特許第5938595号(P5938595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938595
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】エジェクタ付吸着装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20160609BHJP
【FI】
   B25J15/06 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-84875(P2011-84875)
(22)【出願日】2011年4月6日
(65)【公開番号】特開2012-218099(P2012-218099A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(72)【発明者】
【氏名】深野 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】菅野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】小幡 康彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 明
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−122388(JP,U)
【文献】 特開昭49−119054(JP,A)
【文献】 特開2001−220783(JP,A)
【文献】 特開昭63−119581(JP,A)
【文献】 米国特許第04852926(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着パッドと、
前記吸着パッドの頂部に形成された取付部に固定されるアダプタプレートと、
前記アダプタプレートに配設されるエジェクタと、
前記アダプタプレートの上面に変位自在に設けられるロックプレートと、
前記吸着パッドを構成するスカート部側から挿入されて前記アダプタプレートに設けられた孔部を貫通し前記ロックプレートと係合する保持スタッドと、
を設け、
前記保持スタッドは前記ロックプレートが係合するロックプレート溝を有し、該ロックプレートはロック部を備え、
前記保持スタッドのロックプレート溝に前記ロック部が係合されているとともに該ロック部により該保持スタッドが引張されている状態で前記吸着パッドは前記アダプタプレートと保持スタッドとの間で保されていることを特徴とするエジェクタ付吸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記保持スタッドは前記吸着パッドの内部と連通するとともに前記エジェクタの負圧発生部と連通する真空通路を有することを特徴とするエジェクタ付吸着装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記アダプタプレートは前記エジェクタの負圧発生部と前記保持スタッドの前記真空通路とを連通する孔部を備えることを特徴とするエジェクタ付吸着装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記ロックプレートは前記保持スタッドが遊嵌する大径な孔部と、前記大径な孔部に連通して該保持スタッドに設けられたロックプレート溝に係合する小径な孔部を形成したロック部を有することを特徴とするエジェクタ付吸着装置。
【請求項5】
請求項4記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記ロック部は前記大径な孔部が形成された部位から上方へと膨出した平面からなり、前記平面に前記小径な孔部が形成されていることを特徴とするエジェクタ付吸着装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記アダプタプレート凹部又は凸部を有し、前記ロックプレート凸部又は凹部を有し、前記凹部と凸部と係合されている状態で前記アダプタプレートに前記ロックプレート位置決め保持されていることを特徴とするエジェクタ付吸着装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記アダプタプレートには前記ロックプレートを覆うように取付用ブラケットが設けられ、前記取付用ブラケットは移送装置と係合する保持部を備えることを特徴とするエジェクタ付吸着装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記吸着パッドの前記アダプタプレート取付面側に硬質の樹脂製プレートが組み込まれていることを特徴とするエジェクタ付吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧流体の吸引作用下にワークを吸着して位置決めしたり搬送することが可能なエジェクタ付吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄板状のワークを位置決めしたり搬送するために真空吸着装置が広範に用いられている。この真空吸着装置は内部に圧縮流体が供給されるボディ本体と、このボディ本体に固着される吸着パッドとを備え、前記ボディ本体に供給された圧縮流体がワークに接する吸着パッドの内部を負圧状態にして該ワークを保持し、所望の位置に位置決めしたり、あるいは搬送し、次いで、前記吸着パッドに大気圧又は圧縮空気を供給することによって真空状態を解除し、吸着パッドからワークを離脱させて前記ワークを所望の位置に配置する。
【0003】
この種の真空吸着装置として、例えば、特許文献1に開示されている技術的思想がある。この特許文献1に示されている真空組立体は、長尺な位置決め機構の両端部近傍に互いに平行に脚部を配設し、それぞれの脚部にバルブ組立体が装着されている。前記バルブ組立体は、真空回路を有し、その先端に吸着用カップが装着され、前記吸着用カップに対して、空気圧ラインから圧縮空気が供給され、吸着用カップの内部が負圧状態に維持されることにより、ワークの吸着搬送を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開公報US2008/0202602A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のバルブ組立体では、真空用ボディには、真空発生装置や、ボールジョイント、バルブボディ、パイロットバルブ、可撓性のダイヤフラム、バルブカバー等が装着され、構造が複雑であるとともに、各種部品の交換や維持管理が容易でないという不都合がある。
【0006】
特に、この特許文献1に示されているバルブ組立体では、吸着カップの頂部に吸着カップカラー、バキュームボディ、バルブボディ、パイロットバルブやバルブカバーの如く比較的重量に富む部材が集約して組み込まれており、その結果、組立体の頂部が重量物に富む不安定な状態となり、搬送時にはサクションカップによって移送されるワークの姿勢が不安定になり、所望の位置にワークを位置決めすることができない等の問題点が露呈している。
【0007】
本発明は、前記の不都合や問題点を克服するためになされたものであって、比較的構造が簡単で、組み立てが容易であり、保守管理がし易く、特に、吸着パッドの交換や、さらに、当該吸着パッドの上部に設けられる機構の部品交換性に富むとともに、位置決めやワークの搬送精度にも優れるエジェクタ付吸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、請求項1で特定される発明は、
吸着パッドと、
前記吸着パッドの頂部に形成された取付部に固定されるアダプタプレートと、
前記アダプタプレートに配設されるエジェクタと、
前記アダプタプレートの上面に変位自在に設けられるロックプレートと、
前記吸着パッドを構成するスカート部側から挿入されて前記アダプタプレートに設けられた孔部を貫通し前記ロックプレートと係合する保持スタッドと、
を設け、
前記保持スタッドは前記ロックプレートが係合するロックプレート溝を有し、該ロックプレートはロック部を備え、
前記保持スタッドのロックプレート溝に前記ロック部が係合されているとともに該ロック部により該保持スタッドが引張されている状態で前記吸着パッドは前記アダプタプレートと保持スタッドとの間で保されていることを特徴とする。
【0010】
請求項で特定される発明は、
請求項1に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記保持スタッドは前記吸着パッドの内部と連通するとともに前記エジェクタの負圧発生部と連通する真空通路を有することを特徴とする。
【0011】
請求項で特定される発明は、
請求項に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記アダプタプレートは前記エジェクタの負圧発生部と前記保持スタッドの前記真空通路とを連通する孔部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項で特定される発明は、
請求項1〜のいずれか1項に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記ロックプレートは前記保持スタッドが遊嵌する大径な孔部と、前記大径な孔部に連通して該保持スタッドに設けられたロックプレート溝に係合する小径な孔部を形成したロック部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項で特定される発明は、
請求項記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記ロック部は前記大径な孔部が形成された部位から上方へと膨出した平面からなり、前記平面に前記小径な孔部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6で特定される発明は、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記アダプタプレート凹部又は凸部を有し、前記ロックプレート凸部又は凹部を有し、前記凹部と凸部と係合されている状態で前記アダプタプレートに前記ロックプレート位置決め保持されていることを特徴とする。
【0015】
請求項で特定される発明は、
請求項1〜のいずれか1項に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記アダプタプレートには前記ロックプレートを覆うように取付用ブラケットが設けられ、前記取付用ブラケットは移送装置と係合する保持部を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項で特定される発明は、
請求項1〜のいずれか1項に記載のエジェクタ付吸着装置において、
前記吸着パッドの前記アダプタプレート取付面側に硬質の樹脂製プレートが組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、保持スタッドは吸着パッドのスカート部側から挿入されてアダプタプレートと一体化されるために、吸着パッドが経年変化した場合の交換等、保守管理の際には保持スタッドをスカート部側から取り外すだけで行なうことができる。従って、維持管理が容易となるとともに、全体として構造が簡素化されるという効果が得られる。特に、特許文献1に開示されているバルブ組立体に比べて軽量であり従って、ワークの移送が容易で位置決め精度にも優れる効果が得られる。しかも、保持スタッドのロックプレート溝にロックプレートが係合するために、簡単な構成で保持スタッドとロックプレートの間で吸着パッドを保持することができ、またロックプレートを保持スタッドからその係合を解くことにより容易に吸着パッドを取り外すことができる。
【0019】
請求項記載の発明によれば、保持スタッドにエジェクタの負圧発生部と連通する真空通路を設けたので、簡単な構造で吸着パッド内部を負圧にすることができる。
【0020】
請求項記載の発明によれば、アダプタプレートにエジェクタの負圧発生部と保持スタッドの真空通路と連通する孔部を設けたので、この孔部を介して極めて短い距離で吸着パッド内部の負圧発生及び維持をすることができる。従って、応答性に優れるという効果も得られる。
【0021】
請求項記載の発明によれば、ロックプレートには大径な孔部と小径な孔部とが設けられ、大径な孔部に保持スタッドの頂部が遊嵌し、ロックプレートを変位させて前記保持スタッドのロックプレート溝に小径な孔部を形成したロック部を係合させることにより、簡単に保持スタッドを所定の位置にロックすることが可能である。
【0022】
請求項記載の発明によれば、前記ロックプレートのロック部は、大径な孔部が形成された部位から上方へと膨出した平面からなり、この平面に小径な孔部が形成され、この小径な孔部の壁面で前記保持スタッドのロックプレート溝に係合することが可能であるために、ロックプレートを変位させて小径な孔部に保持スタッドを係合させると、保持スタッドが前記膨出した平面によって引っ張られる作用を受け、これによって保持スタッドとロックプレート、ひいてはアダプタプレートと、極めて堅固な状態で吸着パッドを保持することができる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、アダプタプレート凹部又は凸部を有し、ロックプレート凸部又は凹部を有し、この凹部と凸部又は凸部と凹部係合されている状態でアダプタプレートロックプレート堅固に位置決め保持される

【0024】
請求項記載の発明によれば、前記アダプタプレートには、ロックプレートを覆うように取付用ブラケットを設けることができる。従って、この取付用ブラケットに設けられた保持部を移送装置、例えば、ロボットやアクチュエータ等に係合させれば、吸着パッドを用いてワークの搬送や位置決めに対応することができる。
【0025】
請求項記載の発明によれば、吸着パッドのアダプタプレート取付面側に硬質の樹脂製プレートが組み込まれていることにより、例えば、樹脂製からなる吸着パッド本体と、前記樹脂製プレートとを一体的に成形することによって、この樹脂製プレートの部分は変形が阻止され、従って、アダプタプレートとの係合状態が堅牢になるという効果が得られる。また、廃棄処分やリサイクル時に吸着パッド本体と樹脂製プレートとを一体的に処理できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明に係るエジェクタ付吸着装置の要部分解斜視図である。
図2図2は、図1に示されるエジェクタ付吸着装置を90°変位させた状態で描出した分解斜視図である。
図3図3は、エジェクタ付吸着装置の斜視説明図である。
図4図4は、エジェクタ付吸着装置の正面図である。
図5図5は、図4のV−V線断面図である。
図6図6は、図4のVI−VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るエジェクタ付吸着装置について、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0028】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るエジェクタ付吸着装置(以下、吸着装置と称することもある)10を示す。吸着装置10は、基本的に、吸着パッド20と、アダプタプレート40と、取付用ブラケット80と、ロックプレート100と、保持スタッド120と、エジェクタ200とから構成される。
【0029】
吸着パッド20は、ワークに接して吸着保持する吸着面を備えたスカート部22と、このスカート部22に連続するクッション部24と、前記クッション部24が終端する部位に形成される取付部26とからなる。取付部26の中心には、後述する保持スタッド120の第2円筒部126が進入する孔部28が形成される。前記スカート部22、クッション部24及び取付部26は、一体的に構成され、弾力性に富む、例えば、合成樹脂、合成ゴム等で形成される。
【0030】
図5に示すように、好ましくは前記取付部26の内部にリング状の硬質の合成樹脂からなる補強部材(プレート)29を埋め込むとよい。後述するアダプタプレート40とのしっかりとした係合状態を確保するためである。この場合、吸着パッド20と補強部材29とを同質の合成樹脂材で構成すれば廃棄の際やリサイクル等に好適である。
【0031】
前記取付部26の平坦面には、前記アダプタプレート40が配置される。アダプタプレート40は、平面視で変形した台形状を呈するものであり、好ましくは金属製、或いは硬質の硬質樹脂製であって、内部が流体通路を形成した中空状に形成される。前記アダプタプレート40の第1側面42には、小径な第1孔部44aと、この第1孔部44aと略同径な第2孔部46と、さらに、この第2孔部46に隣接して第3孔部44bが形成される。図1から諒解されるように、前記第1孔部44a、第2孔部46及び第3孔部44bは、略同径であるが、第2孔部46は、前記第1孔部44aと第3孔部44bに対して異径であってもよい。
【0032】
第2孔部46には後述するエジェクタ200の取付部208に位置決めされたナット218に螺合するボルト47が挿通される(図1及び図2参照)。
【0033】
アダプタプレート40の第2側面50には、大径な第4孔部52が設けられ、この第2側面50に対向する第3側面54に前記第4孔部52に対向するように第5孔部56が形成される。さらに、前記第1側面42に対向する第4側面58に前記第2孔部46に対向するように大径な第6孔部60が形成される。さらに、前記第1側面42〜第4側面58に直交するように第1平面62aが設けられ、この第1平面62に対向して反対側に第2平面62bが設けられ、前記アダプタプレート40の内部空間を恰も閉塞するように囲する。この第1平面62aの中央部に前記孔部28よりも小径な第7孔部64が設けられ前記第2平面62bの中央部に前記第7孔部64に対して第8孔部65が形成されている。そして、前記第7孔部64を挟んで、第1平面62aには、アダプタプレート40の厚さ方向に延在するように第1ねじ溝66aと、第2ねじ溝66bが設けられる。なお、前記第1平面62aには、前記第2孔部46に近接して、凹部70が設けられる。第4孔部52と第5孔部56には、第1プラグ72と第2プラグ74とが選択的に嵌合して、これらを閉塞する。アダプタプレート40の第4側面58に設けられた第6孔部60には、第3プラグ76又は真空破壊用の流体を供給する空気供給系(図示せず)が選択的に嵌合して、その第6孔部60を閉塞する。
【0034】
次に、取付用ブラケット80について説明する。取付用ブラケット80は、中央部が図1において上方へと立ち上がる膨出部82と、この膨出部82の両側に設けられた平板状の着座部84a、84bを有する。前記着座部84a、84bの隅角部には、対角線に沿って図示しない孔部が形成され、この孔部に取付用ボルト86a、86bが挿入される。膨出部82の略中央部にナット88を介して図示しないロボットのアームに取着されるためのボルト90が直立している。前記取付用ボルト86a、86bは、アダプタプレート40に設けられた第1ねじ溝66a、第2ねじ溝66bにそれぞれ螺入可能である。
【0035】
ロックプレート100は金属製の平板を屈曲させて上方へと立ち上がるように両端部に第1操作部102aと、第2操作部102bを有するとともに、中央部が若干立ち上がったロック部104を形成した板状体からなる。このロック部104から第2操作部102bにかけて、小径部106と大径部108とが連通したロック孔110が設けられている。なお、大径部108と第2操作部102bとの間に凸部112が設けられ(図2参照)、この凸部112は、アダプタプレート40に形成された凹部70と係合する。第1操作部102aの一部は下方に折曲して孔部113を形成し、この孔部113にボルト114を挿通してアダプタプレート40の第4側面58に形成された第9孔部116に螺入する。ロックプレート100を固定するためである。
【0036】
次に、吸着パッド20の孔部28を貫通し、アダプタプレート40の第7孔部64から外部へと露呈する保持スタッド120について説明する。保持スタッド120は、大径なフランジ122を有し、このフランジ122に対して若干小径な第1円筒部124が一体的に連設されている。第1円筒部124から、さらに前記フランジ122、第1円筒部124と同心である第2円筒部126が連設されている。第2円筒部126には、フランジ12と第1円筒部124の内部で形成されている空間に連通する真空通路130a、130bが互いに対向するように配設される。第2円筒部126の前記真空通路130a、130bの上部には、その外周部にオーリング溝132が設けられるとともに、このオーリング溝132の上方に第2円筒部126を周回するロックプレート溝134が形成される。なお、図において参照符号135は、前記フランジ122の空間を利用して、この保持スタッド120に装着され、吸着パッド20の吸着作用で吸収される塵埃等を捕捉するストレーナを示す。
【0037】
次に、エジェクタ200について説明する。エジェクタ200は、中空状で且つ円筒状のエジェクタボディ204と、このエジェクタボディ204の内部に挿入される真空発生部(負圧発生部)206とを備える。エジェクタボディ204は、その側部に取付部208を有する。取付部208は、直方体状であって、頂部から底部にかけて矩形状の孔部210を有し、この孔部210は、該取付部208の側壁に設けられた孔部212と連通している(図2参照)。この孔部212は、組立てられたときにアダプタプレート40の第2孔部46と対向する。さらに、前記孔部212が設けられている取付部208には、その側壁部にガスケット214が設けられ、このガスケット214の両側の空間を利用して板体状のチェック弁216a、216bが設けられる。前記チェック弁216a、216bは、それぞれアダプタプレート40の第1孔部44a、第3孔部44bに臨む。前記孔部210には、エジェクタボディ取付用ナット218が挿入される。
【0038】
エジェクタボディ204の一端部には、円筒状のサイレンサ220が固着される。サイレンサ220は、カバー部材222と、このカバー部材222の内部に挿入される消音材224と、このカバー部材222の端部に嵌合して前記消音材224を前記カバー部材222の内部に固定する蓋部材226を備える。カバー部材222には、突起228が設けられ、この突起228は、エジェクタボディ204の端部に設けられた長方形状の孔230に嵌合して、前記カバー部材222をエジェクタボディ204と一体化する。円筒状のエジェクタボディ204の内部には、真空発生部206が挿入される。図6から諒解されるように、この真空発生部206は、その内部に第1ノズル240と、第2ノズル242を有し、前記第1ノズル240と第2ノズル242は、タンデムに配設される。第1ノズル240と第2ノズル242の間に第1ディフューザー244が設けられ、また、第2ノズル242の一端部に第2ディフューザー246が設けられる。第2ディフューザー246は、カバー部材222の内部に挿入されている消音材224に臨む。エジェクタボディ204のカバー部材222の反対側には、ワンタッチ継手248が嵌合する。
【0039】
本発明に係るエジェクタ付吸着装置は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その組立方法について説明する。
【0040】
まず、アダプタプレート40にエジェクタ200、ロックプレート100及び取付用ブラケット80を固着する。例えば、アダプタプレート40の第1孔部44a及び第3孔部44bにチェック弁216a、216bを当接し、ガスケット214を介してエジェクタボディ204に固着された取付部208を位置決めする。取付部208の孔部210には、エジェクタボディ取付用ナット218を予め挿入しておき、アダプタプレート40の第2孔部46にエジェクタボディ取付用ボルト47を挿入し、前記ナット218に螺合する。これによって、アダプタプレート40とエジェクタ200とが一体化させる。
【0041】
次いで、アダプタプレート40の第1平面62aにロックプレート100を位置決めする。この場合、ロック部104の大径部108をアダプタプレート40の第7孔部64と対応させて位置決めする。その上で、取付用ブラケット80の取付用ボルト86a、86bを前記アダプタプレート40の第1ねじ溝66a及び第2ねじ溝66bに螺入する。このようにして、アダプタプレート40と取付用ブラケット80と、ロックプレート100と、エジェクタ200とが一体化される。
【0042】
このような状態で、次に、吸着パッド20のスカート部22側から保持スタッド120を挿入する。保持スタッド120の頂部、すなわち、第2円筒部126の頂部は、吸着パッド20の孔部28から上方へと延在し、アダプタプレート40の第7孔部64より上方へと露呈する。この状態でロックプレート100の第1操作部102aをエジェクタ200に近づくように操作すると、保持スタッド120のロックプレート溝134にロックプレート100の小径部106が係合し、これによってロック部104の膨出された、すなわち、立ち上がっている形状から、保持スタッド120は、図5において上方へと引き上げあられ、これによって、アダプタプレート40と保持スタッド120との間で吸着パッド20が位置決め固定され、さらにはロックされるに至る。このロック状態を確実にするために、ロックプレート100に設けられた第1操作部102aの孔部113からボルト114を挿入し、アダプタプレート40に設けられた第9孔部116に螺入すれば、より一層堅固に保持スタッド120とアダプタプレート40との係合状態が確保される。
【0043】
以上のようにして組立てられたエジェクタ付吸着装置10に対して、図示しない圧力空気供給源に接続されるチューブを前記ワンタッチ継手248に挿入する。そして、圧縮空気をこのワンタッチ継手248を介してエジェクタボディ204に供給すると、第1ノズル240から勢い良く吹出され、その圧縮空気は第2ノズル242に至り、さらに消音材224側へと吐出する。この間、第1ディフューザー244、第2ディフューザー246により吸着パッド20の内部の空間が吸引され、すなわち真空通路130a、130bを介して吸着パッド20の内部空気がアダプタプレート40側へと吸引され、吸着パッド20の内部空間128が略真空状態に近くなる。そこで、吸着パッド20が図示しない、例えば、平板状のワークにそのスカート部22を接することによって、当該ワークを吸着パッド20は吸着し、所定の位置に吸着パッド20とともに移送する。次いで、必要に応じて、ワンタッチ継手248を介して圧縮空気の供給を停止すれば、チェック弁216a、216bはアダプタプレート40の第1孔部44aと第3孔部44bを閉塞し、吸着パッド20の内部空間128を一定の負圧状態に保持する。
【0044】
所定の位置にワークを搬送した後、アダプタプレート40の第3プラグ76を取り除いて接続されている図示しない空気供給系から大気圧を導入すれば、吸着パッド20の内部空間128の負圧状態が破壊され、ワークは吸着パッド20から離脱する。
【0045】
そこで、長期間に渡ってこの吸着パッド20を利用した後、吸着パッド20の経年変化が生じた場合、ロックプレート100の第2操作部102bをエジェクタ200から離間するように変位させる。これによって、保持スタッド120のロックプレート溝134から小径部106が離脱し、ロックプレート100の大径部108に保持スタッド120の第2円筒部126が臨むに至る。その結果、ロックプレート溝134よりも大径な空間である大径部108から保持スタッド120は容易に下方へと引き抜くことができる。この結果、吸着パッド20は、アダプタプレート40から離脱することが可能となり、これによって、吸着パッド20の交換が容易に行われることになる。
【0046】
本実施の形態によれば、以上のように簡単な構成でエジェクタ付吸着装置10を構成することができ、また、吸着パッド20をアダプタプレート40から取り外すためには、保持スタッド120のロックプレート溝134からロックプレート100を変位させて離脱させればよい。これによって、簡単に吸着パッド20の交換が遂行され、メンテナンス性が向上するとともに、その交換の際にも取扱いがきわめて容易であるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0047】
10…エジェクタ付吸着装置 20…吸着パッド
22…スカート部 40…アダプタプレート
80…取付用ブラケット 86a、86b…取付用ボルト
100…ロックプレート 102a、102b…第1、第2操作部
106…小径部 108…大径部
120…保持スタッド 122…フランジ
124…第1円筒部 126…第2円筒部
128…内部空間 134…ロックプレート溝
200…エジェクタ 204…エジェクタボディ
206…真空発生部 220…サイレンサ
224…消音材 240…第1ノズル
242…第2ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6