【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人液状化対策軟弱地盤対策推進協議会は、株式会社プラント・ツリースから依頼を受け、平成26年6月23日から同年同月27日、 日本国土開発株式会社技術センター振動実験棟(神奈川県愛甲郡愛川町中津4036−1)にて、免震構造の試験を行った。この試験では、無対策(従来構造)及び免震構造のそれぞれについてプロトタイプを製作し、実際の地震振動と同じ振動を印加して振動がどのように伝わるかを調べた。免震構造は、発明の実施形態に相当するものである。尚、試験結果について、同年7月18日に、マスコミ各社の担当者(10数名)を集めて報告会見を開催し、試験結果を報告した。また、試験結果及びそのデータは、一般社団法人液状化対策軟弱地盤対策協議会(行為者)の会員に提供された。 また、株式会社プラント・ツリースは、一般社団法人液状化対策軟弱地盤対策協議会に対し出願発明の周知を依頼し、同協議会は、依頼に基づき、平成26年5月23日、出願発明について説明した動画データをYouTube(www.youtube.com)にアップロードし、そのリンクを自らのウェブサイト(http://www.chitaikyo.or.jp)に貼り付けることで出願発明を公開した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂ブロック層と前記基礎との間にはボードである緩衝層が設けられており、前記樹脂ブロック層は前記基礎に対して連結されていないことを特徴とする前記請求項1、2又は3記載の建設物における免震構造。
前記柱状改良杭と前記樹脂ブロック層との間にはボードである緩衝層が設けられており、前記柱状改良杭は前記樹脂ブロック層に対して連結されていないことを特徴とする請求項6記載の建設物における免震構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような免震構造は、構造が複雑で施工が大がかりとなる欠点がある。このため、ビルや高層マンションのような大規模な建設物には向いているものの、一戸建ての住宅や三階程度までの建築物のような小規模な建設物にとっては、非常に高コストのものとなってしまうので、現実的とはいえない。特許文献2のものは、ダンパーに代えて発泡樹脂ブロックを採用しているので、その点で低コストになっているが、アイソレータの施工が必要であるため、高コストであることは否めない。
この出願の発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、小規模の建設物に適した安価に施工できる免震構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、敷地の地盤の上に施工された基礎と、基礎の上に施工された構築物とから成る建設物において振動が地盤から構築物に伝わらないようにする免震構造であって、
地盤と基礎の間には、水平又は地表面の方向に並べられた複数の樹脂ブロックで形成された樹脂ブロック層が設けられており、各樹脂ブロックは、基礎の下側に免震用空間を形成しつつ基礎及び構築物を支える樹脂(発泡樹脂を除く)製の骨格部材であり、
各樹脂ブロックは、前記水平又は地表面の方向ではお互いに連結されていないもので
あり、
樹脂ブロック層は、透水シートで覆われた部分を有していて、大雨により地中水位が上昇した際に地中の水が浸入し得る構造であ
り、
樹脂ブロック層は、5cm以上20cm以下の厚さであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記各樹脂ブロックの材料は、高密度ポリエチレンとポリプロピレンの混合材料であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記混合材料は、全体に対するポリプロピレンの混合比が重量比で30%以上50%以下の材料であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1、2又は3の構成において、前記樹脂ブロック層と前記基礎との間にはボードである緩衝層が設けられており、前記樹脂ブロック層は前記基礎に対して連結されていないという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項1乃至4いずれかの構成において、前記樹脂ブロック層は、前記基礎の施工領域以上の領域を占めているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項1乃至3いずれかの構成において、前記地盤内には柱状改良杭が施工されており、前記樹脂ブロック層が柱状改良杭と基礎との間に設けられており、
前記樹脂ブロック層と前記基礎との間にはボードである緩衝層が設けられており、前記樹脂ブロック層は前記基礎に対して連結されていないという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項6の構成において、前記柱状改良杭と前記樹脂ブロック層との間にはボードである緩衝層が設けられており、前記柱状改良杭は前記樹脂ブロック層に対して連結されていないという構成を有する。
【発明の効果】
【0006】
以下に説明する通り、この出願の請求項1記載の発明によれば、基礎と地盤との間に介在された樹脂ブロック層により大きな免震効果が得られる。そして、樹脂ブロックを水平に並べて樹脂ブロック層を形成するというシンプルな構造であるので、免震用のアイソレータやダンパーを施工する場合に比べて非常に安価に施工でき、施工自体も非常に容易である。このため、小規模の建設物における免震構造として適したものになる。
さらに、上記効果に加え、樹脂ブロック層の厚さが5cm以上であるので、免震効果が確実に得られ
、また樹脂ブロック層が20cm以下であるので、無益に大きくなく、コスト対効果の観点で望ましい。
また、請求項2
又は3記載の発明によれば、上記効果に加え、樹脂ブロックが高密度ポリエチレンとポリプロピレンの混合材料で形成されているので、十分な強度と適度な弾性を有するものとなり、より免震効果が高く得られる。また、再生材料を入手することも容易であるので、環境面やコスト面でも好ましいものとなる。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、樹脂ブロック層が基礎に対して連結されていないので、滑り効果が期待でき、特に横揺れに対して大きな免震効果が発揮される。
また、請求項5記載の発明によれば、上記効果に加え、樹脂ブロック層が基礎の施工領域以上の領域を占めているので、この点で免震効果がより高く得られる。
また、請求項6又は7記載の発明によれば、上記効果に加え、柱状改良により地盤改良を行った際、柱状改良杭と地盤との間に樹脂ブロック層が介在されるので、振動が伝わり易い柱状改良杭の欠点が解消される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、この出願の発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、第一の実施形態の免震構造が実現された建設物の概略図である。
図1に示す建設物は、敷地1の地盤10の上に施工された基礎2と、基礎2の上に施工された構築物3とから成っている。
実施形態の免震構造の大きな特徴点は、振動が地盤10から構築物3に伝わらないようにするため、基礎2の下側に比較的大きな空間(空洞)Sを形成することである。以下、この空間Sを免震用空間という。
【0009】
免震用空間Sを形成しつつ基礎2及び構築物3を十分に支えるため、実施形態では基礎2の下側に樹脂ブロック層4を設けている。樹脂ブロック層4は、水平に並べられた複数の樹脂ブロック5で形成された層である。
樹脂ブロック5は、樹脂(発泡スチロールを除く)製の骨格部材である。骨格部材とは、柱として機能する部分(以下、柱状部)や梁として機能する部分(以下、梁状部)を含み、基礎2や構築物3を支えるのに必要な強度を有する部材という程度の意味である。柱状部や梁状部は、棒状の部位の場合の他、板状の部位の場合もあり得る。
【0010】
図2は、
図1に示す樹脂ブロック層4を構成する樹脂ブロック5の概略図であり、(1)が平面概略図、(2)は正面概略図である。樹脂ブロック5は、水平な姿勢とされるベース部51と、ベース部51から垂直に延びるよう形成された脚部52とから成っている。ベース部51は、全体としては正方形の板状である。ベース部51には、多くの開口50が形成されている。
脚部52は、正方形のベース部51の各対角線上に合計4つ設けられている。脚部52の位置は、各角の縁から少し内側の位置であり、各角の縁からの距離はすべて同じである。
【0011】
各脚部52は、全体としてはほぼ角柱状の部位である。但し、各脚部52の内部は柔軟性を与えるため及び軽量化のため空洞になっている。各脚部52は、ベース部51につながった部分で最も断面積が大きく、ベース部51から遠ざかるにしたがって徐々に小さな断面積となっている。即ち、正面から見ると台形状となっている。
各脚部52の高さは皆同じである。各脚部52の上端面には、嵌め込み用の突起(以下、嵌め込み突起)53が形成されている。嵌め込み突起53は、上側に位置させる別の部材との組み合わせのための部位である。
【0012】
図2(1)に示すように、嵌め込み突起53は、各脚部52の上端面に二つずつ形成されている。各嵌め込み突起53は、
図2(1)に示すように、各脚部52のほぼ正方形の上端面形状において斜め左上から斜め右下の方向の対角線上に設けられている。
また、各脚部52の上端面には、嵌め込み用の孔(以下、嵌め込み孔)54が形成されている。嵌め込み孔54も、各上端面に二つずつ設けられている。嵌め込み孔54は、平面視で見た場合、斜め右上から斜め左下の方向の対角線上に設けられている。即ち、各脚部52の上端面において、各嵌め込み孔54は各嵌め込み突起53と線対称に配置されている。
【0013】
免震用空間Sを形成するというだけであれば、樹脂ブロック5ではなく例えばスチール製の構造材を使用したり、コンクリートで免震用空間Sを使用したりすることも可能である。しかしながら、このような材料では、そのような構造材自体が振動を伝える経路になってしまう。実施形態では、この点を考慮し、地盤10や基礎2とは固有振動数が大きく異なる材料として樹脂を採用し、且つ樹脂の弾性による振動吸収作用も持たせている。即ち、基礎2の下側に免震用空間Sが形成され、且つその空間Sを樹脂製の骨格部材で維持することで、その層(樹脂ブロック層4)全体があたかも免震ゴムのように機能させるものとなっている。
【0014】
樹脂ブロック5の採用は、上記のように樹脂が持つ弾性を利用する意図があるものの、その一方、構造材として基礎2や構築物3を支える必要がある。この点を考慮し、実施形態の構造では、適宜の形状、材料の樹脂ブロック5を使用している。
まず、形状については、面状の部位が連なる形状よりも上記のように多くの開口50を有する部材の方が好ましい。例えば、開口の無い(又は少ない)箱状の部材を並べて樹脂ブロック層4とすることもあり得る。しかしながら、このような構造であると、層全体の剛性が高くなり強度は増すが、振動が伝わり易くなる。実施形態では、この点を考慮し、
図2に示すように多くの開口50を有する樹脂ブロック5を採用している。
図2に示す樹脂ブロック5は、雨水貯留槽の形成用に使用されたり、軟弱地盤の改良用(地盤置換用)に使用されたりするものであるが、発明者の検討によると、適度の強度と柔軟性(弾性)を有し、免震用空間Sの形成用に非常に適していることが判明した。
【0015】
また、具体的な樹脂材料について説明すると、この実施形態では、ポリプロピレンと高密度ポリエチレンの混合材が使用されている。混合比は、重量比でポリプロピレン30〜50%(高密度
ポリエチレン70〜50%)程度である。この実施形態では、環境面及びコスト面を考慮し、PP、HDPEとも再生材(リサイクルされた材料)を使用している。
尚、高密度ポリエチレンは、樹脂の中でも比較的強度が高く、建築資材の材料としても用いられることがある。反面、柔軟性(弾性)に欠けるため、高密度ポリエチレンのみで樹脂ブロックを形成してしまうと、振動が伝わり易くなってしまう。この点を考慮し、ポリプロピレンを混合し、柔軟性を高めている。
【0016】
必要な強度と弾性率の兼ね合いについて説明すると、強度については特に鉛直方向の長期許容応力度(クリープ)の大きさが問題となる。この値は、一戸建ての住宅や三階建て程度までの建設物を想定すると、30kN/m
2以上とすることが望しく、50kN/m
2以上とすることがより望ましい。さらに、高層のビルやマンションのような大規模の建築物を想定すると、100kN/m
2以上とすることが望ましい。一方、弾性率については、引っ張り弾性率が0.4〜1.6(×10
3MPa又はkg
4kgf/cm
2)程度の範囲に入ることが望ましい。これらを満足する樹脂ブロック5が使用される。
【0017】
より具体的な一例を示すと、樹脂ブロック5としては、例えば株式会社日東ジオテクノ(本社、東京渋谷)からジオプールの商品名で販売されているもの(例えばAE−1)が使用できる。この種の樹脂ブロック5は、人が一人で持ち運びできる程度の軽量なものとなっており、ベース部51は一辺が500〜750mm程度であり、脚部52の長さ(高さ)は250〜400mm程度、重量は3〜6kg程度である。
【0018】
このような樹脂ブロック5は、
図1に示すように水平に並べて配置され、各樹脂ブロック5の上側には、カバー材6が設けられる。カバー材6は、
図2に示す樹脂ブロック5のベース部51に相当する形状、構造の板状の部材である。カバー材6は、同様に嵌め込み突起及び嵌め込み孔を有する。カバー材6の嵌め込み突起が樹脂ブロック5の脚部52の嵌め込み孔54に嵌り込み、脚部52の嵌め込み突起53がカバー材6の嵌め込み孔に嵌り込むことで両者が連結される。
また、
図1に示すように、最も外側に位置する樹脂ブロック5の外側面には、壁材プレート41が設けられている。壁材プレート41の詳細構造の図示は省略するが、壁材は、同様に樹脂製の板状部材であり、通水用の開口を多数有している。凹凸が嵌り合う構造により、壁材プレート41は樹脂ブロック5及びカバー材6に連結されている。尚、壁材プレート41は、より強度を高めるため、各樹脂ブロック5の各側部に設けられる場合もある。
【0019】
また、樹脂ブロック層4は、内部に土砂が進入しないよう透水シート41で全体が覆われている。透水シート41は、土木シートのようなポリプロピレン繊維又はポリエステル繊維で編み込まれたシートである。この他、不織布製のものが使用されることもある。
この実施形態では、樹脂ブロック層4と基礎2との間には、緩衝層7が設けられている。緩衝層7としては、例えばリプラボード(再生プラスチックボード)やEPS(発泡スチロール)ボードが使用される。
【0020】
基礎2は、ベタ基礎や布基礎等、適宜の構造、工法にて施工されるものである。尚、緩衝層7と樹脂ブロック層4とは、透水シート41を介して接しているが、両者は、互いに連結されていない。即ち、リプラボード又はEPSボードである緩衝層7は、透水シート41の上に載置されただけのものであり、特に透水シート41や樹脂ブロック5に対して固定や連結はされていない。
【0021】
次に、このような免震構造を持った建設物の施工方法について、
図3を使用して説明する。
図3は、実施形態の免震構造を有する建設物の施工方法を示した概略図である。
まず、
図3(1)に示すように、敷地1の地盤10を掘り下げ、底面を平らにする。そして、掘り下げて形成した凹部の底面及び側面を覆うようにして透水シート81を被せる。その後、底面に砕石82を敷き詰める。尚、凹部の斜面は、図では地表面に対して垂直となっているが、崩れ防止等のため、必要に応じて斜めに掘り下げる。
次に、
図3(2)に示すように、砕石82の上に別の透水シート41を敷き、その上に樹脂ブロック5を並べていく。そして、並べた各樹脂ブロック5の上側にカバー材6を取り付けて樹脂ブロック層4を形成し、樹脂ブロック層4全体を透水シート41で覆う。透水シート41の端は、必要に応じて粘着テープ等で貼り合わせる。
【0022】
次に、
図3(3)に示すように、樹脂ブロック5の上に緩衝層7を施工する。即ち、リプラボード又はEPSボードを並べて載置し、樹脂ブロック層4の上側を覆った状態で敷き詰めて緩衝層7とする。また、敷地1を掘り下げて形成した凹部と樹脂ブロック層4の側面との間には、若干の空間が残るが、この空間には、砕石82が充填される。
そして、
図3(4)に示すように、緩衝層7の上に基礎2を施工し、基礎2の上に構築物3を施工する。基礎2や構築物3の施工法は、特に制限されるものではなく、適宜の工法を用いることができる。尚、緩衝層7の上に捨てコンクリートをしてから基礎2を施工する場合もある(基礎2の施工の一部ともいえる)。また、基礎2を施工した後、樹脂ブロック層4の上側に空間では、基礎2の周囲を含めて埋め戻しがされ、適宜の高さの地表面とされる。このため、基礎2の一部や樹脂ブロック層4は、地中に埋設された状態となる。
【0023】
上記構造の建設物において、地震等により地盤10に振動が発生した場合を想定する。この場合、地盤10(大地)と基礎2及び構築物3との間には、樹脂ブロック5により形成された免震用空間S(空気)が存在している。地盤10と空気との固有振動数は大きく異なるので、地盤10の振動は、基礎2や構築物3には伝わりにくくなる。免震用空間Sには、多数の樹脂ブロック5が存在するが、樹脂ブロック5は、適度な弾性と必要な強度を有する樹脂材料で形成されており、地盤10や基礎2等に比べると固有振動数が大きく相違する。このため、地盤10の振動は樹脂ブロック5を介しても伝わりにくい。いわば、樹脂ブロック層4全体がいわば免震ゴムのように作用し、振動が伝わりにくくする。
【0024】
この際重要なのは、各樹脂ブロック5は、水平方向では相互に連結されていないことである。例えば特開2008−231900号公報に開示されているように、樹脂ブロック5は、軟弱地盤10における地盤改良材として使用され得る。同公報では、水平方向で隣接する樹脂ブロック同士を連結具で連結している(公報
図3参照)。このように各樹脂ブロックを水平方向で連結具で連結することは、樹脂ブロック層全体の強度が高められるため、より高い地盤改良効果を得るべく樹脂ブロック層の積層段数を多くした場合等に特に効果的である。しかしながら、各樹脂ブロックを水平方向で相互に連結してしまうと、樹脂ブロック層の全体としての剛性、一体性を高めることになり、地盤からの振動が伝わり易くなってしまう。このため、この実施形態では、各樹脂ブロック5を相互に連結しない構造としている。尚、カバー材6は、嵌め込み突起の嵌り込みにより樹脂ブロック5に対して連結されているが、カバー材6同士は、単に並べて敷設されているのみで、連結はされていない。この理由も上記と同様である。
【0025】
次に、実施形態の免震構造で使用できる樹脂ブロックの他の例について説明する。
図4は、他の例の樹脂ブロックの概略図であり、(1)は平面概略図、(2)は正面概略図である。
この例の樹脂ブロック5は、ほぼ方形の平板状のものとなっている。樹脂ブロック5は、概略的には皿状に凹んだ凹部内に格子状に補強用のリブ55を形成した構造となっている。また、
図2に示す樹脂ブロック5と同様、通水用の開口50を多数有している。
【0026】
この例の樹脂ブロック5は、一対のものを上下に重ね合わせて使用することが想定されている。上下に重ね合わせた際、水平方向で位置ずれがないようにするための嵌め込み突起56と嵌め込み孔57を同様に有している。即ち、一対の樹脂ブロックが向かい合わされて重ねられた際、各嵌め込み突起56が相手方の各嵌め込み孔57に嵌り込むよう、各嵌め込み突起56及び各嵌め込み孔57の位置が設定されている。
【0027】
尚、この例の樹脂ブロック5は、前述したカバー材6としても兼用できるものとなっている。即ち、脚部52を有するタイプの樹脂ブロック5の嵌め込み突起53が嵌り込むものとして、補助嵌め込み孔58を有している。補助嵌め込み孔58に対しては、脚部52が接続された際の補強用として円弧状の補助リブ59が形成されている。
【0028】
図4に示すような平板状の樹脂ブロック5は、形成する樹脂ブロック層4の厚さが比較的薄い場合に好適に使用される。形成する樹脂ブロック層4の厚さに合わせて、重ね合わせる対の数が選定される。このような平板状の樹脂ブロック5を使用した場合でも、同様の免震効果が得られる。尚、このように平板状の樹脂ブロック5も水平方向に複数並べて配置されることで樹脂ブロック層4が形成されるが、前述したのと同様の理由により、その並びの方向(水平方向)では相互に連結されない。
【0029】
尚、前掲の公報では、樹脂ブロック層内に溜まり続ける水(地下水)により免震効果が得られるとしているが、発明者が実験により確認したところでは、上記のような構造とすることにより、樹脂ブロック層4内に水が溜まっていなくても免震効果がある。以下、この点について説明する。
図5〜
図7は、実施形態の免震構造の効果を確認するために行った実験について示した正面断面概略図である。この実験では、免震構造のプロトタイプとして
図5〜
図7に示すような構造を製作し、実際に振動台の上に載せて振動させ、振動実験を行った。
図5が従来構造のプロトタイプを示し、
図6及び
図7が実施形態の構造のプロトタイプを示す。
【0030】
この実験では、木材で2.5m×2.5m、高さ1.2m程度の直方体状の仮想地盤容器91を製作し、仮想地盤容器91を振動台92の上に固定した。そして、仮想地盤容器91の内側面に発砲樹脂プレートを側面緩衝材93として設け、側面緩衝材93で取り囲まれた状態で構造プロトタイプ配置した。
構造プロトタイプとしては、厚さ200mmの発砲樹脂プレートを3枚重ねて600mmの高さの発砲樹脂プレート層94とし、その上に400mm程度の厚さで砕石層95を設けた。発泡樹脂プレート層94+砕石層95が、実際の地盤10をシミュレートした層である。
【0031】
そして、基礎2+建物3の荷重に相当するものとして、厚さ150mmのプレキャストコンクリートブロック(以下、PC)を並べPC層96を配置した。PC層96の外形は1500mm角であるが、中央に内部の状況を確認するための点検口(直径900mm)を設けた。PC層96の荷重は700kgである。また、全体のバランスを構築物3に近づけるため、PC層96の上に角筒体98(高さ1m程度)を取り付けた。
尚、実際の施工では基礎2の一部は地中に埋設された状態となるため、PC層96の下面は砕石層95の上面より少し下側になるように、砕石層95の上面に凹部を形成し、その中にPC層96が入り込んだ状態とした。
【0032】
図5に示すように従来構造のプロトタイプでは、砕石層95に対してPC層96を設け、その上に角筒体98を接続したのみであったが、
図6及び
図7に示す実施形態の構造のプロトタイプでは、砕石層95の上面に形成した凹部の底面に樹脂ブロック5を並べて敷き詰めて樹脂ブロック層4を形成し、その上に緩衝層7としてリプラボードを敷設した。そして、リプラボードの上にPC層96を載置した。PC層96に対しては、同様に角筒体98を接続して構築物3のシミュレーションとした。尚、
図6は、樹脂ブロック層4が薄い場合の構造のプロトタイプであり、
図4に示す平板状タイプの樹脂ブロック5を重ね合わせて形成したものである。また、
図7は、厚い場合の構造のプロトタイプであり、
図2に示す樹脂ブロック5を使用したものである。樹脂ブロック層4の厚さは、
図6の構造プロトタイプでは70mm程度、
図7の構造プロトタイプでは300mm程度である。
【0033】
図5と
図6,7を比較すると判るように、従来構造と各実施形態の構造との相違は、基本的に、樹脂ブロック層4及び緩衝層7があるか無いかである。尚、図示は省略したが、PC層96の下端部に振動センサが設けられた。振動センサとしては、地震計と同様、加速度センサが使用された。
図8は、
図5〜
図7に示された各構造プロトタイプについての振動実験の結果を示した図である。
図8中の(1)は、
図5に示す従来構造のプロトタイプにおける振動の伝播状況、(2)は
図6に示す実施形態の構造プロトタイプにおける振動の伝播状況、(3)は
図7に示す実施形態の構造プロトタイプにおける振動の伝播状況を示している。
【0034】
実験では、より地震に近いシミュレーションをするため、芳賀波を振動台によりプロトタイプに印加した。芳賀波は、東日本大震災において栃木県芳賀群芳賀町で観測された地震波でNIED(独立行政法人防災科学研究所)の全国強震観測網(kit−net)による観測波である。
図8中の(1)では、芳賀波の大きな振動波形が計測されているが、(2)や(3)では振動波形は非常に小さくなっている。即ち、実施形態の構造によれば、大きな免震効果が得られることがこの実験により確認された。
【0035】
多少詳しい議論をすると、上記樹脂ブロック層4による免震は、地盤10と基礎2との間の動的相互作用において位相差による免震作用が働いているものと推測される。即ち、地盤10に生じた振動は、基礎2との間で動的に作用し、地盤10から基礎2に伝わる振動と、構築物3で跳ね返ってきて逆に基礎2から地盤10に伝わる振動とがある。この際、両者の界面に樹脂ブロック層4が存在していると、振動に大きな位相差を生じさせるよう作用する。このため、地盤10から基礎2に伝わる振動(進行波)と基礎2から地盤10に伝わる振動(反射波)との間に大きな位相差が生じて、お互いに弱め合うよう作用し、これにより免震(減振)が達成されているものと考えられる。
【0036】
このように、実施形態の免震構造によれば大きな免震効果が得られる。そして、実施形態の免震構造では、樹脂ブロック5を水平に並べて樹脂ブロック層4を形成するというシンプルな構造であるので、免震用のアイソレータやダンパーを施工する場合に比べて非常に安価に施工できる。樹脂ブロック5を並べるだけであるので、施工自体も非常に容易である。樹脂ブロック5は、軟弱地盤10における地盤置換材や雨水貯留槽用の構造材として使用されているものを流用できるので、樹脂ブロック5自体のコストも安価である。さらに、樹脂ブロック5としては、再生プラスチック材料で形成したものを使用するも可能なので、この点も施工コストが安くできる。施工コストが安く、また施工が容易であるということは、一戸建ての住宅や三階建て程度までの建築物のような小規模な建設物について特に適していることを意味する。
【0037】
また、この実施形態の構造では、基礎2は、緩衝層7を介して樹脂ブロック層4の上に載っているだけであり、基礎2は樹脂ブロック層4に連結されていない。コンクリート基礎2を樹脂ブロック層4の上に直接施工した場合、コンクリートが樹脂ブロック5に食い込んで固まるため、両者が連結される。このような構造の場合、樹脂ブロック5の振動が基礎2に伝わり易くなる。一方、実施形態の構造のように樹脂ブロック層4の上に基礎2が載っただけの構造であり、各樹脂ブロック5に対して基礎2が連結されていない構造であると、特に横揺れ(水平方向の振動)が伝わりにくくなる。横揺れが生じた場合、樹脂ブロック層4が基礎2に対して滑るように移動するため振動がキャンセルされる。
【0038】
図9は、樹脂ブロック層4の施工領域について示した概略図である。
上記のような実施形態の構造における免震効果は、主として樹脂ブロック層4によりもたらされる。樹脂ブロック層4は、地盤10からの振動を遮断するものであるため、より好ましくは、基礎2の施工領域と同じ領域か、又は
図9(1)に示すようにそれを超える領域を占めるよう施工されることが望ましい。
図9(2)に示すように、基礎2の施工領域よりも小さい領域に樹脂ブロック層4が施工された場合でも効果はあるが、基礎2と地盤10とが直接接している周辺部から振動が伝わり易くなるため、効果が落ちる。
【0039】
また、
図9(3)に示すように、複数の樹脂ブロック層4が離散的に設けられる場合もある。このような場合にも、一定の免振効果が得られる。また、水平方向で見た際、固有振動数の異なる領域が交互に存在する(不均一に分布する)ことになるので、特に横揺れについて動的相互作用等による免振効果が高くなる。
尚、
図9の各例において、緩衝層7は基礎2の領域と一致した領域をカバーするよう設けられたが、各樹脂ブロック層4の領域に一致した領域をカバーするよう設けられる場合もある。
【0040】
上記実施形態において、上述したように、樹脂ブロック5は、軟弱地盤における地盤改良材としても使用される。地盤改良の場合、樹脂ブロック層4の厚さは、地盤の地耐力と上載圧(基礎2及び構築物3の荷重)に応じて定められ、地耐力が弱い地盤の場合には、1段の樹脂ブロック層4では足りず、2段、3段と多くして地盤の置換量を多くしていくことが行われる。一方、免震構造とするために樹脂ブロック層4を施工する場合には、このように厚さを厚くする必要はない。発明者の検討によると、樹脂ブロック層4は7cm以上の厚さがあれば十分な効果がある。7cm以下(例えば5cm)でも免震効果は得られるが、7cm以上の場合に比べると劣る。また、樹脂ブロック層4の厚さを20cm超とした場合、樹脂ブロック5が無益に大きくなるだけで、特に効果が高くなる訳ではない。即ち、樹脂ブロック層4の厚さは、7cm以上20cm以下とすることが、コスト対効果の観点から望ましい。
【0041】
尚、上述したように、樹脂ブロック層4は透水シート41で覆われているので、内部に水(雨水や地下水)が浸入し得る。前掲の公報で説示されているように、樹脂ブロック層内に水が溜まると、溜まった水による免震効果も生まれる。従って、大雨による増水等で地中水位が上がっているときは、これも加わってさらに免震効果が高くなる。尚、前掲の公報に開示されているように、樹脂ブロック層の底面と側面の下端部分に遮水層を設け、地中水位が下がった後も地下水が溜まり続ける構造としても良い。
【0042】
次に、第二の実施形態について説明する。
図10は、第二の実施形態の免震構造の概略図である。この実施形態では、建設物が軟弱地盤10に施工されることを前提としており、且ついわゆる柱状改良を地盤改良として行うことを前提としている。
柱状改良は、軟弱地盤の改良技術としてしばしば採用されるものであり、地盤10を垂直に細長く掘り下げて柱状の空間し、そこに杭(以下、柱状改良杭という)100を形成する技術である。柱状改良には、地盤10の土にセメント系の固化材を混ぜて固めたものを柱状改良杭100とする場合(以下、セメント系工法という)と、砕石により柱状改良杭100を形成する場合(以下、砕石系工法という)とがある。
図10では、砕石系工法の場合が描かれている。砕石系工法には、砕石にセメント系の固化剤を混ぜて固める工法の他、砕石だけで柱状改良杭100を形成する工法とがある。セメント系工法、砕石系工法のいずれにおいても、柱状改良杭100の長さは、通常、安定層11に達する長さとされ、これにより不同沈下等を防止する効果が得られる。
【0043】
このような柱状改良において、柱状改良杭100は、従来、基礎2と直接的につながった構造とされている。このため、地震発生時などでは、振動が柱状改良杭100を介して基礎2や構築物3に伝わり易い。第二の実施形態の構造は、この問題を解決したものであり、
図10に示すように、柱状改良杭100と基礎2との間に樹脂ブロック層4を介在させている。
【0044】
より具体的には、柱状改良杭100の上には、第一の緩衝層101として発泡樹脂プレートが設けられており、その上に樹脂ブロック層4が設けられ、その上に第二の緩衝層102としてのリプラボードが設けられている。樹脂ブロック層4は、並べられた樹脂ブロック5と、各樹脂ブロック5の上に被せられたカバー材6とから成る。そして、第二の緩衝層102に対して基礎2(ここでは布基礎)が施工されており、その上に構築物3が施工されている。尚、第二の緩衝層102は、樹脂ブロック層4の上にだけ設けられ、基礎2の下側全体をカバーしない場合もあり得る。
【0045】
樹脂ブロック層4は、柱状改良杭100の上端面を覆う程度の大きさがあれば足りるものであり、例えば900mm×900mm程度の大きさとされる。厚さは、前述したように7cm以上とすることが望ましい。樹脂ブロック層4を形成する樹脂ブロック5の数は、第一の実施形態に比べて少なくなる。ある程度大きな樹脂ブロック5を使用すれば、樹脂ブロック一個のみが一つの柱状改良杭100と基礎2との間に配置される構造もあり得る。また、特開2012−237092号公報に開示されているように、ベース部51がほぼ円盤状である樹脂ブロック5も存在しており、ほぼ円盤状のカバー材を被せることで全体がほぼ円柱状の樹脂ブロック層4とする場合もある。この場合も、樹脂ブロック一個だけで樹脂ブロック層4が形成され得る。
【0046】
第二の実施形態の構造では、柱状改良工法によって地盤改良を行った際、振動が伝わり易い柱状改良杭100と基礎2との間に樹脂ブロック層4が介在されて振動がキャンセルされる。このため、地震発生時等の振動が構築物3に伝わりにくくなる。尚、第二の実施形態において、樹脂ブロック層4は、柱状改良杭100と基礎2との間だけではなく、柱状改良杭100以外の領域も含むように施工されても良い。ただ、振動を伝え易いという柱状改良の欠点を解消するには、最低限、柱状改良杭100と基礎2との間に施工されれば足りる。
【0047】
上記各実施形態において、振動は地震によるもののみを専ら取り上げたが、地震以外の振動、例えば幹線道路における車両の通行に起因した振動や、線路を走る列車による振動などについても、同様に高い免震効果を得ることができる。
また、上記各実施形態において、樹脂ブロック層4は水平方向に延びるものであったが、建設物が斜面に建設される場合、斜面に沿って斜めに延びる場合もあり得る。斜めに延びる場合、各樹脂ブロック5が階段状に並べられる場合もあり得る。いずれの場合も、地表面が延びる方向に沿って並べられると言い得る。尚、地表面に沿って複数の樹脂ブロック4が並べられる場合、前述したのと同様の理由から、その並びの方向(地表面の方向)では各樹脂ブロック4は相互に連結されない。