可されたときに、すなわちスイッチング部92がオンとなったときに、第1関数発生部91で求められた開口面積に相応する値の制御信号を電磁弁69に出力する出力部94とを備えている。
【0029】
上述の第1関数発生部91は、差圧ΔPが所定圧Sに至るまでは最大開口面積Mを維持し、所定圧Sを超えると差圧ΔPが大きくなる伴って徐々に開口面積が小さくなる関係に設定してある。また、上述の出力部94は、開口面積が最大開口面積Mに至るまでは徐々に値を大きくする制御信号となり、最大開口面積M以上は最大の値の制御信号となる関係に設定してある。
【0030】
このように構成した本発明は、ブーム上げ、アームクラウド複合操作によって
図1に示すような掘削作業が行われる場合、ブーム用操作装置25が
図2の右方向に操作され、アーム用操作装置26が
図2の右方向に操作される。ブーム用操作装置25の操作によりパイロット圧がパイロット管路25aに導かれ、ブーム用方向制御弁23が同
図2の左位置に切り換えられ、アーム用操作装置26の操作によりパイロット圧がパイロット管路26aに導かれて、アーム用方向制御弁24が同
図2の左位置に切り換えられる。また、このときブーム用操作装置25の操作が第3圧力センサ67bで検出され、アーム用操作装置26の操作が第4圧力センサ67aで検出され、それぞれの検出信号がコントローラ68に出力される。
【0031】
上述のようにブーム用方向制御弁23が同
図2の左位置に切り換えられることにより、油圧ポンプ21から吐出される圧油が管路28、ブーム用方向制御弁23、主管路29bを介してブームシリンダ6のボトム室6aに供給され、ブームシリンダ6のロッド室6bから排出される圧油が、主管路29b、ブーム用方向制御弁23、管路42を介してタンク43に戻される。これにより、ブームシリンダ6は
図1の矢印13で示すように伸長し、ブーム3が同
図1の矢印12方向に回動してブーム上げが行われる。
【0032】
また、上述のように
図2に示すアーム用方向制御弁24が同
図2の左位置に切り換えられることにより、油圧ポンプ21から吐出される圧油が管路27、アーム用方向制御弁24、主管路30aを介してアームシリンダ7のボトム室7aに供給され、アームシリンダ7のロッド室7bから排出される圧油が、主管路30b、アーム用方向制御弁24を介してタンク43に戻される。これにより、アームシリンダ7は
図1の矢印9で示すように伸長し、アーム4が同
図1の矢印11方向に回動してアームクラウドが行われる。
【0033】
上述のようなブーム上げ操作とアームクラウド操作との複合操作によって、
図1に示すように、バケット5による掘削作業が実施される。
【0034】
このようなブーム上げ、アームクラウド複合操作において、ブームシリンダ6のロッド圧が第1圧力センサ67dで検出され、アームシリンダ7のボトム圧が第2圧力センサ67cで検出され、それぞれの検出信号がコントローラ68に出力される。
【0035】
上述のようにブーム用操作装置25が操作されたことに伴って第3圧力センサ67bから検出信号がコントローラ68に出力され、また、アーム用操作装置26が操作されたことに伴って第4圧力センサ67aから検出信号がコントローラ68に出力されると、コントローラ68の判別部93は、ブーム用操作装置25とアーム用操作装置26の双方が操作されてブーム上げ・アームクラウド複合操作が実施される状態にあると判別し、スイッチング部92をオンとする信号を出力する。これにより、スイッチング部92を介して第1関数発生部91と出力部94とが連絡される。なお、ブーム上げ・アームクラウド複合操作以外の動作のときには、スイッチング部92は判別部93の制御によりオフに保たれる。したがって、このようなときには第1関数発生部91の開口面積による制御は行われない。
【0036】
また、ブームシリンダ6のロッド圧を検出する第1圧力センサ67dの検出信号と、アームシリンダ7のボトム圧を検出する第2圧力センサ67cの検出信号とに基づいて、
図3に示すコントローラ68の演算部90で、ブームシリンダ6のロッド圧からアームシリンダ7のボトム圧を減算して差圧ΔPを求める演算が行われる。求められた差圧ΔPは第1関数発生部91に出力される。
【0037】
ブーム上げ・アームクラウド複合操作の間、上述の差圧ΔPが第1関数発生部91で設定される所定圧Sに満たないときには、最大開口面積Mが第1関数発生部91から出力される。この最大開口面積Mがスイッチング部92を介して出力部94に出力される。この出力部94は最大開口面積Mに応じた大きな値の制御信号を
図2に示す電磁弁69に出力する。
【0038】
電磁弁69は、
図2に示すように、大きな値の制御信号に応じて最大のパイロット圧をパイロット管路57bに供給するように作動する。このときのパイロット圧による力はばね57aの力よりも大きく、したがって切換弁57は、同
図2の右位置に切り換えられる。これにより、ブームシリンダ6のボトム室6bから排出された圧油が、主管路29b、管路56、切換弁57、逆止弁41、管路40、主管路30aを介してアームシリンダ7のボトム室7aに再生供給され、アームシリンダ7の増速を実現できる。
【0039】
コントローラ68の演算部90で求められるブームシリンダ6のロッド圧とアームシリンダ7のボトム圧との差圧ΔPが所定圧Sを超える程大きくなると、第1関数発生部91から出力される開口面積は、最大開口面積Mよりも小さなものとなる。この小さな開口面積に相応する信号が第1関数発生部91からスイッチング部92を介して出力部94に送られる。出力部94は、最大開口面積よりも小さな開口面積に応じた比較的小さな値の制御信号を電磁弁69に出力する。
【0040】
電磁弁69は、比較的小さな値の制御信号に応じて最大のパイロット圧よりも小さなパイロット圧をパイロット管路57bに供給するように作動する。これに応じて切換弁57は、同
図2の左位置側に切り換えられる傾向となり、こり切換弁57の開口面積が、コントローラ68の第1関数発生部91で求められた比較的小さな開口面積となるように制御される。
【0041】
この比較的小さな開口面積に制御された切換弁57、連通路40等を介して、ブームシリンダ6のロッド室6bから排出された油がアームシリンダ7のボトム室7aに再生される。
【0042】
上述のように本実施形態は、ブーム上げ・アームクラウド複合操作に際して、第1圧力センサ67dによって検出されるブームシリンダ6のロッド圧と、第2圧力センサ67cによって検出されるアームシリンダ7のボトム圧との差圧ΔPが所定圧S以上であることが検出されたときには、演算部90、第1関数発生部91、及び判別部93等を含む開口制御部を構成するコントローラ68によって、開口面積が小さくなるように切換弁57が制御される。すなわち、ブームシリンダ9のロッド室6bからアームシリンダ6のボトム室7aに送られる圧油の切換弁57における通過流量が、切換弁57が最大開口面積Mに保持されている場合に比べて少なくなる。これによりブーム上げ・アームクラウド複合操作に際し、ブームシリンダ6のロッド圧とアームシリンダ7のボトム圧との差圧ΔPに応じて機体に発生するショックを抑えることができ、操作性を向上させることができるとともに、高い作業精度を確保することができる。
【0043】
図4は、本発明の別の実施形態に備えられるコントローラの要部構成を示すブロック図である。
【0044】
この
図4に示すように、本発明に係る油圧駆動装置の第2実施形態は、コントローラ68が、第1実施形態に構成に加えて、ブーム用操作装置25の操作量に相当する第3圧力センサ67bで検出された圧力Paと、開口面積との関係が設定された第2関数発生部95と、アーム用操作装置26の操作量に相当する第4圧力センサ67aで検出される圧力Pbと、開口面積との関係が設定された第3関数発生部96と、第1関数発生部91、第2関数発生部95、及び第3関数発生部96からそれぞれ出力される開口面積の最小値を選択し、スイッチング部92に出力する最小値選択部97とを含む構成にしてある。その他の構成は、上述した第1実施形態と同等である。
【0045】
第2関数発生部95における圧力Paと開口面積の関係、及び第3関数発生部96における圧力Pbと開口面積の関係は、例えば掘削作業が行われるに際して経験的に望ましいと考えられる関係となっている。第2関数発生部95は、ブーム用操作装置25の操作量が比較的小さくて第2圧力センサ67bから出力される圧力Paが所定圧Aに満たない間は最大開口面積に保持し、所定圧A以上となると最大開口面積よりも小さな開口面積にする関係となっている。逆に、第3関数発生部96は、アーム用操作装置26の操作量が比較的小さく所定圧Bに満たない間は、開口面積を最大開口面積よりも小さな開口面積に保持し、アーム用操作装置26が大きく操作されて所定圧B以上となると最大開口面積にする関係となっている。
【0046】
これらの第2関数発生部95と第3関数発生部96とをコントローラ68に設けたことにより、ブーム上げ・アームクラウド複合操作によって掘削作業を行い、掘削した土砂等をダンプトラック等に積み込むような場合、ブーム上げ操作装置25が大きく操作されたときには、アームクラウド操作が同時に行われるときでも最小値選択部97から開口面積0がスイッチング部92を介して出力部94に出力され、
図2に示す切換弁57は同
図2の左位置に、すなわち連通路40を遮断する位置に保持される。また、アーム4のインチング操作を行うためにアーム用操作装置26が小さく操作されたときには、ブーム上げ操作が同時に行われるときでも最小値選択部97から開口面積0がスイッチング部92を介して出力部94に出力され、切換弁57は連通路40を遮断する位置に保持される。すなわち、上述のような操作を行うときには、再生を行わないように設定されている。
【0047】
また、例えば、ブーム用操作装置25のブーム上げ操作の操作量が、第3圧力センサ67bで検出される圧力Paが第2関数発生部95で設定される所定圧Aよりもわずかに大きくなるような操作量で、しかもアーム用操作装置26の操作量が、第4圧力センサ67aで検出される圧力Pbが第3関数発生部96で設定される所定圧Bよりもわずかに小さくなる操作量である場合であって、ブームシリンダ6のボトム圧とアームシリンダ7のロッド圧との差圧ΔPが第1関数発生部9で設定される所定圧Sよりも小さいときには、比較的大きな開口面積が最小値選択部97からスイッチング部92を介して出力部94に出力される。これによって切換弁52は、同
図2の右位置側に切り換えられる傾向となり、連通路40を介してブームシリンダ6のロッド室6bから排出された油をアームシリンダ7のボトム室7bに供給し、アームシリンダ7を増速させることができるようになっている。その他の基本的な作用効果は、第1実施形態と同じである。
【0048】
この第2実施形態も開口制御部を構成するコントローラ68が、第1実施形態におけるのと同等の演算部90、第1関数発生部91、スイッチング部92、判別部93、及び出力部94を備えていることから、第1実施形態と同様に、ブーム上げ・アームクラウド複合操作に際し、ブームシリンダ6のロッド圧とアームシリンダ7のボトム圧との差圧ΔPに応じて機体に発生するショックを抑えることができ、操作性を向上させることができる。特にこの第2実施形態は、コントローラ68が、掘削作業において予想されるブーム上げ・アームクラウド複合操作を考慮した関係が設定される第2関数発生部95、第3関数発生部96とともに、最小値選択部97を含む構成にしてあることから、掘削作業時の高い作業精度を確保できるとともに、掘削作業時の機体のショックを抑えることができる。