(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938591
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
A63F7/02 351Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-128566(P2012-128566)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-252217(P2013-252217A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148287
【氏名又は名称】株式会社浅間製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】前島 拓己
【審査官】
秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−89838(JP,A)
【文献】
特開2009−273576(JP,A)
【文献】
特開平8−206345(JP,A)
【文献】
特開平11−207015(JP,A)
【文献】
特開2000−37555(JP,A)
【文献】
特開平9−723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
A63F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒部材を遊技球が接触する位置に配置した遊技機において、
前記光触媒部材は、光触媒粒子を有機バインダーで結合したものであり、
この光触媒部材に光線を照射することにより、
光触媒部材に接触する遊技球の汚れを除去するとともに、光触媒部材を遊技球に接触させることにより、有機バインダーの分解によって生じた光触媒粒子を遊技球に付着させて遊技盤内に分散させることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記光触媒部材を球通路に配置して遊技球に接触させることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記光触媒部材を板状体とし、球通路に回転可能に軸支したことを特徴とする請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記光触媒部材を遊技球よりも大きな径の塊とし、無整列状態の遊技球群内に混在させて、遊技球に接触させることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒反応により遊技球及び遊技盤内を継続的に浄化させる遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機等の遊技機は通常遊技店やゲームセンター等の喫煙可能な場所に設置されるため、遊技盤の表面や遊技球には煙草のヤニ等の汚れが付着する。また不特定多数の者に使用されるので、雑菌も付着しやすい。そのため、従来から光触媒を利用して、遊技機や遊技球の清掃作業の負担を軽減する技術が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す遊技球研磨装置は、揚送用革ベルトと研磨用布ベルトとで遊技球を挟みながら揚送するものであり、一方のベルトの表面に光触媒を施してある。この光触媒に紫外線を照射すると、空気中の水蒸気からOHラジカルを生成し、このOHラジカルの酸化力で遊技球に付着した有機物を分解除去することができる。しかし、こうした装置は、島設備に取り付けられる複数台の遊技機の遊技球を一度に研磨処理するため、研磨用布ベルトを頻繁に交換しなければならず、ランニングコストが大きいという問題があった。また、ベルトの摩耗によって繊維埃が発生するため、メンテナンスに手間がかかるという問題もあった。
【0004】
この問題を回避するために、特許文献2又は3に示すように、遊技球や遊技機の表面を予め光触媒でコーティングしたものが提案されている。これらによれば、煙草のヤニ等空気中に浮遊する有機物が遊技球や遊技機の表面で分解されるので、汚れが付着しにくい。しかし、遊技球が遊技盤内に衝突したり、球同士がこすれ合うことを繰り返すことにより(使用経過により)、遊技球や遊技盤に形成したコート層が剥がれてしまうため、光触媒の効果が持続しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−207015号公報
【特許文献2】特開平10−057614号公報
【特許文献3】特開平11−019281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は前記問題を解決し、長期間に亘り光触媒の効果を持続させることができる遊技機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明は、光触媒部材を遊技球が接触する位置に配置した遊技機において、前記光触媒部材は、光触媒粒子を有機バインダーで結合したものであり、この光触媒部材に光線を照射することにより、光触媒部材に接触する遊技球の汚れを除去するとともに、光触媒部材を遊技球に接触させることにより、有機バインダーの分解によって生じた光触媒粒子を遊技球に付着させて遊技盤内に分散させることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記光触媒部材を球通路に配置して遊技球に接触させることが好ましい。さらに、前記光触媒部材を板状体とし、球通路に回転可能に軸支することが好ましい。また、前記光触媒部材を遊技球よりも大きな径の塊とし、無整列状態の遊技球群内に混在させて、遊技球に接触させることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、光触媒部材を遊技球が接触する位置に配置し、この光触媒部材に光線を照射する構成としている。これにより、光触媒部材の表面で光触媒反応が生じ、光触媒部材に接触する遊技球の汚れを除去することができる。また、光触媒粒子を固定するバインダーとして有機物を用いている。これにより、有機バインダーを積極的に分解し、これによって生じた光触媒粒子を遊技球に付着させて遊技盤内に分散させることができる。すなわち、光触媒粒子は遊技球を介して継続的に遊技領域に供給されるので、光触媒による洗浄効果を持続させることができる。さらに光触媒部材は、遊技球との摩擦により徐々に削られ、その粉末が遊技球に付着して遊技盤内に分散する。この粉末に蛍光灯や太陽からの光線があたることによっても遊技盤内の汚れを除去できる。
【0010】
また請求項2のように、光触媒部材を球通路に配置して遊技球に接触させれば、玉通路を通過する度に遊技球の汚れを確実に除去できるとともに、遊技球に光触媒粒子を付着させることができる。さらに請求項3のように、光触媒部材を球通路に回転可能に軸支すれば遊技球の移動に伴って接触位置が変移するので、広範囲で遊技球の汚れを除去できる。また、請求項4のように、光触媒部材を遊技球よりも大きな径の塊とし、無整列状態の遊技球群内に混在させることにより、遊技球に光触媒粒子を満遍なく付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】装飾物や障害物を取り付ける前の遊技機の正面図である。
【
図2】装飾物や障害物を取り付ける前の遊技機の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。ここでは、遊技機の代表例であるパチンコ機を例に説明する。
図1は装飾物や障害物を取り付ける前の遊技機の正面図である。1は遊技盤、2は遊技球8を遊技領域に案内するレール、3は遊技球を発射位置に搬送するための搬送装置、4は搬送装置3によって搬送された遊技球8を遊技領域に発射するための発射装置である。
【0013】
搬送装置3は、
図3及び
図4に示すように、筒体の外面に縦方向に伸びるスクリュー溝を形成した球搬送スクリュー5と、球搬送スクリュー5を駆動するモータ6と、球搬送スクリュー5を覆うカバー7とからなる。球搬送スクリュー5とカバー7との間には遊技球8を発射位置に案内する球通路9が形成されており、モータ6の駆動により球搬送スクリュー5が回転し、この球通路9に沿って遊技球8を発射位置まで搬送する。
【0014】
図5に示すように、本実施形態では、カバー7の側面の一部を遊技球8の発射方向に沿って開口させ、この開口部10に円盤状の光触媒部材11を収納した光触媒支持ホルダー12を嵌合してある。これにより、光触媒部材11を遊技球8に接触させることができる。
図6に示すように、光触媒支持ホルダー12は有底の円筒容器であり、底面中央から光触媒部材11を回転可能に軸支する支持棒(支軸)13を立設してある。この支持棒13を光触媒部材11の中心に形成した貫通孔14に挿入し、光触媒支持ホルダー12を開口部10に嵌合させる。また、光触媒部材11と支持ホルダー12の間には光触媒部材11をスクリュー5に押圧する押圧バネ15と圧力を分散して伝達する押圧板16が設置されている。この押圧バネ15の付勢力により、光触媒部材11が摩耗しても遊技球8との接触状態を維持することができる。なお球通路9の下側には光触媒部材11に光線を照射するためのLEDランプ17が設置されており、モータ6の稼動状況に合わせて点灯するように設定されている。
【0015】
この光触媒部材11は、光触媒粒子を有機バインダーに練り込んだものであり、この光触媒部材11に光線を照射することにより、光触媒部材11の表面で光触媒反応を生じさせる。すなわち、光触媒は光線の照射を受けることによりOHラジカルを発生させ、その強力な酸化作用により有機物を分解するため、光触媒部材11の表面に遊技球8を接触させることにより、遊技球8に付着した有機物(汚れ)を除去することができる。本実施形態では、光触媒粒子として紫外線応答型の二酸化チタン(TiO
2)を用いた。この場合には、光線として紫外線を用いることが好ましい。また、光線を蛍光灯などの屋内光や太陽光とする場合には、可視光応答型の光触媒を用いることが好ましい。これにより、紫外線よりバンドギャップエネルギーが狭くても、有機物を効率的に酸化分解することができる。この場合の光触媒粒子としては、例えば酸化タングステン(WO
3)に白金(Pt)やパラジウム(Pu)、銅(Cu)などの除触媒を添加させたものや、二酸化チタンを窒素ドープあるいは硫黄ドープしたものを用いることが好ましい。また、有機バインダーとしては、キシレン、2−ブタノール、酢酸エチル、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0016】
また、光触媒粒子を固定するバインダーとして有機物を用いている。そのため、光触媒反応により有機バインダー自体も徐々に分解されることになる。本発明では、光触媒部材11に光線を照射して、有機バインダーを積極的に分解することにより、この分解によって生じた光触媒粒子を遊技球に付着させて遊技盤1内に分散させるものである。これにより、継続的に遊技盤内でも光触媒反応を生じさせ、遊技盤1内の汚れを除去できる。なお、光触媒粒子は、光線照射による有機バインダーの分解の他に、光触媒部材11が遊技球8との摩擦により徐々に削り取られることにより、遊技盤内に分散する。すなわち、遊技球8との摩擦により生じた粉末には光触媒粒子が含まれる。そのため、この粉末が遊技球8に付着して遊技盤内に分散し、この粉末に蛍光灯や太陽からの光線があたることにより遊技盤内でも光触媒反応を生じさせることができる。なお、光触媒部材11の摩耗により遊技球8と接触しなくなった場合には、光触媒部材11のみを交換すればよいので、メンテナンスの手間がかからない。
【0017】
上記の通り、本実施形態では、カバー7の一部を開口させてこの開口部10に光触媒部材11を配置しているので、球通路9を通過する度に確実に遊技球8に光触媒粒子を付着させることができる。さらに光触媒部材11を球通路9に回転可能に軸支しているので、遊技球の移動に伴って接触位置を変移させることができ、広範囲で遊技球の汚れを除去できる。なお、本実施形態では、光触媒部材11を板状体としたが、遊技球よりも大きな径の塊とし、無整列状態の遊技球群内に混在させて、遊技球8に光触媒粒子を満遍なく付着させることもできる。
【0018】
以上に説明したように、本発明に係る遊技機は、光触媒部材11を遊技球8が接触する位置に配置し、しかも光触媒粒子を固定するバインダーとして有機物を用いた。この光触媒部材11にLEDランプにより光線を照射することにより、有機バインダーを積極的に分解し、これによって生じた光触媒粒子を遊技球に付着させて遊技盤内に分散させることができる。さらに光触媒部材11は、遊技球8との摩擦により徐々に削られ、その粉末を遊技球8に付着させて遊技盤1内に分散させることもできる。よって、光触媒部材11を適宜交換すれば、半永久的に光触媒の効果を持続させることができる。なお、光触媒支持ホルダー11は開口部10に取り外し可能に嵌合されているので、光触媒部材11を簡単に交換することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 遊技盤
2 レール
3 搬送装置
4 発射装置
5 球搬送スクリュー
6 モータ
7 カバー
8 遊技球
9 球通路
10 開口部
11 光触媒部材
12 光触媒支持ホルダー
13 支持棒(支軸)
14 貫通孔
15 押圧バネ
16 押圧板
17 LEDランプ