(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁気フレーム内に収容される固定鉄心と同軸上に配設された可動鉄心を備え、励磁コイルへの通電による前記固定鉄心に対する前記可動鉄心の移動により、該可動鉄心と連結される弁体の弁座に対する位置が切り替えられて流体の流路が切り換えられる電磁弁において、
前記可動鉄心の内側に該可動鉄心の移動をガイドする樹脂材料からなるガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記可動鉄心に対して相対移動不能に一体化され、
前記ガイド部は、前記可動鉄心から軸方向に沿って突出する突出部を有しており、
前記可動鉄心の移動の際には、前記突出部の摺動を通じて該可動鉄心の移動がガイドされ、
前記突出部は、前記可動鉄心から軸方向の両側から突出しており、
前記突出部のうち前記可動鉄心から前記固定鉄心に向かって突出する第1の突出部は、前記固定鉄心に形成された挿入穴に挿入されるとともに、前記可動鉄心の移動の際には前記固定鉄心との摺動を通じて該可動鉄心の移動をガイドし、
前記突出部のうち前記可動鉄心から前記第1の突出部とは逆側に向かって突出する第2の突出部は、前記弁体が収容されるボディに形成された挿入穴に挿入されるとともに、前記可動鉄心の移動の際には前記ボディとの摺動を通じて該可動鉄心の移動をガイドすることを特徴とする電磁弁。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、電磁弁の一実施形態を説明する。
図1に示すように、電磁弁は、外部制御ユニットを通じて給電するためのコネクタCNが装着されている。また、電磁弁は、流体の流路を切り換えるための弁体21を有する弁部10と、弁体21を移動させるためのソレノイド部30とから構成されている。
【0014】
まず、
図1及び
図2を参照して、弁部10について説明する。
弁部10は、樹脂材料等の非磁性材料からなるボディ11を備えている。ボディ11の底面(
図1では下面)には、供給ポートP、出力ポートA、及び排出ポートRが形成されている。供給ポートPには、配管を介して流体(例えば、圧縮エア)の供給源が接続されるとともに、出力ポートAには、配管を介して流体圧機器が接続される。また、排出ポートRには、排出用配管等が接続される。
【0015】
また、ボディ11には、上記底面と直交する一側面(
図1では右面)に開口する丸穴状の第1収容部12が形成されるとともに、該第1収容部12と反対側の他側面(
図1では左面)に開口する丸穴状の第2収容部13が形成されている。各収容部12,13は、同軸上に形成されるとともに、第1収容部12と第2収容部13の間の隔壁14にはこれらを連通するガイド路15が形成されている。隔壁において、ガイド路15は、排出ポートRに対応する位置を避けて形成される。
【0016】
ボディ11において、上記一側面、すなわち第1収容部12の開口側には、Oリング等のシール部材16を介してプラグ17が取付けられているとともに、隔壁14とプラグ17との間に弁室18が区画形成されている。なお、弁室18は、供給ポートP、出力ポートA、及び排出ポートRのそれぞれに連通している。
【0017】
弁室18において、プラグ17には、該弁室18内に向かって突出するプラグ突出部19が形成されている。プラグ突出部19の弁室18側の端面には、弁室18と供給ポートPの連通及び非連通、すなわち供給ポートPと出力ポートAの連通及び非連通を切り換える際の弁座として機能する供給弁座19aが形成されている。
【0018】
また、弁室18において、隔壁14、すなわちボディ11には、該弁室18内に向かって突出するボディ突出部20が形成されている。ボディ突出部20の弁室18側の端面には、弁室18と排出ポートRの連通及び非連通、すなわち排出ポートRと出力ポートAの連通及び非連通を切り換える際の弁座として機能する排出弁座20aが形成されている。
【0019】
弁室18において、供給弁座19aと排出弁座20aは、対向して形成されている。そして、弁室18において、供給弁座19aと排出弁座20aの間には、円柱状の弁体21が供給弁座19a及び排出弁座20aに対して接離可能に収容されている。また、弁室18において、プラグ17と弁体21の間には、該弁体21を供給弁座19aから離間する方向、すなわち排出弁座20a側に付勢するコイルばね等の弁ばね22が収容されている。また、弁室18において、隔壁14と弁体21の間には、該弁体21を保持して一体に移動可能な弁ガイド23が収容されている。
【0020】
弁ガイド23は、弁体21を外周側から保持する筒状の保持部23aと弁体21の移動をガイドする弁体ガイド部23bを有している。弁体ガイド部23bは、隔壁14のガイド路15に挿入されており、その先端が該ガイド路15内に収まる長さに形成されている。このため、弁体21の供給弁座19a及び排出弁座20aに対しての接離に関わる移動は、弁体ガイド部23bのガイド路15との摺動を通じてガイドされるようになっている。
【0021】
図1及び
図2の上半分に示すように、弁体21が供給弁座19aに押し付けられ着座した状態では、弁室18と供給ポートPが非連通とされ(閉鎖され)、弁室18を介して排出ポートRと出力ポートAが連通される(開放される)。
【0022】
一方、
図1及び
図2の下半分に示すように、弁体21が排出弁座20aに押し付けられ着座した状態では、弁室18と排出ポートRが非連通とされ(閉鎖され)、弁室18を介して供給ポートPと出力ポートAが連通される(開放される)。
【0023】
次に、
図1及び
図2を参照して、ソレノイド部30について説明する。
ソレノイド部30は、磁性材料からなる磁気フレーム31を備えている。磁気フレーム31は、ボディ11内の第2収容部13の開口側から隔壁14に至る間の外周を覆うようにして固定されている。磁気フレーム31の内側には、鉄等の磁性材料からなる略円柱状の固定鉄心32が固設されている。固定鉄心32において、径方向中心には、挿入穴32aがボディ11の第2収容部13側から軸方向に沿って凹設されている。
【0024】
また、磁気フレーム31の内側において、固定鉄心32の外周には、絶縁部33を介して巻回される励磁コイル34が固設されている。絶縁部33において、第2収容部13側は、Oリング等のシール部材35を介してボディ11との隙間がシールされている。
【0025】
また、磁気フレーム31の内側において、ボディ11の第2収容部13内には、可動鉄心36が、固定鉄心32の同軸上であって該固定鉄心32に対して接離可能に収容されている。可動鉄心36は、鉄等の磁性材料からなる略円筒状の鉄心部36aを備えている。鉄心部36aは、ボディ11の隔壁14から最小内径部36bに向かって内径が小さくなるように形成されているとともに、該最小内径部36bから固定鉄心32に向かって一旦、内径が拡径した後は一定に保たれている。また、鉄心部36aの外径は、第2収容部13の内径よりも若干小さく設定されており、該第2収容部13内を可動鉄心36が移動できるように設定されている。
【0026】
可動鉄心36において、鉄心部36a内部、すなわち径方向内側には、樹脂材料等の非磁性材料からなるガイド部37が該鉄心部36aに一体に収容されている。ガイド部37は、鉄心部36aが鍛造によって成形された後、インサート成形によって該鉄心部36aに一体化されている。このインサート成形によっては、鉄心部36aの最小内径部36bがガイド部37の内面に食い込むようにして一体化される。
【0027】
特に
図2に示すように、ガイド部37には、可動鉄心36を移動可能に支持する、すなわち可動鉄心36の移動をガイドする複数(本実施形態では、合計3本)の各突出部37a,37bが形成されている。
【0028】
ガイド部37には、可動鉄心36から軸方向一端側となる弁体21(弁ガイド23)側に突出する一対(2本)の弁体側突出部37aが形成されている。一対の弁体側突出部37aは、ボディ11の挿入穴としてのガイド路15にそれぞれ挿入されるとともに、該ガイド路15よりも長くなるようにそれぞれ形成されている。すなわち、弁体側突出部37aは、可動鉄心36の固定鉄心32に対しての接離に関わる移動時、ガイド路15内を摺動することとなる。さらに、一対の弁体側突出部37aは、可動鉄心36が固定鉄心32に最も接する際に弁体21を排出弁座20aに着座可能とする位置に移動する一方、可動鉄心36が固定鉄心32から最も離間する際に弁ガイド23を押して弁体21を供給弁座19aに着座可能とする位置に移動する。したがって、可動鉄心36と弁体21は、一対の弁体側突出部37a及び弁ガイド23を介して連結されている。本実施形態では、一対の弁体側突出部37aが第2の突出部として作用する。
【0029】
また、ガイド部37には、可動鉄心36から軸方向他端側となる固定鉄心32側に突出する1本の固定鉄心側突出部37bが形成されている。固定鉄心側突出部37bは、固定鉄心32の挿入穴32aに挿入されており、可動鉄心36の固定鉄心32に対しての接離に関わる移動時、挿入穴32a内を摺動することとなる。本実施形態では、固定鉄心側突出部37bが第1の突出部として作用する。
【0030】
また、ガイド部37には、固定鉄心側突出部37bが突出する根元から径方向に亘ってばね受け部37cが形成されている。そして、磁気フレーム31の内側において、固定鉄心32とガイド部37のばね受け部37cの間には、該可動鉄心36を固定鉄心32から離間する方向、すなわち弁体21側に付勢するコイルばね等のプランジャばね38が収容されている。
【0031】
次に、
図1〜
図3を参照して、可動鉄心36の外形について説明する。
ガイド部37(鉄心部36a)において、弁体21側の開口部37dは開口径R1を長径(長軸)、開口径R2を短径(短軸)とする楕円形であり、鉄心部36aにおける最小内径部36bよりも弁体21側は楕円形をなしている。このため、鉄心部36aとガイド部37は、鉄心部36aに対するガイド部37の径方向への回転が不能となるように一体化されている。すなわち、ガイド部37の外形形状及び鉄心部36aの内周形状は、鉄心部36aに対するガイド部37の上記径方向への回転を規制する回り止め手段として作用する。
【0032】
また、一対の弁体側突出部37aは、ガイド路15に沿ったカーブを描く弧状にそれぞれ形成されている。一方、固定鉄心側突出部37bは、一対の弁体側突出部37aの反対側から突出しているとともに、挿入穴32aに挿入可能な棒状に形成されている。
【0033】
次に、こうした本実施形態の電磁弁の作用を説明する。
図1及び
図2の下半分に示すように、励磁コイル34への通電時には、可動鉄心36がプランジャばね38の付勢力に抗して固定鉄心32側に吸引されており、弁体21が弁ばね22に付勢されて排出弁座20aに押し付けられる。この際、固定鉄心32へ可動鉄心36を吸引するのに作用する磁力の磁路Xが、磁気フレーム31を通って可動鉄心36の外側から該可動鉄心36内(鉄心部36a)を通るように形成される。
【0034】
すなわち、可動鉄心36の径方向内側にガイド部37を有するので、該ガイド部37が可動鉄心36の外側から可動鉄心36内を通るように形成される磁路Xを遮ることがなくなる。
【0035】
このような可動鉄心36の外側から該可動鉄心36内を通るように形成される磁路Xを遮ることがなくなることによっては、上記ガイド部37を樹脂材料から構成することが可能になる。
【0036】
そして、可動鉄心36とガイド部37をインサート成形により一体化することで、鉄心部36aとガイド部37が異なる材料からなる場合でもこれらの間で隙間なく一体化されるとともに、鉄心部36aの最小内径部36bがガイド部37に食い込んで成形されるようになる。
【0037】
このようなインサート成形によっては、鉄心部36aに対する軸方向や径方向といった相対的な移動を不能にすることができ、特に鉄心部36aとガイド部37の連結部におけるがたつきの発生が抑制される。
【0038】
また、
図1及び
図2の上半分及び下半分の間において、励磁コイル34への通電、及び通電の停止の切り換えに伴う可動鉄心36の移動は、一対の弁体側突出部37aのガイド路15との摺動、及び固定鉄心側突出部37bの挿入穴32aとの摺動を通じてガイドされる。
【0039】
すなわち、可動鉄心36は、移動の際に該可動鉄心36の鉄心部36aをボディ11内と摺動させることなく移動できるようになる。
このような可動鉄心36の移動を可能にすることによって、鉄心部36aの摩耗が抑えられるとともに、上記ガイド部37の各突出部37a,37bを摺動する相手部材の素材の選択の幅を拡げることができる。
【0040】
また、
図1及び
図2の上半分及び下半分の間において、励磁コイル34への通電、及び通電の停止の切り換えに伴う可動鉄心36の移動は、一対の弁体側突出部37a及び固定鉄心側突出部37bにより、該可動鉄心36の軸方向の両側でガイドされる。
【0041】
すなわち、可動鉄心36が移動の際にボディ11に対して傾いたりする横吸着の発生が抑制されるようになる。これにより、可動鉄心36の移動の際には、該可動鉄心36が横吸着の発生により傾き、該可動鉄心36の移動のストロークを確保できなくなるといった事態の発生が抑えられる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(1)樹脂材料によるガイド部37を可動鉄心36に一体化しても、磁路Xを確保し、かつ、可動鉄心36の移動のストロークを確保することができる。
【0043】
(2)可動鉄心36の移動を考慮する上では、鉄等からなる可動鉄心36といった比較的硬度を有する部材との摺動を考慮してなくてもよくなるので、特にガイド部37の各突出部37a,37bが摺動する相手部材については用途や状況に合わせた素材により構成する電磁弁を実現することができる。
【0044】
(3)可動鉄心36の移動の際の横吸着の発生が抑制されるので、該可動鉄心36の移動のストロークを確保できないことにより、弁体21の各弁座19a,20aに対する位置を切り替えることができなくなってしまう事態の発生が抑えられる。
【0045】
(4)鉄心部36aとガイド部37が異なる材料であってもインサート成形することで、これらの間で隙間なく一体化されるようになる。このため、鉄心部36aとガイド部37の間でのがたつきの発生を抑制することができる。
【0046】
(5)可動鉄心36に対するガイド部37の径方向への回転についてもさらに抑制することができるようになる。したがって、鉄心部36aとガイド部の一体化によるがたつきに影響を与え得る事象の発生がより抑えられる。
【0047】
(6)可動鉄心36の移動の際には、プランジャばね38の伸縮についてもガイド部37同様、可動鉄心36が横吸着により傾くことによる影響を受けなくなる。したがって、可動鉄心36の移動途中にプランジャばね38が傾くなどして、所望の付勢力が得られなくなるといった事態の発生が抑えられる。
【0048】
(7)可動鉄心36の移動の際に該可動鉄心36の鉄心部36aをボディ11内と摺動させることなく移動させることができるので、鉄心部36aの摩耗が抑えられ、寿命の延長に寄与することができる。
【0049】
(8)可動鉄心36の径方向内側にガイド部37を有するので、可動鉄心36の径方向外側にガイド部37を有する場合よりも、可動鉄心36の吸着面積を大きくすることができ、可動鉄心36を固定鉄心32に吸引する力を増大させることができる。
【0050】
なお、上述した実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・開口部37dは、真円をなしていてもよい。この場合には開口部37dの周縁上に一以上の凸部を形成するようにすることで、鉄心部36aに対するガイド部37の径方向への回転を規制する回り止め手段として作用させることもできる。また、こういった回り止め手段としては、ねじ等で締め付けることで実現することもできる。
【0051】
・鉄心部36aとガイド部37は、別々の工程で成形された後、接着剤等の接着手段により固着させるようにしてもよい。また、こういった接着手段としては、ねじ等で締め付けることで実現することもできる。
【0052】
・鉄心部36aとガイド部37とは、インサート成形されていればよく、最小内径部36bがガイド部37の内面に食い込む構成を有していなくてもよい。
・鉄心部36aとガイド部37を一体化した際には、ガイド部37が鉄心部36aに食い込むように、鉄心部36aの内面に凹部を設けるようにしてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、一対の弁体側突出部37a及び固定鉄心側突出部37bを形成して可動鉄心36の移動をガイドするようにしたが、少なくも何れかの突出部で移動がガイドされていればよい。例えば、
図4に示すように、弁体側突出部37aのみで可動鉄心36の移動をガイドする場合、固定鉄心側突出部37bについては鉄心部36a内に収まる長さに設定するとともに、固定鉄心32の挿入穴32aについては形成する必要がなくなる。この例によれば、構成をより簡素にすることができる。また、こういった弁体側突出部37aとしては、突出部を1つや3以上形成するようにしたりもできる。
【0054】
・可動鉄心36を固定鉄心32に吸引するのに十分な磁路Xを確保することができれば、可動鉄心36の鉄心部36aの大きさ、特に軸方向の長さを短くすることもできる。すなわち、電磁弁の小型化にも寄与することができる。
【0055】
・弁ガイド23の弁体ガイド部23bの長さは、その先端がガイド路15から可動鉄心36内部、すなわちガイド部37まで突出させるようにしてもよい。そして、弁体ガイド部23bが挿入されることで可動鉄心36の移動をガイドする弁体側ガイド部をガイド部37内部に形成することもできる。
【0056】
・固定鉄心32の挿入穴32aには、固定鉄心側突出部37bに代わる棒状の突出部を挿入して固定するようにし、該突出部が挿入されることで可動鉄心36の移動をガイドする固定鉄心側ガイド部をガイド部37内部に形成することもできる。
【0057】
・流体としては、圧縮エアに限らず圧縮された液体など、他の流体でもよい。
・上記実施形態は、ポートの数が2つ、あるいは4つのものに適用してもよい。
・上記実施形態は、励磁コイル34への通電による固定鉄心32に対する可動鉄心36の離間により、該可動鉄心36と連結される弁体21の各弁座19a,20aに対する位置が切り替えられて流体の流路が切り換えられる電磁弁に適用することもできる。