(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
アルツハイマー病処置用活性成分での試験により、シリコン接着剤の裏地(line)を接着性に乏しい接着剤貯蔵マトリックスに適用でき、故に、TTSの熱力学特性に影響を与えることなく、すなわち、マトリックスからの活性成分の放出および皮膚を通る浸透を減らすことなく、製剤の接着特性を顕著に増加することが、驚くべきことに示された。
【0015】
出願人が実施したアルツハイマー病処置用活性成分の経皮適用における試験の発見は、もちろん、他の活性成分のグループに変換できる。故に、一般に、多くの活性成分について、TTSの接着性ポリマーマトリックス中の活性成分の増加した比率が、該活性成分が室温で固体ならばTTSの接着特性を顕著に低下させると言うことができる。通常、活性成分が室温で液体状態ならば、大量のいわゆる“濃化ポリマー”(例えばセルロースまたはポリアクリレート誘導体)を、それらのポリマーの機械的加工可能性を達成するために添加しなければならず、これはまた接着特性の低下をもたらす。
【0016】
本発明は、裏打ち層少なくとも1種の活性成分およびポリマーを含む貯蔵層、シリコンポリマーおよび粘着付与剤を含む接着層を含む、TTSを提供する。
【0017】
本発明のTTSは、改善された接着特性を有する。さらに、そして非常に驚くべきことに、このようにして得たTTSは、標準TTSと比較したとき、実質的に同じ放出プロファイルを有する。
【0018】
本発明は、さらに、リバスチグミンの効果および耐容性を実質的に改善する方法であって、2から50cm
2の範囲のTTSの適用を含み、該製剤は、そして投与後約2から16時間の間(mean)で、約1から30ng/mLの平均最大血漿濃度を提供し、そして反復“QD”(すなわち、1日1回)投与後、約25から450ng
*h/mLのAUC
24hを提供する。
【0019】
本発明のTTSは、非常に驚くべきことに、等レベルのExelon
(登録商標)カプセル暴露(AUC
24h)と比較して、耐容性、特に悪心および嘔吐のような消化器有害事象の改善を示す。
【0020】
特記しない限り、本明細書で使用する表現は、以下の意味を有する:
用語“経皮吸収治療システム”は、薬学的活性成分を皮膚を通して放出できる全てのデバイスを意味する。これは、特にパッチのような自己接着性デバイスを含む。
【0021】
用語“
裏打ち層”は、皮膚から離れた層を意味する。この層は、好ましくは活性成分不浸透性である。任意の適当な材料または材料の組合せを使用できる。例えばポリエチレン−テレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン(Polylpropylen)、ポリウレタンなどを使用できる。
【0022】
用語“
貯蔵層”は、1種以上のポリマーと関連して1種以上の活性成分を含む層を意味する。好ましい態様において、この貯蔵層は、ポリマーマトリックスの形で活性成分を含む。
【0023】
用語“
接着層”は、皮膚に面した層を意味する。この層は、シリコンポリマーおよび粘着付与剤を含む。
【0024】
用語“
取り外し可能な保護層”は、その皮膚への適用前にパッチから離す層を意味する。この層は、好ましくは活性成分不浸透性である。任意の適当な材料または材料の組合せを使用できる。例えばシリコン処理PET、シリコン処理ポリプロピレン、シリコン処理ポリエチレン、Fluor−ポリマー被覆PET、Fluor−ポリマー被覆ポリプロピレン、Fluor−ポリマー被覆ポリエチレンなどを使用できる。
【0025】
用語“
活性成分”は、経皮投与に適する全ての活性成分を意味する。活性成分は、水溶性およびまた水不溶性の、医薬活性成分を含み、それは無機または有機物質であり得る。好ましいのは有機物質である。本活性成分は、B. Helwig(Moderne Arzneimittel), 1980に従い、それらの鎮痛剤、解熱剤、抗リウマチ剤、鎮静剤、睡眠剤、抗癲癇剤、抗鬱剤および刺激剤、麻酔、神経遮断性鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗凝血剤、抗血栓剤、精神薬理学的薬剤、精神安定剤、化学療法剤、例えば抗生物質、スルホンアミド、抗結核剤(静結核菌剤(tuberculostatic agents))または熱帯性感染症に対する化学療法剤、利尿剤、鎮痙剤、心血管剤、例えば交感神経模倣剤、抗高血圧剤、強心剤、例えば強心配糖体およびジギタロイド(digitaloids)、非経腸性糖治療剤、中枢神経系に作用する興奮剤、老人病薬剤、(横紋筋の)弛緩剤(tonolytics)、抗パーキンソン剤、細胞増殖抑制剤、免疫抑制剤、滋養強壮剤(tonics)およびビタミン類としての適応症に従い使用する。
【0026】
好ましくは活性成分は、α−アドレナリン受容体アゴニスト、β−アドレナリン受容体アゴニスト、α−アドレナリン受容体ブロッカー、麻酔性鎮痛剤、非麻酔性鎮痛剤、アンドロゲン、麻酔剤、抗アレルギー剤、抗アンドロゲン、抗狭心症剤、抗不整脈剤、ペニシリン類、抗糖尿病剤、抗ヒスタミン剤、抗偏頭痛剤、水和された麦角アルカロイド、Ca
++アンタゴニスト、セロトニンアンタゴニスト、血小板凝集阻害剤、抗鬱剤、気管支拡張剤(broncholytics)、エストロゲン類、黄体ホルモン作用物質、冠拡張剤、ホルモン類、抗認知症剤(コリンエステラーゼ阻害剤を含む)から成る群から選択される。
【0027】
好ましい抗生物質は、ペニシリン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリン、バシトラシン、ニスタチン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ポリマイシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、リファンピシン、セファゾリン、セフォキシチン、セフスロジン、セフォチアムおよびメフォキシンを含む。好ましい化学療法剤は、スルファメチアジン、スルファメラジン、スルファメチゾールおよびスルフイソキサゾールを含む。好ましい鎮静剤および睡眠剤は、抱水クロラール、ペンタバルビタール、フェノバルビタール(phenobarnital)、セコバルビタール、コデインおよびカルブロマール(carbroma)を含む。好ましい強心配糖体およびジギタロイド(digitaloids)は、ジギトキシンおよびジゴキシンを含む。好ましい交感神経模倣剤は、エピネフリンを含む。
【0028】
特に、解熱剤、鎮痛剤および抗リウマチ剤を、適当な水溶性形または水不溶性形で、本発明における活性成分として本発明に従い使用でき、例えばプロピフェナゾン、アミノフェナゾン、アスピリン(ASA)、アンチピリン、メチルニフェナジン(nifenazine)、メラミンスルホン、スルフェナゾン(sulfenazone)、フェナセチン、ペンタゾシン、ラクトフェニン(lactophenin)、パラセタモール、キニン、フルフェナム酸、メフェナム酸、トルフェナム酸、メクロフェナム酸、ニフルム酸、クロニキシンまたはクロニキシジン(clonixidin)、フルニキシン、イブプロフェン、スプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ピルプロフェン、ジクロフェナク、イブフェナク、プロクチシック(procticic)酸、ナプロキセン、シクロプロフェン、トルメチン、クロピラック、チアプロフェン酸、オキサプロジン、フェンクロズ酸、フェンチアザク、クリダナク、フェンクロナック(fenclonac)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、カルプロフェン、スリンダク、シンメタシン、フェンブテン(fenbuten)、エトドラク、ブチフフェン(butifufen)を含む。
【0029】
好ましい精神薬理学的薬剤は、神経遮断剤、抗鬱剤、感情調製剤、香草処方薬(thymerethical drugs)およびトランキライザー、例えばチオリダジン、イミプラミン、デスイミプラミン、クロミプラミン、ケトイミプラミン、オピプラモール、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、レセルピン、アロマジン(aromazine)、クロルプロマジン、フルオプロマジン(fluopromazine)、メトプロマジン、トリメプラジン、ジエタジン、プロメタジン、アミノプロマジン、メパジン、ピパマジン(pipamazine)、マプロチリンおよびメマンチンを含む。
【0030】
好ましい抗高血圧剤は、オクスプレノロールおよびメトプロロールを含む。
好ましくは、活性成分は抗認知症剤、例えばリバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、セレギリン、メマンチン(memanitine)および該活性成分の薬理学的に許容される塩から成る群から選択する。
【0031】
好ましいコリンエステラーゼ阻害剤は、タクリン、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、フィゾスチグミン、ヒューペルジンAおよびそれらの薬理学的に許容される塩を含む。
好ましいのは、活性成分としてリバスチグミンおよびメマンチンの組合せである。
【0032】
最も好ましくは活性成分は、リバスチグミンおよび酒石酸水素リバスチグミンから成る群から選択される。リバスチグミン(Exelon(登録商標))は、軽度から中程度に重度のアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病としても既知)、パーキンソン病に関連する認知症および外傷性脳傷害の症状を有する患者の処置に有用である。
【0033】
活性成分の貯蔵層と関連して使用するとき、用語“
ポリマー”は、各々樹脂と組み合わさったポリジメチルシロキサン、ポリアクリレート、ポリイソブテン、ポリブテンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーまたはそれらの混合物から選択されるポリマーを意味する。
【0034】
貯蔵層内で使用するのに好ましいポリマーは、ポリアクリレート、例えばNational StarchからのDurotak 2353から成る群から選択される。
用語“
シリコンポリマー”は、ポリジメチルシロキサンベースのポリマー、例えばDow Corningからのアミノコンパチブル(aminocompatible)Bio-PSA Q7-4302を意味する。
【0035】
用語“
粘着付与剤”は、経皮製剤の接着性/粘着性を増加させる物質を意味する。好ましい粘着付与剤は、シリコン油、水素化樹脂酸のグリセリンエステル、ヒドロアビエチルアルコール、樹脂エステル、ウッドロジンの水素化メチルエステル、部分的に水素化されたウッドロジンのエステル、ロジンのエステルなどおよびこれらの組合せから成る群から選択される。当業者には認識される通り、TTSは特異的性質を有する数層から製造される。これらの層は、個々の組成物および別々の層の厚さに関連して変化し得る。
【0036】
本発明の好ましい態様において、使用する活性成分は、シリコン接着剤に低い飽和溶解度を有する。シリコン接着剤中の活性成分の飽和溶解度は、例えば15重量%未満、好ましくは10重量%未満、および最も好ましくは2〜8重量%である。
【0037】
本シリコン接着層は、好ましくは貯蔵層から皮膚を介する浸透を40%以上、とりわけ好ましくは20%以上およびさらに好ましくは10%以上低下させない。
【0038】
シリコン接着層の単位面積当たりの重量は、例えば5から60g/m
2の範囲、好ましくは10から30g/m
2の範囲にある。
【0039】
本発明の組成物は、広範囲の活性剤の投与に使用できる。適当な活性成分は上に同定したものの一つである。
【0040】
好ましい態様において、本貯蔵層は、さらに、増量剤、抗酸化剤、着色剤、皮膚浸透促進剤および/または防腐剤のような助剤を含む。このような助剤は専門家には知られており、標準参考書から選択でき、特にその内容を引用により本明細書に包含させるFiedler's “Lexicon der Hilfstoffe”, 4th Edition, ECV Aulendorf 1996および“Handbook of Pharmaceutical Excipients” Wade and Weller Ed.(1994)を参照のこと。
【0041】
特に好ましい態様に置いて、本貯蔵層は、α−トコフェロール、アスコルビルパルミテートまたはブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)のような抗酸化剤を含む。
【0042】
好ましい態様において、本貯蔵層は、Transcutol、グリセリン、グリセリン−エステル、脂肪酸、脂肪酸塩、Azone、ジエチル−トルオールアミド、プロピレングリコール(gylcol)、プロピレングリコール−エステル、ブタンジオール、イソプロピル−エステル、ウレアなどのような皮膚浸透促進剤を含む。
【0043】
好ましい態様において、貯蔵層:接着層の比は、5:1から1:2の間;好ましくは2:1から1:1の間である。
【0044】
好ましい態様において、本TTSは、>5N/10cm
2、好ましくは>10N/10cm
2の接着力を有する。好ましい態様において、本TTSは、<100N/10cm
2、好ましくは<50N/10cm
2の接着力を有する。接着力は、標準法に従い、例えば実施例に記載の通り、測定する。
【0045】
好ましい態様において、本TTSは、2から50cm
2、特に好ましくは5から20cm
2の範囲のサイズを有する。
【0046】
好ましい態様において、本TTSは、投与後2から16時間の間で、リバスチグミンの1から30ng/mLの平均最大血漿濃度と25から450ng
*h/mLのAUC
24hを提供し、特に好ましくは、本TTSは、投与後4から12時間の間で、リバスチグミンの2.5から20ng/mLの平均最大血漿濃度と、45から340ng
*h/mLのAUC
24hを提供する。
【0047】
さらなる態様において、ポリマーマトリックスは活性成分(複数もある)だけでなく、シリコン接着層も含む。
【0048】
さらなる局面において、本発明は、認知症の予防、処置または進行遅延において使用するための、活性剤として遊離または薬学的に許容される塩形のコリンエステラーゼ阻害剤を含む、TTSを提供する。
【0049】
さらなる局面において、本発明は、処置を必要とする対象におけるパーキンソン病に関連する認知症の予防、処置または進行遅延の方法であって、該対象に活性成分として遊離または薬学的に許容される塩形のコリンエステラーゼ阻害剤を含む治療的有効量のTTSを投与することを含む、方法を提供する。
【0050】
さらなる局面において、本発明は、処置を必要とする対象におけるアルツハイマー病の予防、処置または進行遅延の方法であって、該対象に活性成分として遊離または薬学的に許容される塩形のコリンエステラーゼ阻害剤を含む治療的有効量のTTSを投与することを含む、方法を提供する。
【0051】
本発明のTTSの製造は、当業者に既知の任意の方法で達成できる。
【0052】
さらなる局面において、本発明は、TTSを製造するための好ましい方法を提供する。本方法は、
a.)活性成分の接着剤溶液を製造し
b.)活性成分の接着剤溶液をコーティングし
c.)活性成分の接着剤溶液を乾燥させ
d.)シリコン接着剤溶液を製造し
e.)シリコン接着剤溶液をコーティングし
f.)シリコン接着層を接着層中の薬剤に重層し
g.)押し抜きし、袋詰めする
工程を含む。
【0053】
さらなる局面において、本発明は、活性成分として遊離塩基または薬学的に許容される塩の形のリバスチグミンを含み、特異的血漿濃度を提供するTTSを提供する。
【0054】
ヒトにおけるリバスチグミンの生物薬剤学特性の詳細についてはほとんど発表されていない。それは急速にそして完全に吸収される。我々は、それが主にエステラーゼ、例えば、アセチルおよびブチリルコリンエステラーゼによる加水分解により代謝され、1時間の血漿半減期を有することを発見した。それは、肝初回通過(pre-systemic)および全身代謝の対象となる。我々は、リバスチグミン含有TTSが、有利な特性、例えば、良好な耐容性を有して製造できることを発見した。
【0055】
本発明は、故に、活性成分として遊離塩基または薬学的に許容される塩の形のリバスチグミンを含み、投与後約2から16時間の間で、約1から30ng/mLの平均最大血漿濃度を有するTTSを提供する。
【0056】
本発明は、さらに、活性成分として遊離塩基または薬学的に許容される塩の形のリバスチグミンを含み、投与後約2から16時間の間で、約1から30ng/mLの平均最大血漿濃度を有し、そして反復“QD”(すなわち、1日1回)投与後、約25から450ng
*h/mLのAUC
24hを有するTTSを提供する。
【0057】
当業者は、上記で定義の血漿プロファイルを有するTTSをどのようにして製造するか周知している。当業者は、このような血漿プロファイルが、例えば:
・第一および/または第二成分の組成、例えば、賦形剤および/または活性剤(複数もある)の性質および量
・接着層のタイプ
・パッチの寸法
を変えることにより得ることができることを認識する。
【0058】
TTSは、以下の局面に留意して製剤できる:
・活性剤の放出までの時間(ラグタイムまたは遅延時間)
・活性剤の放出速度(速いまたは遅い)
・活性剤の放出時間(長いまたは短い)
・初回通過代謝の減少
・患者のコンプライアンスの改善
・投与間隔の減少
【0059】
このような局面は、例えば、水または望むならば体液、例えば、人工胃液中での、標準インビトロ溶解試験により観察できる。
【0060】
予定された時間、活性成分の1回量または反復量の放出を可能にする信頼できる時間制御放出製剤についてほとんど発表されていない。商業的に許容されるこのような製剤の必要性が存在する。
【0061】
徹底的な試験後、我々は、本発明により、例えば、胃腸環境中に存在するイオンのタイプおよび濃度、例えば、水素イオンおよびヒドロキシルイオン(すなわちpHと無関係)、ホスフェートイオンと実質的無関係に、およびまたは囲んでいる体液に存在する酵素と無関係に、特定の時間で、すなわち、遅延時間またはラグタイムを有して、単独の医薬活性剤または活性剤混合物を放出できるTTSの製造が可能であることを発見した。
【0062】
本発明によって、リバスチグミンを遊離塩基またはその薬学的に許容される塩の形で使用できる。好ましくは、遊離塩基を使用する。
【0063】
正確な投与すべき活性成分量およびTTSの量は、多くの因子、例えば、処置すべき状態、所望の処置期間および活性成分の放出速度に依存する。
【0064】
例えば、必要な活性剤の量およびその放出速度は、どれだけの時間、血漿中に特定の活性剤濃度が治療効果のために許容されるレベルで残るかを決定する、既知のインビトロまたはインビボ技術に基づいて決定できる。
【0065】
例えば、リバスチグミンについて、70または75キログラムの哺乳動物、例えばヒトについて、および標準動物モデルにおいて1日あたり1mgから12mgの活性剤を使用できる。
【0066】
本発明のTTSは、例えば、特定の時間に、活性剤を1回以上投与しなければならない患者のために、例えば1日1回医薬形態の製造を可能にし、処置を単純化する。このような組成物で、リバスチグミンの耐容性を改善でき、そして、これはより高い開始用量を可能にし、そして少ない用量タイトレーション工程回数を可能にし得る。
【0067】
リバスチグミンの増加した耐容性は、標準動物試験および臨床試験において見ることができる。
以下の非限定的実施例は、本発明を説明する:
【実施例】
【0068】
I. TTS製造
以下の例示的試験は、その遊離塩基形で存在するコリンエステラーゼ阻害剤リバスチグミンを使用して行った。試験のために、以下の2種のTTSを製造した:
TTS#1:以下の組成を有する60g/m
2の単位面積当たりの重量の支持体部分を製造した:
【表1】
TTS#2:支持体部分を2層形で死蔵し、該2層の1層はTTS#1に相当した。該層は、以下の組成の30g/m
2の単位面積当たりの重量を有するシリコン接着層を施した:
【表2】
リバスチグミンのその遊離塩基形態でのシリコン接着剤中の飽和溶解度は約5重量%である。
【0069】
II. 接着力の決定
両方のTTSの接着力を当業者に既知の方法により、以下の細目を考慮して決定した:
− 支持体部分サイズ:10cm
2
− テストプレート:鋼
− 剥がす角度:90°
− 剥がす速度:300mm/分
両方のTTSについて、
図1にしめす接着力が得られた。
図1のチャートは、シリコン接着層でのアクリレート接着剤マトリックスのコーティングが、その接着力を顕著に増加させることを明らかに示す。
その遊離塩基の形のリバスチグミンは室温で液体である。故に、30重量%の活性成分を包含させるとき“濃化ポリマー”(Plastoid(登録商標)B)の添加が必要であった。故に、低接着力の支持体となる。付加的シリコン接着層を使用したとき、接着力は、付加的シリコン接着層がない同等なTTSの約5倍である。
【0070】
III. 浸透特性
付加的シリコン接着層の適用が活性成分放出に影響するか否かを測定するため、全層ヒト皮膚およびEVA膜を通したリバスチグミンの浸透を両TTSで試験した。該浸透試験のために、以下の条件を適用した:
全層ヒト皮膚およびEVA膜を、各々改変Franz拡散セルに入れた。拡散表面面積は1.51cm
2であった。0.1%ナトリウムアジド含有リン酸緩衝液(pH5.5)をアクセプター媒体として使用した。本アクセプター媒体は9mlの容量であった。試験温度を水浴の手段により32℃に調節し、故に、インビボヒト皮膚の温度に対応した。
全アクセプター媒体を、全試験期間を通して完全なシンク条件を確実にするために、8、24、32、48、56および72時間後に新鮮なアクセプター溶液に変えた。
アクセプター媒体中のリバスチグミン濃度をHPLCで測定した。
浸透試験の結果を
図2および3にグラフ的に示す。
該結果は、その遊離塩基で存在するリバスチグミンのヒト皮膚を通る浸透速度が、2種のTTSで実質的に差がないことを説明する(
図2)。わずかな変動は、皮膚のような生物学的材料のためであるように見え、例えば、例えば微小病巣または毛嚢のような皮膚の変化により説明できる。
生物学的材料の使用が原因の変動を排除するため、浸透試験を人工膜(EVA膜)を使用して繰り返した。
図3に示す結果は、全層ヒト皮膚で得られた発見、すなわち、両方のTTSがそれらの浸透特性に関して差異がないことを確認する。
驚くべきことに、付加的シリコン接着層の付加は、皮膚を通る活性成分浸透に影響しなかった。
本発明によって、それ故に、元々のサイズを維持しながら顕著に高い接着力を有するTTSが製造できる。
【0071】
IV. 薬物動態学的特性
軽度から中程度アルツハイマー病患者での、定常状態でのTTS#2 5cm
2、10cm
2、15cm
2、および20cm
2および1.5mg、3mg、4.5mg、および6mg BID Exelon(登録商標)カプセル剤を評価するオープンラベル、平衡群、4期間、上行性用量比例試験を行った。
軽度から中程度アルツハイマー病と診断された患者を、TTS#2またはカプセル剤処置のいずれかに無作為化した。包含基準は:アルツハイマー型認知症の(DSM-IV)基準を満たす、年齢50−85歳の、男性または女性(妊娠の可能性がない)患者であった。患者は、NINCDS-ADRDA基準に従い、10−26(両端を含む)のMMSEスコアで、ほぼ確実なADであると診断されており、試験結果に影響しそうな他の医学的状態がない。
臨床試験での以前の経験を基に、14日タイトレーション工程を本試験で実行した。
本分析時、以下の数の患者が4期間の各々を完了し、薬物動態学的評価に包含された:
【表3】
【0072】
リバスチグミンの薬物動態学的を、タイトレーションの3日目に試験した最高用量以外(乏しい耐容性のために、血漿サンプリングを逃さないため)、各タイトレーション期間の最後の日の後に両処置で試験した。血漿サンプルを、0.2ng/mLの定量下限(LLOQ)のLC−MS/MSを使用して、リバスチグミンを分析した。標準非コンパートメント薬物動態学的パラメータを、WinNonlin Proを使用して個々の血漿濃度−時間プロファイルから導いた。
リバスチグミンの薬物動態学的パラメータを表1(カプセル剤処置)および表2(TTS#2処置)に要約する。平均(±SD)血漿濃度−時間プロファイルを
図4に示す。
TTS#2の適用中、リバスチグミンプラトー濃度は、全TTSサイズについて8.0時間のメジアンt
maxで達成された。暴露はまた表3に示す通り用量が増えると、カプセル剤よりは少ない程度で、特にAUC
24hにおいて過度に増加した。
リバスチグミン(C
maxおよびAUC
24h)の暴露パラメータについての変動係数(CV)により評価した患者間変動は、経口投与(39−68%のCV)と比較して、パッチ後の方が一般に低かった(33−48%のCV)。
【0073】
V. 薬理特性
TTS#2は、標準動物試験および臨床試験において示される通り、カプセル製剤と比較したとき、改善された薬理学的特性を示す。
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
na = 入手不可能
【0076】
【表6】