特許第5938504号(P5938504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5938504
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】認知症問診装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20160609BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   G09B19/00 G
   A61B10/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-173535(P2015-173535)
(22)【出願日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年1月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:平成27年7月4日,公開場所:地域交流センター「ララ♪こあら」(大阪府守口市西郷通1−2−11)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515242283
【氏名又は名称】佐藤 守
(74)【代理人】
【識別番号】100113701
【弁理士】
【氏名又は名称】木島 隆一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守
【審査官】 宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−178920(JP,A)
【文献】 特開2007−282992(JP,A)
【文献】 特開2015−043914(JP,A)
【文献】 特開2015−180933(JP,A)
【文献】 特開2015−195835(JP,A)
【文献】 「アプリで家族の認知症診断テスト、「認知症に備えるアプリ」配信開始」,ケアタイムズ新聞,日本,ケアタイムズ新聞社,2015年 8月 6日,[2016年2月22日検索],URL,http://caretimes.jp/blog/2015/08/06/orangeact/
【文献】 Maru(産経アプリスタ編集部),「認知症自己診断テスト「最近、親の物忘れが・・・」というときに、役立つアプリ」,産経アプリスタ,日本,株式会社産経デジタル,2012年11月26日,[2016年2月22日検索],URL,http://aplista.iza.ne.jp/r-iphone/23419
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 7/02,19/00
A61B 5/16,10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の認知症の兆候を検知する認知症問診装置であって、
前記利用者が過去に見聞した可能性のある特徴画像を複数提示する画像提示手段と、
前記特徴画像の各々が表す名称を前記利用者から入力として受け付ける第一入力手段と、
前記第一入力手段が受け付けた名称が前記特徴画像の各々が表す名称として正解か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が正解と判定した割合に応じて、前記利用者の認知症の兆候を検知する認知症検知部と、
前記認知症検知部が前記利用者の認知症の兆候を検知した場合には、前記認知症の兆候があることを利用者に提示する認知症兆候提示手段とを備え
前記画像提示手段が提示する特徴画像を、前記利用者が過去に実際に見聞したか否かを確認する確認手段を更に備え、
前記認知症検知部は、前記利用者が過去に実際に見聞していない特徴画像を除いて、前記割合を算出することを特徴とする認知症問診装置。
【請求項2】
前記利用者の生年または年齢の入力を受け付ける第二入力手段を備え、
前記画像提示手段は、前記第二入力手段が受け付けた利用者の生年または年齢に応じて、提示する前記特徴画像を選択することを特徴とする請求項1に記載の認知症問診装置。
【請求項3】
前記特徴画像は、俳優、女優、映画、ドラマ番組、日用品のいずれかを示す画像であることを特徴とする請求項1または2に記載の認知症問診装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者に認知症の兆候があらわれているか否かを問診する認知症問診装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、認知症の早期発見が重要課題として認識されている。
【0003】
認知症の診断で最も用いられるものは、DSM−IV(精神障害の診断と統計の手引き)である。これは、多彩な認知障害の発現として、記憶障害以外に、失語、失行、失認、実行機能障害のいずれかがあり、それらが原因で社会生活に支障をきたすこと、さらに認知欠損はせん妄の経過中にのみ観察されるものではないこと、その状態が、脳などの身体的な原因があるか、あると推測されること、としている。
【0004】
現在の医療の現場では、DSM−IVに基づいて、認知症の疑いのある患者に対して、医師が問診をして認知症かどうかを診断している。医師の診断作業の負担の軽減を図るために、特許文献1のような検査装置も発明されている。この検査装置を用いることによって、その患者が認知症であるかどうか、医師が判断を行う際の一助とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開9−16072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような検査装置を利用するには、医師の専門的知識を必要とし、一般人が気軽に認知症の診断を行うことはできなかった。
【0007】
また、認知症に対する恐れや自覚傾向を有する者や若者は、認知症の検査を受けようとせず、その抵抗感から病院を訪れることは少ない。
【0008】
近年、認知症の患者は低年齢化する傾向にあり、対象が若者であっても、認知症の兆候を早期発見できる機会が望まれていた。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑み、医師の専門的知識を必要とせず、利用者に抵抗感が少なく、利用者が楽しみながら、認知症の兆候を検出することのできる認知症問診装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の認知症問診装置は、
利用者の認知症の兆候を検知する認知症問診装置であって、
前記利用者が過去に見聞した可能性のある特徴画像を複数提示する画像提示手段と、
前記特徴画像の各々が表す名称を前記利用者から入力として受け付ける第一入力手段と、
前記第一入力手段が受け付けた名称が前記特徴画像の各々が表す名称として正解か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が正解と判定した割合に応じて、前記利用者の認知症の兆候を検知する認知症検知部と、
前記認知症検知部が前記利用者の認知症の兆候を検知した場合には、前記認知症の兆候があることを利用者に提示する認知症兆候提示手段とを備える。
【0011】
また、上記の課題を解決するため、本発明の認知症問診装置は、
前記画像提示手段が提示する特徴画像を、前記利用者が過去に実際に見聞したか否かを確認する確認手段を更に備え、
前記認知症検知部は、前記利用者が過去に実際に見聞していない特徴画像を除いて、前記割合を算出する。
【0012】
また、上記の課題を解決するため、本発明の認知症問診装置は、
前記利用者の生年または年齢の入力を受け付ける第二入力手段を備え、
前記画像提示手段は、前記第二入力手段が受け付けた利用者の生年または年齢に応じて、提示する前記特徴画像を選択する。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、本発明の認知症問診装置においては、
前記特徴画像は、俳優、女優、映画、ドラマ番組、日用品のいずれかを示す画像であるものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、医師の専門的知識を必要とせず、利用者に抵抗感が少なく、利用者が楽しみながら、認知症の兆候を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の認知症問診装置の機能ブロックを示す図である。
図2】タブレット式コンピュータの外観を示す図である。
図3】本発明の認知症問診装置の画面例を示す図である。
図4】本発明の認知症問診装置の画面例を示す図である。
図5】特徴画像の一例を示す図である。
図6】特徴画像の一例を示す図である。
図7】特徴画像の一例を示す図である。
図8】特徴画像の一例を示す図である。
図9】特徴画像の一例を示す図である。
図10】特徴画像の一例を示す図である。
図11】特徴画像の一例を示す図である。
図12】特徴画像の一例を示す図である。
図13】認知症の兆候があることを利用者に提示する画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1.機能ブロック)
図1は、本発明に係る認知症問診装置10の機能ブロックを示す図である。
【0017】
認知症問診装置10は、制御部11、入力部12、表示部13、表示制御部14、記憶部15、情報受付部16、確認部17、判定部18、認知症検知部19、認知症警告部20を備えている。
【0018】
制御部11は、認知症問診装置10の全体の動作を司るコンピュータである。入力部12は、利用者からの入力指示を受け付けるユーザインタフェースである。表示部13は、画像や情報を表示する例えば液晶ディスプレイである。表示制御部14は、表示部13に任意の画像等を表示することを補助する回路である。記憶部15は、メモリやハードディスクから構成される記憶デバイスである。情報受付部16は、入力部12から受け付けた入力情報を一時記憶し、記憶部15に与える。
【0019】
記憶部15は、画像データ15a、名称データ15b、年齢データ15c、認知症判定用データ15d、医療機関データ15eを記憶している。
【0020】
画像データ15aは、後述する特徴画像の画像データである。名称データ15bは、画像データ15aと関連づけられており、特徴画像の示す画像の名称、タイトル、題名、人物名、物品名などのデータである。年齢データ15cは、利用者から年齢の入力があった場合に、それを格納するデータである。認知症判定用データは、後述する正答率を基に、利用者に認知症の兆候があるか否かを判定部18および認知症検知部19が判定するためのデータである。医療機関データ15eは、利用者に認知症の兆候が認められた場合に連絡すべき医療機関、補助機関、地域団体、コミュニティセンターなどのデータである。
【0021】
確認部17は、後述するように、表示部13に表示する特徴画像を利用者が過去に実際に見聞したことがあるかどうかを確認する機能ブロックである。判定部18は、入力部12が受け付けた名称が、表示部13に表示した特徴画像の各々が表す名称として正解か否かを判定する機能ブロックである。認知症検知部19は、判定部18の判定結果を基に、利用者に認知症の兆候が見られるか否かを検知する機能ブロックである。認知症警告部20は、認知症検知部19の検知結果を基に、利用者に認知症の兆候があることを表示部13における表示によって警告する機能ブロックである。
【0022】
認知症問診装置10は、どのようなコンピュータによって実現されてもよいが、好適には、図2に示すタブレット式コンピュータ200によって実現される。タブレット式コンピュータ200は、手軽に持ち運び可能であり、病院や医療機関の他、利用者の自宅や地域のコミュニティセンター、地域交流センター、共同利用サロン、支援センターなどに設置することが容易である。
【0023】
(2.動作フロー)
次に、認知症問診装置10の動作の流れについて説明する。
【0024】
まず、認知症問診装置10は、表示部13に図3の画面例30のような画面を表示する(S1)。画面例30は、問診する特徴画像の属するジャンルを利用者が選択するための画面であり、ジャンル別に「俳優・女優」「映画」「ドラマ番組」「日用品」の選択肢を表示している。
【0025】
利用者は、入力部12(タッチペンなど)を通じて、希望する問診画像のジャンルを選択する(S2)。
【0026】
次に、認知症問診装置10は、表示部13に図4の画面例40のような画面を表示する(S3)。画面例40は、利用者の年齢(または生年)を大まかに訪ねるものであり、10歳代〜80歳代までの選択肢を表示している。
一般に、認知症は、高齢者が罹患することが多いが、若年層でも罹患することがあり、本発明を利用すれば、低年齢である利用者の認知症の兆候を的確に検知することができる。
【0027】
次に、認知症問診装置10は、S3で入力された利用者の年齢(または生年)を基に、出題する特徴画像群を選択し、絞り込む(S4)。特徴画像とは、利用者が過去に見聞した可能性のある画像であって、利用者の青春時代や若者時代(特定年代)に見聞した「俳優・女優」「映画」「ドラマ番組」「日用品」などの画像である。
したがって、利用者の年齢が高いほど、古い特徴画像が選択され、利用者の年齢が低いほど、新しい特徴画像が選択される。
【0028】
(特徴画像の例)
図5は、女優の半身を示した特徴画像50の例である。図6は、女優の半身を示した特徴画像60の例である。図7は、映画のワンシーン(ポスター)を示した特徴画像70の例である。図8は、映画のワンシーン(ポスター)を示した特徴画像80の例である。図9は、ドラマ番組のワンシーン(ポスター)を示した特徴画像90の例である。図10は、ドラマ番組のワンシーン(ポスター)を示した特徴画像100の例である。図11は、利用者の幼年時代など過去に用いられた日用品(洗濯板と金だらい)を示した特徴画像110の例である図12は、利用者の幼年時代など過去に用いられた日用品(キセル)を示した特徴画像120の例である。
【0029】
次に、認知症問診装置10は、S4で選択された所定数の特徴画像群を順次、表示部13に表示し、これをみた利用者からその画像名称の入力を受け付ける(S5)。
【0030】
好ましくは、確認部17の働きにより、利用者がその特徴画像を過去に実際に見聞したことがあるか否かも質問し、利用者から回答を受け付けるとよい。
特徴画像群は、年代的に利用者が過去に見聞した可能性のある画像であるが、利用者が実際にその特徴画像を見聞したことがあるとは限らない。そこで、利用者が実際にみたことがある特徴画像と、利用者が実際にはみたことがない特徴画像を区別することにより、利用者が画像名称を誤答した場合に、利用者がその特徴画像の名称を忘れたのか、そもそも知らなかったのかを識別することが重要となる。
【0031】
利用者からその画像名称の入力を受け付ける画像名称とは、特徴画像の名称であり、特徴画像の被写体が「俳優・女優」であれば氏名(芸名)、特徴画像の被写体が「映画」「ドラマ番組」であればタイトル、特徴画像の被写体が「日用品」であれば物品名である。画像名称の入力受付は、フルテキストの入力を受け付けてもよいし、選択肢を提示してその選択を受け付けてもよい。
【0032】
次に、認知症問診装置10は、S5で入力された画像名称が、特徴画像の(被写体の)名称として正しいか否かを判定する(S6)。認知症問診装置10は、所定の枚数の特徴画像についてS5〜S6のステップを繰り返す。
【0033】
そして、認知症問診装置10は、利用者の正答率(割合)を算出し、その正答率に基づいて、利用者に認知症の兆候があるか否かを判定する(S7)。認知症問診装置10は、正答率が所定の値(例えば3分の1)以下であれば、利用者に認知症の兆候ありと判定する。
S7において、認知症問診装置10は、好ましくは、利用者が過去に実際に見聞していない特徴画像を除いて、正答率(割合)を算出する。例えば、全10問のうち、4問正解した場合、不正解であった6問のうち、5問分は、利用者が過去に実際に見聞していない特徴画像の問題であったとする。この場合、正答率は、4問/(10問−5問)で8割の正答率である。
このように利用者が実際にはみたことがない特徴画像を除いて、正答率を算出することにより、利用者が忘れたのではなく、そもそも知らなかった特徴画像の回答に基づいて、正答率を算出することを防止することができる。これにより、利用者の記憶度合いを正しく反映した正答率を算出することが可能となる。
【0034】
最後に、認知症問診装置10は、利用者に認知症の兆候ありと判定すれば、図13の画面例130のような画面を表示部13に表示する(S8)。
(3.変形例)
上述した実施例は本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。以下にそのような変形の例を示す。
【0035】
上記の説明においては、特徴画像のジャンルは、「俳優・女優」「映画」「ドラマ番組」「日用品」であるものとしたが、特徴画像のジャンルは、上記の他にも「歌手」「演劇」など、利用者の過去の記憶を喚起する画像であれば、様々なものを用いることができる。
【0036】
また、上記の説明では、認知症問診装置10は、好適には、タブレット式コンピュータ200によって実現されるものとしたが、認知症問診装置10は、単体のコンピュータによって実現されるだけでなく、ネットワークを介して、サーバコンピュータとクライアントコンピュータとが連携する形式によっても実現可能である。
【0037】
上記の説明においては、一回のゲーム形式による認知症兆候判定について示したが、同様のゲーム形式を繰り返し、正答率ないし成績を短期間ないし長期間記録しておいて、その経時変化によって、利用者の認知症の兆候を判定してもよい。
【0038】
上記の説明においては、利用者に認知症の兆候がみられたときには、病院を案内することとしたが、いきなり病院を受診するのは、利用者にとって心理的抵抗感も少なくないため、医療機関のほか、各種の補助機関、支援機関、NPO団体、地域団体、コミュニティセンターなどの連絡先を示してもよい。
【0039】
上述した実施例において示した構成等はあくまで本発明を説明するための例示であって、本発明はそれらの具体的内容により限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、利用者に認知症の兆候があらわれているか否かを問診する認知症問診装置に広く利用可能であり、もちろん、医師も利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10…認知症問診装置
11…制御部
12…入力部
13…表示部
14…表示制御部
15…記憶部
16…情報受付部
17…確認部
18…判定部
19…認知症検知部
20…認知症警告部
【要約】      (修正有)
【課題】医師の専門的知識を必要とせず、利用者に抵抗感が少なく、利用者が楽しみながら、認知症の兆候を検知する認知症問診装置を提供する。
【解決手段】認知症問診装置10は、利用者が過去に見聞した可能性のある特徴画像を複数提示する表示制御部14と、特徴画像の各々が表す名称を利用者から入力として受け付ける情報受付部16と、情報受付部16が受け付けた名称が特徴画像の各々が表す名称として正解か否かを判定する判定部18と、判定部18が正解と判定した割合に応じて、利用者の認知症の兆候を検知する認知症検知部19と、認知症検知部19が利用者の認知症の兆候を検知した場合には、認知症の兆候があることを利用者に提示する認知症警告部20と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13