【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例、製造例及び試験例により詳細に説明する。なお、実施例において使用される略語は当業者に周知の慣用的な略語である。
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DMI:N,N−ジメチルイミダゾリジノン
DMSO:ジメチルスルホキシド
n:ノルマル
ODS:オクタデシルシリカゲル
TBS:tert−ブチルジメチルシリル
tert:ターシャリー
THF:テトラヒドロフラン
プロトン核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)の化学シフトは、テトラメチルシラン(内部標準)に対するδ単位(ppm)で記載され、カップリング定数はヘルツ(Hz)で記載されている。分裂パターンは、s:シングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、q:カルテット、m:マルチプレット、br:ブロードを意味する。
【0032】
実施例1
N−シアノメチル−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化4】
窒素気流下、ロフルミラスト0.5g(1.24mmol)の乾燥DMF溶液(5mL)に、水素化ナトリウム56.4mg(60%油中分散,1.41mmol)を加え、室温で約15分間撹拌した。反応混合物にクロロアセトニトリル0.172mL(2.73mmol)及びヨウ化ナトリウム0.4g(0.269mmol)を加え、室温で2時間揖持した。反応終了後、混合物に水5mLを加え、クロロホルム5mLで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン)で精製し、得られた粗生成物をさらにゲルろ過クロマトグラフィーで精製し、標題化合物213mg(0.481mmol、収率48%)を淡黄色油状物として得た。
融点:196℃
1H−NMR(500MHz,CDCl
3) δ 0.35(m,2H)、0.65(m,2H)、1.21(m,1H)、3.78(d,2H)、4.65(s,2H)、6.61(t,1H)、6.87(dd,1H)、6.96(d,1H)、7.15(d,1H)、8.57(s,2H).
【0033】
製造例1
N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−N−メトキシカルボニルメチル−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化5】
窒素気流下、ロフルミラスト0.5g(1.24mmol)の乾燥DMF溶液(5mL)に水素化ナトリウム56.5mg(60%油中分散,1.41mmol)を加え、室温で約15分間撹拌した後、ブロモ酢酸メチル0.25mL(2.73mmol)を加え、さらに室温で2.5時間撹拌した後、60℃で4.5時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷し、水3mLを加え、クロロホルム9mLで3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去して、標題化合物649mg(1.37mmol)を橙色油状物として得た。
【0034】
実施例2
N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化6】
製造例1で得られた化合物0.257g(0.541mmol)、水素化ホウ素ナトリウム0.111g(2.93mmol)を、窒素気流下、メタノール5mL、THF1.5mLに溶解し、室温で24時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧で留去し、残渣に水5mLを加え、クロロホルム5mLで3回抽出した。有機層は無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、得られた粗生成物をさらにゲルろ過クロマトグラフィーで精製し、標題化合物50.3mg(0.481mmol,収率21%)を油状物として得た。
融点:97℃
1H−NMR(400MHz,CDCl
3) δ 0.32(m,2H)、0.64(m,2H)、1.20(m,1H)、2.91(brs,1H)、3.76(d,2H)、3.95(dd,2H)、4.01(d,2H)、6.59(t,1H)、6.89(dd,1H)、6.93(dd,1H)、7.08(d,1H)、8.49(s,2H).
【0035】
実施例3
N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−N−メチル−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化7】
窒素気流下、ロフルミラスト0.25g(0.60mmol)の乾燥DMF溶液(5ml)に、0℃で水素化ナトリウム72mg(60%油中分散,3.0mmol)とヨウ化メチル0.19mL(3.0mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水3mLを加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をODS力ラム(アセトニトリル/水/THF)で精製し、さらに脱塩処理(NHカートリッジ、ジクロロメタン/メタノール)して溶媒を留去して、標題化合物0.16g(0.38mmol)を茶褐色の油状物として得た。
融点:68℃
1H−NMR(400MHz,CDCl
3) δ 0.32(m,2H)、0.63(m,2H)、1.20(m,1H)、3.31(s,3H)、3.76(d,2H)、6.57(t,1H)、6.90(dd,1H)、6.94(d,1H)、7.08(d,1H)、8.48(s,2H).
【0036】
製造例2−1
2,2−ジメチル−4−ヨードメチル−1,3−ジオキソラン
【化8】
2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール0.935mL(7.57mmol)、トリフェニルホスフィン2.39g(9.11mmol)、イミダゾール1.54g(22.7mmol)、ヨウ素2.30g(18.1mmol)を乾燥トルエン20mLに溶解させ、90℃にて2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて、反応を停止した。得られた反応混合物をジクロロメタンにて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を減圧下留去して白色固体5.54gを得た。得られた固体をジエチルエーテル、ヘキサンにて順次、分散洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標題化合物1.04g(4.28mmol)を無色油状物として得た。
【0037】
製造例2−2
N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−N−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化9】
窒素気流下、ロフルミラスト0.32g(0.8mmol)、製造例2−1で得られた化合物0.29g(1.21mmol)、水酸化カリウム92mg(1.64mmol)の乾燥DMSO溶液(5mL)を100℃で1日間撹拌した。放冷後、反応混合物にクロロホルムを加え、さらに撹拌し、析出した固体をろ去した。ろ液を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン)で精製し、標題化合物56.5mg(0.11mmol,収率14%)を油状物として得た。
【0038】
実施例4
N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−N−(2,3−ジヒドロキシプロパン−1−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化10】
製造例2−2で得られた化合物47mg(0.092mmol)のTHF溶液(1.0mL)に1M塩酸2mLを加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、pH7〜8とした後、クロロホルムで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物28.2mg(0.059mmol,収率64%)を得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3) δ 0.33(m,2H)、0.64(m,2H)、1.20(m,1H)、1.26(m,2H)、2.55(brs,1H)、3.47(brs,1H)、3.75(d,2H)、3.95(m,3H)、6.59(t,1H)、6.89(dd,1H)、6.95(d,1H)、7.06(d,1H)、8.50(s,2H).
【0039】
製造例3−1
N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−N−(3−tert−ブチルジメチルシリルオキシプロパン−1−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化11】
窒素気流下、ロフルミラスト0.5g(1.2mmol)のDMI溶液(5mL)に、室温にて水素化ナトリウム139mg(60%油中分散,3.5mmol)と3−tert−ブチルジメチルシリルオキシプロピルブロミド0.25mL(2.9mmol)を加え、70℃に加熱し、12時間撹拌した。反応混合物に水3mLを加え、酢酸エチルで3回抽出した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲル力ラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル)で精製して、標題化合物212mg(0.368mmol,収率31%)を白色固体として得た。
【0040】
実施例5
N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−N−(3−ヒドロキシプロパン−1−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化12】
製造例3−1で得られた化合物180mg(0.31mmol)を、メタノールと濃塩酸(体積比97:3)の混合液3mLに溶解させ、室温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル)を用いて精製した。得られた残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、標題化合物86mg(0.186mmol,収率60%)を白色固体として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3) δ 0.32(m,2H)、0.63(m,2H)、1.20(m,1H)、1.84(m,2H)、3.75(d,2H)、3.78(t,2H)、3.98(t,2H)、6.58(t,1H)、6.88(dd,1H)、6.94(d,1H)、7.05(d,1H)、8.49(s,2H).
【0041】
実施例6
N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−N−メトキシメチル−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化13】
窒素気流下、ロフルミラスト505mg(1.25mmol)の乾燥DMF溶液(5mL)に、水素化ナトリウム69mg(60%油中分散,1.73mmol)を加えた後、ブロモメチルメチルエーテル0.3mL(3.67mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物に水5mLを加え、クロロホルムで3回抽出し、有機層を得た。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去して、油状の粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、得られた淡黄色固体をジクロロメタン/n−ヘキサンから再結晶して、標題化合物188mg(0.42mmol,収率34%)を白色固体として得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3) δ 0.32(m,2H)、0.64(m,2H)、1.20(m,1H)、3.60(s,3H)、3.75(d,2H)、5.26(s,2H)、6.57(t,1H)、6.92(dd,1H)、6.95(d,1H)、7.10(d,1H)、8.50(s,2H).
【0042】
参考例1
N−カルバモイルメチル−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化14】
窒素気流下、ロフルミラスト0.5g(1.24mmol)の乾燥DMF溶液(5mL)に水素化ナトリウム55.3mg(60%油中分散,1.38mmol)を加え、室温で約15分間撹拌した。反応混合物にクロロアセトアミド0.25g(1.63mmol)及びヨウ化ナトリウム0.41g(2.74mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水5mLを加え、クロロホルム5mLで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン)で精製し、さらにゲルろ過クロマトグラフィーで精製して、標題化合物94mg(0.204mmol,収率16%)を淡黄色固体として得た。
融点:90.99℃
1H−NMR(500MHz,DMSO−d
6) δ 0.38(m,2H)、0.56(m,2H)、1.23(m,1H)、3.91(d,2H)、4.75(s,2H)、7.15(t,1H)、7.19(d,1H)、7.48(s,1H)、7.49(dd,1H)、7.59(d,1H)、7.78(s,1H)、8.28(s,2H).
【0043】
参考例2
N−カルボキシメチル−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)−3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシベンズアミド
【化15】
製造例1で得られた化合物0.65g(1.37mmol)をメタノール14mLに溶解させ、室温にて1N水酸化ナトリウム水溶液14mLを加え、5分間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、水層のpHが1になるまで1N塩酸を加え、クロロホルム10mLで3回抽出した。得られた有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去し、淡黄色の残渣を得た。得られた残渣に1N水酸化ナトリウム5mLを加え、クロロホルム5mLで2回洗浄した後、水層のpHが1になるまで1N塩酸を加え、クロロホルム5mLで3回抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製し、標題化合物0.342mg(0.740mmol,収率54%)を淡黄色アモルファスとして得た。
融点:182℃
1H−NMR(500MHz,CDCl
3) δ 0.32(m,2H)、0.64(m,2H)、1.20(m,1H)、3.76(d,2H)、4.45(s,2H)、6.61(t,1H)、6.92(dd,1H)、6.96(d,1H)、7.15(d,1H)、8.50(s,2H).
【0044】
試験例1:In vitro代謝試験
補酵素(NADPH生成系)を含む100mmol/L Tris−HCl緩衝液に、ヒト肝臓酵素画分を0.5mg蛋白/mLの濃度になるように加え、37℃で5分間プレインキュベーションした。この溶液に各化合物を0.1μmol/Lの濃度になるように加え、37℃で1時間インキュベーションした後、水冷したアセトニトリルを添加して反応を停止した。得られた溶液をろ過した後、LC−MS/MSで定量を行いロフルミラストへの代謝率(%)を算出した。なお、表1中、「加熱処理あり」とは、ヒト肝臓酵素画分を添加する前に、予め加熱処理することにより、代謝酵素を不活化させたことを意味する。
【0045】
結果を表1に示す。表1中の数値は、ロフルミラストへの代謝率(%)を意味する。実施例1〜6の化合物は、ヒト肝臓由来の酵素により代謝されて、ロフルミラストを生成した。また、ヒト肝臓酵素画分を使用前に加熱処理することにより、代謝酵素を失活させた場合には、ロフルミラストは生成しなかった。一方、参考例1及び2の化合物は、ヒト肝臓酵素画分で処理してもロフルミラストを生成しなかった。
【表1】
【0046】
試験例2:水溶性評価試験
リン酸緩衝液(pH7)10mLに各化合物を過剰量加え、30分間超音波処理を行なった。得られた懸濁液をろ過し、ろ液0.5mLにアセトニトリル0.5mLを加え、試験溶液とし、試験溶液中の各化合物の濃度を高速液体クロマトグラフ法により測定して、飽和溶解度として算出した。なお、比較例1としてロフルミラストを用いた。
【0047】
結果を表2に示す。実施例1〜3及び参考例1,2の化合物は、ロフルミラストと比較して、4倍以上の高い水溶性を有することが明らかとなった。
【表2】
【0048】
試験例3:皮膚透過性評価試験
ヘアレスマウスの背部皮膚を摘出し、当該皮膚片の表皮側(適用面積:1cm
2)が被験化合物(実施例、比較例または参考例の化合物)の溶液に接するように、フランツ型拡散セル(ガラスセル)にセットした。また、フロー液としてPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を用い、流量を5mL/時間とし、恒温槽温度は32℃と設定した。次に、各被験化合物の濃度が1w/w%となるように、ジメチルスルホキシドを加えた後、よく撹拌して被験化合物の溶液を調製した。得られた被験化合物の溶液100μLを、上記フランツ型拡散セルのドナーチャンバーに導入した。被験化合物の溶液を導入してから、2時間毎に24時間後までフロー液をサンプリングした。2時間毎にサンプリングされたフロー液にアセトニトリルを加えて2倍に希釈し、遠心分離後、その上清をHPLC分析用試料として得た。得られた分析用試料をそれぞれ、高速液体クロマトグラフ法により分析し、Jmax(最大皮膚透過速度)及び24時間の累積透過量を算出した。なお、比較例1としてロフルミラストを用いた。
【0049】
結果を表3に示す。比較例1の化合物(ロフルミラスト)は24時間後であっても、皮膚透過を示さなかったのに対し、実施例および参考例の化合物は十分な皮膚透過性を示した。また、被験化合物の累積透過量(μg/cm
2)の経時変化を
図1に示す。実施例1〜3、5および6の化合物は、比較例1の化合物(ロフルミラスト)に比べて高い皮膚透過性を示した。
【表3】