特許第5938402号(P5938402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5938402薬剤充填済みシリンジおよび注射デバイスのための安全デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938402
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】薬剤充填済みシリンジおよび注射デバイスのための安全デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/28 20060101AFI20160609BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61M5/28
   A61M5/32 500
   A61M5/32 510R
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-517172(P2013-517172)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-529988(P2013-529988A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2011060319
(87)【国際公開番号】WO2012000835
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月18日
(31)【優先権主張番号】10168317.5
(32)【優先日】2010年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ガレス・ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】クリス・ウォード
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エクマン
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−536598(JP,A)
【文献】 特表2012−500063(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/111864(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/28
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤充填済みシリンジ(2)のための安全デバイス(1)と、遠位端に取り付けられた皮下注射針(2.1)を備えた薬剤充填済みシリンジ(2)とを含んでなる注射デバイス(D)であって、
ここで安全デバイス(1)が、
−薬剤充填済みシリンジ(2)を中に取付けるための中空支持体(1.2)、
−支持体(1.2)に対して摺動可能である中空ニードル・シールド(1.1)、および
−支持体(1.2)に対するニードル・シールド(1.1)の動きを案内する案内手段、を含んでなり、
案内手段が、
−半径方向に延びるガイド・ピン(1.1.3)を備えた可撓性アーム(1.1.4)、
−ガイド・ピン(1.1.3)が突入するガイド・トラック(1.2.5)、および
−安全デバイス(1)の中心軸(A)に対して平行な方向でガイド・トラック(1.2.5)内に延びる分離壁(1.2.6)、を含んでなり、
ここで、ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)に対して摺動したとき、ガイド・ピン(1.1.3)がガイド・トラック(1.2.5)に沿って動いて、可撓性アーム(1.1.4)を中心軸(A)に対して直角な横方向(L)へ偏向させ、ガイド・トラック(1.2.5)に沿ったガイド・ピン(1.1.3)の動きが、可撓性アーム(1.1.4)および分離壁(1.2.6)の相互作用によって案内され、
薬剤充填済みシリンジ(2)が安全デバイス(1)の支持体(1.2)内に保持されて、皮下注射針(2.1)が支持体(1.2)の遠位端から突出し、一方、皮下注射針(2.1)が、初期位置(I)および前進位置(III)において、ニードル・シールド(1.1)によって取り囲まれ、後退位置(II)において露出され、
安全デバイス(1)が、支持体(1.2)とニードル・シールド(1.1)間の相対回転を阻止するための手段(1.2.1.1.2.2)、及びニードル・シールド(1.1)が初期位置(I)にあるとき、エネルギを付与されない状態に配置される圧縮スプリング(1.4)
を含んでなる、上記注射デバイス(D)。
【請求項2】
可撓性アーム(1.1.4)が、ニードル・シールド(1.1)または支持体(1.2)のうちの一方に連結され、ガイド・トラック(1.2.5)が、ニードル・シールド(1.1)または支持体(1.2)のうちの他方に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の注射デバイス(D)
【請求項3】
分離壁(1.2.6)が、安全デバイス(1)の中心軸(A)に対して平行に延びるガイド・トラック(1.2.5)の拡幅セクション(1.2.5.2)内に延びることを特徴とする、請求項1または2に記載の注射デバイス(D)
【請求項4】
分離壁(1.2.6)が、安全デバイス(1)が再使用を阻止されるまでニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)に対して移動しなければならない最短の軸方向距離を実質的に定める、中心軸(A)に対して平行に延びる軸方向寸法を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項5】
ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)に対して最短の軸方向距離に一致するか、またはそれを超える距離だけ後退したときに可聴フィードバックが発生することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項6】
分離壁(1.2.6)が、ガイド・ピン(1.1.3)が遠位方向または近位方向の一方の方向からガイド・トラック(1.2.5)内の終了位置(PIII)にアクセスするのを阻止し、このとき、ガイド・ピン(1.1.3)が、遠位方向または近位方向のうち他方の方向から終了位置(PIII)に入ることを可能にすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項7】
ガイド・トラック(1.2.5)が、支持体(1.2)の表面、またはニードル・シールド(1.1)の表面に凹部として形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項8】
ガイド・トラック(1.2.5)が、ニードル・シールド(1.1)または支持体(1.2)の一方に開口部を形成することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項9】
分離壁(1.2.6)が、可撓性であり、ガイド・ピン(1.1.3)が、ガイド・トラック(1.2.5)に沿って動いて分離壁(1.2.6)を偏向させ、それによって、可撓性の分離壁(1.2.6)の偏向が可撓性アーム(1.1.4)の偏向に依存することを特徴とする、請求項8に記載の注射デバイス(D)
【請求項10】
分離壁(1.2.6)の弾性が可撓性アーム(1.1.4)の弾性に合わせてあり、分離壁(1.2.6)が偏向した可撓性アーム(1.1.4)によって、偏向可能であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の注射デバイス(D)
【請求項11】
ガイド・ピン(1.1.3)が、偏向した可撓性アーム(1.1.4)によって、横方向(L)に付勢されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項12】
静止位置における可撓性アーム(1.1.4)が、中心軸(A)に対して本質的に平行に延びることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項13】
ガイド・トラック(1.2.5)が、中心軸(A)に対して斜めに向いた傾斜セクション(1.2.5.1)を含んでなることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項14】
ニードル・シールド(1.1)は、開始位置(PI)において、ガイド・トラック(1.2.5)の傾斜セクション(1.2.5.1)内に保持されるガイド・ピン(1.1.3)によって初期位置(I)に保持され、一方、初期位置(I)において、ニードル・シールド(1.1)は、支持体(1.2)から遠位方向へ突出することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項15】
ニードル・シールド(1.1)が、初期位置(I)から後退位置(II)へ、そしてさらに前進位置(III)へ可動であり、一方、初期位置(I)および前進位置(III)において、ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)から突出することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【請求項16】
支持体(1.2)、ニードル・シールド(1.1)間の相対回転を阻止するための手段が、第1の長手方向溝(1.2.1)と第1の長手方向タング(1.1.2)を含んでなることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の注射デバイス(D)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニードル安全性を提供する安全デバイス、特に薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスに関する。安全デバイスは、薬剤充填済みシリンジに入っている薬剤または薬品の注入前、注入中、注入後の過失による針刺し事故およびニードル損傷を避けるようになっている。特に、安全デバイスは、皮下自己投与注射またはヘルスケア専門家により投与される注射のためにニードル安全性を提供する。本発明は、さらに、薬剤充填済みシリンジからなる注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
1回分の選択された薬剤投与量で満たされた薬剤充填済みシリンジは、患者に薬剤を投与するための良く知られた注射デバイスである。使用の前後で薬剤充填済みシリンジのニードルを覆うための安全デバイスも良く知られている。代表的には、これらのデバイスは、ニードルを取り囲むように手動で動かされるか、または弛緩スプリングの作用動かされるニードル・シールドを含んでなる。
【0003】
現状技術において知られている異なったタイプの安全デバイスは、薬剤充填済みシリンジを身体に対して動かせるように配置し、注射後に薬剤充填済みシリンジを身体から引っ込めるようにすることによって、ニードル安全性を提供するという課題を解決している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一目的は、薬剤充填済みシリンジのための改良された安全デバイスを提供することにある。
【0005】
本発明のさらなる目的は、取り扱いが安全であり、特に偶発的な針刺し事故を防ぐ薬剤充填済みシリンジを含んでなる改良された注射デバイスを提供することにある。
【0006】
この目的は、請求項1に記載の安全デバイスおよび請求項17に記載の注射デバイスにより達成される。
【0007】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項において与えられる。
【0008】
この明細書の文脈において、遠位および近位という用語は、注射を行う人間の観点から定義されている。その結果、遠位方向とは、注射を受ける患者の身体に向いた方向と合致しており、遠位端とは、患者の身体に向いたエレメントの端と定義する。エレメントの近位端または近位方向とは、それぞれ、注射を受ける患者の身体から離れる方向で、遠位端または遠位方向とは反対側に向いている。
【0009】
本発明によれば、薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスは、薬剤充填済みシリンジを内部に保持している中空支持体と、支持体に相対的に摺動可能である中空ニードル・シールドと、支持体に対するニードル・シールドの動きを案内する案内手段とを含んでなる。案内手段は、可撓性アーム、ガイド・トラックおよび分離壁を含んでなる。ガイド・ピンが、可撓性アームから半径方向に延びており、ガイド・トラックから突き出ている。分離壁は、安全デバイスの中心軸に対して平行な方向において、ガイド・トラック内へ延びている。ニードル・シールドが支持体に対して摺動したとき、ガイド・ピンは、ガイド・トラックに沿って移動し、中心軸に対して直角な横方向へ可撓性アームを偏向させ、そして、ガイド・トラックに沿ったガイド・ピンの動きは、可撓性アームおよび分離壁の相互作用により案内される。
【0010】
ニードル・シールドが支持体に対して相対的に摺動させられて、特に安全デバイスの支持体内に挿入された薬剤充填済みシリンジの皮下注射針を覆うか、および/また、露出させるとき、ガイド・ピンはガイド・トラック内をそれに沿って動かされる。ニードル・シールドの移動は、ガイド・トラック内の種々の位置間を移動するガイド・ピンにより制御される。偏向可能な可撓性アームの分離壁との相互作用により、ガイド・トラックに沿ったガイド・ピンの案内が可能となり、ニードル・シールドおよび支持体のような任意の外部部分の相対回転を防止する。特に安全デバイスの外部部品が注射注射中に患者の皮膚に当接するとき、これらの回転する外部部品と患者の皮膚との摩擦は不快であり、特に皮下注射針がまだ皮膚を貫いている間では患者に痛みさえ与える可能性がある。したがって、この安全デバイスは、薬剤の安全で便利な注射を行うことができる。
【0011】
可撓性アームは、ニードル・シールドまたは支持体のうちいずれか一方に連結される。ガイド・トラックは、ニードル・シールドまたは支持体のうち他方に形成される。したがって、安全デバイスがガイド・トラックを備えた支持体と、可撓性アームを備えたニードル・シールドとを含んでなることは本発明の範囲にあるし、あるいは、可撓性アームが支持体に連結され、ガイド・トラックがニードル・シールドに形成されることも本発明の範囲内にある。
【0012】
分離壁は、安全デバイスの中心軸に対して平行に延びるガイド・トラックの拡幅セクション内へ延びている。分離壁は、可撓性アームと共に、ガイド・トラック内でのガイド・ピンの移動を案内し、ガイド・ピンが開始位置に再突入するのを阻止し、終了位置に向かって案内する効率の良い機構を提供する。終了位置におけるガイド・ピンは、前進位置にニードル・シールドを恒久的に保持し、ここでは、ニードル・シールドは、支持体から突出していて支持体内に保持された薬剤充填済みシリンジの皮下注射針を取り囲んでいる。分離壁は、安全デバイスの1回使用後の皮下注射針の再露出を防ぎ、 特に汚染された注射針による針刺し事故を防ぐ手段となる。
【0013】
ガイド・ピンが分離壁を通り過ぎるとすぐに、安全デバイスは再使用が阻止される。 分離壁は、中心軸に対して平行に延びる軸方向寸法を有し、これは、ガイド・ピンが可撓性壁を通過して安全デバイスの再使用を防ぐことができるまでニードル・シールドが支持体に対して近位方向に移動されなければならない最短の軸方向距離を実質的に定める。ニードル・シールドが可撓性壁の軸方向寸法より小さい軸方向長さだけ近位方向に偶発的に押された場合、特に再使用を防ぐ安全特徴は起動されない。したがって、安全デバイスの再使用を防ぐ安全特徴の偶発的な起動が回避される。
【0014】
本発明の可能性ある実施形態によれば、前記最短の軸方向距離と一致するか、または、それを超える距離だけニードル・シールドが支持体に対して引っ込められたときに、可聴フィードバックが発生させられる。このことは、安全デバイスのユーザが、1回だけ注射を行った後の偶発的な針刺し事故を防ぎ、再使用を防ぐ安全特徴を起動できることを示す。
【0015】
分離壁は、ガイド・ピンが遠位方向または近位方向のいずれか1つの方向から終了位置にアクセスするのを防ぎ、それにより、ガイド・ピンが遠位方向または近位方向のうち他方の方向から終了位置に入ることができるようになっている。分離壁は、終了位置にガイド・ピンがアクセス可能となる前に皮下注射針を露出させるようにニードル・シールドを引込めるのに必要な手段を提供する。
【0016】
別の実施形態によれば、分離壁は、固定式か、可撓性で偏向可能か、いずれかである。
【0017】
本発明の可能性ある実施形態によれば、ガイド・トラックは、凹みとして、支持体の表面、または、ニードル・シールドの表面のいずれかに形成される。ガイド・トラックは、それが形成されている対応する部分の壁を完全に通過することはない。可能性ある実施形態によれば、この対応する部分は、ニードル・シールドまたは支持体であってもよい。これは、安全デバイスの外側から内部への直接的なアクセスが確実になくなり、したがって、安全デバイスがより堅牢になる。加えて、ガイド・トラックを有する部分の構造安定性が向上する。支持体およびニードル・シールドは、好ましくは、射出成形法で形成されるので、くぼみとして成形加工されるガイド・トラックは、付加的に、ガイド・トラックに沿ったフラッシュとして知られる成形欠陥を排除する。フラッシュは、余剰材料が通常の部分幾何学的配置を超えたときに発生する。したがって、ガイド・トラックがくぼみの形状を有すると、フラッシュが回避され、ガイド・トラックの平滑性が向上する。
【0018】
別の実施形態によれば、ガイド・トラックは、支持体またはニードル・シールドのいずれかに開口部を形成する。これによって、分離壁が横方向に撓み、片寄ることが可能となる。
【0019】
本発明の同じ実施形態によれば、可撓性分離壁の偏向は、ガイド・ピンを支持している可撓性アームの偏向に依存する。可撓性アームおよび可撓性分離壁の依存する相互作用は、可撓性アームからの必要な偏向程度を減らし、ガイド・トラックに沿ってガイド・ピンを安全に案内する。加えて、この依存する相互作用は、可撓性アームがその最大負荷をかけられた状態にある必要がある時間量を減らす。したがって、ユーザによって、支持体に対してニードル・シールドを移動させるために安全デバイスに加えられる力が減らされる。
【0020】
同じ実施形態によれば、可撓性分離壁の弾性は、可撓性アームの弾性に適合し、可撓性分離壁は片寄せられて負荷をかけられた可撓性アームによって、偏向可能である。ユーザによって、可撓性アームを片寄せるように行われた仕事量は、可撓性分離壁にほぼ伝えられて該可撓性壁を片寄せる。有利には、可撓性分離壁および可撓性アームは、同じ弾力のあるプラスチック材料、または、同じ弾性をほぼ有する異なったプラスチック材料から製造される。
【0021】
ガイド・ピンは、片寄せられた可撓性アームによって横方向に付勢される。本発明の一実施例によれば、付勢されたガイド・ピンは、可撓性分離壁対して横方向に力を加え、これが分離壁を片寄せ、安全デバイスの安全特徴が起動される。本発明の別の実施形態によれば、ガイド・ピンは、可撓性アームにより付勢されて分離壁を横方向に通過する。
【0022】
静止位置において、可撓性アームは、中心軸に対してほぼ平行に延びる。安全デバイスは、その静止位置で可撓性アームと共に保管され、安全デバイスの第一の1回の使用中に負荷をかけられる。可撓性アームが代表的には材料疲労しやすい弾力のあるプラスチック材料から製造された付勢手段であるから、負荷をかけられた状態で可撓性アームを保管するのを避け、安全デバイスの保管寿命を延ばすと有利である。
【0023】
ガイド・トラックは、中心軸に対して鋭角に向いた傾斜セクションを含んでなる。ガイド・ピンがガイド・トラックの傾斜セクションに沿って移動するとき、可撓性アームは片寄せられ、負荷をかけられる。したがって、ガイド・トラックのこの設計により、安全デバイスの使用中に可撓性アームに負荷をかけることができ、材料の疲労を回避できる。したがって、ニードル安全性が、保管後にさえ確実に提供される。
【0024】
開始位置でガイド・トラックの傾斜セクション内に保持されているガイド・ピンによってニードル・シールドは初期位置に保持される。初期位置のニードル・シールドは支持体から遠位方向へ突出する。
【0025】
或る可能性ある実施形態によれば、ニードル・シールドは、不透明なプラスチック材料から作られる。初期位置に保持されているニードル・シールドによって、注射前には皮下注射針は患者の眼から隠される。これは、可能性ある患者の注射針に対する不安を和らげる。したがって、安全デバイスは、自己投与注射を実施するのに特に適している。
【0026】
別の実施形態によれば、ニードル・シールドは、透明なプラスチック材料から作られる。こうすれば、皮下注射針がニードル・シールドによって、囲まれているときでも、安全デバイスを使用するヘルスケア専門家が患者の皮膚を刺し貫いている皮下注射針の正しい位置を視覚的に確認できる。
【0027】
本発明の安全デバイスは自己投与注射にもヘルスケア専門家により行われる注射にも適しているので、ここでユーザまたは患者と呼ぶ人間は全く同一の人間であってもよい。
【0028】
ニードル・シールドが初期位置にあるとき、圧縮スプリングが、負荷のかけられない状態に配置される。安全デバイスが初期位置に保持されたニードル・シールドと共に保管され、輸送されるので、圧縮スプリングの材料疲労は回避される。したがって、安全デバイスの保管寿命が延ばされる。さらにまた、圧縮スプリングの材料についての要求は低いので、安全デバイスがコスト効率良く大量生産され得る。
【0029】
ニードル・シールドは、初期位置から後退位置に、そして、さらに前進位置に移動可能である。ニードル・シールドは、前進位置において、支持体から突出する。後退位置においては、ニードル・シールドは支持体内にほぼ収容される。
【0030】
あるいは、ほぼ円筒形のニードル・シールドは、支持体を実質的に後退位置に受け入れる寸法となっている半径方向直径を含んでなる。この代替実施形態においては、ニードル・シールドが前進位置から後退位置へ移動させられたときに支持体はニードル・シールド内へ摺動する。
【0031】
前進位置において、ニードル・シールドは、支持体から遠位方向へ延びる。ガイド・トラック内の、それに沿ったガイド・ピンの動きは、安全な注射を可能とするニードル・シールドの突出、引込みを制御する。
【0032】
注射デバイスは、安全デバイスの支持体内に保持される薬剤充填済みシリンジを含んでなる。薬剤充填済みシリンジは、それの遠位端に取り付けられた皮下注射針と、皮下注射針と流体連通する内部キャビティを備えるバレルと、内部キャビティの近位端を流体密にシールするピストンとを含んでなる。ピストンは、バレルの近位端から突き出るピストンロッドを作動させることによって動かすことができる。薬剤充填済みシリンジは、安全デバイスの支持体内に保持されているので、皮下注射針は支持体の遠位端から突き出ている。射出デバイスの皮下注射針は、初期位置において、前進位置でニードル・シールドによって、取り囲まれており、ニードル・シールドが後退位置にあるとき皮下注射針が露出させられる。薬剤充填済みシリンジおよび安全デバイスを含んでなる注射デバイスは、上記の利点を組み合わせており、患者の皮膚の下に薬剤を送達する注射の前、その最中、その後の不注意による針刺し事故を回避できる。
【0033】
本発明の詳細を以下に説明する。しかしながら、本発明の好ましい実施例を示しながらの詳細な説明および特別な例はほんの例示のために与えたものであることは了解されたい。本発明の精神と範囲内での図示実施形態の種々の変更、修正は当業者にとって明らかである。
【0034】
本発明は、以下で行う詳細な説明からより良く理解されることになる。添付の図面は、ほんの説明の便宜上与えられたものであり、本発明の範囲を制限することはない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】安全デバイスおよび薬剤充填済みシリンジを含んでなる、本発明の第1実施形態による注射デバイスの、使用前の透視図を示す。
図2】本発明の第1実施形態による注射デバイスを、初期位置に保持されたニードル・シールドを含んでなる安全デバイスと共に示す断面図を示す。
図3】本発明の第1実施形態による注射デバイスの、後退位置に保持されたニードル・シールドを備えた安全デバイスと共に示す断面図を示す。
図4】ニードル・シールドが後退位置に保持されている安全デバイスの支持体およびニードル・シールドの透視図を示す。
図5】本発明の第1実施形態による注射デバイスの、注射が実施された後の断面図を示す。
図6】A〜Fは、本発明の第1実施形態による安全デバイスの使用中のガイド・トラックおよびガイド・トラック内でのガイド・ピンの動きの詳細を示す。
図7】安全デバイスおよび薬剤充填済みシリンジを含んでなる本発明の第2実施形態による注射デバイスの使用前の透視図を示す。
図8】説明の便宜上、中心軸に対して切り開いて示している2実施形態による支持体の透視図を示す。
図9】A〜Eは、本発明の第2実施形態による安全デバイスの使用時のガイド・トラックおよびガイド・トラック内でのガイド・ピンの動きの詳細を示す。
【0036】
すべての図において、対応する部分は同じ参照記号が付けてある。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、注射を実施するユーザに提供されることになっている、本発明の第1実施形態による薬剤充填済みシリンジ2のための安全デバイス1を有する注射デバイスDを示す。安全デバイス1は、実質的に円筒形で中空のニードル・シールド1.1を含んでなる。ニードル・シールド1.1は実質的に円筒形で中空の支持体1.2内に収容されており、支持体1.2に関して摺動可能である。安全デバイス1の使用前、ニードル・シールド1.1は初期位置Iに保持されており、支持体1.2から突き出ている。
【0038】
あるいは、ほぼ円筒形のニードル・シールド1.1は、実質的に支持体1.2を収容する寸法の半径方向直径を含んでなる。この代替実施形態においては、支持体1.2は、ニードル・シールド1.1が初期位置Iから後退位置IIに移動させられるときにニードル・シールド1.1内へ摺動する。
【0039】
図1は、開いた遠位端と閉じた近位端を有するほぼ円筒形で中空の外側体1.3を含んでなる安全デバイス1を示す。支持体1.2の近位端は、外側体1.3の開いている遠位端内に収容されており、ここで、外側体1.3は、外側体1.3内に実質的に支持体1.2を収容するように支持体1.2に関して遠位方向に摺動可能である。
【0040】
周方向で外方へ突出しているハンド・フランジ1.3.1が、遠位端に接近して外側体1.3の外面に一体に形成されている。
【0041】
好ましくは、ニードル・シールド1.1、支持体1.2および外側体1.3は、プラスチック材料から作られる。
【0042】
ニードル・シールド1.1は、その遠位端のところに円周方向の皮膚接触面1.1.1を含んでなる。皮膚接触面1.1.1は、患者の皮膚に押し付けられるようになっており、安全デバイス1の中心軸Aに対して直角に半径方向外方へ突出する。患者の皮膚と接触することになる皮膚接触面1.1.1の縁は、怪我を防ぐように丸くなっている。皮膚接触面1.1.1は、安全デバイス1の中心軸A上に位置する中心開口を有する。皮膚接触面1.1.1は、ニードル・シールド1.1の一体部分であるか、または、ニードル・シールド1.1に取り付けられた、プラスチック材料から作られた別体部分である。
【0043】
2つの直径に対向する第1長手方向タング1.1.2がニードル・シールド1.1の両側の外面に形成されている。各第1長手方向タング1.1.2は、半径方向外方へ突出し、ニードル・シールド1.1の中心軸Aに対して平行な或る軸方向長さにわって延びている。図2で最も良くわかるように、第1長手方向タング1.1.2は、支持体1.2の内面に形成された対応する第1長手方向溝1.2.1内に受け入れられる。支持体1.2、ニードル・シールド1.1の相対回転は、ニードル・シールド1.1の第1長手方向タング1.1.2を受け入れている第1長手方向溝1.2.1により阻止される。
【0044】
同様に、支持体1.2は、外側体1.3の内面に形成された第2長手方向溝(図示せず)に受け入れられる少なくとも1つの第2の長手方向タング1.2.2を含んでなり、それによって、外側体1.3、支持体1.2の相対回転が阻止される。
【0045】
2つの長手方向凹部1.3.2が、外側体1.3の両側部に形成されており、外側体1.3のほぼ軸方向の或る長さにわたって中心軸Aに対して平行に延びている。長手方向凹部1.3.2は、2つの部分、互いにウェブ1.3.3により分離された第1部分1.3.2.1と、第2部分1.3.2.2とを含んでなる。
【0046】
各長手方向凹部1.3.2は、支持体1.2の一体部分である対応する外向きの突起1.2.3を受け入れる。外側体1.3が支持体1.2に対して摺動されるときに外向きの突起1.2.3は注射ストロークを実施するように長手方向凹部1.3.2内へ移動し、このとき、支持体1.2に対する外側体1.3の相対回転が阻止される。
【0047】
注射前、外向きの突起1.2.3は、長手方向凹部1.3.2の第1部分1.3.2.1内に保持される。外向きの突起1.2.3は、半径方向内向きに偏向可能であり、外側体1.3が支持体1.2に対して遠位方向に押されたとき、外向きの突起1.2.3は第1部分1.3.2.1を離れ、第2部分1.3.2.2に入る。外向きの突起1.2.3および長手方向凹部1.3.2の第1部分1.3.2.1の形状および弾性は、外向きの突起1.2.3が第1部分1.3.2.1を離れるに必要な力がニードル・シールド1.1を初期位置Iから後退位置IIまで移動させるのに必要な力を超えるように調整される。こうすれば、以下により詳しく説明するように、注射中のニードル・シールド1.1、支持体1.2および外側体1.3の段階的な移動が確実になる。
【0048】
図1に示す長手方向凹部1.3.2はスロットの形を有する。あるいは、長手方向凹部1.3.2は、外側体1.3の内面に形成され、その結果、外向きの突起1.2.3が外側体1.3内を長手方向凹部1.3.2に沿って移動し、外側からアクセスできないようにする。
【0049】
クランプ・アーム1.3.4が、ほぼ円筒形の外側体1.3に形成されており、中心軸Aに対して直角な半径方向に偏向可能である。図5で最も良くわかるように、クランプ・アーム1.3.2は、支持体1.2の遠位端に近接して支持体1.2に形成された錠止凹部1.2.2内に嵌合する寸法となっている内向きに突出する錠止キャッチ1.3.2.1を含んでなる。
【0050】
ガイド・ピン1.1.3は、ニードル・シールド1.1の可撓性アーム1.1.4に一体に形成されている。可撓性アーム1.1.4は、その静止位置において、安全デバイス1の中心軸Aに対してほぼ平行に延びている。図1に示すように、ガイド・ピン1.1.3は、ほぼ円筒形の支持体1.2に孔として形成されたガイド・トラック1.2.2内へ半径方向外方に延びる。台形のカットアウト部1.1.5が、可撓性アーム1.1.4に隣接してニードル・シールド1.1に形成されており、可撓性アーム1.1.4の偏向、回動運動を可能にしている。安全デバイス1の使用に先立って、ガイド・ピン1.1.3は、ガイド・トラック1.2.5の遠位端にある開始位置PIでガイド・トラック1.2.5の傾斜セクション1.2.5.1内に保持されている。可撓性アーム1.1.4が静止位置にあるとき、ガイド・ピン1.1.3が開始位置PIにおいて横方向へ付勢されることはない。傾斜セクション1.2.5.1は、安全デバイス1の円筒形の軸線Aに対して鋭角に向いている。
【0051】
ニードル・シールド1.1は、開始位置PIにおいてガイド・トラック1.2.5の傾斜セクション1.2.5.1内に保持されているガイド・ピン1.1.3によって、初期位置Iに保持される。ニードル・シールド1.1は、不透明なプラスチック材料から作られており、皮下注射針2.1が注射を通じて患者の眼から隠される。
【0052】
あるいは、ニードル・シールド1.1は、透明なプラスチック材料から作られ、注射を実施しているヘルスケア専門家が、患者の皮膚を貫通する前に皮下注射針2.1の正しい位置を視覚で確認できる。
【0053】
ガイド・ピン1.1.3は、安全デバイス1のいくつかの構成要素の相互作用によって、開始位置PIから離れるのを阻止される。可撓性アーム1.1.4は、横方向Lにガイド・ピン1.1.3を付勢し、ガイド・ピン1.1.3は、横方向Lおよび遠位方向で傾斜セクション1.2.5.1の遠位端に当接し、図2で最も良くわかるように、圧縮スプリング1.4が、支持体1.2、ニードル・シールド1.1間に配置されており、ニードル・シールド1.1およびそこに連結されたガイド・ピン1.1.3が遠位方向に付勢される。
【0054】
ガイド・トラック1.2.5は、安全デバイス1の中心軸Aに対して平行に延びる拡幅セクション1.2.5.2を含んでなる。分離壁1.2.6が、中心軸Aに対して平行に延びており、遠位方向から拡幅セクション1.2.5.2内に突入している。分離壁1.2.6は、支持体1.2と一体であり、注射ストロークが実施された後にガイド・ピン1.1.3が開始位置PIに戻るのを防ぐ。さらにまた、分離壁1.2.6は、ガイド・トラック1.2.5内でのガイド・ピン1.1.3の移動を案内し、ガイド・ピン1.1.3は、遠位方向から終了位置PIIIに入るのを阻止されるが、近位方向から入るのは許される。終了位置PIIIは、ガイド・トラック1.2.5の遠位端と近位端の間のほぼU字形刻み目によって定められる。
【0055】
図1〜6Fに示す本発明の第1実施形態によれば、分離壁1.2.6は、可撓性で、横方向Lに偏向可能である。
【0056】
注射デバイスDは、支持体1.2内に保持された薬剤充填済みシリンジ2を有する安全デバイス1を含んでなる。図2は、バレル2.3の遠位端に摩擦で取り付けられたニードル・キャップ2.2によって覆われた皮下注射針2.1を含んでなる、支持体1.2内に収容された薬剤充填済みシリンジ2を示す。バレル2.3は、薬剤を収容する内部キャビティ2.3.1を有する。内部キャビティ2.3.1は、皮下注射針2.1と流体連通している。内部キャビティ2.3.1の近位端は、ピストンロッド2.5に連結されているピストン2.4によって、流体密にシールされている。ピストン2.4は、近位方向において、バレル2.3から突き出ているピストンロッド2.5を作動させることによって少なくとも遠位方向に可動である。薬剤充填済みシリンジ2のバレル2.3は、それを支持体1.2に取り付けている近位端で支持体1.2の半径方向内向きに突出する内面に当接するバレル・カラー2.3.2を含んでなる。
【0057】
図4を相互参照することによってわかるように、支持体1.2は、その中に薬剤充填済みシリンジ2を保持するようにバレル・カラー2.3.2と係合するクリップ1.2.7を含んでなる。
【0058】
薬剤充填済みシリンジ2は支持体1.2内に保持されおり、皮下注射針2.1が遠位方向に支持体1.2から突き出ている。
【0059】
図1、2に示すようなまとまった状態においては、皮下注射針2.1は、注射デバイスDの使用前にニードル・シールド1.1によって取り囲まれているニードル・キャップ2.2によって覆われている。ニードル・キャップ2.2は、好ましくは、少なくとも部分的に、ゴムのような可塑材料から作られる。皮膚接触面1.1.1の中心開口の幅は、ニードル・キャップ2.2の外径に一致している。ニードル・キャップ・リムーバ3が、皮膚接触面1.1.1の中心開口に挿入され、遠位方向に皮膚接触面1.1.1から突き出ており、その結果、ユーザは、遠位方向にニードル・キャップ・リムーバ3を引くことによって、薬剤充填済みシリンジ2からニードル・キャップ2.2を容易に取り外すことができる。ニードル・キャップ・リムーバ3は、それをニードル・キャップ2.2の遠位端に固定するクランプ手段3.1を含んでなる。
【0060】
あるいは、安全デバイス1およびその中に保持された薬剤充填済みシリンジ2を含んでなる注射デバイスDは、安全デバイス1内に保持されたニードル・キャップ2.2の遠位端に取り付けられたニードル・キャップ・リムーバ3をと共に末端ユーザに出荷され、配送される。このとき、ニードル・キャップ・リムーバ3は遠位方向にニードル・シールド1.1から突き出ている。
【0061】
ピストンロッド2.5の近位端は、外側体1.3の閉じた遠位端に当接し、その結果、ピストン2.4が、支持体1.2に対する外側体1.3の遠位方向変位によって、遠位方向に移動可能である。
【0062】
あるいは、ピストンロッド2.5は、外側体1.3に連結されるか、外側体1.3と一体部品である。この代替実施形態は、全体的に部品点数が少なく、製造コストが低減されるという付加的な利点を有する。
【0063】
ニードル・シールド1.1は、薬剤充填済みシリンジ2の皮下注射針2.1を取り囲む第1位置Iにある。圧縮スプリング1.4は、部分的に負荷をかけられた状態で安全デバイス1内に配置され、ニードル・シールド1.1の内面を遠位方向へ押すと共に、支持体1.2の内面を近位方向へ押し、それによって、これらの2つの部分1.1.1.2を互いから離れるように付勢する。ニードル・シールド1.1は、開始位置PIで支持体1.2に当接しているガイド・ピン1.1.3によって初期位置Iに保持される。
【0064】
図3は、後退位置IIにおけるニードル・シールド1.1の断面図を示し、ここでは、ニードル・シールド1.1は支持体1.2内に実質的に収容されている。皮下注射針2.1は、ニードル・シールド1.1の皮膚接触面1.1.1から遠位方向へ突き出ている。安全デバイス1内に配置された圧縮スプリング1.4は、充分に圧縮され、充分に負荷をかけられている。
【0065】
図4は、後退位置IIにおけるニードル・シールド1.1の透視図を示し、ここでは、ニードル・シールド1.1は支持体1.2内に実質的に収容されている。ニードル・シールド1.1の一体部分であるガイド・ピン1.1.3は、ガイド・トラック1.2.5内の、その近位端付近にある中間位置PIにある。中間位置PIは、ニードル・シールド1.1の後退位置IIに対応する。
【0066】
支持体1.2は、さらに、互いに直径方向に対向して配置された2つのクリップ1.2.7を含んでなる。クリップ1.2.7は、支持体1.2の近位端の近くに位置し、薬剤充填済みシリンジ2を支持体1.2に取り付けるように薬剤充填済みシリンジ2のカラー2.4を締め付け、薬剤充填済みシリンジ2を支持体1.2内にしっかりと保持する。
【0067】
図5は、本発明の第1実施形態による注射デバイスDの、薬剤の注射後の断面図を示す。図5に示す断面図は、中心軸Aまわりに約90度の角度にわたって図2、3に示す断面図に関して回転させられたものである。ニードル・シールド1.1は、前進位置IIIにあって支持体1.2から遠位方向へ突出しており、皮下注射針2.1は、ニードル・シールド1.1によって取り囲まれていて偶発的な針刺し事故を防いでいる。ニードル・シールド1.1は、終了位置PIIIに保持されているガイド・ピン1.1.3によって前進位置IIIに固定される。
【0068】
ピストン2.4は、薬剤充填済みシリンジ2のバレル2.3内に充分に押し込められる。支持体1.2は、外側体1.3内に収容され、それに対して錠止され、その結果、安全デバイス1の再使用が防止される。クランプ・アーム1.3.4に形成された内向きにから突き出ている錠止キャッチ1.3.4.1は、外側体1.3に対して支持体1.2を不可逆的に錠止するように支持体1.2に形成された対応する錠止凹部1.2.4に掛止する。
【0069】
図6A〜6Fは、支持体1.2に形成されたガイド・トラック1.2.5の詳細および第1実施形態による安全デバイス1の使用中の、ガイド・トラック1.2.5内でのガイド・ピン1.1.3の移動を示す。図6A〜6Fは、可撓性アーム1.1.4の可撓性で偏向可能な分離壁1.2.6との依存した相互作用を示す。
【0070】
図6Aに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、注射前、ガイド・トラック1.2.5の傾斜セクション1.2.5.1の遠位端のところで開始位置PIに保持され、ニードル・シールド1.1を初期位置Iに固定する。初期位置Iにおいて、皮下注射針2.1は、ニードル・シールド1.1によって、取り囲まれている。
【0071】
患者の皮膚に対してほぼ直角に中心軸Aを向けることによって注射が実施される。このとき、ニードル・シールド1.1の皮膚接触面1.1.1は患者の皮膚面に乗っており、ハンド・フランジ1.3.1の近位側にある外側体1.3の近位部分は注射を実施するユーザにより把持される。ハンド・フランジ1.3.1は、注射ストロークを実施するためにユーザの手を支持し、それによって、外側体1.3が患者の皮膚面に向かって動かされて注射を開始する。
【0072】
注射は複数の段階で実施される。第1段階において、ニードル・シールド1.1が、スプリング手段1.4の付勢力に抗して支持体1.2内に近位方向へ押し込まれる。図6Bに示すように、ガイド・ピン1.1.3がその開始位置PIを離れ、ガイド・トラック1.2.5の傾斜セクション1.2.5.1に沿って移動する。遠位端部分1.2.5.1が中心軸Aに対して鋭角に向いているで、ガイド・ピン1.1.3の移動は、可撓性アー
ム1.1.4を横方向へ片寄せて負荷をかけ、それによって、ガイド・ピン1.1.3が横方向に付勢される。
【0073】
ガイド・ピン1.1.3は、さらに、ガイド・トラック1.2.5に沿って近位方向へ移動する。図6Cに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、ガイド・トラック1.2.5の拡幅セクション1.2.5.2に入り、横方向において、可撓性分離壁1.2.6に当接する。負荷をかけられた可撓性アーム1.1.4によって加えられる力によって、可撓性分離壁1.2.6は横方向へ片寄せられる。可撓性分離壁1.2.6の弾性は、可撓性アーム1.1.4の弾性に一致するように合わせられ、その結果、可撓性分離壁1.2.6は片寄せられて負荷のかけられた可撓性アーム1.1.4によって偏向可能である。
【0074】
分離壁1.2.6は、ガイド・ピン1.1.3が遠位方向から拡幅セクション1.2.5.2に入るので、ガイド・ピン1.1.3が終了位置PIIIに入るのを阻止する。
【0075】
ガイド・ピン1.1.3は、さらに、近位方向へ中間位置PIIに向かって移動し、図6Dに示すように、可撓性分離壁1.2.6の近位端に達する。この時点で、可撓性分離壁1.2.6が弛緩して、中心軸Aに対してほぼ平行にその静止位置にはね返るので、安全デバイス1の安全特徴が起動される。ここから、終了位置PIIIがアクセス可能となり、ガイド・ピン1.1.3がこの位置に入ることができ、開始位置PIに再突入するのが阻止される。安全デバイス1を取り外すと、ニードル・シールド1.1およびガイド・ピン1.1.3が遠位方向へ進み、ニードル・シールド1.1が前進位置IIIにおいて、薬剤充填済みシリンジ2の皮下注射針2.1を取り囲む。
【0076】
分離壁1.2.6は、中心軸Aに対して平行に延び、ガイド・トラック1.2.5の拡幅セクション1.2.5.2内に延びる軸方向寸法を有する。この軸方向寸法は、位置IIIにアクセス可能となってニードル・シールド1.1がそこに到達する前に支持体1.2に対してニードル・シールド1.1が移動しなければならず、安全デバイス1の再利用を防ぐ安全特徴を起動する最短軸線方向距離を定める。これは、ニードル・シールド1.1が最短軸線方向距離よりも短い軸線方向長さだけ遠位方向へ偶発的に押されたときの、安全デバイス1の安全特徴の意図しない起動を防止する。
【0077】
安全デバイス1は、安全特徴の起動を示す可聴フィードバックを発生する。可聴フィードバックは、ニードル・シールド1.1が最短軸方向距離を超える軸方向長さだけ支持体1.2に対して遠位方向へ移動させられたとき可撓性分離壁1.2.6が中心軸Aに対してほぼ平行にその静止位置へはね返ることによって発生させられ得る。
【0078】
薬剤が皮下注射針2.1を通って放出される前に、ニードル・シールド1.1は、さらに、図3に示す後退位置IIIに達するまで近位方向に移動させられ、それによって、ガイド・ピン1.1.3がガイド・トラック1.2.5で中間位置PIIに保持される。ここで、圧縮スプリング1.4が充分に圧縮され、充分に負荷をかけられる。注射の引き続く第2段階で、皮下注射針2.1が患者の皮膚を貫き、内部キャビティ2.3.1内に収容された薬剤が注入され得る。
【0079】
注射の第1段階を通じて、外向きの突起1.2.3は、長手方向凹部1.3.2の第1部分1.3.2.1内に保持されており、支持体1.2に対する外側体1.3の遠位方向移動が阻止される。ガイド・ピン1.1.3が中間位置PIIに達し、ニードル・シールド1.1が対応する後退位置IIに入ると、外向きの突起1.2.3が半径方向内方へ片寄せられ、第1部分1.3.2.1を離れ、長手方向凹部1.3.2の第2部分1.3.2.2に入る。その結果、外側体1.3が注射の第2段階において、支持体1.2に対して移動できる。
【0080】
第2段階において、外側体1.3は、支持体1.1に対して遠位方向へ移動する。同時に、外側体1.3と相互作用するピストンロッド2.5が遠位方向にピストン2.4を移動させるように作動させられ、内部キャビティ2.3.1内に収容された薬剤が皮下注射針2.1を通り、患者の皮膚下に送達される。
【0081】
注射ストロークの終りで、クランプ・アーム1.3.4に形成された内向きに突出する錠止キャッチ1.3.4.1が、支持体1.2に形成された対応する錠止凹部1.2.4に掛止し、支持体1.2を外側体1.3に対して不可逆的に錠止する。
【0082】
安全デバイス1およびその中に収容された薬剤充填済みシリンジ2を含んでなる注射デバイスDが皮膚面から外される。直ちに、ニードル・シールド1.1が、弛緩する圧縮スプリング1.4の作用によって前進位置PIIIに向かって遠位方向へ移動する。図6Eに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、ニードル・シールド1.1と共に遠位方向へ移動し、分離壁1.2.6によって終了位置PIIIに向かって案内される。
【0083】
図6Fに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、ガイド・トラック1.2.5の終了位置PIIIを定めるU字形刻み目に入り、それによって、可撓性アーム1.1.4が弛緩し、ガイド・ピン1.1.3を横方向へ終了位置PIIIに向かって移動させる。
【0084】
ガイド・ピン1.1.3は、遠位方向、横方向においてU字形刻み目に当接するので、終了位置PIIIにしっかりと保持される。このとき、可撓性アーム1.1.4は、ガイド・ピン1.1.3が終了位置PIIIにおいて、横方向へ付勢されない静止位置にある。ガイド・ピン1.1.3の横方向移動は、終了位置PIIIにおけるガイド・トラック1.2.5のU字形刻み目の形および可撓性アーム1.1.4により阻止される。したがって、安全デバイス1の1回だけの使用後、終了位置PIIIにあるガイド・ピン1.1.3はニードル・シールド1.1を前進位置IIIに不可逆的に錠止する。
【0085】
本発明の一実施形態において、皮下注射針2.1は、注射を通じて患者の眼から隠される。
【0086】
図7は、本発明の第2実施形態による注射デバイスDの透視図を示す。注射デバイスDの安全デバイス1は、中空支持体1.2と、互いに対向して配置された2つのほぼ平らな側部1.2.8とを含んでなる。1つのガイド・トラック1.2.5が、2つのほぼ平らな側部1.2.8の各々の外面に形成される。第2実施形態によるガイド・トラック1.2.5は、くぼみの形状を有し、平らな側部1.2.8を完全に通過していない。
【0087】
ニードル・シールド1.1は、2つのほぼ平らな側部1.2.8を備えた支持体1.2の横断面に対応する輪郭を含んでなる開口を近位端のところに有する。ニードル・シールド1.1は、支持体1.2を実質的に収容する寸法となっている。ニードル・シールド1.1が初期位置Iから後退位置IIまで移動させられるとき、支持体1.2はニードル・シールド1.1内へ摺動する。
【0088】
可撓性アーム1.1.4は、それに外側からアクセスできないように中空ニードル・シールド1.1内に配置される。可撓性アーム1.1.4の遠位端は、ニードル・シールド1.1の遠位端に連結される。可撓性アーム1.1.4は、その非付勢位置において中心軸Aに対してほぼ平行に延びる。ガイド・ピン1.1.3は、半径方向内向き方向において可撓性アーム1.1.4の近位端からガイド・トラック1.2.5内へ延びる。可撓性アーム1.1.4は、それが注射デバイスDの使用時に片寄せられたときにガイド・ピン1.1.3のほぼ平らな移動を可能とするようにニードル・シールド1.1に連結される。注射中、ガイド・ピン1.1.3は、支持体1.2のほぼ平らな側部1.2.8に形成されたガイド・トラック1.2.5内をそれに沿って移動する。
【0089】
支持体1.2の近位端は、外側体1.3の開いている遠位端内に収容されており、ここで、外側体1.3は、外側体1.3内に実質的に支持体1.2を収容するように支持体1.2に対して遠位方向に摺動可能である。外側体1.3は、支持体1.2の形状に対応する形状を有し、支持体1.2の2つのほぼ平らな側部1.2.8に対向する2つのほぼ平らな外側部1.3.5を含んでなる。
【0090】
周方向で外方へ突出しているハンド・フランジ1.3.1が、外側体1.3の外面にその遠位端に接近して一体形成されている。
【0091】
ニードル・シールド1.1の皮膚接触面1.1.1は、患者の皮膚に押し付けられるようになっている。皮膚接触面1.1.1は、安全デバイス1内に保持された薬剤充填済みのシリンジ2のニードル・キャップ2.2の外径に一致する寸法の中心開口に加えて、ほぼ中空のニードル・シールド1.1の遠位端の閉鎖を提供する。
【0092】
2つの直径に対向する第2長手方向タング1.2.2が、各平らな側部1.2.8の外面に形成される。第2長手方向タング1.2.2は、各ガイド・トラック1.2.5に隣接して位置し、支持体1.2の或る軸方向長さにわたって中心軸Aに対して平行に延びている。ニードル・シールド1.1が支持体1.2に対して初期位置Iから後退位置IIまで移動させられたとき、各第2長手方向タング1.2.2は、ニードル・シールド1.1の内面に形成された対応する形状の溝(図示せず)に収容される。これにより、支持体1.2とニードル・シールド1.1が互いに対して移動させられたとき、これらの部分のジャミングが防止される。
【0093】
さらにまた、長手方向タング1.2.2は、側体1.3が遠位方向において、遠くに移動するのを防止するために、二次的な侵入深さ制限体としても作用する。
【0094】
分離壁1.2.6は、支持体1.2の平らな側部1.2.8の外面に形成される。分離壁1.2.6は、ガイド・トラック1.2.5の拡幅セクション1.2.5.2内を中心軸Aに対して平行に延びる。
【0095】
図7に示す第2実施形態による分離壁1.2.6は、偏向可能ではなく、注射デバイスDの使用を通じて静止したままである。
【0096】
図8は、説明の便宜上、中心軸Aに対して平行に切り開いた、第2実施形態による支持体1.2の透視図をしめす。ガイド・トラック1.2.5は、くぼみの形を有し、支持体1.2の内部には外側からアクセスできない。外向きの突起1.2.3は、外側体1.3の内面に形成される長手方向錠止凹部1.3.2に受けいれられる。
【0097】
図9A〜9Eは、支持体1.2に形成されたガイド・トラック1.2.5の詳細および注射中の第2実施形態によるガイド・トラック1.2.5内でのガイド・ピン1.1.3の移動を示す。図9A〜9Eは、第2実施形態によるガイド・トラック1.2.5内でのガイド・ピン1.1.3の移動を示し、そこでは、分離壁1.2.6は注射を通じて静止したままである。
【0098】
図9Aに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、注射に先立ってガイド・トラック1.2.5の傾斜セクション1.2.5.1の遠位端のところの開始位置PIに保持され、ニードル・シールド1.1を初期位置Iに固定している。初期位置Iにおいて、皮下注射針2.1は、ニードル・シールド1.1によって取り囲まれる。
【0099】
患者の皮膚に対してほぼ直角に中心軸Aを向けることによって注射が実施される。このとき、ニードル・シールド1.1の皮膚接触面1.1.1は患者の皮膚面に乗っており、ハンド・フランジ1.3.1の近位側にある外側体1.3の近位部分が注射を実施するユーザにより把持される。ハンド・フランジ1.3.1は、注射ストロークを行うためにユーザの手を支持し、このとき、外側体1.3は患者の皮膚面に向かって遠位方向へ移動させられて注射を開始する。
【0100】
注射は複数の段階に分けて実施される。第1段階において、支持体1.2は、圧縮スプリング1.4の付勢力に抗して遠位方向へニードル・シールド1.1内に押し込まれる。図9Bに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、その開始位置PIを離れ、ガイド・トラック1.2.5の傾斜セクション1.2.5.1に沿って移動する。傾斜セクション1.2.5.1の遠位端が中心軸Aに対して鋭角に向いているので、ガイド・ピン1.1.3の移動が可撓性アーム1.1.4を横方向へ片寄せ、負荷をかけ、その結果、ガイド・ピン1.1.3が横方向に付勢される。
【0101】
ガイド・ピン1.1.3は、横方向において分離壁1.2.6に当接する。分離壁1.2.6は、静止したままであり、ガイド・ピン1.1.3をさらに近位方向に案内する。
【0102】
ガイド・ピン1.1.3が開始位置PIから拡幅セクション1.2.5.2に入ると、分離壁1.2.6はガイド・ピン1.1.3が終了位置PIIIに入るのを阻止する。
【0103】
ガイド・ピン1.1.3は、さらに近位方向へ中間位置PIIに向かって移動し、図9Cに示すように、分離壁1.2.6の近位端に達する。付勢されたガイド・ピン1.1.3は、図9Dに示すように、横方向Lにおいて分離壁1.2.6を通過し、片寄せられ、負荷をかけられた可撓性アーム1.1.4が少なくとも部分的に弛緩する。
【0104】
この時点で、イド・ピン1.1.3が達することができるように終了位置PIIIがアクセス可能であり、ガイド・ピン1.1.3が開始位置PIに再突入するのを阻止されるので、特に注射デバイスDの再利用を防ぐ安全デバイス1の安全特徴が起動される。
【0105】
薬剤が皮下注射針2.1を通して放出される前、ニードル・シールド1.1は、図3に示す後退位置IIIに達するまでさらに近位方向に移動させられ、それによって、ガイド・ピン1.1.3が中間位置PIIにおいて、ガイド・トラック1.2.5内に保持される。ここで、圧縮スプリング1.4が充分に圧縮され、充分に負荷をかけられる。皮下注射針2.1が患者の皮膚を貫くと、内部キャビティ2.3.1内に収容された薬剤が注射の引き続く第2段階で注入され得る。
【0106】
第2段階において、外側体1.3は、支持体1.2に対して遠位方向へ移動する。同時に、外側体1.3と相互作用するピストンロッド2.5が遠位方向にピストン2.4を移動させるように作動させられ、内部キャビティ2.3.1内に収容された薬剤が皮下注射針2.1を通り、患者の皮膚下に送達される。
【0107】
安全デバイス1の引き続く取り外しにより、ニードル・シールド1.1およびガイド・ピン1.1.3が遠位方向へ前進させられ、ニードル・シールド1.1が前進位置IIIにおいて、薬剤充填済みシリンジの皮下注射針2.1を取り囲む。図9Eは、ガイド・ピン1.1.3が終了位置PIIIを定めるガイド・トラック1.2.5のU字形刻み目内に保持されることによって、前進位置IIIに確実に保持されるニードル・シールド1.1を示す。ここでは、注射デバイスおよび/または安全デバイス1の再使用が防止される。
【0108】
安全デバイス1は、針刺し事故を回避するための簡単な機構を提供する。注射は、患者の皮膚に向かう外側体1.3の単純な直線移動により行われ、したがって、注射針安全性を提供し、安全デバイス1の再使用を防ぐ安全特徴が自動的に起動される。
【0109】
[参照符号のリスト]
1 安全デバイス
1.1 ニードル・シールド
1.1.1 皮膚接触面
1.1.2 第1長手方向タング
1.1.3 ガイド・ピン
1.1.4 可撓性アーム
1.1.5 台形カットアウト部
1.2 支持体
1.2.1 第1長手方向溝
1.2.2 第2長手方向タング
1.2.3 外向きの突起
1.2.4 錠止凹部
1.2.5 ガイド・トラック
1.2.5.1 傾斜セクション
1.2.5.2 拡幅セクション
1.2.6 分離壁
1.2.7 クリップ
1.2.8 平らな側部
1.3 外側体
1.3.1 ハンド・フランジ
1.3.2 長手方向凹部
1.3.2.1 第1部分
1.3.2.2 第2部分
1.3.3 ウェブ
1.3.4 クランプ・アーム
1.3.4.1 錠止キャッチ
1.3.5 平らな外側側部
1.4 圧縮スプリング
2 薬剤充填済みシリンジ
2.1 皮下注射針
2.2 ニードル・キャップ
2.3 バレル
2.3.1 内部キャビティ
2.3.2 バレル・カラー
2.4 ピストン
2.5 ピストンロッド
3 キャップ・リムーバ
3.1 クランプ手段
A 中心軸
D 注射デバイス
L 横方向
I 初期位置
II 後退位置
III 前進位置
PI 開始位置
PII 中間位置
PIII 終了位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E