(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの気道導管、前記排出導管および前記通気導管は、前記気道チューブの近位端部まで延びている、請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の人工気道。
前記カフの形状は、膨張時に、前記窪みを含む横断面において、前記後方壁が逆U字形状を有すると共に、その逆U字形状の両端部が前記前方密封壁の外側周縁部へと連なるようになっており、前記カフは、その内側側壁が前記気道チューブの前記端部分に連結されているところを除いて、前記端部分から間隔を置かれている、請求項7記載の人工気道。
前記気道チューブは、前記気道導管を2つ含んでおり、これらの気道導管は互いに並んで配置され、前記コネクタは、これらの気道導管の近位端部と連通する通路を含む、請求項12記載の人工気道。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から
図10は、本発明によって構成された人工気道2を示している。図示された構成の人工気道2は、4つの部品:膨張式カフ4、気道チューブ6、連結体8、および結合スリーブ10から組み立てられている。
図1から
図10において、膨張式カフ4は膨張していない状態で示されている。
図3に最もよく示されるように、カフ4は、側面図で見ると概して楔形の形状を有している。但し、カフ4は、その遠位端部に排出チャンバ12を有している。
図4に最もよく示されるように、カフは、排出チャンバ12の置かれたその遠位端部で多少切り詰められていることを除けば、平面で見たときにも概して楔形の形状を有している。以下でより詳細に述べるように、カフは窪み14を含んでおり、この窪み14は、麻酔ガスや空気を患者の肺へ与えることができるように気道チューブ6内の導管と連通している。
【0014】
図6の断面図は、気道チューブ6の断面形状を示している。この気道チューブ6は、湾曲した後側16と、概して平坦な前側18とを有していて、断面において概してD字形になっているのが分かるであろう。以下でより詳細に述べるように、気道チューブ6は、麻酔ガスや空気を窪み14へと搬送する2つの気道導管20および22を含んでいる。気道チューブ6は膨張導管24を含んでいるが、この膨張導管24は、カフ4の膨張を可能とするように当該カフ4の内部と流体連通している。気道チューブ6は、排出導管26を更に含んでいる。この排出導管26の遠位端部は、排出チャンバ12の内部と流体連通している。気道チューブ6は排出チャンバ通気導管28を更に含んでいるが、この通気導管28も排出チャンバ12の内部へ開いている。
【0015】
カフは、気道チューブ6に対して相補的な形状の近位連結差込部30を含んでいる。この差込部30は、気道チューブの外側表面と気密的な密封を形成するように、シリコン接着剤によって当該外側表面に接合されている。
図1に最もよく示すように、カフ4の後方壁31は、差込部30の隣接部分と繋がる概して半円筒状の部分32である。
図5に最もよく示すように、この部分32は、カフ4に入り込むチューブ6の遠位端部分34を収容する。カフの遠位端部には遠位差込部36が形成されているが、この差込部36は気道チューブ6の隣接部分に接合されている。差込部36の内側は、排出チャンバ12を画成している。
【0016】
気道チューブ6には、縦方向に延びる2つの気道開口40および42が形成されている。これらの気道開口40および42は、麻酔ガスが窪み14の中へと通過できるように気道導管20および22とそれぞれ連通している。
図7から、導管24、26、および28は窪み14と流体連通してはいない、ということが認識されるであろう。
【0017】
カフの後方壁31は、横方向に延びる2つの突出部44および46を含んでいる。これらの突出部44および46は、半円筒状部分32から横方向に延びると共に、概して近位差込部30および遠位差込部36から延びている。カフは、左右の側壁48および50を含んでいる。これらの側壁48および50は、突出部44および46から下方へ延びて、前方密封壁52へと連なっている。
図6および
図7に最もよく示すように、前方密封壁52は概して平坦であり、即ち単一の平面内にある。カフは近位端部壁51を含んでいるが、この端部壁51の各縁部は、左右の側壁48および50、並びに密封壁52へと連なっている。以下でより詳細に述べるように、使用時には、前方密封壁52が患者の喉頭蓋開口部の周囲を密封する。カフは、左右の内側側壁53および54を含んでいる。これらの側壁53および54は、前方密封壁52から上方へ連なって、窪み14の側面部分を画成している。カフはまた、近位内側側壁55および遠位内側側壁57を含んでいる。これらの側壁55および57も前方密封壁52から上方へ連なって、窪み14の両端部分を画成している。内側側壁53、54、55、および57の上方周縁部には、縁枠56が形成されている。この縁枠56は、その内縁部の所に、さね接ぎ部58を含んでいる。このさね接ぎ部58は、開口40および42と隣り合う気道チューブ6の前方縁部に対して相補的となるように形作られている。気道チューブ6の隣接した縁部に対して縁枠56を接合するのにシリコン接合剤が用いられる。その結果、内側側壁54の上方周縁部全体が、縁枠56と気密的な密封を形成するように接合される。
【0018】
上述したように、カフは、気道6の端部分34に対して、差込部30および36、並びに側壁53、54、55および57の上方周縁部の所でのみ結合される、ということが認識されるであろう。
【0019】
図9に最もよく示すように、気道チューブ6の端部分34は切欠き60を含んでいる。
この切欠き60は、カフ4を膨張させることができるように膨張導管24と連通している。
【0020】
図11から
図13は、気道チューブ6の端部分34に対して接合される前のカフ4を示している。カフは、25から40の範囲のショアA硬さを有するシリコンゴムから射出成型されるのが好ましい。壁の厚さは、1から2mmの範囲にあるのが好ましい。図示の実施形態において、壁の厚さは均一であって、厚さ約1mmである。或いは、膨張時に相異なる拡張状態を生じさせるために壁の厚さを変化させるかもしれない。この場合、壁の厚さは、薄い方の部分で厚さ約1mm、幅の広い方の部分で約2mmであろう。壁の厚さを変化させる場合、前方密封壁52、内側側壁53、54、55、および57、並びに近位端部壁51を画成する壁においては、これらの壁が膨張中ずっと自らの形状を維持する傾向にあるように、壁の厚さがより厚くなるかもしれない。左右の側壁48、50、および後方壁31は、これらの壁が膨張中により大きく拡張するように、より薄くなっていることが好ましい。
【0021】
上述したように、カフは、
図11に示すように側方から見たとき、概して楔形の形状にされている。その頂角Aは、15°から25°であることが好ましく、20°であることが好ましい。
【0022】
カフは、差込部36の設置される頂部が切り詰められていることを除けば、
図12に示すように平面で見たときにも、概して楔形の形状にされている。その頂角Bは、20°から30°の範囲にあることが好ましく、約22.5°であることが最も好ましい。平面で見たときの側壁48および50が、比較的真っ直ぐであること、即ち極めて僅かな湾曲しか有していないことも分かるであろう。
【0023】
窪み14が、
図12に示すように平面で見たときに矩形の形状のものであることにも気付くであろう。更に、内側側壁53、54、55、および57は、縁枠56に向かって内側へ約15°の角度で傾いている。
【0024】
一実施形態において、縦方向に測ったカフ4の長さは約93mmであり、最も幅の広い部分(即ち、左右の側壁48,50同士の間)は約50mmである。側壁48の高さは、カフの遠位端部での約8mmから近位端部での約20mmまで変化する。前方密封壁52から円筒状部分32上の最高点までの距離は、差込部30に隣接して約34mmであって、遠位差込部36に隣接した約12mmまで減少する。また一方では、これらの寸法は、作られる気道チューブの大きさに従って変化させることができる。上述した寸法は、膨張していないカフに当てはまるものである。
【0025】
図15から
図24は、気道チューブ6の好適な形状を示している。気道チューブ6は、35のショアA硬さ、好適には35から50の範囲内のショアA硬さを有するシリコンゴムから射出成型されるのが好ましい。
図17からは、端部分34が近位端部分70と角度Cを成しており、両者間に湾曲した中間部分72があるということが分かるであろう。角度Cは、50°から75°の範囲にあるのが好ましく、約60°であることが最も好ましい。気道チューブ6は、初めに真っ直ぐな状態で射出成型され、次に湾曲した部分72を形成するようにフォーマ(成形機)内で加熱されることが好ましい。導管20、22、24、26、および28は全て、成型プロセスの間に形成することができる。同様に、開口40および42も成型プロセスにて形成することができる。
図18に最もよく示すように、開口40および42同士の間に、中央の縦方向に延びる隆起部74が形成されている。この隆起部74は、気道チューブ6の端部分34に対して付加的な剛性を与える。隆起部74は更に、患者の喉頭蓋166が開口40および42を塞いでしまうのを防止する。
図16および
図17からは、端部分34の遠位端部が、カフ4の内部形状に対してより良く適合するように多少先細りになっていることも分かるであろう。この端部分34の遠位端部には、断面が概して楕円形状の一体型中空突出部76が成型されている。この突出部76の外形は、概して遠位差込部36の形状に対して相補的であり、排出チャンバ12の形状に対して付加的な剛性を与えるように差込部36の中に置かれる。
図24からは、導管26および28の遠位端部が、チャンバ12との流体連通をもたらすように突出部76の内部へと開いていることが分かるであろう。最後に、成型プロセスの間に切欠き60も一体的に形成することができる。
【0026】
図17および
図18から、気道チューブ6は、端部分34が平坦な前側18の一部を取り去られていることを除けば、その全長に沿って断面が概して均一であると見なされるかもしれない、ということが認識されるであろう。
図18に示すように、窪み14に対応する部位においては、概して矩形状ではあるが遠位端部および近位端部の所に丸い角を有した形状で前方壁18が完全に取り去られている。この開口に近接して、側壁53、54、55、および縁枠56の縁部が、シリコーン接着剤によって気道チューブに接合されている。但し、機能的な観点からは、カフが気道チューブに対して異なるやり方で連結されるかもしれない、ということが認識されるであろう。例えば、側壁53、54、55、および57に対応する部分が気道チューブと一体的に成型されるかもしれないが、このことは当該チューブの成型をより困難なものとするであろう。しかしながら、この改変が成されたとすれば、気道チューブと一体的に形成された側壁の隣接する下縁部に対して、前方密封壁52の内縁部を接合することができるであろう。他の中間的な変形も可能であろう。但し、気道チューブ6およびカフ4を図面に示すように成型することが好ましいのである。
【0027】
気道チューブ6は別個の2つの部分で形成されるかもしれない、ということが認識されるであろう。端部分34は、各部分70および72から別々に成型されるかもしれない。
それらの部分70および72は、押出しによって形成され、正しい形状へと曲げられ、それから端部分34に対して接続されるかもしれない。
【0028】
一実施形態において、気道チューブ6の長さは約170mm(真っ直ぐなとき)であり、横方向の幅は約25mmである。高さ、即ち前側18から後側16まで測っては約15mmである。これらの寸法はもちろん、作るべき気道装置の大きさに従って変化させることができる。
【0029】
図26から
図31は、連結体8をより詳細に描いている。図示の構成において、連結体はポリカーボネイトなどのプラスチック材料から一体的に成型される。連結体8を多数の部分に成型し、それらの部分を、接合または熱もしくは超音波溶接によって互いに連結することができるであろう。
【0030】
連結体8は、その近位端部に形成された15mmの雄ルアー・コネクタ80を含んでいる。連結体は中間部分82を含んでおり、この中間部分82から3つの遠位差込部84、86、および88が突き出ている。これらの差込部84、86、および88はそれぞれ、導管28、26、および24との流体連通を確立するよう、これらの導管の近位端部内にぴったり挿入できるような外径を有している。各差込部は、気道チューブ6への連結体8の組み付けを容易にするように僅かに先細にされていてもよい。各差込部の長さは約15mmである。
【0031】
図26から最もよく分かるように、中間部分82は、中空の差込部84、86、および88とそれぞれ連通した通路90、92、および94を含んでいる。通路90の近位端部は、横断壁98内に形成されて外気へ開いたポート96によって構成されている。使用時には、ポート96を通じて空気が流入する。その結果、空気は、通路90内へと通過し、それから排出チャンバ通気導管28を通過して、排出チャンバ12へ流入することができる。中間部分82には、通路92と連通して横方向に突出する中空差込部100が形成されている。通路92は中空の差込部86と流体連通しており、この差込部86が今度は排出導管26との流体連通を確立している。使用時には、導管26の遠位端部が開いている排出チャンバ12内に吸引状態を確立するように、差込部100を介して吸引源を適用することができる。中間部分82には、通路94と連通して横方向に突出する中空差込部102も形成されている。通路94は、中空の差込部88と流体連通している。中空差込部88は、膨張導管24内へと挿入される。使用時には、膨張導管を加圧し、かくしてカフ4を所要の程度まで膨張させるために、注射器を介して差込部102へ正圧を加えることができる。
【0032】
中間部分82の前側は、本質的に中空であって、相対的に広い通路104を形成している。この通路104は、近位端部においてルアー・コネクタ80と連通し、遠位端部において気道導管20および22の端部と連通している。中間部分82の遠位端部は、段部106として形成されている。この段部106は、通路104が導管20および22と連通するように、気道チューブ6の隣接する端部へ当接する。図示の構成においては、次の理由から、チューブ6の端部へ当接する段部106が好ましい。即ち、気道導管20および22との流体連通を確立するのに連結差込部が用いられたとすれば、それらの差込部によって望ましくない狭窄が生じるであろうからである。換言すれば、段部106の直接的な当接は、麻酔ガスの流れに対して最も少ない量の妨害しか与えないのである。接合箇所における通路104と他の各通路との間での漏洩の可能性は小さい。それは、差込部84、86、および88の対応する導管内への挿入によって、通路104から他の各通路が本質的に隔絶されるからである。
【0033】
図示の構成において、連結体8の全長は約101mmであり、最大幅(即ち、差込部100および102の端部同士の間で測って)は40mmである。気道チューブ6の近位端部上に取り付けられた剛性体8が、人工気道の位置を固定するのに時には役立つ当該人工気道のこの箇所に剛性を与える、ということが認識されるであろう。このことはまた、万一患者が気道へ噛みついてしまった場合に、当該気道が損傷を受けたり塞がれたりするのを防止する。更に、連結スリーブ10は柔軟で弾力のある表面をもたらすが、この表面は、万一噛みつきが発生したとしても患者の歯に対する損傷を防止するであろう。
【0034】
中間部分の周縁の断面形状は、
図31に示すように、気道チューブ6の近位端部における断面形状に対応している。これにより、中間部分82とチューブ6の近位端部とを覆って連結スリーブ10をぴったり取り付けることが可能となる。
【0035】
図33は、スリーブ10を示している。このスリーブ10は、シリコンゴムから押出されるか、或いは成型され、気道チューブ6の硬さと同様の硬さを有している。当該チューブ10は、中間部分82および気道チューブ6の外側表面に対して相補的な形状の内腔120を有している。スリーブ10の長さは、約60mmであることが好ましい。機能的な観点からは、中間部分82と、気道チューブ6における近位端部の約20mmの部分との外側をスリーブ10が完全に覆うように、壁98から段部106まで測った中間部分82の長さよりもスリーブ10の長さの方が長くなっていることが必要である。
【0036】
当該装置を製造する好適な順序は、カフ4、気道チューブ6、連結体8、およびスリーブ10を別個に成型するものである。初めは真っ直ぐな気道チューブ6が、次に、前述したような湾曲形状へと熱成形される。次に、カフ4を、気道チューブ6の端部分34上に取り付けて、そこへ前述したようにして接合することができる。次に、差込部84、86、および88をそれぞれの導管内へと挿入できるように、気道チューブ6の近位端部に沿ってスリーブ10をスライドさせることができる。それらを所定位置に固定するのにシリコン接合剤を用いてもよい。次に、スリーブの内腔120へシリコン接合剤を塗布し、スリーブを、その近位端部が横断壁98と係合するように近位方向へ動かす。このようにして、連結体8と気道チューブ6の端部との間に、所要の流体連通が確立された状態で、気密な結合が形成される。
【0037】
図34から
図39は、完全に収縮した状態にあるカフを概略的に描いている。このカフは、差込部102に連結された管腔(
図34から
図39には示していない)へ注射器を接続することによって収縮させることができる。カフ4は、患者の口と咽を通じてより容易に挿入できるように収縮させられるのである。カフが収縮させられるときには、突出部44および46が、カフの遠位端部に向かって寸法と形状の変化する、横方向に延びる翼部130および132を形成するように潰れる、ということが分かるであろう。前方表面52および内側側壁53,54は、やはりカフの長さに沿って形状と幅の変化する前方へ延びる翼部134および136を形成するように潰れる。翼部130、132、134、および136は、多少ランダムな向きにされるが、挿入プロセスの間、それらの翼部を容易に弾性的に撓ませることのできる方がもっと重要である。
【0038】
図40から
図45は、膨張した状態にあるカフの形状を概略的に示している。通常、カフ4は40から60cm水柱圧(cm H
2O pressure)の範囲内の圧力まで膨張させられる。膨張した状態において、突出部44および46は多少横方向に延ばされている。しかしながら、
図43に最もよく示すように、後方壁31(32)が、気道チューブ6の端部分34の後方壁16から大きく変位させられることの方がより重要である。
図43に示すように、膨張した状態においてもなお、概して突出部44および46と後方壁31(32)の隣り合う部分との間に縦方向陥没部140および142が置かれている。これらの陥没部140および142は、膨張後や膨張中において、膨張される構造に対して、その捩れに抵抗しようとする幾らかの安定性を与えるのに役立つ。
【0039】
膨張後においては、4番寸法(サイズ4)の装置に関して、カフ4の最大幅が約52mmであり、前方密封表面52と後方壁31との間で測った最大高さが約33mmである。
これらの寸法は、当該技術において周知であるように、もっと小さい装置や大きい装置では変化することとなる。
【0040】
図46は、人工気道2を患者150内に配置するやり方を線図式に描いている。初めに、注射器152を用いてカフ4が収縮させられる。その注射器152は、バルブ156を介して管腔154によって差込部102に連結されている。バルブ156は、そこに注射器152が連結されたときを除いて、通常は管腔154を閉鎖している。それから、患者の咽を通じて人工気道2を、カフが声門開口158に隣接して設置されるまで挿入することができる。カフ4の遠位端部は、上部食道括約筋160に近接して置かれる。それから、注射器152を用いてカフ4を所望の程度まで膨張させることができる。この膨張は、カフにおける後方壁31の外向きの拡張を、患者の後方咽頭壁162に対して密封をするようにして生じさせる。カフの膨張は、側壁48および50の幾らかの横方向の拡張も引き起こす。その結果、これらの側壁が、患者の左右の咽頭壁に対する密封をなす。このプロセスの間、前方密封壁52は、声門開口158を取り囲む部位との良好な密封接触状態にされることとなる。それから、必要に応じて麻酔ガスや空気を、ルアー・コネクタ80を介して患者へ与えることができる。
【0041】
上述したようなカフの形状は、対応する患者の解剖学的特徴に対して、概して解剖学的に適合する。これにより、前方壁52と、声門開口158を取り囲む部位との間で、極めて優れた密封が維持される。既に、当該装置の試作品が試験されており、その密封性が、現在入手可能な気道装置で得られる密封性よりも高度であるということが分かっている。
本発明の試作品が28から36cm水柱の圧力で試験されているのに対して、大多数の現在入手可能な市販の気道は、約28cm水柱の最大値を有するのが一般的である。
【0042】
排出チャンバ12が患者の食道161へ向けられている、ということも分かるであろう。そのチャンバ12内に吸引を生じさせるために、管腔164を介して差込部100に吸引源を連結することができる。但し、排出チャンバ通気導管28によってチャンバ12が外気へと通じているので、チャンバ12の近位部分へ向かう吸引量は限定されたものでしかない。これにより、チャンバ12を患者の組織表面上へ直接的に吸い付かせる作用(損傷を引き起こすかもしれない望ましくない作用)が避けられる。食道161から吐き戻された如何なる物質も、チャンバ12に入って行き、排出チャンバ通気導管28から排出導管26内へ通過する空気流の中へと運び去られることとなる。このことが、吐き戻された物質が声門開口へ、そして気管159内へと入ってしまう可能性を最小限にする。チャンバ12は外気へ通じており、このチャンバが、上部食道括約筋やそこに隣接する部分の粘膜に対して吸い付く状態に維持されてしまう可能性は極めて小さい。これにより、患者の組織に対する損傷の可能性が避けられる。また、排出チューブを患者の食道161と直接的に連通させて、そこに負圧を加え得る(これは吐き戻しを誘発する作用を有するかもしれない)ところの先行技術の構成に対する優位性も、当該構成は有している。
【0043】
患者の喉頭蓋166が通常は窪み14に隣接して置かれ、その喉頭蓋が気道開口40および42を塞ぐのを気道チューブの隆起部74が防止する傾向にある、ということにも気付くであろう。
図46からは、患者の歯168が、シリコンゴムから形成されているために弾力のあるスリーブ10に隣接して置かれていることも分かるであろう。このことは、患者に対する、また人工気道に対する損傷を防止するのに役立つ。
【0044】
図47から
図64は、本発明に従って構成される、改変された気道の詳細を示している。これらの図面においては、最初の実施形態の各部分と同様の部分や対応する部分を示すのに同じ参照符号が用いられている。
【0045】
この実施形態においては、気道チューブ6が2つの部品、近位部品181と相互連結された遠位部品180で作られている。これらの部品は、接合や接着などによって互いに結合され、互いに連結されたときの形状が気道6に対応している。近位部品181は、先の実施形態と同様、結合スリーブ10に対して連結することができる。遠位部品180は、さね接ぎ部182を含んでいる。
図64に最もよく示すように、このさね接ぎ部182は、使用時に、近位部品181の遠位端部に形成された相補的なさね接ぎ部183と繋がる。これらのさね接ぎ部182および183は、そこへの心合わせや接着ないし接合を容易にする。部品180は、その前側から多少突出した突出壁184を含んでいる。この壁184の内側は、カフの窪み14に対応した長い楕円形状の窪み186を画成している。
【0046】
図53、
図54、および
図55に最もよく示すように、壁184の前方縁部には、溝188と、この溝188の外側に隣接した段部190とが形成されている。
図47および
図53に最もよく示すように、部品180は、通気導管28をその遠位端部において取り囲むさね接ぎ部192を含んでいる。
【0047】
近位部品181および遠位部品180で気道チューブを形成することによって、それらの部品は、それぞれ単一の部品よりも成型するのが容易となる。従って、これにより当該装置の全体的な費用が低減される。
【0048】
図57から
図61は、部品180上への取付けを容易にするように形作られた改変形態のカフ200を描いている。このカフ200は、先の実施形態で示したものとは、2つの重要な点において異なっている。
【0049】
第1の相違は、内側側壁53、54、55、および57に、窪み14に対して概して内側へ突出した口縁部202が形成されていることである。この口縁部202は、部品180の溝188内に、段部190と隣接して受け入れられるように形作られている。これにより、部品180に対するカフの接合および、または接着が容易となる。これは、
図62の拡大概略図に最もよく示されている。
【0050】
先の実施形態のカフ4に対してカフ200が有する第2の主要な変更点は、
図59に最もよく示すように、遠位差込部36に、内側を向いた一体型のフランジ204が形成されていることである。このフランジ204は使用時に、部品180の遠位端部に形成されたさね接ぎ部192の内側に置かれる。従って、フランジ204を設けることによって、排出チャンバ12への滑らかな入口が画成される。更に、如何なるものであれ余分な接着剤や接合剤が存在する場合にも、それは気道の近位端部の内側に置かれることとなる。その結果、遠位端部には当然、そのような余分な接着剤や接合剤によって生じる粗い縁や鋭い縁は何ら存在しない。排出チャンバ12への滑らかな入口を有していることにより、カフの外観もまた向上する。
【0051】
部品180とカフ200とで形成されたカフにおいては、このカフの近位連結差込部30が、部品180と気道チューブの残部との間の継ぎ目を覆うに足るほど長くなっている。このことは、如何なる気体の漏洩をも防止するのに役立つし、また気道に対して小綺麗な外観を与えもする。更に、部品180を気道の残部と相互連結するのに用いた如何なる余分な接着剤や接合剤も差込部130によって覆われ、従って、そのような余分な接着剤や接合剤によって生じる気道の外観上の如何なる不要な突起も防止されるであろう。
【0052】
当業者においては、本発明の装置が、作るのに費用の掛からない相対的に少数の部品から成型される、ということが認識されるであろう。更に、既知の人工気道のために必要な組立に比べて、組立プロセスが比較的単純である。
【0053】
当業者においては、本発明のカフの形状が、側面図および平面で見たとき、上述したように楔形の形状になっている、ということも認識されるであろう。このことは、大多数の先行技術装置における楕円形や卵形の環状体状や輪形状のリングに比べて、カフの膨張時における患者の解剖学的形状とのより良好な適合性をもたらしてくれる。
【0054】
かくして本発明の装置は、1回だけの使用、即ち使い捨ての装置として作るのを可能とするに十分なほど費用が掛からないものの、複数回の使用のために加圧滅菌することができるかもしれない。
【0055】
記述された構成は例として提案されてきたに過ぎず、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの改変や変形が成されてもよく、本発明は、本明細書に開示されたあらゆる新規な特徴や特徴同士の組合わせを包含するものである。
【0056】
この明細書と、後に続く特許請求の範囲との全体を通じて、文脈が別様を求める場合を除き、用語「備える(comprise)」、および「備える(comprises)」や「備えた(comprising)」などの変形は、次のように理解されることとなる。即ち、言明された完全体もしくは段階または完全体もしくは段階の集まりの包含を含意するが、如何なる他の完全体もしくは段階または完全体もしくは段階の集まりの除外も含意するものではない、と理解されることとなる。
【0057】
この明細書中での如何なる先行刊行物(もしくは、それから見出される情報)または如何なる既知の事項に対する言及も、先行刊行物(もしくは、それから見出される情報)または既知の事項が共通の一般的な知識の一部を成すものであるとの自認もしくは承認として、または如何なる形態の示唆としても受け取られないし、また受け取られるべきではない。