特許第5938491号(P5938491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

特許5938491基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体
<>
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000002
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000003
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000004
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000005
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000006
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000007
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000008
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000009
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000010
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000011
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000012
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000013
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000014
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000015
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000016
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000017
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000018
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000019
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000020
  • 特許5938491-基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5938491
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/509 20060101AFI20160609BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20160609BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20160609BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20160609BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   C23C16/509
   H01L21/205
   H01L21/31 C
   C23C16/52
   H05H1/46 M
   H05H1/46 B
【請求項の数】9
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2015-58326(P2015-58326)
(22)【出願日】2015年3月20日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】豊田 一行
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−093226(JP,A)
【文献】 特開2013−084730(JP,A)
【文献】 特開2008−187181(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/057836(WO,A1)
【文献】 特開2013−131475(JP,A)
【文献】 特開2014−175664(JP,A)
【文献】 特開2013−084898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板が円周状に載置され、回転移動可能な基板載置部と、
前記基板載置部と対向する空間に前記円周状の中心から放射状に複数の処理領域を形成する分割構造体と、
前記分割構造体が形成する前記処理領域に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記複数の処理領域のうち、少なくとも一つの処理領域に前記基板との距離が当該処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで異なるように形成された誘電体プレートを備え、前記ガス供給部が前記処理領域に供給する処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成するとともに、前記プラズマ状態にするにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで異ならせるプラズマ生成部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記誘電体プレートには、マイクロ波が供給される請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
複数の基板が円周状に載置され、回転移動可能な基板載置部と、
前記基板載置部と対向する空間に前記円周状の中心から放射状に複数の処理領域を形成する分割構造体と、
前記分割構造体が形成する前記処理領域に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記複数の処理領域のうち、少なくとも一つの処理領域に当該処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで互いの離間距離が異なるように配された一対の電極を備え、前記ガス供給部が前記処理領域に供給する処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成するとともに、前記プラズマ状態にするにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで異ならせるプラズマ生成部と、
を備える基板処理装置。
【請求項4】
基板載置部上に複数の基板を円周状に載置する工程と、
前記基板載置部を回転移動させる工程と、
前記基板載置部と対向する空間に前記円周状の中心から放射状に形成された複数の処理領域に処理ガスを供給する工程と、
前記複数の処理領域のうち、少なくとも一つの処理領域に前記基板との距離が当該処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで異なるように形成された誘電体プレートを備え、当該処理領域に供給された処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成するとともに、前記プラズマ状態にするにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで異ならせて当該活性種を前記基板に供給する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記活性種を前記基板に供給する工程では、前記誘電体プレートにマイクロ波を供給する請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
コンピュータによって
基板載置部上に複数の基板を円周状に載置させる手順と、
前記基板載置部を回転移動させる手順と、
前記基板載置部と対向する空間に前記円周状の中心から放射状に形成された複数の処理領域に処理ガスを供給させる手順と、
前記複数の処理領域のうち、少なくとも一つの処理領域に前記基板との距離が当該処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで異なるように形成された誘電体プレートを備え、当該処理領域に供給された処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成させるとともに、前記プラズマ状態にさせるにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで異ならせて当該活性種を前記基板に供給させる手順と、
基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項7】
前記活性種を前記基板に供給させる手順では、前記誘電体プレートにマイクロ波を供給する請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
コンピュータによって
基板載置部上に複数の基板を円周状に載置させる手順と、
前記基板載置部を回転移動させる手順と、
前記基板載置部と対向する空間に前記円周状の中心から放射状に形成された複数の処理領域に処理ガスを供給させる手順と、
前記複数の処理領域のうち、少なくとも一つの処理領域に前記基板との距離が当該処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで異なるように形成された誘電体プレートを備え、当該処理領域に供給された処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成させるとともに、前記プラズマ状態にさせるにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域における前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで異ならせて当該活性種を前記基板に供給させる手順と、
基板処理装置に実行させるプログラムが記録された記録媒体。
【請求項9】
前記活性種を前記基板に供給させる手順では、前記誘電体プレートにマイクロ波を供給する請求項8に記載の記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造工程で用いられる基板処理装置及びプラズマ生成機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、ウエハ等の基板に対して、種々のプロセス処理を行う。プロセス処理の一つには、例えば交互供給法による成膜処理がある。交互供給法は、原料ガス及びその原料ガスと反応する反応ガスの少なくとも二種類の処理ガスを、処理対象となる基板に対して交互に供給し、それらのガスを基板表面で反応させて吸着層を形成し、その層を積層させて所望膜厚の膜を形成する方法である。
【0003】
交互供給法による成膜処理を行う基板処理装置の一態様としては、以下のような構成のものがある。すなわち、当該一態様の基板処理装置は、平面視円形状の空間が複数の処理領域に区画されており、各処理領域に異なる種類のガスが供給される。そして、処理対象の基板が各処理領域を順に通過するように、その基板が載置された基板載置部を回転移動させることで、その基板に対する成膜処理を行うように構成されている。また、処理ガスが供給される処理領域においては、原料ガスとの反応効率を高めるために、当該反応ガスをプラズマ状態とするように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−84898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した構成の基板処理装置では、プラズマ状態の反応ガスが供給された処理領域内において、プラズマ分布の偏りが生じてしまうと、基板上に形成する膜の膜厚や膜質等について面内均一性の低下を招くおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、基板上に形成する膜の面内均一性の低下を抑制すべく、処理領域におけるプラズマ分布を部分的に調整することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
基板が載置される基板載置部と、
前記基板載置部と対向する空間に処理領域を形成する分割構造体と、
前記分割構造体が形成する前記処理領域に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部が前記処理領域に供給する処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成するとともに、前記プラズマ状態にするにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域の部分別に独立して制御するプラズマ生成部と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処理領域におけるプラズマ分布を部分的に調整できるので、基板上に形成する膜の面内均一性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係るクラスタ型の基板処理装置の横断面概略図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備える反応容器内の概略構成例を模式的に示す説明図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備えるガス供給プレートの一構成例を示す説明図であり、(a)は処理空間における各領域を平面視したときの概念図、(b)は(a)中のC−C断面を示す側断面図、(c)は(a)中のD−D断面を示す側断面図、(d)は(a)中のE−E断面を示す側断面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備えるガス導入シャフト及びガス配管の構成例を模式的に示す概念図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備えるコントローラの概略構成例を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
図7図6における成膜工程で行う相対位置移動処理動作の詳細を示すフロー図である。
図8図6における成膜工程で行うガス供給排気処理動作の詳細を示すフロー図である。
図9】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の概要を模式的に示す説明図である。
図10】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の一構成例を示す説明図であり、(a)は要部構成を模式的に示す平面図、(b)は要部構成を模式的に示す側断面図である。
図11】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の一構成例を示す説明図であり、その要部構成を模式的に示す斜視図である。
図12】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の他の構成例を示す説明図であり、(a)は要部構成を模式的に示す平面図、(b)は要部構成を模式的に示す側断面図である。
図13】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部のさらに他の構成例を示す説明図であり、その要部構成を模式的に示す平面図である。
図14】本発明の第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部のさらに他の構成例の変形例を示す説明図であり、その要部構成を模式的に示す平面図である。
図15】本発明の第二実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の一構成例を示す説明図であり、その要部構成を模式的に示す側断面図である。
図16】本発明の第三実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の一構成例を示す説明図であり、その要部構成を模式的に示す平面図である。
図17】本発明の第四実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の一構成例を示す説明図であり、(a)は要部構成を模式的に示す平面図、(b)は要部構成を模式的に示す概念図である。
図18】本発明の第五実施形態に係る基板処理装置で行う成膜処理の一具体例を示す説明図であり、(a)はPoly−Si膜の膜厚分布の例を示す平面図、(b)はSiN膜の膜厚分布の例を示す平面図である。
図19】本発明の他の実施形態に係る基板処理装置における処理領域の区画態様の例を示す説明図であり、(a)はその一具体例を示す平面図、(b)は他の具体例を示す平面図である。
図20】本発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置における処理領域の区画態様の例を示す説明図であり、(a)はその一具体例を示す平面図、(b)は他の具体例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の第一実施形態>
以下に、本発明の第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の構成
図1は、第一実施形態に係るクラスタ型の基板処理装置の横断面図である。なお、本発明が適用される基板処理装置では、基板としてのウエハ200を搬送するキャリヤとしては、FOUP(Front Opening Unified Pod:以下、ポッドという。)が使用されている。本実施形態にかかるクラスタ型の基板処理装置の搬送装置は、真空側と大気側とに分かれている。本明細書中における「真空」とは工業的真空を意味する。なお、説明の便宜上、図1の真空搬送室103から大気搬送室108へ向かう方向を前側と呼ぶ。
【0012】
(真空側の構成)
クラスタ型の基板処理装置100は、内部を真空状態などの大気圧未満の圧力(例えば100Pa)に減圧可能なロードロックチャンバ構造に構成された第1搬送室としての真空搬送室103を備えている。真空搬送室103の筐体101は、平面視が例えば六角形で、上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。
【0013】
真空搬送室103の筐体101を構成する六枚の側壁のうち、前側に位置する二枚の側壁には、ゲートバルブ126,127を介して、ロードロック室122,123が真空搬送室103と連通可能にそれぞれ設けられている。
【0014】
真空搬送室103の他の四枚の側壁のうち、二枚の側壁には、ゲートバルブ244a,244bを介して、プロセスチャンバ202a,202bが真空搬送室103と連通可能にそれぞれ設けられている。プロセスチャンバ202a,202bは、後述する処理ガス供給系、不活性ガス供給系、排気系等が設けられている。プロセスチャンバ202a,202bは、後述するように、1つの反応容器内に複数の処理領域及び処理領域と同数のパージ領域が交互に配列されている。そして、反応容器内に設けられる基板載置部としてのサセプタを回転させて、基板であるウエハ200が処理領域及びパージ領域を交互に通過するように構成されている。このような構成とすることで、ウエハ200に処理ガス及び不活性ガスが交互に供給され、次のような基板処理が為される。具体的には、ウエハ200上へ薄膜を形成する処理や、ウエハ200表面を酸化、窒化、炭化等する処理や、ウエハ200表面をエッチングする処理等の各種基板処理が為される。
【0015】
真空搬送室103の残りの二枚の側壁には、ゲートバルブ244c,244dを介して、冷却室202c,202dが真空搬送室103と連通可能にそれぞれ設けられている。
【0016】
真空搬送室103内には、第1搬送機構としての真空搬送ロボット112が設けられている。真空搬送ロボット112は、ロードロック室122,123と、プロセスチャンバ202a,202bと、冷却室202c,202dとの間で、例えば2枚のウエハ200(図1中、点線で示す)を同時に搬送可能に構成されている。真空搬送ロボット112は、エレベータ115によって、真空搬送室103の気密性を維持しつつ昇降可能に構成されている。また、ロードロック室122,123のゲートバルブ126,127、プロセスチャンバ202a,202bのゲートバルブ244a,244b、冷却室202c,202dのゲートバルブ244c,244dのそれぞれの近傍には、ウエハ200の有無を検知する図示しないウエハ検知センサが設けられている。ウエハ検知センサを基板検知部とも呼ぶ。
【0017】
ロードロック室122,123は、内部が真空状態などの大気圧未満の圧力(減圧)に減圧可能なロードロックチャンバ構造に構成されている。すなわち、ロードロック室の前側には、ゲートバルブ128,129を介して、後述する第2搬送室としての大気搬送室121が設けられている。このため、ゲートバルブ126〜129を閉じてロードロック室122,123内部を真空排気した後、ゲートバルブ126,127を開けることで、真空搬送室103の真空状態を保持しつつ、ロードロック室122,123と真空搬送室103との間でウエハ200を搬送可能にしている。また、ロードロック室122,123は、真空搬送室103内へ搬入するウエハ200を一時的に収納する予備室として機能する。この際、ロードロック室122内では基板載置部140上に、ロードロック室123内では基板載置部141上にそれぞれウエハ200が載置されるように構成されている。
【0018】
(大気側の構成)
基板処理装置100の大気側には、略大気圧下で用いられる、第2搬送室としての大気搬送室121が設けられている。すなわち、ロードロック室122,123の前側(真空搬送室103と異なる側)には、ゲートバルブ128,129を介して、大気搬送室121が設けられている。なお、大気搬送室121は、ロードロック室122,123と連通可能に設けられている。
【0019】
大気搬送室121には、ウエハ200を移載する第2搬送機構としての大気搬送ロボット124が設けられている。大気搬送ロボット124は、大気搬送室121に設けられた図示しないエレベータによって昇降されるように構成されているとともに、図示しないリニアアクチュエータによって左右方向に往復移動されるように構成されている。また、大気搬送室121のゲートバルブ128,129の近傍には、ウエハ200の有無を検知する図示しないウエハ検知センサが設けられている。ウエハ検知センサを基板検知部とも呼ぶ。
【0020】
また、大気搬送室121内には、ウエハ200位置の補正装置として、ノッチ合わせ装置106が設けられている。ノッチ合わせ装置106は、ウエハ200の結晶方向や位置合わせ等をウエハ200のノッチで把握し、その把握した情報を元にウエハ200の位置を補正する。なお、ノッチ合わせ装置106の代わりに、図示しないオリフラ(Orientation Flat)合わせ装置が設けられてもよい。そして、大気搬送室121の上部には、クリーンエアを供給する図示しないクリーンユニットが設けられている。
【0021】
大気搬送室121の筐体125の前側には、ウエハ200を大気搬送室121内外に搬送する基板搬送口134と、ポッドオープナ108とが設けられている。基板搬送口134を挟んで、ポッドオープナ108と反対側、すなわち筐体125の外側にはロードポート(I/Oステージ)105が設けられている。ロードポート105上には、複数枚のウエハ200を収納するポッド109が載置されている。また、大気搬送室121内には、基板搬送口134を開閉する蓋135や、ポッド109のキャップ等を開閉させる開閉機構143と、開閉機構143を駆動する開閉機構駆動部136とが設けられている。ポッドオープナ108は、ロードポート105に載置されたポッド109のキャップを開閉することにより、ポッド109に対するウエハ200の出し入れを可能にする。また、ポッド109は図示しない搬送装置(RGV)によって、ロードポート105に対して、搬入(供給)及び搬出(排出)されるようになっている。
【0022】
主に、真空搬送室103、ロードロック室122,123、大気搬送室121、及びゲートバルブ126〜129により、本実施形態に係る基板処理装置100の搬送装置が構成される。
【0023】
また、基板処理装置100の搬送装置の構成各部には、後述する制御部としてのコントローラ221が電気的に接続されている。そして、上述した構成各部の動作を、それぞれ制御するように構成されている。
【0024】
(ウエハ搬送動作)
次に、第一実施形態に係る基板処理装置100内におけるウエハ200の搬送動作を説明する。なお、基板処理装置100の搬送装置の構成各部の動作は、制御部221によって制御される。
【0025】
まず、例えば25枚の未処理のウエハ200を収納したポッド109が、図示しない搬送装置によって基板処理装置100に搬入される。搬入されたポッド109は、ロードポート105上に載置される。開閉機構143は、蓋135及びポッド109のキャップを取り外し、基板搬送口134及びポッド109のウエハ出入口を開放する。
【0026】
ポッド109のウエハ出入口を開放すると、大気搬送室121内に設置されている大気搬送ロボット124は、ポッド109からウエハ200を1枚ピックアップして、ノッチ合わせ装置106上へ載置する。
【0027】
ノッチ合わせ装置106は、載置されたウエハ200を、水平の縦横方向(X方向,Y方向)及び円周方向に動かして、ウエハ200のノッチ位置等を調整する。ノッチ合わせ装置106で1枚目のウエハ200の位置を調整中に、大気搬送ロボット124は、2枚目のウエハ200をポッド109からピックアップして大気搬送室121内に搬入し、大気搬送室121内で待機する。
【0028】
ノッチ合わせ装置106により1枚目のウエハ200の位置調整が終了した後、大気搬送ロボット124は、ノッチ合わせ装置106上の1枚目のウエハ200をピックアップする。大気搬送ロボット124は、そのとき大気搬送ロボット124が保持している2枚目のウエハ200を、ノッチ合わせ装置106上へ載置する。その後、ノッチ合わせ装置106は、載置された2枚目のウエハ200のノッチ位置等を調整する。
【0029】
次に、ゲートバルブ128が開けられ、大気搬送ロボット124は、1枚目のウエハ200をロードロック室122内に搬入し、基板載置部140上に載置する。この移載作業中には、真空搬送室103側のゲートバルブ126は閉じられており、真空搬送室103内の減圧雰囲気は維持されている。1枚目のウエハ200の基板載置部140上への移載が完了すると、ゲートバルブ128が閉じられ、ロードロック室122内が図示しない排気装置によって負圧になるよう排気される。
【0030】
以降、大気搬送ロボット124は、上述の動作を繰り返す。但し、ロードロック室122が負圧状態の場合、大気搬送ロボット124は、ロードロック室122内へのウエハ200の搬入を実行せず、ロードロック室122の直前位置で停止して待機する。
【0031】
ロードロック室122内が予め設定された圧力値(例えば100Pa)に減圧されると、ゲートバルブ126が開けられて、ロードロック室122と真空搬送室103とが連通される。続いて、真空搬送室103内に配置された真空搬送ロボット112は、基板載置部140から1枚目のウエハ200をピックアップして、真空搬送室103内に搬入する。
【0032】
真空搬送ロボット112が基板載置部140から1枚目のウエハ200をピックアップした後、ゲートバルブ126が閉じられ、ロードロック室122内が大気圧に復帰させられ、ロードロック室122内に次のウエハ200を搬入するための準備が行われる。それと並行して、所定の圧力(例えば100Pa)にあるプロセスチャンバ202aのゲートバルブ244aが開けられ、真空搬送ロボット112が1枚目のウエハ200をプロセスチャンバ202a内に搬入する。この動作をプロセスチャンバ202a内にウエハ200が任意の枚数(例えば5枚)搬入されるまで繰り返す。プロセスチャンバ202a内への任意の枚数(例えば5枚)のウエハ200の搬入が完了したら、ゲートバルブ244aが閉じられる。そして、プロセスチャンバ202a内に後述するガス供給部から処理ガスが供給され、ウエハ200に所定の処理が施される。
【0033】
プロセスチャンバ202aにおいて所定の処理が終了し、後述するようにプロセスチャンバ202a内でウエハ200の冷却が終了すると、ゲートバルブ244aが開けられる。その後、真空搬送ロボット112によって、処理済のウエハ200がプロセスチャンバ202a内から真空搬送室103へ搬出される。搬出された後、ゲートバルブ244aが閉じられる。
【0034】
続いて、ゲートバルブ127が開けられ、プロセスチャンバ202aから搬出したウエハ200は、ロードロック室123内へ搬入されて、基板載置部141上に載置される。なお、ロードロック室123は、図示しない排気装置によって、予め設定された圧力値に減圧されている。そして、ゲートバルブ127が閉じられ、ロードロック室123に接続された図示しない不活性ガス供給部から不活性ガスが導入され、ロードロック室123内の圧力が大気圧に復帰させられる。
【0035】
ロードロック室123内の圧力が大気圧に復帰させられると、ゲートバルブ129が開けられる。続いて、大気搬送ロボット124が基板載置部141上から処理済みのウエハ200をピックアップして大気搬送室121内に搬出した後、ゲートバルブ129が閉じられる。その後、大気搬送ロボット124は、大気搬送室121の基板搬送口134を通して、処理済のウエハ200をポッド109に収納する。ここで、ポッド109のキャップは、最大25枚のウエハ200が戻されるまでずっと開け続けていてもよく、空きのポッド109に収納せずにウエハを搬出してきたポッド109に戻してもよい。
【0036】
前述の工程によってポッド109内の全てのウエハ200に所定の処理が施され、処理済みの25枚のウエハ200のすべてが所定のポッド109へ収納されると、ポッド109のキャップと、基板搬送口134の蓋135とが開閉機構143によって閉じられる。その後、ポッド109は、ロードポート105上から次の工程へ、図示しない搬送装置によって搬送される。以上の動作が繰り返されることにより、ウエハ200が25枚ずつ順次処理される。
【0037】
(2)プロセスチャンバの構成
続いて、第一実施形態に係る処理炉としてのプロセスチャンバ202aの構成について、主に図2図4を用いて説明する。
図2は、第一実施形態に係る基板処理装置が備える反応容器内の概略構成例を模式的に示す説明図である。図3は、第一実施形態に係る基板処理装置が備えるガス供給プレートの一構成例を示す説明図である。図4は、第一実施形態に係る基板処理装置が備えるガス導入シャフト及びガス配管の構成例を模式的に示す概念図である。
なお、プロセスチャンバ202bについては、プロセスチャンバ202aと同様に構成されているため、説明を省略する。
【0038】
(反応容器)
第一実施形態で説明する基板処理装置は、図示しない反応容器を備えている。反応容器は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)等の金属材料により密閉容器として構成されている。また、反応容器の側面には、図示しない基板搬入出口が設けられており、その基板搬入出口を介してウエハ200が搬送されるようになっている。さらに、反応容器には、図示しない真空ポンプや圧力制御器等のガス排気系が接続されており、そのガス排気系を用いて反応容器内を所定圧力に調整し得るようになっている。
【0039】
(基板載置台)
反応容器の内部には、図2に示すように、ウエハ200が載置される基板載置部としてのサセプタ217が設けられている。サセプタ217は、例えば円板状に形成され、その上面(基板載置面)に複数枚のウエハ200が円周方向に均等な間隔で載置されるように構成されている。また、基板載置台10は、加熱源としてのヒータ218を内包しており、そのヒータ218を用いてウエハ200の温度を所定温度(例えば室温〜1000℃程度)に維持し得るようになっている。さらに、サセプタ217には、図示しない温度センサが設けられている。なお、図例では五枚のウエハ200が載置されるように構成された場合を示しているが、これに限られることはなく、載置枚数は適宜設定されたものであればよい。例えば、載置枚数が多ければ処理スループットの向上が期待でき、載置枚数が少なければサセプタ217の大型化を抑制できる。サセプタ217における基板載置面は、ウエハ200と直接触れるため、例えば石英やアルミナ等の材質で形成することが望ましい。また、サセプタ217における基板載置面には、図示しない円形状の凹部を設けてもよい。この凹部は、その直径がウエハ200の直径よりもわずかに大きくなるように構成することが好ましい。この凹部内にウエハ200を載置することにより、ウエハ200の位置決めを容易に行うことができる。また、サセプタが回転する際、ウエハ200に遠心力が発生するが、ウエハ200を凹部内に載置することで、遠心力によるウエハ200の位置ずれを防ぐことができる。
【0040】
サセプタ217は、複数枚のウエハ200を支持した状態で回転可能に構成されている。具体的には、サセプタ217は、円板中心付近を回転軸とする回転駆動機構219に連結されており、その回転駆動機構219によって回転駆動されるようになっている。回転駆動機構219は、例えば、サセプタ217を回転可能に支持する回転軸受や、電動モータに代表される駆動源等を備えて構成することが考えられる。なお、ここでは、サセプタ217が回転可能に構成されている場合を例に挙げているが、サセプタ217上の各ウエハ200と後述するカートリッジヘッド300との相対位置を移動させ得れば、カートリッジヘッド300を回転させるように構成しても構わない。サセプタ217を回転可能に構成すれば、カートリッジヘッド300を回転させる場合とは異なり、後述するガス配管等の構成複雑化を抑制できる。これに対して、カートリッジヘッド300を回転させるようにすれば、サセプタ217を回転させる場合に比べて、ウエハ200に作用する慣性モーメントを抑制でき、回転速度を大きくすることができる。
【0041】
(カートリッジヘッド)
また、反応容器の内部において、サセプタ217の上方側には、カートリッジヘッド300が設けられている。カートリッジヘッド300は、サセプタ217上のウエハ200に対して、その上方側から各種ガス(原料ガス、反応ガスまたはパージガス)を供給するとともに、供給した各種ガスを上方側へ排気するためのものである。
【0042】
各種ガスの上方供給/上方排気を行うために、カートリッジヘッド300は、サセプタ217に対応して平面視円形状に形成されたガス供給プレート310と、そのガス供給プレート310から反応容器を貫通して容器外まで延びるガス導入シャフト320と、を備えている。なお、カートリッジヘッド300を構成するガス供給プレート310及びガス導入シャフト320は、いずれも、例えばAlやSUS等の金属材料または石英やアルミナ等のセラミックス材料によって形成されている。
【0043】
(ガス供給プレート)
ガス供給プレート310は、サセプタ217上に形成される処理空間に対して各種ガスを供給するために用いられるものである。そのために、ガス供給プレート310は、サセプタ217と対向する円板状の処理空間天板部311と、その処理空間天板部311の外周端縁部分からサセプタ217の側に向けて延びる円筒状の外筒部312と、を有している。そして、外筒部312に囲われた処理空間天板部311とサセプタ217との間には、サセプタ217上に載置されたウエハ200に対する処理を行うための処理空間が当該サセプタ217と対向するように形成されるようになっている。
【0044】
ガス供給プレート310によってサセプタ217上に形成される処理空間は、複数の処理領域に区画されている(図中の記号A,B及びP参照)。具体的には、例えば図3(a)に示すように、複数の処理領域として、原料ガス供給領域313(図中の記号A)と反応ガス供給領域314(図中の記号B)とをそれぞれ二つ以上(具体的には四つずつ)有するとともに、原料ガス供給領域313と反応ガス供給領域314との間に介在する不活性ガス供給領域315(図中の記号P)を有する。
後述するように、原料ガス供給領域313内は、処理ガスの一つである原料ガスが供給され、原料ガス雰囲気となる。反応ガス供給領域314内は、処理ガスの他の一つである反応ガスが供給され、反応ガス雰囲気となる。なお、反応ガスをプラズマ状態にすると、反応ガス供給領域314内は、プラズマ状態の反応ガス雰囲気または活性化された反応ガス雰囲気となる。不活性ガス供給領域315内は、パージガスとしての不活性ガスが供給され、不活性ガス雰囲気となる。
このように区画された処理空間では、それぞれの領域313〜315内に供給されるガスに応じて、ウエハ200に対して所定の処理が施される。
【0045】
また、ガス供給プレート310によって形成される処理空間には、当該処理空間を各領域313〜315に区画するために、分割構造体が設けられている。
分割構造体としては、例えば、各領域313〜315の間に、処理空間天板部311の内周側から外周側に向けて放射状に延びるように配された排気領域316が設けられている。排気領域316は、後述するように排気管318に接続されている。
なお、排気領域316には、分割構造体としての仕切板を設けてもよい。仕切板は、処理空間天板部311からサセプタ217の側に向けて延びるように設け、その下端がサセプタ217上のウエハ200と干渉しない程度に当該サセプタ217に近付けて配置される。これにより、仕切板とサセプタ217との間を通過するガスが少なくなり、各領域313〜315の間でガスが混合することが抑制される。
また、分割構造体は、各領域313〜315を区画し得るものであれば、仕切板ではなく、ウエハ200の上方側の空間容積を変える構造体であってもよい。例えば、ウエハ200と処理空間天板部311との間の距離を、不活性ガス供給領域315<原料ガス供給領域313、及び、不活性ガス供給領域315<反応ガス供給領域314とすることで、不活性ガス供給領域315の空間容積を原料ガス供給領域313や反応ガス供給領域314等の空間容積よりも小さくすることができる。このようにした場合であっても、原料ガス及び反応ガスが不活性ガス供給領域315に侵入することを抑制することができ、各領域313〜315を区画することができる。
【0046】
このような分割構造体によって区画される各領域313〜315のそれぞれには、図3(b)または(c)に示すように、ガス分配管317が連通しており、そのガス分配管317を通じてガスが供給されるようになっている。つまり、ガス供給プレート310には、複数のガス供給領域313〜315のぞれぞれと個別に連通するガス分配管317(すなわち当該ガス供給領域313〜315と同数のガス分配管317)が設けられている。なお、ガス分配管317は、図3(b)または(c)に示すように、処理空間天板部311に内蔵されるように配されていてもよいが、これに限られることはなく、処理空間天板部311の上方に露出するように配されていてもよい。
【0047】
また、ガス供給プレート310には、図3(d)に示すように、複数の排気領域316のそれぞれと個別に連通するガス排気管318が設けられており、そのガス排気管318を通じて各排気領域316内のガスが排気されるようになっている。ガス排気管318は、各排気領域316の内周側に位置するように設けられている。そして、ガス供給プレート310の円周中心近傍で一つに集合し、その集合した管が上方に向けて延びるように形成されている。
【0048】
なお、排気はガス排気管318からだけ行うのではなく、反応容器の内部全体を排気するための排気管も別途設けてもよい。
【0049】
(プラズマ生成部)
なお、分割構造体によって区画される各領域313〜315のうち、反応ガスが供給される反応ガス供給領域314には、供給された処理ガスをプラズマ状態とするプラズマ生成部が設けられている。処理ガスをプラズマ状態とすることで、反応ガス供給領域314では、低温でウエハ200の処理を行うことができるようになる。なお、プラズマ生成部については、その詳細を後述する。
【0050】
(ガス導入シャフト)
ガス導入シャフト320は、サセプタ217上に形成される処理空間に対して各種ガスを導入するために用いられるものである。そのために、ガス導入シャフト320は、図2に示すように、ガス供給プレート310と同軸の円柱シャフト状に形成されている。そして、ガス導入シャフト320のシャフト下部に、ガス供給プレート310が装着される。
【0051】
ガス導入シャフト320のシャフト内部には、図4に示すように、複数のガス導入管323a〜323cが設けられているとともに、シャフト中心にガス排気管324が設けられている。ガス導入管323a〜323cの数は、ガス供給プレート310がサセプタ217上のウエハ200に対して供給するガスの種類数に対応しているものとする。例えば、原料ガス、反応ガス及びパージガスの三種のガスをウエハ200に対して供給する場合であれば、ガス導入管323a〜323cについても三種のガスのそれぞれに対応して設けられる。
【0052】
ガス導入管323a〜323cは、互いに異なる種類のガス(例えば、原料ガス、反応ガスまたはパージガスのいずれか)が流れるものであり、それぞれの種類のガスを各ガス供給領域313〜315に個別に導入するためのものである。そのために、ガス導入管323a〜323cは、ガス導入シャフト320へのガス供給プレート310の装着時に、当該ガス供給プレート310におけるガス分配管317と連通することになる。具体的には、原料ガスが流れるガス導入管323aは、原料ガス供給領域313へ通じるガス分配管317と連通する。また、反応ガスが流れるガス導入管323bは、反応ガス供給領域314へ通じるガス分配管317と連通する。また、パージガスが流れるガス導入管323cは、不活性ガス供給領域315へ通じるガス分配管317と連通する。
【0053】
ガス排気管324は、ガス導入シャフト320へのガス供給プレート310の装着時に、そのガス供給プレート310におけるガス排気管318の集合部分と連通するように構成されている。このように、ガス排気管324をガス導入シャフト320のシャフト中心に設ければ、そのガス排気管324を大径化することが容易となるので、大径化の結果としてガス排気管324における排気コンダクタンスを最大化させ得るようになる。
【0054】
なお、サセプタ217とカートリッジヘッド300との相対位置移動にあたり、カートリッジヘッド300を回転させるように構成されている場合には、ガス導入シャフト320が貫通する反応容器の天井部33と、そのガス導入シャフト320の円柱外周面に設けられたフランジ部325との間に、磁性流体シール331が配されるものとする。
【0055】
(ガス供給/排気系)
以上のようなガス導入シャフト320には、サセプタ217上のウエハ200に対して各種ガスの供給/排気を行うために、以下に述べるガス供給/排気系が接続されている。
【0056】
(原料ガス供給部)
ガス導入シャフト320のガス導入管323aには、原料ガス供給管411が接続されている。原料ガス供給管411には、上流方向から順に、原料ガス供給源412、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)413、及び、開閉弁であるバルブ414が設けられている。このような構成により、ガス導入管323aには、原料ガスが供給されることになる。
【0057】
原料ガスは、ウエハ200に対して供給する処理ガスの一つであり、例えばチタニウム(Ti)元素を含む金属液体原料であるTiCl(Titanium Tetrachloride)を気化させて得られる原料ガス(すなわちTiClガス)である。原料ガスは、常温常圧で固体、液体または気体のいずれであってもよい。原料ガスが常温常圧で液体の場合は、原料ガス供給源412とMFC413との間に、図示しない気化器を設ければよい。さらに、原料ガス供給源412からガス導入シャフト320に至る部品全体にヒータを設けて、加熱可能に構成し、気体の気化状態を維持できる構成してもよい。ここでは原料ガスが気体であるものとして説明する。
【0058】
なお、原料ガス供給管411には、原料ガスのキャリアガスとして作用する不活性ガスを供給するための図示しないガス供給系が接続されていてもよい。キャリアガスとして作用する不活性ガスは、具体的には、例えば、窒素(N)ガスを用いることができる。また、Nガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0059】
主に、原料ガス供給管411、MFC413、及び、バルブ414により、原料ガス供給部が構成される。なお、原料ガス供給源412を原料ガス供給部の構成に加えてもよい。
【0060】
(反応ガス供給部)
ガス導入シャフト320のガス導入管323bには、反応ガス供給管421が接続されている。反応ガス供給管421には、上流方向から順に、反応ガス供給源422、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)423、開閉弁であるバルブ424が設けられている。このような構成により、ガス導入管323bには、反応ガスが供給されることになる。
【0061】
反応ガスは、ウエハ200に対して供給する処理ガスの他の一つであり、例えばアンモニア(NH)ガスが用いられる。
【0062】
なお、反応ガス供給管421には、反応ガスのキャリアガスまたは希釈ガスとして作用する不活性ガスを供給するための図示しないガス供給系が接続されていてもよい。キャリアガスまたは希釈ガスとして作用する不活性ガスは、具体的には、例えば、Nガスを用いることが考えられるが、Nガスのほか、例えばHeガス、Neガス、Arガス等の希ガスを用いてもよい。
【0063】
主に、反応ガス供給管421、MFC423、及び、バルブ424により、反応ガス供給部が構成される。なお、反応ガス供給源422を反応ガス供給部の構成に加えてもよい。
【0064】
(不活性ガス供給部)
ガス導入シャフト320のガス導入管323cには、不活性ガス供給管431が接続されている。不活性ガス供給管431には、上流方向から順に、不活性ガス供給源432、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)433、及び、開閉弁であるバルブ434が設けられている。このような構成により、ガス導入管323cには、不活性ガスが供給されることになる。
【0065】
不活性ガスは、原料ガスと反応ガスとがウエハ200の面上で混在しないようにするためのパージガスとして作用するものである。具体的には、例えば、Nガスを用いることができる。また、Nガスのほか、例えばHeガス、Neガス、Arガス等の希ガスを用いてもよい。
【0066】
主に、不活性ガス供給管431、不活性ガス供給源432、MFC433、及び、バルブ434により、不活性ガス供給部が構成される。
【0067】
(ガス排気部)
ガス導入シャフト320のシャフト中心に設けられたガス排気管324には、その上端近傍位置にて、ガス排気管441が接続されている。ガス排気管441には、バルブ442が設けられている。また、ガス排気管441において、バルブ442の下流側には、処理空間内を図示せぬ圧力センサの検出結果に基づき所定圧力に制御する圧力制御器443が設けられている。さらに、ガス排気管441において、圧力制御器443の下流側には、真空ポンプ444が設けられている。このような構成により、ガス排気管324内からガス導入シャフト320の外方へのガス排気が行われる。なお、基板処理装置の内部全体を排気するための排気管もバルブ442に合流するか、あるいは別途バルブを設けて真空ポンプ444に合流させてもよい。
【0068】
主に、ガス排気管441、バルブ442、圧力制御器443、真空ポンプ444により、ガス排気部が構成される。
【0069】
(コントローラ)
また図1に示すように、第一実施形態に係る基板処理装置は、当該基板処理装置の各部の動作を制御するコントローラ221を有している。
【0070】
図5は、第一実施形態に係る基板処理装置が備えるコントローラの概略構成例を示すブロック図である。
図例のように、制御部(制御手段)であるコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置228が接続されている。
【0071】
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置221c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ221に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0072】
I/Oポート221dは、上述のMFC413〜433、バルブ414〜434,442、ガス排気部における圧力センサ245、圧力制御器443及び真空ポンプ444、サセプタ217におけるヒータ218、温度センサ274、回転駆動機構219及びヒータ電源225、並びに、プラズマ生成部における高周波電源341及び整合器342等に接続されている。
【0073】
CPU221aは、記憶装置221cから制御プログラムを読み出して実行するとともに、入出力装置228からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU221aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC413〜433による各種ガスの流量調整動作、バルブ414〜434,442の開閉動作、圧力制御器443の開閉及び圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ274に基づくヒータ218の温度調整動作、真空ポンプ444の起動・停止、回転駆動機構219の回転速度調節動作、高周波電源341の電力供給、ヒータ電源225による電力供給等を制御したり、整合器342によるインピーダンス制御を行うように構成されている。
【0074】
なお、コントローラ221は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)229を用意し、係る外部記憶装置229を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ221を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置229を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置229を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置221cや外部記憶装置229は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置221c単体のみを含む場合、外部記憶装置229単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0075】
(3)基板処理工程
続いて、第一実施形態にかかる半導体製造工程の一工程として、上述した反応容器を備えるプロセスチャンバ202aを用いて実施される基板処理工程について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置100のプロセスチャンバ202aの構成各部の動作は、コントローラ221により制御される。
【0076】
ここでは、原料ガス(第一の処理ガス)としてTiClを気化させて得られるTiClガスを用い、反応ガス(第二の処理ガス)としてNHガスが用いて、それらを交互に供給することによってウエハ200上に金属薄膜としてTiN膜を形成する例について説明する。
【0077】
(基板処理工程における基本的な処理動作)
先ず、ウエハ200上に薄膜を形成する基板処理工程における基本的な処理動作について説明する。
図6は、第一実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
【0078】
(基板搬入工程:S101)
プロセスチャンバ202aでは、先ず、基板搬入工程(S101)として、ゲートバルブ244aを開き、真空搬送ロボット112を用いて、反応容器内に所定枚数(例えば5枚)のウエハ200を搬入する。そして、サセプタ217の回転軸を中心として、各ウエハ200が重ならないように、サセプタ217の同一面上に載置する。そして、真空搬送ロボット112を反応容器の外へ退避させ、ゲートバルブ244aを閉じて反応容器内を密閉する。
【0079】
(圧力温度調整工程:S102)
基板搬入工程(S101)の後は、次に、圧力温度調整工程(S102)を行う。圧力温度調整工程(S102)では、基板搬入工程(S101)で反応容器内を密閉した後に、反応容器に接続されている図示しないガス排気系を作動させて、反応容器内が所定圧力となるように制御する。所定圧力は、後述する成膜工程(S103)においてTiN膜を形成可能な処理圧力であり、例えばウエハ200に対して供給する原料ガスが自己分解しない程度の処理圧力である。具体的には、処理圧力は50〜5000Paとすることが考えられる。この処理圧力は、後述する成膜工程(S103)においても維持されることになる。
【0080】
また、圧力温度調整工程(S102)では、サセプタ217の内部に埋め込まれたヒータ218に電力を供給し、ウエハ200の表面が所定温度となるよう制御する。この際、ヒータ218の温度は、温度センサ274により検出された温度情報に基づいてヒータ218への通電具合を制御することによって調整される。所定温度は、後述する成膜工程(S103)において、TiN膜を形成可能な処理温度であり、例えばウエハ200に対して供給する原料ガスが自己分解しない程度の処理温度である。具体的には、処理温度は室温以上500℃以下、好ましくは室温以上400℃以下とすることが考えられる。この処理温度は、後述する成膜工程(S103)においても維持されることになる。
【0081】
(成膜工程:S103)
圧力温度調整工程(S102)の後は、次に、成膜工程(S103)を行う。成膜工程(S103)で行う処理動作としては、大別すると、相対位置移動処理動作と、ガス供給排気処理動作とがある。なお、相対位置移動処理動作及びガス供給排気処理動作については、詳細を後述する。
【0082】
(基板搬出工程:S104)
以上のような成膜工程(S103)の後は、次に、基板搬出工程(S104)を行う。基板搬出工程(S104)では、既に説明した基板搬入工程(S101)の場合と逆の手順で、真空搬送ロボット112を用いて処理済のウエハ200を反応容器外へ搬出する。
【0083】
(処理回数判定工程:S105)
ウエハ200の搬出後、コントローラ40は、基板搬入工程(S101)、圧力温度調整工程(S102)、成膜工程(S103)及び基板搬出工程(S104)の一連の各工程の実施回数が所定の回数に到達したか否かを判定する(S105)。所定の回数に到達していないと判定したら、次に待機しているウエハ200の処理を開始するため、基板搬入工程(S101)に移行する。また、所定の回数に到達したと判定したら、必要に応じて反応容器内等に対するクリーニング工程を行った後に、一連の各工程を終了する。なお、クリーニング工程については、公知技術を利用して行うことができるため、ここではその説明を省略する。
【0084】
(相対位置移動処理動作)
次に、成膜工程(S103)で行う相対位置移動処理動作について説明する。相対位置移動処理動作は、例えばサセプタ217を回転させて、そのサセプタ217上に載置された各ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置を移動させる処理動作である。
図7は、図6における成膜工程で行う相対位置移動処理動作の詳細を示すフロー図である。
【0085】
成膜工程(S103)で行う相対位置移動処理動作では、先ず、回転駆動機構219によってサセプタ217を回転駆動することで、サセプタ217とカートリッジヘッド300との相対位置移動を開始する(S201)。これにより、サセプタ217に載置された各ウエハ200は、カートリッジヘッド300のガス供給プレート310における各ガス供給領域313〜315の下方側を順に通過することになる。
【0086】
このとき、カートリッジヘッド300においては、詳細を後述するガス供給排気処理動作が開始されている。これにより、ガス供給プレート310における各原料ガス供給領域313には原料ガス(TiClガス)が供給され、各反応ガス供給領域314には反応ガス(NHガス)が供給されることになる。
【0087】
ここで、ある一つのウエハ200に着目すると、サセプタ217の回転開始により、そのウエハ200は、原料ガス供給領域313を通過する(S202)。このとき、原料ガス供給領域313は、原料ガスが自己分解しない程度の処理圧力、処理温度に調整されている。そのため、ウエハ200が原料ガス供給領域313を通過すると、そのウエハ200の面上には、原料ガス(TiClガス)のガス分子が吸着することになる。なお、ウエハ200が原料ガス供給領域313を通過する際の通過時間、すなわち原料ガスの供給時間は、例えば0.1〜20秒となるように調整されている。
【0088】
原料ガス供給領域313を通過すると、ウエハ200は、不活性ガス(Nガス)が供給される不活性ガス供給領域315を通過した後に、続いて、反応ガス供給領域314を通過する(S203)。このとき、反応ガス供給領域314には、反応ガス(NHガス)が供給されている。そのため、ウエハ200が反応ガス供給領域314を通過すると、そのウエハ200の面上には、反応ガスが均一に供給され、ウエハ200上に吸着している原料ガスのガス分子と反応して、ウエハ200上に1原子層未満(1Å未満)のTiN膜を生成する。ウエハ200が反応ガス供給領域314を通過する際の通過時間、すなわち反応ガスの供給時間は、例えば0.1〜20秒となるように調整されている。
【0089】
なお、最初のTiCl−NHのサイクルが全てのウエハ200に均一に行われるようにするため、全てのウエハ200が、原料ガス供給領域313を通過するまで、反応ガス供給領域314へのNHガスの供給を停止させて、全てのウエハ200にTiClが吸着した上で、NHが供給されるように構成してもよい。
【0090】
なお、このとき、反応ガス供給領域314では、反応ガスをプラズマ状態にしてウエハ200に供給されるようにする。反応ガスをプラズマ状態にすることで、さらに低温での処理が可能となる。
【0091】
以上のような原料ガス供給領域313の通過動作及び反応ガス供給領域314の通過動作を1サイクルとして、コントローラ40は、このサイクルを所定回数(nサイクル)実施したか否かを判定する(S204)。このサイクルを所定回数実施すると、ウエハ200上には、所望膜厚の窒化チタン(TiN)膜が形成される。つまり、成膜工程(S103)では、相対位置移動処理動作を行うことによって、異なる処理ガスをウエハ200に対して交互に供給する工程を繰り返すサイクリック処理動作を行うのである。また、成膜工程(S103)では、サセプタ217に載置された各ウエハ200のそれぞれにサイクリック処理動作を行うことで、各ウエハ200に対して同時並行的にTiN膜を形成するのである。
【0092】
そして、所定回数のサイクリック処理動作を終了すると、コントローラ40は、回転駆動機構219によるサセプタ217の回転駆動を終了し、サセプタ217とカートリッジヘッド300との相対位置移動を停止する(S205)。これにより、相対位置移動処理動作が終了することになる。なお、所定回数のサイクリック処理動作を終了したら、ガス供給排気処理動作についても終了することになる。
【0093】
(ガス供給排気処理動作)
次に、成膜工程(S103)で行うガス供給排気処理動作について説明する。ガス供給排気処理動作は、サセプタ217上のウエハ200に対して各種ガスの供給/排気を行う処理動作である。
図8は、図6における成膜工程で行うガス供給排気処理動作の詳細を示すフロー図である。
【0094】
成膜工程(S103)で行うガス供給排気処理動作では、先ず、ガス排気工程(S301)を開始する。ガス排気工程(S301)では、真空ポンプ444を作動させつつバルブ442を開状態とする。これにより、ガス排気工程(S301)では、ガス供給プレート310における各排気領域316から各ガス供給領域313〜315内のガスを、各排気領域316に連通するガス排気管318、ガス排気管318の集合部分と連通するガス導入シャフト320のガス排気管324、及び、ガス排気管324の上端近傍位置に接続されたガス排気管441を通じて、反応容器外へ排気することになる。このとき、ガス供給領域313〜315と排気領域316における圧力は、圧力制御器443によって所定圧力となるように制御される。また、基板処理装置の内部全体を排気する排気口は、ガス供給プレート310の外部に拡散したガスを速やかに排気することになる。
【0095】
ガス排気工程(S301)の開始後は、次いで、不活性ガス供給工程(S302)を開始する。不活性ガス供給工程(S302)では、不活性ガス供給管431におけるバルブ434を開状態とするとともに、流量が所定流量となるようにMFC433を調整する。これにより、不活性ガス供給工程(S302)では、不活性ガス供給管431が接続されたガス導入シャフト320のガス導入管323cへ不活性ガス(Nガス)が流入し、さらにそのガス導入管323cと連通するガス分配管317を通じて不活性ガス供給領域315内に不活性ガスを供給する。不活性ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmである。このような不活性ガス供給工程(S302)を行うと、原料ガス供給領域313と反応ガス供給領域314との間に介在する不活性ガス供給領域315には、不活性ガスによるエアカーテンが形成されることになる。
【0096】
不活性ガス供給工程(S302)の開始後は、次いで、原料ガス供給工程(S303)及び反応ガス供給工程(S304)を開始する。
【0097】
原料ガス供給工程(S303)に際しては、原料(TiCl)を気化させて原料ガス(すなわちTiClガス)を生成(予備気化)させておく。原料ガスの予備気化は、既に説明した基板搬入工程(S101)や圧力温度調整工程(S102)等と並行して行ってもよい。原料ガスを安定して生成させるには、所定の時間を要するからである。
【0098】
そして、原料ガスを生成したら、原料ガス供給工程(S303)では、原料ガス供給管411におけるバルブ414を開状態とするとともに、流量が所定流量となるようにMFC413を調整する。これにより、原料ガス供給工程(S303)では、原料ガス供給管411が接続されたガス導入シャフト320のガス導入管323aへ原料ガス(TiClガス)が流入し、さらにそのガス導入管323aと連通するガス分配管317を通じて原料ガス供給領域313内に原料ガスを供給する。原料ガスの供給流量は、例えば10〜3000sccmである。
【0099】
このとき、原料ガスのキャリアガスとして、不活性ガス(Nガス)を供給してもよい。その場合の不活性ガスの供給流量は、例えば10〜5000sccmである。
【0100】
このような原料ガス供給工程(S303)を行うと、原料ガス(TiClガス)は、原料ガス供給領域313内の全域に均等に拡がる。そして、既にガス排気工程(S301)が開始されていることから、原料ガス供給領域313内に拡がった原料ガスは、排気領域316に連通するガス排気管318により原料ガス供給領域313内から排気領域316を介して排気される。しかも、このとき、隣接する不活性ガス供給領域315には、不活性ガス供給工程(S302)の開始により、不活性ガスのエアカーテンが形成されている。そのため、原料ガス供給領域313内に供給された原料ガスは、排気領域316から隣接する不活性ガス供給領域315の側に漏れ出てしまうことがない。
【0101】
また、反応ガス供給工程(S304)では、反応ガス供給管421におけるバルブ424を開状態とするとともに、流量が所定流量となるようにMFC423を調整する。これにより、反応ガス供給工程(S304)では、反応ガス供給管421が接続されたガス導入シャフト320のガス導入管323bへ反応ガスが流入し、さらにそのガス導入管323bと連通するガス分配管317を通じて反応ガス供給領域314内に反応ガスを供給する。反応ガスの供給流量は、例えば10〜10000sccmである。
【0102】
なお、最初のTiCl−NHのサイクルが全てのウエハ200に均一に行われるようにするため、全てのウエハ200が、原料ガス供給領域313を通過するまで、反応ガス供給領域314へのNHガスの供給を停止させて、全てのウエハ200にTiClが吸着した上で、NHが供給されるように構成してもよい。
【0103】
このとき、反応ガスのキャリアガスまたは希釈ガスとして、不活性ガス(Nガス)を供給してもよい。その場合の不活性ガスの供給流量は、例えば10〜5000sccmである。
【0104】
なお、反応ガス供給工程(S304)では、反応ガス(NHガス)を活性化し、プラズマを発生させて、プラズマ状態の反応ガスをウエハ200に対して供給する。
【0105】
このような反応ガス供給工程(S304)を行うと、反応ガス(NHガス)は、反応ガス供給領域314内の全域に均等に拡がる。そして、既にガス排気工程(S301)が開始されていることから、反応ガス供給領域314内に拡がった反応ガスは、排気領域316に連通するガス排気管318により反応ガス供給領域314内から排気領域316を介して排気される。しかも、このとき、隣接する不活性ガス供給領域315には、不活性ガス供給工程(S302)の開始により、不活性ガスのエアカーテンが形成されている。そのため、反応ガス供給領域314内に供給された反応ガスは、排気領域316から隣接する不活性ガス供給領域315の側に漏れ出てしまうことがない。
【0106】
上述した各工程(S301〜S304)は、成膜工程(S103)の間、順次または並行して行うものとする。ただし、その開始タイミングは、不活性ガスによるシール性向上のために上述した順で行うことが考えられるが、必ずしもこれに限られることはなく、目標とする所定の膜厚が1原子層以下(1Å)の誤差を気にする必要がなければ、各工程(S301〜S304)を同時に開始しても構わない。ただし、膜の種類によっては、最初に吸着させるガスによって、ウエハ200毎に膜厚や膜質に差を生じることがあるため、ウエハ200に対して、最初に曝すガスは同じにすることが望ましい。
【0107】
上述した各工程(S301〜S304)を並行して行うことで、成膜工程(S103)では、サセプタ217に載置された各ウエハ200が、原料ガス雰囲気となった原料ガス供給領域313の下方と、反応ガス雰囲気となった反応ガス供給領域314の下方とを、それぞれ順に通過することになる。しかも、原料ガス供給領域313と反応ガス供給領域314との間には不活性ガス雰囲気となった不活性ガス供給領域315及び排気領域316が介在していることから、各ウエハ200に対して供給した原料ガスと反応ガスとが混在してしまうこともない。
【0108】
ガス供給排気処理動作を終了する際には、先ず、原料ガス供給工程を終了するとともに(S305)、反応ガス供給工程を終了する(S306)。そして、不活性ガス供給工程を終了した後に(S307)、ガス排気工程を終了する(S308)。ただし、これらの各工程(S305〜S308)の終了タイミングについても上述した開始タイミングと同様であり、それぞれを異なるタイミングで終了してもよいし、同時に終了してもよい。
【0109】
(4)プラズマ生成
次に、上述した基板処理工程において、反応ガス供給領域314へ供給する反応ガス(NHガス)をプラズマ状態にする処理について、プラズマ生成部の構成と併せて、詳しく説明する。
【0110】
プラズマ生成部は、反応ガス供給領域314へ供給する反応ガス(NHガス)をプラズマ状態にして当該反応ガスの活性種を生成するものである。活性種とは、反応性の高い反応中間体のことであり、例えば高反応性粒子であるラジカルがこれに相当する。このような活性種の働きにより、プラズマの反応性が高くなる。
つまり、プラズマ生成部は、反応ガスをプラズマ状態にして当該反応ガスの活性種を生成することで、本発明におけるプラズマ生成機構として機能することになる。
【0111】
(プラズマ生成部の構成)
以下に、プラズマ生成機構としてのプラズマ生成部の構成について、主に図9図14を用いて説明する。
図9は、第一実施形態に係る基板処理装置におけるプラズマ生成部の概要を模式的に示す説明図である。図10は、第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の一構成例を示す説明図である。図11は、第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の要部構成を模式的に示す斜視図である。図12は、第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の他の構成例を示す説明図である。図13は、第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部のさらに他の構成例を示す説明図である。図14は、第一実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部のさらに他の構成例の変形例を示す説明図である。
【0112】
図9に示すように、プラズマ生成部は、反応ガス供給領域314へ供給する反応ガスをプラズマ状態にするために、当該反応ガス供給領域314内に配置された被高周波電力供給部としての平板電極351を備えている。平板電極351には、高周波電源341からの高周波電力が供給される。なお、図例では図示を簡略化すべく平板電極351が一つの反応ガス供給領域314のみに配されている場合を示しているが、実際には分割構造体によって区画される全ての反応ガス供給領域314に対して平板電極351が設けられているものとする。
【0113】
ところで、ガス供給プレート310における分割構造体は、サセプタ217の円周状中心から放射状に各領域313〜315を形成するように配置されている。これにより、反応ガス供給領域314は、分割構造体によって、例えば平面視扇状に区画されることになる。したがって、反応ガス供給領域314内に配置される平板電極351についても、反応ガス供給領域314の平面形状に対応した形状(例えば平面視扇状)に形成される。つまり、平板電極351の平面形状は、必ずしも反応ガス供給領域314の全域にわたって均等な大きさとはならず、当該反応ガス供給領域314の各部分で偏った大きさとなる。
【0114】
このように、平板電極351の平面形状が反応ガス供給領域314の各部分で偏った大きさであると、その平板電極351を用いて反応ガス供給領域314内の反応ガスをプラズマ状態にした場合に、プラズマが平板電極351の面積が大きい側に偏ってしまうといったことが起こり得る。図例の場合であれば、面積が大きい外周側にプラズマが集中するような偏りが生じ得る。このようなプラズマ分布の偏りが生じてしまうと、ウエハ200上に形成する膜の膜厚や膜質等について面内均一性の低下を招くおそれがある。
また、反応容器内では、処理対象のウエハ200が各領域313〜315を順に通過するようにサセプタ217を回転移動させるので、その回転の際の内周側と外周側とではウエハ200に対するガス暴露量に差が生じ得る。そのため、反応ガスをプラズマ状態にする場合に、反応ガス供給領域314の各部分でのガス暴露量の差を考慮してプラズマ分布を調整しないと、結果としてウエハ200上に形成する膜の膜厚や膜質等について面内均一性の低下を招くおそれがある。
【0115】
そこで、第一実施形態で説明するプラズマ生成部は、ウエハ200上に形成する膜の面内均一性の低下を抑制すべく、反応ガス供給領域314におけるプラズマ分布を部分的に調整できるように構成されている。
【0116】
具体的には、図9及び図10(a)に示すように、反応ガス供給領域314での面内均一性を調整するために、ウエハ200と対向するように配された平板電極351が、サセプタ217の回転径方向において多分割されている。平板電極351の分割数については、当該分割数が多ければ面内均一性の調整を精緻に行えるが、当該分割数が多くなるほど構成の複雑化を招く。そのため、平板電極351は、少なくとも二分割以上、好ましくは三分割されているものとする。つまり、本実施形態において、平板電極351は、反応ガス供給領域314内における内周側の部分(以下「第一ゾーン」という。)に配された平板電極351aと、反応ガス供給領域314内で第一ゾーンに隣接してその外周側に位置する部分(以下「第二ゾーン」という。)に配された平板電極351bと、反応ガス供給領域314内で第二ゾーンよりもさらに外周側に位置する部分(以下「第三ゾーン」という。)に配された平板電極351cと、に三分割されている。このように、本実施形態において、プラズマ生成部は、反応ガス供給領域314の部分別に個別に設けられた複数の平板電極(被高周波電力供給部)351a〜351cを備えている。
【0117】
また、プラズマ生成部は、複数の平板電極351a〜351cのそれぞれに対応して設けられたインピーダンス調整部352a〜352cを備えている。インピーダンス調整部352a〜352cは、各平板電極351a〜351cのそれぞれに供給される電力を調整するものである。インピーダンス調整部352a〜352cとしては、公知の電気回路によって構成されたものを用いればよい。各インピーダンス調整部352a〜352cは、高周波電源341及び整合器342に接続されている。このようなインピーダンス調整部352a〜352cを備えることで、各平板電極351a〜351cには、それぞれに異なる電力が供給され得るようになる。なお、各平板電極351a〜351cに対して異なる電力の供給が可能であれば、インピーダンス調整部352a〜352cを設けるのではなく、各平板電極351a〜351cのそれぞれに個別の高周波電源を接続するようにしてもよい。ただし、一つの高周波電源341から分配し、途中にインピーダンス調整部352a〜352cを配して調整したほうが、装置構成の複雑化や装置コストの上昇等を抑制する上では好ましい。
【0118】
また、プラズマ生成部は、図10(b)に示すように、各平板電極351a〜351cとウエハ200との間に配された接地電極353を備えている。接地電極353は、電気的に接地されている。このような接地電極353を備えることで、各平板電極351a〜351cに高周波電源341からの高周波電力を供給すると、各平板電極351a〜351cと接地電極353との間にプラズマが発生することになる。なお、接地電極353は、一枚板で形成して各平板電極351a〜351cで共用するようにしても良いし、平板電極351と同様に多分割して各平板電極351a〜351cのそれぞれに個別に対向させるようにしても良い。また、接地電極353を分割する場合には、各平板電極351a〜351cと接地電極353との間のバイアスを個別に調整するようにしてもよい。
【0119】
このような平板電極351及び接地電極353については、反応ガスが供給される反応ガス供給領域314内に配されるものであるため、その反応ガス供給領域314内での反応ガスの動きが阻害されてしまうのを抑制すべく、図11に示すように、反応ガスが通過するガス供給孔354を設けるようにしても良い。その場合に、ガス供給孔354の形成位置は特に限定されることはなく、ランダムに形成しても構わない。
【0120】
なお、プラズマ生成部は、上述した接地電極353を備えておらず、図12に示すように、サセプタ217が接地電極として機能するように構成されたものであっても良い。このように構成されている場合には、サセプタ217が電気的に接地されることになり、各平板電極351a〜351cに高周波電源341からの高周波電力を供給すると、各平板電極351a〜351cとサセプタ217との間にプラズマが発生することになる。したがって、サセプタ217上のウエハ200に対して、直接プラズマが当たるので、より活性な反応ガスが供給されるようになる。
【0121】
また、プラズマ生成部は、接地電極353を備えている場合であっても、当該接地電極353が各平板電極351a〜351cとウエハ200との間に配されているのではなく、図13に示すように、当該接地電極353が各平板電極351a〜351cと同一平面上で当該各平板電極351a〜351cと重ならない位置に配されたものであっても良い。つまり、各平板電極351a〜351cと接地電極353とは、同一平面上に櫛歯状に並んで配されることになる。櫛歯状の配置であっても、各平板電極351a〜351cには、高周波電源341からの高周波電力が、マッチングボックス342及び絶縁トランス343を経た後に各インピーダンス調整部352a〜352cで調整され、第一ゾーンから第三ゾーンのそれぞれで異なる電力として供給される。このような櫛歯状配置による構成であれば、各平板電極351a〜351cと接地電極353とが同一平面上に配されるため、反応ガス供給領域314の上下方向(ウエハ200の板厚方向)における省スペース化に有用である。
【0122】
また、各平板電極351a〜351cと接地電極353とを櫛歯状に配置する場合には、接地電極353を第一ゾーンから第三ゾーンのそれぞれで個別のものとするのではなく、図14に示すように、第一ゾーンから第三ゾーンのそれぞれで共用する一体型のものとして構成しても良い。接地電極353は全てアース電位なので第一ゾーンから第三ゾーンのそれぞれで共用することが可能であり、共用することで電極構成の簡素化やコスト低減等が期待できるからである。
【0123】
(プラズマ処理)
次に、上述した構成のプラズマ処理部を用いて反応ガス供給領域314内の反応ガスをプラズマ状態にする場合の処理について説明する。
【0124】
反応ガス供給領域314内の反応ガスをプラズマ状態にする場合には、当該反応ガス供給領域314内に反応ガスが供給されている状態で、高周波電源341からの高周波電力を平板電極351に供給する。
【0125】
このとき、各インピーダンス調整部352a〜352cは、高周波電源341からの高周波電力を、それぞれ異なる電力に調整して各平板電極351a〜351cに供給する。具体的には、インピーダンス調整部352aは、平板電極351aに対して、例えば400Wに調整した電力を供給する。また、インピーダンス調整部352bは、平板電極351bに対して、例えば300Wに調整した電力を供給する。また、インピーダンス調整部352cは、平板電極351cに対して、例えば200Wに調整した電力を供給する。
【0126】
各インピーダンス調整部352a〜352cが各平板電極351a〜351cに対して電力供給を行うと、各平板電極351a〜351cと接地電極353(またはサセプタ217が接地電極として機能する場合には当該サセプタ217)との間には、プラズマが発生する。そして、反応ガス供給領域314内の反応ガスがプラズマ状態となり、当該反応ガスの活性種が生成されることになる。
【0127】
このとき、各平板電極351a〜351cには、それぞれに異なる電力が供給されている。そのため、反応ガス供給領域314内で生成される反応ガスの活性種は、各平板電極351a〜351cが配された部分別に、その活性度が異なったものとなる。具体的には、反応ガス供給領域314内での反応ガスの活性度は、例えば、400Wの電力が供給される平板電極351aが配された第一ゾーンが最も高く、次いで300Wの電力が供給される平板電極351bが配された第二ゾーンが高く、200Wの電力が供給される平板電極351cが配された第三ゾーンが最も低くなる。
【0128】
つまり、反応ガス供給領域314内の反応ガスをプラズマ状態にする場合には、各平板電極351a〜351cのそれぞれに異なる電力を供給することにより、生成される活性種の活性度を第一ゾーンから第三ゾーンの各部分別に相違させるようにする。
【0129】
このように、反応ガス供給領域314内で生成される反応ガスの活性種の活性度について、第一ゾーンから第三ゾーンの各部分別に独立して制御し得るようにすれば、反応ガス供給領域314内におけるプラズマ分布の偏りを管理することが可能となる。特に、反応ガス供給領域314の内周側の部分と外周側の部分とで独立して活性種の活性度を制御して、第三ゾーンの側よりも第一ゾーンの側のほうの活性度が高くなるようにすれば、平板電極351の面積が大きい外周側にプラズマが集中するような偏りが生じるおそれがある場合であっても、そのようなプラズマ分布の偏りを是正することが可能となる。さらには、内周側と外周側でガス暴露量に差が生じ得る場合であっても、そのガス暴露量の差を考慮してプラズマ分布を調整し得るようになるので、そのガス暴露量の差に起因する悪影響を排除し得るようになる。
【0130】
したがって、このようなプラズマ処理を経てプラズマ状態とされた反応ガスを用いれば、ウエハ200上に形成する膜の膜厚や膜質等について面内均一性の低下を抑制することが可能となる。
【0131】
なお、ここでは、ウエハ200上の膜の面内均一性の低下を抑制すべく、各インピーダンス調整部352a〜352cが各平板電極351a〜351cに対して内周側400W、中間300W、外周側200Wの電力を供給する場合を例に挙げたが、これは単なる一例に過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、各インピーダンス調整部352a〜352cは、ウエハ200上の膜に所望の膜厚勾配を与えるべく、内周側200W、中間300W、外周側400Wの電力を供給するように調整されたものであってもよい。
【0132】
また、各平板電極351a〜351cへの電力供給にあたり、供給する電力の大きさについては上述したように調整するが、供給する電力の周波数や位相等については第一ゾーンから第三ゾーンの各部分で一定とし、各部分への印加タイミングについては同時とすることが考えられる。ただし、必ずしもこれに限定されることはなく、第一ゾーンから第三ゾーンの各部分で供給電力の周波数、位相、印加タイミングを適宜相違させるように調整しても構わない。
【0133】
(5)第一実施形態にかかる効果
第一実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0134】
(a)第一実施形態によれば、反応ガス供給領域314に供給する反応ガスをプラズマ状態にして当該反応ガスの活性種を生成するとともに、反応ガスをプラズマ状態にするにあたり、当該反応ガスの活性種の活性度を反応ガス供給領域314の部分別に独立して制御する。これにより、反応ガス供給領域314におけるプラズマ分布を部分的に調整することができ、ウエハ200上に形成する膜の膜厚や膜質等について面内均一性の低下を抑制することが可能となる。
【0135】
(b)第一実施形態によれば、反応ガス供給領域314における内周側の部分と外周側の部分とで反応ガスの活性種の活性度を独立して制御する。したがって、サセプタ217上に複数のウエハ200が載置され、そのサセプタ217上の空間が分割構造体によって放射状に区画されることで、例えば平面視扇状の反応ガス供給領域314が形成され、これにより反応ガス供給領域314の外周側にプラズマが集中するような偏りが生じる場合や、内周側と外周側とでウエハ200に対するガス暴露量に差が生じる場合等であっても、内周側と外周側とでプラズマ分布を部分的に調整することができ、サセプタ217の回転径方向についてウエハ200の面内均一性の低下を抑制することが可能となる。
【0136】
(c)また、第一実施形態によれば、プラズマ処理に当たり電力が供給される平板電極351がサセプタ217の回転径方向において多分割されており、分割されたそれぞれの平板電極(被高周波電力供給部)351a〜351cに異なる電力が供給される。そのため、装置完成後(平板電極351の組込み後)であっても、各平板電極351a〜351cへの供給電力を適宜設定することで、反応ガス供給領域314におけるプラズマ分布を部分的に調整することが可能となる。
【0137】
(d)また、第一実施形態によれば、各平板電極351a〜351cのそれぞれに対応して設けられたインピーダンス調整部352a〜352cを備えており、これらのインピーダンス調整部352a〜352cを通じて各平板電極351a〜351cに異なる電力を供給する。そのため、例えば各平板電極351a〜351cのそれぞれに個別の高周波電源を接続する場合に比べると、装置構成の複雑化や装置コストの上昇等を抑制しつつ、各平板電極351a〜351cのそれぞれに個別の所望電力を供給することが可能となる。
【0138】
<本発明の第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、ここでは、主として、上述した第一実施形態との相違点について説明し、その他の点についての説明は省略する。
【0139】
第二実施形態では、プラズマ生成部の構成が第一実施形態の場合とは異なる。
ここで説明するプラズマ生成部は、マイクロ波励起高密度プラズマである表面波プラズマ(Surface Wave Plasma、以下「SWP」と略す。)に対応したものである。SWPを用いることにより、第一実施形態のような平板電極351を用いた場合には実現できなかった低電子温度で高電子密度のプラズマを生成し、低温でダメージを与えないプロセス処理を実現することが可能となる。なお、SWPの詳細については、公知であるため、ここではその説明を省略する。
【0140】
(プラズマ生成部の構成)
図15は、第二実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の一構成例を示す説明図である。
第二実施形態においては、SWPに対応しており、プラズマ生成部として、反応ガス供給領域314内に誘電体プレート361が配置されている。そして、反応ガス供給領域314に対してガス分配管317を通じて反応ガスとともにマイクロ波を供給し、誘電体プレート361を通じて反応ガス供給領域314内にマイクロ波を導入して表面波を形成し、その表面波によりプラズマを励起し、これにより反応ガスをプラズマ状態として当該反応ガスの活性種を生成するようになっている。そのために、誘電体プレート361には、マイクロ波をサセプタ217上のウエハ200の側へ導入するための貫通孔362が設けられている。
【0141】
ただし、誘電体プレート361は、サセプタ217上のウエハ200との距離が、反応ガス供給領域314の部分別に異なるように形成されている。具体的には、誘電体プレート361は、例えば、サセプタ217上のウエハ200との距離が、反応ガス供給領域314の内周側については遠く、外周側に向かうに連れて徐々に近づくように形成されている。
【0142】
このように形成された誘電体プレート361によれば、反応ガス供給領域314内の内周側と外周側とで、反応ガスの活性種の活性度が異なったものとなる。なぜならば、反応ガス供給領域314の内周側ではマイクロ波が誘電体プレート361を通過する距離が短く、反応ガス供給領域314の外周側ではマイクロ波が誘電体プレート361を通過する距離が長いといったように、反応ガス供給領域314内の内周側と外周側とでマイクロ波が誘電体プレート361を通過する距離が異なるからである。さらに詳しくは、マイクロ波が誘電体プレート361を通過する距離が長いほど、当該マイクロ波の失活量が多く、そのためにラジカル濃度(すなわち、反応ガスの活性種の活性度)も低くなってしまうからである。
【0143】
つまり、第二実施形態における誘電体プレート361は、サセプタ217上のウエハ200との距離が反応ガス供給領域314の内周側と外周側とで異なるように形成されており、これにより反応ガス供給領域314内の内周側と外周側とでプラズマ分布を調整できるようになっている。
【0144】
(第二実施形態にかかる効果)
第二実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0145】
(a)第二実施形態によれば、誘電体プレート361の厚さをサセプタ217の回転径方向で相違させることで、反応ガス供給領域314内における反応ガスの活性種の活性度(ラジカル濃度)を内周側と外周側とで異なるように部分的に調整することができる。つまり、誘電体プレート361における貫通孔362の距離に応じて、ウエハ200に供給される反応ガスの活性種の活性度を調整することができる。したがって、サセプタ217の回転径方向についてウエハ200の面内均一性の低下を抑制することが可能となる。
【0146】
(b)第二実施形態によれば、誘電体プレート361の厚さ方向の大きさを反応ガス供給領域314内の内周側と外周側とで相違させるだけで、ウエハ200の面内均一性の低下を抑制することが可能となるので、そのために装置構成の複雑化等を招いてしまうこともない。
【0147】
(第二実施形態の変形例)
なお、第二実施形態では、誘電体プレート361の厚さについて、内周側が薄く外周側に向かうに連れて徐々に熱くなる場合を例に挙げて説明したが、これとは全く逆に当該誘電体プレート361の厚さが構成されていても良い。その場合であっても、反応ガス供給領域314内における反応ガスの活性種の活性度(ラジカル濃度)を内周側と外周側とで異なるように部分的に調整することが可能となる。
【0148】
また、第二実施形態では、SWPに対応している場合について説明したが、これに限定されることはなく、例えば既存のプラズマ生成部を用いる場合(例えば、平行平板への電力印加によりプラズマ励起する構成の場合)であっても、上述した構成の誘電体プレート361を備えることで応ガス供給領域314内の部分別に反応ガスの活性種の活性度を調整する世にしても良い。
【0149】
<本発明の第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、ここでは、主として、上述した第一実施形態または第二実施形態との相違点について説明し、その他の点についての説明は省略する。
【0150】
第三実施形態では、プラズマ生成部の構成が第一実施形態または第二実施形態の場合とは異なる。
【0151】
(プラズマ生成部の構成)
図16は、第三実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の一構成例を示す説明図である。
第三実施形態においては、プラズマ生成部として、反応ガス供給領域314内に一対のロッド状電極371を備えている。一対のロッド状電極371のうちの一方は、高周波電源341からの高周波電力が供給されるものである。また、一対のロッド状電極371のうちの他方は、電気的に接地されるものである。
【0152】
ただし、一対のロッド状電極371は、反応ガス供給領域314内の部分別に互いの離間距離Lが異なるように配されている。具体的には、反応ガス供給領域314内の内周側では一対のロッド状電極371の互いの離間距離Lが広く、外周側に向かうに連れて離間距離Lが徐々に狭くなるように形成されている。
【0153】
このように形成された一対のロッド状電極371によれば、離間距離Lの大きさによって、高周波電力が供給された際に生成される反応ガスの活性種の活性度が異なったものとなる。具体的には、離間距離Lが広いほど反応ガスの活性種の活性度が低く、離間距離Lが狭いほど反応ガスの活性種の活性度が高くなる。したがって、上述した一対のロッド状電極371の一方に高周波電力を供給すると、反応ガス供給領域314内の内周側では反応ガスの活性種の活性度が低く、反応ガス供給領域314内の外周側では反応ガスの活性種の活性度が高くなる。
【0154】
つまり、第三実施形態における一対のロッド状電極371は、反応ガス供給領域314の部分別に互いの離間距離Lが異なるように配されているので、これにより反応ガス供給領域314内の内周側と外周側とでプラズマ分布を調整できるようになっている。
【0155】
(第三実施形態にかかる効果)
第三実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0156】
(a)第三実施形態によれば、一対のロッド状電極371の離間距離Lを反応ガス供給領域314内の部分別に相違させることで、反応ガス供給領域314内における反応ガスの活性種の活性度(ラジカル濃度)を内周側と外周側とで異なるように部分的に調整することができる。つまり、一対のロッド状電極371の離間距離Lに応じて、ウエハ200に供給される反応ガスの活性種の活性度を調整することができる。したがって、サセプタ217の回転径方向についてウエハ200の面内均一性の低下を抑制することが可能となる。
【0157】
(b)第三実施形態によれば、一対のロッド状電極371の離間距離Lを反応ガス供給領域314内の内周側と外周側とで相違させるだけで、ウエハ200の面内均一性の低下を抑制することが可能となるので、そのために装置構成の複雑化等を招いてしまうこともない。
【0158】
(第三実施形態の変形例)
なお、第三実施形態では、一対のロッド状電極371の離間距離Lについて、内周側が広く外周側に向かうに連れて徐々に狭くなる場合を例に挙げて説明したが、これとは全く逆に構成されていても良い。その場合であっても、反応ガス供給領域314内における反応ガスの活性種の活性度(ラジカル濃度)を内周側と外周側とで異なるように部分的に調整することが可能となる。
【0159】
<本発明の第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、ここでは、主として、上述した第一実施形態、第二実施形態または第三実施形態との相違点について説明し、その他の点についての説明は省略する。
【0160】
第四実施形態では、プラズマ生成部の構成が第一実施形態、第二実施形態または第三実施形態の場合とは異なる。
【0161】
(プラズマ生成部の構成)
図17は、第四実施形態に係る基板処理装置が備えるプラズマ生成部の一構成例を示す説明図である。
第四実施形態においては、図17(a)に示すように、プラズマ生成部として、反応ガス供給領域314内に、コイル381が券回された筒状のガスノズル382を備えている。
【0162】
ガスノズル382は、図17(b)に示すように、インナーノズル383とアウターノズル384との二重管構造となっている。そして、インナーノズル383の管内に供給された反応ガスを、インナーノズル383に設けられたスリット385及びアウターノズル384に設けられたガス供給孔386を通じて、反応ガス供給領域314内に噴出するように構成されている。なお、ガス供給孔386は、等間隔に配置されている。
【0163】
インナーノズル383には、コイル381が券回されている。コイル381は、高周波電源341及び整合器342に接続されており、高周波電力が供給されることで反応ガスをプラズマ状態にするための電極として機能するようになっている。なお、インナーノズル383に券回されたコイル381は、反応ガス供給領域314内に露出させないためにアウターノズル384に覆われている。
【0164】
また、コイル381は、インナーノズル383への巻き数が反応ガス供給領域314の部分別に異なるように構成されている。具体的には、反応ガス供給領域314内の内周側にはコイル381の巻き数が密である部分387を備えるとともに、外周側にはコイル381の巻き数が疎である部分388を備えている。
【0165】
このように形成されたコイル381及びガスノズル382によれば、当該コイル381の巻き数の疎密によって、高周波電力が供給された際に生成される反応ガスの活性種の活性度が異なったものとなる。具体的には、コイル381の巻き数が疎であるほど反応ガスの活性種の活性度が低く、コイル381の巻き数が密であるほど反応ガスの活性種の活性度が高くなる。したがって、上述したコイル381に高周波電力を供給しつつガスノズル382に反応ガスを供給すると、反応ガス供給領域314内の内周側では反応ガスの活性種の活性度が低く、反応ガス供給領域314内の外周側では反応ガスの活性種の活性度が高くなる。
【0166】
つまり、第四実施形態におけるコイル381及びガスノズル382は、反応ガス供給領域314の部分別にコイル381の巻き数が異なるように配されているので、これにより反応ガス供給領域314内の内周側と外周側とでプラズマ分布を調整できるようになっている。
【0167】
(第四実施形態にかかる効果)
第四実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0168】
(a)第四実施形態によれば、ガスノズル382に券回されたコイル381の巻き数を反応ガス供給領域314内の部分別に相違させることで、反応ガス供給領域314内における反応ガスの活性種の活性度(ラジカル濃度)を内周側と外周側とで異なるように部分的に調整することができる。つまり、コイル381の巻き数に応じて、ウエハ200に供給される反応ガスの活性種の活性度を調整することができる。したがって、サセプタ217の回転径方向についてウエハ200の面内均一性の低下を抑制することが可能となる。
【0169】
(b)第四実施形態によれば、ガスノズル382に券回されたコイル381の巻き数を反応ガス供給領域314内の内周側と外周側とで相違させるだけで、ウエハ200の面内均一性の低下を抑制することが可能となるので、そのために装置構成の複雑化等を招いてしまうこともない。
【0170】
(第四実施形態の変形例)
なお、第四実施形態では、コイル381の巻き数について、内周側が疎で外周側が密である場合を例に挙げて説明したが、これとは全く逆に構成されていても良い。その場合であっても、反応ガス供給領域314内における反応ガスの活性種の活性度(ラジカル濃度)を内周側と外周側とで異なるように部分的に調整することが可能となる。
【0171】
<本発明の第五実施形態>
次に、本発明の第五実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、ここでは、主として、上述した第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態または第四実施形態との相違点について説明し、その他の点についての説明は省略する。
【0172】
第五実施形態では、基板処理工程が第一実施形態〜第四実施形態の場合とは異なる。
【0173】
(基板処理工程)
第五実施形態で説明する基板処理工程では、他の基板処理装置(ただし不図示)にて第一の膜(第一のシリコン含有膜)としてポリシリコン(Poly−Si)膜が形成されたウエハ200に対して、そのPoly−Si膜に重ねるように第二の膜(第二のシリコン含有膜)として窒化シリコン(SiN)膜を形成する。SiN膜の形成は、例えば、原料ガスとしてヘキサクロロジシラン(HCDS)ガスを用い、反応ガスとしてNHガスを用いることで行う。なお、反応ガスは、第一実施形態〜第四実施形態で説明したいずれかの構成のプラズマ生成部により、プラズマ状態とされて当該反応ガスの活性種が生成されるものとする。以下の説明では、第一実施形態で説明した構成のプラズマ生成部を用いる場合を例に挙げる。なお、第一のシリコン含有膜は、シリコンを主成分とする膜で有れば良く、アモルファスシリコン膜、単結晶シリコン膜、所定元素がドーピングされたシリコン膜であっても良い。ここで所定元素とは、例えば、臭素(B)、炭素(C)、窒素(N)、アルミニウム(Al)、リン(P)、砒素(As)の少なくとも一つ以上の元素である。
【0174】
図18は、第五実施形態で行う成膜処理の一具体例を示す説明図である。なお、図例では、処理対象となるウエハ200が四枚である場合を示しているが、これは単なる一例に過ぎず、他の枚数(例えば五枚以上)であっても構わない。
【0175】
ここでは、図18(a)に示すように、一方の側の膜厚が厚く、他方の側の膜厚が薄くなるように、Poly−Si膜が形成されたウエハ200を処理対象とする。このようなウエハ200に対して、Poly−Si膜に重ねるようにSiN膜を形成する場合には、以下のような手順で基板処理工程を行う。
【0176】
他の基板処理装置(ただし不図示)にてウエハ200の面上にPoly−Si膜が形成されると、そのウエハ200について、測定装置(ただし不図示)を用いてPoly−Si膜の特性を測定する。具体的には、例えば、Poly−Si膜の膜厚分布、膜質(結晶性)分布、膜応力分布、膜組成分布、誘電率分布、抵抗値分布、凹凸寸法等を測定する。これらの測定の詳細については、公知であるため、ここではその説明を省略する。測定されたPoly−Si膜の特性に関する情報(以下、単に「特性情報」という。)は、SiN膜の形成を行う基板処理装置100のコントローラ221に入力される。特性情報のコントローラ221への入力は、手動で行っても良く、ネットワークや外部記録媒体等を利用して行っても良い。
【0177】
特性情報が入力されると、コントローラ221は、その特性情報に基づいて、ウエハ200の向きの検出及び当該向きの補正を行うように、ノッチ合わせ装置106に対して指示を与える。さらに、コントローラ221は、ノッチ合わせ装置106による補正後の向きでウエハ200をプロセスチャンバ202a内に搬入するように、真空搬送ロボット112に対して指示を与える。このようにしてプロセスチャンバ202a内にウエハ200が搬入されると、当該プロセスチャンバ202a内では、搬入されたウエハ200に対するSiN膜の成膜処理が開始される。
【0178】
このとき、プラズマ生成部は、Poly−Si膜とSiN膜との合算膜厚分布がフラットになるように、平板電極351への電力供給量を調整する。具体的には、コントローラ221に入力された特性情報及びノッチ合わせ装置106での位置合わせの結果に基づき、図18(b)に示すように、Poly−Si膜とは逆に一方の側の膜厚が薄く、他方の側の膜厚が厚くなるように、平板電極351への電力供給量を調整しつつ、そのPoly−Si膜が形成されたウエハ200の面上にSiN膜を形成する。
【0179】
このようにしてPoly−Si膜に重ねてSiN膜が形成されたウエハ200は、その後、プロセスチャンバ202a内から搬出されてポッド109に収納される。
【0180】
以上のような基板処理工程によれば、Poly−Si膜が形成されたウエハ200の面上にSiN膜を形成する場合に、反応ガス供給領域314内の内周側と外周側とでプラズマ分布を調整することで、Poly−Si膜とSiN膜との合算膜厚分布がフラットになるチューニングすることができる。つまり、反応ガス供給領域314内におけるプラズマ分布は、処理対象となるウエハ200に応じて、当該反応ガス供給領域314内で部分的に異なるように調整しても構わない。
【0181】
(第五実施形態にかかる効果)
第五実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0182】
(a)第五実施形態によれば、反応ガスをプラズマ状態にするにあたり、反応ガス供給領域314の内周側と外周側とでプラズマ分布を部分的に調整することができ、ウエハ200上に形成する膜の膜厚や膜質等について面内均一性の低下を抑制することが可能となる。
【0183】
(b)第五実施形態によれば、処理対象となるウエハ200に応じて反応ガス供給領域314におけるプラズマ分布を部分的に調整することで、例えば形成済みの膜が存在するウエハ200の面上に新たな膜を形成する場合に、各膜の合算膜厚分布がフラットになるようにすることが可能となる。つまり、かかる場合であっても、ウエハ200上における面内均一性の低下を抑制し得るようになる。
【0184】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の第一実施形態から第五実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0185】
(ガス種)
また、例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う成膜工程において、原料ガス(第1処理ガス)としてTiClガスを用い、反応ガス(第2処理ガス)としてNHガスが用いて、それらを交互に供給することによってウエハ200上にTiN膜を形成する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理に用いる処理ガスは、TiClガスやNHガス等に限られることはなく、他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、三種類以上の処理ガスを用いる場合であっても、これらを交互に供給して成膜処理を行うのであれば、本発明を適用することが可能である。
【0186】
(処理領域の区画数)
上述した各実施形態では、ガス供給プレート310における複数のガス供給領域313〜315として、原料ガス供給領域313と反応ガス供給領域314とをそれぞれ二つ以上含むとともに、原料ガス供給領域313と反応ガス供給領域314との間に介在する不活性ガス供給領域315を含む場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、本発明は、処理空間が複数の処理領域に区画された基板処理装置であれば、適用することが可能である。
【0187】
図19は、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置における処理領域の区画態様の例を示す説明図である。なお、図例では、理解の容易化を図るために、ガス供給プレート310が原料ガス供給領域313(図中の記号A)と反応ガス供給領域314(図中の記号B)とをそれぞれ二つずつ有している場合を示している。
【0188】
図19(a)に示す例では、原料ガス供給領域313(図中の記号A)と反応ガス供給領域314(図中の記号B)とがそれぞれ同等の面積となるように、各ガス供給領域313,314が区画されている。このような構成のガス供給プレート310においては、ウエハ200が原料ガス供給領域313と反応ガス供給領域314とを通過する時間、すなわちウエハ200を原料ガスおよび反応ガスのそれぞれに曝す時間が、略同一となる。
ただし、ウエハ200上に形成すべき薄膜の種類によっては、必ずしもウエハ200を原料ガスおよび反応ガスのそれぞれに曝す時間が略同一である必要はなく、互いに異なっているほうが適切である場合もあり得る。例えば、図19(b)に示す例では、原料ガス供給領域313(図中の記号A)の面積よりも反応ガス供給領域314(図中の記号B)の面積のほうが大きくなるように、各ガス供給領域313,314が区画されている。このような構成のガス供給プレート310においては、ウエハ200に対して原料ガスよりも反応ガスの供給量を多くすることによって、各ガスの反応量を多くすることができる。また、これとは逆に、原料ガス供給領域313(図中の記号A)の面積よりも反応ガス供給領域314(図中の記号B)の面積の方が小さいほうが適切である場合もあり得る。
【0189】
図20は、本発明のさらに他の実施形態に係る基板処理装置における処理領域の区画態様の例を示す説明図である。図例は、原料ガス供給領域として、ウエハ200に第一原料ガスを供給する第一原料ガス供給領域313と、ウエハ200に第一原料ガスとは異なる第二原料ガスを供給する第二原料ガス供給領域319と、を含む場合を示している。第一原料ガスとしては、上述した各実施形態の場合と同様に、例えばTiClガスを用いる。また、第二原料ガスとしては、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いる。なお、反応ガス(NHガス)及び不活性ガス(Nガス)については、上述した各実施形態の場合と同様である。このような種類のガスを供給すれば、ウエハ200上に三元系合金である窒化チタンアルミ(TiAlN)の薄膜を形成することが可能となる。
【0190】
図20(a)に示す例では、第一原料ガス供給領域313(図中の記号A)と反応ガス供給領域314(図中の記号B)と第二原料ガス供給領域319(図中の記号C)とがそれぞれ同等の面積となるように、各ガス供給領域313,314,319が区画されている。このような構成のガス供給プレート310においては、ウエハ200が第一原料ガス供給領域313と第二原料ガス供給領域319と反応ガス供給領域314とを通過する時間、すなわちウエハ200を第一原料ガス、第二原料ガス及び反応ガスのそれぞれに曝す時間が、略同一となる。
これに対して、図20(b)に示す例では、第一原料ガス供給領域313(図中の記号A)及び第二原料ガス供給領域319(図中の記号C)の面積よりも反応ガス供給領域314(図中の記号B)の面積のほうが大きくなるように、各ガス供給領域313,314,319が区画されている。このような構成のガス供給プレート310においては、ウエハ200に対して第一原料ガス及び第二原料ガスよりも反応ガスの供給量を多くすることによって、各ガスの反応量を多くすることができる。
【0191】
また、処理領域の区画態様としては、図示はしないが、原料ガス供給領域の他に、第一反応ガス供給領域と第二反応ガス供給領域とを含むものであってもよい。具体的には、原料ガスとして例えばHCDS(SiCl)ガスを用い、第一反応ガスとして例えばNHガスを用い、第二反応ガスとして例えば酸素ガス(Oガス)を用いる。このような種類のガスを供給すれば、ウエハ200上にSiONの薄膜を形成することが可能となる。
【0192】
また、さらに、カーボン原料ガスを供給する領域を追加して、SiOCNの様な多元系の薄膜を成膜可能に構成してもよい。
【0193】
(相対位置移動)
上述した各実施形態では、サセプタ217またはカートリッジヘッド300を回転させることで、サセプタ217上の各ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置を移動させる場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、本発明は、サセプタ217上の各ウエハ200とカートリッジヘッド300との相対位置を移動させるものであれば、必ずしも各実施形態で説明した回転駆動式のものである必要はなく、例えばコンベア等を利用した直動式のものであっても、全く同様に適用することが可能である。
【0194】
(その他)
上述した各実施形態では、基板処理装置が行うプロセス処理として成膜処理を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、複数の処理領域を基板が順に通過するプロセス処理であれば、成膜処理の他、酸化膜、窒化膜を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理であってもよい。また、基板処理の具体的内容は不問であり、成膜処理だけでなく、アニール処理、酸化処理、窒化処理、拡散処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理にも好適に適用できる。さらに、本発明は、他の基板処理装置、例えばアニール処理装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置、プラズマを利用した処理装置等の他の基板処理装置にも好適に適用できる。また、本発明は、これらの装置が混在していてもよい。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0195】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0196】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
基板が載置される基板載置部と、
前記基板載置部と対向する空間に処理領域を形成する分割構造体と、
前記分割構造体が形成する前記処理領域に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部が前記処理領域に供給する処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成するとともに、前記プラズマ状態にするにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域の部分別に独立して制御するプラズマ生成部と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0197】
[付記2]
好ましくは、
前記基板載置部は、複数の基板が円周状に配置される基板載置面を有し、
前記分割構造体は、前記円周状の中心から放射状に複数の前記処理領域を形成するように配置されており、
前記プラズマ生成部は、前記分割構造体が形成する複数の前記処理領域のうちの一つ以上に設けられ、少なくとも前記円周状の中心側の部分と外周側の部分とで独立して前記活性種の活性度を制御するものである
付記1に記載の基板処理装置が提供される。
【0198】
[付記3]
好ましくは、
前記プラズマ生成部は、
前記処理領域の部分別に個別に設けられた複数の被高周波電力供給部と、
前記複数の被高周波電力供給部のそれぞれに対応して設けられたインピーダンス調整部と、
を備える付記1または2に記載の基板処理装置が提供される。
【0199】
[付記4]
好ましくは、
前記被高周波電力供給部は、前記基板と対向するように配された平板電極で構成されている
付記3に記載の基板処理装置が提供される。
【0200】
[付記5]
好ましくは、
前記プラズマ生成部は、前記平板電極と前記基板との間に配された接地電極を備える
付記4に記載の基板処理装置が提供される。
【0201】
[付記6]
好ましくは、
前記基板載置部が接地電極として機能する
付記4に記載の基板処理装置が提供される。
【0202】
[付記7]
好ましくは、
前記プラズマ生成部は、前記平板電極と同一平面上で当該平板電極と重ならない位置に配された接地電極を備える
付記4に記載の基板処理装置が提供される。
【0203】
[付記8]
好ましくは、
前記プラズマ生成部は、前記処理領域内に、前記基板との距離が当該処理領域の部分別に異なるように形成された誘電体プレートを備える
付記1から7のいずれかに記載の基板処理装置が提供される。
【0204】
[付記9]
好ましくは、
前記誘電体プレートには、マイクロ波が供給される
付記8に記載の基板処理装置が提供される。
【0205】
[付記10]
好ましくは、
前記プラズマ生成部は、前記処理領域の部分別に互いの離間距離が異なるように配された一対の電極を備える
付記1または2に記載の基板処理装置が提供される。
【0206】
[付記11]
好ましくは、
前記プラズマ生成部は、前記処理領域内に配された筒状のガスノズルの周囲に券回されたコイルを有する電極であって、当該コイルの前記ガスノズルへの巻き数が前記処理領域の部分別に異なるように構成された電極を備える
付記1または2に記載の基板処理装置が提供される。
【0207】
[付記12]
本発明の他の一態様によれば、
処理領域に供給される処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成するプラズマ生成機構であって、
前記プラズマ状態にするにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域の部分別に独立して制御する電極構造を有する
プラズマ生成機構が提供される。
【0208】
[付記13]
本発明のさらに他の一態様によれば、
基板載置部上に基板を載置する基板載置工程と、
前記基板載置部と対向する空間に形成された処理領域に処理ガスを供給するガス供給工程と、
前記処理領域に供給する処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成するとともに、前記プラズマ状にするにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域の部分別に独立して制御するプラズマ生成工程と、
を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0209】
[付記14]
本発明のさらに他の一態様によれば、
基板載置部上に基板を載置する基板載置ステップと、
前記基板載置部と対向する空間に形成された処理領域に処理ガスを供給するガス供給ステップと、
前記処理領域に供給する処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成するとともに、前記プラズマ状態にするにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域の部分別に独立して制御するプラズマ生成ステップと、
をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【0210】
[付記15]
本発明のさらに他の一態様によれば、
基板載置部上に基板を載置する基板載置ステップと、
前記基板載置部と対向する空間に形成された処理領域に処理ガスを供給するガス供給ステップと、
前記処理領域に供給する処理ガスをプラズマ状態にして当該処理ガスの活性種を生成するとともに、前記プラズマ状態にするにあたり前記活性種の活性度を前記処理領域の部分別に独立して制御するプラズマ生成ステップと、
をコンピュータに実行させるプログラムを記録した記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0211】
100…基板処理装置、200…ウエハ、202a,202b…プロセスチャンバ、217…サセプタ、221…コントローラ、300…カートリッジヘッド、310…ガス供給プレート、313…原料ガス供給領域、314…反応ガス供給領域、315…不活性ガス供給領域、316…排気領域、317…ガス分配管、320…ガス導入シャフト、323a,323b,323c…ガス導入管、341…高周波電源、351,351a,351b,351c…平板電極(被高周波電力供給部)、352a,352b,352c…インピーダンス調整部、353…接地電極、361…誘電体プレート、371…ロッド状電極、381…コイル、382…ガスノズル、411…原料ガス供給管、412…原料ガス供給源、413…MFC、414…バルブ、421…反応ガス供給管、422…反応ガス供給源、423…MFC、424…バルブ、431…不活性ガス供給管、432…不活性ガス供給源、433…MFC、434…バルブ
【要約】
【課題】基板上に形成する膜の面内均一性の低下を抑制すべく、処理領域におけるプラズマ分布を部分的に調整できるようにする。
【解決手段】基板が載置される基板載置部と、基板載置部と対向する空間に処理領域を形成する分割構造体と、分割構造体が形成する処理領域に処理ガスを供給するガス供給部と、ガス供給部が処理領域に供給する処理ガスをプラズマ状態にして処理ガスの活性種を生成するとともに、プラズマ状態にするにあたり活性種の活性度を処理領域の部分別に独立して制御するプラズマ生成部と、を備えて基板処理装置を構成する。
【選択図】図9
図1
図4
図5
図6
図7
図8
図2
図3
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20