特許第5938368号(P5938368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大王製紙株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5938368-生理用ナプキン 図000002
  • 特許5938368-生理用ナプキン 図000003
  • 特許5938368-生理用ナプキン 図000004
  • 特許5938368-生理用ナプキン 図000005
  • 特許5938368-生理用ナプキン 図000006
  • 特許5938368-生理用ナプキン 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938368
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】生理用ナプキン
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20160609BHJP
   A61F 13/472 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61F13/18 340
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-111645(P2013-111645)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-230571(P2014-230571A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年10月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 愛
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−137282(JP,A)
【文献】 特開2005−013268(JP,A)
【文献】 特開2008−246093(JP,A)
【文献】 特表2005−523139(JP,A)
【文献】 特開2003−180739(JP,A)
【文献】 特開2010−042060(JP,A)
【文献】 特開2010−042162(JP,A)
【文献】 特開2007−143697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/15−13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも不透液性裏面シートの表面側に吸収体が配設されるとともに、表面側両側部にそれぞれ長手方向に沿って立体ギャザーが形成された生理用ナプキンにおいて、
前記立体ギャザーは、折り畳み状態で、幅方向中心側で折り返された二重のシートの少なくとも体液排出部を含む長手方向範囲であって折返し部の近傍部分に、下層側の構成部材に接合されない非接合領域が備えられ、前記非接合領域に対応する幅方向中間部の上層側のシートに、長手方向に沿って弾性部材が配置されており、
前記二重のシート同士は、生理用ナプキンの長手方向に対して、前記非接合領域の端縁より生理用ナプキンの端部寄りの位置を基点として生理用ナプキンの端縁まで形成されるとともに、生理用ナプキンの幅方向に対して、上層側のシート幅より狭い幅で形成された上層側接合領域で接合され、
前記立体ギャザーは、起立状態で、前記非接合領域の外側縁部を基点として肌側に起立することにより、前記弾性部材から前記非接合領域の外側縁部までの間が前記吸収体の表面側から突出する起立壁として作用するとともに、前記弾性部材より外側部分が装着時の肌当接面として作用し、前記肌当接面として作用する部分が折り畳み状態より起立状態の方が生理用ナプキンの幅方向外側に移動するように構成されていることを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項2】
少なくとも不透液性裏面シートの表面側に吸収体が配設されるとともに、表面側両側部にそれぞれ長手方向に沿って立体ギャザーが形成された生理用ナプキンにおいて、
前記立体ギャザーは、折り畳み状態で、生理用ナプキンの側方側から中心側方向に延在したシートが前記吸収体と重なる位置に設けられる折返し部で側方側に折り返されることによって、下層側折返し面と上層側折返し面とを有し、生理用ナプキンの側方側から中心側方向の所定領域に亘って前記下層側折返し面とこれより下層側の構成部材とが接合される下層側接合領域が形成されるとともに、少なくとも体液排出部を含む長手方向範囲であって前記折返し部の近傍部分に前記下層側折返し面と下層側の構成部材とが接合されない非接合領域が形成され、且つ生理用ナプキンの長手方向両端部において前記上層側折返し面と下層側折返し面とが接合される上層側接合領域が形成され、前記上層側折返し面に該上層側折返し面の幅方向外側を前記吸収体の側縁より外側に延在させた外側延出代が設けられ、前記上層側折返し面の前記非接合領域に対応する幅方向中間部に長手方向に沿って内側弾性部材が配置されるとともに、これより幅方向外側に長手方向に沿って外側弾性部材が配置されており、
前記上層側接合領域は、生理用ナプキンの長手方向に対しては、前記非接合領域の端縁より生理用ナプキンの端部寄りの位置を基点として生理用ナプキンの端縁まで形成され、生理用ナプキンの幅方向に対しては、前記上層側折返し面の幅より狭い幅で形成されており、
前記立体ギャザーは、起立状態で、前記下層側接合領域の内側縁部を基点として肌側に起立することにより、前記内側弾性部材から前記下層側接合領域の内側縁部までの間が前記吸収体の表面側から突出する起立壁として作用するとともに、前記内側弾性部材より外側部分が装着時の肌当接面として作用し、前記肌当接面として作用する部分が折り畳み状態より起立状態の方が生理用ナプキンの幅方向外側に移動するように構成されていることを特徴とする生理用ナプキン。
【請求項3】
前記生理用ナプキンは、体液排出部に対応する部分に吸収体の中高部が形成される場合はその中高部を除く部分の厚みが3mm以下に設定されている請求項1、2いずれかに記載の生理用ナプキン。
【請求項4】
前記立体ギャザーの起立状態において、前記肌当接面は、前記吸収体の側縁より外側に延在する部分の幅の方が、前記吸収体と重なる位置に介在する部分の幅より大きく形成されている請求項1〜3いずれかに記載の生理用ナプキン。
【請求項5】
前記外側弾性部材は、前記上層側折返し面の外側延出代部分の幅方向中間部に配置されている請求項2記載の生理用ナプキン。
【請求項6】
前記外側弾性部材のテンションは内側弾性部材のテンションに対し同等以上に設定されている請求項2記載の生理用ナプキン。
【請求項7】
前記下層側接合領域は、生理用ナプキンの側方側から前記吸収体と重なる位置まで形成されている請求項2記載の生理用ナプキン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には経血やおりものなどを吸収する生理用ナプキンに係り、詳しくは表面側両側部にそれぞれ肌側に起立する立体ギャザーを備えた薄型の生理用ナプキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の生理用ナプキンでは、違和感が無く装着性に優れる、目立ちにくいなどの点とともに、持ち運びに便利である、または収納性が良い、物流の効率化や省資源化などの要請から、薄型化およびコンパクト化などが図られてきた。ところが、このような薄型の生理用ナプキンでは、装着性などが損なわれないように一般的に立体ギャザーが設けられていないため、肌との間に隙間ができやすく、経血や尿などの体液の横漏れが生じやすかった。
【0003】
前記立体ギャザーとしては、従来より種々の形態のものが開発され、これに関連した技術文献も多数存在する。例えば、下記特許文献1においては、サイド不織布に、その高さ方向中間部に複数本の弾性伸縮部材が配設され、前後端部が断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体側に接着されることによって、前記弾性伸縮部材配設部位を屈曲点として、断面く字状に内側に開口を向けたポケットを形成しながら表面側に起立する立体ギャザーが開示されている。また、同じく下記特許文献1には、サイド不織布の前後端部が外方に折り返された状態で吸収体側に接着されることによって、単に直線状に起立する立体ギャザーが開示されている。
【0004】
さらに、下記特許文献2においては、防漏側壁に、自由端に沿って設けられて弾性収縮力を発揮する弾性材と、前記防漏側壁の縦方向の両端側から縦方向の中間位置に向かうにしたがって基端側から自由端側へ接近する収縮作用線を形成する弾性材とが設けられており、前記防漏側壁の縦方向の両端部は、前記自由端が幅方向の外側に向けられて受液側表面に接合されている吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献3においては、防漏壁は、吸収体の上方にて長手方向に沿って表面シートに接合されており、その接合部を基点として使用時に起立する起立部と、接合部から幅方向の外方に延び且つ吸収性本体の側面部を被覆する本体側部被覆部とを有している生理用ナプキンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−290498号公報
【特許文献2】特許第3847046号
【特許文献3】特開2011−120764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
市販の生理用ナプキンに使用されている立体ギャザーとしては、上記特許文献1に記載された断面く字状のものや直線状のものが一般的であるが、断面く字状のものではサイド不織布を断面Z状に折り畳んで積層しなければならないため、厚みが厚くなって薄型化が図れないとともに、装着時の違和感が発生して薄型生理用ナプキンの特徴が損なわれる問題があった。また、単にサイド不織布を外方に1回折り返しただけの直線状の立体ギャザーでは、起立高さが十分ではなく、肌との間に隙間が生じやすいとともに、側方に流れる体液を堰き止める起立壁部分を形成しにくかった。
【0008】
さらに、上記特許文献2記載のような、弾性材を立体ギャザーの長手方向に沿って湾曲的に配置した肌当接面の幅が変化する立体ギャザーや、上記特許文献3記載のような断面T字型に起立する立体ギャザーの場合、装着感が悪化したり、薄型化が図れないという問題が生じるおそれがあった。
【0009】
また、一般の生理用ナプキンのようにある程度の厚さの吸収体厚を有するものでは、体液が吸収体に吸収された後、吸収体内部で拡散することによって吸収体の広い範囲に吸収保持できる構造となっているが、薄型生理用ナプキンの場合、吸収体中に高密度で高吸水性樹脂が含有されているため、吸収体の内部を体液が拡散する割合が少なく、生理用ナプキンの表面を体液が拡散した後、吸収体に吸収保持される構造となっている。このため、薄型生理用ナプキンの場合は特に、体液吸収に有効な表面部分を広い範囲に亘って確保しておくことが重要となり、装着時に立体ギャザーが内側に倒れ込んで体液吸収に有効な表面幅が狭くなるような事態を避ける必要がある。この点において、上記特許文献1記載の断面く字状の立体ギャザーや、上記特許文献2記載の起立先端の肌当接面部分の幅が股間部において狭くなるような立体ギャザー、上記特許文献3記載の断面T字状の立体ギャザーなどの場合には、脚の付け根の内側部分からの圧力や脚の動きなどによって、立体ギャザーの起立先端の肌当接面部分が内側に倒れ込みやすく、有効な体液吸収のための表面幅が狭くなるおそれがあった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、薄型の生理用ナプキンにおいても、装着時に違和感がなく、体液の堰き止め効果が高いとともに、装着時の内側への倒れ込みを防止した立体ギャザーを備えた生理用ナプキンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、少なくとも不透液性裏面シートの表面側に吸収体が配設されるとともに、表面側両側部にそれぞれ長手方向に沿って立体ギャザーが形成された生理用ナプキンにおいて、
前記立体ギャザーは、折り畳み状態で、幅方向中心側で折り返された二重のシートの少なくとも体液排出部を含む長手方向範囲であって折返し部の近傍部分に、下層側の構成部材に接合されない非接合領域が備えられ、前記非接合領域に対応する幅方向中間部の上層側のシートに、長手方向に沿って弾性部材が配置されており、
前記二重のシート同士は、生理用ナプキンの長手方向に対して、前記非接合領域の端縁より生理用ナプキンの端部寄りの位置を基点として生理用ナプキンの端縁まで形成されるとともに、生理用ナプキンの幅方向に対して、上層側のシート幅より狭い幅で形成された上層側接合領域で接合され、
前記立体ギャザーは、起立状態で、前記非接合領域の外側縁部を基点として肌側に起立することにより、前記弾性部材から前記非接合領域の外側縁部までの間が前記吸収体の表面側から突出する起立壁として作用するとともに、前記弾性部材より外側部分が装着時の肌当接面として作用し、前記肌当接面として作用する部分が折り畳み状態より起立状態の方が生理用ナプキンの幅方向外側に移動するように構成されていることを特徴とする生理用ナプキンが提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、先ず装着前の立体ギャザーの折り畳み状態において、幅方向中心側で折り返した二重シート構造とし、少なくとも体液排出部を含む長手方向範囲であって二重シートの折返し部の近傍部分に下層側の構成部材(前記吸収体や不透液性裏面シート等)に接合されない非接合領域が備えられ、前記非接合領域に対応する幅方向中間部に長手方向に沿って弾性部材が配置された構造を備えている。さらに、前記二重シート同士は、生理用ナプキンの長手方向に対して、前記非接合領域の端縁より生理用ナプキンの端部寄りの位置を基点として生理用ナプキンの端縁まで形成されるとともに、生理用ナプキンの幅方向に対して、上層側のシート幅より狭い幅で形成された上層側接合領域で接合されている。
【0013】
かかる生理用ナプキンの装着に際して立体ギャザーを起立させた状態では、前記立体ギャザーが前記非接合領域の外側縁部を基点として肌側に起立することによって、前記弾性部材から前記非接合領域の外側縁部までの間が、折返し状態が解除されて吸収体の表面側から突出する起立壁として作用するとともに、前記弾性部材より外側部分が装着時の肌当接面として作用するようになる。ここで、前記弾性部材が前記非接合領域に対応する幅方向中間部に配置されているため、前記弾性部材が収縮することによって前記非接合領域の外側縁部を基点として起立したときに、弾性部材が非接合領域の外側縁部の方向に引っ張られる結果、前記肌当接面として作用する部分が折り畳み状態より起立状態の方が生理用ナプキンの幅方向外側に移動するように構成されている。
【0014】
このため、生理用ナプキンの装着時に、立体ギャザーの肌当接面が内側に倒れ込む危険性が大幅に減少し、体液吸収に有効な吸収体の表面幅を広く確保することが可能となり、薄型の生理用ナプキンであっても高い吸収性能を確保することができるようになる。また、立体ギャザーの断面形状は、弾性部材を屈曲点としてこれより吸収体側が吸収体の表面側から突出する起立壁を形成するため、この起立壁によって体液の堰き止め効果を確保することができ、横漏れが防止できる。さらに、起立状態で前記肌当接面が折り畳み状態より生理用ナプキンの幅方向外側に移動するように構成されているため、生理用ナプキンの装着時に立体ギャザーの肌当接面がショーツの側縁より外側にはみ出して装着されやすくなり、脚の付け根部分の内側からの圧力や脚の動きなどによって、立体ギャザーが内側に倒れ込む危険性が大幅に低下する。また、前記立体ギャザーは、幅方向中心側で折り返された二重のシートからなるため、立体ギャザーの厚みが薄くて済み、装着時に違和感を感じにくくすることができる。
【0015】
また、二重のシート同士を接合している上層側接合領域を所定領域に形成することによって、前記肌当接面が肌に当たる角度を調整したり、装着時の違和感を軽減したりしている。具体的には、前記二重シート同士は、ナプキン長手方向に対しては、前記非接合領域の端縁よりナプキン端部寄りの位置を基点としてナプキン端縁まで形成されるとともに、ナプキン幅方向に対しては、上層側のシート幅より狭い幅で形成された上層側接合領域で接合されるようにしている。前記上層側接合領域のナプキン長手方向の基点を非接合領域の端縁より端部寄りの位置に設けることによって、上層側の肌当接面として作用する部分の先端(自由端)が肌側に向けて傾斜しやすくなり、肌当接面が肌に沿ってフィットしやすくなる結果、立体ギャザーの内側への倒れ込みが防止できる。また、前記上層側接合領域のナプキン幅方向の幅を上層側のシート幅より狭い幅で形成することによって、硬化して肌当たりの悪化の原因となる接合領域を小さな面積で形成することにより装着時の違和感を軽減している。
【0016】
請求項2に係る本発明として、少なくとも不透液性裏面シートの表面側に吸収体が配設されるとともに、表面側両側部にそれぞれ長手方向に沿って立体ギャザーが形成された生理用ナプキンにおいて、
前記立体ギャザーは、折り畳み状態で、生理用ナプキンの側方側から中心側方向に延在したシートが前記吸収体と重なる位置に設けられる折返し部で側方側に折り返されることによって、下層側折返し面と上層側折返し面とを有し、生理用ナプキンの側方側から中心側方向の所定領域に亘って前記下層側折返し面とこれより下層側の構成部材とが接合される下層側接合領域が形成されるとともに、少なくとも体液排出部を含む長手方向範囲であって前記折返し部の近傍部分に前記下層側折返し面と下層側の構成部材とが接合されない非接合領域が形成され、且つ生理用ナプキンの長手方向両端部において前記上層側折返し面と下層側折返し面とが接合される上層側接合領域が形成され、前記上層側折返し面に該上層側折返し面の幅方向外側を前記吸収体の側縁より外側に延在させた外側延出代が設けられ、前記上層側折返し面の前記非接合領域に対応する幅方向中間部に長手方向に沿って内側弾性部材が配置されるとともに、これより幅方向外側に長手方向に沿って外側弾性部材が配置されており、
前記上層側接合領域は、生理用ナプキンの長手方向に対しては、前記非接合領域の端縁より生理用ナプキンの端部寄りの位置を基点として生理用ナプキンの端縁まで形成され、生理用ナプキンの幅方向に対しては、前記上層側折返し面の幅より狭い幅で形成されており、
前記立体ギャザーは、起立状態で、前記下層側接合領域の内側縁部を基点として肌側に起立することにより、前記内側弾性部材から前記下層側接合領域の内側縁部までの間が前記吸収体の表面側から突出する起立壁として作用するとともに、前記内側弾性部材より外側部分が装着時の肌当接面として作用し、前記肌当接面として作用する部分が折り畳み状態より起立状態の方が生理用ナプキンの幅方向外側に移動するように構成されていることを特徴とする生理用ナプキンが提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明は、立体ギャザーの構造についてより具体的に規定したものである。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記生理用ナプキンは、体液排出部に対応する部分に吸収体の中高部が形成される場合はその中高部を除く部分の厚みが3mm以下に設定されている請求項1、2いずれかに記載の生理用ナプキンが提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明では、薄型の生理用ナプキンとして、厚みが3mm以下(体液排出部に対応する部分に吸収体の中高部が形成される場合はその中高部を除く部分の厚み)に設定されたものとしている。
【0020】
請求項4に係る本発明として、前記立体ギャザーの起立状態において、前記肌当接面は、前記吸収体の側縁より外側に延在する部分の幅の方が、前記吸収体と重なる位置に介在する部分の幅より大きく形成されている請求項1〜3いずれかに記載の生理用ナプキンが提供される。
【0021】
上記請求項4記載の発明では、前記立体ギャザーの起立状態において、前記肌当接面を吸収体の側縁より外側に延在させる割合として、外側に延在する部分の幅の方が吸収体と重なる位置に介在する部分の幅より大きく形成することによって、肌当接面が内側へ倒れ込むのを防止している。
【0022】
請求項5に係る本発明として、前記外側弾性部材は、前記上層側折返し面の外側延出代部分の幅方向中間部に配置されている請求項2記載の生理用ナプキンが提供される。
【0023】
上記請求項5記載の発明では、前記外側弾性部材の配設位置について規定している。前記外側弾性部材は、前記上層側折返し面の外側延出代部分の幅方向中間部に配置することが好ましい。これにより、弾性部材が肌当接面の広い範囲に配設されることとなり、肌との接触面積が増加して漏れを防ぐことができる。
【0024】
請求項6に係る本発明として、前記外側弾性部材のテンションは内側弾性部材のテンションに対し同等以上に設定されている請求項2記載の生理用ナプキンが提供される。
【0025】
上記請求項6記載の発明では、前記外側弾性部材のテンションを内側弾性部材のテンションに対し同等以上に設定することによって、立体ギャザーの肌当接面が内側に傾斜した断面形状で起立しやすくなり、肌との密着性をより一層向上させることができる。
【0026】
請求項7に係る本発明として、前記下層側接合領域は、生理用ナプキンの側方側から前記吸収体と重なる位置まで形成されている請求項2記載の生理用ナプキンが提供される。
【0027】
上記請求項7記載の発明では、前記下層側折返し面を下層側の構成部材に接合する接合領域の範囲として、生理用ナプキンの側方側から前記吸収体と重なる位置まで形成することによって、この接合領域の内側縁部を基点として起立する立体ギャザーの起立壁が吸収体の介在位置に形成されることとなり、起立壁で堰き止めた体液を吸収体に吸収しやすくしている。
【発明の効果】
【0028】
以上詳説のとおり本発明によれば、薄型の生理用ナプキンにおいても、装着時に違和感がなく、体液の堰き止め効果が高いとともに、装着時の内側への倒れ込みを防止した立体ギャザーを備えた生理用ナプキンが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2】立体ギャザーGの折り畳み状態を示す断面図(図1のII−II線矢視図)である。
図3】立体ギャザーGの起立状態を示す断面図である。
図4】生理用ナプキン1のショーツへの装着状態を示す断面図である。
図5】サイド不織布7の接合領域等を示す展開図である。
図6】長手方向端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0031】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布7,7とから構成されている。前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と、前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる複合シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0032】
本発明に係る生理用ナプキン1は、厚みが3mm以下に設定された薄型ナプキンとすることが好ましく、図示しないが体液排出部に対応する部分及びその周辺に吸収体の中高部が形成される場合にはその中高部を除く部分の厚みが3mm以下に設定されたものが好適である。また、着用者が昼間に歩いている場合など脚の動きなどに対応できるものを想定しているため、生理用ナプキン1の長手方向の全長が20〜30cmの昼間用ナプキンを対象としている。
【0033】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0034】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0035】
前記透液性表面シート3面には、股間部領域に吸収体の中高部を形成する場合にはその中高部を所定位置に保持するとともに、表面側にきっちりと膨出させる、吸収した体液を封じ込める等のために、小判状のエンボス10が形成されている。また、前側領域には、円弧状エンボスの両端をそのまま股間部領域側まで延在させた略逆U字状エンボス11が形成されているとともに、後側領域には、円弧状エンボスの両端をそのまま股間部領域側まで延在させた略U字状エンボス12がそれぞれ形成されている。
【0036】
前記透液性表面シート3は、できる限り設けた方が好ましいが、ナプキンのより一層の薄型化を図るため設けないことも可能である。透液性表面シート3を設けない場合には、クレープ紙5や不織布によって吸収体4を囲繞するか、吸収体4の表面側のみを覆うことが望ましい。
【0037】
前記不透液性裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するためにクレープ紙5によって囲繞するのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0038】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0039】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は吸収体重量の10〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が10%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
【0040】
本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。なお、ナプキンの薄型化を図るため、クレープ紙5は設けなくても良いし、吸収体4を囲繞するのではなく表面側のみを覆うように設けても良い。
【0041】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。素材としては、SMMS、エアスルー等によって製造された不織布を使用することが好ましい。目付は30〜45g/m程度のものが好ましい。
【0042】
前記サイド不織布7の内方側は、図2に示されるように、前記サイド不織布7をほぼ二重に折り返すとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1または複数の、図示例では2本の内側弾性部材8と外側弾性部材9が配設され、その収縮力によって前記二重シート部分を表面側に起立させた立体ギャザーG、Gが形成されている。この立体ギャザーGの構造について、以下にさらに具体的に詳述する。
【0043】
〔立体ギャザーGの構造〕
前記立体ギャザーGは、折り畳み状態で、図2に示されるように、ナプキンの側方側から中心側方向に延在したサイド不織布7が吸収体4と重なる位置に設けられる折返し部Gbで側方側に折り返されることによって、下層側折返し面7aと上層側折返し面7bとを有し、ナプキンの側方側から中心側方向の所定領域に亘って前記下層側折返し面7aとこれより下層側の構成部材(前記透液性表面シート3や不透液性裏面シート2等)とが接合される下層側接合領域13が形成されるとともに、少なくとも体液排出部Hを含む長手方向範囲であって前記折返し部Gbの近傍部分に前記下層側折返し面7aと下層側の構成部材とが接合されない非接合領域14が形成され、且つナプキン長手方向両端部において前記上層側折返し面7bと下層側折返し面7aとが接合される上層側接合領域15(図5参照。)が形成され、前記上層側折返し面7bに該上層側折返し面7bの幅方向外側を前記吸収体4の側縁4aより外側に延在させた外側延出代7cが設けられ、前記上層側折返し面7bの非接合領域14に対応する幅方向中間部に長手方向に沿って内側弾性部材8が配置されるとともに、これより幅方向外側に、好ましくは前記外側延出代7c部分の幅方向中間部に長手方向に沿って外側弾性部材9が配置されている。
【0044】
即ち、図2に示されるように、前記サイド不織布7は、少なくとも体液排出部Hを含む長手方向範囲において下層側折返し面7aが側方側から吸収体4の側縁4aより内側に距離Kの位置までが前記下層側接合領域13によって下層側の構成部材に接合され、この下層側接合領域13の内側縁部13aから内側に距離Xの位置までが非接合領域14とされ、この位置で折返し部Gbが形成され、これより端部Gaまでの距離Tの区間が上層側折返し面7bとされている。この上層側折返し面7bは、端部Ga側が吸収体4の側縁4aより幅方向外側に幅Sだけ延在させた外側延出代7cが形成されている。前記上層側折返し面7bに配設される弾性部材は、内側弾性部材8が前記折返し部Gbから距離Yだけ外側に離間した位置に設けられ、外側弾性部材9が端部Gaから距離Zだけ内側に離間した位置に設けられている。前記内側弾性部材8と外側弾性部材9の間隔はUである。
【0045】
このようにして折り畳まれた立体ギャザーGは、起立状態では、図3に示されるように、前記下層側接合領域13の内側縁部13a(非接合領域14の外側縁部)を基点として肌側に起立することにより、前記内側弾性部材8から前記下層側接合領域13の内側縁部13aまでの間(区間X+Y)が、前記折返し部Gbが解除されて吸収体4(透液性表面シート3)の表面側から突出する起立壁Gcとして作用するとともに、前記内側弾性部材8を屈曲点として前記内側弾性部材8より外側部分(区間Z+U)が外方側に向けて高くなる傾斜角で傾斜し、装着時に着用者の肌に接触する肌当接面Gdとして作用する。そして、図4に示されるように、前記肌当接面Gdとして作用する部分が折り畳み状態より起立状態の方がナプキンの幅方向外側に移動するように構成されている。即ち、吸収体4の側縁4aから上層側折返し面7bの端部Gaまでの幅方向距離(吸収体4の側縁4aからの突出量)が、折り畳み状態のSより起立状態のS’の方が大きくなるように構成されている(S<S’)。
【0046】
前記肌当接面Gdとして作用する部分が折り畳み状態より起立状態の方がナプキン幅方向外側に移動する仕組みとしては、前記内側弾性部材8が前記上層側折返し面7bの前記非接合領域14に対応する部分の幅方向中間部に配置されているため、即ち前記下層側接合領域13の内側縁部13aより内側に配置されているため、内側弾性部材8の収縮力によって前記下層側接合領域13の内側縁部13aを基点として起立したときに、内側弾性部材8が下層側接合領域13の内側縁部13a方向の斜め上方に引っ張られる力が作用するためである。
【0047】
このような立体ギャザーGが形成された生理用ナプキン1をショーツに装着するに当たっては、図4に示されるように、ほぼ吸収体4の側縁に沿ってウイング状フラップWを折り返し、ショーツSHの側縁を巻き込むようにして固定すると、上述の通り内側弾性部材8の収縮力によって立体ギャザーGの肌当接面Gdが幅方向外側に移動するため、肌当接面Gdが内側に倒れ込む危険性が大幅に減少し、体液吸収に有効な吸収体4の表面幅を広く確保することが可能となり、薄型の生理用ナプキン1であっても高い吸収性能を確保することができるようになる。また、立体ギャザーGの起立状態で、内側部分に吸収体4の表面側から突出する起立壁Gcが形成されるため、外側に向けて拡散する体液の堰き止め効果を確保することができ、体液の横漏れが防止できる。
【0048】
さらに、立体ギャザーGの上層側折返し面7bに吸収体4の側縁4aより外側に延在させた外側延出代7cが設けられるとともに、起立状態で肌当接面Gdが折り畳み状態よりナプキン幅方向外側に移動するように構成されているため、ナプキン装着時に立体ギャザーGの肌当接面GdがショーツSHの側縁より外側にはみ出して装着される場合が多くなり、脚の付け根部分の内側からの圧力や脚の動きなどによって、立体ギャザーGが内側に倒れ込む割合が大幅に低下する。
【0049】
また、前記立体ギャザーGは、折り畳み状態で、下層側折返し面7aと上層側折返し面7bとからなる2層構造のシートからなるため、立体ギャザーGの厚みを薄くすることができ、装着時に違和感を感じにくくなる。
【0050】
前記上層側接合領域15は、図6に示されるように、ナプキン長手方向に対しては、前記非接合領域14の端縁より間隔Eだけナプキン端部寄りの位置を基点としてナプキン端縁まで形成されている。また、ナプキン幅方向に対しては、上層側折返し面7bの幅Tより狭い幅Fで形成されている。このように、上層側接合領域15のナプキン長手方向の基点15aを、非接合領域14の端縁14aより端部寄りの位置に設けることによって、立体ギャザーGの起立時に、上層側の肌当接面Gdとして作用する部分の先端(自由端)が肌側に高く傾斜しやすくなり、肌当接面Gdが肌に沿ってフィットしやすくなる結果、立体ギャザーGの内側への倒れ込みが防止できる。また、前記上層側接合領域15のナプキン幅方向の幅Fを上層側折返し面7bの幅Tより狭い幅で形成することによって、硬化して肌当たりの悪化の原因となる接合領域を小さな面積で形成することにより装着時の違和感を軽減している。なお、図示例では、上層側接合領域15は、ナプキン幅方向外側の端部が上層側折返し面7bの先端に位置するように形成されているが、上層側折返し面7bの幅内であれば任意の位置に形成することができる。各部の具体的な寸法については後段で詳説する。
【0051】
図4に示されるように、立体ギャザーGの起立状態において、肌当接面Gdは、前記吸収体4の側縁4aを基準として、外側に延在している部分の幅S’の方が、吸収体4と重なる位置に介在する部分の幅Rより大きくなるように形成することが好ましい(S’>R)。肌当接面Gdがこのような関係となる位置に設けられることによって、肌当接面Gdが内側へ倒れ込むのをより一層防止することができる。S’:Rの比としては、2:1程度とするのがより好ましい。内側の幅Rの調整方法としては、起立状態で内側弾性部材8がほぼ下層側接合領域13の内側縁部13a上に移動するので、この内側縁部13aの位置を調整することにより行うことができる。
【0052】
また、図3に示されるように、立体ギャザーGの起立壁Gcの高さ(X+Y)は、肌当接面Gdの幅(Z+U)より小さく設定することが好ましい。起立壁Gcの高さ(X+Y)が高すぎると、内側へ倒れ込む危険性が高くなるとともに、ナプキン表面と肌との隙間が小さいときに起立壁Gcが潰れてヨレやシワが生じ装着時の違和感が発生しやすくなる。一方、肌当接面Gdは肌と密着して体液の漏れを阻止する部分であるので、肌との接触面積をできる限り大きくした方がよい。このため、肌当接面Gdの幅との関係で適正な起立壁Gcの高さを規定することによって、漏れが発生せず、装着感に優れた立体ギャザーGを形成することができるようになる。
【0053】
前記内側弾性部材8及び外側弾性部材9としては、糸状弾性伸縮部材を用いることが好ましい。かかる糸状弾性伸縮部材は、それぞれ、前記サイド不織布7の二重シート内部に、所定の伸長状態で配設され、両端または長手方向の適宜の位置が固定されている。前記糸状弾性伸縮部材の伸長割合(テンション)は、120〜160%(自然状態を100%としてこの状態からの伸び率、1.2倍〜1.6倍)とすることが好ましい。また、外側弾性部材9のテンションは、内側弾性部材8のテンションに対し同等以上に設定することが好ましく、具体的には0〜20%高く設定することが好ましい。これによって、立体ギャザーGの起立状態で、外側弾性部材9が配設される外側の方が内側より相対的に肌側に高くなる傾斜角で肌当接面Gdが形成されるようになり、肌当接面Gdがより身体に追従しやすくなり、肌との密着性がより一層向上できるようになる。前記糸状弾性伸縮部材の太さは、310〜610dtex程度が好ましく、内側弾性部材8と外側弾性部材9の太さは同じでも良いし、違う太さのものを用いてもよい。外側弾性部材9の太さを内側弾性部材8の太さより相対的に太いものを用いた場合、両者の伸長割合を同等に配置しても、上述の外側弾性部材9の伸長力(テンション)を内側弾性部材8の伸長力より高く設定することが可能となる。
【0054】
前記内側弾性部材8及び外側弾性部材9は、生理用ナプキン1の長手方向両端部からそれぞれ10mm程度の範囲ではサイド不織布7に固定しない(テンションをかけない自然状態とする)ことが好ましい。長手方向両端部で弾性部材を固定すると、弾性部材の収縮力により製品両端部が折れ曲がりやすくなり、装着時に違和感を生じやすくなる。
【0055】
前記内側弾性部材8及び外側弾性部材9のテンションは、吸収体4のねじり強度との関係においては、吸収体4のねじり強度が23〜27gf・cm/cmの場合、弾性部材8、9のテンションはそれぞれ140%程度(470dtexの糸状弾性伸縮部材の場合)が好ましい。また、吸収体4のねじり強度が19〜23gf・cm/cm程度とコシが弱い場合、弾性部材の収縮による吸収体4の縮こまりが生じ立体ギャザーGの肌当接面Gdの肌との密着性が低下することを防止するため、弾性部材8、9のテンションはそれぞれ130%程度(470dtexの糸状弾性伸縮部材の場合)が好ましい。
【0056】
前記ねじり強度(gf・cm/cm)は、サンプルを70度ねじったときの強度である、ねじり強度70度として、KES大型ねじれ試験機を用いて測定した。KES大型ねじれ試験機とは、カトーテック株式会社製の大型ねじれ試験機(KES−YN−1−B)のことであり、吸収体のサンプルの大きさを、長さ150mm×幅55mmに設定し、以下の試験条件で測定した。
・測定チャック部:上部チャックと下部チャックのエッジをサンプルのエッジに合わせてセット
・チャック間隔:115mm
・SENS(記録感度):2
・ねじれ角度:7/CONTROL:7
・SPEED:12cm/s
・サンプル幅:6cm
0〜±70度のねじれ角度間で測定してグラフ(X軸:度、Y軸:gf・cm/cm(応力))を作成し、グラフから、ねじれ角度10〜65度におけるグラフの傾き、即ちねじり強度70度を読み取る。
【0057】
なお、生理用ナプキン1の長手方向両端部では、図5に示されるように、サイド不織布7の下層側折返し面7aが側方側から折返し部Gbまで下層側接合領域13によって下層側の構成部材に接合され、上層側折返し面7bが上層側接合領域15にて下層側折返し面7aに接合されている。なお、図5においては、サイド不織布7の下層側折返し面7aと下層側の構成部材との接合領域15を斜線で示し、下層側折返し面7aと上層側折返し面7bとの上層側接合領域15をクロス斜線で示している。
【0058】
次に、図6に示されるように、立体ギャザーGの詳細な寸法と、非接合領域14の寸法等について説明する。上層側折返し面7bの幅Tは10〜20mmとすることが好ましい。この幅Tを小さくすれば肌との接触面積が低減するため装着時の違和感が軽減できるが、小さくし過ぎると立体ギャザーGが脚の付け根の内側部分からの圧力や身体の動きに耐えられずに、内側に折り返ってしまうおそれがある。
【0059】
また、上層側折返し面7bに配設される弾性部材8、9の位置としては、図2に示されるように、内側弾性部材8は前記非接合領域14に対応する幅方向中間部、すなわち下層側接合領域13の内側縁部13aと折返し部Gbとの間に配置され、折返し部Gbからの距離Yが5mm以下、好ましくは1〜4mmとするのがよく、外側弾性部材9は外側延出代7c部分の幅方向中間部、すなわち吸収体4の側縁4aと端部Gaとの間に配置され、端部Gaからの距離Zが5mm以下、好ましくは1〜4mmとするのがよい。また、内側弾性部材8と外側弾性部材9の間隔Uは6〜15mmとするのが望ましい。内側弾性部材8は、立体ギャザーGの起立壁Gcを形成するため前記距離Yを設けておくことが望ましく、外側弾性部材9は、弾性部材の肌への刺激を軽減するため、端部Gaに設けるよりも前記距離Zを設けておくことが望ましい。
【0060】
前記非接合領域14の幅Xは、2〜7mmとすることが好ましい。非接合領域14のナプキン長手方向範囲としては、図5に示されるように、少なくとも体液排出部Hの長手方向範囲を含み、上層側折返し面7bの上層側接合領域15の近傍まで設けることが好ましい。
【0061】
上層側接合領域15の各部の寸法については、図6に示されるように、非接合領域14の端縁14aと上層側接合領域15の端縁15aとの間隔Eは、前記上層側接合領域15のナプキン長手方向長さDより短くすることが好ましく、具体的には2〜7mm程度とすることが好ましい。前記上層側接合領域15のナプキン長手方向長さDは、ナプキン長手方向端部から非接合領域14までの距離Bより短く設定され、20〜45mm程度とすることが好ましい。なお、前記距離Bは30〜50mm程度が好ましい。前記上層側接合領域15の幅Fは、上層側折返し面7bの全幅Tに亘って設けるよりも、図示例のように、折返し部Gb側に若干の非接合領域を残して端部Ga寄りに設けることによって、上層側折返し面7bの幅Tより小さく形成することが好ましい。具体的な前記上層側接合領域15の幅Fは8〜18mmとするのがよい。
【0062】
図2に示されるように、立体ギャザーGの折り畳み状態における上層側折返し面7bの延出代7cの幅Sは、起立時に肌当接面Gdとして作用する部分の幅(Z+U)の40〜60%程度とすることが好ましい。これにより、生理用ナプキン1の装着時に、ショーツの側縁から肌当接面Gdがはみ出して装着されやすくなり、肌当接面Gdと肌との密着性を高めることができる。
【0063】
前記下層側接合領域13は、図2及び図5に示されるように、生理用ナプキン1の側縁部から吸収体4と重なる位置まで形成することが好ましい。なお、図2に示される例では、生理用ナプキン1の側縁側部分(ウイング状フラップW部分及びその近傍)の下層側接合領域13の図示線が省略され、本来は図5に示されるように、生理用ナプキン1の側縁部まで延在して設けられている。少なくとも体液排出部Hを含む前記非接合領域14が形成される長手方向範囲では、図2に示されるように、吸収体4と下層側接合領域13とが重なり代Kを有するように設けられている。これによって、立体ギャザーGの起立状態では、図3に示されるように、起立壁Gcが常に吸収体4の介在位置に形成されるため、起立壁Gcで堰き止められた体液が吸収体4に吸収されやすくなる。
【符号の説明】
【0064】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、7…サイド不織布、7a…下層側折返し面、7b…上層側折返し面、7c…外側延出代、8…内側弾性部材、9…外側弾性部材、10〜12…エンボス、13…下層側接合領域、14…非接合領域、15…上層側接合領域、G…立体ギャザー、Ga…端部、Gb…折返し部、Gc…起立壁、Gd…肌当接面、W…ウイング状フラップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6