特許第5938408号(P5938408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許5938408-輸液療法用UV−C抗菌性装置 図000002
  • 特許5938408-輸液療法用UV−C抗菌性装置 図000003
  • 特許5938408-輸液療法用UV−C抗菌性装置 図000004
  • 特許5938408-輸液療法用UV−C抗菌性装置 図000005
  • 特許5938408-輸液療法用UV−C抗菌性装置 図000006
  • 特許5938408-輸液療法用UV−C抗菌性装置 図000007
  • 特許5938408-輸液療法用UV−C抗菌性装置 図000008
  • 特許5938408-輸液療法用UV−C抗菌性装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938408
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】輸液療法用UV−C抗菌性装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   A61M25/06 556
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-527326(P2013-527326)
(86)(22)【出願日】2011年9月1日
(65)【公表番号】特表2013-538621(P2013-538621A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】US2011050241
(87)【国際公開番号】WO2012031147
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年7月8日
(31)【優先権主張番号】13/223,174
(32)【優先日】2011年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/378,976
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ ミューズ
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/102421(WO,A1)
【文献】 特表2010−509019(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/024478(WO,A2)
【文献】 米国特許第5855203(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管アクセス装置において、
内腔、内面、外面、および照射窓を有する流体チャンバであって、前記内面が、前記内面に病原菌を運ぶ可能性のある流体と連通でき、前記照射窓は、前記内腔の中に前記照射窓の底部と前記内面との間にギャップを保持して位置付けられた、流体チャンバと、
前記照射窓に近接して、UV−C光が前記流体チャンバの前記内腔の中へと発せられて、病原菌の活動を抑制するように位置付けられるUV−C光源と、
を備えることを特徴とする血管アクセス装置。
【請求項2】
前記流体チャンバがUV−C反射材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項3】
前記流体チャンバの前記内面と前記外面の少なくとも一方に塗布されたUV−C反射材料をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項4】
前記照射窓がUV−C透過材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項5】
前記UV−C光源が、前記流体チャンバの前記外面と前記照射窓の少なくとも一方に取り外し可能に連結されるハウジングを含むことを特徴とする、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項6】
前記外面はUV−C不透過性であることを特徴とする、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項7】
前記照射窓が、内側に向かって前記内腔の中へと延びるUV−C透過性円筒部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項8】
前記UV−C光源が少なくとも部分的に前記UV−C透過性円筒部の中に位置付けられるランプを含むことを特徴とする、請求項7に記載の血管アクセス装置。
【請求項9】
血管アクセス装置の製造方法において、
内腔、内面、および外面を有する流体チャンバを設けるステップと、
前記流体チャンバの側壁を貫通する照射窓を設けるステップであって、前記照射窓は、前記内腔の中に前記照射窓の底部と前記内面との間にギャップを保持して位置付けられる、ステップと、
前記流体チャンバに連結されて、UV−C光が前記照射窓を通じて前記流体チャンバの内部へと発せられるようにするUV−C光源を設けるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記流体チャンバがUV−C反射材料を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記流体チャンバの前記内面と前記外面の少なくとも一方にUV−C反射材料を塗布するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記照射窓はUV−C透過性であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記UV−C光源を、前記流体チャンバの前記外面に選択的に連結されるように構成されるハウジングの中に取り付けるステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ハウジングはUV−C不透過性であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ハウジングが、前記UV−C光源に電源供給するための電源をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記照射窓が、内側に向かって前記流体チャンバの前記内腔の中へと延びる円筒部であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記UV−C光源が、光ファイバケーブルを通じて前記照射窓に連結されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記流体チャンバはカテーテルアダプタであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
静脈内に注入される流体の中の病原菌に照射を行うシステムにおいて、
静脈内カテーテルと、
内面、外面、近位端、遠位端、およびそれらの間に延びる内腔を有する流体チャンバであって、前記流体チャンバの前記遠位端が前記静脈内カテーテルに連結されて、前記流体チャンバの前記内腔が前記静脈内カテーテルと流体連通するような流体チャンバと、
前記流体チャンバの側壁を貫通されて形成された照射窓であって、前記内腔の中に前記照射窓の底部と前記内面との間にギャップを保持して位置付けられた照射窓と、
前記照射窓に連結されるUV−C光源であって、前記UV−C光源がUV−C光を、前記照射窓を通じて前記流体チャンバの前記内腔の中へと発することができるようなUV−C光源と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項20】
前記流体チャンバは前記静脈内カテーテルのカテーテルアダプタであることを特徴とする、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性の血管アクセス装置を用いた輸液療法に関する。輸液療法は、最も一般的な医療処置の1つである。入院中、在宅治療中およびその他の患者には、血管系に挿入された血管アクセス装置を通じて、流体、医薬品、血液製剤が投与される。輸液療法は、感染症の治療、麻酔または鎮痛剤の供給、栄養支援の提供、癌腫の治療、血圧と心調律の維持、またはその他多くの臨床的に重要な用途に使用できる。
【背景技術】
【0002】
輸液療法に有用なのは、血管アクセス装置である。血管アクセス装置は、患者の末梢または中心循環系血管に挿入できる。血管アクセス装置は、短期(数日)、中期(数週)または長期(数カ月乃至数年)にわたって留置されることがある。血管アクセス装置は、持続的輸液療法にも、間欠的療法にも使用できる。
【0003】
一般的な血管アクセス装置はプラスチック製カテーテルであり、患者の静脈に挿入される。カテーテルの長さは、末梢血管用の2、3センチメートルから中心循環系血管用の数センチメートルまで多様である。カテーテルは経皮的に挿入されても、外科的に患者の皮膚の下に埋め込まれてもよい。カテーテルまたはそれに取り付けられる他の血管アクセス装置はいずれも、単孔式でも、複数の流体を同時に注入する多孔式でもよい。
【0004】
血管アクセス装置の近位端は一般に、ルアアダプタを有し、そこに他の医療機器を取り付けることができる。たとえば、血管アクセス装置の一方の端に輸液セットを、もう一方の端に点滴静注(静脈内;IV)バッグを取り付けてもよい。輸液セットは、流体や医薬品を持続的に注入するための流体導管である。一般に、IVアクセス装置は他の血管アクセス装置に取り付けることのできる血管アクセス装置であり、血管アクセス装置を閉鎖または密閉し、流体と医薬品の間欠的注入または注射を可能にする。IVアクセス装置は、ハウジングと、系を閉じるための栓(隔膜;septum)を含んでいてもよい。栓は、医療機器の鈍針カニューレまたは雄ルアで開放されてもよい。
【0005】
輸液療法に伴う合併症は、高い疾病率と時には死亡率の原因となりうる。1つの重大な合併症はカテーテル関連血流感染(CRBSI)である。米国の病院では、年間推定250,000〜400,000件の中心静脈カテーテル(CVC)関連BSIが発生している。各感染症の寄与死亡率は推定12%〜25%であり、症例ごとの医療システムのコストは$25,000〜$56,000に上る。
【0006】
CRBSIにつながる血管アクセス装置の感染は、器材を定期的に洗浄しないこと、非滅菌状態で挿入が行われるような方法がとられること、またはカテーテル挿入後に経路のいずれかの端から流体流路に病原菌が侵入することが原因となる可能性がある。調査の結果、CRBSIのリスクはカテーテルの留置期間とともに増大することがわかった。それゆえ、汚染された血管アクセス装置や注入液が輸液処置に使用されると、病原菌が患者の血流中に入り、BSIが引き起こされる。
【0007】
紫外線(UV)照射の殺菌または除菌効果は19世紀後半から知られており、近年、UV照射の使用は、水や空気の浄化の分野で広く受け入れられており、食品加工および医療機器の殺菌においても限定的に利用されている。
【0008】
UV光は、電磁スペクトルのうちの200〜400ナノメートルの波長範囲を占める高エネルギー光子からなる。これは、UV光が軟X線照射より若干弱く、可視光よりはるかに大きいエネルギーを発することを意味する。UVエネルギーは、病原菌を直接殺すのではなく、病原菌と遺伝子構造との光化学反応を起こさせ、これが病原菌の繁殖能力を抑止して、事実上、病原菌を殺す。
【0009】
UV光により供給されるエネルギーの量はその波長と反比例するため、波長が短いほど、生成されるエネルギーは大きい。一般に、スペクトルのUV光部分は、日焼けランプに使用されるUV−A(315〜400nm)とUV−B(280〜315mm)とUV−C(200〜280nm)の3つの区分で構成される。UV−BとUV−C領域に、最良の除菌作用を有する波長が含まれる。調査の結果、微生物を殺すのに最も効果的な波長は250〜265nmであることがわかっている。
【0010】
UV−C光を使用して医療器材を殺菌する場合、患者および/または医師が有害なUV−C光に曝露されるのを防止するための対策を講じなければならない。除菌システムや方法の中には、外部被膜やシールドを使った十分な保護を必要とするものがある。他のシステムでは、より低い強度の除菌ランプが使用される。しかしながら、これらのシステムでは簡便かつ効率的に殺菌することができず、その結果、完全で安全な殺菌状態を確保するために、さらに別のステップを取り入れる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、血管アクセス装置と注入液汚染を抑止、制限または、そうでなければ排除して、安全かつ効率的な方法でCRBSIのリスクとその発生率を低減させるシステム、装置および方法が求められている。本発明の各種の実施形態がこのニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、現在利用可能な血管確保システム、装置、方法ではまだ十分に解決されていない当業界の問題とニーズを受けて開発された。それゆえ、開発されたこれらのシステム、装置、方法は、血管アクセス装置の汚染を抑止、制限または、そうでなければ排除し、CRBSIのリスクと発生を低減させる。
【0013】
医療機器は血管アクセス装置であってもよく、これはこの血管アクセス装置の中を流れる注入液と直接連通する内腔を有する流体チャンバを含む。流体チャンバは照射窓を含み、ここを通じてUV−C光源がUV−C光を発生する。UV−C光は照射窓を通って流体チャンバ流体チャンバの内腔に至る。それゆえ、流体チャンバ内にある注入液はUV−C光に曝露され、その結果、注入液内にあるすべての病原菌が照射を受ける。
【0014】
本発明のいくつかの実施例では、流体チャンバの内面はさらに、UV−C反射膜または反射材を含めるように改変してもよく、それによって、内腔の中へと発せられるUV−C光が内腔内で保持され、反射される。この特徴により、注入液のUV−C光への曝露時間が長くなり、その結果、より低出力の殺菌ランプを使用できることになる。いくつかの実施例はさらに、UV−C不透過材料からなる流体チャンバを含む。この特徴によって、流体チャンバからのUV−C光の漏出が防止され、その結果、患者と医師のUV−C光への不要な曝露が防止される。
【0015】
いくつかの実施形態はさらに、再使用可能なUV−C光源を含んでおり、このUV−C光源は照射窓から取り外し可能で、第二の注入装置の照射窓に互換的に挿入される。本発明の実施例はさらに、UV−C光源を受けるための照射窓を有するカテーテルアダプタを含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施例はさらに、血管アクセス装置の製造方法を含み、この方法は、1)内腔および内面と外面を有する流体チャンバを設けるステップと、2)流体チャンバの側壁を貫通する照射窓を設けるステップと、3)流体チャンバに連結可能なUV−C光源を設けて、UV−C光が照射窓から流体チャンバの内部へと発せられるようにするステップと、を含む。いくつかの実施例はさらに、流体チャンバの内面と外面の少なくとも一方にUV−C反射材料を塗布するステップを含む。さらに、いくつかの実施例は、流体チャンバの外面に選択的に連結されるように構成されたハウジングの中にUV−C光源を取り付けるステップを含む。
【0017】
本発明の上記およびその他の特徴と利点を本発明のある実施形態の中に取り入れてもよく、これらは以下の説明と付属の特許請求の範囲から、より十分に明らかとなり、あるいは、以下に記載される本発明を実施することによってわかるであろう。本発明では、必ずしも本明細書に記載されたすべての有利な特徴とすべての利点が本発明のすべての実施形態の中に組み込まれることが求められるわけではない。
【0018】
本発明の上記およびその他の特徴と利点がどのように得られるかを理解しやすいように、上に概要を記した本発明を、添付の図面に示される具体的な実施形態を参照しながらより具体的に説明する。これらの図面は、本発明の代表的な実施形態を示しているにすぎず、したがって、本発明の範囲を限定するとはみなさないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の代表的な実施形態による静脈内カテーテルに連結された流体チャンバの斜視図である。
図2】本発明の代表的な実施形態による静脈内カテーテルに連結された流体チャンバの側断面図である。
図3】本発明の代表的な実施形態による静脈内カテーテルに連結された流体チャンバの、UV−C光源が取り外されている状態の側断面図である。
図4A】本発明の代表的な実施形態による図3の流体チャンバの、A−A線に沿った上面断面図である。
図4B】本発明の代表的な実施形態による流体チャンバの上面断面図である。
図4C】本発明の代表的な実施形態による流体チャンバの上面断面図である。
図5】本発明の代表的な実施形態による静脈内カテーテルとUV−C光源の側断面図である。
図6】本発明の代表的な実施形態による、静脈内カテーテルに連結された流体チャンバと遠隔的に配置されたUV−C光源の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本明細書において、以下の用語は次の意味を有する。
「流体チャンバ」とは、輸液処置中に注入液が通過する内部空間または内腔を有するあらゆる装置を意味し、注入液は流体チャンバ内にある間にUV−C光に曝露される。
「UV−C」とは、約200nm〜280nmの波長を有する紫外線光を意味する。
「除菌ランプ」とは、約200nm〜約280nmの範囲、好ましくは約255nmの波長の出力エネルギーを生成する市販のUV生成ランプを意味する。
「血管アクセス装置」とは、注入液を患者の体内に注入するために使用されるあらゆる装置または装置の組み合わせを意味する。
「UV−C透過材料」とは、UV−C光またはエネルギーを通過させるあらゆる材料を意味する。
「UV−C不透過材料」とは、UV−C光またはエネルギーの通過を遮断または、そうでなければ阻止するあらゆる材料を意味する。
「UV−C反射材料」とは、UV−C照射またはエネルギーを反射するあらゆる材料を意味する。
【0021】
本発明の現時点で好ましい実施形態は図面を参照することによって最もよく理解でき、図中、類似の参照番号は同じ、または機能的に同様の要素を指す。当然のごとく、本願において文章と図面で一般的に示されている本発明の構成要素は、多種多様な構成で配置、設計できる。それゆえ、図面に表わされる以下のより詳細な説明は、特許請求される本発明の範囲を限定しようとするものではなく、本発明の現時点で好ましい実施形態を代表しているにすぎない。
【0022】
ここで、図1を参照すると、流体チャンバ10が静脈内カテーテル20と静脈内チューブ30の一部に連結されている。一般に、流体チャンバ10は、輸液システム40の流路の中に位置付けられる近位端12と遠位端14を有するハウジングを含む。いくつかの実施形態において、近位端12は静脈内チューブ30に連結され、遠位端14は静脈内カテーテル20に連結されて、点滴静注バッグまたはその他の注入液供給源(図示せず)からの注入液は、流体チャンバ10を通過してから静脈内カテーテルを通って患者に送達される。いくつかの実施形態において、近位および遠位端12と14はルアコネクタを含み、これによってシステム40に隣接する構成要素20と30の間が液密状態で接続される。
【0023】
一般に、流体チャンバ10は、内腔を画定する環状の流体用空間を有するハウジングを含む。流体チャンバ10はさらに、照射窓(図示せず)を有し、そこを通じてUV−C光源50がUV光を流体チャンバの内腔の中へと発する。それゆえ、内腔内にある注入液にはUV−C光が照射され、その結果、病原菌の活動が抑制され、患者のCRBSIが防止されるか、最低限に抑えられる。
【0024】
ここで、図2を参照すると、輸液システム40の側断面図が示されている。いくつかの実施形態において、流体チャンバ10はさらに、内腔19の外側の境界を画定する内面16を有する。いくつかの実施形態において、内面16は内腔19の中で注入液が停滞しにくいように構成される。一般に、内腔19は静脈内チューブ30と静脈内カテーテル20の流体流路32と流体連通し、それによって注入液は静脈内チューブ30から静脈内カテーテル20へと、流体チャンバ10を通じて自由に流れることができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、流体チャンバ10はさらに、流体チャンバ10の側壁62を通じて形成された照射窓(アクセス窓;access window)60をさらに有する。いくつかの実施形態において、照射窓60は、内側に向かって内腔19の内部へと延びる円筒部を有する。照射窓60は一般に、UV−C光源50の一部を格納するような大きさと形状であり、これによってUV−C光源50から発せられたUV−C光が照射窓60を通じて内腔19の中にある注入液と相互作用する。いくつかの実施形態において、照射窓60はUV−C透過材料からなり、内腔19の中に存在する病原菌と注入液が照射を受けることができる。たとえば、いくつかの実施形態において、照射窓60は、光学用クオーツまたはフッ素化ポリマ材料からなる。
【0026】
いくつかの実施形態において、流体チャンバ10はさらに、UV−C不透過材料または被膜を有し、発せられたUV−C光が側壁62を通過できないようになっている。そのため、患者や医師が輸液処置中に照射を受けることが防止される。いくつかの実施形態において、静脈内カテーテル20と静脈内チューブ30はさらに、UV−C不透過材料で被覆され、または包囲されて、流体チャンバ10の近位端12と遠位端14の開口部から漏れる可能性のあるUV−C光への曝露が防止される。
【0027】
いくつかの実施形態において、流体チャンバ10の内面16はさらに、UV−C反射材料70を備える。UV−C反射材料70は、たとえばGore(登録商標)拡散反射材、SolarBrite反射材または、高いUV−C反射特性を有するその他の材料からなる。UV−C反射材料70は、光源50により発せられたUV−C光を内腔19の内部で保持し、反射するために設けられる。そのため、放射されたUV−Cエネルギーは照射窓60から伝播し、内腔19の中に保持される。いくつかの実施形態において、外面18はUV−C反射材料(図示せず)を含み、それによってUV−Cエネルギーは流体チャンバ10の側壁62を通過して反射され、内腔19の中へと戻る。
【0028】
UV−C反射材料70によって、UV−C LEDランプ等、省電力の殺菌ランプ80を使用できる。そのため、本発明のいくつかの実施形態は、より費用対効果の高い装置を提供する。さらに、UV−C反射材料70の使用により、UV−C光の強度がより高まり、注入液がUV−C光により十分に曝露され、その結果、輸液システム40内を実際に流れている間の注入液中の微生物への照射が効率的に行われる。
【0029】
例えば、本発明のいくつかの実施形態では、60,000mW−秒/cmのUV−C光による1ml/秒の流量でのスタフィロコッカス属表皮ブドウ球菌の殺菌率が99.99%という予想外の結果が得られた。数学的モデルでは、この照射レベルによる殺菌が不完全であると想定されている。それゆえ、本発明のいくつかの実施形態により、数学的モデルを用いては想定できない高い殺菌率を示す予想外の結果が得られる。
【0030】
注入液が内腔19の中を流れる際、注入液にはUV−C光源50により発せられるUV−C光が照射される。いくつかの実施形態において、UV−C光源50は除菌ランプを含み、これはバッテリ54または、ランプ80への電源供給に必要なその他の電源を格納するための区画を有するハウジング52の中に設置されている。いくつかの実施形態において、UV−C光源50はさらに、制御スイッチ(図示せず)を有し、これによってランプ80には選択的にバッテリ(複数の場合もある)54から電源供給される。いくつかの実施形態において、ハウジング52はUV−C不透過材料からなる。さらに、いくつかの実施形態において、ハウジング52は、UV−C光が照射窓60から漏れるのをさらに防止するためのシールドの役割を果たすフランジ56を有する。
【0031】
ここで、図3を参照すると、照射窓60からUV−C光源50が取り外された後の流体チャンバ10が示されている。いくつかの実施形態において、ランプ80はさらに、ランプ80を保護するために設けられたレンズ82の中に格納されている。照射窓60と同様に、レンズ82はUV−C透過性であり、UV−Cエネルギーが内腔19の中に入り込むことができる。いくつかの実施形態において、照射窓60は内腔19の中に、照射窓60の底部と内面16またはUV−C反射材料70の間にギャップが保持されるように位置付けられる。すると、注入液は照射窓60の下を流れることができ、注入液が流体チャンバ内を流れる際にさらに十分にこれに照射できる。
【0032】
ここで、図4Aを参照すると、図3の輸液システム40のA−A線に沿った断面が示されている。いくつかの実施形態において、照射窓60はさらに、内腔19の中に、照射窓60の側面部分または外面と流体チャンバの内面16またはUV−C反射材料70との間にギャップが保持されるように位置付けられる。すると、注入液は照射窓60の周囲を流れることができ、その結果、注入液は確実に、照射窓60を通じて発せられるUV−C光に最大限に曝露されることになる。
【0033】
いくつかの実施形態において、UV−C光源50は流体チャンバ10から取り外し可能であるため、その後の輸液処置で別の輸液システム40に再使用できる。他の実施形態では、UV−C光源50は使い捨ての輸液システムと一体化され、この場合、UV−C光源はその輸液システムと一緒に処分される。さらに、いくつかの実施形態において、UV−C光源は再使用可能な流体チャンバと一体化される。たとえば、患者にカテーテル留置した後、再使用可能な流体チャンバ10とそこに一体化されたUV−C光源が、使い捨ての静脈内カテーテル20に取り付けられる。
【0034】
輸液チャンバ10は、輸液処置中、瞬時流量での注入液に最大限の照射を行うのに必要な、どのような大きさ、形状、素材および/または構成であってもよい。ここで図4Bを参照すると、流体チャンバ110の断面が示されている。いくつかの実施形態において、内腔119は、注入液120の流速が最大限となり、それと同時に流路の分岐が最小限に抑えられ、注入液内の病原菌が最大限に照射されるように構成される。このような構成の1つが図4Bに示されている。注入液120が内腔119に入ると、注入液の流路は照射窓60の周囲で分岐し、その結果、注入液120が最大限にUV−C光130に曝露される。UV−C反射材料70により、光130が内面116から反射されて、注入液120の流路に戻るため、注入液120のUV−C光130への曝露が増大する。
【0035】
別の構成による流体チャンバ210が図4Cに示されている。いくつかの実施形態において、内面216には、UV−Cエネルギーまたは光が第一の角度230で発せられ、UV−C反射材料70により第二の角度232で反射されるような角度が付けられている。それゆえ、いくつかの実施形態において、流体チャンバ210の大きさ、形状、構成は、内腔219の中で発せられ、反射されるUV−C光の散乱が最大限になるように設定される。このような構成では、注入液120はUV−C光230と232にさらに十分に曝露される。
【0036】
ここで、図5を参照すると、照射窓60を有するカテーテルアダプタ22の断面図が示されている。いくつかの実施形態において、静脈内カテーテル20のカテーテルアダプタ22は、UV−C光源50を受けるための照射窓60を含むように構成される。すると、専用の流体チャンバ装置を含まない輸液システム400が提供される。前述の実施形態のいくつかと同様に、照射窓60は、照射窓60の一部が内側に向かってカテーテルアダプタ22の内腔419の中に延びるように位置付けられる。しかしながら、いくつかの実施形態において、照射窓60が内腔419の中に延びる深さは、導入針(図示せず)が内腔419とカテーテルチューブ24を通過できるように限定される。カテーテルアダプタ22はさらに、アダプタ22の内面416の裏打ちとなる、またはこれを被覆するUV−C反射材料70を含む。カテーテルアダプタ22、カテーテルチューブ24、静脈内チューブ30はさらに、前述のようにUV−C光への曝露を防止するためのUV−C不透過材料または被膜を有していてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、照射窓60は内腔19の内部に延びずに側壁62の一部を形成し、これが図6に示されている。UV−C光源50はそれゆえ、UV−C光が照射窓からカテーテルアダプタ22の内腔519の中に発せられるように、照射窓と位置合わせされる。さらに、いくつかの実施形態において、UV−C光源50は遠隔ユニットであり、この場合、UV−C光は照射窓60に連結された光ファイバケーブル52を通じて輸液システム500に送達される。あるいは、カテーテルアダプタ22の外面418上に、除菌ランプの位置が照射窓60と一致するように摺動可能に配置されたスリーブハウジング(図示せず)を含むUV−C光源が提供される。
【0038】
本発明は、本明細書で広く説明され、以下の特許請求の範囲に記されたその構造、方法またはその他の本質的特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態として実施してもよい。上記の実施形態は、あらゆる点において、限定的ではなく、あくまでも例示的とみなされる。本発明の範囲はしたがって、上記の説明ではなく、付属の特許請求の範囲により示される。特許請求の範囲の意味およびその均等物に当てはまるすべての変更は、その範囲内に包含されるものとする。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6