特許第5938372号(P5938372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938372
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   H02K9/06 E
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-151885(P2013-151885)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-23731(P2015-23731A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103333
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 治
(74)【代理人】
【識別番号】100173451
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 彪
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕
(72)【発明者】
【氏名】池上 知巳
(72)【発明者】
【氏名】長谷 良二
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−58204(JP,A)
【文献】 実開平2−94456(JP,U)
【文献】 実開平1−86458(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00−9/28
H02K 5/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに軸方向間隔をあけて配置された第1軸受および第2軸受に回転自在に支持された回転軸と、
前記回転軸を半径方向外側から取り囲み前記回転軸に固定されて前記回転軸と共に回転する回転子と、
前記回転子を半径方向外側から取り囲む固定子と、
前記固定子を半径方向外側から取り囲むように構成された本体部と、この本体部の一方の軸方向端部に取り付けられた第1の端板と、この第1の端板の軸方向反対側の前記本体部に取り付けられた第2の端板と、を備えた固定子フレームと、
前記第2の端板よりも軸方向外側に配置された外部ファンと、
を有する回転電機において、
前記第1の端板には前記第1軸受が固定されて、前記第1の端板は半径方向外側から前記回転軸に向かうに従って軸方向内側に凹むように構成され、前記第1軸受が前記第1の端板の軸方向外側にあるように構成されて、
前記第2の端板は、前記第2軸受が固定されて、前記第2の端板は半径方向外側から前記回転軸に向かうに従って軸方向外側に突出するように構成されて、前記第2軸受が前記第2の端板の軸方向内側にあるように構成されていること、
を特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記第1の端板は、負荷側になるように配置されて、
前記第2の端板は、反負荷側になるように配置されていること、
を特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第1軸受および前記第2軸受は、前記回転軸に比べて熱膨張率が小さいこと、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子等が固定子フレームに収容される回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、回転軸と、この回転軸と共に回転する回転子と、回転子を外側から取り囲む固定子と、これらを収容する固定子フレームと、を有する。固定子フレームは本体部と、端板と、を有する。本体部は、回転子を半径方向外側から取り囲む。端板は、本体部の軸方向外側に配置される。端板には、軸受ハウジングが取り付けられる。軸受ハウジングには軸受が取り付けられる。軸受は回転軸を回転自在に支持する。
【0003】
軸受の温度は、回転電機が運転状態にあるときは運転されていないときに比べて高くなる。軸受が高温になると、軸受ハウジング等の温度も上昇する。この温度上昇に伴って軸受ハウジングは膨張する。このとき、軸受ハウジングの熱が端板に伝熱されて、端板も膨張する。
【0004】
軸受の温度上昇を抑制する方法は、例えば特許文献1に開示されているように外部ファンにより軸受ハウジングに空気を吹き付ける例が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−94456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷却用の空気を軸受ハウジングに吹き付ける場合、反負荷側に配置された軸受よりも負荷側に配置された軸受の方が、冷却効果が低くなる。これは外部ファンが反負荷側に配置されるためである。
【0007】
また、反負荷側では、比較的低温の冷却空気が吹き付けられるため、軸受と端板との膨張の差が生じやすくなる。これにより、膨張に伴う変形が生じるため、端板に負荷がかかる可能性がある。また、端板により軸受の膨張が阻害されて、軸受と回転軸との間でかじりが生じる可能性がある。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、負荷側および反負荷側それぞれの軸受を効率よく冷却することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る回転電機は、互いに軸方向間隔をあけて配置された第1軸受および第2軸受に回転自在に支持された回転軸と、前記回転軸を半径方向外側から取り囲み前記回転軸に固定されて前記回転軸と共に回転する回転子と、前記回転子を半径方向外側から取り囲む固定子と、前記固定子を半径方向外側から取り囲むように構成された本体部と、この本体部の一方の軸方向端部に取り付けられた第1の端板と、この第1の端板の軸方向反対側の前記本体部に取り付けられた第2の端板と、を備えた固定子フレームと、前記第2の端板よりも軸方向外側に配置された外部ファンと、を有する回転電機において、前記第1の端板には前記第1軸受が固定されて、前記第1の端板は半径方向外側から前記回転軸に向かうに従って軸方向内側に凹むように構成され、前記第1軸受が前記第1の端板の軸方向外側にあるように構成されて、前記第2の端板は、前記第2軸受が固定されて、前記第2の端板は半径方向外側から前記回転軸に向かうに従って軸方向外側に突出するように構成されて、前記第2軸受が前記第2の端板の軸方向内側にあるように構成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転電機の負荷側および反負荷側それぞれの軸受を効率よく冷却することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る一実施形態の回転電機を模式的に示した概略正断面図であって、上半分を断面で示す。
図2図1の回転電機のII部を拡大して示す部分拡大正断面図である。
図3図1の回転電機のIII部を拡大して示す部分拡大正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る回転電機の一実施形態について図1図3を用いて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の回転電機を模式的に示した概略正断面図であって、上半分を断面で示す。図2は、図1の回転電機のII部を拡大して示す部分拡大正断面図である。図3は、図1の回転電機のIII部を拡大して示す部分拡大正断面図である。
【0014】
先ず、本実施形態の回転電機の構成について説明する。
【0015】
本実施形態の回転電機は、回転軸2と、回転子4と、固定子5と、固定子フレーム10と、外部ファン40と、を有する。
【0016】
回転軸2は、水平に延びる円柱状の部材である。この回転軸2は、後述する第1軸受31および第2軸受32に回転自在に支持される。第1軸受31および第2軸受32は、それぞれ後述する軸受ハウジング30に固定されている。軸受ハウジング30は後述する第1および第2の端板21、22それぞれに取り付けられている。
【0017】
回転子4は、回転軸2を半径方向外側から取り囲むように配置された円環状の部材である。この回転子4は、回転軸2と共に回転する。
【0018】
固定子5は、固定子鉄心6と、固定子巻線7と、を有する。
【0019】
固定子鉄心6は、詳細な図示は省略するが、中央に穴が形成された鋼板が積層されて構成される。この固定子鉄心6は、回転子4を半径方向外側から所定の半径方向空隙(図示せず)を保ちながら取り囲むように構成された円環状である。
【0020】
また、固定子鉄心6の内周面には、半径方向内側に開口し軸方向に延びるスロット(図示せず)が複数形成されている。これらのスロットは、周方向に等間隔に配列される。これらのスロットには、固定子巻線7が巻きまわされる。
【0021】
固定子フレーム10は、本体部20と、二つの端板、すなわち第1の端板21および第2の端板22と、を有する。
【0022】
本体部20は、固定子鉄心6を半径方向外側から取り囲む。この本体部20の外周には、伝熱フィン等が取り付けられている。これにより、固定子鉄心6の熱を外部に放熱可能となる。
【0023】
第1の端板21は、本体部20の一方の軸方向外側に取り付けられている。この例では、図1における右側で、負荷側に取り付けられる。第1の端板21は、半径方向外側から回転軸2に向かうに従って軸方向内側(図1における左側)に凹むように構成される。第1の端板21には、軸受ハウジング30が取り付けられる。この軸受ハウジング30には第1軸受31が固定されている。第1軸受31は、回転軸2を回転自在に支持している。
【0024】
この例では、第1の端板21が凹んだ構造になっているため、軸受ハウジング30は外気にさらされる部分が多くなる。
【0025】
第2の端板22は、第1の端板21と反対側の本体部20に取り付けられている。この例では、図1における左側で、反負荷側に取り付けられる。第2の端板22は、半径方向外側から回転軸2に向かうに従って軸方向内側(図1における左側)に突出するように構成される。第2の端板22には、軸受ハウジング30が取り付けられる。この軸受ハウジング30には第2軸受32が固定されている。第2軸受32は、回転軸2を回転自在に支持している。
【0026】
この例では、第2の端板22に取り付けられた軸受ハウジング30における外気にさらされる部分は、第1の端板21に取り付けられた軸受ハウジング30に比べて少ない。これは、第2の端板22が突出しているため軸受ハウジング30が固定子フレーム内にある部分が多くなるためである。
【0027】
第1および第2の端板21、22は、互いに同じ金属材料で形成されている。
【0028】
詳細な図示は省略しているが、固定子フレーム10には、軸方向に延びる通風路11が形成されている。当該通風路11の概略は、図1では破線で示している。この通風路11は、回転軸2に装着している内部ファン(図示せず)による気流を固定子フレーム10内に循環させるために構成されている。これにより、内部温度の均一化が可能である。
【0029】
続いて、本実施形態の作用について説明する。
【0030】
回転電機が運転状態にあるときは、固定子巻線7に電流が流れることで、回転磁界が形成されて回転軸2および回転子4が回転する。固定子巻線7に電流が流れることで固定子巻線7が発熱する。この熱が固定子鉄心6等に伝熱される。また、当該熱は回転子4等を介して回転軸2にも伝熱される。
【0031】
回転軸2に伝わった熱は、第1軸受31および第2軸受32に伝わる。その後に各軸受ハウジング30に伝わる。
【0032】
一方、回転軸2の回転に伴い、外部ファン40が回転し送風する。すなわち、外部ファン40により空気の流れが発生する。
【0033】
送風される空気の一部は、固定子フレーム10に取り付けられている伝熱フィン間を流れて、負荷側に流れる。負荷側の第1軸受31付近を流れる空気の温度は、伝熱フィン間を流通する間に固定子5等と熱交換されるため、外部ファン40から送風された直後の空気の温度よりも高い。
【0034】
第1の端板21を上述したように軸方向内側に凹むように構成することで、第1軸受31を固定する軸受ハウジング30は、フレームの外側にある。これにより、軸受ハウジング30が外気に触れやすくなるため、第1軸受31の冷却効果が高まる。
【0035】
これに対して、反負荷側にある第2の端板22や第2軸受32は、外部ファン40から送風された直後の空気が吹き付けられる。このため、第2軸受32は、負荷側の第1軸受31よりも冷却されやすい。その結果、反負荷側の第2軸受32と回転軸2との温度差は、負荷側の第1軸受31と回転軸2との温度差に比べて大きくなりやすい。
【0036】
仮に、負荷側と同様に冷却効果を高めるために、第2の端板22を軸方向内側に凹むように形成された場合、第2軸受32は冷却されすぎる可能性がある。第1軸受31および第2軸受32は、回転軸2に比べて熱膨張率が小さい。その結果、回転軸2の熱膨張に対して、第2軸受32が冷却されすぎて第2軸受32のボール等がかじる可能性がある。
【0037】
そこで、本実施形態では、上述したように、負荷側の第1の端板21を、軸方向内側に凹むように構成し、反負荷側の第2の端板22を軸方向外側に突出するように構成されている。
【0038】
これにより、反負荷側の第2軸受32が冷却されすぎないため、第2軸受32のかじり等の発生を抑制できる。第1軸受31および第2軸受32それぞれの冷却効果を適切に制御できることとなる。
【0039】
以上の説明からわかるように本実施形態によれば、負荷側および反負荷側の軸受をバランスよく効率的に冷却し、且つ、回転軸2等の回転を安定させることが可能になる。
【0040】
上記実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、端板21にカバー(図示せず)を設けて、負荷側軸受31に外部ファン40からの冷却風を送風しやすくするなどがある。
【符号の説明】
【0041】
2…回転軸
4…回転子
5…固定子
6…固定子鉄心
7…固定子巻線
10…固定子フレーム
11…通風路
20…本体部
21…第1の端板
22…第2の端板
30…軸受ハウジング
31…第1軸受
32…第2軸受
40…外部ファン
図1
図2
図3