(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
各実施形態で説明する各案は他の実施形態においても適用することができる。
図1ないし
図3において、1は設置基盤で、同基盤1は、津波襲来のおそれのない高台でなく津波が現にあるいは将来襲来するおそれのある海岸縁や一般平坦地などをその対象としている。しかし、前記高台であっても津波や土砂崩れなどの襲来のおそれがあるので、設置対象として前記高台などを除外する意味はない。また、設置基盤1は、土地である必要はなくコンクリートや金属板造りなどのこともある。これらに図示した住宅である建造物は既設であっても新設であってもよく、また木造であっても鉄骨造りであってもよい。鉄筋コンクリート造りも含む。
【0010】
住宅において2はコンクリート製基礎で、同基礎2は、正方形や長四辺形などの平面矩形状をなし、設置基盤1に埋め込み固定されるとともに、この基礎2上には土台3が固定されている。土台3のコーナーその他の個所からは支柱4…が立設され、梁や桁、屋根裏躯体などの組み合わせにより1階および2階が構築されている。そして、玄関扉5や必要な窓6…が設けられている。
【0011】
矢印Xは海岸から押し寄せる押し波で、矢印Yは引き波を表している。これらX側が住宅にとって前側、Y側が後側とされる。
7は第1防護柱(防護部材)で、同第1防護柱7は、住宅の前側と後側にそれぞれ一対ずつ垂直に立設配備され、各柱7は住宅の前面・後面コーナー前方に対応するようにして設置基盤1内に埋設した主コンクリートブロック8に貫通して固定されている。各柱7は、四角な金属パイプであるが、丸パイプやアングル材などを使用することができる。
【0012】
第1防護柱7の上部には、脱着の可能な水平状の上部連結部材9が突設され、この連結部材9の先端に取付けた取付具10が住宅2階の前後面の左右コーナーに当て付けられるとともに内部の柱4に対してそれぞれ止め付けられている。
12は第2防護柱で、同防護柱12は第1防護柱7より住宅側において主コンクリートブロック8からそれぞれ立設配備されるとともに、第1防護柱7よりも低い柱として形成されている。同第2防護柱12は、住宅の前後面左右コーナーに対応するように対向配備されており、その上下2点から突設された下部連結部材13が先端の取付具14を介して住宅に連結されるようになっている。
【0013】
15は筋交いで、第1と第2の防護柱7,12間にX字をなすように連結配備されている。16は前コンクリートブロック、17は前防護柱であり、これらをセットにしたものが
図1のように住宅の前方および後方において三角配置をなすように固定設置されている。前コンクリートブロック16は
図1に仮想線で示すように1つの共通ブロックにしてもよい。また、前防護柱17と左右後寄りのアンカー支柱18を利用してハの字状をなすように網や上下複段のワイヤなどによる防護張材19を設けて瓦礫がここで引っ掛かるようにしてもよい。
【0014】
住宅に地震の震動が作用すると、連結部材9,13を介して第1および第2防護柱7,12が対抗作用し、その結果、住宅の倒壊が効果的に防止される。
津波がX方向から襲来すると、まず前防護柱17…が対抗することにより瓦礫や船舶、住宅、車などの隋流物が止められて津波流のみが流れくることになる。その際、防護張材19を対抗させるようにすると、瓦礫の小さいものまでもがここで受け留められ、住宅の方へさらに流れ当るようなことがなくなる。さらに、流れくる津波流は、第1、第2防護柱7,12が受け留めるので、住宅の1階や2階へ隋流物が衝当して破壊するようなことがなくなる。これらのことは引き波Yが作用する際にも同様にいえる。
【0015】
図4および
図5は他の実施形態を示す。この実施形態は、住宅の前後に第1、第2防護柱21,22を配備して主コンクリートブロック23により立設固定するとともに、第2防護柱22から突設した下部連結部材24を取付具25を介して支柱4に連結固定し、さらに、第1、第2防護柱21,22間を筋交い26により連結してある。また、第1防護柱21の左右間を
図4のように門構えとなるように横梁27で連結するとともに、第1防護柱21から上部連結部材28を突設して取付具29を介して住宅の2階の支柱4に連結したものである。
【0016】
そして、横梁27と上部連結部材28とでコの字枠状をなす面に避難部分30を張り、津波や洪水などが襲来してきた際、2階屋内からこの避難部分30上に避難できるようにしてある。この避難部分30は住宅の前後に設けられているが、いずれか一方でもよい。
この案とは別に第1防護柱21の前方には、前コンクリートブロック32を介して前防護柱33を左右一対配備するとともに、これら前防護柱33とその後方の第1防護柱21との上端間を桁材34で連結することにより、車35用の駐車ガレージを形成したものである。それとともに、この車35が津波や洪水で浮流されないように、遠隔操作可能なウインチ36付きの簡易リフター37を構成して吊上げ可能にしたものである。尚、リフター37の支柱間には、津波流からの防護張材38を設けてもよい。
【0017】
この実施形態では、第1、第2防護柱21,22および連結部材24,28により地震から住宅を護り、津波の襲来からも護るものであり、特に、避難部分30は津波や洪水時に逃げて避難する場所を提供する。また、ガレージの存在は津波が襲ってきた際に隋流物を受け留めて住宅に瓦礫などが流れ当ることを防止することができるとともに、車35をリフトさせて安全な高いところに避難させることができる。同ガレージは、地震による住宅の倒壊防止をさらに確実なものとする。
尚、
図4の右下欄に示すように、第2防護柱22は支柱4前に接近して配置して両支柱22,4をアングル型取付具29と止着具とにより一体連結することにより家屋の保護がより効果的になされるようにしてもよい。この場合、第2防護柱22は家屋の基礎に貫通して埋設したり基礎上に下端がくるようにして埋設してもよい。また、第2防護柱22は長四角なパイプを使用することができ、さらに、右欄に示すように、支柱4の前側に第2防護柱22を配備した上にその前方に第1防護柱21を下部埋設状態で配置してこれら4,22,21の三者を連結板31…により一体化して更なる増強を図ることもできる。
また、
図5の下欄に示すように、基礎aを通じて杭bを打込み家屋の安定化を図るようにしてもよい。その場合、杭bは、垂直でもその右欄図のようい斜め打込み式のいずれでもよい。斜め打込み式の場合、基礎aの横断面内において斜め打込み式にする他、その上の図に破線で示すように、基礎aの長手方向の面内において斜め打込み式にする場合とがある。
【0018】
図6および
図7は他の実施形態を示す。同実施形態は、1階部分を津波に強い鉄筋コンクリート造り(SRC:鉄骨鉄筋コンクリート造りを含む)とし2階部分を木造あるいは鉄骨造りなどの組立構造にした一戸建て住宅や公民館などの公共建物についてのものである。1階部分は、打設した基礎杭40により受支えした底版41を埋設固定した形とするとともに底版41上に
図7のような矩形周壁42を立設しそれに天壁43を備えて完全密閉型のコンクリート構造にしたものである。
コンクリート構造の内部空間44は、
図7の仮想線のように一体あるいは別付けの区画壁45により部屋造りをしてもよく、この場合、天壁43を一部開口状にして図示しない内部階段により登降可能にすることにより、日常生活あるいは避難生活可能にしてもよい。そうした生活用品(非常用品を含む)や家電などを常備しておいてもよい。
【0019】
押し波Xを前方として1階部分の左側面(あるいは右側面や背面でもよい)には、コンクリート一体型の直線式階段46が設けられ、防護壁47で津波流から護られた入口扉48を開閉して2階部分に出入りできるようになっている。この階段46は
図6に仮想線で示すように前後一対設けてもよい。前後一対設けた場合、相手の階段が津波流や瓦礫などを防護して登降を安全確実にする。尚、この階段46は、金属製で別途付設するものでもよい。また、ラセン階段にしてもよい。1階部分を前記SPC造りとした場合、その内部鉄骨は2階部分の支柱として利用することができる。階段46の途中である周壁42の中程高さに入口扉48を備えて出入り可能にすることもできる。
【0020】
2階部分は、支柱50と土台51および図示しない梁や桁、屋根裏躯体などにより外壁52を有する構造体となっている。53は窓部で、2階部分のできるだけ上位に配置するとともに、
図6の右上に横断面図を示すように津波の流れを離れた外域を流すように三角形の流れガイド54を設けるとともに窓材に流れくるものが当って損壊しないように横桟55を張ってある。
【0021】
56は方形などの屋根部分で、その適所には防水型で開閉可能な採光部分57を設けてある。屋根ソーラーを構成しておいてもよい。2階室内に設けた避難階段57を通じてこの採光部分58を開けることで洪水や津波などの非常事態の際は屋根上に避難することもできる。尚、この屋根の形状は限定されるものでなく平坦な形のものでもよい。
59は伸縮型で高さ調節可能な防護柱であり、底版41から立設されて建物の2階部分の前方に対応すべく左右一対およびその間のやや前方位置の複数個所に配備され、この防護柱59は単独に立ち上がるようにしてもよいが、図示のように連結部材60を介して建物に連結しておけば津波襲来時に有効に対抗する。防護柱59にはワイヤやメッシュなどの張設部材Pを設けておけば瓦礫などをそこで喰い止めることができる。
【0022】
連結部材60は、
図6の左上欄に示すように、止着具aにより適宜高さに固定可能なスライド式の受筒60aと、同受筒60aから突設され取付具63から伸びた伸縮バー63aを伸縮可能で適宜固定可能なスライド受筒60bからなるものにしてもよい。これによれば、様々な態様の支柱50への取付具63のマッチングが調節により可能になる。防護柱59および受筒60aは円筒状にしておけば縦軸回りのスイングも可能になり、よりマッチング性が多様になる。この防護柱59は建物の後側にも同様に設けることができる。防護柱59は、単一本でなるものでもよい。この実施形態では、後側には1本の防護柱61と連結部材62とでT字形をした防護手段が立設固定されたものが例示されている。この防護柱61・連結部材62の方式は建物の前側に設置することもできる意味である。
尚、1階部分の各コーナーの防護手段としては、
図7に示すように、アングル形をした緩衝部材64や底版と半円筒部分とを一体化した緩衝部材65を構成してもよい。これらは弾性質のものや金属質で形成することができる。図右側に示すように、丸あるいは角柱状の緩衝部材66にしたり部分円弧形の緩衝部材67にしてもよい。各緩衝部材64〜67は、いずれかを択一して全個所に適用することができる意味である。
【0023】
また、
図8の左上欄のようなかまぼこ形(部分円形)の2階部分69にして津波が上を越えるようにしたり、屋根部分70のみをかまぼこ形にしてもよい。
さらに、
図9に示すように、3階構造のうち1・2階部分を鉄筋コンクリート構造部分72とし3階部分73を木造あるいは鉄骨構造として、津波襲来想定高さHよりも鉄筋コンクリート構造部分72の方を高く設定して津波はコンクリート構造部分72で全て受け3階部分73には津波が及ばないようにすることができる。74は階段、75は防護壁、76は入口扉、77は内部階段、78は汲揚ポンプ、79は前後の防護柱である。
尚、コンクリート構造部分72の上部周囲に一体の立ち上がり部分80を設けて津波に対抗するようにし、その内部スペースを介して木造や鉄骨構造の3階部分73を建て付けるようにしてもよい。
また、
図9に示すように、洪水の際に3階部分73あるいは2階部分69から屋根c上に登って避難できるようにしてもよい。この場合、3階部分73内には、その天井開口に向けて立て掛けられる第1避難階段dを設けるとともに、この階段dからさらに開閉扉eつき屋根開口へと伸びる第2避難階段fを設け、この階段fを利用して屋根c上であるやぐらg下に避難できるようにしてもよい。
【0024】
図10および
図11は、海洋や河川沿岸地域住民を護るために設置される津波避難用施設についての実施形態を示す。この施設は、2階あるいは3階分の高さにする鉄筋コンクリート躯体Aとその上に適宜高さをもって設置される鉄骨躯体Bとでなる。躯体Aは、津波襲来想定高さH1を充分超える高さに設定される場合と想定高さH2より低く設定される場合とがある。ここでは前者を想定した設定にしてある。
【0025】
躯体Aは、地中杭81により支持された基礎版82と、基礎版82上の底壁83、および底壁83から立ち上がり矩形の内部空間84を形成する外周壁85を備えるとともに下避難場所にもなる天壁86を備えている。躯体Aは、円筒形や楕円筒形、三角筒形、菱形など種々の幾何学形状を採用することができる(以下の他の実施形態でも同様)。
基礎版82は、地中杭81で地盤沈下を防止するようにしてあるが、この実施形態では、さらに固化液浸潤によりコンクリート様に強固に固化する固化層体87による沈下防止策が図られている。固化層体87および地中杭81のいずれか一方あるいは双方を省略することがある。
【0026】
躯体Aは、コーナーおよび適所に補強肉厚部88…を有して津波対策をとっているとともにこれら肉厚部88…が上側の躯体Bの支柱94の取付座95を載せアンカー固定する受部の機能も併せもっている。躯体Aの内部空間84は、非使用空間とする場合と、中段仕切り床89や縦仕切り壁90などにより仕切って平時あるいは非常時の生活空間とする場合とがある。その場合、図示しない内部階段を設けてもよい。91は別付けの折り返し式階段で、躯体Aの天面である下避難場所に登ることができるもので、一体コンクリート造りのものでもよく、その中途踊り場から入口扉92を介して内部空間84内に入るように構成してもよい。
【0027】
躯体Bは、前記取付座95付きの支柱94の複数本とこれらの基部間をむすび躯体A上に固定される平面矩形をした底フレーム96とを有するとともに、支柱94上には上避難場所を構成する上フレーム97が設けられている。そして、上階段98を介して上避難場所へ登ることができる。99は防災張材で、網やワイヤなどでなり、100は屋上手摺で、網やワイヤなどの防災張材を設けることもできる。尚、躯体Aは、津波襲来想定高さH2以下に設定することもある。
【0028】
102は左右一対のアンカーブロックで、鉄筋コンクリート製で施設の前方地盤内に埋設固定されており、これらのブロック102を介して金属パイプなどの防護柱103が立設固定されて躯体Bの中段あるいはそれ以上の高さに臨むようになっている。この防護柱103は、同柱103の外周に嵌め込まれて上下移動可能とされ適宜ロックボルト104により固定され得る第1ブラケット105と躯体Aの前面に固定される第2ブラケット106およびこれらブラケット105,106間に軸止めされた斜め向きのリンク107とでなっている。これらリンク107は上側の前下がり式のものと下側の前上がり式のものとがあるが、前下がり式のものは
図10の矢印のように前方からの津波力で下がる方向に力がかかるので防護柱103を抜けにくくする意味で有効であるので、該前下がり式リンク107のみで構成することがある。尚、
図10に示すリンクチェーン式あるいはワイヤなどによる引き下げ材108により防護柱103をアンカー止めすることもできる。
また、底フレーム96の一部96aを前方あるいは後方へ延ばして取付ブラケット103aと止着具を介して防護柱103に連結し防護柱103の支えとすることもできる。
さらに、前記躯体Aの上部には立ち上がり部109を形成してその上面あるいは内側を介して躯体B(支柱94)を設置して躯体A上に避難する人のための津波避けとするように構成できる。
【0029】
尚、
図10の右上欄に示すように、躯体Aは2段階に形成することができる。
また、
図11の上欄に示すように、押し波がX方向からくる場合には、三角形の頂点位置に防護柱103を配置することがあり、その場合、ワイヤや網材などによる防護張材110を設けて瓦礫などの隋流物をここで捕捉して躯体Aまで到達しないようにしてもよい。この防護張材110には、ばね111やダンパーなどの緩衝手段を介することもある。
【0030】
図12は津波避難用施設についての他の実施形態を示す。この実施形態は、対津波に高い強度を発揮する鉄筋コンクリート構造の躯体Aとその上の鉄骨構造の躯体Bとでなるものである。躯体Aは、
図10および
図11の実施形態のものと略同様の構造であり、地中杭115・基礎版116・底壁117・外周壁118・天壁119などを備え、内部空間は非使用の空間とする場合と、津波や洪水などの非常時避難や公民館としてなど公共利用などの利用可能型の空間とする場合とがある。利用可能型空間である場合、中間床壁120や内階段121を構成した上下2階あるいは3階建て空間として形成する。外階段122を付して設置基盤123から中間扉124を介して2階部分に登れるようにしたり上扉125を介して天面まで登れるようにすることもできる。126は防護壁で、各扉124,125を通じての出入り時に津波が襲ってこないようにするためのものである。
【0031】
躯体Bは、複数本の支柱128と横連結材により2階避難場所129および屋上避難場所130を備えてなり、各避難場所129,130との間で登降するための内階段131を備える。躯体Bの外周には、津波による隋流物からの被害を防止するため、金属網やワイヤなどによる防護張材132が張られている。躯体Bは、2階建てとしたが1階建てにしたり3階建てに変更することができる。
施設の前方には、浮遊してくる隋流物である船舶や車、家屋、瓦礫などが躯体A,Bに到達しないようにアンカーブロック134を介して防護柱135が立設固定されている。この防護柱135は、左上にも示すように、中央にも支柱を有する門型のものとされ、特に瓦礫などの細かいものもここで喰い止めるように金属メッシュ材やワイヤなどによる防護張材136を張設してなる。この防護張材136は、一定の網目をもった1枚の金属メッシュ地のものであるが、前後に離間した2枚の網材で構成してもよく、その場合、前側が粗く後側がそれより細かいメッシュとしたものにすれば瓦礫を2段階に分けて効果的に捕捉することができる。
図10、
図11のような防護柱を構成することもできる。
一方、図の右側に示すように、防護柱138は、アンカーブロック139による支持以外に外階段122に連結して支持させるようにしてもよい。外階段122の基部はブロック139側に固定支持させるとより強固な支持が得られる。
【0032】
尚、防護張材132は、
図13のような横引きワイヤでもよく、屋上の手摺に代えて網メッシュ地のものにしてもよい。また、内階段131はラセン階段にしてもよい。さらに、防護柱141は、
図13のように、基部がアンカーブロック142に固定され上部が躯体Aに支持された斜め柱状のものにしてもよい。この場合、防護柱141は、躯体Aとの間に緩衝材143を介装して弾性支持したり、下端が基礎版116に固定された補助交い144で支持してもよい。
【0033】
また、
図14に示すように、躯体AをSRC(配筋は図示省略されている)とした場合、その鉄骨支柱147を上へと一体あるいは連結により延ばして支柱部分148とし、これら支柱部分148を利用して面構築部分を形成して下避難場所149や上避難場所150を構成してもよい。これらには上下の防護張材151を張設して津波に対処する。支柱部分148を含む鉄骨支柱147を支持役として防護柱152を上端支持してもよい。153は連結部材である。この場合、防護柱152の下部あるいは基部も鉄骨支柱147から突設した連結部材を介して支持するようにしてもよい。この防護柱152の下端はアンカーブロックに支持する場合と前記のように躯体A側にのみ支持する場合とがある。
【0034】
図15は他の実施形態を示す。この実施形態は、躯体Aを、基礎版156と複数本の支柱157および天版158とによる鉄筋コンクリート造りのものとし、適宜ブレース159を張ったり筋交いを設けて補強したものにしている。支柱157は、図の向こう側にも離れて同数のものを有する。支柱157は上からみて円(
図15の右上欄参照)上あるいは楕円上にあるように配置したり菱形線上にあるように配置してもよい。支柱157の本数は3本、4本、あるいは5本以上いずれでもよい。躯体Aは津波襲来想定高さを超える高さとされているが、この想定高さ以下にする場合もある。外階段160は直線型の他ラセン型のこともある。
【0035】
躯体Bは、支柱155と屋上面体161とで鉄骨構築型とされ、躯体Aの上面に下避難場所162が、屋上面体161の上面に上避難場所163が設けられている。そして、上階段164や手摺(あるいは防護張材)165、収納コンテナ166などを適宜設けて非常時に備えるものとしてある。収納コンテナ166は津波襲来に対する防護機能をもつ強固な構造体とする。その場合、支柱155を構造支柱として利用することができる。例えば、左上に示すように支柱155の2本をコンテナ166の主柱とし付加支柱167や上下の付加フレーム168を組み合わせて強固な枠組みとしそれに防護外板169と扉170を組み合わせて固定設置するものである。172は前後の防護柱で、独立したブロック173に固定したり基礎版156の一体張り出し部分に固定するようにしてもよい。
また、174は別の案である防護柱で前側にも配備することがあり、この防護柱174は、支柱157の前方に縦向きに設けられて上下複数本の連結部材175により取り付けられている。防護柱174の下端は地盤内あるいはコンクリートブロック内に固定してもよい。
【0036】
図16に示す他の実施形態は、躯体Aを鉄筋コンクリート造りとして、下段の囲い壁型の下部A1とその上に一体に形成した支柱型の上部A2の2段階に構成し、その上に鉄骨支柱造りの躯体Bを載せて固定したものである。178は階段であり、直線階段やラセン階段を選択することができる。179は下避難場所、180は上避難場所、181は支柱、182は手摺を示す。
【0037】
図17は丸や角形の支柱185を上からみて正三角形の頂点位置に配置し、その基部をコンクリート基盤上に固定するとともに高さ中途と上端の各高さにおいて連結部材186でつなぎ、上端に避難場所を設けた鉄骨あるいはコンクリート造りの津波避難施設を略図で示すものであり、この施設の前後には防護柱187を配備して津波対策をなしたものである。
このものを元に、
図18および
図19に示す施設は、支柱185を菱形の頂点位置に配備して、下避難場所188や上避難場所189および階段190を構成したものを示している。
図20および
図21に示す施設は、前後が三角形でその間が四角形の組み合わせでこれらの各頂点に支柱185を配置したものである。
【0038】
図22ないし
図26は他の実施形態を示す。同実施形態は、高い津波が襲来してきても安全を確保できるようにした高床式の住宅設置方式で特に狭い設置面積により多くの住宅を集合配備して施工の簡略化とコストダウンを図ることができるようにしたもので、住宅専用に限ることなく、その一部あるいは全部が店舗、事務所あるいは工場などを対象とするものであってもよい。
図22および
図23は、住宅専用の構築方式でその一集合単位を示すもので、こうした単位を更に複数組み合わせることもできる。
【0039】
200は設置基盤で、この基盤200は、例えば、津波や地震、洪水などの災害後に復興した新地(平坦地や高台地のいずれを問わない)を想定しているが、災害に遭遇したか否かは問わず災害に遭遇していなくともこれから災害の対策をとろうとする地盤を対象にしてもよい。
201は鋼管製の共用型基礎杭で、下部aと上部bとでなり、例えば、その上部を示す
図24におけるように、矩形頂点位置に対応するように4本を1つの単位として尺モジュールのもとに配置され、例えば、家屋幅方向に対応する芯間寸法Wは7.2m、家屋奥行き方向に対応する芯間寸法Lは3.6mとされている。
この寸法は
図22においても対応して示してある。
下部杭aは、前後間隔Lのもとに左右間隔Wをもって前後離間する2列に配備されている。203はRC構造の基礎ブロックで、下部杭aが設置基盤200に打込まれたあと上部杭bを垂直に立設し、そのあとで同ブロック203が打設形成されてなるものである。上部杭bの上端は、当該地域に想定される津波襲来高さを充分超える高さに設定されている。例えば、当該地域の津波襲来想定高さが8mであればそれを超える10ないし12mに設定する。上部杭bのまわりには
図23に仮想線で示すように基礎ブロック203にコンクリート製の周補強支柱204を一体施工することがある。
【0040】
これらでなる基礎杭201…の設置基盤200から伸びる部分の中間高さは、
図23の右2列の左側と左2列の右側のものの間が中段主梁206により連結されている。また、基礎杭201…の右2列相互間および左2列相互間は、
図23、24に示すように、中段副梁207で連結されているとともに、
図23の紙面に直交する方向に並ぶ基礎杭201間は、
図24に示すように、中段桁材208…により相互連結されている。これら中段主梁206・中段副梁208・中段桁材208の基礎杭201に対する連結は、基礎杭201まわりに水平に固着した受フランジに止め付ける方式にしたり、基礎杭201まわりに縦向きに配備した取付ブラケットを介して取り付けるようにしてもよい。前記受フランジと取付ブラケットの双方を使用して連結するようにしてもよい。これら連結方法については後述する。
【0041】
前記中段主梁206…上には、
図23の紙面に直交する方向に中段主床210が敷設され、
図24のように、中段副梁207上には、中段副床211が敷設されている。そして、中段主床210上のスペースはこれら集合住宅に居住する人のため例えば、集会所や遊び場などとして活用される。
中段副床211の上には外壁212が施工されて、例えば、その上階に住む人のための物置213が構築されている。この物置213の下方に対応する基礎ブロック203上のスペースは、対応する上階の住民のための駐車スペース214として提供される一方、同スペース214から物置213内に登ることのできる個別下階段215が設けられている。個別階段215を登った先の入口扉216は個人利用であるため施錠可能になっている。基礎杭201の物置213に対応する構造部分は安価な施工をするためブレス工法で構築されている。また、同物置213内の一側部には、後述する家屋内の特定個所に登るための個別上階段217が設けられて上側の家屋1階室内とつながっている。
【0042】
基礎杭201…のうちその4本を1組として床フレーム220が構築されている。床フレーム220は、
図25に示すように、八角形を基本形とするもので、家屋の前側に対応して配置される前フレーム221と、家屋の後側に対応して配置される後フレーム222、および前・後フレーム221,222の両側間をつなぐように配置される横フレーム223,223を有する。前フレーム221は、平面コの字形フレームaの両側に斜材bを組み合わせた一体フレームで、同フレーム221は、前記後フレーム222とともにトラック輸送の法規制に適応すべく細幅(1・8m前後)フレームとされている。後フレーム222は、八角形の3辺分を一体化した形とされている。そして、これらは基礎杭201の上端に備え付けた結合フランジ224の上に止着具(ボルトナット)225…により取付けられている。結合フランジ224は上下2枚対向型でその間に各フレームの端部を差し入れて締め付けるものにしてもよい。
【0043】
底フレーム220において227は主内フレームで、基礎杭201の幅方向に対応する方向に仮設され、結合フランジ224によって固定されている。228は主内フレーム227間に仮設された副内フレームでアングル229などにより連結されている。
なお、横フレーム223は、隣同志合わせて2本設けられているが、1本のみにしてもよい。
また、
図25の左上欄に示すように、床フレーム220側に連結筒230付の結合フランジ231を備えておいて前記結合フランジ224に締め付け固定するようにしてもよい。この場合、連結筒230に結合ブラケット232を固着しておいて床フレーム220側を連結するようにしてもよい(
図25の左下欄)。
【0044】
こうして構築された床フレーム220の上には、尺モジュールで構築された床基礎フレーム234が載置され止着具235による止め付けにより床フレーム220と同心状に固定されている。そして、
図22および
図23に示すように、床基礎フレーム234上に2階建ての家屋235が構築され、床基礎フレーム234に締め付け固定されている。床フレーム220の床基礎フレーム234まわりの上面には、例えば、デッキプレート上にモルタル236を打設したものが敷設されている。
【0045】
このように床フレーム220上に床基礎フレーム234を載せその上に家屋235を構築した単位が、
図22のように基礎杭201を隣同志において共用化した状態で、複数単位配備されている。床基礎フレーム234は尺モジュールで縦横5.4mとされている。
【0046】
尚、前記家屋単位は
図22のように右左列にそれぞれ3単位配備され(限定されない)、その間は
図23のように矩形枠状をした歩道床枠237の複数で連結されているとともに、同床枠237上には前記したようにデッキプレート上にモルタルを施した歩道版238が施工されている。239はアーケードである。
また、
図24における個別上階段217は、
図26の家屋235内の倉庫240内に連絡されている。
さらに、
図22、
図23における242は共用階段で、同階段242は
図22のように基礎杭201相互間などに設置されて基礎ブロック203と歩道版238間を登降可能になっている。
また、
図22の243は設置基盤200と歩道版238間をつなぐ傾斜路である。
さらに、244は共用エレベータ、245は緩衝杭であり、緩衝杭245は基部が埋め込まれているとともに上端に設けた滑車246を介して前後に伸びたワイヤロープ247はその下端前後において地盤に引張固定されている。ワイヤロープ247に津波流や船舶などの隋流物が乗り掛かることで緩衝杭245には下向きの力が掛かり倒れにくくなるものである。248は埋設コンクリートブロックである。
また、前記床フレーム220は八角形に基づくものであるが、四角形、五角形、六角形に基づくものでもよい。
さらに、基礎杭201は、家屋一軒当り4本配備されているが、例えば、
図24において仮想線の丸印Xで示すように2本のみで構成してもよい。
【0047】
図27および
図28は他の実施形態を示す。同実施形態は、設置基盤300上に既設の家屋301を基礎302を含めて高く設定しなおし、津波の襲来から家屋301が流されず護られるようにしたものである。既設の家屋301の基礎下には前後2本のリフトブーム303が通され、その両端に下ブラケット304を備え付けておくとともに、リフト支柱305に備えたウインチ306からのワイヤロープ307をホイール313を介して前記下ブラケット304に連結してリフトアップさせる。大きくリフトアップした様子が
図29に示されている。下ブラケット304は上ブラケット308に連結して家屋は固定されるとともに、リフト支柱305とリフトブーム303間を支持部材309で連結して更なる固定状態を得るようにする。尚、津波が襲来してくる前方には緩衝杭310を立設配備し、その間にワイヤロープ311を数段張ることによりさらに防護を図るようにする。312は家屋サポータである。
【0048】
図30は他の実施形態を示す。同実施形態は、左図のような既設のビル構造体315を内部鉄骨316や配筋などとともに基部において切断してジャッキアップし、そのあと、数回のジャッキアップを経てのち、右欄図のように、主ジャッキ317により津波襲来想定高さ以上にアップしたところで、ビル支持フレーム318を構築してこれにより本格的に安定支持させる。319はビルサポータである。そののち主ジャッキ317を取り外すか否かは自由である。
【0049】
図31は他の実施形態を示す。同実施形態は、左図のような既設の木造家屋322…の複数を右図のように津波に強い高い架構体323上にジャッキアップやリフトアップなどを経て載置固定して集合住宅を構築するようにしたものである。324は階段で、ここでは架構体323の斜交補強材325とともに補強部材を兼ねている。
【0050】
図32は他の実施形態を示す。同実施形態は、支柱328や横連結材329などで高く構築された津波避難施設330をより有効に防護する方式を示すもので、施設330の前あるいは後方には複数組の緩衝杭331…が前後に複数段離間して配備されて防護作用を発揮するようにしてある。
【0051】
図33および
図34は他の実施形態を示す。同実施形態は、設置基盤334に高台335を造り、この高台335に津波避難用の階段336を備えるとともに同台335の中央から下がり傾斜状ですべり落下可能な滑り面337を備えた避難通路338を形成し、さらに同通路338の末端に避難壕339を形成して一時避難可能にしたものである。340は開閉可能で水密式の蓋、341はクッション材、342は登降可能な階段、343は手摺、344は空調パイプである。345は緩衝杭で、津波流などをここで遮るためのものである。尚、空調パイプ344は緩衝杭345の1つに連通している。また、避難通路338は
図34における右側にも略対称配置することができる。346は他の高台347を介して避難壕339に連通させた空調パイプの他の例である。避難通路338は1本あるいは2本に限らず、広い避難壕339を中心にして放射状に設けることができる。
【0052】
図35ないし
図37は他の実施形態を示す。同実施形態は、支柱350の複数本の上に下避難場所351を形成しさらに上支柱352を介して上避難場所353を設けて階段354により各避難場所351,353へと避難可能に構成した鉄骨構造型の津波避難施設において、階段354を利用して自力で避難できない老人などを避難させ得るようにしたものである。
355は
図37のように溝型とされ斜め向きに設置された滑り路で、設置基盤356から下避難場所351上まで至るように配備され、この滑り路355には、ウインチ357とワイヤロープ358とにより引揚げられるリフター359が設けられている。
【0053】
このリフター359は、フレーム360に背もたれ361付き座362と取っ手363を備え、さらに車輪364により前記滑り路355上を転がるようにされるとともに抜け止めローラー365により安定した走行ができるようになっている。このリフター359および滑り路355は、施設の引き波襲来側に設けられているが、
図35のように押し波襲来側に設けてもよい。また、366は緩衝杭で、この例では受パイプaと挿し込みパイプbの2段になっている。受パイプaの中には砂利・土砂などの受け材が入れられている。この受け材は弾性質のものにして挿し込みパイプbの下向きの力を緩衝しながら受けるようにしてもよい。また、367はホイール、368はワイヤロープ、369は杭であり、杭369は単独に打込んだり埋設する方式にしてもよいが、図示のように受けパイプa側に引っ掛ける方式にしてもよい。前記リフター359は、平時は下避難場所351上に待機させておき、その際は滑り路として子供たちに利用される一方、津波襲来時には、ウインチ257を手動あるいは電動で繰出し操作して図のように避難用に使うことができるものである。尚、滑り路355は、階段354の横に並列に配置することもできる。