(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938485
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】リリースキャビンにおける被試験物と接触する表面の処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/00 20060101AFI20160609BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
G01N33/00 C
G01N1/22 L
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-553598(P2014-553598)
(86)(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公表番号】特表2015-508505(P2015-508505A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】CN2012078931
(87)【国際公開番号】WO2013127149
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年7月28日
(31)【優先権主張番号】201210049393.6
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512265766
【氏名又は名称】東莞市升微机電設備科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏 可瑜
【審査官】
草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−038701(JP,A)
【文献】
特表2013−536400(JP,A)
【文献】
特開2009−063210(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/081653(WO,A1)
【文献】
特表平05−506715(JP,A)
【文献】
特表2010−534748(JP,A)
【文献】
Wenhao Chen,STANDARD METHOD FOR THE TESTING AND EVALUATION OF VOLATILE ORGANIC CHEMICAL EMISSIONS FROM INDOOR SOURCES USING ENVIRONMENTAL CHAMBERS VERSION 1.1,Indoor Air Quality Section Environmental Health Laboratory Branch Division of Environmental and Occupational Disease Control California Department of Public Health,2010年 2月,Page.1-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00
G01N 1/00−1/44
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リリースキャビンにおける被試験物と接触する表面の処理方法であり、前記リリースキャビンは、キャビン本体(1)と、前記キャビン本体(1)に接続されたキャビンドア(2)、吸気管(4)、排気管(5)及びサンプリングパイプ(6)と、前記キャビン本体(1)内に設けられた撹拌ファン(7)及び風路板(8)と、を含み、前記キャビン本体(1)、前記キャビンドア(2)、前記吸気管(4)、前記排気管(5)、前記サンプリングパイプ(6)、前記撹拌ファン(7)及び前記風路板(8)のうちの少なくとも一つの部品における被試験物と接触する表面を処理するための方法であって、
(一)ステンレス鋼又はガラスから形成された前記部品を洗浄して前記部品から汚染物質を除去するステップと、
(二)前記(一)のステップで洗浄した前記部品の表面に表面吸着力を低減させるための失活層(10)を形成し、又は、前記(一)のステップで洗浄した前記部品の表面に中間層(9)を形成した後に前記中間層(9)の表面に前記失活層(10)を形成するステップと、
を備え、
前記(二)のステップにおいて、前記失活層(10)の形成は、
前記部品又は前記中間層(9)の表面に、有機フッ素化合物、シラン化合物、水素含有シリコーンオイル又はポリエチレングリコールをコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行うこと、
前記部品又は前記中間層(9)の表面にSiO2ゾルをコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行い、溶媒を用いて余分な物質を除去すること、及び、
前記部品又は前記中間層(9)の表面にポリベンゾイミダゾールピロールケトン(PY)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ素化アルキル類、メタケイ酸エステル又はオルトケイ酸テトラエチル脂質をコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行うこと、のいずれかであることを特徴とする、処理方法。
【請求項2】
前記(一)のステップにおいて、
ステンレス鋼から形成された前記部品については、前記部品を酸で酸化させてから有機溶剤及び水で洗浄し、又は、前記部品を酸化させた後に電解してその後有機溶剤及び水で洗浄し、
ガラスから形成された前記部品については、前記部品をHCL及びHFのいずれかを用いて腐食させ、又は、前記部品の表面を粗面化することを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記失活層(10)は、液晶フィルム構造であり、サブミクロンからミクロンまでの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
前記(二)のステップにおいて、
ステンレス鋼から形成された前記部品についての前記中間層(9)の形成は、
前記(一)のステップで洗浄した前記部品を、モノシランを導入して500℃以上の高温条件で焼成して、SiO2層を形成すること、
前記(一)のステップで洗浄した前記部品に、有機シリカゲルをコーティング、浸漬又はめっきした後、前記部品を500℃以上の高温条件で焼成して、SiO2層を形成すること、
前記(一)のステップで洗浄した前記部品に、ポリシロキサン類及びシクロデキストリン誘導体をコーティング、浸漬又はめっきした後、前記部品を500℃以上の高温条件で焼成して、SiO2層を形成すること、及び、
細孔形成剤に芳香族由来の炭素原子及び複素環を含有しないエポキシ化合物とアミン化合物とを用いて60−200℃で重合反応を行い、ゲル物を形成した後、前記(一)のステップで洗浄した前記部品をコーティング又は浸漬し、溶媒を用いて前記細孔形成剤を洗浄し、骨格相を残して乾燥処理することで、3次元の網状又は孔状の骨格相を形成すること、のいずれかであり、
前記ポリシロキサン類は、ポリジメチルシロキサン、フェニル基含有ポリシロキサン、シアノ基含有ポリシロキサン、フッ素含有ポリシロキサン、ビニル基含有ポリシロキサン、末端ヒドロポリシロキサン、又は、分子鎖と官能基との間にスペーサー基を含有したポリシロキサンであり、
前記細孔形成剤は、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、グリコール−ジメチルエーテル酢酸エステル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールであり、前記エポキシ化合物は、2、2,2−三−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネートエステルであり、前記アミン化合物は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン/ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサリング、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン又はポリアミン類とダイマー酸とで構成された脂肪族ポリアミド系であり、
ガラスから形成された前記部品についての前記中間層(9)の形成は、前記部品の表面に酸化ケイ素、塩化ナトリウム又はグラファイトカーボンブラックを堆積することであることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項5】
前記SiO2ゾルの成分は、メチル3キシシラン及びテトラエトキシシラン加水分解物であることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【請求項6】
前記シラン化合物は、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、末端カルビルポリメチルシロキサン、フェニル-ジメチルポリシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニールテトラメチルシリコンアミンシラン、ポリシロキサン又はフッ素含有ポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)、半揮発性有機化合物(SVOC)及び高沸点有機化合物を検出するための試験装置の内部における被試験物と接触する表面の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の揮発性有機化合物(VOC)、半揮発性有機化合物(SVOC)及び高沸点有機化合物を検出するための試験装置は、例えば、リリースキャビン(「サンプリング器」とも称される。)が、キャビン本体と、キャビン本体に接続されたキャビンドア、吸気管、排気管及びサンプリングパイプと、キャビン本体内に設けられた撹拌ファン及び風路板(8)とを含む。キャビン本体の内壁及びリリースキャビンの各部品における被試験物と接触する表面には、いくつかの被試験物を吸着する化学的結合又は強い表面張力が存在する。そのため、被試験物は、上記表面に吸着されてしまい、非常に除去し難い。極性化合物については、上記表面におけるいくつかの化学結合の影響により、吸着力がより強くなる。上記表面は、試験装置の内表面における化学結合、例えば水素結合、シラノール基、ルイス酸の活性化点が覆われるように処理しなければならず、その結果、被試験物が容易に吸着されてしまう。被試験物の含有量をサンプリング分析する際に、試験装置のサンプリングパイプから取得されたサンプルを検査すると、上記表面に吸着された大量の被試験物により、サンプルから取得された検出値は、キャビン本体内の被試験物の実際の値より低くなり、検出値と実際の値との誤差が大きくなることから、高い検出精度を実現することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した従来技術の問題を解決するため、リリースキャビンにおける被試験物と接触する表面に被試験物が吸着されることを大幅に抑制し、リリースキャビンの検出精度を効果的に向上させることができる、リリースキャビンにおける被試験物と接触する表面の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は、リリースキャビンにおける被試験物と接触する表面の処理方法であり、前記リリースキャビンは、キャビン本体と、前記キャビン本体に接続されたキャビンドア、吸気管、排気管及びサンプリングパイプと、前記キャビン本体内に設けられた撹拌ファン及び風路板と、を含み、前記キャビン本体、前記キャビンドア、前記吸気管、前記排気管、前記サンプリングパイプ、前記撹拌ファン及び前記風路板のうちの少なくとも一つの部品における被試験物と接触する表面を処理するための方法であって、(一)ステンレス鋼又はガラスから形成された前記部品を洗浄して前記部品から汚染物質を除去するステップであって、ステンレス鋼から形成された前記部品については、前記部品を酸で酸化させてから有機溶剤及び水で洗浄し、又は、前記部品を酸化させた後に電解してその後有機溶剤及び水で洗浄し、ガラスから形成された前記部品については、前記部品をHCL及びHFのいずれかを用いて腐食させ、又は、物理的な方法により前記部品の表面を粗面化し、他の方法で前記部品を洗浄して前記部品から汚染物質を除去することもできるステップと、(二)前記(一)のステップで洗浄した前記部品の表面に
表面吸着力を低減させるための失活層を形成し、又は、前記(一)のステップで洗浄した前記部品の表面に中間層を形成した後に前記中間層の表面に
前記失活層を形成するステップと、を備え
、前記(二)のステップにおいて、前記失活層(10)の形成は、前記部品又は前記中間層(9)の表面に、有機フッ素化合物、シラン化合物、水素含有シリコーンオイル又はポリエチレングリコールをコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行うこと、前記部品又は前記中間層(9)の表面にSiO2ゾルをコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行い、溶媒を用いて余分な物質を除去すること、及び、前記部品又は前記中間層(9)の表面にポリベンゾイミダゾールピロールケトン(PY)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ素化アルキル類、メタケイ酸エステル又はオルトケイ酸テトラエチル脂質をコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行うこと、のいずれかである。
【0005】
前記(二)のステップにおいて、ステンレス鋼から形成された前記部品についての前記中間層の形成は、前記(一)のステップで洗浄した前記部品を、モノシランを導入して500℃以上の高温条件で焼成してSiO
2層を形成すること、前記(一)のステップで洗浄した前記部品に、有機シリカゲルをコーティング、浸漬又はめっきした後、前記部品を500℃以上の高温条件で焼成して、SiO
2層を形成すること、前記(一)のステップで洗浄した前記部品に、ポリシロキサン類及びシクロデキストリン誘導体をコーティング、浸漬又はめっきした後、前記部品を500℃以上の高温条件で焼成して、SiO
2層を形成すること、及び、細孔形成剤に芳香族由来の炭素原子及び複素環を含有しないエポキシ化合物とアミン化合物とを用いて60−200℃で重合反応を行い、ゲル物を形成した後、前記(一)のステップで洗浄した前記部品をコーティング又は浸漬し、溶媒を用いて前記細孔形成剤を洗浄し、骨格相を残して乾燥処理することで、3次元の網状又は孔状の骨格相を形成すること、のいずれかであり、前記ポリシロキサン類は、ポリジメチルシロキサン、フェニル基含有ポリシロキサン、シアノ基含有ポリシロキサン、フッ素含有ポリシロキサン、ビニル基含有ポリシロキサン、末端ヒドロポリシロキサン、又は、分子鎖と官能基との間にスペーサー基を含有したポリロキサンであり、前記細孔形成剤は、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、グリコール−ジメチルエーテル酢酸エステル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールであり、前記エポキシ化合物は、2、2,2−三−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネートエステルであり、前記アミン化合物は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン/ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサリング、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン又はポリアミン類とダイマー酸とで構成された脂肪族ポリアミド系であり、ガラスから形成された前記部品についての前記中間層の形成は、前記部品の表面に酸化ケイ素、塩化ナトリウム又はグラファイトカーボンブラックを堆積することである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る処理方法によれば、(一)のステップで洗浄した上記部品の表面に失活層を形成し、又は、(一)のステップで洗浄した上記部品の表面に中間層を形成した後に中間層の表面に失活層を形成する。これにより、キャビン本体の内壁及びリリースキャビンの各部品における被試験物と接触する表面において、表面張力が低減することで、被試験物が吸着されることが大幅に抑制される。そのため、サンプリングパイプから取得されたサンプルで得られる検出値は、キャビン本体内の被試験物の実際の値により近づくことになり、リリースキャビンの検出精度を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る処理方法に記載のリリースキャビンにおいて中間層及び失活層がコーティングされている構造の概略図である。
【
図4】本発明に係る処理方法に記載のリリースキャビンにおいて被覆層がコーティングされている構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面及び実施形態を組合せて、本発明に係る処理方法についてさらに説明する。
【0010】
なお、以下に述べる形態は、本発明に係る処理方法の好適な実施の形態であり、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0011】
<第1実施形態>
図1、
図2及び
図3を参照し、本発明に係る処理方法の第1実施形態について説明する。リリースキャビンは、キャビン本体1と、キャビン本体1に接続されたキャビンドア2、吸気管4、排気管5及びサンプリングパイプ6と、キャビン本体1内に設けられた撹拌ファン7及び風路板8と、を含む。当該処理方法は、キャビン本体1、キャビンドア2、吸気管4、排気管5、サンプリングパイプ6、撹拌ファン7及び風路板8のうちの少なくとも一つの部品における被試験物と接触する表面を処理するための方法であって、以下の(一)(二)のステップを含む。(一)のステップは、ステンレス鋼又はガラスから形成された上記各部品を洗浄して汚染物質を除去するステップであって、ステンレス鋼から形成された上記部品については、上記部品を酸で酸化させてから有機溶剤及び水で洗浄し、又は、上記部品を酸化させた後に電解してその後有機溶剤及び水で洗浄し、また、ガラスから形成された上記部品については、上記部品をHCL及びHFのいずれかを用いて腐食させ、又は、物理的な方法により上記部品の表面を粗面化し、他の方法で上記部品を洗浄して上記部品から汚染物質を除去することもできるステップである。(二)のステップは、(一)のステップで洗浄した上記部品の表面に中間層9を形成した後に中間層9の表面に失活層10を形成するステップである。
【0012】
中間層9は、SiO
2層、及び、3次元の網状又は孔状の骨格相のいずれかであり、サブミクロンからミクロンまでの厚さを有する。
【0013】
失活層10は、液晶フィルム構造であり、サブミクロンからミクロンまでの厚さを有する。
【0014】
(二)のステップにおいて、ステンレス鋼から形成された上記部品についての中間層9の形成は、(一)のステップで洗浄した上記部品を、モノシランを導入して500℃以上の高温条件で焼成してSiO
2層を形成すること、(一)のステップで洗浄した上記部品に、有機シリカゲルをコーティング、浸漬又はめっきした後、上記部品を500℃以上の高温条件で焼成して、SiO
2層を形成すること、(一)のステップで洗浄した上記部品に、ポリシロキサン類及びシクロデキストリン誘導体をコーティング、浸漬又はめっきした後、上記部品を500℃以上の高温条件で焼成して、SiO
2層を形成すること、及び、細孔形成剤に芳香族由来の炭素原子及び複素環を含有しないエポキシ化合物とアミン化合物とを用いて60−200℃で重合反応を行い、ゲル物を形成した後、(一)のステップで洗浄した上記部品をコーティング又は浸漬し、溶媒を用いて上記細孔形成剤を洗浄し、骨格相を残して乾燥処理することで、3次元の網状又は孔状の骨格相を形成すること、のいずれかである。ここで、上記ポリシロキサン類は、ポリジメチルシロキサン、フェニル基含有ポリシロキサン、シアノ基含有ポリシロキサン、フッ素含有ポリシロキサン、ビニル基含有ポリシロキサン、末端ヒドロポリシロキサン、又は、分子鎖と官能基との間にスペーサー基を含有したポリロキサンである。上記細孔形成剤は、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、グリコール−ジメチルエーテル酢酸エステル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールである。上記エポキシ化合物は、2、2,2−3−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネートエステルである。上記アミン化合物は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン/ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサリング、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン又はポリアミン類とダイマー酸とで構成された脂肪族ポリアミド系である。ガラスから形成された上記部品についての中間層9の形成は、上記部品の表面に酸化ケイ素、塩化ナトリウム又はグラファイトカーボンブラックを堆積することである。
【0015】
失活層10の形成は、上記部品又は中間層9の表面に低表面張力有機化合物をコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行うこと、上記部品又は中間層9の表面にSiO
2ゾルをコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行い、溶媒を用いて余分な物質を除去すること、及び、上記部品又は中間層9の表面にポリベンゾイミダゾールピロールケトン(PY)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ素化アルキル類、メタケイ酸エステル又はオルトケイ酸テトラエチル脂質をコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行うこと、のいずれかである。
【0016】
低表面張力有機化合物は、シラン化合物、水素含有シリコーンオイル又はポリエチレングリコールである。シラン化合物は、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、末端カルビルポリメチルシロキサン、フェニル-ジメチルポリシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニールテトラメチルシリコンアミンシラン、ポリシロキサン又はフッ素含有ポリシロキサンである。
【0017】
低表面張力有機化合物は、有機フッ素化合物であってもよい。
【0018】
<第2実施形態>
図4、
図5及び
図6を参照し、本発明に係る処理方法の第2実施形態について説明する。リリースキャビンは、キャビン本体1と、キャビン本体1に接続されたキャビンドア2、吸気管4、排気管5及びサンプリングパイプ6と、キャビン本体1内に設けられた撹拌ファン7及び風路板8と、を含む。当該処理方法は、キャビン本体1、キャビンドア2、吸気管4、排気管5、サンプリングパイプ6、撹拌ファン7及び風路板8のうちの少なくとも一つの部品における被試験物と接触する表面を処理するための方法であって、以下の(一)(二)のステップを含む。(一)のステップは、ステンレス鋼又はガラスから形成された上記各部品を洗浄して汚染物質を除去するステップであって、ステンレス鋼から形成された上記部品については、上記部品を酸で酸化させてから有機溶剤及び水で洗浄し、又は、上記部品を酸化させた後に電解してその後有機溶剤及び水で洗浄し、また、ガラスから形成された上記部品については、上記部品を有機溶剤及び水で洗浄するステップである。(二)のステップは、(一)のステップで洗浄した上記部品の表面に失活層10を直接形成するステップである。
【0019】
失活層10は、液晶フィルム構造であり、サブミクロンからミクロンまでの厚さを有する。
【0020】
失活層10の形成は、上記部品又は中間層9の表面に低表面張力有機化合物をコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行うこと、上記部品又は中間層9の表面にSiO
2ゾルをコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行い、溶媒を用いて余分な物質を除去すること、及び、上記部品又は中間層9の表面にポリベンゾイミダゾールピロールケトン(PY)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ素化アルキル類、メタケイ酸エステル又はオルトケイ酸テトラエチル脂質をコーティング、浸漬又はめっきした後、300℃以上の高温条件でベーキングを行うこと、のいずれかである。
【0021】
低表面張力有機化合物は、シラン化合物、水素含有シリコーンオイル又はポリエチレングリコールである。シラン化合物は、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、末端カルビルポリメチルシロキサン、フェニル-ジメチルポリシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニールテトラメチルシリコンアミンシラン、ポリシロキサン又はフッ素含有ポリシロキサンである。
【0022】
低表面張力有機化合物は、有機フッ素化合物であってもよい。
【0023】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨と原理を逸脱しない限り、上述の実施形態に対する変更、修飾、取り替え、組み合わせ、簡略化等は、いずれも対応する等価の置換方式であるべきであり、本発明の保護範囲に含まれると理解されるべきであろう。