特許第5938519号(P5938519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5938519-乳化MQ樹脂:組成物および方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938519
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】乳化MQ樹脂:組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20160609BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 8/893 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20160609BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20160609BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20160609BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20160609BHJP
【FI】
   A61K8/891
   A61K8/36
   A61K8/893
   A61K8/49
   A61K8/31
   A61K8/06
   A61Q1/00
   A61Q5/12
   A61Q5/02
   A61Q19/00
   A61Q17/04
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-510252(P2015-510252)
(86)(22)【出願日】2013年1月3日
(65)【公表番号】特表2015-515981(P2015-515981A)
(43)【公表日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】US2013020145
(87)【国際公開番号】WO2013165482
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2014年11月20日
(31)【優先権主張番号】13/463,009
(32)【優先日】2012年5月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100171505
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 由美
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウィルソン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ホーキンズ,ジェフリー
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−501934(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/129316(WO,A1)
【文献】 特開2011−213708(JP,A)
【文献】 特表2008−537952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−99/00
DB等 DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続水相と、
可塑化されたMQ型樹脂および/もしくはその誘導体、ならびに/または可塑化されたMT型樹脂および/もしくはその誘導体を含む、不連続相
該不連続相を水相中に乳化する界面活性剤系であって、
脂肪酸と少なくとも1種のアルカリ金属の少なくとも1種の水溶性塩;
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンおよび/またはPEG-10ジメチコン;ならびに
水中油型乳化活性を示す、1種以上の糖脂肪酸エステルおよび/またはその誘導体;
を含む界面活性剤系と
を含んでなる組成物。
【請求項2】
不連続相が可塑化されたトリメチルシロキシケイ酸樹脂および/またはその誘導体の副相を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
副相がトリメチルシロキシケイ酸樹脂、ジメチコンシリコーンガムおよび揮発性溶媒を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
副相中のトリメチルシロキシケイ酸樹脂とジメチコンシリコーンガムの比が15:1〜1:15である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
副相中のトリメチルシロキシケイ酸樹脂とジメチコンシリコーンガムの比が15:1〜1:1である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
副相が、該副相の10〜45重量%のトリメチルシロキシケイ酸樹脂、および該副相の3〜30重量%のジメチコンシリコーンガムを含む、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
前記溶媒がイソドデカンである、請求項3記載の組成物。
【請求項8】
水相が組成物全体の10%〜70%を構成し、副相が組成物全体の0.1%〜60%の重さである、請求項4記載の組成物。
【請求項9】
組成物の表面張力が14〜65ダイン/cmである、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
組成物の表面張力が30〜50ダイン/cmである、枝毛を処置するための請求項9記載の組成物。
【請求項11】
シャンプーまたはコンディショナーまたはオールインワンシャンプーおよびコンディショナーである、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1種のスキンケア成分を含む、請求項9記載の組成物。
【請求項13】
1種以上のサンスクリーン剤を含み、かつ少なくとも10のサンスクリーン指数(SPF)を示す、請求項9記載の組成物。
【請求項14】
顔料、パール剤、染料、および/または人の外観を変更するために光を反射および/もしくは屈折させる材料を含むカラー化粧品である、請求項9記載の組成物。
【請求項15】
安定なエマルジョン製品であって、
連続水相;
連続相中に乳化された不連続相であって、トリメチルシロキシケイ酸樹脂および/またはその誘導体、ジメチコンシリコーンガム、および揮発性溶媒の副相を含み、該副相中のトリメチルシロキシケイ酸樹脂とジメチコンシリコーンガムの比が15:1〜1:15である、不連続相;ならびに
ステアリン酸と水酸化ナトリウム、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、およびセスキステアリン酸メチルグルコースを含む界面活性剤系;
を含んでなる、上記製品。
【請求項16】
水相が組成物全体の10%〜70%を構成し、副相が組成物全体の0.1%〜60%の重さである、請求項15記載のエマルジョン。
【請求項17】
請求項15記載のエマルジョンを枝毛のある毛髪に適用する段階を含んでなる、枝毛を処置する方法。
【請求項18】
エマルジョンの副相が製品全体の20%〜60%の重さである、請求項15記載の安定なエマルジョン製品を保持する容器;および
該製品を少なくとも週1回使用すべきであるという指示;
を含んでなるパッケージ商品。
【請求項19】
エマルジョンの副相が製品全体の0.1%〜5%の重さである、請求項15記載の安定なエマルジョン製品を保持する容器;および
該製品を少なくとも毎日使用すべきであるという指示;
を含んでなるパッケージ商品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、シリコーン樹脂の安定なエマルジョンに関する。特に、本発明は、乳化されたMQ型シリコーン樹脂に関する。本発明はまた、乳化MQ樹脂を含む組成物、ならびにこのような組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
トリメチルシロキシケイ酸は、パーソナルケア製品に各種の用途を見出しているMQ型シリコーン樹脂である。市販されている2種類のMQ樹脂は、Momentive Performance Materials社製のSilicone SR 1000とDow Corning社製のMQ-1600である。一部の供給業者によれば、トリメチルシロキシケイ酸は、種々の有機およびシリコーンオイル中に50%以上の濃度にまで溶解可能であり、ある種のシリコーン、アルコール、エステルおよび炭化水素を含めて、さまざまな種類のパーソナルケア成分と適合する。この物質は疎水性であり、標準温度・圧力で約105.8°の水接触角を有すると報告されている。この成分は強い粘着力を与え、移動抵抗および洗い流し抵抗を付与するために使用することができる。この物質は皮膜形成能と皮脂吸収能を有しており、サンスクリーン製品を改善するために使用されている。粘度増強剤として、トリメチルシロキシケイ酸樹脂は、口紅およびエマルジョンの安定性を改善するために使用されている。
【0003】
それにもかかわらず、純粋なトリメチルシロキシケイ酸樹脂の1つの重大な欠点は、油と水のエマルジョン系の内相にこの樹脂を取り込むことの困難さである。最大3%の樹脂の乳化がこれまでに達成されていた可能性はあるが、我々の知る限りでは、本明細書に記載したはるかに高い濃度(すなわち、10%〜45%またはそれ以上)に及ぶものはなく、特に長期的に安定で、局所適用に適している系においてはそうである。本出願人の知る限り、そのようなエマルジョン系は本発明以前に存在しなかった。
【0004】
この物質の別の欠点は、形成された皮膜の脆さである。形状が変わりやすい非剛体表面(すなわち、毛髪、顔、手など)に皮膜が沈着されると、その皮膜は割れたり、フレーク状になったり、剥がれたりする可能性があり、それによって製品の有効性が損なわれ、使用者に貧相な美的体験を提供することになる。
【0005】
表面に広がる液体の能力は、相対的な表面エネルギーによって支配される。2相の表面エネルギーの差がほぼ同一である場合、より大きな湿潤性とより大きな密着性が達成される。一方、固体の表面エネルギーと比較して液体の表面張力が大きければ大きいほど、生じる湿潤性は小さくなる。健康なヒトの毛髪の表面は、それを負に帯電させかつ疎水性にする、脂肪酸脂質で覆われている。健康な毛髪の表面エネルギーは約24〜28ダイン/cmであることが報告されている一方で、25℃での水の表面張力は約72ダイン/cmである。その結果、健康な毛髪と水との接触角は約103°±4°であると報告されているが、アジア人とアフリカ人の毛髪は平均すると白人の毛髪よりもわずかに小さい。したがって、健康な毛髪は水をはじくようになっている。
【0006】
対照的に、毛髪の軸(毛幹)は、化学薬剤(スタイリングおよびカラートリートメント剤に含まれる薬剤)、機械的ストレス(すなわち、コーミングからのストレス)および熱(すなわち、ブロー乾燥およびヘアアイロンからの熱)への過剰暴露の結果として損傷を受け得ることがよく知られている。このような過剰暴露は、毛髪繊維の保護キューティクル層を損ない、毛皮質をさらなる損傷にさらす可能性がある。損傷は、毛髪繊維の自由端から頭皮の方へ延びる毛幹の枝分かれとして現れることがある。傷んだ毛髪の表面エネルギーは、より健康な毛髪の場合の24〜28ダイン/cmと比較して、約30〜50ダイン/cmであると見なすことができる。その結果、傷んだ毛髪は健康な毛髪よりも疎水性が著しく低い。実際に、多くの市販のトリートメント剤は有害であるので、毛髪がやや親水性の状態にされる(すなわち、50°〜80°の水-毛髪接触角が報告されている)。
【0007】
Alberto-Culver社製のNexxus ProMendと呼ばれる市販の製品ラインは、枝毛部分をくっつけて固めることが報告されている。この製品は、ポリクオタニウム28(ビニルピロリドンとメタクリルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとの共重合体)とPVM/MA共重合体(メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体)の複合ポリマー溶液を使用している。我々の試験では、1回のすすぎ後に、Nexxus ProMend製品は枝毛の30〜60%の補修を保っていたにすぎないことが示された。我々の知る限りでは、最低3回のすすぎ後に少なくとも75%の補修を保っている市販の製品は皆無である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様は、水性外部相または連続相と、内相または不連続相中の比較的高い濃度のMQ型樹脂および/またはその誘導体を有する、長期間安定したエマルジョンである。我々は、これらのタイプのエマルジョンを、MQ樹脂エマルジョンまたは単にMQエマルジョンと呼ぶ。本発明によれば、MQエマルジョンは慎重に選ばれた界面活性剤系を用いて調製される。数多くの研究の後、我々は、水中油型エマルジョンの内相にMQ樹脂および/またはその誘導体を取り込むための界面活性剤系ならびに方法を見出した。この界面活性剤系は、本明細書に記載されるような、イオン性および非イオン性の成分を含む。
【0009】
本発明者らはさらに、我々のMQ樹脂エマルジョンを含む局所使用のための新規な組成物を見出した。これらの組成物には、ヘアケア製品、特に枝毛を処置するためのもの、スキンケア製品、例えばサンスクリーン製品など、および皮膚と毛髪に活性物質を送達するための系が含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
いくつかの好ましい実施形態では、MQ樹脂は、水中油型エマルジョンの内相中に分散される前に可塑化される。有効な可塑化度は本明細書において定義される。
【0011】
いくつかの好ましい実施形態では、MQエマルジョンの表面張力が傷んだ毛髪または皮膚などの標的表面の表面張力に十分に近くなるような方法で、該エマルジョンが安定化されることを確実にするために、慎重さが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】唯一の図は、本発明によるMQ樹脂エマルジョンの層を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書を通して適用される定義
「含む」およびその関連する同根語は、1つのグループが明示的に列挙されたメンバーに限定されず、追加のメンバーを含んでも含まなくてもよい、ことを意味する。
【0014】
「純粋な」MQ樹脂とは、我々は、Me3SiO(M単位)とSiO4(Q単位)のモノマー単位のみから構築された、分岐した、高度に架橋した、水不溶性の網状構造体を意味する。MQ樹脂の「誘導体」に関しては、我々は、非臨界的な数のメチル基および/または非臨界的な数の酸素原子を1つ以上の置換基で置き換えることによって改変された純粋なMQ樹脂を意味する。置換基は反応性または非反応性であり得る。一般的に、本発明で使用するための誘導体を選択する際には、より低い反応性を有する置換基の方が、より大きな反応性を有する置換基よりも好ましいであろう。「非臨界的な数」とは、我々は、シリコーン樹脂エマルジョンの安定性を有意に劣化させない、または市販製品の意図した性能を有意に妨害しない、置換度を意味する。Mタイプのモノマー単位中の1または2個のメチル基が酸素で置換されると、Dタイプ(Me2SiO2)またはTタイプ(MeSiO3)のシリコーン樹脂モノマー単位が得られる。同様に、Qタイプのモノマー単位中の1または2個の酸素原子がメチルで置換されると、DタイプまたはTタイプのシリコーン樹脂モノマー単位が得られる。M、Q、DおよびTモノマー単位のさまざまな組み合わせから構築されたシリコーン樹脂もまた、本発明において用途を見出し得る。MQ樹脂のほかに、MT樹脂とその誘導体をベースとしたエマルジョンは特に注目すべきであるが、MQ樹脂とその誘導体が好ましいものである。
【0015】
連続相
本発明の組成物は水中油型エマルジョンである。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、連続相は水性であり、全組成物の10%〜70%を構成することができる。正確な量は、意図した用途によって異なるであろう。一般的に、水相は任意の水適合性成分を含むことができるが、ただし、該成分(複数可)の量は、エマルジョンの安定性を有意に乱さない、または製品の意図した性能もしくは効果を有意に妨害しない量である。通常、これは、ほとんどの既知の毛髪および皮膚美容成分、ならびにヘアケアおよびスキンケア成分が、所与の成分に典型的である量で使用され得る、ことを意味する。このような成分には、限定するものではないが、皮膚および/または毛髪を美しくし、皮膚および/または毛髪の利益になることを意図したもの、製品の消費者知覚を変更または向上させることを意図したもの、製品の品質と完全性を維持することを意図したものが含まれる。一般的に、本発明の組成物は、皮膚および/または毛髪の表面付近にそのような成分を閉じ込めることによって、多くのスキンケアおよびヘアケア成分により提供される効果を増強または延長する可能性がある。
【0016】
水相に適切であり得るスキンケアおよびヘアケア成分の例としては、以下が挙げられる:顔料、パール剤および染料、人の外観を変えるために光を反射および/または屈折させる材料、サンスクリーン剤、保湿剤、コンディショナー、エクスフォリエーター、DNA修復活性物質、毛髪および/または皮膚バリアリペア剤、ふけ防止剤、抗酸化剤、帯電防止剤、スタイリング剤、光沢付与剤、毛髪のボリュームを付与する剤、毛髪成長促進剤、脱毛剤、タンパク質および他の生物学的添加剤。小麦タンパク質、ホホバ油およびエッセンシャルオイルは、これらの成分によって送達されることがすでに知られている効果を高めるために、本発明の組成物によって新規な方法で毛髪または皮膚に送達することができる成分のほんの数例である。皮膚もしくは毛髪のバリア層を破壊または破損する傾向がある成分は、本発明の組成物においてあまり好ましくなく、完全に避けることがより好ましい。
【0017】
製品の消費者知覚を変更または向上させることを意図した、水相に適切であり得る成分の例としては、以下が挙げられる:香料、色調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、結合剤、ポリマー、増量剤、皮膜形成剤、可塑剤、溶媒、界面活性剤、懸濁化剤、および知覚を変更する他の周知の化粧品用補助剤。
【0018】
製品の品質と完全性を維持することを意図した、水相に適切であり得る成分の例としては、以下が挙げられる:防腐剤、乳化安定剤、色および香気安定剤、緩衝剤、キレート剤、光安定剤、ならびに製品の完全性を維持するための他の周知の化粧品用補助剤。
【0019】
不連続相
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、エマルジョン組成物の内相は、上で定義したような、MQ型シリコーン樹脂および/またはその誘導体を含む。上述したように、MT型樹脂および/またはその誘導体もまた、本明細書に開示した原理に従って使用される場合に用途を見出すことができる。MT型樹脂および/またはその誘導体は、単独で使用しても、MQ型樹脂と組み合わせて使用してもよい。本発明の組成物において、好ましいMQまたはMT樹脂は皮膜形成能を有し、かつ炭化水素溶媒中に可溶性のものである。好ましい皮膜形成性のMQ樹脂は、その皮膜形成特性を改善するために可塑化されているトリメチルシロキシケイ酸樹脂である。適切な可塑化は、毛髪および皮膚などの、形状が変わり得る表面への適用に適する柔軟な皮膜をもたらすであろう。可塑化されたMQ型シリコーン樹脂を製造するための好ましい方法は、本明細書に開示されるように、可塑化された樹脂を副相(sub-phase)として製造することを含む。可塑化MQの副相を製造するには、最初に、ある量のMQ樹脂、例えばトリメチルシロキシケイ酸またはその誘導体を、揮発性溶媒、例えば揮発性炭化水素または揮発性シリコーン溶媒中に溶解する。例えば、1つの有用な溶媒はイソドデカンである。スワイプミキサーを用いて、溶液が高度の透明性を有するまでイソドデカン中のMQ樹脂を室温で混合する。その後、室温でスワイプ混合しながら、溶解したMQ樹脂にジメチコンシリコーンガムを少しずつ添加して、最終溶液が透明で、塊を含まなくなるまで混合する。可塑化および副相のエマルジョンへの取り込みを妨害しないのであれば、他の成分を副相に添加してもよい。
【0020】
可塑化MQ樹脂が不連続相中に配置される、我々が開示するエマルジョンでは、副相の約10〜45重量%のトリメチルシロキシケイ酸樹脂および副相の約3〜30重量%のジメチコンシリコーンガムを含む可塑化MQ副相を製造することが有利である。可塑化および副相のエマルジョンへの取り込みを妨害しないならば、他の成分を副相に添加してもよく、さらに適量の溶媒を添加して副相を100%にする。より一般的には、各種の好ましいパーソナルケア製品では、MQ副相中のトリメチルシロキシケイ酸樹脂とジメチコンシリコーンガムの比を約15:1〜1:1とすることができる。好ましい比は、製品の種類、所望の効果、および使用頻度によって変わる。例えば、いくつかの好適な製品(すなわち、枝毛トリートメント製品およびある種の口紅のようなカラー接着製品)は、前記範囲の15:1端に近くなる傾向があり、これに対して、ヘアスタイリング製品は前記範囲の1:1端の方に向かう傾向があり、モイスチャーバリア・スキンケア製品(すなわち、保湿製品およびリップグロス製品)は中間のどこかになる傾向がある。しかし、各種製品の間にはトリメチルシロキシケイ酸樹脂とジメチコンシリコーンガムの比に大きな重複が存在するので、この最後の記載は大まかな指針にすぎない。原理的には、MQ副相中のトリメチルシロキシケイ酸樹脂とジメチコンシリコーンガムの比が約1:1〜約1:15である場合にも、有用な組成物を製造することができる。
【0021】
水中油型エマルジョン組成物全体に関して、可塑化MQ副相は、典型的には、全組成物の約0.1%〜約60%の重さとすることができ、好ましい量は、組成物の種類、所望の効果、および使用頻度に依存する。一般的に、より多くのMQ樹脂は、より重い、粘着性の製品を生み出し、こうした製品はある状況では受け入れられ、他では受け入れられない。実際に、以下に記載されるような、いくつかの随時使用のトリートメント製品では、約20%〜約60%が有用であるが、20%〜50%も多くの用途に適しており、30%〜50%が好ましく、約40%〜45%がより好ましいことを本発明者らは見出した。一方、シャンプーまたはコンディショナーのような、日常使用の製品では、かなり低い濃度が適切であり得る。実際に、約0.1%〜約5%の副相濃度は有効な効果を提供し得ることが見出された。0.1%〜60%の範囲内のどの範囲が好ましいかは、正確な状況によって決まるだろう。主組成物へのその添加に続いて、揮発性溶媒の一部または実質的に全部を蒸発させることができる。
【0022】
本発明による商業的組成物中に分散させる場合、不連続相は、必要に応じて、皮膚もしくは毛髪のためになる任意の適切な成分、製品の消費者知覚を変更または向上させることを意図した任意の成分、および/または製品の品質と完全性を維持することを意図した任意の成分を含むことができる。
【0023】
界面活性剤系
本発明の界面活性剤系は、可塑化MQ樹脂を乳化状態に維持する程度の安定性をシリコーン樹脂エマルジョンに付与する必要がある。受け入れられる安定性は、商業的に受け入れられるものと定義される。例えば、最終製品において、MQ樹脂は、少なくとも消費者に公表されている有効期限を通して、約45℃までの温度にさらされても、乳化状態のままでなければならない。そのような期限は、製造日から少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月、より好ましくは少なくとも1年、最も好ましくは、パーソナルケア製品において一般的であり、かつ消費者が期待している、製造日から少なくとも2年であるべきである。そのような期限内に肉眼で見える、連続相と不連続相との分離の兆候は、エマルジョンの不安定性をもたらす。本発明で使用するための1つの好ましい界面活性剤系は、水溶性石鹸系、第1の非イオン系、および第2の非イオン系を含む。3種すべてが決定的に重要な意味を持っている。
【0024】
石鹸系
一般に、水溶性石鹸には、アンモニア、特定のアミン、アルカノールアミンおよび/またはアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)の少なくとも1種と組み合わされた脂肪酸の少なくとも1種の水溶性塩が含まれる。例えば、種々のC8-C20脂肪酸およびそれらの混合物が有用である。さまざまな実施形態において、好ましい石鹸系は、水酸化ナトリウムとステアリン酸からその場で形成されたステアリン酸ナトリウムを含み、該ステアリン酸は全組成物の約1〜6重量%の範囲である。水酸化ナトリウムの30%溶液の量は、全組成物の約0.2〜1.5重量%の範囲であり得る。30%以外の水酸化ナトリウムの溶液では、十分なステアリン酸ナトリウムが生成されることを確実にするために、それに応じてこの範囲を調整することができる。
【0025】
第1の非イオン系
第1の非イオン系は油溶性でなければならない。いくつかの好ましい実施形態では、非イオン系はラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(報告されたHLBは約3)を含む。この材料は信越化学からKF-6038として市販されている。HLBが約4.5と報告されているPEG-10ジメチコン(KF-6017)もまた、単独でまたはPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンとの組み合わせで、有用であり、他の非イオン性乳化剤も同様である。一般的に、より多くのMQ樹脂が組成物中で使用される場合は、より低いHLB値の第1の非イオン性乳化剤が好ましい。比較的少ないMQ樹脂が組成物中で使用される場合は、より高いHLB値の第1の非イオン性乳化剤が適切であり、好適でさえあり得る。
【0026】
第1の非イオン系は、全組成物の約0.2〜約10重量%の1種以上の非イオン性油溶性乳化剤、例えばラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンおよび/またはPEG-10ジメチコンを含む;好ましくは約0.35〜約3.0%、より好ましくは約0.5〜約1.0%であるが、約0.8%が最適である。
【0027】
第2の非イオン系
好ましい第2の非イオン系は、水中油型乳化活性を示す1種以上の糖脂肪酸エステルおよび/またはその誘導体を含む。全組成物の重量による第2の非イオン系の濃度範囲は、約0.30%〜約6.0%になる。好ましい糖脂肪酸エステルは、セスキステアリン酸メチルグルコースおよび/またはその誘導体である。セスキステアリン酸メチルグルコースのような糖脂肪酸エステルは、一方の端部で親油性(非極性炭化水素鎖)であり、反対側の端部で親水性(複数の親水性ヒドロキシド基を有する糖環)である。セスキステアリン酸メチルグルコースは、本出願にとって特に良くバランスがとれており、多くの場合、第2の非イオン系として、それだけで十分であろう。しかし、他の糖脂肪酸エステルは、セスキステアリン酸メチルグルコースと組み合わせて有用であり得る。これらの糖脂肪酸エステルとしては、限定するものではないが、以下が挙げられる:モノラウリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸グルコース、セスキステアリン酸アルキルグルコースおよびパルミチン酸アルキルグルコース、例えばパルミチン酸メチルグルコースまたはパルミチン酸エチルグルコース、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノカプリル酸ソルビタン、モノイソオレイン酸ソルビタン、ならびに前記化合物の誘導体。このような任意の化合物は、第2の非イオン系の全体的な機能を妨害しないやり方で使用されねばならない。
【0028】
水中油型エマルジョン
本発明の水中油型エマルジョンを調製する際に、可塑化MQ樹脂は、実質的に上で述べたように、MQ副相として形成されるべきである。さらに、MQ副相が取り込まれた後の組成物にアルカリ金属相を添加する場合には、最良の結果が達成される。アルカリ金属の添加により、組成物は、図1によって特徴づけられると考えられる、安定したエマルジョンを構成する(assemble)。アルカリ金属の添加は、第1の非イオン系(すなわち、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)で囲まれた可塑化MQ樹脂の液滴の形成を容易にし、これが第2の非イオン系(すなわち、セスキステアリン酸メチルグルコース)でさらに囲まれ、石鹸系によって水相中で安定化される。一般的に、本発明に係る水中油型エマルジョンは、次のように構成することができる。
【0029】
主ケトルに水相を添加し、混合して約70℃に加熱する。
補助ケトルに、第1および第2の非イオン系と共に、石鹸系の脂肪酸を加える。混合して約80℃に加熱する。
補助ケトルの内容物を主ケトルに移す。混合して約50℃に冷却する。
可塑化MQ副相を主ケトルに添加する。混合して約45℃に冷却する。
アルカリ金属相を添加する。混合して周囲温度に冷却する。
【0030】
必要に応じて他の工程が介在してもよい。本発明の組成物の一例は、その本質的特徴において、以下の通りである。
本質的特徴(実施例1)
より典型的には、本発明の組成物は以下の非限定的な例(実施例2)のようであり得る:
必要に応じて他の相を含めてもよい。
組成物の種類
これまでに説明したエマルジョン組成物は、毛髪、皮膚および爪用のメイクアップ製品またはトリートメント製品として実施することができる。
【0031】
毛髪および頭皮用の製品
上述したように、健康な毛髪の表面エネルギーは約24〜28ダイン/cmであるが、傷んだ毛髪のそれは約30〜50ダイン/cmであると報告されている。したがって、大まかには、本発明の組成物は約20〜50ダイン/cmの表面張力を有する毛髪に適用できると言える。25℃の純水は約72ダイン/cmの表面張力を有する。そのため、界面活性剤系は、エマルジョン組成物が処置される毛髪の表面エネルギーに効果的に近い表面張力を持つことができるように設計された。一般的に、本明細書に開示したエマルジョン組成物の効果は、該組成物の表面張力が処置される毛髪の表面エネルギーの約30%以内である場合に実現されるだろう;20%以内がさらに良好であり、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内、最も好ましくは処置される毛髪の表面エネルギーの2%以内である。一般的に、本発明のヘアトリートメント組成物は、約14〜約65ダイン/cmの表面張力を有し、16〜60がさらに良好であり、好ましくは18〜55、より好ましくは19〜52.5、最も好ましくは19.6〜51ダイン/cm、特に約30〜約50ダイン/cmである。
【0032】
エマルジョンに必要な表面張力をもたらすことができると同時に、商業的に安定しており、かつ可塑化MQ樹脂と適合する界面活性剤系を見つけ出すことは、些細なことでも自明なことでもなかった。それにもかかわらず、上述した界面活性剤系は、このタイプのエマルジョンを作るために有用である。また、上記の界面活性剤系は、最終エマルジョン組成物の表面張力が組成物中の水の量に感受性であるようなものである。感受性の程度は、最終組成物の表面張力を微調整するための最も簡単な方法が組成物中の水の量を調節することであり得るようなものである。このことは、目標の表面張力を持つように組成物を設計するときに真の利点となる。
【0033】
毛髪を対象とした本発明の組成物は、長期的または短期的に毛髪および/または頭皮に利益をもたらす任意の成分を含むことができるが、ただし、そのような成分の量は、エマルジョンの安定性を有意に乱すことがあってはならず、また、組成物の意図された効果を有意に妨害してはならない。特に関心のあるものは、毛皮質への浸透が望まれる場合、約1,000ダルトン未満、好ましくは約750ダルトン未満、より好ましくは約500ダルトン未満の毛髪に有益な分子である。小麦タンパク質などのタンパク質は、特に有益である。毛髪を加水分解する、および/またはシスチン結合を強化する成分は、本発明において使用することができる。各種の有用な活性物質および毛髪に有益な成分は、当業者には明らかであろう。顔料のような着色剤もまた有用であり得る。
【0034】
毛髪に適用されたとき、本発明のエマルジョンの外部相は、それが表面エネルギーの点で厳密に一致する毛髪に対して親和性を有する。したがって、水相の層は、毛髪を覆い囲むように形成される傾向がある。同時に、エマルジョンを毛髪に適用する行為は、毛髪に沿ってエマルジョンを破壊させて、可塑化MQ樹脂の液滴を合体させる。可塑化MQ樹脂の柔軟性は該樹脂を疎水性皮膜へと合体させ、該皮膜は、ひび割れすることなく、水層の上にあって、それを包囲する。こうした皮膜は、ヘアケア活性物質などの水相成分が毛幹の近くに閉じ込められるほど、十分に強力である。皮膜は、複数回の洗浄、ブロー乾燥およびスタイリングのサイクルを通して活性物質を適所に保ち、かつ毛髪に追加の破断強度と潤滑性を付与するのに十分なほど強力である。MQ樹脂はまた、毛髪の光沢を増加させる効果がある。
【0035】
枝毛を処置するための組成物
本発明の非常に興味深い商業的応用は、枝毛を処置するための組成物としてである。本発明による枝毛用組成物は、その表面張力が傷んだ毛髪のそれに実質的に近くなるように調整された水中油型エマルジョンを含む。枝毛を修復しかつ数回の洗浄・すすぎサイクルを通して持続する、商業的に受け入れられる製品をもたらす方法で、エマルジョンが同時に安定化されかつ表面張力について調整され得るということは、予期せぬことであり、簡単なことではなかったが、本出願人が行ったことはそういうことである。
【0036】
上述したように、前記組成物は、成分の量がエマルジョンの安定性を有意に乱したり、枝毛を修復する製品の能力を有意に妨害したりしない限り、どのような成分でも含むことができる。本発明の組成物に添加したとき、枝毛を促進する方法で毛髪のキューティクルの層を破壊し得る成分は、本発明の組成物においてあまり好ましくなく、完全に避けることが好ましい。枝毛トリートメント組成物の好ましい実施形態では、可塑化MQ樹脂の副相は、トリメチルシロキシケイ酸樹脂の比較的高い濃度を持つ傾向がある。すなわち、MQ副相におけるトリメチルシロキシケイ酸樹脂とジメチコンシリコーンガムの比は、上に示した範囲の15:1端の方になる傾向がある。枝毛を処置するための有効な組成物の一例は、次の通りである。
【0037】
枝毛トリートメント製品(実施例3)
このエマルジョンの表面張力は、室温で33.5ダイン/cmであると測定された。したがって、このエマルジョンは傷んだ髪に対して高度の親和性を示すだろう。毛髪に適用したとき、このエマルジョンは、それが表面エネルギーの点で厳密に一致する傷んだ髪に対して親和性を有する。かくして、水相の層は、損傷部位の近くに、すなわち枝毛部分に沿って、毛髪を覆い囲むように形成される傾向がある。同時に、エマルジョンを毛髪に適用する行為は、エマルジョンを破壊させて、可塑化MQ樹脂の液滴を合体させる。可塑化MQ樹脂の柔軟性は該樹脂を疎水性皮膜へと合体させ、該皮膜は、ひび割れすることなく、水層の上にあって、それを包囲する。MQ樹脂の強い凝集性(cohesiveness)は枝毛の分かれた部分を引き寄せて、ヘアケア活性物質などの水相成分を露出された毛皮質の近くに閉じ込める。皮膜の凝集力は、複数回の洗浄、ブロー乾燥およびスタイリングのサイクルを通して枝毛の修復を維持し、かつ毛髪に追加の破断強度と潤滑性を付与するのに十分である。MQ樹脂はまた、毛髪の光沢を増加させる効果がある。単独での枝毛修復の効果、および全体としてのすべての上述した利点は、市場の他のヘアケアまたは枝毛トリートメント製品よりも予想外に優れている。
【0038】
これまでに説明したヘアケア製品は、乾いたもしくは湿った髪に適用することができ、コーミングにより、指で、または他の手段によって毛髪に働きかけることができる。高濃度のシリコーン樹脂は、数回の洗浄・すすぎサイクルの間、樹脂を毛髪に残留させることができ、従って、トリートメントを毎日適用する必要がないかもしれない。例えば、枝毛をトリートメントする方法は、本発明の組成物を、有意な枝毛トリートメント効果をもたらしながら、時々、例えば、1日おきに、3日ごとに、週2回、または週1回、毛髪に適用することを含み得る。本発明者らは、枝毛トリートメントを次のように評価した。
【0039】
実施例3による組成物を調製した。枝毛で傷んだ繊維を有する毛髪の房を入手した。各房の中で、20本の枝毛繊維を追跡のためにランダムにタグ付けした。毛髪を、通常のシャンプークレンジング方法で、シャンプー(Pantene Classic)と水により洗浄して、すすいだ。続いて、毛髪をタオルで乾燥させた。その後、組成物の10セント硬貨大の量(約0.5グラム)を湿った髪の房全体に指で塗り付けた。この初期適用の後、タグ付けされた繊維の状態を顕微鏡で観察した。その後、この房を、通常のシャンプークレンジング方法で、シャンプー(Pantene Classic)と水により洗浄して、すすいだ。すすいだ後、房をブロー乾燥させた。次に、各房にホットアイロンを2回通過させ、毛髪繊維を約425°Fの温度にさらした。この洗浄、ブロー乾燥、ホットアイロンのサイクルを複数回繰り返し、房中のタグ付けされた繊維の状態を全体にわたって顕微鏡で観察した。
【0040】
トリートメント直後は、100%の枝毛繊維が修復された。4回目の洗浄/乾燥/ホットアイロンサイクル後に、75%(15/20本)の枝毛がまだ修復されていた。5回目のサイクル後、80%(16/20本)の枝毛が修復されていた。6回目のサイクル後、75%(15/20本)の枝毛が依然として修復されていた。このように、本発明のMQ樹脂エマルジョンは、枝毛のための非常に効果的なトリートメントを提供し、その効果は、MQエマルジョン組成物の再適用なしに、6回の洗浄/ブロー乾燥/ホットアイロンサイクル後でさえも毛髪に残存していた。この組成物の皮膜形成能および傷んだ髪に対するその持続性は、長期にわたる枝毛トリートメントを提供する。
【0041】
本発明のエマルジョン組成物の別の用途、および本発明の主な利点は、本発明の完全に構成されたMQ樹脂エマルジョン組成物を、シャンプーもしくはコンディショナーまたはオールインワンシャンプーおよびコンディショナーなどの水性系に分散させることができることである。そうすることによって、適切な水性製品はどれも、MQエマルジョンの利点を取り入れることにより変換することが可能である。例えば、実施例3の組成物をシャンプー(または毛髪に適用するのに適した他の製品)に分散させることによって、そのシャンプーは枝毛トリートメント製品に変換される。一般に、MQ樹脂の濃度は、もとのエマルジョンに比べて、新製品では有意に低くなるだろう。それにもかかわらず、枝毛修復のようなヘアケア効果はまだ達成される。しかし、濃度が低いため、効果を維持するためには時たまよりも頻繁にトリートメントを繰り返す必要がある。しかし、これは、1日あたり少なくとも1回使用され得るシャンプーまたはコンディショナーのような製品にとって、大きな欠点ではない。最大の懸念は、分散されたエマルジョンの量がホスト組成物の発泡性、泡立ち、洗浄またはコンディショニング特性を著しく妨げるべきでない、ということである。本発明者らは、本発明によるシリコーンエマルジョンが、典型的には、発泡性、泡立ち、洗浄およびコンディショニングなどのホスト組成物の特性に悪影響を与えることなく、シャンプーまたはコンディショナー組成物の約0.1%〜3.0%を構成し得ることを見出した。本発明者らは、枝毛トリートメントを次のように評価した。
【0042】
ホスト組成物として、我々は、Aveda社製のダメージリバース修復シャンプー(Damage Reverse Restorative Shampoo)およびダメージリバース修復コンディショナー(Damage Reverse Restorative Conditioner)を使用した。室温で、実施例3に従うMQ樹脂エマルジョン(40%のMQ副相)を1%の濃度でこれらの完成した市販製品のそれぞれに分散させた。したがって、改良されたシャンプーとコンディショナーは約0.40%のMQ副相を含んでいた。その後、0.1〜0.2グラムのシャンプーを一房の毛髪に適用し、0.1〜0.2グラムのコンディショナーを別房の毛髪に適用した。各房の毛髪は枝毛で傷んでいた。各房の中で、20本の枝毛繊維を追跡のためにランダムにタグ付けした。
【0043】
シャンプーとコンディショナーは、毛髪を洗浄してすすぐためのシャンプーおよびコンディショナーの通常の方法で、水を用いて各房に適用した。すすいだ後、房をブロー乾燥させた。次に、各房にホットアイロンを2回通過させ、毛髪繊維を約425°Fの温度にさらした。この洗浄/ブロー乾燥/ホットアイロンのサイクルを複数回繰り返し、各房中の特定の繊維の状態を全体にわたって観察した。各サイクルの後で、タグ付けされた繊維の状態を顕微鏡で観察した。シャンプー製品を用いた1回目のサイクルの後に、90%(18/20本)の枝毛が修復された。2回目のサイクル後に、90%(18/20本)の枝毛が修復された。コンディショナーを用いた1回目のサイクルの後に、95%(19/20本)の枝毛が修復された。2回目のサイクル後に、90%(18/20本)の枝毛が修復された。このように、MQ副相を別の製品に0.4%で分散させた場合でさえ、本発明のMQ樹脂エマルジョンは枝毛のための非常に効果的なトリートメントを提供することができる。例えば、枝毛をトリートメントする方法は、本発明の組成物を毛髪に少なくとも毎日、例えば1日1回または1日2回またはもっと頻繁に、適用することを含み得る。本発明者らはこれをシャンプーとコンディショナーで実証したが、本発明のMQ樹脂エマルジョンは他のヘアケアまたはスキンケア製品に記載したように分散させることができる。
【0044】
スキンケア製品
ヒトの皮膚は、通常は疎水性である。皮膚の表面張力は、肌のタイプおよび状態、身体上の位置、および最近それがどのように洗浄されたかに応じて変化する。例えば、報告された皮膚の表面張力値として、掌側前腕での27.5±2.4ダイン/cm、額での50.7ダイン/cm以上が挙げられる。しかし、エーテルで洗浄した後では、これらは21.6±2.6ダイン/cmおよび29.3±1.7ダイン/cmに低下した。石鹸と水で洗った後では、前腕の表面張力は23.7±1.0ダイン/cmに低下した(A. El Khyat, et al., “Skin critical surface tension,” Skin Research and Technology vol. 2, issue 2, p. 91-96; May 1996を参照されたい)。そのため、本発明によるエマルジョン組成物は、ヒト皮膚の表面張力に実質的に近い表面張力を有するように処方することができる。ひとたびエマルジョンが皮膚にわたって破壊されると、水性層を覆うMQ樹脂の皮膜が処置された部位の上に形成される。そのシリコーン皮膜は、皮膚表面近くに水と皮膚に有益な成分とを閉じ込める。皮膚に付着した水の蒸発は、MQ樹脂皮膜によって妨げられる。したがって、本発明によるエマルジョンは、保湿剤、皮膚活性物質送達系、耐摩耗系などによく適している。
【0045】
皮膚を対象とした本発明の組成物は、長期的または短期的に皮膚に利益をもたらす任意の成分を含むことができるが、ただし、そのような成分の量は、エマルジョンの安定性を有意に乱すことがあってはならず、また組成物の意図された効果を有意に妨害してはならない。これらの成分は、MQエマルジョンの外部相または内相に適宜分散させることができるが、水相は皮膚に隣接して閉じ込められるため、水溶性の成分が特に有益であると予想される。化粧品および皮膚科学の分野でよく知られている多くの皮膚に有益な成分はいずれも、これらのスキンケア組成物において、例えば以下のような製品において、用途を見出し得る。
【0046】
しわ取り製品(実施例4)
: 相1と相2は、別々に組み合わせて70〜75℃に加熱し、その後撹拌しながら一緒にしてホモジナイズすべきである。
【0047】
特に興味深いものは、サンスクリーン組成物、特に水相中にサンスクリーン剤を使用するものである。サンスクリーン剤には、紫外線を吸収する有機化合物、ならびにUV光を散乱および/または吸収する無機微粒子が含まれる。以下のサンスクリーン剤はどれも単独でまたは組み合わせて有用であり得る:アボベンゾン、ビスジスリゾール二ナトリウム、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、エカムスル(ecamsule)、アントラニル酸メチル、4-アミノ安息香酸、シノキセート(cinoxate)、エチルヘキシルトリアゾン、ホモサラート(homosalate)、4-メチルベンジリデンカンファー、メトキシケイヒ酸オクチル、サリチル酸オクチル、パディメートO(padimate O)、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、ポリシリコーン-15、トロラミンサリチル酸、ベモトリジノール、ベンゾフェノン類1-12、ジオキシベンゾン、ドロメトリゾールトリシロキサン、イスコトリジノール、オクトクリレン、オキシベンゾン、スリソベンゾン、ビソクトリゾール、二酸化チタン、および酸化亜鉛。好ましくは、前記組成物は少なくとも10のサンスクリーン指数(SPF値)を示す。好ましくは、前記組成物は、UV-A、UV-BおよびUV-C放射線の1つ以上からの保護を提供するサンスクリーン剤を含む。本発明のエマルジョン組成物は、耐摩耗性のサンスクリーン製品として実施することができる。ひとたびエマルジョンが皮膚にわたって破壊されると、水相を覆うMQ樹脂の皮膜が処置された部位の上に形成される。そのシリコーン皮膜は、皮膚表面近くに水相のサンスクリーン剤と他の活性物質を閉じ込める。
【0048】
サンスクリーン製品(実施例5)
皮膚に適したメイクアップまたはカラー化粧品を得ることもできる。
【0049】
ファンデーション製品(実施例6)
手順: 主容器に水を入れる。第2の容器内で、ブチレングリコールにケイ酸アルミニウムマグネシウムを分散させ、次にカルボキシメチルセルロースナトリウムを分散させて、均質になるまで混合する。プロペラ混合しながら主容器に第2の容器の内容物を加える。均質になるまで混合する。相2を添加して、均質になるまで混合する。ホモジナイズしながら相3を添加する。均質になるまでホモジナイズする。72℃に加熱し始める。補助容器内に、第1および第2の非イオン系と共に、石鹸系の脂肪酸を加える。混合して、約80℃に加熱する。補助容器の内容物を主容器に移す。混合して、約50℃に冷却する。可塑化MQ副相を主ケトルに加える。混合して、約45℃に冷却する。アルカリ金属相を添加する。混合して、周囲温度にまで冷却する。
【0050】
本発明の別の態様は、本発明の安定なエマルジョン組成物を保持する容器と、特定の効果を達成および/または維持するために製品をどれほどの頻度で使用すべきであるかの指示を含む、消費者向けのパッケージ商品を包含する。指示は、例えば、パッケージの一部にテキスト印刷することができる。本発明のこの態様の1つの非限定的な例は、本発明の安定なエマルジョン製品(ここで、該エマルジョンの副相は製品全体の約20%〜約60%の重さがある)を保持する容器と、該製品を少なくとも週1回使用すべきであるという指示を含む、消費者向けパッケージ商品である。別の非限定的な例は、本発明の安定なエマルジョン製品(ここで、該エマルジョンの副相は製品全体の約0.1%〜約5%の重さがある)を保持する容器と、該製品を少なくとも毎日使用すべきであるという指示を含む、消費者向けパッケージ商品である。このような消費者向けパッケージ商品は、所定の用途または使用目的に応じて、少なくとも1回のトリートメントまたは適用にとって十分な製品を提供し、所定の用途または使用目的に応じて、好ましくは少なくとも1週間分の適用のために十分な、より好ましくは少なくとも1ヶ月分の適用のために十分な製品を提供するだろう。
図1