【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、下記一般式(I):
R
1−(AA)
n−X
1−X
2−−X
3−X
4−X
5−X
6−(AA)
p−R
2
のヒトSIRTタンパク質の高度保存領域に由来するペプチドが、非常に良好なSIRT6活性化剤であり、外部ストレス、特にUV照射によるDNA分解を予防し、及び/または効果的に修復し、テロメア維持を改善し、細胞老化を低下させることを示した。したがって、これらのペプチドは、皮膚の老化及び光老化の治療に好適である。
【0017】
本発明に関するペプチドは、以下の事実により特徴付けされる。すなわち、本ペプチドは、
・皮膚細胞内のSIRT6の発現を活性化し、
・UVB照射による皮膚細胞のDNA分解を低減し、
・酸化ストレスに対する皮膚細胞の保護を促進し、
・特異的にテロメアに関連するTRF2タンパク質の発現を刺激し、
・線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の発現を上昇させ、
・表皮のバリア機能を最適化する。
【0018】
「ペプチドまたはSIRT6を活性化する活性剤またはヒトSIRT6を活性化できる活性剤」は、細胞内に存在するSIRT6量を、遺伝子発現を直接的または間接的に変化させてタンパク質合成を増加させることにより、またはタンパク質の安定化やメッセンジャーRNA転写の安定化などの他の生物学的過程により、増加させることが可能な、一般式(I)に示すペプチドを指すものと解する。
【0019】
皮膚は、皮膚、粘膜及び上皮付属器を構築する組織を覆う全てを指すものと解する。
【0020】
SIRTファミリーの7つのタンパク質のペプチド配列のアラインメントは、欧州バイオインフォマティクス研究所から利用可能な、複数ペプチド配列アラインメントプログラムClustalW2を利用して行い、
図1に示した。最適アラインメントは、3つの高度保存領域を示す。
【0021】
「ヒトSIRTタンパク質の高度保存領域」は、配列を最高のホモロジーに基づいて配置した時に、ファミリーの7つのサーチュインの少なくとも2つの実質的に同一の連続するアミノ酸を有するペプチド配列を指すものと解する。
第1の高度保存領域はGly−Ala−Glyペプチド配列を有し、
第2の高度保存領域はGln−Asnペプチド配列を有し、
第3の高度保存領域はHis−Glyペプチド配列を有する。
【0022】
したがって、本発明の第1の対象は、一般式(I):
R
1−(AA)
n−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−X
6−(AA)
p−R
2
式中、
X
1は、グリシン、スレオニンまたはヒスチジンであり、
X
2は、アラニン、グルタミンまたはグリシンであり、
X
3は、グリシン、アスパラギンまたはセリンであり、
X
4は、バリン、イソロイシンまたはロイシンであり、
X
5は、セリン、アスパラギン酸またはフェニルアラニンであり、
X
6は、アラニン、グルタミン酸またはリジンであり、
X
1がグリシンの場合、X
2はアラニンで、X
3はグリシンであり、
X
1がスレオニンの場合、X
3はアスパラギンであり、
X
1がヒスチジンの場合、X
2はグリシンであり、
AAは、アミノ酸またはその誘導体の1つを表し、n及びpは0〜2の整数を表し、
R
1は、N末端アミノ酸の一級アミノ官能基を表し、遊離、またはアセチル基またはベンジル、トシル及びベンジルオキシカルボニル基から選択される芳香族基であってよい、飽和または不飽和の炭素数1〜30のアルキル鎖を有するアシル基で置換され、
R
2は、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基の水酸基を表し、遊離、または炭素数1〜30のアルキル鎖から選択される基、NH
2、NHYまたはNYY基、ここで、Yは炭素数1〜4のアルキル鎖を表す、により置換される、
に対応する、ヒトSIRTタンパク質の高度保存領域のペプチド配列由来の6〜10アミノ酸からなるペプチドである。
一般式(I)の上記配列は、6〜10のアミノ酸残基からなる。
【0023】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、上記ペプチドは以下の配列を有する。
(配列番号1)Glu−Ile−His−Gly−Ser−Leu−Phe−Lys−NH
2
(配列番号2)His−Gly−Ser−Leu−Phe−Lys−NH
2
(配列番号3)Leu−Val−Gly−Ala−Gly−Val−Ser−Ala−NH
2
(配列番号4)Gly−Ala−Gly−Val−Ser−Ala−Glu
(配列番号5)Gly−Ala−Gly−Val−Ser−Ala−Glu−NH
2
(配列番号6)Thr−Gln−Asn−Ile−Asp−Glu−Leu
(配列番号7)Thr−Gln−Asn−Ile−Asp−Glu−Leu−NH
2
(配列番号8)Val−Ile−Thr−Gln−Asn−Ile−Asp−Ala−NH
2
【0024】
本発明の特に興味深い実施態様によれば、上記ペプチドは、配列番号4の配列または配列番号5の配列に対応する。
【0025】
本発明の他の特に好ましい実施態様によれば、上記ペプチドは、配列番号6の配列または配列番号7の配列に対応する。
【0026】
本発明のペプチドを構築し、AAまたはXで表されるアミノ酸は、L−体及びD−体の異性体構造を取ることができる。好ましくは、アミノ酸はL−体である。
【0027】
用語「ペプチド」は、ペプチド結合または変性ペプチド結合により連結した2個以上のアミノ酸のつながりを意味する。
【0028】
「ペプチド」は、上述のような本発明の天然または合成ペプチド、またはタンパク質分解もしくは合成的に得られたその断片の少なくとも1つ、または前述のペプチドの配列により部分的もしくは完全に構築される配列を有する天然または合成ペプチドを指すものと解する。
【0029】
ペプチド誘導体は、特に擬似ペプチド結合により相互接続したアミノ酸に関する。「擬似ペプチド結合」は、「通常の」ペプチド結合に置き換わることができる結合の全てを指すと解する。
【0030】
分解に対する耐性を改善するために、本発明のペプチドの保護型が必要となる場合がある。好ましくは、N末端アミノ酸の一級アミノ官能基を保護するために、アセチル基または芳香族基から選択されてよい、飽和または不飽和の炭素数1〜30のアルキル鎖を有するアシルであるR
1基による置換を利用してもよい。好ましくは、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基を保護するために、炭素数1〜30のアルキル鎖、またはNH
2、NHYまたはNYY基、ここで、Yは炭素数1〜4のアルキル鎖を表す、であるR
2基による置換を利用する。
【0031】
本発明のペプチドでは、N末端、C末端または両末端領域を保護してもよい。
【0032】
したがって、本発明は、配列番号1から配列番号8のペプチドが保護または非保護型であることによってあらかじめ定義、特徴付けされる組成物に関する。
【0033】
本発明の一般式(I)のペプチドは、構成アミノ酸から、従来の化学合成(固相または均質液相)、または酵素的合成(Kullmanら,J.Biol.Chem.,1980,225,8234)により得てもよい。
【0034】
本発明のペプチドは、天然のものでも合成のものでもよい。本発明では、ペプチドは化学合成された合成ペプチドが好ましい。
【0035】
本発明では、活性剤は、単一のペプチドであっても、ペプチドまたはペプチド誘導体の混合物であってもよい。
【0036】
本発明のペプチドは、1種または複数の生理的に好適な溶媒、例えば水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシル化ジエチレングリコールまたはプロポキシル化ジエチレングリコール、環状ポリオール、これら溶媒の混合物、に有利に可溶化される。希釈されたペプチドは、ろ過滅菌法により滅菌する。
【0037】
この希釈ステップ後、ペプチドを化粧料の分野で利用されているリポソームやマイクロカプセルなどの化粧料または医薬担体にカプセル化または包み込んでもよく、または粉状有機ポリマーやタルクやベントナイトなどの鉱物支持体に吸着させてもよい。
【0038】
「生理的に好適」とは、選択した溶媒が、毒性または不耐性反応を起こすことなく、皮膚に好適に接触させることが可能であることを意味すると解する。
【0039】
本発明のペプチドは、医薬品として利用してもよい。
【0040】
本発明の第2の対象は、生理的に好適な媒体中に、一般式(I)のペプチドを、ヒトSIRT6を活性化する活性剤として有する化粧料または医薬、特に皮膚用組成物である。
【0041】
本発明の有利な実施態様によれば、本発明の活性剤は、本発明の組成物中に、最終組成物の全重量に対して、約1×10
−9M〜1×10
−3M、好ましくは2×10
−8M〜1×10
−5Mの濃度で含まれる。
【0042】
この濃度範囲は、目的の結果を得るために必要な量、すなわちSIRT6を活性化し、DNA分解を抑制し、テロメア維持を改善するために必要な量に対応する活性剤の有効量である。
【0043】
好ましい態様では、本発明の組成物は、皮膚に対して生理的に好適な媒体を有する、局所投与に好適な形態で存在する。「生理的に好適」とは、媒体が、毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応、その他の二次的影響のリスクなしに、皮膚またはヒト上皮付属器に接触させて使用するのに適していることを指すと解する。
【0044】
「局所投与」とは、本発明の活性剤またはその活性剤を含有する組成物を、皮膚表面に適用または塗ることを指すと解する。
【0045】
皮膚上に適用される組成物は、水溶液もしくは含水アルコール溶液、油中水型もしくは水中油型エマルション、マイクロエマルション、水性もしくは無水ゲル、セラム、他の小胞分散体、パッチ、クリーム、スプレー、軟膏、ポマード、ローション、コロイド、溶液、懸濁液、その他の形態であってよい。
【0046】
これらの組成物は、特に水溶液、含水アルコール、油性溶液、水中油型エマルション、油中水型エマルションまたは多層エマルションの形態であってよい。さらに、皮膚、粘膜、唇及び/または上皮付属器に好適に適用できる、クリーム、懸濁液または粉体の形態であってもよい。これらの組成物は、多少流動性を有することがあり、クリーム、ローション、乳液、セラム、ポマード、ゲル、ペーストまたはフォームの外観を有する。また、棒状などの固体で存在することもあり、また、エアロゾル状で皮膚に適用してもよい。さらに、ケア製品として及び/または皮膚化粧品として利用してもよい。
【0047】
さらに、これら全ての組成物は、製剤に必要な補助剤に加え、適用が考えられる分野で通常利用されている添加剤を有する。例えば、共溶媒(エタノール、グリセロール、ベンジルアルコール、湿潤剤など)、増粘剤、希釈剤、乳化剤、抗酸化剤、着色剤、遮光剤、顔料、フィラー、保存剤、香料、防臭剤、精油、微量元素、必須脂肪酸、表面活性剤、成膜ポリマー、薬液用または鉱物用フィルター、保湿剤または温泉水などを有する。例えば、多糖類やポリペプチドなどの天然の水溶性ポリマー、メチルセルロース型やヒドロキシプロピルセルロース型のセルロース系誘導体、他の合成ポリマー、ポロキサマー、カルボマー、シロキサン、PVAまたはPVP、特にISP社製のポリマーが挙げられる。
【0048】
全ての場合において、当業者であれば、これらの補助剤及びその割合が、本発明の組成物の目的とする有利な性質を害しないように選択されていることを確認する。これらの補助剤は、例えば、組成物の全重量に対して0.01〜20%の濃度範囲で存在してよい。本発明の組成物がエマルションである場合、油層は、組成物の全重量に対して5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%である。組成物に使用される乳化剤と共乳化剤は、対象とする分野で従来から利用されているものであってよい。例えば、組成物に使用される乳化剤と共乳化剤は、組成物の全重量に対して0.3〜30重量%の割合で利用してよい。
【0049】
本発明の活性剤は単独で利用してもよく、他の活性剤と組み合わせて利用してもよいと解する。
【0050】
有効な手段として、本発明の利用可能な組成物は、本発明の活性剤の活性を促進することを目的とし、かつ特に加齢性障害の予防及び/または治療を目的とする、少なくとも1つの他の活性剤をさらに含有する。
【0051】
限定されるわけではないが、成分の種類として下記が挙げられる。すなわち、他のペプチド活性剤、植物抽出物、瘢痕形成薬、老化防止、しわ防止、スムージング、抗ラジカル、抗UV剤、真皮高分子の合成またはエネルギー代謝を刺激する薬剤、保湿剤、抗菌材、抗真菌剤、抗炎症剤、麻酔薬、皮膚分化調節剤、染色または脱色剤、爪または毛髪の成長を刺激する薬剤。
【0052】
優先的には、抗ラジカルまたは抗酸化剤、真皮高分子の合成を刺激する薬剤、他のエネルギー代謝を刺激する薬剤が利用される。特に好ましい実施態様では、本発明の組成物は、本発明のペプチドに加え、
・少なくとも1つのチトクロームc活性化化合物、及び/または、
・少なくとも1つのアクアポリン活性化化合物などの保湿化合物、及び/または、
・少なくとも1つのサーチュイン活性化化合物及び特にフランス特許FR2883754、米国特許US11/910,098または欧州特許EP1868631に記載のペプチド、及び/または、
・少なくとも1つの細胞接着を増進する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ムコ多糖体などのマトリックスタンパク質の産生を促進する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのプロテアソーム活性を調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つの日周リズムを調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのHSPタンパク質を調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つの細胞エネルギーを増進する化合物、及び/または、
・少なくとも1つの皮膚色素沈着を調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つの補酵素Q10活性化化合物、及び/または、
・少なくとも1つのトランスグルタミナーゼ活性化化合物、HMG−CoA還元酵素活性化化合物などのバリア機能を改善する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのミトコンドリア保護化合物、及び/または、
・少なくとも1つの表皮または真皮の成体の体細胞を保護または調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのDNA分解を保護または修復する化合物
を有する。
【0053】
上記化合物は植物、動物または微生物のペプチド加水分解物などの天然由来のものでも、ペプチドなどのように合成物でもよい。
【0054】
その機能とは無関係に、組成物中の本発明の活性剤に関連する他の活性剤は、多種多様の化学構造を有していてよい。その非制限的な例として、ペプチド、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンB群、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)、フィトステロール、サリチル酸及びその誘導体、レチノイド、フラボノイド、糖化アミン、アゾール化合物、金属塩、天然由来ペプチド抽出物、その他天然または合成ポリマーが挙げられる。
【0055】
本発明の他の対象は、本発明のペプチドを医薬品として生理的に許容可能な媒体中に有する医薬組成物である。本発明の医薬組成物は、乾燥症、脱色または褐色斑、角化症などが挙げられる、早期老化または光老化と関連する皮膚症状を改善する。
【0056】
有利なことに、本発明のこの形態における組成物は、医薬使用の経口投与に適している。したがって、組成物は、特に錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、チュアブルペースト、そのまま使用するかまたは使用直前に液体と混合して使用する粉剤、シロップ剤、ゲルまたは当業者に周知の他の剤型にしてよい。これらの剤型は、着色剤、甘味料、香料、増量剤、結合剤、保存剤などの好適な製剤添加物を含有する。
【0057】
本発明の第3の対象は、一般式(I)のペプチドを、DNA分解を予防及び/または修復する活性剤として有する化粧料組成物である。
【0058】
「DNA分解を予防及び/または修復する活性剤」とは、DNA分解を抑制、またはDNA塩基間の光化学反応による損傷の修復を促進するペプチドを指すと解する。
【0059】
本発明の第4の対象は、一般式(I)のペプチドを、テロメア維持を改善し、細胞老化を低下させる活性剤として有する化粧料組成物である。
【0060】
「テロメア維持を改善し、細胞老化を低下させる活性剤」とは、TRF2やSIRT6などのように、テロメアと特異的に関連して、その安定性に関わるタンパク質の合成を増進するペプチドを指すと解する。
【0061】
本発明の第5の対象は、一般式(I)のペプチドを、ケラチノサイト分化マーカーの発現を増進し、皮膚の線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の発現を促進する活性剤として有する化粧料組成物である。
【0062】
本発明の活性剤のこれら特定の性質は、真皮の質を改善し、それにより皮膚の堅さを改善し、表皮のバリア機能を最適化する。
【0063】
本発明の第6の対象は、あらゆるタイプの外部ストレスから皮膚を保護するために、一般式(I)のペプチドを活性剤として有する組成物の利用である。
【0064】
用語「外部ストレス」は、環境が作り出すストレスを指すと解する。例として、汚染、UV照射、表面活性剤などの刺激製品、保存剤、香料、摩擦、髭剃り、脱毛などの機械的ストレスが挙げられる。汚染は、ディーゼル粒子、オゾン、重金属などによる「外部」汚染と、特に塗料、接着剤、壁紙溶剤(トルエン、スチレン、キシレン、ベンズアルデヒドなど)からの放出や喫煙による「内部」汚染の両者を指すと解する。
【0065】
特に、本発明の対象は、本発明のペプチドを、UV照射及び酸化ストレスによる皮膚の損傷を予防または治療するための有効量を有する化粧料組成物の利用である。
【0066】
本発明の第7の対象は、本発明の活性剤の有効量を有する組成物を、老化や光老化の皮膚兆候を予防及び/または治療するために、皮膚の処置箇所に局所的に適用することを特徴とする、化粧処理法である。
【0067】
老化の皮膚兆候は、表皮の角質層の表面粗さ、しわ、小じわなどの老化による皮膚及び上皮付属器の外見の変化だけでなく、UV照射後の真皮の薄化や他の皮膚の内部分解などの、外見の変化としてはその徴候が現れない、皮膚の内部変化を指すと解される。
【0068】
特に、本発明は、UV照射によるストレスに対して皮膚を保護することを目的とする化粧処理法に関する。
【0069】
本発明の他の利点及び特徴は、例示的、非限定的な目的で示す実施例により、より明らかである。