(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照合結果出力手段は、前記始動検知信号により計時を開始するタイマ手段を備え、前記認証情報の照合が設定した時間的期間内に成功した場合に、前記照合成功信号を出力する、請求項1または2に記載の始動制御装置。
前記照合失敗信号が、前記蓄電池から少なくとも前記動力系回路への電気的経路を開成させて動力系回路の動作を阻止し、前記照合成功信号が、前記動力系回路への電気的経路を閉成させて動力系回路の動作を可能とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の始動制御装置。
前記照合失敗信号が、前記蓄電池から少なくとも前記動力系回路への電気的経路を開成させて動力系回路の動作を阻止し、前記照合成功信号が、前記動力系回路への電気的経路を閉成させて動力系回路の動作を可能とする、請求項5に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難防止などのために各種の盗難防止装置やインテリリジェント・キーシステムなどが提案されている。既存のシステムは、例えば車両のエンジン始動を阻止するために該車両のイグニション回路にリレーの接点を介在させ、待機時にはリレーを作動させて接点を開放してエンジンの点火を不能にして盗難を防ぐ手法を用いるものが多い。
【0003】
図7は、従来の盗難防止装置700の機能ブロック図を示す。
図7に示す従来の盗難防止装置700は、ICカードといった権限証明手段701と、権限判定手段702とリレー手段705とを含んで構成されている。権限判定手段702は、権限証明手段701の種類によって、カードリーダ、ICタグリーダなどとして構成されている。盗難防止装置700は、待機時における始動制御を行うために、蓄電池703からの電力の供給を受け、車両待機時であっても電力を消費している。権限判定手段702は、待機時での始動制御を行うため、正当な権限に基づく始動操作であることを判定した後、リレー手段705を接点位置として、蓄電池703と、エンジン点火回路などの動力系に蓄電池703からの電力を供給し、車両の始動を可能とする。
【0004】
この他にも車両の盗難防止のための技術としてはこれまで各種の技術が提案されてきている。例えば、特開2007−137135号公報(特許文献1)では、イモビライザー機能を搭載した車両にICカードのリーダライタを搭載し、イモビライザーによる始動制御を解除する盗難防止装置が記載されている。
【0005】
また、特開2006−347432号公報(特許文献2)では、車両の駐車場所によらずエンジン始動のロックおよびその解除を可能にし、盗難防止の効果を向上させた車両盗難防止システムを提供することを課題とし、ドアロック解除要求信号を外部に送信し、外部から受信するエンジン始動ロック解除番号を表示し、エンジン始動ロック解除番号が入力されると、エンジン始動ロック解除番号を外部に送信する携帯端末と、ドアロック解除要求信号を携帯端末から受信すると、ドアロックを解除させ、エンジン始動ロック解除番号を生成して格納し、エンジン始動ロック解除番号を携帯端末に送信し、携帯端末からエンジン始動ロック解除番号を受信すると、受信したエンジン始動ロック解除番号と格納されたエンジン始動ロック解除番号とが一致するか否かを判定し、これらのエンジン始動ロック解除番号が一致すると、車両に対して鍵によるエンジン始動を可能な状態にさせる車両端末とを有する盗難防止装置を記載する。
【0006】
これまで各種の手法が提案されているものの、従来の手法は、エンジン始動ロック解除などの信号を正常に受け付けるまで、リレーをオフしておき、正常な始動動作であることが認証された後に、車両の始動を可能とする。このことは、車両が待機時にあるときにでも警戒と正規使用者からの権限情報とを判断するための機能手段を動作させておく待機電力を必要とすることを意味する。通常、車両待機中の電力は、車両が備える蓄電池から供給されるが、電池の容量は限られている。このため、盗難防止のために電力を消費し続けると、車両が長期間駐停車した場合に、バッテリー上がりなどの問題を生じさせ、またバッテリーの上がりと共に、盗難防止装置の機能も失わせてしまう場合もあるという不都合があった。
【0007】
また、車両の電子制御回路網に組み込まれ、相互通信無線の電子キーによって操作されるイモビライザーなどの盗難防止装置も知られている。イモビライザーは、高度な暗号化処理を使用するために盗難は不可能と考えられてきたが、近年では、不正な手段で車両の電子制御網に侵入して暗号が無力化されてしまう場合も想定される。またイモビライザーであっても、車両の待機時に電力を消費する点では省電力的な観点から充分なものではない。
【0008】
さらに従来の盗難防止装置は、盗難防止装置やそのための配線を撤去し、車両のイグニション回路を直結配線することで、エンジン始動阻止機能が無力化されることも想定される。また、従来の盗難防止装置では、無線送信機が故障したり、電池が消耗したりした場合に備えて、隠しスイッチを設けてエンジン始動阻止機能を解除する方法を採る場合が多い。しかしながら、このような隠しスイッチは、窃盗犯に発見されてしまえば、盗難防止機能の無力化に直結するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明は、車両の待機時に蓄電池から無駄な電力を供給すること無く、効率的な始動制御および盗難防止を行うことを可能とする始動制御装置および始動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
車両の始動制御装置であって、
車両を始動させるための認証情報を受領して、当該認証情報の権限を照合するための入力照合手段と、
前記車両の動力系回路に蓄電池からの電圧が印加されたことを検出して始動検知信号を出力する始動検出手段と、
前記始動検知信号を受領し、前記認証情報の照合が失敗した場合には照合失敗を通知する照合失敗信号を、設定された期間内に照合に成功した場合には照合成功信号を出力し、前記認証情報の照合に成功するまで当該照合失敗信号を維持する照合結果出力手段と
を備え、
前記蓄電池からの電力供給を判断して始動制御を行う、車両の始動制御装置が提供される。
【0012】
本発明では、
前記始動検知信号を受領して、車両電装系で使用される電位レベルと異なる電位レベルのプローブ信号を生成する電源制御手段と、
前記プローブ信号が供給されている場合に給油・油圧制御系回路への電気的経路を閉成させ、前記プローブ信号が供給されていない場合に給油・油圧制御系回路への電気的経路を開成する隠しリレー手段を制御する第2制御装置と
を備えることができる。
【0013】
本発明では、前記始動制御装置は、前記動力系回路への電気的経路の形成を制御するためのブレーク接点を形成するリレー手段を制御することができる。本発明では、前記照合結果出力手段は、前記始動検知信号により計時を開始するタイマ手段を備え、前記認証情報の照合が設定した時間的期間内に成功した場合に、前記照合成功信号を出力することができる。
【0014】
本発明では、前記照合失敗信号が、前記蓄電池から少なくとも前記動力系回路への電気的経路を開成させて動力系回路の動作を阻止し、前記照合成功信号が、前記動力系回路への電気的経路を閉成させて動力系回路の動作を可能とすることができる。
【0015】
本発明によれば、
制御装置が実行する車両の始動制御方法であって、前記方法は、
車両を始動させるための認証情報を受領して当該認証情報の権限を照合する段階と、
前記車両の動力系回路に蓄電池からの電圧が印加されたことを検出し、始動検知信号を出力する段階と
前記始動検知信号を受領し、前記認証情報の照合の結果に応答し、照合に失敗したときには照合失敗を通知する照合失敗信号を、設定された期間内に照合に成功した場合には照合成功信号を出力し、前記認証情報の照合に成功するまで当該照合失敗信号を維持する段階と
を含み、
前記蓄電池からの電力供給を判断して始動制御を行う、車両の始動制御方法が提供できる。
【0016】
本発明では、
前記始動検知信号を受領して、車両電装系で使用される電位レベルと異なる電位レベルのプローブ信号を生成する工程と、
前記プローブ信号が供給されている場合に給油・油圧制御系回路への電気的経路を閉成させ、前記プローブ信号が供給されていない場合に給油・油圧制御系回路への電気的経路を開成する工程と
を含むことができる。
【0017】
本発明では、前記照合失敗信号が、前記蓄電池から少なくとも前記動力系回路への電気的経路を開成させて動力系回路の動作を阻止し、前記照合成功信号が、前記動力系回路への電気的経路を閉成させて動力系回路の動作を可能とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両の待機時に蓄電池から無駄な電力を供給すること無く、効率的で省電力の始動制御および盗難防止を行うことを可能とすると共に、既存のイモビライザタイプの盗難防止機能に容易に追加することができ、車両盗難に対して高いセキュリティ性を提供する、始動制御装置および始動制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明につき、実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明が適用される車両10の概略図である。車両10は、筐体内が、エンジン空間および居住空間が仕切られており、エンジン空間内には、エンジン、セルモータといった動力系および給油・油圧系の機械要素11が配置されている。また、エンジン空間内には、動力系回路および給油・油圧系回路を動作させる電力を供給する蓄電池12が搭載されている。また居住空間内には、制御パネル15、ハンドル18、鍵シリンダー16、チェア19などが配置されていて、運転者が鍵にリモコン装置が連結されたキーホルダ17を、鍵シリンダー16に差し込んで、各機械要素11を蓄電池12によって動作させ、エンジンを始動させることが可能とされている。なお、リモコン装置は運転席近傍にあれば良く、必ずしもキーホルダ17の形態とされている必要はない。
【0021】
図1の車両10は、イモビライザタイプの始動制御機能を備えており、当該始動制御機能は、機械要素11のうち、動力系回路を制御するための制御装置13によって提供されている。また第2の実施形態では、制御装置13の他、機械要素11のうちの給油・油圧制御系回路の動作制御を行うための第2制御装置14を備えており、動力系と、給油・油圧制御系とを2系列として独立した始動制御を行っている。
【0022】
図2は、本実施形態の始動制御装置の機能ブロック図を示す。なお、説明の目的でキーホルダ17の機能も併せて記載する。本実施形態では、エンジン点火回路207など動力系回路への通電を制御するためのリレー(以下IGリレーとして参照する。)202は、ブレーク接点として構成されている。また、リレー203は、メーク接点として構成されていて認証情報の照合成功後、閉成される。また、本実施形態の制御装置13は、いわゆるPICとして参照されるマイクロプロセッサ(以下、単にマイコンとして参照する。)として構成されており、蓄電池205といった大容量電源とは別に提供される、3〜5Vの電力供給を受けてその動作を行う。マイコンは、車両の待機中には、イグニッションをオンにするまで電力が供給されないので、待機状態中の電力消費は全く発生しない。
【0023】
制御装置13は、運転者が鍵シリンダー16にキーホルダ17として提供される鍵206を差し込んで鍵シリンダー16を回転させ、蓄電池205からエンジン、セルモータを動作させるための動力系回路に対し、電圧が印加されたことを検知する。制御装置13は、当該始動動作が、IDコードといった識別情報が認証されていないうちに行われた場合、リレー202およびリレー203を開成させ、エンジン点火回路207およびセルモータ回路208のための回路を遮断する。
【0024】
制御装置13は、鍵206とは別体として構成されるリモコン装置201が内蔵する無線送信機から送付される、固有の認証情報であるIDコードを受信し、受信したIDコードを、制御装置13に登録されたIDコードと照合し、IDコードの使用権限を照合する。照合の結果、受信したIDコードが正当な場合、エンジン点火回路207のためのリレー202およびセルモータ回路208のためのリレー203が閉成されている場合には、直ちにエンジンの始動を可能とする。また、エンジン点火回路207のためのリレー202およびセルモータ回路208のためのリレー203が開成状態とされている場合には、各リレー202、203を閉成状態として、エンジンの始動を可能とする。
【0025】
リモコン装置201は、鍵206と連結されていても良く、車両の解錠や始動制御を行う機能を提供する。運転者は、解錠時にIDコードを送付するか、または他の態様で鍵206を鍵シリンダー16に挿入してからリモコン装置201を操作し、IDコードを制御装置13に送付する。このとき、正当なIDコードが所定の期間内に送付されれば、制御装置13は、正当な権限に基づく車両の起動であるとして、リレー202およびリレー203が接点位置となるように制御する。
【0026】
無線通信機と、制御装置13との間の通信220は、例えば315MHzのASKなどの方式によるワイヤレス通信を使用することもできるし、適切なプロトコルを使用する有線接続で行うこともできる。例えば、無線通信は、リモコン装置201が正常動作している場合に利用され、有線接続は、リモコン装置201の不具合などの場合に、IDコードを使用せずに他の秘密の緊急コードで車両を始動させる場合緊急解除モードの場合に好ましく利用される。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の制御装置13は、車両の待機時には、蓄電池205からの電力供給を受けること無く、休止しているので、電力を消費せず、車載電力の利用効率を著しく向上させている。また
図2に示す制御装置は、始動の検出を、蓄電池205との電気的接続により判断するため、従来技術で必要とされる、異常検出のためのセンサや判定手段を、待機時に作動させておくための消費電力が排除できる。
【0028】
また、第2の実施形態は、上述した制御装置13の他に、給油・油圧制御を行う給油・油圧制御系回路の動作を電気的に制御するための第2制御装置14を備える。第2制御装置14は、制御装置13から送付される動力系回路への電圧印加を示すプローブ信号を使用して、給油・油圧制御系回路の動作を制御する隠しリレー204を含んで構成されている。第2の実施形態では、制御装置13が蓄電池からの給電を検出すると、プローブ電位(プローブ信号であることを電位的に識別する電圧であり、車両のための、9V〜32Vの電圧信号ではない。)の電位レベルを有するプローブ信号を生成する。当該プローブ信号は、第2制御装置14のプローブ制御部(不図示)に送付される。当該第2制御装置は、制御装置13とは独立し、電装系ラインを制御する隠しリレー204を閉成・閉成することで、給油・油圧制御系回路への電力供給を制御する。
【0029】
隠しリレー204の機能を説明すると、第2制御装置14に対してプローブ信号が供給される場合、隠しリレー204は閉成されて、給油・油圧系回路209の動作を可能とする。一方、第2制御装置14に対してプローブ信号が供給されない場合、隠しリレー204は開成され、給油・油圧系回路209を動作させない。第2の実施形態は、例えば、制御装置13が無効化され、蓄電池205がエンジン点火回路207およびセルモータ回路208といった動力系回路に直結されて動作されてしまった場合に好ましく使用される。具体的には、制御装置13が無効化され、蓄電池205がエンジン点火回路207およびセルモータ回路208といった動力系回路に直結されて動作されてしまった場合には、プローブ信号が供給されない。このため、独立した隠しリレー204が開成し、給油・油圧のための電気的制御を不能とするので、結局車両は始動せず、さらに高いセキュリティ・レベルで、盗難防止制御を行うことが可能となる。
【0030】
以下、
図3および
図4を参照して、本発明をより詳細に説明する。
図3は、本実施形態のリモコン装置201の機能ブロックを示す。リモコン装置201は、例えばリチウムイオン電池302などで駆動されており、無線送信機として機能する送信部304と、IDコード生成部303と、緊急解除コード設定部306とを含んで構成されている。送信部304は、例えば315MHzのASKといった適切な通信プロトコルで、IDコード生成部303が生成したIDコードを制御装置13に送付する。
【0031】
また、IDコード生成部303は、暗号コードとしてのIDコードを生成し、送信ボタン305が押下げられると当該IDコードを、送信部304を介して制御装置13に送付する。緊急解除コード設定部306は、リモコン装置201の不具合が発生した場合、正規の使用者が車両を始動できない事態を避けるために、リモコン装置201内部に配置された緊急解除コード設定部306により発生させた適切なビット数の緊急解除コードを生成する機能を提供する。生成した緊急解除コードは、適切なインタフェースおよび専用ケーブル(不図示)を介して制御装置13に送付され、IDコードに代えて制御装置13による緊急解除コードの照合により、車両の始動を可能とさせている。
【0032】
説明する実施形態では、専用ケーブルは、MiniUSBコネクタを介して接続する構成とすることができるが、通信プロトコルは、USBとされる必要は無い。また、当該機能に関して言えば、複数の車両について緊急解除コードを共有化させておくことで、対応する鍵をマスタキーとして使用することが可能となり、業務用の特殊車両の管理のために好ましく用いることができる。
【0033】
図4は、本実施形態の制御装置13の機能ブロックである。制御装置13に対する信号入力における上流側の機能手段から説明する。制御装置13は、受信機415と、入力I/F422と、緊急解除コード照合部417とを含んで構成されている。受信機415は、リモコン装置201から送付されるIDコードを受信する。また、入力I/F422は、各種オプションの追加を可能とするI/Oインタフェースを提供する。
【0034】
マイコン412は、工場サイドで各種のプログラムの書込やデータの書込みなどが行われ、車両のイグニッションがオンされたときにその動作を開始する。緊急解除コード照合部417は、リモコン装置201の不調などの場合に有線ラインを介して送付される緊急解除コードを受領し、照合結果出力部に照合結果を送付して、緊急解除コードによる車両の始動を可能とする。
【0035】
電源制御部410は、始動検知信号を受領して、車両の他の電装系を動作させるための9V〜32Vの電圧レベルの電力を供給する安定化電源回路409の電位制御などを行う他、第2の実施形態では、車両が始動されたことを通知するプローブ信号を生成する。なお、当該プローブ信号は、Vccレベルは、車両の電装系では使用されない所定の電位レベルである。
【0036】
始動検出部411は、運転者が鍵を鍵シリンダーに差し込んで鍵を回転させるなどの動作を行うことにより、蓄電池(不図示)からの電圧がエンジン点火回路207およびセルモータ回路208に印加されたか否かを、例えば電圧検出することにより検出する。IDコード復号部418、入力照合部419、電源制御部410、および始動検出部411は、マイコン412の機能モジュールとして提供されている。しかしながら、マイコン412は、その他の機能、例えばタイマ機能などを具備していても良い。
【0037】
さらに
図4に示す制御装置13は、照合結果出力部416を備えている。照合結果出力部416は、入力照合部419から入力照合失敗の通知を受けると、照合失敗信号を生成してIG回路リレー413を開成させ、動力系回路の動作を不能する。また、STA回路リレー414は、メーク接点とされており、照合成功信号を受領して閉成される。以上のように、本実施形態では、エンジン始動に際して、異なる動作タイプのリレーを組み合わせることで、高いセキュリティ性を提供する。なお、他の実施形態では、STAリレー414についてもブレーク接点として構成し、IG回路リレーと同様の動作を行わせることができる。
【0038】
図4の制御装置13は、第2の実施形態では、第2制御装置を備え、第2制御装置は、制御装置13から独立して蓄電池からの電力供給を受ける別系統の安定化電源回路420と、プローブ制御部421と、隠しリレー204とを含んで構成することができる。プローブ制御部421は、電源制御部410が出力するプローブ信号を受領して隠しリレー204を閉成させることで、給油・油圧制御系の電気回路を動作可能とする。また、プローブ制御部421は、プローブ信号が供給されない場合には、隠しリレー204を開成し、給油・油圧制御系の機械要素の動作を阻止する。なお、隠しリレー204は、車両の適切な位置において、例えば電線結束チューブ内などに配置することもできる。
【0039】
以下、本実施形態の制御装置13による始動制御機構を詳細に説明する。無線送信装置から送付されたIDコードは、受信機415により受信される。受信機415が受信したIDコードは、マイコン412に送付され、IDコード復号部418による暗号の復号が行われる。復号されたIDコードは入力照合部419に入力され、ROMなどに格納されたデータとの間でIDコードの照合が行われる。入力照合部419には、また、始動検出部411の出力である始動検知信号が送付される。
【0040】
始動検出部411は、IG回路リレー413またはSTA回路リレー414に印加される電位を検出し、IG回路リレー413などに蓄電池(不図示)からの電圧が印加されると、イグニッションが「オン」の位置とされ、車両の始動が開始されたと判断する。始動検出部411は、車両の始動を検出すると、始動検知信号を生成し、入力照合部419および電源制御部410に送付する。
【0041】
入力照合部419は、始動検出部411から始動検知信号を受領すると、IDコードの照合が成功しているか否かを判断する。IDコードの照合に成功していない場合、正当な権限によらない異常始動の可能性があるため、タイマ手段を起動すると共に、タイマ手段の起動に同期して照合失敗を、例えばフラグ信号などとして照合結果出力部416に出力する。照合結果出力部416は、入力照合失敗の通知を受け取ると、IG回路リレー413を開成する制御信号を出力し、直ちに動力系電気回路への電力供給を阻止する。この処理によって始動が正当な権限によるものか、不正なものかが判定できない前に車両が始動されるのを防止する。このとき、STA回路リレー414は、開成されたままなので、入力照合失敗によりさらにセキュリティ性が高められることになるのである。
【0042】
この段階で、IG回路リレー413が開成されるので、始動検出部411の検出電圧は接地レベルとなり始動検出部411は、始動検知信号を解除するが、当該照合結果出力部416は、照合失敗信号の当該状態を、その後IDコードが正常に照合されたことを通知する信号などを受領するまでラッチする。この結果、照合結果出力部416は、IDコードの正常な照合に成功するまで、車両の始動不能の状態を維持する。
【0043】
一方、始動検出部411から始動検知信号が入来したとき、入力照合部419が、すでにIDコードを照合済みの場合、入力照合部419は、直ちに照合成功を示す信号などを照合結果出力部416に送付する。照合結果出力部416は、インターロック機能を備えており、車両の運転中におけるノイズ、外来電波またはマイコン412誤動作などによるIG回路リレー413およびSTA回路リレー414の状態の変化を防止している。
【0044】
以下、本実施形態の始動制御方法において、始動検出部411から始動検知信号を受領した時に、制御装置13がまだIDコードの照合に成功していない場合の始動制御について説明する。この態様は、不正な始動の場合に正当なIDコードを受信できない場合に生じる。また、この態様は、IDコードが車両に対してどの段階で送付されるかについては、車両の仕様や運転者の個別的な状況によっても相違するので、正当な始動動作の場合にでも発生しうるためである。
【0045】
始動検出部411から始動検知信号を受領した時に、IDコードの照合が終了していない場合、上述した通り、入力照合部419はタイマ手段を起動し、同時に動力系回路への電力供給を停止させる。制御装置13は、ROMなどのメモリに正当な照合に要するための時間的期間を格納しており、タイマ手段の計時開始と共にIDコードの照合が成功裏に終了するか否かを判断する。IDコードが、車両の始動を示す始動検知信号の受領後、適切な時間的期間内に照合された場合、入力照合部419は、照合成功を示す信号を照合結果出力部416に出力する。
【0046】
照合結果出力部416は、照合成功に対応してIG回路リレー413およびSTA回路リレー414の状態をオン状態に遷移させるべく、照合失敗信号のラッチを解放する。そして、照合成功信号を生成して当該IG回路リレー413、およびSTA回路リレー414を閉成状態にセットして、車両の始動を可能とする。
【0047】
その後、照合結果出力部416の出力状態は、照合結果出力部416のインターロック機能によってエンジン停止が運転者により指令されるまで保持される。照合結果出力部416のインターロック機能は、照合結果出力部416が、一旦IDコードが正当であると判断した場合、車両の機能が鍵操作などによって停止されるまでその状態を保持させることで、ノイズや誤動作による車両停止を防止するための機能である。
【0048】
一方、設定した時間的期間内にIDコードの照合に成功したことが通知されなければ、照合失敗信号がラッチされ続けるので、車両の始動は阻止されることになって、車両の不正な始動が防止できる。また正当な権限を有する運転者が何らかの原因により、設定した時間的期間内にIDコードを送付することができない場合にも、リトライすることで、容易に始動可能な状態とすることができる。
【0049】
また、第2の実施形態では、電源制御部410によるプローブ信号は、第2制御装置14に送付される。第2制御装置14は、車両の給油・油圧の駆動を制御する機能を有し、制御装置13から独立して蓄電池からの電力供給を受ける別系統の安定化電源回路420からの電力供給により、給油・油圧制御を行う。制御装置13に蓄電池からの電力供給が開始されると、当該状態の異常・正常に関わらず、電源制御部410は、プローブ信号(プローブ電位を有する。)を、第2制御装置14のプローブ制御部421に送付する。プローブ制御部421は、プローブ信号を受け取ると、隠しリレー204を閉成させ、給油・油圧系の動作を開始させる。
【0050】
このとき、IDコードが照合されないような異常始動時には、IG回路リレー413およびSTA回路リレー414は両方とも開成されているので、隠しリレー204が閉成されていてもエンジンおよびセルモータは始動せず、車両は始動しない。一方、隠しリレー204は、エンジンおよびセルモータなどの動力系から独立した給油・油圧制御系の電気的経路を制御する。このため、例えば、制御装置13などが撤去され、IG回路リレー413およびSTA回路リレー414に蓄電池が直結されて車両が始動された場合でも、プローブ制御部421にはプローブ信号が供給されない。
【0051】
加えてプローブ制御部421は、入力される信号の電圧レベルが、設定されたプローブ信号の電位レベルであることを判断する機能を備え、プローブ信号の供給に応じて隠しリレー204を開成・閉成する機能を有する。このため、仮に第2制御装置14の存在が知られプローブ制御部421に蓄電池からの電位が供給された場合でも、これとは反対にプローブ制御部421が接地電位とされても、プローブ制御部421は、プローブ信号不在として、車両の始動を阻止する。以上の通り、本実施形態では、動力系回路および給油・油圧系回路の動作制御を、車両への蓄電池からの電圧印加を契機とし、別系統の制御を提供するので、より高いセキュリティ性を提供する。
【0052】
図5は、第1の実施形態における始動制御方法のフローチャートである。
図5の処理は、ステップS500から開始し、ステップS501の段階では車両は始動待機状態にある。ステップS502では、車両が始動操作を受け付け、ステップS503で蓄電池からの電力供給を検出する。ステップS504で、復号したIDコードの照合に成功しているかを判断し、成功している場合(yes)処理をステップS508に分岐させ、車両を正常起動させる。一方、IDコードの照合に成功していない場合(no)、処理をステップS505に分岐させ、照合結果出力部416から直ちに照合失敗信号が送付されるので、IG回路リレーがオフされ、STA回路リレーがオフのまま保持されるので、エンジンが始動しない。
【0053】
その後、ステップS506で復号したIDコードの照合が設定時間内に成功したか否かを判断し、照合に成功すると(yes)、照合成功を照合結果出力部416に通知し、ステップS507で照合成功信号により、それぞれIG回路リレーをオン、STA回路リレーをオンに遷移させる。ステップS508では、その後の運転者による鍵の回転操作に従い、イグニッションおよびスタータ回路を動作させ、車両を正常始動させる。ステップS509では、照合結果出力部416をインターロックしIG回路リレーおよびSTA回路リレーの状態を保持させ、車両動作継続を確保してステップS510で処理を終了する。
【0054】
一方、ステップS506で復号したIDコードの照合が設定時間内に成功しない場合(no)、何の信号も出力せず、ステップS511では、IG回路リレーオフ、STA回路リレーオフの状態のまま保持されるので、ステップS512のように、車両は始動できない状態となり、車両の起動に失敗したまま、処理をステップS506に戻し、IDコードの照合が成功するまで車両の始動を阻止する。
【0055】
以上のように、本実施形態では、IDコードを照合する段階では、既にエンジン・キーが「IG」位置になっている。この段階では、エンジン点火回路はリレー202で開成されるが、制御装置13は、リレー202の上流側から電力を受けるので、キーを“IG(イグニッション)”位置に操作した段階で制御装置13が作動開始する。このため、本発明では待機時に全く蓄電池(バッテリー)電力を使用しないので蓄電の消耗を防ぐと共に、蓄電池の電力消費を最低化しながら高いセキュリティの始動制御を行うことができる。
【0056】
図6は、第2の実施形態における始動制御方法のフローチャートである。
図6の処理は、第2制御装置14を使用する点が異なり、その他は
図5の処理と同一なので、説明を簡略化するために共通する処理の説明を省略し、異なる処理を詳細に説明する。
【0057】
図6の処理は、
図5と同様、ステップS603で始動を検出すると、ステップS604でプローブ制御部421に通知して隠しリレー204をオンとし、ステップS605で復号したIDコードの照合に成功しているかを判断し、成功している場合(yes)処理をステップS609に分岐させ、車両を正常起動させる。一方、IDコードの照合に成功していない場合(no)、処理をステップS606に分岐させ、IG回路リレーをオフし、STA回路リレーはオフのままとされるので、エンジンは始動されない。
【0058】
ステップS607では、復号したIDコードの照合が設定時間内に成功したか否かを判断し、照合に成功すると(yes)、照合成功を照合結果出力部416に通知し、IG回路リレーをオン、STA回路リレーをオンに遷移させ、その後、ステップS608〜ステップS611で
図5と同様に始動制御を行い、処理を終了する。
【0059】
一方、ステップS607で復号したIDコードの照合が設定時間内に成功しない場合(no)、照合結果出力部416は、何の信号も出力せず、ステップS612でIG回路リレーオフ、STA回路リレーオフの状態のまま保持させる。さらにエンジン・動力系が蓄電池の直結などによって不正に起動され、かつ制御装置13が無効化された場合でも、電源制御部410から第2制御装置に蓄電池に接続されたことを通知するべきプローブ電位を有するプローブ信号が供給されていないので、隠しリレー204がオフとされる。
【0060】
このため、ステップS613で、給油・油圧系の制御が阻止され、結局ステップS614では、車両は始動できない状態のままとなり、結局車両の起動に失敗したまま、ステップS607の処理を反復することになって、車両の不正な始動が阻止される。
【0061】
以上のように、第2の実施形態では、エンジン点火回路207、セルモータ回路208といった動力系と、給油・油圧系の2系統から、3段階のセキュリティを以て始動制御を行うことができるので、蓄電池の電力消費を最低化しながらより高いセキュリティの始動制御を行うことができる。また、第2制御装置14の隠しリレーは、エンジン電装系とは異なる配置として、他の回路や配線の中に紛れ込ませることができるので、第2制御装置14の隠しリレーを発見しようとしても一般に困難で、高いセキュリティ性を提供できる。
【0062】
また、第2の実施形態では、悪意のある者が、制御装置13を撤去して蓄電池を動力系に直結したとしても、プローブ制御部421に照合成功のプローブ電位のプローブ信号が供給されない。この結果、隠しリレー204は開成したままとされるので、給油・油圧系が作動せず、この結果車両の起動に失敗することになって、不正な始動を防止できる。
【0063】
これまで本発明を、実施形態をもって説明してきたが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。