(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938525
(24)【登録日】2016年5月20日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト及びヘッドレストを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/48 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
B60N2/48
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-516617(P2015-516617)
(86)(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公表番号】特表2015-519257(P2015-519257A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】EP2013062271
(87)【国際公開番号】WO2013186310
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2015年1月19日
(31)【優先権主張番号】102012105234.4
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012016567.6
(32)【優先日】2012年8月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502156098
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ディリンジャー、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ−マオ、 ウェイ
【審査官】
永安 真
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−061152(JP,U)
【文献】
特開平07−111928(JP,A)
【文献】
特開2009−050461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両座席用のヘッドレスト(1)であって、前記ヘッドレストは前記車両座席に座っている車両乗員の頭部(4)に対する前記ヘッドレスト(1)の相対的な位置を決定することが意図される少なくとも1つのセンサ(8,9,10)を有しており、前記少なくとも1つのセンサ(8,9,10)は、光学センサ(8,9,10)を含み、
前記ヘッドレスト(1)は基部要素(2)及び前記頭部(4)に割り当てられる柔軟なヘッドレスト要素(5)を有しており、前記少なくとも1つのセンサ(8,9,10)は、前記基部要素(2)と前記柔軟なヘッドレスト要素(5)との間に配置され、
前記基部要素(2)に面する前記ヘッドレスト要素(5)の後側において前記ヘッドレスト要素(5)に少なくとも1つの溝(13)が形成され、前記少なくとも1つのセンサ(8,9,10)の光源及び光検出器が前記溝(13)に配置されることを特徴とする、ヘッドレスト(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサ(8,9,10)は、前記ヘッドレスト要素(5)に面する前記基部要素(2)の前方面(7)に配置される複数のセンサ(8,9,10)を含む、請求項1に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項3】
前記光学センサ(8,9,10)の前記光源及び前記光検出器は、光電子バリアとして作用する、請求項2に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項4】
前記光源及び前記光検出器は、前記車両乗員の頭部(4)によって前記ヘッドレスト要素(5)に圧力が加えられない場合に、前記光源から発する光線が前記光検出器に入射し、前記車両乗員の頭部(4)によって前記ヘッドレスト要素(5)に圧力が加えられる場合に、前記光線は遮断されるように配置される、請求項3に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項5】
前記光源は、前記基部要素(2)の側端部に配置される発光ダイオード(9)を含み、前記光検出器は、前記基部要素(2)の対向する側端部に配置されるフォトダイオード(10)を含む、請求項4に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項6】
前記複数のセンサ(8,9,10)は、各光線が互いに対して平行に且つ水平に走るように配置される、請求項2〜5の何れか1項に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項7】
前記車両乗員の頭部(4)によって前記ヘッドレスト要素(5)に圧力が加えられると、接触点(15)の高さに位置する対応する前記溝(13)が圧縮されて、この溝(13)を走る光線が遮断されるように、前記ヘッドレスト要素(5)は具現化される、請求項1〜6の何れか1項に記載のヘッドレスト(1)。
【請求項8】
座部、背もたれ及び請求項1〜7の何れか1項に記載のヘッドレスト(1)を有する車両座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車座席用のヘッドレストに基づく。
【背景技術】
【0002】
このようなヘッドレストは一般的に知られており、自動車座席に座っている車両乗員の頭部を支持する役割を果たす。車両乗員の安全性のため、ヘッドレストの正しい位置決めが重要である。特に、これは車両乗員に対するヘッドレストの正しい高さに当てはまる。その結果、例えば、後端部の衝突による後端部の衝撃を受ける車両室内における怪我の危険性が相当に低減され得る。従って、正しいヘッドレスト位置を設定するために、ヘッドレストは垂直に調節可能な設計を有することが多い。
【0003】
ヘッドレストの垂直な調節可能性にもかかわらず、多くの車両ではヘッドレストが最適な位置に配置されず、事故の際に最適な保護を提供しないことが経験的に分かっている。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の目的は、車両乗員に対して正しいヘッドレスト位置の設定を促すと共に、比較的容易且つ費用効率良く製造され得るヘッドレストを利用可能にすることである。
【0005】
この目的は、車両座席用のヘッドレストによって達成され、このヘッドレストは車両座席に座っている車両乗員の頭部に対してヘッドレストの相対的な位置を決定することが意図される少なくとも1つのセンサを有しており、少なくとも1つのセンサは光学センサを含む。
【0006】
光学センサは、有利に、車両乗員の頭部に対するヘッドレストの位置を示す情報を生成することができる。この情報は、好ましくは、ヘッドレストが正確な位置にあるかどうか又はヘッドレストの位置が最適化され得るかどうかを決定するために、参照データと比較される。改善が必要とされるヘッドレストの位置が検出される場合、警告メッセージが生成されて車両乗員に通知され、及び/又は、例えば、自動車のモータによってヘッドレストが正確な位置に自動的に動かされることが考えられる。また、光学センサの使用は、比較的単純且つ費用効率の高い実装が可能になるという利点を有する。機械的なセンサとは対照的に、本発明によればセンサはヘッドレストの使用中に磨耗しないので、結果として長い耐用年数が有利に促進され、ヘッドレストの故障しやすさが相当に減らされ得る。
【0007】
本発明の有利な改良及び発展が、従属請求項及び図面を参照する記載に見つけることができる。
【0008】
好ましい実施形態によれば、ヘッドレストのヘッドレスト表面における車両乗員の頭部の接触点の位置を決定するためのセンサが設けられる。次に接触点の位置によって、頭部とヘッドレストとの間の相対的な位置が導き出されるという結果をもたらす。
【0009】
更なる好ましい実施形態によれば、ヘッドレストは基部要素及び頭部に面する柔軟なヘッドレスト要素を有しており、基部要素と柔軟なヘッドレスト要素との間に少なくとも1つのセンサが配置される。
【0010】
更なる好ましい実施形態によれば、ヘッドレストは、好ましくはヘッドレスト要素に面する基部要素の前方面に配置される多数のセンサを有する。センサが前方面上に分散して配置されること、及び接触点が検出されるセンサが接触されることで、接触したセンサの位置が接触点の位置を表すことになることが考えられる。このようにして、実装するのに比較的容易且つ費用効率が高い位置決定機能が、頭部とヘッドレストとの間の相対的な位置を決定するために実現され得る。
【0011】
更なる好ましい実施形態によれば、センサは光学センサを含む。ここで、各センサは、基部要素の側端部に配置される光源、例えば、発光ダイオード(LED)と、基部要素の反対の側端部に配置される光検出器、例えば、フォトダイオードを含み、結果として、光検出器は光線が遮断されなければ光源の光を検出する。車両乗員の頭部によって圧力がヘッドレストに作用する場合、光源と光検出器との間の光線が押し込まれたヘッドレスト要素による接触点の領域で遮断されるように、柔軟なヘッドレスト要素は、基部要素の方向に押し付けられることが考えられる。センサは、好ましくは、幾つかの光線が互いに対して平行に且つ実質的に水平に走るように配置される。従って、光線の1つが遮断される場合、接触点に対する又は車両乗員の頭部に対するヘッドレストの高さを導き出すことができる。
【0012】
更なる好ましい実施形態によれば、ただ1つの光源、例えば、発光ダイオードが設けられ、その光が光分配器によって幾つかの溝に分配される。
【0013】
更なる好ましい実施形態によれば、基部要素に面するヘッドレスト要素の後側においてヘッドレスト要素に溝が形成され、光源及び光検出器が何れも各溝に配置される。好ましくは、車両乗員の頭部によってヘッドレスト要素に力が加えられると、接触点の高さに位置する対応する溝が圧縮されるので、この溝に位置する光検出器は、同様にこの溝に位置する光源からの光をもはや受信することができなくなるように、ヘッドレスト要素は具現化される。このように、ヘッドレストに対する接触点の高さを決定することができる。また、センサは圧力センサを更に含むことも考えられ、頭部がそれを圧迫することにより最も高い機械的圧力が検出されるセンサが接触される。代替的に、例えば、圧力スイッチ型の単純な接触センサが更に使用され、頭部がそれを圧迫する結果として力が加えられるこのセンサが回路を閉じ又は開放することも考えられるであろう。
【0014】
本発明の更なる主題は、着座を検出するための接触センサとして及び/又はオペレータ制御要素として機能する少なくとも1つのセンサを有する車両座席の構成要素であり、少なくとも1つのセンサは光学センサを含む。ユーザが車両座席に腰を下ろしたか及び/又は特に体の一部で車両座席を圧迫したどうかを検出するために、上記のセンサは、例えば、車両座席の座席表面の中に、車両座席の背もたれの中に、及び/又は車両座席の肘掛けの中に組み込まれることが考えられる。次に、光学センサは、接触センサとして機能し、好ましくは、各々が光電子バリアの一部である。
【0015】
本発明の更なる詳細、特徴及び利点が、図面に、及び図面を参照して好ましい実施形態の以下の記載に見つけられる。図面は、本質的な発明概念を限定しない本発明の単なる例示的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】車両乗員の頭部によって力が外から加えられていない本発明の例示的な実施形態によるヘッドレストの概略的断面図を示す。
【
図2】車両乗員の頭部によって力が外から加えられている本発明の例示的な実施形態によるヘッドレストの概略的断面図を示す。
【
図3】車両乗員の頭部によって力が外から加えられていない本発明の例示的な実施形態によるヘッドレストの概略的斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な図において、同一の部分は常に同じ参照番号で提供されるため、各々は概略的に一度のみ指定され又は言及される。
【0018】
図1、2及び3では、例示的な実施形態によるヘッドレスト1の概略図が示される。
【0019】
ヘッドレスト1は、2つの固定ロッド3によって車両座席の背もたれ(図示せず)に取り付けられる基部要素2を備える。固定ロッド3は背もたれのガイドスリーブに垂直に調節可能な態様で配置されること又は基部要素2は垂直に調節可能な態様で固定ロッド3に取り付けられることが考えられる。車両乗員の頭部4に面する側において、ヘッドレスト1はヘッドレスト要素5を有する。ヘッドレスト要素5は、特に、頭部との接触の際に(
図2を参照)、基部要素2の方向に弾性的に押し付けられ得る柔軟な張り物を施した材料6を有する。基部要素2及びヘッドレスト要素4は、好ましくは、各々がカバー12で覆われる。
【0020】
基部要素2はヘッドレスト要素5に面する前方面7を有しており、その前方面7上に、多数のセンサ8が配置される。各センサ8は、発光ダイオード9及びフォトダイオード10を含む。発光ダイオード9及びフォトダイオード10は、何れも前方面7において水平方向11に常に互いに対向して配置される。基部要素2に面するヘッドレスト要素5の後側において、ヘッドレスト要素5は、車両乗員の頭部4から生ずる力14が基部要素2の方向でヘッドレスト要素5に加えられない場合に、発光ダイオード9の光が水平方向11と平行にフォトダイオード10に入射する溝13を有する。このような力14がヘッドレスト要素5に加えられる場合(
図2を参照)、ヘッドレスト要素5は、頭部4とヘッドレスト要素5との間の接触領域15の高さで基部要素2の方向に押し付けられる。結果として、接触領域15の高さに位置する溝13は圧縮され、それにより、溝13に位置する発光ダイオード9の光は同様にこの溝13に位置する対応するフォトダイオード10にはもはや到着できない。評価ユニットが、継続的にフォトダイオード10の信号を評価し、それにより、この1つのフォトダイオード10の領域に起こる光円錐の不足が検出される。このフォトダイオード10の知られた位置に基づいて、接触領域15の高さが結果的に導かれるので、頭部4とヘッドレスト1との間の相対的な位置が決定される。
【0021】
この情報は、好ましくは、ヘッドレスト1が正確な位置にあるかどうか又は頭部4の位置に対するヘッドレスト1の位置が最適化されるべきかどうかを決定するために、参照データと比較される。改善を必要とするヘッドレスト1の位置が検出される場合、車両乗員に通知する警告メッセージが生成されて、車両乗員はヘッドレスト1の位置を手動で最適化でき、及び/又はヘッドレスト1は高さ調節モータによって正確な位置へと自動的に移動される。また、ヘッドレストの高さの手動調節の間、位置が監視されて、正確な位置に到達すると信号トーンが出力されることも考えられる。
【0022】
また、ただ1つの光源9、例えば、発光ダイオードが片側に配置され、その光源9の光が光分配器によって幾つかの溝13に分配されることも考えられる。
【符号の説明】
【0023】
1 ヘッドレスト
2 基部要素
3 固定ロッド
4 頭部
5 ヘッドレスト要素
6 張り物を施した材料
7 前方面
8 センサ
9 発光ダイオード
10 フォトダイオード
11 水平方向
12 カバー
13 溝
14 力
15 接触領域