特許第5938403号(P5938403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5938403薬剤充填済みシリンジおよび注射デバイスのための安全デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938403
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】薬剤充填済みシリンジおよび注射デバイスのための安全デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20160609BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61M5/32 500
   A61M5/32 510R
   A61M5/28
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-517173(P2013-517173)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-533777(P2013-533777A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】EP2011060320
(87)【国際公開番号】WO2012000836
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月18日
(31)【優先権主張番号】10168319.1
(32)【優先日】2010年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ガレス・ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】クリス・ウォード
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エクマン
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−517437(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/039022(WO,A2)
【文献】 登録実用新案第3171873(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの弾力アーム(1.2.3)を含んでなるほぼ円筒形で中空の支持体(1.2)、および
−支持体(1.2)に対して摺動可能に配置された中空ニードル・シールド(1.1)を含んでなり、ニードル・シールド(1.1)またはニードル・シールド・アセンブリが、安全デバイス(1.1)の中心軸(A)に対して直角な横方向(L)に突出する少なくとも1つの湾曲作動ランプ(1.1.2)を含んでなる薬剤充填済みシリンジ(2)のための安全デバイス(1)であって、
湾曲作動ランプ(1.1.2)が、ニードル・シールド(1.1)の近位端で第1の横方向寸法(L1)およびニードル・シールド(1.1)の遠位端で、第1の横方向寸法(L1)を上回る第2の横方向寸法(L2)を含んでなり、ニードル・シールド(1.1)が初期位置から後退位置まで移動させられたとき、弾力アームは、湾曲作動ランプ(1.1.2)と係合し、湾曲作動ランプの外縁に沿って移動する、そして、ニードル・シールド(1.1)が後退位置に達したときには、弾力アームは、湾曲作動ランプ(1.1.2)の湾曲に対応するように横方向に曲げられる、それにより弾力アーム(1.2.3)は、ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)に対して摺動したとき、湾曲作動ランプ(1.1.2)と係合し、後退位置においてニードル・シールドを付勢するように応力がかけられ、エネルギを付与されることを特徴とする、上記安全デバイス(1)。
【請求項2】
弾力アーム(1.2.3)がプラスチック材料から作られることを特徴とする、請求項1に記載の安全デバイス(1)。
【請求項3】
弾力アーム(1.2.3)が支持体(1.2)に一体に形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の安全デバイス(1)。
【請求項4】
弾力アーム(1.2.3)が静止位置においてエネルギを付与されず、一方、静止位置における、弾力アーム(1.2.3)は、中心軸(A)に対して本質的に平行に、そして支持体(1.2)の軸方向のほぼ全長にわたって延びることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項5】
ニードル・シールド(1.1)が、初期位置(1)から後退位置(II)へ、そしてさらに前進位置(III)へ支持体(1.2)に対して摺動可能であり、ここでニードル・シールド(1.1)が、初期位置(I)および前進位置(III)において、支持体(1.2)から突出しており、一方ニードル・シールド(1.1)が、後退位置(II)において、支持体(1.2)内にほぼ収容されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項6】
後退位置(II)における、ニードル・シールド(1.1)が、横方向(L)に曲げられる応力のかかったそしてエネルギを付与された弾力アーム(1.2.3)によって支持体(1.2)に対して遠位方向へ付勢されることを特徴とする、請求項5に記載の安全デバイス(1)。
【請求項7】
ニードル・シールド(1.1)が初期位置(I)にあるとき、弾力アーム(1.1.3)が静止位置にあることを特徴とする、請求項5に記載の安全デバイス(1)。
【請求項8】
湾曲作動ランプ(1.1.2)がニードル・シールド(1.1)に一体に形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項9】
ニードル・シールド(1.1)が、増大した表面積の皮膚接触フランジ(1.1.1)を含んでなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項10】
ニードル・シールド(1.1)が、ニードル・シールド(1.1)の両側から突き出る2つの横方向突出湾曲作動ランプ(1.1.2)を含んでなることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項11】
安全デバイス(1)が、支持体(1.2)に対して摺動可能に配置されるほぼ円筒形の外側体(1.3)を含んでなり、一方外側体(1.3)は、弾力アーム(1.2.3)および/または湾曲作動ランプ(1.1.2)を受けるような寸法としてある少なくとも1つの軸方向スロット(1.3.3)を含んでなることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項12】
遠位端に取り付けられた皮下注射針(2.1)を備える薬剤充填済みシリンジ(2)と、請求項1〜11のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)とを含んでなる注射デバイス(D)であって、安全デバイス(1)が、
−少なくとも1つの弾力アーム(1.2.3)を含んでなるほぼ円筒形で中空の支持体(1.2)、および
−支持体(1.2)に対して摺動可能に配置された中空のニードル・シールド(1.1)
を含んでなり、ここでニードル・シールド(1.1)が、安全デバイス(1.1)の中心軸(A)に対して直角な横方向(L)に突き出ている少なくとも1つの湾曲作動ランプ(1.1.2)を含んでなる注射デバイス(D)において、湾曲作動ランプ(1.1.2)が、ニードル・シールド(1.1)の近位端で第1の横方向寸法(L1)およびニードル・シールド(1.1)の遠位端で、第1の横方向寸法(L1)を上回る第2の横方向寸法(L2)を含んでなり、弾力アーム(1.2.3)は、ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)に対して摺動したとき、湾曲作動ランプ(1.1.2)と係合し、皮下注射針(2.1)は、初期位置(I)および/または前進位置(III)において支持体(1.2)の遠位端から突出して、ニードル・シールド(1.1)によって取り囲まれることを特徴とする、上記注射デバイス(D)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニードル安全性を提供する安全デバイス、特に薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスに関する。安全デバイスは、薬剤充填済みシリンジに入っている薬剤または薬品の注入前、注入中、注入後の過失による針刺し事故およびニードル損傷を避けるようになっている。特に、安全デバイスは、皮下自己投与注射またはヘルスケア専門家により投与される注射のためにニードル安全性を提供する。本発明は、さらに、薬剤充填済みシリンジからなる注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
1回分の選択された薬剤投与量で満たされた薬剤充填済みシリンジは、患者に薬剤を投与するための良く知られた注射デバイスである。使用の前後で薬剤充填済みシリンジのニードルを覆うための安全デバイスも良く知られている。代表的には、これらのデバイスは、ニードルを取り囲むように手動で動かされるか、または弛緩スプリングの作用動かされるニードル・シールドを含んでなる。
【0003】
現状技術において知られている異なったタイプの安全デバイスは、薬剤充填済みシリンジを身体に対して動かせるように配置し、注射後に薬剤充填済みシリンジを身体から引っ込めるようにすることによって、ニードル安全性を提供するという課題を解決している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一目的は、薬剤充填済みシリンジのための改良された安全デバイスを提供することにある。
【0005】
本願発明のさらなる目的は、取り扱いが安全であり、特に偶発的な針刺し事故を防ぐ薬剤充填済みシリンジを含んでなる改良された注射デバイスを提供することにある。
【0006】
この目的は、請求項1に記載の安全デバイスおよび請求項12に記載の注射デバイスにより達成される。
【0007】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項において与えられる。
【0008】
この明細書の文脈において、遠位および近位という用語は、注射を行う人間の観点から定義されている。その結果、遠位方向とは、注射を受ける患者の身体に向いた方向を謂い、遠位端とは、患者の身体に向いたエレメントの端と定義する。エレメントの近位端または近位方向とは、それぞれ、注射を受ける患者の身体から離れる方向で、遠位端または遠位方向とは反対側に向いている。
【0009】
本発明によれば、薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスは、ほぼ円筒形の中空支持体と、この支持体に対して摺動可能に配置された中空のニードル・シールドとを含んでなる。支持体は、少なくとも1つの弾力アームを含んでなり、中空のニードル・シールドまたはニードル・シールド・アセンブリは、少なくとも1つの湾曲作動ランプを含んでなる。湾曲作動ランプは、安全デバイスの中心軸に対して直角な横方向に突出する。湾曲作動ランプは、ニードル・シールドの近位端のところの第1の横方向寸法と、ニードル・シールドの遠位端のところの、第1の横方向寸法を上回る第2の横方向寸法とを含んでなる。ニードル・シールドが支持体に対して摺動したとき、弾力アームは、湾曲作動ランプと係合する。
【0010】
湾曲作動ランプは、薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスの代表的な設計と異なるテーパ付きの形状を安全デバイスに与える。本発明による安全デバイスは、一般的に注射を受けるという不快な行為を代表的なユーザに連想させないトランペット状の設計を有する。したがって、この安全デバイスの設計は注射を受けることについての可能性ある不安を軽減する。このことは、注射針または注射についての不安が患者に適切に注射を行わせないかもしれないので、特に自己投与注射の背景において有用である。
【0011】
本発明の可能性ある実施形態によれば、湾曲作動ランプはニードル・シールドに一体形成される。
【0012】
本発明の別の実施の形態においては、湾曲作動ランプは、ニードル・シールドに連結された別体部分である。ニードル・シールド・アセンブリがニードル・シールドおよび湾曲作動ランプを構成する。
【0013】
本発明の可能性ある実施形態によれば、弾力アームは、ニードル・シールドを支持体に対して遠位方向に付勢するスプリング手段として作用し、プラスチック材料から作られている。安全デバイスは、いかなる金属部分も包含せず、完全にプラスチック材料から作られるので、コスト効率良く、高品質で製造され得る。安全デバイスは、使い捨てシリンジとの組み合わせに良く適しており、第一の使用後に安全デバイス内に保持された薬剤充填済みシリンジと共に処分される。
【0014】
好ましくは、弾力アームは、支持体に一体に形成される。弾力アームは、支持体と一体の付勢手段として作用する。安全デバイスは、プラスチック材料から作られたほんの少数の部分のみを含んでなるから、本発明による安全デバイスの製造コストは、通常の金属スプリングを含んでなる代表的な安全デバイスに比較してかなり減らされる。
【0015】
弾力アームは、静止位置で負荷をかけられず、中心軸に対して本質的に平行に、そして、静止位置における支持体の軸方向のほぼ全長にわたって延びている。弾力アームは、安全デバイスの使用中に負荷をかけられる安全デバイスの付勢手段のための簡単な機構を提供する。
【0016】
本発明の別の可能性ある実施形態によれば、ニードル・シールドは、初期位置から後退位置へ、そして、さらに前進位置へ支持体に対して移動可能である。ニードル・シールドは、初期位置および前進位置において、支持体から突出し、安全デバイス内に保持された薬剤充填済みシリンジの皮下注射針を取り囲む。ニードル・シールドは、後退位置において、支持体内にほぼ収容される。
【0017】
また別の可能性ある実施形態によれば、ニードル・シールドは、不透明なプラスチック材料から作られる。初期位置に保持されているニードル・シールドによって注射前には皮下注射針は患者の眼から隠される。これは、可能性ある患者の注射針に対する不安を和らげる。したがって、安全デバイスは、自己投与注射を実施するのに特に適している。
【0018】
別の実施形態によれば、ニードル・シールドは、透明なプラスチック材料から作られる。こうすれば、皮下注射針がニードル・シールドによって、囲まれているときでも、安全デバイスを使用するヘルスケア専門家が患者の皮膚を刺し貫いている皮下注射針の正しい位置を視覚的に確認できる。
【0019】
本発明の安全デバイスは自己投与注射にもヘルスケア専門家により行われる注射にも適しているので、ここでユーザまたは患者と呼ぶ人間は全く同一の人間であってもよい。
【0020】
ニードル・シールドが初期位置から後退位置まで移動させられたとき、弾力アームは、湾曲作動ランプと係合し、湾曲作動ランプの外縁に沿って移動する。ニードル・シールドが後退位置に達したときには、弾力アームは、湾曲作動ランプの湾曲に対応するように横方向に曲げられる。したがって、弾力アームは、後退位置において、ニードル・シールドを付勢するように負荷をかけられる。弾力アームは、安全デバイスの使用中、短いタイムスパンにわたって負荷をかけられる。これにより、安全デバイスの信頼性を制限することなく材料疲労しやすいプラスチック材料を付勢手段に用いることが可能になる。
【0021】
ニードル・シールドが初期位置にあるとき弾力アームは静止位置にある。使用に先立って、弾力アームが負荷のかけられていない静止位置にあるようにニードル・シールドは初期位置に保持される。したがって、弾力アームの限られた可撓性の原因となっている材料疲労および/またはメモリ効果が、長期にわたる保管期間後でも回避される。
【0022】
本発明のさらに別の可能性ある実施形態によれば、湾曲作動ランプは、ニードル・シールドに一体に形成される。その結果、安全デバイスは、少数の部品を含んでなり、製造コストを下げる。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、ニードル・シールドは、薬剤充填済みシリンジに収容された薬剤の注射中、患者の皮膚の上に乗る皮膚接触フランジを含んでなる。この皮膚接触フランジは、皮下注射針の正しい配置を容易にするので、特に、不慣れなユーザが適切な注射を実施できる。さらにまた、注射中、皮膚接触フランジは患者の皮膚面に押し付けられる。皮膚接触フランジは、負荷を拡げるように大きくなった表面積を含んでなり、注射が気持ちよく行われ得る。
【0024】
さらに別の可能性ある実施形態によれば、ニードル・シールドは、ニードル・シールドの両側部から突出する2つの横方向に突出し、湾曲作動ランプを含んでなる。これにより、付勢アームによってニードル・シールドに加えられる付勢力が確実に安全デバイスの中心軸に対して平行に向けられる。特に、このことは、ニードル・シールドが弛緩する弾力アームの作用によって、後退位置から前進位置まで移動させられたときの、支持体内でのニードル・シールドのジャミングを防ぐ。
【0025】
安全デバイスは、支持体に対して摺動可能に配置されたほぼ円筒形の外側体を含んでなる。外側体は、安全デバイスの支持体内に保持された薬剤充填済みシリンジに収容された薬剤を放出するように支持体に対して摺動させられる。外側体は、弾力アームおよび/または湾曲作動ランプを受け入れるような寸法となっている少なくとも1つの軸方向スロットを含んでなる。注射ストロークの終りで支持体が外側体内に受け入れられたときに、弾力アームおよび/または湾曲作動ランプは軸方向スロットを貫いて突出する。
【0026】
注射デバイスは、薬剤充填済みシリンジおよび安全デバイスを含んでなる。薬剤充填済みシリンジは、それの遠位端に取り付けられた皮下注射針と、皮下注射針と流体連通する内部キャビティを備えるバレルと、内部キャビティの近位端を流体密にシールするピストンとを含んでなる。ピストンは、バレルの近位端から突き出るピストンロッドを作動させることによって動かすことができる。薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスは、ほぼ円筒形で中空の支持体と、この支持体に対して摺動可能に配置された中空のニードル・シールドとを含んでなる。支持体は、少なくとも1つの弾力アームを含んでなる。ニードル・シールドは、安全デバイスの中心軸に対して直角な横方向に突出する少なくとも1つの湾曲作動ランプを含んでなる。湾曲作動ランプは、ニードル・シールドの近位端のところの第1の横方向寸法と、ニードル・シールドの遠位端のところの、第1の横方向寸法を上回る第2の横方向寸法を含んでなる。ニードル・シールドが支持体に対して摺動したとき、弾力アームは湾曲作動ランプと係合する。皮下注射針は、支持体の遠位端から突き出ており、初期位置および/または前進位置においてニードル・シールドによって取り囲まれる。
【0027】
薬剤充填済みシリンジおよび安全デバイスを含んでなる注射デバイスは、上記の利点を組み合わせており、患者の皮膚の下に薬剤を送達する注射の前、その最中、その後の不注意による針刺し事故を回避できる。
【0028】
本発明の詳細を以下に説明する。しかしながら、本発明の好ましい実施例を示しながらの詳細な説明および特別な例はほんの例示のために与えたものであることは了解されたい。本発明の精神と範囲内での図示実施形態の種々の変更、修正は当業者にとって明らかである。
【0029】
本発明は、以下で行う詳細な説明からより良く理解されることになる。添付の図面は、ほんの説明の便宜上与えられたものであり、本発明の範囲を制限することはない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスを有する注射デバイスの、使用前の透視図を示す。
図2】初期位置に保持されたニードル・シールドを備える薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスを有する注射デバイスの断面図を示す。
図3】後退位置に保持されたニードル・シールドを備えた薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスを有する注射デバイスの断面図を示し、ここでは、弾力アームが負荷をかけられている。
図4】注射ストロークのおわりでの薬剤充填済みシリンジのための安全デバイスを有する注射デバイスの断面図を示す。
図5】前進位置に保持されたニードル・シールドを備えた安全デバイスを有する注射デバイスの断面図を示す。
図6】安全デバイスの支持体およびニードル・シールドの透視図を示し、ここでは、ニードル・シールドは前進位置に保持されている。
図7】注射が実施された後の、安全デバイスを有する注射デバイスの断面図を示す。
図8】A〜Fは、安全デバイスの使用中のガイド・トラックの詳細およびガイド・トラック内でのガイド・ピンの移動を示す。
【0031】
すべての図において、対応する部分は同じ参照記号が付けてある。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、注射を実施するユーザに提供されることになるであろうときの薬剤充填済みシリンジ2のための安全デバイス1を有する注射デバイスDを示す。安全デバイス1は、中空ニードル・シールド1.1を含んでなる。ニードル・シールド1.1は、ほぼ円筒形で中空の支持体1.2内に収容されており、支持体1.2に対して摺動可能である。安全デバイス1の使用前、ニードル・シールド1.1は初期位置Iに保持されており、支持体1.2から突き出ている。
【0033】
円周方向の皮膚接触フランジ1.1.1が、ニードル・シールド1.1の遠位端に形成されている。皮膚接触フランジ1.1.1は、患者の皮膚に対して押圧されるようになっていて、半径方向外方へ安全デバイス1の中心軸Aに対して直角に突出している。患者の皮膚と接触することになる皮膚接触フランジ1.1.1の縁は、傷害を回避すべく丸くされている。皮膚接触フランジ1.1.1は、安全デバイス1の中心軸A上に位置する中心開口を有する。皮膚接触面1.1.1は、ニードル・シールド1.1の一体部分であるか、または、ニードル・シールド1.1に取り付けられた、プラスチック材料から作られた別体部分である。
【0034】
ニードル・シールド1.1は、安全デバイス1の中心軸Aに対して直角な横方向にニードル・シールドの2つの背中合わせの側部から突出している2つの湾曲作動ランプ1.1.2を含んでなる。各湾曲作動ランプ1.1.2は、ニードル・シールド1.1の近位端のところにある第1の横方向寸法L1と、ニードル・シールド1.1の遠位端のところにある第2の横方向寸法L2とを有する。作動傾斜路1.1.2の第2の横方向寸法L2は、それの第1の横方向寸法L1より大きい。
【0035】
湾曲作動ランプ1.1.2は、一体片としてニードル・シールド1.1と共に配置されるか、または、ニードル・シールド1.1に連結された、プラスチック材料から作られた別体部分として配置される。この代替実施形態においては、ニードル・シールド・アセンブリが、ニードル・シールド1.1およびこれに連結された湾曲作動ランプ1.1.2を含んでなる。
【0036】
ガイド・ピン1.1.3は、ニードル・シールド1.1の可撓性アーム1.1.4に一体に形成されている。可撓性アーム1.1.4は、その静止位置において安全デバイス1の中心軸Aに対して本質的に平行に延びる。図1に示すように、ガイド・ピン1.1.3は、ほぼ円筒形の支持体1.2に形成されたガイド・トラック1.2.1内へ半径方向外方に突入する。台形のカットアウト部1.1.5が、可撓性アーム1.1.4に隣接してニードル・シールド1.1に形成されており、可撓性アーム1.1.4の片寄り、回動運動を可能にしている。安全デバイス1の使用に先立って、ガイド・ピン1.1.3は、ガイド・トラック1.2.1の遠位端にある開始位置PIでガイド・トラック1.2.1の傾斜セクション1.2.1.1内に保持されている。可撓性アーム1.1.4が静止位置にあるとき、ガイド・ピン1.1.3が開始位置PIにおいて、横方向へ付勢されることはない。傾斜セクション1.2.1.1は、安全デバイス1の円筒軸Aに対して鋭角に向いている。
【0037】
ニードル・シールド1.1は、開始位置PIにおいてガイド・トラック1.2.1の傾斜セクション1.2.1.1内に保持されているガイド・ピン1.1.3によって初期位置Iに保持される。ニードル・シールド1.1は、不透明なプラスチック材料から作られており、安全デバイス1の中で保持される薬剤充填済みシリンジ2の皮下注射針2.1が注射前には患者の眼から隠されている。
【0038】
あるいは、ニードル・シールド1.1は、透明なプラスチック材料から作られ、注射を実施しているヘルスケア専門家が、患者の皮膚を貫通する前に皮下注射針2.1の正しい位置を視覚で確認できる。ガイド・ピン1.1.3は、安全デバイス1のいくつかの構成要素の相互作用によって、開始位置PIから離れるのを阻止される。片寄り時、可撓性アーム1.1.4は、開始位置PIに向かって戻る横方向Lにガイド・ピン1.1.3を付勢する。ガイド・ピン1.1.3は、横方向L、遠位方向で傾斜セクション1.2.1.1の遠位端に当接する。
【0039】
ガイド・トラック1.2.1は、安全デバイス1の中心軸Aに対して平行に延びる拡幅セクション1.2.1.2を含んでなる。可撓性の分離壁1.2.2が、遠位方向から中心軸Aに対して平行に拡幅セクション1.2.5.2内に突入している。可撓性分離壁1.2.2は、支持体1.2と一体の部分であり、注射ストロークが少なくとも部分的に実施された後にガイド・ピン1.1.3が開始位置PIに戻るのを防ぐ逆止特徴として作用する。さらにまた、可撓性分離壁1.2.2は、ガイド・トラック1.2.1内でのガイド・ピン1.1.3の移動を案内し、ガイド・ピン1.1.3は、遠位方向から終了位置PIIIに入るのを阻止されるが、近位方向から入るのは許される。終了位置PIIIは、ガイド・トラック1.2.1の遠位端と近位端の間のほぼU字形の刻み目によって定められる。
【0040】
支持体1.2は、弾力プラスチック材料から作られる。支持体1.2は、中心軸Aに対してほぼ長手方向長さに沿ってスロットが形成され、その結果、2つの弾力アーム1.2.3が支持体1.2の両側部に形成される。各弾力アーム1.2.3は、半径方向外方へ支持体1.2から突出する。弾力アーム1.2.3は、安全デバイス1のスプリング手段として作用し、支持体1.2およびニードル・シールド1.1が注射中に互いに対して摺動させられるとき、これらの部分1.1.1.2を互いに離れる方向へ付勢する。
【0041】
あるいは、弾力アーム1.2.3は、支持体1.2内に保持されて、それに固定されたカラーによって、互いに連結されている別体のプラスチック部分であってもよい。
【0042】
安全デバイス1は、開いた遠位端と閉じた近位端を有する、プラスチック材料から作られたほぼ円筒形で中空の外側体1.3を含んでなる。支持体1.2の近位端は、外側体1.3の開いている遠位端内に収容されており、ここで、外側体1.3は、外側体1.3内に実質的に支持体1.2を収容するように支持体1.2に対して遠位方向に摺動可能である。周方向で外方へ突出しているハンド・フランジ1.3.1が、外側体1.3の外面にその遠位端に接近して一体形成されている。
【0043】
さらにまた、2つの対向する軸方向スロット1.3.3が外側体1.3の両側部に形成されており、ニードル・シールド1.1、支持体1.2および外側体1.3が注射中に互いに対して摺動させられたときに外方へ突き出ている弾力アーム1.2.3および湾曲作動ランプ1.1.2を受け入れる。
【0044】
クランプ・アーム1.3.4が、ほぼ円筒形の外側体1.3に形成されており、中心軸Aに対して直角な半径方向に片寄り可能である。図7で最も良くわかるように、クランプ・アーム1.3.4は、支持体1.2の近位に近接して支持体1.2に形成された錠止凹部1.2.2内に嵌合する寸法となっている内向きに突出する錠止キャッチ1.3.4.1を含んでなる。
【0045】
注射デバイスDは、支持体1.2内に保持された薬剤充填済みシリンジ2を有する安全デバイス1を含んでなる。図2は、バレル2.3の遠位端に摩擦で取り付けられたニードル・キャップ2.2によって覆われた皮下注射針2.1を含んでなる、支持体1.2内に収容された薬剤充填済みシリンジ2を示す。バレル2.3は、薬剤を収容する内部キャビティ2.3.1を有する。内部キャビティ2.3.1は、皮下注射針2.1と流体連通している。内部キャビティ2.3.1の近位端は、ピストンロッド2.5に連結されているピストン2.4によって流体密にシールされている。ピストン2.4は、バレル2.3から突き出ているピストンロッド2.5を近位方向に作動させることによって、少なくとも遠位方向に移動可能である。薬剤充填済みシリンジ2のバレル2.3は、それを支持体1.2に取り付けている近位端で支持体1.2の半径方向内向きに突出する内面に当接するバレル・カラー2.3.2を含んでなる。
【0046】
図6を相互参照することによってわかるように、支持体1.2は、その中に薬剤充填済みシリンジ2を保持するようにバレル・カラー2.3.2と係合するクリップ1.2.6を含んでなる。
【0047】
薬剤充填済みシリンジ2は支持体1.2内に保持されおり、皮下注射針2.1が遠位方向に支持体1.2から突き出ている。
【0048】
図1、2に示すようなまとまった状態においては、皮下注射針2.1は、注射デバイスDの使用前にニードル・シールド1.1によって、取り囲まれているニードル・キャップ2.2によって覆われている。ニードル・キャップ2.2は、好ましくは、少なくとも部分的に、ゴムのようなプラスチック材料から作られる。皮膚接触フランジ1.1.1の中心開口の幅は、ニードル・キャップ2.2の外径に一致している。ニードル・キャップ・リムーバ3が、皮膚接触フランジ1.1.1の中心開口に挿入され、遠位方向に皮膚接触フランジ1.1.1から突き出ており、ユーザは、遠位方向にニードル・キャップ・リムーバ3を引くことによって薬剤充填済みシリンジ2からニードル・キャップ2.2を容易に取り外すことができる。ニードル・キャップ・リムーバ3は、それをニードル・キャップ2.2の遠位端に固定するクランプ手段3.1を含んでなる。
【0049】
あるいは、安全デバイス1およびその中に保持された薬剤充填済みシリンジ2を含んでなる注射デバイスDは、安全デバイス1内に保持されたニードル・キャップ2.2の遠位端に取り付けられたニードル・キャップ・リムーバ3と共に末端ユーザに出荷され、配送される。このとき、ニードル・キャップ・リムーバ3は遠位方向にニードル・シールド1.1から突き出ている。
【0050】
図2に示すように、ピストンロッド2.5の近位端は、外側体1.3の閉じた遠位端に当接し、その結果、ピストン2.4が、支持体1.2に対する外側体1.3の遠位方向変位によって遠位方向に移動可能である。
【0051】
あるいは、ピストンロッド2.5は、外側体1.3に連結するか、外側体1.3と一体化される。この代替実施形態は、全体的に部品点数が少なく、製造コストが低減されるという付加的な利点を有する。
【0052】
ニードル・シールド1.1は、薬剤充填済みシリンジ2の皮下注射針2.1を取り囲む第1位置Iにある。
【0053】
図3は、注射ストロークの始まりにおける安全デバイス1を有する注射デバイスDの断面図を示す。ニードル・シールド1.1は、後退位置IIにあり、そこでは、ニードル・シールド1.1は支持体1.2内にほぼ収容される。皮下注射針2.1は、ニードル・シールド1.1の皮膚接触面1.1.1から遠位方向へ突き出ている。湾曲作動ランプ1.1.2と係合する弾力アーム1.2.3は、横方向Lにおいて、外方へ曲げられ、湾曲作動ランプ1.1.2の湾曲に一致して湾曲を描く。弾力アーム1.2.3は、ニードル・シールド1.1を支持体1.2に対して遠位方向に付勢する最大負荷をかけられた状態にある。
【0054】
図4は、注射ストロークの終りにおいける安全デバイス1を有する注射デバイスDの断面図を示す。ニードル・シールド1.1は、後退位置IIにあり、支持体1.2内にほぼ収容されている。ニードル・シールド1.1の一体部分であるガイド・ピン1.1.3は、ガイド・トラック1.2.5内の、その近位端付近にある中間位置PIにある。ガイド・トラック1.2.1内のガイド・ピン1.1.3の中間位置PIIは、ニードル・シールド1.1の後退位置IIに対応する。
【0055】
図5は、薬剤の注射後の、安全デバイス1を有する注射デバイスDの断面図を示す。ニードル・シールド1.1は、支持体1.2から遠位方向へ突出する前進位置IIIにあり、皮下注射針2.1は、ニードル・シールド1.1によって、取り囲まれていて偶発的な針刺し事故を防いでいる。ニードル・シールド1.1は、終了位置PIIIに保持されているガイド・ピン1.1.3によって前進位置IIIに固定される。
【0056】
弾力アーム1.2.3は、静止位置にあり、円筒形の軸Aに対して本質的に平行に延びている。支持体1.2は、外側体1.3内にほぼ収容されている。
【0057】
図6は、前進位置IIIにおいて支持体1.2に対して保持されたニードル・シールド1.1の透視図を示す。支持体1.2は、互いに直径方向に対向する2つのクリップ1.2.6を含んでなる。クリップ1.2.7は、支持体1.2の近位端の近くに位置し、薬剤充填済みシリンジ2を支持体1.2に取り付けるように薬剤充填済みシリンジ2のカラー2.3.2を締め付け、薬剤充填済みシリンジ2を支持体1.2内にしっかりと保持する。
【0058】
2つの長手方向凹部(図示せず)が、外側体1.3の内面の両側に形成されている。長手方向凹部は、外側体1.3の軸方向のほぼ全長にわたって中心軸Aに対して平行に延びている。各長手方向凹部は、支持体1.2の近位端に形成された対応する外向きの突起(図示せず)を受け入れる。外側体1.3が支持体1.2に対して摺動させられたとき外向きの突起1.2.3は注射ストロークを実施するように長手方向凹部1.3.2内へ移動し、それによって、支持体1.2に対する外側体1.3の相対回転が阻止される。安全デバイス1の使用前、外向きの突起は、長手方向凹部の遠位端に当接して支持体1.2に対する外側体1.3の近位方向移動を制限する。
【0059】
図7は、安全デバイス1の断面図を示しており、ここでは、図示の平面部分は、図5に示す横断面に対してほぼ直角に延びる。ピストン2.4は、薬剤充填済みシリンジ2のバレル2.3内に充分に押し込められる。支持体1.2は、外側体1.3内に収容され、それに対して錠止され、その結果、安全デバイス1の再使用が防止される。クランプ・アーム1.3.4に形成された内向き突出する錠止キャッチ1.3.4.1は、外側体1.3に対して支持体1.2を不可逆的に錠止するように支持体1.2に形成された対応する錠止凹部1.2.4に掛止する。
【0060】
図8A〜8Fは、支持体1.2に形成されたガイド・トラック1.2.1の詳細および安全デバイス1の使用中の、ガイド・トラック1.2.1内でのガイド・ピン1.1.3の移動を示す。
【0061】
図8Aに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、注射に先立ってガイド・トラック1.2.5の傾斜セクション1.2.5.1の遠位端のところの開始位置PIに保持され、ニードル・シールド1.1を初期位置Iに固定する。初期位置Iにおいて、皮下注射針2.1は、ニードル・シールド1.1によって取り囲まれる。
【0062】
患者の皮膚に対してほぼ直角に中心軸Aを向けることによって注射が実施される。このとき、ニードル・シールド1.1の皮膚接触フランジ1.1.1は患者の皮膚面に乗っており、ハンド・フランジ1.3.1の近位側にある外側体1.3の近位部分は注射を実施するユーザにより把持される。ハンド・フランジ1.3.1は、注射ストロークを行うためにユーザの手を支持する。
【0063】
注射は複数の段階で実施される。第1段階において、プラスチック材料から作られたスプリング手段として作用する弾力アーム1.2.3の付勢力に抗してニードル・シールド1.1は支持体1.2に近位方向に押し込まれる。図8Aおよび図8Bに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、その開始位置PIを離れて、ガイド・トラック1.2.1の傾斜セクション1.2.1.1に沿って移動する。傾斜セクション1.2.1.1の遠位端が中心軸Aに対して鋭角に向いているので、ガイド・ピン1.1.3の移動が可撓性アーム1.1.4を横方向へ片寄せ、負荷をかけ、その結果、ガイド・ピン1.1.3が横方向Lに付勢される。
【0064】
ガイド・ピン1.1.3は、さらに、ガイド・トラック1.2.1に沿って近位方向へ移動する。図8Cに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、ガイド・トラック1.2.1の拡幅セクション1.2.1.2に入り、横方向において可撓性分離壁1.2.2に当接する。負荷をかけられた可撓性アーム1.1.4によって、可撓性分離壁1.2.2に加えられる力によって可撓性分離壁1.2.2は横方向へ片寄せられる。可撓性分離壁1.2.2の弾力性は、可撓性アーム1.1.4の弾力性に一致するように合わせられており、その結果、可撓性分離壁1.2.6は片寄せられて負荷のかけられた可撓性アーム1.1.4によって、片寄り可能である。
【0065】
可撓性分離壁1.2.2は、ガイド・ピン1.1.3が遠位方向から拡幅セクション1.2.1.2に入るので、ガイド・ピン1.1.3が終了位置PIIIに入るのを阻止する。
【0066】
ガイド・ピン1.1.3は、さらに、近位方向へ中間位置PIIに向かって移動し、図8Dに示すように、可撓性分離壁1.2.2の近位端に達する。この時点で、可撓性分離壁1.2.2が弛緩して、中心軸Aに対して本質的に平行にその静止位置にはね返るので、安全デバイス1の安全特徴が起動される。ここから、終了位置PIIIがアクセス可能となり、ガイド・ピン1.1.3がこの位置に入ることができ、開始位置PIに再突入するのが阻止される。安全デバイス1の引き続く取り外しにより、ニードル・シールド1.1およびガイド・ピン1.1.3が遠位方向へ前進し、その結果、ニードル・シールド1.1は、前進位置IIIにおいて、薬剤充填済みシリンジの皮下注射針2.1を取り囲む。ガイド・ピン1.1.3が終了位置PIIIを定めるガイド・トラック1.2.5のU字形刻み目内に保持されることによってニードル・シールド1.1が前進位置IIIに確実に保持され、注射デバイスおよび/または安全デバイス1の再使用が防止される。
【0067】
分離壁1.2.2は、中心軸Aに対して平行に延び、ガイド・トラック1.2.1の拡幅セクション1.2.1.2内に突入する軸方向寸法を有する。この軸方向距離は、最短の軸方向を定め、ニードル・シールド1.1は、前進位置IIIがアクセス可能となってニードル・シールド1.1がそこに達する前に支持体1.2に対して移動させられなければならない。同時に、安全デバイス1の再使用を防ぐ安全特徴が起動される。したがって、ニードル・シールド1.1が最短軸方向距離よりも短い軸方向長さだけ遠位方向へ偶発的に押されたとき、安全デバイス1の安全特徴の意図しない起動が防止される。
【0068】
安全デバイス1は、安全特徴の起動を示す可聴フィードバックを発生する。可聴フィードバックは、ニードル・シールド1.1が最短軸方向距離を超える軸方向長さだけ支持体1.2に対して遠位方向へ移動させられたときに可撓性分離壁1.2.6が中心軸Aに対して本質的に平行にその静止位置へはね返ることによって発生させられ得る。
【0069】
薬剤を注入するために、ニードル・シールド1.1は、さらに、図3に示す後退位置IIIに達するまで近位方向に移動させられ、このとき、ガイド・ピン1.1.3は、中間位置PIIにおいてガイド・トラック1.2.1内に保持される。弾力アーム1.2.3は、湾曲作動ランプ1.1.2の湾曲に一致するように曲げられる。弾力アーム1.2.3は、支持体1.2に対して遠位方向にニードル・シールド1.1を付勢するように充分に負荷をかけられる。注射を実施するユーザは、患者の皮膚面に向かう付勢力に抗して皮膚接触フランジ1.1.1を押し、その結果、注射の続く第2段階において、皮下注射針2.1が患者の皮膚を貫通し、内部キャビティ2.3.1内に収容されている薬剤が注入され得る。
【0070】
第2段階において、外側体1.3は、支持体1.1に対して遠位方向へ移動する。同時に、外側体1.3と相互作用するピストンロッド2.5が遠位方向にピストン2.4を移動させるように作動させられ、内部キャビティ2.3.1内に収容された薬剤が皮下注射針2.1を通して患者の皮膚下に送達される。
【0071】
注射ストロークの終りで、クランプ・アーム1.3.4に形成された内向きに突出する錠止キャッチ1.3.4.1が、支持体1.2に形成された対応する錠止凹部1.2.4に掛止し、支持体1.2を外側体1.3に対して不可逆的に錠止する。
【0072】
安全デバイス1およびその中に収容された薬剤充填済みシリンジ2を含んでなる注射デバイスDが皮膚面から外される。すると直ちに、ニードル・シールド1.1が弛緩する弾力アーム1.2.3の作用によって、前進位置IIIに向かって遠位方向へ移動する。図8Eに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、ニードル・シールド1.1と共に遠位方向へ移動し、可撓性分離壁1.2.6によって、終了位置PIIIに向かって案内される。
【0073】
図8Fに示すように、ガイド・ピン1.1.3は、ガイド・トラック1.2.1の終了位置PIIIを定めるU字形刻み目に入り、それによって、可撓性アーム1.1.4が弛緩し、ガイド・ピン1.1.3を横方向へ終了位置PIIIに向かって移動させる。
【0074】
ガイド・ピン1.1.3は、遠位方向、横方向においてU字形刻み目に当接するので、終了位置PIIIにしっかりと保持される。このとき、可撓性アーム1.1.4は、ガイド・ピン1.1.3が終了位置PIIIにおいて横方向へ付勢されない静止位置にある。ガイド・ピン1.1.3の横方向移動は、終了位置PIIIにおけるガイド・トラック1.2.1のU字形刻み目の形および可撓性アーム1.1.4により阻止される。したがって、安全デバイス1の1回だけの使用後、終了位置PIIIにあるガイド・ピン1.1.3はニードル・シールド1.1を前進位置IIIに不可逆的に錠止する。
【0075】
本発明の一実施形態において、皮下注射針2.1は、注射を通じて患者の眼から隠される。
【0076】
安全デバイス1は、針刺し事故を回避するための簡単な機構を提供する。注射は、患者の皮膚に向かう外側体1.3の単純な直線移動により行われ、したがって、注射針安全性を提供し、安全デバイス1の再使用を防ぐ安全特徴が自動的に起動される。湾曲作動ランプ1.1.2を備える安全デバイス1のテーパ付き形状、設計は、安全デバイス1の代表的な設計から異なっており、薬剤充填済みシリンジ2が可能性ある注射についての不安を軽減する。スプリング手段を含めて、安全デバイス1は もっぱら プラスチック材料から作られる。
【0077】
[参照符号のリスト]
1 安全デバイス
1.1 ニードル・シールド
1.1.1 皮膚接触フランジ
1.1.2 湾曲作動ランプ
1.1.3 ガイド・ピン
1.1.4 可撓性アーム
1.1.5 台形カットアウト部
1.2 支持体
1.2.1 ガイド・トラック
1.2.1.1 傾斜セクション
1.2.1.2 拡幅セクション
1.2.2 可撓性分離壁
1.2.3 弾力アーム
1.2.5 錠止凹部
1.2.6 クリップ
1.3 外側体
1.3.1 ハンド・フランジ
1.3.3 軸方向スロット
1.3.4 クランプ・アーム
1.3.4.1 錠止キャッチ
1.4 圧縮スプリング
2 薬剤充填済みシリンジ
2.3 皮下注射針
2.4 ニードル・キャップ
2.5 バレル
2.3.1 内部キャビティ
2.3.2 バレル・カラー
2.4 ピストン
2.5 ピストンロッド
3 キャップ・リムーバ
3.1 クランプ手段
A 中心軸
D 注射デバイス
L 横方向
I 初期位置
II 後退位置
III 前進位置
PI 開始位置
PII 中間位置
PIII 終了位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F