特許第5938438号(P5938438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938438
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20160609BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61F13/18 331
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-122036(P2014-122036)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2016-2096(P2016-2096A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2015年10月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】栗原 涼子
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4969437(JP,B2)
【文献】 特開2013−176509(JP,A)
【文献】 特開2013−154016(JP,A)
【文献】 特開2013−215388(JP,A)
【文献】 特開2010−148706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00
A61F13/15〜13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの面側にエンボスが形成された吸収性物品において、
前記エンボスは、エンボス方向が急変する折れ曲がり部を有し、前記折れ曲がり部は、外側の側縁を角部とし、内側の側縁を曲線部としていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記折れ曲がり部の少なくとも1箇所は、吸収性物品の幅方向内側に突出している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記折れ曲がり部は、吸収性物品の幅方向内側に突出する折れ曲がり部と幅方向外側に突出する折れ曲がり部とが、吸収性物品の長手方向に連続して設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記折れ曲がり部は、吸収性物品の長手方向に連続する少なくとも3つの前記折れ曲がり部について、吸収性物品の幅方向内側に突出する折れ曲がり部と幅方向外側に突出する折れ曲がり部とが交互に配置されたジグザグ状に形成している請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記エンボスは、全ての前記折れ曲がり部が、外側の側縁を角部とし、内側の側縁を曲線部としている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記エンボスの底面に離散的に高圧搾部が配置され、
前記折れ曲がり部に配置される前記高圧搾部は、他の領域に配置される前記高圧搾部より大きな面積で形成している請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記エンボスの底面に離散的に高圧搾部が配置され、
前記高圧搾部は、エンボス溝内において、吸収性物品の長手方向に対し、前記高圧搾部を通らない部分をなくすように離散的に配置している請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりものなどを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳しくは表面側にエンボスが形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布又は透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に粉砕パルプ等の紙綿からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、前記透液性表面シートの面側に、種々の目的で線状のエンボスを施すようにした吸収性物品が知られている。たとえば下記特許文献1では、吸収性物品の長手方向に延び、かつ表面シート及び吸収体を一体的に圧縮してなる側方溝が、排泄部対向領域における幅方向の左右の側部域に形成されており、前記側方溝は、排泄部対向領域と前方領域及び後方領域それぞれとの境界域において、直線部分の端部に連結して幅方向の中央方向又は外方向に向かう斜行部分を有している吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、エンボスが排尿口対応エンボスとその前後の前側エンボス及び後側エンボスとから構成され、前記排尿口対応エンボスが吸収性物品の幅方向外側に膨出する形状で形成されるとともに、前記前側エンボス及び後側エンボスはそれぞれ、少なくとも前記排尿口対応エンボスに近接する部分が、吸収性物品の幅方向外側に曲率中心を有するとともに前記排尿口対応エンボスの長手寸法以上の曲率半径を有する曲線状または直線状に形成した吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4969437号公報
【特許文献2】特開2013−176509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の吸収性物品では、側方溝(エンボス)の直線部分と斜行部分との連結部がエンボス方向が急変する折れ曲がり部となっているが、この折れ曲がり部で外側の側縁及び内側の側縁がそれぞれ角部となっているため、エンボス付加時に力のかかる方向が急激に変化することにより、表面材にシワがよったり、表面材が吸収体から離れる浮きが発生したりする問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、排尿口対応エンボスと前側エンボス及び後側エンボスとの連結部がエンボス方向が急変する折れ曲がり部となっているが、この折れ曲がり部で外側の側縁及び内側の側縁がそれぞれ曲線部となっているため、折れ曲がり部であることが外部から視認しにくいという問題があった。折れ曲がり部の視認性が低下すると、エンボスを目盛りとして吸収体に吸収された体液の量を把握する場合などにおいて、体液の吸収量が認識しづらくなるなどの問題が発生する。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、エンボスの折れ曲がり部において、エンボス付加時のシワや浮きの発生を低減するとともに、折れ曲がり部の視認性を良好にした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記透液性表面シートの面側にエンボスが形成された吸収性物品において、
前記エンボスは、エンボス方向が急変する折れ曲がり部を有し、前記折れ曲がり部は、外側の側縁を角部とし、内側の側縁を曲線部としていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、透液性表面シートの面側に形成されたエンボスに、エンボス方向が急変するエンボスの折れ曲がり部を有しており、この折れ曲がり部が、外側の側縁を角部とし、内側の側縁を曲線部としているため、前記角部によってエンボスの折れ曲がり部であることが明瞭に視認できるようになるとともに、前記曲線部によってエンボス付加時の力のかかる方向が徐々に変化するようになるので、表面材のシワや浮きの発生が抑制できる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、前記折れ曲がり部の少なくとも1箇所は、吸収性物品の幅方向内側に突出している請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項2記載の発明では、折れ曲がり部の少なくとも1箇所を吸収性物品の幅方向内側に突出した折れ曲がり部としているため、折れ曲がり方向に対し外側、即ち吸収性物品の幅方向内側の側縁が前記角部となるので、装着時に吸収性物品の幅方向両側から脚圧を受けたとき、この内側に突出した折れ曲がり部が吸収体の下側に入り込みやすくなり、エンボスで挟まれた吸収体中央部が肌側に盛り上がって肌とのフィット性が向上するようになる。
【0013】
請求項3に係る本発明として、前記折れ曲がり部は、吸収性物品の幅方向内側に突出する折れ曲がり部と幅方向外側に突出する折れ曲がり部とが、吸収性物品の長手方向に連続して設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項3記載の発明では、幅方向内側に突出する折れ曲がり部と幅方向外側に突出する折れ曲がり部とを吸収性物品の長手方向に連続して設けることにより、このエンボスに吸収体の吸収量を判断するための目盛りとしての機能が明確に発揮されるようになる。また、折れ曲がり方向が逆の折れ曲がり部が連続して設けられることにより、折れ曲がり部においてエンボスに沿った体液の流れが一時的に停滞するので、エンボスに沿った体液の流れが抑制され、体液が吸収体に吸収保持されやすくなる。
【0015】
請求項4に係る本発明として、前記折れ曲がり部は、吸収性物品の長手方向に連続する少なくとも3つの前記折れ曲がり部について、吸収性物品の幅方向内側に突出する折れ曲がり部と幅方向外側に突出する折れ曲がり部とが交互に配置されたジグザグ状に形成している請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項4記載の発明では、吸収性物品の長手方向に連続する少なくとも3つの折れ曲がり部をジグザグ状に形成することによって、前記折れ曲がり部において体液の流れが一時的に滞留するので、このエンボスに沿った体液の流れが抑えられるようになる。
【0017】
請求項5に係る本発明として、前記エンボスは、全ての前記折れ曲がり部が、外側の側縁を角部とし、内側の側縁を曲線部としている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項5記載の発明では、全ての折れ曲がり部が、外側の側縁を角部とし、内側の側縁を曲線部としてあるため、エンボスの視認性とエンボス付加時の操業性がより一層向上できるようになる。
【0019】
請求項6に係る本発明として、前記エンボスの底面に離散的に高圧搾部が配置され、
前記折れ曲がり部に配置される前記高圧搾部は、他の領域に配置される前記高圧搾部より大きな面積で形成している請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項6記載の発明では、エンボス溝の底面に離散的に高圧搾部が配置され、前記折れ曲がり部に配置される高圧搾部を、他の領域に配置される高圧搾部より大きな面積で形成することによって、折れ曲がり部が視覚的にはっきりと目立つようにしている。このため、エンボスを目盛りとして吸収体に吸収された体液の量を把握する場合などにおいてエンボスの視認性が向上する。
【0021】
請求項7に係る本発明として、前記エンボスの底面に離散的に高圧搾部が配置され、
前記高圧搾部は、エンボス溝内において、吸収性物品の長手方向に対し、前記高圧搾部を通らない部分をなくすように離散的に配置している請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項7記載の発明では、エンボス溝内において、吸収性物品の長手方向に対し、前記高圧搾部を通らない部分を極力なくすように、前記高圧搾部を離散的に配置している。これによって、エンボス加工時にエンボス溝内にほぼ均等の圧力が加わるため、前記高圧搾部によるエンボス加工時のシワの発生などが抑えられるようになる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、エンボスの折れ曲がり部において、エンボス加工時のシワや浮きの発生が抑えられるとともに、折れ曲がり部の視認性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る失禁パッド1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図
図3】エンボス10の拡大平面図である。
図4】折れ曲がり部30の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔失禁パッド1の基本構造〕
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述すると、
本発明に係る失禁パッド1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙や不織布等からなる被包シート5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも体液排出部位Hを含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その長手方向端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。また、必要に応じて、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に、親水性のセカンドシート(図示せず)を配置してもよい。
【0026】
以下、さらに前記失禁パッド1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0027】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0028】
前記吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプ等の吸収性繊維と高吸水性ポリマーとにより構成され、図示例では平面形状がパッド長手方向に長い縦長の略小判形とされている。前記高吸水性ポリマーは例えば粒状粉とされ、吸収体4を構成するパルプ中に分散混入されている。
【0029】
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本失禁パッド1では、吸収体4を被包シート5で囲繞するため、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら尿等の逆戻りを防止するようになる。前記パルプの目付は、100g/m〜800g/m、好ましくは200g/m〜500g/mとするのがよい。
【0030】
前記高吸水性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力(吸収倍率)と吸水速度の調整が可能である。前記ポリマーの目付は、体液排出部及びその近傍に所定の吸収能力を持たせるため、60g/m〜500g/m、好ましくは100g/m〜450g/mとするのがよい。
【0031】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0032】
前記吸収体4には、吸収体基部よりパルプやポリマー量を多くした中高部やポリマーシートを部分的に配置してもよい。前記中高部を形成する場合、後段で詳述するエンボス10は、この中高部の外側に形成するのが好ましい。
【0033】
本失禁パッド1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ失禁パッド1の全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0034】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができる。
【0035】
前記サイド不織布7は、図2に示されるように、幅方向中間部より外側部分を吸収体4の内側位置から吸収体側縁を若干越えて不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着されている。一方、サイド不織布7の内方側部分は幅方向に折り返されるとともに、少なくとも折り返し先端部が二重シートによって構成され、この二重シート内部に、両端または長手方向の適宜の位置が固定された少なくとも1本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材8、8が配設されている。この幅方向に折り返された部分は、ナプキン長手方向の前後端部では下層側に接着されている。その他の前記糸状弾性伸縮部材8、8が配設されたナプキン長手方向の中間部では、図2に示されるように、前記糸状弾性伸縮部材8、8の収縮作用によって表面側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0036】
〔エンボス10〕
前記透液性表面シート3の面側には、図1に示されるように、左右に離間する一対のエンボス10、10が形成されている。このエンボス10は、透液性表面シート3の表面側からの圧搾により、透液性表面シート3、被包シート5及び吸収体4を一体的に圧縮して形成したものである。
【0037】
前記エンボス10は、図1に示されるように、体液排出部エンボス11、長手方向エンボス12及び傾斜部エンボス13から構成されている。前記長手方向エンボス12は、図1に示される例では、前記体液排出部エンボス11側(内方側)の第1の長手方向エンボス12Aと、これより長手方向外方側の第2の長手方向エンボス12Bとから構成されている。また、前記傾斜部エンボス13は、前記第1の長手方向エンボス12Aの外方側端部から延びる第1の傾斜部エンボス13Aと、前記第2の長手方向エンボス12Bの外方側端部から延びる第2の傾斜部エンボス13Bとから構成されている。図示例では、前記エンボス10として、前記体液排出部エンボス11、長手方向エンボス12及び傾斜部エンボス13のみから構成しているが、この他に適宜のエンボスを付与してもよい。
【0038】
前記体液排出部エンボス11は、体液排出部位Hに対応する領域とパッド幅方向に重なる領域を含む範囲に形成され、失禁パッド1の長手方向に沿うとともに、失禁パッド1の幅方向外側に膨出する形状線からなる左右に離間する一対のエンボスラインである。この体液排出部エンボス11は、左右の体液排出部エンボス11、11間の吸収体4に吸収された体液が幅方向外側に拡散して横漏れするのを防止するとともに、表面の中央部から幅方向外側に流れる体液を凹溝内に流入させて幅方向外側に流れ出るのを防止するためのものである。左右の体液排出部エンボス11、11は、パッド幅方向に離間して左右にそれぞれ独立的に設けられている。前記体液排出部エンボス11は、長手方向中央部が長手方向両端部より幅方向外側に位置する全体として幅方向外側に膨出した形状線によって形成され、円弧状や長円の外形線状など種々の形態で形成されている。前記体液排出部エンボス11は、前後方向への体液の拡散が均等になるように、体液排出部エンボス11の前後方向中央部を基準に前後対称となる形状で形成するのが好ましい。
【0039】
本書において、失禁パッド1の長手方向に沿って形成されるとは、エンボスの端部同士を結ぶ直線が概ね失禁パッド1の長手方向に沿うことであり、この直線が長手方向線と平行する場合の他、この長手方向線に対し±40°程度までの角度差を有するものも含まれる。また、エンボスラインは、直線である必要はなく、曲線、折れ線、波状線などで形成することも可能である。
【0040】
前記長手方向エンボス12は、体液排出部エンボス11の前後にそれぞれ、失禁パッド1の長手方向に沿って形成された左右に離間する一対のエンボスラインである。この長手方向エンボス12は、吸収体内を拡散する体液がパッド幅方向に拡散して横漏れが生じるのを防止し、パッド長手方向に体液が拡散するように誘導するためのものである。前記長手方向エンボス12は、後段で詳述する傾斜部エンボス13に目盛りとしての機能を持たせるため、前記体液排出部エンボス11の前後にそれぞれ2組以上で形成するのが好ましい。図示例では、体液排出部エンボス11の前後にそれぞれ2組ずつ形成され、体液排出部エンボス11側(内方側)から順に第1の長手方向エンボス12A、第2の長手方向エンボス12Bが配置されている。
【0041】
前記長手方向エンボス12は、パッド長手方向に対し直線又は曲線で構成するのが好ましい。また、前記長手方向エンボス12は直線やパッド幅方向外側に膨出する曲線で構成してもよいが、吸収体内での体液の拡散をよりスムーズにするため、図1に示されるように、パッド幅方向内側に膨出する曲線で構成するのが好ましい。
【0042】
前記第1の長手方向エンボス12Aは、前記体液排出部エンボス11の前後に連結して配置され、前記体液排出部エンボス11の長手方向端部に接続するとともに、体液排出部エンボス11の長手方向端部を基点としてパッド長手方向に連続して延びる左右に離隔する一対のエンボスラインである。
【0043】
前記第2の長手方向エンボス12Bは、前記第1の長手方向エンボス12Aの長手方向外方側に、第1の長手方向エンボス12Aの長手方向外方側端部とは異なる位置から形成されるとともに、失禁パッド1の略長手方向に沿って形成された左右に離隔する一対のエンボスラインである。この第2の長手方向エンボス12Bは、第1の長手方向エンボス12Aより外側に拡散した体液を長手方向に誘導するためのものである。前記第2の長手方向エンボス12Bを第1の長手方向エンボス12Aの長手方向外方側端部と異なる位置から設けることにより、第1の長手方向エンボス12Aのエンボスラインに沿って流れる体液が、第2の長手方向エンボス12Bに連続的に流れるのが防止でき、エンボス溝内を流れる体液の拡散が抑えられるようになる。
【0044】
次いで、前記傾斜部エンボス13は、図1に示されるように、前記長手方向エンボス12の外方側端部から延びるとともに、失禁パッド1の幅方向中央側に向けて傾斜した左右一対のエンボスラインである。前記傾斜部エンボス13は、長手方向エンボス12に沿ってパッド外方側に拡散する体液の流れをパッド幅方向の内側に誘導するためのものである。また、傾斜部エンボス13を目盛りとして吸収体4に吸収された体液の量を把握するのに利用することもできる。前記傾斜部エンボス13は、図1に示される例では、前記第1の長手方向エンボス12Aの外方側端部から延びるとともに、前記第2の長手方向エンボス12Bの内方側端部に接続する第1の傾斜部エンボス13Aと、前記第2の長手方向エンボス12Bの外方側端部から延びる第2の傾斜部エンボス13Bとから構成されている。
【0045】
前記傾斜部エンボス13は、直線又は曲線で構成するのが好ましい。特に、図1に示されるように、長手方向エンボス12に沿って拡散する体液を内側に誘導しやすくするため、パッド長手方向の外方側に膨出する円弧状の曲線によって構成するのが望ましい。
【0046】
左右の傾斜部エンボス13、13同士は、幅方向内方側の端部同士が幅方向に離間して設けられ、パッド幅方向中央部においてエンボスが形成されない離間部18を有している。即ち、前記傾斜部エンボス13は、左右に離隔して形成された長手方向エンボス12の外方側端部からそれぞれ、パッド幅方向の中央側に向けて、パッド幅方向の中間部まで延びている。前記離間部18を設けることにより、吸収体内を拡散する体液が、前記エンボス10によって長手方向への拡散が抑制されるのが防止できる。
【0047】
前記第1の傾斜部エンボス13Aは、前述の通り、前記第1の長手方向エンボス12Aのパッド長手方向の外方側端部と、これよりパッド幅方向内方側に位置する前記第2の長手方向エンボス12Bのパッド長手方向の内方側端部とを接続するように設けられている。
【0048】
また、前記第2の傾斜部エンボス13Bは、第2の長手方向エンボス12Aのパッド長手方向の外方側端部からパッド幅方向内方側のパッド長手方向中心線に至らない中間位置まで延びている。
【0049】
以上の構成からなる失禁パッド1では、前記エンボス10を、体液排出部エンボス11と、この体液排出部エンボス11の前後にそれぞれ、パッド長手方向に沿って形成される長手方向エンボス12と、この長手方向エンボス12の外方側端部から延びるとともに、パッド幅方向中央側に向けて傾斜する傾斜部エンボス13とから構成することにより、使用後にパッド表面を目視で確認するだけで、前記傾斜部エンボス13を目盛りとして、吸収体内での体液の拡散の程度が認識でき、この体液の拡散状況をその後のパッド大小の選択の目安とすることができるようになる。
【0050】
このとき、本失禁パッド1では、左右の前記傾斜部エンボス13、13の端部同士が幅方向に離間する離間部18が設けられているため、エンボス10によって吸収体内での前後方向の体液拡散が制限されるのが防止でき、正確な吸収体内での体液拡散の状況が認識できるようになる。また、体液の拡散が抑制されないため、体液が体液排出部付近に滞留せず、ベタツキによる不快感が軽減できるようになる。
【0051】
本失禁パッド1においては、前記エンボス10は、前述の通り、体液排出部エンボス11、長手方向エンボス12及び傾斜部エンボス13が全体としてパッド長手方向に連続するエンボス溝によって左右一対で形成されている。ここで、各エンボス11、12、13の接続部分は、エンボス方向が急変する折れ曲がり部30を構成している。前記折れ曲がり部30とは、この折れ曲がり部30を境に前後のエンボス溝に沿ったエンボス方向が急激に変化する部分のことであり、概ねパッド長手方向に逆向きに傾斜したエンボス同士が連結する部分のことである。このため、前記折れ曲がり部30において、エンボスラインがパッド幅方向の外側や内側に突出するようになる。
【0052】
前記エンボス10は、前記折れ曲がり部30が、折れ曲がり方向に対して外側の側縁を角部31とし、折れ曲がり方向に対して内側の側縁を曲線部32としている。詳細には図3に示されるように、パッド幅方向内側に突出する折れ曲がり部30aでは、折れ曲がり方向の外側となるパッド幅方向内側の側縁に前記角部31が形成され、折れ曲がり方向の内側となるパッド幅方向外側の側縁に前記曲線部32が形成されている。また、これとは逆に、パッド幅方向外側に突出する折れ曲がり部30bでは、折れ曲がり方向の外側となるパッド幅方向外側の側縁に前記角部31が形成され、折れ曲がり方向の内側となるパッド幅方向内側の側縁に前記曲線部32が形成されている。
【0053】
前記折れ曲がり部30の「外側の側縁」及び「内側の側縁」とは、図4に示されるように、この折れ曲がり部30にて接続する2方向のエンボス溝のうち、一方のエンボス溝に沿った中心線を延長した仮想線を引いたとき、他方のエンボス溝が折れ曲がる折れ曲がり方向と逆側の側縁が「外側の側縁」であり、他方のエンボス溝が折れ曲がる側の側縁が「内側の側縁」である。すなわち、仮想中心線に対し、折れ曲がり部30を中心に、他方のエンボス溝が折れ曲がる側の方向にθをとったとき、このθより大きい角度側の側縁が「外側の側縁」であり、θより小さい角度側の側縁が「内側の側縁」である。
【0054】
前記角部31とは、接続部で接線が一致しない曲線同士が交差する部分、平行しない直線同士が交差する部分又は曲線と直線とが交差する部分のことである。ただし、実際の製品においては、柔軟性を有する吸収体などを圧搾して形成されるものであるとともに、エンボス凸部の先端に面取りなどが施されるため完全に直線同士が交差する角部が形成されるものではない。このため、本発明において前記角部31は、曲線同士、直線同士又は曲線と直線とが曲率半径1mm以下(R1mm以下)の円弧によって接続された部分を含む概念である。
【0055】
前記曲線部32とは、これらが交差する角を滑らかな円弧で結んだ所謂Rを施した部分のことである。前記曲線部32を構成する円弧の曲率半径は、R2〜R20mmが好ましい。
【0056】
前記折れ曲がり部30の内側と外側の側縁を角部31と曲線部32によって形成することにより、前記角部31によってエンボス方向が急変した折れ曲がり部であることが明瞭に視認できるようになるとともに、前記曲線部32によってエンボス付加時の力のかかる方向が徐々に変化する連続的な力の方向の転換が行われるようになるので、力のかかる方向が急激に変化することによる表面材(透液性表面シート3)のシワの発生が抑えられるとともに、表面材が吸収体から離れるエンボスの浮きが防止できるようになる。
【0057】
また、内側に突出する折れ曲がり部30aにおいて、内側の側縁に角部31が形成されているため、装着時に脚の付け根部分の内側によってパッド幅方向外側から内側に向かう脚圧が作用したときに、左右のエンボス10、10で挟まれた部分が肌側に盛り上がりやすくなる。
【0058】
さらに、折れ曲がり部30の外側の側縁を前記角部31とし、内側の側縁を前記曲線部32とすることによって、角部同士や曲線部同士とした場合より、エンボスの溝幅が広くなるため、折れ曲がり部30がより明瞭に視認しやすくなるとともに、折れ曲がり部30のエンボス加工がしっかりと行えるようになる。
【0059】
前記折れ曲がり部30の少なくとも1箇所は、失禁パッド1の幅方向内側に突出する折れ曲がり部30aとするのが好ましい。図示例では、体液排出部エンボス11の前後にそれぞれ2箇所ずつの幅方向内側に突出する折れ曲がり部30a、30aが設けられている。これにより、折れ曲がり方向に対し外側、即ちパッド幅方向内側の側縁が前記角部31となるので、装着時にパッド幅方向両側から内側に向かう脚圧を受けたとき、このパッド幅方向内側に突出した折れ曲がり部30aが吸収体4の下側に入り込みやすくなり、この折れ曲がり部30aを基点として左右のエンボス10、10で挟まれた吸収体中央部が肌側に盛り上がって肌とのフィット性が向上するようになる。特に、体液排出部Hとの密着性を高めるため、体液排出部エンボス11とこれに隣接する長手方向エンボス12(第1の長手方向エンボス12A)との連結部分の折れ曲がり部30は、パッド幅方向内側に突出する折れ曲がり部30aとするのが望ましい。
【0060】
前記折れ曲がり部30は、体液排出部エンボス11の前後においてそれぞれ、パッド幅方向内側に突出する折れ曲がり部30aと、パッド幅方向外側に突出する折れ曲がり部30bとが、パッド長手方向に連続して設けるのが好ましい。これにより、前記エンボス10に吸収体4の吸収量を判断するための目盛りとしての機能が明確に発揮されるようになる。また、折れ曲がり方向が逆になる折れ曲がり部30a、30bが連続して設けられることにより、折れ曲がり部30においてエンボス10に沿った体液の流れが一時的に停滞するので、エンボス10に沿った体液の流れが抑制され、体液が吸収体に吸収保持されやすくなる。折れ曲がり部30a、30bがパッド長手方向に連続するとは、長手方向エンボス12や傾斜部エンボス13を介してパッド長手方向に折れ曲がり部30a、30bが設けられることである。
【0061】
前記折れ曲がり部30は、体液排出部エンボス11の前後においてそれぞれ、パッド長手方向に隣接する少なくとも3つの折れ曲がり部30、30…について、パッド幅方向内側に突出する折れ曲がり部30aと、パッド幅方向外側に突出する折れ曲がり部30bとが交互に配置されたジグザグ状に形成するのが好ましい。折れ曲がり部30a、30bをジグザグ状に配置することにより、エンボス10に沿って流れる体液が折れ曲がり部30において一時的に滞留するので、このエンボス10に沿った体液の流れが抑制され、吸収体4に吸収保持されやすくなる。
【0062】
前記エンボス10は、図1に示されるように、全ての折れ曲がり部30…が、折れ曲がり方向の外側の側縁を角部31とし、内側の側縁を曲線部32とするのが望ましい。これにより、エンボス10の視認性とエンボス付加時の操業性がより一層向上する。このとき、体液排出部11の前後に配置された折れ曲がり部30…がそれぞれ、前述のジグザグ状となるように30aと30bを交互に配置するのが望ましい。
【0063】
ところで、前記エンボス10の溝底部は、一定の深さで圧搾した平坦なパターンとしてもよいが、図3に示されるように、エンボス溝の底部に種々のパターンで高圧搾部33(塗りつぶし箇所)と低圧搾部34(白箇所)とを設けるのが好ましい。前記高圧搾部33は、周りより圧搾深さを深くした部分であり、円形、楕円形、半円形、角形、線状の群の内から選択した1種又は複数種の組み合わせによるパターンで形成されている。図示例では円形で形成されている。前記高圧搾部33を設けることにより、エンボス溝に沿う体液の流れが抑えられ、吸収体内に体液が浸透しやすくなるとともに、エンボス溝の保形性を高めることができるようになる。
【0064】
図3に示されるように、前記高圧搾部33のうち、前記折れ曲がり部30に配置される高圧搾部33aは、他の領域に配置される高圧搾部33bより大きな面積で形成するのが好ましい。図3では、折れ曲がり部30の角部31寄りの頂部に他の領域より一回り大きな円形の高圧搾部33aが設けられている。これにより、折れ曲がり部30が視覚的によりはっきりと目立つようになり、両側の体液排出部エンボス11、11で挟まれた領域を的として失禁パッドが装着しやすくなるとともに、傾斜部エンボス13を目盛りとして吸収体4に吸収された体液の量を把握する場合にエンボスの視認性が向上する。前記高圧搾部33aの面積は、他の領域の高圧搾部33bの面積より1.2〜2.5倍大きくするのが好ましい。
【0065】
図3に示されるように、エンボス10の端部に配置される高圧搾部33cについても同様に、他の領域に配置される高圧搾部33bより大きな面積で形成するのが好ましい。これにより、エンボス端部において表面材と吸収体4とが強固に固定され、エンボス端部からの表面材の浮きが防止できるようになる。
【0066】
図3に示されるように、前記高圧搾部33は、パッド長手方向に対し、エンボス溝内において、該高圧搾部33を通らない部分をなくすように離散的に配置するのが望ましい。すなわち、仮想のパッド長手方向線35を引いたときに、連続するエンボス溝内において、高圧搾部33と重ならない部分をなくすように、前記高圧搾部33が離散的に配置されている。より具体的には、傾斜部エンボス13に比べ溝幅が小さく、パッド長手方向線35に対する傾斜角が小さな長手方向エンボス12では、複数の高圧搾部33…をエンボス方向に沿って間隔をあけて1列で配置してあり、この長手方向エンボス12に比べ溝幅が大きく、パッド長手方向線に対する傾斜角が大きな傾斜部エンボス13では、複数の高圧搾部33…をエンボス方向に沿って千鳥状に2列で配置している。これにより、失禁パッドのライン搬送方向をパッド長手方向とし、エンボスロールによってエンボス加工を施す際に、エンボス溝内にほぼ均等の圧力が加わるようになるため、エンボス加工時のシワの発生などが抑えられるようになる。
【0067】
次に、前記エンボス10の構造について更に詳細に説明すると、体液排出部エンボス11の前後に接続する前記第1の長手方向エンボス12A、12Aは、図1に示されるように、これら第1の長手方向エンボス12A、12A同士を繋ぐ第1の長手方向エンボス12Aの延長線を描いたときに、失禁パッド1の幅方向内側に膨出する単一の円弧状曲線14に沿って形成するのが好ましい。このような円弧状曲線14上に配置することにより、体液排出部エンボス11がその前後の第1の長手方向エンボス12A、12Aと比較して際立って目立つようになり、この左右の体液排出部エンボス11、11で挟まれた部分を的として体液排出部位Hに当接させるようにして装着することによって、失禁パッド1が身体の適正な位置に容易に装着できるようになる。なお、図1に示される例では、前記円弧状曲線14の曲率中心を失禁パッド1の幅方向中心線CW上に位置させることにより、第1の長手方向エンボス12A、12Aが幅方向中心線CWを基準として前後対称に設けられるようにしている。
【0068】
前記第1の長手方向エンボス12Aは、図1に示されるように、左右の前記円弧状曲線14、14の離隔幅が最小となる最狭部15の位置と、左右の前記体液排出部エンボス11、11の幅方向外側への膨出幅が最大となる最膨出部16の位置とが一致するか近接するように配置するのが好ましい。図示例では、前記円弧状曲線14、14の最狭部15の位置と体液排出部エンボス11、11の最膨出部16の位置とが、失禁パッド1の幅方向中心線CWで一致するように配置されている。これによって、体液排出部エンボス11の膨出形状の中央部に体液排出部位Hを合わせるように装着することによって、失禁パッド1が正しい位置に装着できるようになる。最狭部15と最膨出部16とが近接するとは、最狭部15と最膨出部16とのパッド長手方向の離隔距離が、体液排出部エンボス11のパッド長手方向長さに対して十分に小さいこと、即ち体液排出部エンボス11のパッド長手方向長さの1/5以下であることを意味する。
【0069】
次いで、前記第2の長手方向エンボス12Bは、図1に示されるように、前記第1の長手方向エンボス12Aと同様に、パッド幅方向内側に膨出する単一の円弧状曲線14B上に配置するのが好ましい。
【0070】
前記第2の長手方向エンボス12Bは、図1に示されるように、第1の長手方向エンボス12Aのエンボスラインを外方側に延長した延長線17と一致しない位置に設けるのが好ましい。これにより、第1の長手方向エンボス12Aに沿って流れた体液が、第2の長手方向エンボス12Bに流れ込みにくくなり、エンボス溝に沿った体液の拡散が抑えられるようになる。第2の長手方向エンボス12Bが前記延長線17と一致しないとは、第1の長手方向エンボス12Aの溝幅の中心を通る延長線を引いたとき、この延長線17が第1の長手方向エンボス12Bの溝幅内を通らないことが好ましく、第2の長手方向エンボス12Bの縁部と延長線17とが第2の長手方向エンボス12Bの溝幅以上に離隔しているのがより好ましい。前記延長線17は、第1の長手方向エンボス12Aの形状をそのままに延長した線のことであり、例えば図示例のように円弧状曲線14によって第1の長手方向エンボス12Aが形成される場合、その円弧状曲線14を外方側に延長した円弧線が前記延長線17である。
【0071】
前記第2の長手方向エンボス12Bは、図1に示されるように、前記第1の長手方向エンボス12Aの延長線17よりパッド幅方向内側に設けるのが好ましい。これにより、パッド幅方向への体液の拡散が抑制され、体液の横漏れが確実に防止できるようになる。
【0072】
一方、前記第1の傾斜部エンボス13Aは、図1に示されるように、失禁パッド1の幅方向線との成す角αが45°以下、好ましくは20°〜45°に設定するのがよい。これにより、第1の長手方向エンボス12Aを流れた体液が確実に内側に誘導されるようになり、この内側に誘導された体液が確実に吸収体に吸収されるようになる。また、前記吸収体内を拡散する体液が内側に向けて拡散するようになる。前記角αは、前記第1の傾斜部エンボス13Aを曲線によって構成する場合、第1の長手方向エンボス12Aとの接続部分と第2の長手方向エンボス12Bとの接続部分とを結ぶ線との成す角をとればよい。
【0073】
また、前記第2の傾斜部エンボス13Bは、同図1に示されるように、失禁パッド1の幅方向線との成す角βが60°以下、好ましくは前記角α以上60°以下に設定するのがよい。これにより、第2の長手方向エンボス12Bと第2の傾斜部エンボス13Bとで囲まれる面積が広く確保され、第1の長手方向エンボス12Aを超えて外方側に延出する体液がより確実に吸収体に吸収されるようになる。
【0074】
図1に示されるように、左右の前記傾斜部エンボス13、13の離間部18の離間幅19は、傾斜部エンボス13のパッド幅方向長さである傾斜部幅20の1〜3倍、好ましくは1.5〜2.5倍とするのが望ましい。前記離間幅19を前記傾斜部幅20よりも広くすることによって、吸収体内を拡散する体液のパッド長手方向への拡散通路を十分な幅で確保でき、体液の吸収体前後方向への自然拡散を阻害しなくなるとともに、体液が体液排出部エンボス11、11間に溜まることがなく、ベタツキが抑制できる。
【0075】
前記エンボス10の配置は、体液排出部エンボス11の中心位置、図1に示される失禁パッド1ではパッド幅方向中心線CWを基準に前後対称にするのが好ましく、特に傾斜部エンボス13の配置を前後対称にすることで、使用後に体液の拡散状況から体液の吸収量が正確に認識できるようになる。
【0076】
前記長手方向エンボス12は、パッド長手方向の外方側が、パッド長手方向線に対し、パッド幅方向の外方側に傾斜して設けるのが好ましい。これにより、体液排出部エンボス11、11で挟まれた領域から外方側に拡散した体液が、パッド長手方向外方側にいくに従ってパッド幅方向外方側に拡散する自然拡散を阻害せず、吸収体4内での体液の拡散がスムーズに進行するようになる。
【0077】
前記長手方向エンボス12は、前述の通り、失禁パッド1の長手方向線に対しパッド長手方向の外方側が幅方向外側に傾斜する傾斜角を有するように形成し、相対的に外方側に配置される第2の長手方向エンボス12Bを、その内方側に隣接する第1の長手方向エンボス12Aより、前記傾斜角が大きくなるように設定することが好ましい。具体的には、図1に示されるように、第1の長手方向エンボス12Aとパッド長手方向線との成す角を第1の長手方向エンボス12Aの傾斜角γとし、第2の長手方向エンボス12Bとパッド長手方向線との成す角を第2の長手方向エンボス12Bの傾斜角δとしたとき、γ<δの関係で形成されている。前記傾斜角δは、傾斜角γより15〜20°程度大きく設定するのが好ましい。なお、第1の長手方向エンボス12Aの前記傾斜角γは、20°以下、好ましくは5°〜15°、より好ましくは8°〜12°とするのがよく、第2の長手方向エンボス12Bの前記傾斜角δは、37°以下、好ましくは22°〜32°、より好ましくは25°〜29°とするのがよい。
【0078】
このようにパッド長手方向の外方側で傾斜角を大きくすることによって、本失禁パッド1のように長手方向に連続するエンボスを形成した場合でも、特に傾斜角が大きなパッド長手方向の外方側でエンボスに沿ったパッド長手方向への体液拡散が抑制されるようになる。このため、吸収体に吸収された体液の拡散状態が認識しやすくなる。
【0079】
また、前記体液排出部エンボス11、長手方向エンボス12及び傾斜部エンボス13は同じ溝幅で形成してもよいし、違えてもよい。異なる溝幅で形成する場合、傾斜部エンボス13の溝幅を長手方向エンボス12の溝幅より大きく設定しするのが好ましい。具体的には、図1に示されるように、傾斜部エンボス13の溝幅をS13、長手方向エンボス12の溝幅をS12としたとき、S13>S12の関係で形成する。前記傾斜部エンボス13の溝幅S13は、長手方向エンボス12の溝幅S12に対して1.3〜2倍とするのが好ましい。前記溝幅とは、エンボスを横断する断面視で溝底部の幅のことである。本例のように、低圧搾部のエンボス底部に高圧搾部33が設けられる場合には、低圧搾部の幅とする。
【0080】
傾斜部エンボス13の溝幅を相対的に大きくすることによって、長手方向エンボス12に沿って流れた体液が傾斜部エンボス13に一時貯留され、エンボス溝に沿った体液の拡散が抑制されるので、エンボスに沿って流れた体液の拡散ではなく、吸収体に吸収された体液の拡散状態が認識しやすくなる。
〔他の形態例〕
上記形態例では、失禁パッドを例に説明したが、生理用ナプキンなどの吸収性物品に適用することも可能である。このとき、吸収性物品の特質に合わせて構成部材の成分や大きさなどを適宜変更することができる。例えば、生理用ナプキンに適用する場合、吸収体4に混入される高吸水性ポリマーの目付は、5g/m〜200g/m、好ましくは5g/m〜150g/mとするのがよい。
【符号の説明】
【0081】
1…失禁パッド、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイド不織布、8…糸状弾性伸縮部材、10…エンボス、11…体液排出部エンボス、12…長手方向エンボス、12A…第1の長手方向エンボス、12B…第2の長手方向エンボス、13…傾斜部エンボス、13A…第1の傾斜部エンボス、13B…第2の傾斜部エンボス、14…円弧状曲線、15…最狭部、16…最膨出部、18…離間部、30…折れ曲がり部、31…角部、32…曲線部、33…高圧搾部、34…低圧搾部
図1
図2
図3
図4