(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の材料が、前記第1の材料の2種類以上の官能基と、静電気力と化学結合力の少なくともいずれか一方により相互作用することで、前記第1層と前記第2層とが積層される、請求項1に記載の積層膜。
前記第2の材料が、前記第1の材料の2種類以上の官能基と、静電気力と化学結合力の双方により相互作用することで、前記第1層と前記第2層とが積層される、請求項2に記載の積層膜。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0032】
[第1の実施形態]
(積層膜100の構成)
まず、
図1A及び
図1Bを参照しながら、本発明の好適な実施形態に係る積層膜100の構成について説明する。
図1Aは、本発明の好適な実施形態に係る積層膜100の構成の第1の例を示す説明図であり、
図1Bは、本発明の好適な実施形態に係る積層膜100の構成の第2の例を示す説明図である。なお、
図1A及び
図1B中の「X+X’(Y+Y’)」は、官能基X(Y)とX’(Y’)とが相互作用(この場合は、化学結合)して生成された基を示している。
【0033】
図1A及び
図1Bに示すように、本実施形態に係る積層膜100は、FPD(Flat Panel Display)や照明等の電子デバイス等のバリアフィルムや、反射膜、光学フィルター、光共振器等の光学素子に用いられる膜であって、複数種類の官能基を有する第1の材料からなる第1の層110と、第1の材料が有する複数種類の官能基のうち少なくとも2種類以上の官能基と相互作用可能な第2の材料からなる第2の層120とが、それぞれ少なくとも1層ずつ交互に積層されたものである。
【0034】
すなわち、本実施形態に係る積層膜100は、基材101上に形成され、第1の層110と第2の層120とが各1層以上積層された構造を有しており、各層は所定の2種類以上の相互作用により密着している。より詳細には、積層膜100では、例えば、第2の材料が、第1の材料が有する複数種類の官能基のうち少なくとも2種類以上の官能基のそれぞれと化学結合可能な2種類以上の官能基を有し、第1の材料と第2の材料とが2種類以上の化学結合により結合することにより、第1の層110と第2の層120とが2種類の化学結合力により密着することができる。また、例えば、第2の材料が、第1の材料が有する複数種類の官能基のうちの少なくとも1種類の官能基と化学結合可能な官能基を有し、かつ、第1の材料が有する他の官能基と静電気力により相互作用可能であることにより、第1の層110と第2の層120とが化学結合力及び静電気力により密着することができる。
【0035】
図1Aに示した第1の例では、第1の材料として材料Aを、第2の材料として材料Bを用い、材料Aが、2種類の官能基X及びYを有し、材料Bが、官能基Xと相互作用(化学結合)可能な官能基X’及び官能基Yと相互作用(化学結合)可能な官能基Y’を有している。そのため、官能基Xと官能基X’とが結合し、官能基Yと官能基Y’とが結合することにより、第1の層(材料A層)110と第2の層(材料B層)120とが2種類の化学結合力により密着している。
【0036】
図1Bに示した第2の例では、第1の材料として材料Aを、第2の材料として材料Bを用い、材料Aが、正に帯電可能な官能基X
+と官能基Yとを有し、材料Bが、官能基Yと相互作用(化学結合)可能な官能基Y’を有し、かつ、材料B自体が負に帯電可能である。そのため、負に帯電した材料Bが官能基X
+と静電気力により相互作用するとともに、官能基Yと官能基Y’とが結合することにより、第1の層(材料A層)110と第2の層(材料B層)120とが1種類の化学結合力と静電気力とにより密着している。
【0037】
ここで、
図1A及び
図1Bの説明では、積層膜100を構成する第1の層110及び第2の層120として、それぞれ、材料A層と材料B層の2種類のみからなる例を挙げているが、本発明における第1の材料及び第2の材料は、必ずしも1種類の材料のみからならなくてもよく、第1(第2)の材料として、第2(第1)の材料に対して同様の相互作用を奏する2種類以上の材料を使用してもよい。例えば、第1の材料として、材料Aの他に、材料Aと同様の官能基X及びYを有し、かつ、材料Aとは異なる官能基を少なくとも1種類有する材料Cを用い、材料A/材料B/材料C/材料B/材料A/材料B・・・のように積層してもよい。この場合、材料A層及び材料C層が第1の層110となり、材料B層が第2の層120となる。
【0038】
また、
図1A及び
図1Bに示した例では、基材101上に材料A層を最初に形成し、その上に材料B層を形成しているが、材料B層を基材101上に先に形成し、材料A層をその上に形成してもよい。いずれの層を先に形成した場合でも、材料Aまたは材料Bと、基材101の表面とが強く相互作用するように、基材101に表面処理等を施すことで、材料Aまたは材料Bと、基材101の表面とを強固に結合させることができる。
【0039】
以下、基材101、第1の層110及び第2の層120について詳細に説明する。
【0040】
<基材101>
基材101は、最下層の第1の層110(例えば、材料A層または材料B層等)を形成するための基材となる部材であり、第1の材料(例えば、材料Aまたは材料B等)が吸着可能な表面を有する材料であるか、第1の材料が吸着可能なように表面処理された材料であれば、特に限定はされない。具体的には、
図1Aの第1の例によれば、基材101として、材料Aの官能基Xと相互作用(化学結合等)可能な官能基X”と、官能基Yと相互作用(化学結合等)可能な官能基Y”のうちの少なくとも1種類を表面に有する材料を用いることができる。また、
図1Bの第2の例によれば、基材101として、材料Aの帯電した官能基X(
図1Bでは正に帯電)とは反対の電荷(
図1Bでは負)に帯電させた材料を用いることができる。
【0041】
上述したような基材101の具体例としては、ガラスや表面を酸化したシリコンウェハ等の無機系材料や、コロナ処理、UV/O
3処理、EB(電子線)処理等により表面処理した樹脂フィルム等の有機系材料が挙げられる。また、上記表面処理後の樹脂フィルム等の有機系材料を更にアルコキシ基以外の官能基(例えば、アミノ基)を有するシランカップリング剤で処理し、当該官能基(例えば、アミノ基)表面に導入した有機系材料を、基材101として用いてもよい。
【0042】
<第1の層110>
第1の層110は、基材101の表面に設けられ、第1の材料からなる層である。また、第1の材料は、上述したように、複数種類、すなわち、少なくとも2種類の官能基を有する材料である。
【0043】
第1の材料が有する官能基としては、例えば、アミノ基、アンモニウム基、ピリジル基、ピリジニウム基、ビピリジル基、タ―ピリジル基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、トリアジン類、キノリン基、キノリニウム基、イソキノリン基、イソキノリニウム基、又は、その部分構造を有する置換基が挙げられる。
【0044】
また、第1の材料が、上記少なくとも2種類の官能基のうちの少なくとも1種類の官能基として、正電荷又は負電荷に帯電可能な官能基を有していてもよい。このような官能基としては、例えば、上述した窒素原子を含む置換基中の窒素原子のうちの1つ以上がアルキル化、プロトン化又は縮合環骨格構造により陽イオン性を帯びた部分構造を有する置換基や、ピロール、イミダゾール及びこれらの部分構造を有する置換化合物や、ピロールやイミダゾール等の五員環骨格に含まれる窒素原子のうちの少なくとも1つがアルキル化、プロトン化、又は縮合環骨格構造により陽イオン性を帯びた部分構造を有する置換基が挙げられる。また、上記陽イオン性を帯びた部分構造中の窒素原子は、同一族のリン、ヒ素、アンチモンと一部又は全部を置換した構造を形成することにより、同様に陽イオン性を帯びることが可能である。特に、リンは熱的及び構造的に安定であり、安全性も高いので好適に置換が可能である。以上のような陽イオン性を帯びた部分構造を有する官能基は、陰イオン性を有する第2の材料(例えば、陰イオン性の無機層状化合物等)と静電気力により相互作用できる。
【0045】
一方、陽イオン性を有する第2の材料(例えば、陽イオン性の無機層状化合物等)と静電気力により相互作用できる官能基としては、カルボキシル基やカルボン酸無水物基のほか、スルホン酸基、セレン酸基、テルル酸基、リン酸基、亜リン酸基、ヒ酸基、亜ヒ酸基、アンチモン酸基等のオキソ酸基が挙げられ、これらの置換基も第1の材料の官能基として用いることができる。その他、第2の材料として、カネマイトやリン酸ジルコニウムなどの層間隙にヒドロキシル基を有する層状化合物を用いる場合には、第1の材料の置換基として、ヒドロキシル基と脱水縮合により強力に結合できる置換基である、水酸基、フェノール基、カテコール基や、その前駆体である、オキセタン基、エステル基、イソシアナート基、酸ハロゲン化物基を用いることができる。
【0046】
第1の材料の置換基としては、以上挙げた例のうちから、少なくとも2種類以上を選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、第1の材料が有する少なくとも2種類の官能基(第2の材料と相互作用する官能基)のうち、少なくとも1種類の官能基が複数存在していてもよい。この場合、例えば、
図2に示すように、基材101として、第1の材料として用いる材料Aが有する官能基Xと相互作用可能な官能基X”のみを表面に有する基材を用いる場合でも、材料A中の全ての官能基Xが基材101の官能基X”と相互作用することがない。その結果、第1の材料中に、第2の材料として用いる材料B中の官能基X’と相互作用するための官能基Xを残存させることができる。すなわち、
図2の例で言えば、材料Aが官能基Xを2個有することにより、材料A中の1個の官能基Xが全て基材101表面の官能基X”と相互作用(結合)したとしても、材料Bが有する官能基X’と相互作用(結合)するための官能基Xが材料A中に1個残存することとなる。
【0048】
さらに、第1の材料が、第2の材料と相互作用する官能基のうちの少なくとも1種類の官能基を複数有する場合に、これらの複数の官能基がお互いに相互作用可能であってもよい。この場合、例えば、
図3に示すように、第1の材料として用いる材料Aが、第2の材料と相互作用する官能基Xを複数有し、かつ、複数の官能基Xが互いに相互作用(例えば、化学結合)可能であるため、一の材料A中の官能基Xと他の材料A中の官能基Xとが互いに相互作用し、材料Aの分子同士が結合することにより、材料Aがネットワーク状に結合した強固な膜を形成することができる。その結果、例えば、第1の層110として機械的に強固で欠陥等の生じにくい膜を形成したい場合など、積層膜100を形成する目的に適した膜を設けることができる。
【0049】
なお、第1の材料として、例えば、少なくとも2種類以上の官能基(例えば、官能基X及び官能基Y)を有する材料Aと、材料Aの少なくとも2種類以上の官能基のうち、少なくとも1種類(例えば、官能基X)が同じである材料C(例えば、材料Cは官能基X及び官能基Zを有する。)とを混合して用いてもよい。すなわち、同一の第1の層110中に、材料Aと材料Cとが混合して含まれていてもよい。
【0050】
以上説明したような第1の材料の具体例としては、例えば、下記一般式(1)で表される金属アルコキシド化合物を挙げることができる。
X
nM(OR)
m ・・・(1)
【0051】
ここで、式(1)中、Mは金属、Xは官能基、Rはアルキル基を示す。
【0052】
金属Mとしては、例えば、Si,Ge,Sn,Pb,B,Al,Ga,In,Ti,Zr,Hf、Y等が挙げられる。官能基Xとしては、上述した第1の材料の官能基の例のうち、アルコキシ基を除くものが挙げられる。式(1)中のアルコキシ基(−OR)は、加水分解されて水酸基となった後に材料Bと相互作用可能なものであってもよい。また、アルコキシ基が加水分解されて生成された水酸基同士も、脱水縮合することで相互作用することができ、O−M−Oの結合を有する金属アルコキシド化合物のネットワークを形成することができる。
【0053】
例えば、上記式(1)中のMがSiの場合、第1の材料は、下記一般式(2)で表されるアルコキシシラン化合物となる。
X
nSi(OR)
4−n ・・・(2)
【0054】
第1の材料として、式(1)の金属アルコキシド化合物を用いると、官能基Xが第2の材料と相互作用するほか、加水分解されたアルコキシ基が水酸基(−OH)となり第2の材料と相互作用する。また、アルコキシ基が複数ある場合、第2の材料と相互作用しなかった水酸基が、他の第1の材料分子の水酸基と相互作用し、結合した結果、O−Si−Oのネットワークを形成し、シリカに類似した膜を形成することができる。シリカは、透明性、耐熱性、ガスバリヤ性に優れるため、光学薄膜やバリア薄膜として有用である。
【0055】
また、第1の材料として、式(1)で表される材料と下記一般式(3)で表される材料とを混合して用いてもよい。
M(OR)
m ・・・(3)
【0056】
式(1)と式(3)のMは同じであってもよいし、異なっていてもよい。式(1)の材料と式(3)の材料とを混合した場合、式(3)の材料中のアルコキシ基は、第2の材料と相互作用するほか、式(1)の材料中のアルコキシ基と相互作用して、O−M−Oの結合を有するネットワークを形成する。これにより、第1の材料からなる膜の物性や機能を多様化することができる。例えば、式(1)のMをSiとし、式(3)のMを屈折率が高いTiやZrにした場合には、2つの材料の混合比を変えることにより、第1の層110として、様々な屈折率を有する膜を形成することができる。
【0057】
さらに、第1の材料として、式(1)の官能基Xの一部を反応性の低い官能基R’に置換した、一般式(4)で表されるような化合物を用いてもよい。
R’
lX
nM(OR)
m ・・・(4)
【0058】
ここで、R’は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレニル基、ピレニル基等の多環芳香族基、ビフェニル基、ターフェニル基などの芳香環が共有結合で結合した基、及び、これらの炭素原子の一部をN,P,O,S,Se等の元素で置換した基などの反応性の低い官能基である。
【0059】
第1の材料として、式(4)の化合物を用いると、式(1)の化合物と同様に、O−M−Oの結合を有する金属アルコキシド化合物のネットワークを形成することができる。また、式(4)のR’の種類により、式(1)の化合物を用いる場合に対し、第1の層の物性を変化させることができるため、有用である。例えば、R’として、上述したような基を用いると、O−M−Oのネットワーク中にR’が分散した膜が得られる。R’が分散された膜は、分散されていない膜に比べ、柔軟性に優れる。また、R’の種類により、光学特性を変化させることもできる。
【0060】
<第2の層120>
第2の層120は、第1の層110上に積層され、第2の材料からなる層である。また、第2の材料は、上述したように、第1の材料が有する複数種類の官能基のうちの少なくとも2種類以上の官能基と相互作用可能な材料である。
【0061】
第2の材料は、第1の材料が有する官能基と相互作用可能な、少なくとも2種類の官能基を持っていてもよい。例えば、
図1Aに示した第1の例では、第2の材料として用いる材料Bは、第1の材料として用いる材料Aが有する官能基X及びYと相互作用(化学結合)可能な官能基X’及びY’を有している。
【0062】
また、第1の材料の官能基の少なくとも1種が正電荷又は負電荷に帯電可能な官能基である場合、第2の材料は、該帯電可能な第1の材料の官能基と反対の電荷に帯電可能で、かつ、第1の材料の官能基と相互作用可能な少なくとも1種類の官能基を有していてもよい。このような第2の材料の例として、表面の少なくとも一部に第1の材料の官能基を相互作用な少なくとも1種類の官能基を有する、帯電可能な粒子が挙げられる。例えば、
図1Bに示した第2の例では、第2の材料として用いる材料Bは、第1の材料としても用いる材料Aが有する官能基Yと相互作用(化学結合)可能な官能基Y’を有し、かつ、材料B自体が材料Aの正電荷に帯電可能な官能基Xとは反対の負電荷に帯電し、負に帯電した材料B自体と材料Aの官能基X
+とが静電気力により相互作用している。
【0063】
上記帯電可能な第1の材料の官能基と反対の電荷に帯電可能で、かつ、第1の材料の官能基と相互作用可能な少なくとも1種類の官能基を有する化合物としては、例えば、粘土鉱物、リン酸塩系誘導体型化合物、及び層状複水酸化物のうちの少なくとも1種が挙げられる。このうち、粘土鉱物やリン酸塩系誘導体型化合物の粒子は、表面の少なくとも一部に水酸基を有し、かつ、粒子自体は負に帯電する性質を有している。また、層状複水酸化物の粒子は、表面の少なくとも一部に水酸基を有し、かつ、粒子自体は正に帯電する性質を有している。
【0064】
上記粘土鉱物としては、天然粘土であってもよいし、合成粘土であってもよく、例えば、雲母類、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトのうちの少なくとも1種を使用することができる。また、このような粘土鉱物は、シート状構造を有し、例えば、シリケート四面体シート単独、又は、シリケート四面体シートとアルミニウム、マグネシウムもしくは鉄の八面体シートとが積層した結晶構造を有する無機高分子化合物である。類似の無機層状化合物として、カネマイト、層状チタン酸、層状ニオブ酸、層状タンタル酸、および層状チタノニオブ酸等の複合酸化物も利用できる。
【0065】
上記リン酸塩系誘導体型化合物としては、例えば、リン酸ジルコニウムを挙げることができる。リン酸ジルコニウムは、ジルコニウム原子の面が網目上に形成され、層状(シート状)の形状となっている。ジルコニウムの原子面の上下にはリン酸基が存在し、Zr
n(PO
4)
2n2−の形で層状結晶本体は負に帯電している。また、各層間にはイオン交換可能な水素イオンが位置している。
【0066】
上記層状複水酸化物(LDH)としては、例えば、以下の一般式(1)であらわされる化合物を使用することができる。
[M
2+1−xM
3+x(OH)
2]
x+[B
n−x/n・yH
2O]
x− ・・・(1)
(式中、M
2+は2価金属、M
3+は3価金属、B
n−はアニオン、nはアニオンの価数、xは0<x<0.4の実数、yは0より大きい実数である。)
【0067】
すなわち、層状複水酸化物は、正に帯電したブルーサイト様の基本層([M
2+1−xM
3+x(OH)
2]
x+)の層間に、アニオン及び層間水からなる負に帯電した中間層(B
n−x/n・yH
2O]
x−)を内包する層状(シート状)構造の化合物である。層状結晶本体は正に帯電しており、結晶全体では電気的中性を保っている。2価金属としては、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等が知られており、3価金属化合物としては、Al、Fe、Cr、Co、In等が知られている。また、アニオンとしては、OH
−、F
−、Cl
−、NO
3−、SO
42−、CO
32−、Fe(CN)
64−、CH
3COO
−、V
10O
286−、C
12H
25SO
4−等のアニオンが知られている。
【0068】
ここで、以下の表1に、第1の材料が有する官能基の例と、該官能基と相互作用可能な第2の材料の例を示す。
【0070】
上記表1を参照すると、例えば、第1の材料がアルコキシ基及びアミノアルキル基を有する場合には、第2の材料は、水酸基を有し、かつ、カルボキシル基を有するか若しくは負に帯電可能であればよい。
【0071】
その他の第1の材料と第2の材料の組み合わせの例を以下の表2に示す。
【0073】
<積層膜100の膜厚>
また、本実施形態によれば、積層膜100の膜厚を50nm以下とすることができる。本実施形態に係る積層膜100は、膜厚が50nm以下と非常に薄くても、高いガスバリア性、例えば、0.5g/m
2/day以下の透湿率を有することができる。
【0074】
<各層が積層されていることの確認方法>
なお、基材101上に、第1の層110と第2の層120とからなる積層膜100が積層されていることは、例えば、積層膜100の原子間力顕微鏡写真(AFM)により確認することができる。また、エリプソメータを用いて、各層の膜厚を測定することで確認することもできる。
【0075】
(積層膜100の製造方法の第1の例)
以上、本実施形態に係る積層膜100の構成について詳細に説明したが、続いて、
図4A〜
図4Dを参照しながら、上述した構成を有する積層膜100の製造方法の第1の例について説明する。
図4A〜
図4Dは、本実施形態に係る積層膜100の製造方法の第1の例の各工程の流れを示す説明図である。
【0076】
第1の例は、第1の材料として、官能基X及びYを有する材料Aを用い、第2の材料として、官能基X及びYと相互作用可能な官能基X’及びY’を有する材料Bを用い、これらの材料Aと材料Bとを交互吸着法により、基材101上に交互に積層する例である。
【0077】
<基材の表面処理工程>
まず、基材101の表面を、材料Aが吸着可能な状態に表面処理する。具体的には、
図4Aに示すように、材料Aの官能基Xと相互作用可能な官能基X’’と、材料Aの官能基Yと相互作用可能な官能基Y’’のうちの少なくとも1種類を基材101の表面に導入する。基材101の表面が、元々材料Aを吸着可能な状態になっている場合、例えば、基材101の表面に、官能基X’’と官能基Y’’のうちの少なくとも1種類が元々存在している場合は、この表面処理工程を省略しても良い。
【0078】
上記表面処理の方法としては、例えば、コロナ処理やUV/O
3処理などの物理的処理、電子線(EB)処理、または、シランカップリング剤等の薬液を用いた化学的処理を用いることができる。
【0079】
ここで、基材101が、ガラスや表面を酸化処理したシリコンウェハ等の無機系材料からなる場合には、一般に、その表面に水酸基が存在しており、材料Aが水酸基と相互作用可能な場合には、この表面処理工程を省略できる。しかし、このような基材101に、更に、コロナ処理やUV/O
3処理等を行うと、基材101の表面の水酸基の密度を増加させることができ、より強力かつ均一に基材101の表面を水酸基で覆うことができる。水酸基で覆われた基材101は、一般に、水溶液中では負に帯電した状態となる。
【0080】
また、基材101が、樹脂フィルム等の有機系材料からなる場合には、一般に、コロナ処理、UV/O
3処理、EB処理などの表面処理を行うと、フィルム表面の樹脂が分解され、水酸基を生じさせることができる。
【0081】
さらに、上記のように基材101の表面に水酸基を導入した後に、アルコキシ基以外にも官能基を有するシランカップリング剤で基材101の表面を処理すると、当該官能基を基材101の表面に導入することができる。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いて、表面に水酸基が導入された基材101の表面を処理する場合には、このシランカップリング剤が基材101の表面の水酸基と結合する結果、アミノ基がイオン化して正の電荷を有するようになり、これにより、強力かつ均一に基材101の表面を正に帯電させることができる。
【0082】
<積層膜100の積層順序について>
基材101の表面の官能基と、材料A及び材料Bが有する官能基等によって、材料A層を先に(第1の層110として)形成するか、材料B層を先に(第1の層110として)形成するかが選択される。例えば、材料Aが有する官能基Xと相互作用可能な官能基X”が基材101の表面に存在する場合には、材料A層を始めに積層する。以下の説明では、材料A層を先に形成する場合を例に挙げて説明するが、材料B層を先に形成する場合も勿論あり得る。
【0083】
<基材101上への第1の層110(材料A層)の形成工程>
次に、
図4Bに示すように、表面処理された基材101上に、材料Aからなる第1の層110を形成する。具体的には、まず、第1の材料として用いる材料Aを溶液中に溶解又は分散し、材料Aの溶液(材料A層形成用の溶液)を作製する。溶液中の材料Aの濃度は、100nmol/L〜1mmol/Lまたは0.01g/L〜10g/Lが好適であり、1μmol/L〜100μmol/Lまたは0.1g/L〜1g/Lが更に好適である。材料Aの濃度が低すぎると、基材101表面への材料Aの吸着が不十分となるおそれがある。一方、材料Aの濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなってしまうため、基材101を浸漬して均一な膜を形成することが困難となるおそれがある。
【0084】
このようにして作製した材料Aの溶液に、上記の表面処理を施した基材101を浸漬すると、
図4Bに示すように、材料Aの官能基Xと基材101表面の官能基X”との相互作用、材料Aの官能基Yと基材101表面の官能基Y”との相互作用、または、これら両方の相互作用により、材料Aが基材101の表面に吸着する。
図4Bの例では、材料Aの官能基X(官能基Y)と基材101表面の官能基X”(官能基Y”)との相互作用として、官能基X(官能基Y)と官能基X”(官能基Y”)との化学結合が生じている。このようにして、基材101上に第1の層110が形成される。
【0085】
また、
図3に示したように、材料Aが有する複数の官能基Xが互いに相互作用可能な場合には、上述の通り、材料Aがネットワーク状に結合した第1の層110を形成することができる。
【0086】
<第1の層110上への第2の層120(材料B層)の形成工程>
次に、
図4Cに示すように、材料Aからなる第1の層110上に、材料Bからなる第2の層120を形成する。具体的には、まず、第2の材料として用いる材料Bを溶液中に溶解又は分散し、材料Bの溶液(材料B層形成用の溶液)を作製する。溶液中の材料Bの濃度は、100nmol/L〜1mmol/Lまたは0.01g/L〜10g/Lが好適であり、1μmol/L〜100μmol/Lまたは0.1g/L〜1g/Lが更に好適である。材料Bの濃度が低すぎると、第1の層110上への材料Bの吸着が不十分となるおそれがある。一方、材料Bの濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなってしまうため、第1の層110が形成された基材101を浸漬して均一な膜を形成することが困難となるおそれがある。
【0087】
このようにして作製した材料Bの溶液に、第1の層110が形成された基材101を浸漬すると、
図4Cに示すように、材料Bの官能基X’と材料Aの官能基Xとの相互作用、材料Bの官能基Y’と材料Aの官能基Yとの相互作用、または、これら両方の相互作用により、材料Bが第1の層110の表面に吸着する。
図4Cの例では、材料Bの官能基X’(官能基Y’)と材料Aの官能基X(官能基Y)との相互作用として、官能基X’(官能基Y’)と官能基X(官能基Y)との化学結合が生じている。このようにして、第1の層110上に第2の層120が形成される。
【0088】
<第2の層120上への第1の層110(材料A層)の形成工程>
次に、
図4Dに示すように、材料Bからなる第2の層120上に、材料Aからなる第1の層110を形成する。具体的には、まず、材料Aを溶液中に溶解又は分散し、上述した材料Aの溶液を作製する。このようにして作製した材料Aの溶液に、第1の層110及び第2の層120が形成された基材101を浸漬すると、
図4Dに示すように、材料Aの官能基Xと材料Bの官能基X’との相互作用、材料Aの官能基Yと材料Bの官能基Y’との相互作用、または、これら両方の相互作用により、材料Aが第2の層120の表面に吸着する。
図4Dの例では、材料Aの官能基X(官能基Y)と材料Bの官能基X’(官能基Y’)との相互作用として、官能基X(官能基Y)と官能基X’(官能基Y’)との化学結合が生じている。このようにして、第2の層120上に第1の層110が形成される。
【0089】
<交互吸着工程>
次に、上述した第1の層110上への第2の層120の形成工程と第2の層120上への第1の層110の形成工程を繰り返し実施することで、基材101上に第1の層110(材料A層)と第2の層120(材料B層)を交互に積層していき、第1の層110と第2の層120とからなる交互積層構造を所定の層数だけ形成する。その結果、基材101上に、1層以上の第1の層110と1層以上の第2の層120とが吸着法により交互に積層された本実施形態に係る積層膜100を得ることができる。
【0090】
(積層膜100の製造方法の第2の例)
続いて、
図5A〜
図5Dを参照しながら、上述した構成を有する積層膜100の製造方法の第2の例について説明する。
図5A〜
図5Dは、本実施形態に係る積層膜100の製造方法の第2の例の各工程の流れを示す説明図である。
【0091】
第2の例は、第1の材料として、帯電可能な官能基Xと帯電可能でない官能基Yを有する材料Aを用い、第2の材料として、官能基Yと相互作用可能な官能基Y’を有し、かつ、官能基Xと反対の電荷に帯電可能な材料Bを用い、これらの材料Aと材料Bとを交互吸着法により、基材101上に交互に積層する例である。
【0092】
<基材の表面処理工程>
まず、基材101の表面を、材料Aが吸着可能な状態に表面処理する。具体的には、
図5Aに示すように、基材101の表面を材料Aの官能基Xの電荷(
図5A〜
図5Dの例では正電荷)と反対の電荷(
図5A〜
図5Dの例では負電荷)に帯電させる。基材101の表面が、元々材料Aを吸着可能な状態になっている場合、例えば、基材101の表面が、官能基Xと反対の電荷に帯電している場合は、この表面処理工程を省略しても良い。
【0093】
上記表面処理の方法としては、例えば、コロナ処理やUV/O
3処理などの物理的処理、(電子線(EB)処理、または、シランカップリング剤等の薬液を用いた化学的処理を用いることができる。
【0094】
ここで、基材101が、ガラスや表面を酸化処理したシリコンウェハ等の無機系材料からなる場合には、一般に、その表面に水酸基が存在しており、材料Aが水酸基と相互作用可能な場合には、この表面処理工程を省略できる。しかし、このような基材101に、更に、コロナ処理やUV/O
3処理等を行うと、基材101の表面の水酸基の密度を増加させることができ、より強力かつ均一に基材101の表面を水酸基で覆うことができる。水酸基で覆われた基材101は、一般に、水溶液中では負に帯電した状態となる。
【0095】
また、基材101が、樹脂フィルム等の有機系材料からなる場合には、一般に、コロナ処理、UV/O
3処理、EB処理などの表面処理を行うと、フィルム表面の樹脂が分解され、水酸基を生じさせることができる。
【0096】
さらに、上記のように基材101の表面に水酸基を導入した後に、アルコキシ基以外にも官能基を有するシランカップリング剤で基材101の表面を処理すると、当該官能基を基材101の表面に導入することができる。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いて、表面に水酸基が導入された基材101の表面を処理する場合には、このシランカップリング剤が基材101の表面の水酸基と結合する結果、アミノ基がイオン化して正の電荷を有するようになり、これにより、強力かつ均一に基材101の表面を正に帯電させることができる。
【0097】
<積層膜100の積層順序について>
基材101の表面の官能基と、材料A及び材料Bが有する官能基等によって、材料A層を先に(第1の層110として)形成するか、材料B層を先に(第1の層110として)形成するかが選択される。例えば、基材101の表面が、材料Aの官能基Xと反対の電荷に帯電している場合には、材料A層を始めに積層する。以下の説明では、材料A層を先に形成する場合を例に挙げて説明するが、材料B層を先に形成する場合も勿論あり得る。
【0098】
<基材101上への第1の層110(材料A層)の形成工程>
次に、
図5Bに示すように、表面処理された基材101上に、材料Aからなる第1の層110を形成する。具体的には、まず、第1の材料として用いる材料Aを溶液中に溶解又は分散し、材料Aの溶液(材料A層形成用の溶液)を作製する。溶液中の材料Aの濃度については上述した第1の例と同様である。
【0099】
このようにして作製した材料Aの溶液に、上記の表面処理を施した基材101を浸漬すると、
図5Bに示すように、材料Aの帯電した官能基(
図5Bの例では官能基X)が、その反対の電荷に帯電した基材101表面に静電気力で引きつけられることにより、材料Aが基材101の表面に吸着する。すなわち、
図5Bの例では、材料Aの官能基(官能基X)と基材101表面との相互作用として、官能基Xの正電荷と基材101表面の負電荷との静電気力が生じている。このようにして、基材101上に第1の層110が形成される。
【0100】
また、
図3に示したように、材料Aが有する複数の官能基Xが互いに相互作用可能な場合には、上述の通り、材料Aがネットワーク状に結合した第1の層110を形成することができる。
【0101】
<第1の層110上への第2の層120(材料B層)の形成工程>
次に、
図5Cに示すように、材料Aからなる第1の層110上に、材料Bからなる第2の層120を形成する。具体的には、まず、第2の材料として用いる材料Bを溶液中に溶解又は分散し、材料Bの溶液(材料B層形成用の溶液)を作製する。溶液中の材料Bの濃度については、上述した第1の例と同様である。
【0102】
このようにして作製した材料Bの溶液に、第1の層110が形成された基材101を浸漬すると、
図5Cに示すように、材料Bが有する官能基Y’が、材料Aの官能基Yと相互作用(結合)するとともに、帯電した材料Bが、その反対の電荷に帯電した材料Aの官能基Xに静電気力で引きつけられることにより、材料Bが第1の層110の表面に吸着する。すなわち、
図5Cの例では、材料Aと材料Bとの間の相互作用として、材料Aの官能基Xの正電荷と材料Bの負電荷との静電気力と、材料Aの置換基Yと材料Bの置換基Y’との化学結合力の2種類の相互作用が生じている。このようにして、第1の層110上に第2の層120が形成される。
【0103】
<第2の層120上への第1の層110(材料A層)の形成工程>
次に、
図5Dに示すように、材料Bからなる第2の層120上に、材料Aからなる第1の層110を形成する。具体的には、まず、材料Aを溶液中に溶解又は分散し、上述した材料Aの溶液を作製する。このようにして作製した材料Aの溶液に、第1の層110及び第2の層120が形成された基材101を浸漬すると、
図5Dに示すように、材料Aが有する官能基Yが、材料Bの官能基Y’と相互作用(結合)するとともに、帯電した材料Aの置換基Xが、その反対の電荷に帯電した材料Bに静電気力で引きつけられることにより、材料Aが第2の層120の表面に吸着する。すなわち、
図5Dの例では、材料Bと材料Aとの間の相互作用として、材料Bの負電荷と材料Aの官能基Xの正電荷との静電気力と、材料Bの置換基Y’と材料Aの置換基Yとの化学結合力の2種類の相互作用が生じている。このようにして、第2の層120上に第1の層110が形成される。
【0104】
<交互吸着工程>
次に、上述した第1の層110上への第2の層120の形成工程と第2の層120上への第1の層110の形成工程を繰り返し実施することで、基材101上に第1の層110(材料A層)と第2の層120(材料B層)を交互に積層していき、第1の層110と第2の層120とからなる交互積層構造を所定の層数だけ形成する。その結果、基材101上に、1層以上の第1の層110と1層以上の第2の層120とが吸着法により交互に積層された本実施形態に係る積層膜100を得ることができる。
【0105】
(積層膜100を用いたバリアフィルム)
次に、上述した本実施形態に係る積層膜100を用いて作製されたバリアフィルムについて説明する。このバリアフィルムは、FPDや照明等の発光素子などの基板として用いられるものであって、基材101として樹脂フィルムを用い、この樹脂フィルム上に上述した積層膜100を設けたものである。ただし、バリア性能を有するバリアフィルムとして用いる場合には、積層膜100における第2の材料としては、上述した無機層状化合物を用いる。無機層状化合物は、樹脂フィルムを通過してバリア層へ浸入した水蒸気や酸素等のガスを透過させないため、この無機層状化合物を用いた積層膜100は、これらのガスの透過を抑制するバリア性能を有することができる。
【0106】
(まとめ)
以上説明した本実施形態に係る積層膜100は、第1の材料と第2の材料とが、少なくとも2種類以上の相互作用で吸着されている。よって、従来の1種類の相互作用で吸着される多層ヘテロ構造を有する膜に比べ、隣り合う層間の密着性が高く、高密度な膜を形成できる。その結果、本実施形態に係る積層膜100を用いて、バリアフィルムや光学素子を作製すると、その性能と耐久性を高めることができる。
【0107】
また、本実施形態に係る積層膜100によれば、第1の材料が、複数種類の官能基のうちの少なくとも1種類の官能基を複数有する場合には、第1の材料の分子同士が結合することができ、第1の材料がネットワーク状に結合した膜が形成される。よって、従来の粒子が個別に吸着する多層ヘテロ構造を有する膜に比べ、高密度な膜を形成できる。その結果、本実施形態に係る積層膜100を用いて、バリアフィルムや光学素子を作製すると、その性能と耐久性をさらに高めることができる。
【0108】
この場合、第1の材料の官能基を適宜選択することにより、形成されるネットワークの構造を制御することができ、多様な構造を有する膜からなる多層ヘテロ構造を有する膜を作製することができる。特に、金属アルコキシドやリン酸など官能基の結合原子価が複数ある場合には、層状化合物との結合に加えて、ヘテロ構造を有する膜の構成分子同士も強固に結合させることができる。さらに、第1の材料として、ある材料Aとネットワークを形成可能な他の材料Cとを混合することにより、従来の個別に粒子が吸着する場合に比べ、多様な膜を形成することができ、要求される膜の特性を実現することが容易となる。このように、本実施形態に係る積層膜100は、従来に比べ、応用範囲が広い。
【実施例】
【0109】
続いて、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例にのみ限定されるものではない。
【0110】
(実施例1)
実施例1は、第1の材料としてAPTESを用い、第2の材料としてモンモリロナイト(MMT)を用いた例である。具体的には、以下の手順で実施例1の積層膜を作製した。
【0111】
1)基材の洗浄
基材として、表面が酸化されたシリコンウェハ(Nilaco製#500452)を、ピラニア(Piranha)溶液(H
2O
2:濃硫酸=1:1)に24時間浸漬した後、純水で洗浄し、エアブローで乾燥させたものを用いた。
2)第1の材料の溶液の調製
第1の材料として、ポリカチオンであるアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES:AminoPropylTriEthoxySilane)とエタノールを混合及び撹拌し、100mMのAPTES溶液からなる第1の材料の溶液を調製した。
3)第2の材料の溶液の調製
第2の材料としてモンモリロナイト(MMT)を用い、MMTとしてKunimine工業製Kunifil−D36を0.5g、純水1L中に入れ、市販のスターラー(AsOne製KNS−T1)を用いて、1日間撹拌し、MMTの分撒水溶液からなる第2の材料の溶液を調製した。
4)第1の層の形成
1)で洗浄した基材を、2)で作成した第1の材料の溶液に、室温で30分間浸漬後、エタノール、蒸留水の順に洗浄し、エアブローで乾燥させた。このときの、第1の層の付着の様子を模式的に
図6Aに示す。
5)第2の層の形成
4)で第1の層を形成した基材を、3)で作成した第2の材料の溶液に、室温で15分間浸漬後、蒸留水で洗浄し、エアブローで乾燥させた。このときの、第2の層の付着の様子を模式的に
図6Bに示す。
6)交互吸着
上記4)と5)の工程を繰り返し、第1の層と第2の層とからなる対が、5対、10対、20対となるまで、それぞれ交互吸着を行い、3種類のサンプルを作製した。2対積層した状態を模式的に
図6Cに示す。加水分解したAPTESの水酸基と相互作用するMMTの水酸基は、MMT結晶表面のエッジ部分にしか存在しない。よって
図6Cのように、APTESはMMT結晶の平らな面とはアミノ基側が相互作用し、エッジ部分では水酸基側が相互作用する。MMTとポリカチオンとの交互吸着に代表される従来の技術では、MMTが相互作用するのは、結晶の平らな面だけである。一方、本発明では、結晶のエッジ部分にも相互作用して吸着することができるので、MMT粒子の間隙を埋める作用があり、膜を高度に緻密化できる。このように、第2の材料の官能基が偏在する場合、本発明により、従来の方法では得られない、更に緻密な膜形成が可能であることがわかる。
7)交互吸着膜(積層膜)の膜厚測定
上記4)〜6)の工程で5対の交互吸着膜を形成したサンプルについて、第1の層または第2の層を1層積層する毎にエリプソメータ(日本レーザー電子製NL−ELP)を用いて、交互吸着膜の膜厚を測定した。
また、10対及び20対の交互吸着膜を形成したサンプルについて、全ての工程が終了した後に、同様の方法で、交互吸着膜の膜厚を測定した。
8)交互吸着膜の付着性評価
次いで、6)の工程が終了し、7)の測定を終えたサンプルを、JIS K5400で規定される方法によって、交互吸着膜の付着性を評価した。具体的には、交互積層膜にカッターを用いて、1mmピッチの碁盤目状の切り込みを入れ、10×10の100升を形成した。形成した100升に区分けされた交互吸着膜上に、ニチバン製粘着テープ(CT−18S)を貼り付けた後、瞬間的に引きはがし、剥離せずに残った升の数を数えた。
【0112】
(実施例2)
実施例1は、第1の材料としてAPTESを用い、第2の材料としてリン酸ジルコニウム(ZrP)を用いた例である。具体的には、実施例1の3)の工程を下記のようにしたこと以外は、実施例1と同様の工程で交互吸着膜を作製し、7)の膜厚測定及び8)の付着性評価を行った。
【0113】
3)第2の材料の溶液の調製
まず、第一希元素化学製α−ZrP(リン酸ジルコニウム)を1g、純水150mLに入れ、市販のスターラーを用いて、1日間攪拌した。攪拌した液に、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド(TBAHO:TetraButylAmmoniumHydroOxide)の150mM/L水溶液を30mL、ZrP溶液のpHが9を超えないように、少量ずつ加えることでZrP粒子の単層剥離を行い、第2の材料の溶液を調製した。
【0114】
(比較例1)
実施例1の2)の工程を下記のようにしたこと以外は、実施例1と同様の工程で従来の技術による交互吸着膜を作製し、7)の膜厚測定及び8)の付着性評価を行った。
【0115】
2)第1の材料の溶液の調製
ポリアリルアミンハイドロキシド(PAH:PolyAllylamineHydroxide)の30mM水溶液を作製し、第1の材料の溶液を調製した。
【0116】
(実施例3)
実施例3は、第1の材料としてAPTESを用い、第2の材料としてMMTを用いてバリアフィルムを作製した例である。具体的には、以下の手順で実施例3のバリアフィルムを作製した。
【0117】
1)樹脂フィルムの洗浄及び表面処理
帝人DuPont Film製TeonexQ65FA(0.2mm厚のPENフィルム)を、洗剤と純水で洗浄し、エアブローで乾燥させた。その後、洗浄後のPENフィルムに対し、日本スタテック製HPS−101を用いて、10分間コロナ処理した。これにより、樹脂フィルムの表面に、水酸基を導入した。
2)第1の材料の溶液の調製
実施例1の2)と全く同様にして、APTESの100mM−エタノール溶液からなる第1の材料の溶液を調製した。
3)第2の材料の溶液の調製
実施例1の3)と全く同様にして、MMTの0.5g/L分散水溶液からなる第2の材料の溶液を調製した。
4)第1の層の形成
実施例1の4)と全く同様にして、第1の層を形成した。
5)第2の層の形成
実施例1の5)と全く同様にして、第2の層を形成した。
6)交互積層
上記4)と5)の工程を繰り返し、第1の層と第2の層とからなる対が、5対、10対、20対となるまで、交互積層を行い、3種類のバリアフィルムを作製した。
7)作製したバリアフィルムのWVTR(透湿率)測定
6)で作製したバリアフィルムについて、MOCON社製水蒸気透過率測定装置AQUATRANを用いて、40℃−90%RHの条件下でWVTRを測定した。
【0118】
(実施例4)
実施例4は、第1の材料としてAPTESを用い、第2の材料としてZrPを用いてバリアフィルムを作製した例である。具体的には、実施例3の3)の工程を下記のようにしたこと以外は、実施例3と同様の工程でバリアフィルムを作製し、WVTRの測定を行った。
【0119】
3)第2の材料の溶液の調製
実施例2の3)と全く同様にして、第2の材料の溶液を調製した。
【0120】
(比較例2)
実施例3の2)の工程を下記のようにしたこと以外は、実施例3と同様の工程で従来の技術によるバリアフィルムを作製し、WVTRの測定を行った。
【0121】
2)第1の材料の溶液の調製
比較例1の2)と全く同様にして、第1の材料の溶液を調製した。
【0122】
(膜厚の測定結果)
図7〜9に、実施例1〜2及び比較例1で行った、交互吸着膜を5対形成したサンプルの膜厚の測定結果を示す。いずれの実施例、比較例も、積層数が増えるに従って、交互吸着膜の膜厚が順次増加しており、第1の層及び第2の層が良好に形成されたことがわかった。
【0123】
また、実施例1〜2及び比較例1で作製した、交互吸着膜を5対、10対、20対をそれぞれ形成したサンプルの膜厚の測定結果を示す。
【0124】
【表3】
【0125】
(付着性の評価結果)
表4に、実施例1〜2及び比較例1で行った付着性の評価結果を示す。いずれの実施例も、比較例に比べて優れた付着性を示しており、本発明による多層ヘテロ構造を有する積層膜を構成する各層間の密着性が高いことがわかった。
【0126】
【表4】
【0127】
(WVTRの測定結果)
表5に、実施例3〜4及び比較例2で作製したバリアフィルムを40℃−90%RHの条件でWVTR測定した結果を示す。いずれの実施例においても、比較例に比べてWVTRの値が大幅に小さくなっており、本発明による積層膜が高いバリア性能を有することが分かる。つまり、本発明による交互吸着膜(積層膜)を用いたバリアフィルムは、従来の交互吸着を用いたバリアフィルムに比べ、高いバリア性能を少ない積層数で実現できることが確認された。
【0128】
また、表5の結果から、本発明による交互吸着膜は、50nm以下という非常に薄い膜厚で、比較例では実現できない、10
−3〜0.5(g/m
2/day)の高いバリア性能を有することが確認された。
【0129】
【表5】
【0130】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0131】
例えば、上記実施形態では、第1の材料と第2の材料との間の相互作用として、2種類の化学結合力の組み合わせや、静電気力と1種類の化学結合力の組み合わせを例に挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、第1の材料が3種類の官能基を有し、第1の材料と第2の材料との間の相互作用が、3種類の化学結合力の組み合わせであってもよく、静電気力と2種類の化学結合力の組み合わせであってもよい。