特許第5938456号(P5938456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938456
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】防ダニシート
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20160609BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20160609BHJP
   A01N 59/14 20060101ALI20160609BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A01M1/20 C
   A01N25/34 A
   A01N59/14
   A01P7/02
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-191412(P2014-191412)
(22)【出願日】2014年9月19日
(62)【分割の表示】特願2010-185834(P2010-185834)の分割
【原出願日】2010年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-43772(P2015-43772A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】504135505
【氏名又は名称】ワコー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198477
【氏名又は名称】石塚硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】石田 侃
(72)【発明者】
【氏名】末冨 明孝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友繁
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−256705(JP,A)
【文献】 実開昭60−157662(JP,U)
【文献】 特開平05−320015(JP,A)
【文献】 特開2002−322012(JP,A)
【文献】 特開平03−264505(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3062083(JP,U)
【文献】 特開平11−171200(JP,A)
【文献】 特開昭63−265043(JP,A)
【文献】 特開平06−284846(JP,A)
【文献】 米国特許第03698974(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿剤が袋状に形成された不織布シートもしくは多孔性樹脂シートである通気性シートに内包されている除湿シートにおいて、袋状の除湿シートの上下の両面に20℃の水中において1〜300mg/g/時間の速度でB23を溶出する硼酸系ガラスの粉末が1m2当たり0.1〜10gの量にて有機バインダー中に分散されてなる塗布層が付設されていることを特徴とする防ダニシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防ダニシートに関する。
【背景技術】
【0002】
吸湿剤が通気性シートに内包されている構成の除湿シートは、敷き布団の下に敷いて睡眠中に体外から放出された汗などの水分を吸収させる目的、あるいは布団や衣類などの収納スペース(例:タンス、押入れ)に配置して収納スペースを除湿させる目的に利用されている。この除湿シートは、吸湿剤の吸湿能力が消失した後は、吸湿剤を天日などで乾燥することによって繰り返し使用することができるという利点がある。また、上記の除湿シートは、防ダニ効果があることが知られている。
【0003】
特許文献1には、シリカゲルなどの吸湿剤が通気性を有するフィルム又は不織布に分割した状態で内包されている除湿シートからなる防ダニ除湿シートが記載されており、この防ダニ除湿シートは、ダニ生息場所及び周辺の湿度を低下させることにより、防ダニ効果を発揮することが記載されている。なお、この特許文献1には、防ダニ効果をより高めたり、持続効果を延ばしたりする場合には、ピレストロイド系化合物、有機リン系化合物、カーバメイト系化合物、キチン合成阻害剤、幼若ホルモン様物質などの有機系の薬剤を配合又は処理して使用してもよい旨の記載がある。
【0004】
一方、特許文献2には、20℃の水中において1〜300mg/g/時間の速度でB23を溶出する硼酸系ガラスの粉末を布団、枕、マットレス等の寝具を構成する繊維又は発泡体の表面に分散させることによって、長期間にわたって安定して防ダニ効果を発揮することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−29730号公報
【特許文献2】特開平5−320015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸湿剤が通気性シートに内包されている構成の除湿シートは、特許文献1に記載されているように、吸湿剤に吸湿能力がある間は防ダニ効果を発揮する。しかしながら本発明者の検討によると、除湿シートの吸湿剤の吸湿能力が消失すると、防ダニ効果も消失し、ダニが急激に増殖するようになる。
従って、本発明の目的は、吸湿剤が通気性シートに内包されている構成の除湿シートからなる防ダニシートであって、吸湿剤の吸湿能力が消失した後であっても長期間にわたって高い防ダニ性を有する防ダニシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、吸湿剤が通気性シートに内包されている構成の除湿シートの表面に20℃の水中において1〜300mg/g/時間の速度でB23を溶出する硼酸系ガラスの粉末が有機バインダー中に分散されてなる塗布層を付設すると、長期間にわたってダニの増殖を抑える効果が持続することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明は、吸湿剤が通気性シートに内包されている除湿シートの表面に、20℃の水中において1〜300mg/g/時間の速度でB23を溶出する硼酸系ガラスの粉末が有機バインダー中に分散されてなる塗布層が付設されてなる防ダニシートにある。
【0009】
本発明は、特に吸湿剤が袋状に形成された通気性シートに内包されている除湿シートにおいて、袋状の除湿シートの上下の両面に20℃の水中において1〜300mg/g/時間の速度でB23を溶出する硼酸系ガラスの粉末が1m2当たり0.1〜10gの量にて有機バインダー中に分散されてなる塗布層が付設されていることを特徴とする防ダニシートにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防ダニシートは長期間にわたって高い防ダニ性を発揮する。本発明の防ダニシートを、敷き布団の下に敷いておくことによって、睡眠中に体外から放出された汗などの水分を吸収し、かつ長期間にわたって敷き布団中のダニの増殖を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従う防ダニシートの一例の平面図である(但し、通気性シート2aの一部を切り欠いている)。
図2図1のA−A線の切断面を概念的に拡大して表した断面模式図である。
図3】比較例1と2及び実施例1で作成したサンプルの防ダニ性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に本発明に従う防ダニシートの一例の平面図を、図2図1のA−A線の切断面を概念的に拡大して表した断面模式図を示す。但し、図1では、通気性シート2aの一部を切り欠いている。
【0013】
図1及び2において、防ダニシートは、吸湿剤1が升目状に分割された状態で通気性シート2a、2bの間に内包されている除湿シート3と、除湿シート3の表面に付設された、硼酸系ガラス粉末4が有機バインダー5中に分散されてなる塗布層6とからなる。
【0014】
吸湿剤1の例としては、シリカゲル、セピオライト、酸化カルシウム、ケイソウ土、活性炭、活性白土、ゼオライト、ホワイトカーボン、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び吸水性ポリマーを挙げることができる。これらの吸湿剤は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。吸湿剤はシリカゲルであることが好ましく、B型シリカゲルであることが特に好ましい。
【0015】
通気性シート2a、2bの例としては、不織布シート及び柔軟な多孔性樹脂シートを挙げることができる。通気性シートは不織布シートであることが好ましい。
【0016】
硼酸系ガラス粉末4には、20℃の水中において1〜300mg/g/時間の速度でB23を溶出するものを用いる。硼酸系ガラス粉末は、水中あるいは湿度のある大気中において徐々に表面から溶解して、B23を溶出し、この溶出したB23により防ダニ効果を発揮する。硼酸系ガラス粉末の例としては、B23を主成分とする、B23−SiO2−Na2O系のガラス粉末、B23−Na2O−RO系のガラス粉末(Rはアルカリ土類金属)及びB23−Na2O−Al23系のガラス粉末を挙げることができる。硼酸系ガラス粉末には、石塚硝子株式会社により製造販売されているセグロセラを使用することができる。
【0017】
有機バインダー5の例としては、アクリル系バインダー及びウレタン系バインダーを挙げることができる。
【0018】
塗布層6は、除湿シート3の上下一方の表面にのみ付設してもよいが、上下の両面に付設することが好ましい。塗布層6には、硼酸系ガラス粉末4が1m2当たり0.1〜10gの量にて分散されていることが好ましい。
【0019】
塗布層6は、例えば、硼酸系ガラス粉末と有機バインダーと、さらに所望により有機バインダーの硬化剤とを含む塗布液を、除湿シートの表面に塗布し、乾燥する方法により付設することができる。
【0020】
本発明の防ダニシートでは、塗布層6に炭素質材料の粉末を添加したり、塗布層6の下面もしくは上面に、炭素質材料粉末と有機バインダーとを含む塗布層を形成してもよい。この炭素質材料粉末は、除湿シートを黒色に着色して、天日で除湿剤を乾燥させるときの乾燥速度を速める効果がある。炭素質材料粉末の例としては、黒鉛粉末、カーボンブラック粉末、活性炭粉末、備長炭粉末を挙げることができる。
【実施例】
【0021】
下記のサンプルを用意した。
比較例1:ポリエステル製の不織布シートに、セグロセラ(石塚硝子(株)製)と、ウレタン系バインダーとバインダーの硬化剤とを含む塗布液を、グラビア印刷法により、1m2当たりのセグロセラ含有量が1.0gとなるように塗布し、乾燥して作成した、セグロセラが分散された塗布層を有する不織布シートからなる防ダニシートサンプル。
【0022】
比較例2:比較例1で使用したポリエステル製不織布シートを二枚重ね合わせ、その間にB型シリカゲルを入れた後、不織布シートの周縁部を封止して作成した除湿シートからなる防ダニシートサンプル。
【0023】
実施例1:比較例2と同様にして作成した除湿シートの両側表面のそれぞれに、比較例1で使用したものと同じ塗布液を、グラビア印刷法により、1m2当たりのセグロセラ含有
量が1.0gとなるように塗布し、乾燥して作成した、セグロセラが分散された塗布層を有する除湿シートからなる防ダニシートサンプル。
【0024】
上記比較例1と2及び実施例1で作成した各サンプルの防ダニ性を、JIS L1920(2007年)で規定されている繊維製品の防ダニ性能試験方法(増殖抑制試験A法)に準拠した方法により評価した。すなわち、各サンプルを約50匹のヤケヒョウヒダニと共に、温度25℃、相対湿度75%の環境下にて4週間と6週間静置したときの生きダニ数を計数することにより防ダニ性を評価した。なお、比較例2及び実施例1のサンプルで用いたB型シリカゲルの吸湿能力は、2日後にはほぼ消失する。
【0025】
図3の結果から明らかなように、実施例1のサンプル(B型シリカゲルが内包され、セグロセラが分散された塗布層を有する防ダニシート)は、比較例1のサンプル(セグロセラが分散された塗布層を有する不織布シートからなる防ダニシート)や比較例2のサンプル(B型シリカゲルが内包され、セグロセラが分散された塗布層を有しない防ダニシート)と比較して、4週間静置後と6週間静置後のいずれにおいても生きダニ数が最も少ない。これは、実施例1のサンプルでは、B型シリカゲルの吸湿能力がある間は、B型シリカゲルによる除湿効果とセグロセラの防ダニ効果が相乗的に作用することによって、比較例1のサンプルや比較例2のサンプルよりもダニの増殖が強く抑えられ、一方、B型シリカゲルの吸湿能力が消失した後には、セグロセラの防ダニ効果によってダニの増殖抑制効果が維持されるためであると理解される。
【符号の説明】
【0026】
1 吸湿剤
2a、2b 通気性シート
3 除湿シート
4 硼酸系ガラス粉末
5 有機バインダー
6 塗布層
図1
図2
図3