特許第5938787号(P5938787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5938787新規サーチュイン6活性化ペプチド及びそれを含有する化粧料または医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5938787
(24)【登録日】2016年5月27日
(45)【発行日】2016年6月22日
(54)【発明の名称】新規サーチュイン6活性化ペプチド及びそれを含有する化粧料または医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20160609BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20160609BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20160609BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20160609BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160609BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20160609BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   A61K8/64
   A61Q19/00
   A61Q19/08
   A61K37/02
   A61P17/00
   A61P43/00 107
   !C12N9/10
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-517426(P2013-517426)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公表番号】特表2013-531005(P2013-531005A)
(43)【公表日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】FR2011000373
(87)【国際公開番号】WO2012001245
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年5月22日
(31)【優先権主張番号】1002698
(32)【優先日】2010年6月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512326403
【氏名又は名称】アイエスピー インベストメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ダル ファッラ,クラウド
(72)【発明者】
【氏名】ドムロゲ,ノウハ
(72)【発明者】
【氏名】ボット,ジーン−マリエ
(72)【発明者】
【氏名】インベルト,イサベレ
(72)【発明者】
【氏名】ペルノデト,ナディン
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/103354(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/103110(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/135268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
−(AA)−X−X−X−X−X−X−(AA)−R
式中、
は、グリシン、スレオニンまたはヒスチジンであり、
は、アラニン、グルタミンまたはグリシンであり、
は、グリシン、アスパラギンまたはセリンであり、
は、バリン、イソロイシンまたはロイシンであり、
は、セリン、アスパラギン酸またはフェニルアラニンであり、
は、アラニン、グルタミン酸またはリジンであり、
がグリシンの場合、Xはアラニンで、Xはグリシンであり、
がスレオニンの場合、Xはアスパラギンであり、
がヒスチジンの場合、Xはグリシンであり、
AAは、アミノ酸またはその誘導体の1つを表し、n及びpは0〜2の整数を表し、
は、N末端アミノ酸の一級アミノ官能基を表し、遊離、またはアセチル基またはベンジル、トシル及びベンジルオキシカルボニル基から選択される芳香族基であってよい、飽和または不飽和の炭素数1〜30のアルキル鎖を有するアシル基で置換され、
は、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基の水酸基を表し、遊離、または炭素数1〜30のアルキル鎖から選択される基、NH、NHYまたはNYY基、ここで、Yは炭素数1〜4のアルキル鎖を表す、により置換される、
で表される、ヒトSIRTタンパク質の高度保存領域のペプチド配列由来のペプチドであって、
前記ペプチドが以下の配列の1つに対応することを特徴とするペプチド。
(配列番号4)Gly−Ala−Gly−Val−Ser−Ala−Glu
(配列番号5)Gly−Ala−Gly−Val−Ser−Ala−Glu−NH
(配列番号6)Thr−Gln−Asn−Ile−Asp−Glu−Leu
(配列番号7)Thr−Gln−Asn−Ile−Asp−Glu−Leu−NH
【請求項2】
前記ペプチドが、1種または複数の生理的に好適な溶媒である、水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシル化ジエチレングリコールまたはプロポキシル化ジエチレングリコール、環状ポリオール、白色ワセリン、植物油、これら溶媒の混合物から選ばれる溶媒に可溶化されることを特徴とする、請求項記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが医薬品として利用されることを特徴とする、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
生理的に好適な媒体中に、少なくとも請求項1または2に記載のペプチドをSIRT6活性化剤として有することを特徴とする組成物であって、単独でまたは少なくとも1つの他の活性剤と組み合わせて使用する、化粧料組成物。
【請求項5】
前記ペプチドを、最終組成物の全重量に対して、1×10−9M〜1×10−3Mの濃度で有する、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ペプチドを、最終組成物の全重量に対して、2×10−8M〜1×10−5Mの濃度で有する、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が局所投与される、請求項4〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、前記ペプチドの作用を促進する少なくとも1つの他の活性剤をさらに含有することを特徴とする、請求項〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の前記ペプチド、及びDNA分解の予防及び/または修復に生理的に好適な媒体を有する組成物の、化粧料としての利用。
【請求項10】
請求項1または2に記載の前記ペプチド、及びテロメア維持の改善に生理的に好適な媒体を有する組成物の、化粧料としての利用。
【請求項11】
請求項1または2に記載の前記ペプチド、及びケラチノサイト分化マーカーの発現の増進、皮膚の線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の発現の促進に生理的に好適な媒体を有する組成物の、化粧料としての利用。
【請求項12】
請求項1または2に記載の前記ペプチド、及び任意の外部ストレスに対する皮膚の保護に生理的に好適な媒体を有する組成物の、化粧料としての利用。
【請求項13】
前記外部ストレスがUV照射である、請求項12に記載の利用。
【請求項14】
前記外部ストレスが酸化ストレスである、請求項12に記載の利用。
【請求項15】
老化及び光老化の皮膚の兆候の予防及び/又は治療用であることを特徴とする請求項4記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料及び医薬分野、特に皮膚科学分野に位置する。本発明は、ヒトサーチュイン(sirtuin:SIRT)タンパク質の高度保存領域に由来するサーチュイン6(SIRT6)活性化ペプチドに関する。
【0002】
本発明はまた、生理的に許容可能な媒体中に、SIRT6活性化ペプチドを有し、単独または少なくとも1種の他の活性剤と組み合わせて使用される、化粧料または医薬組成物に関する。本発明はまた、化粧料組成物中の活性剤としてこの新規ペプチドを利用することに関する。本発明はさらに、DNA分解の予防及び/または修復、テロメア維持の改善及び細胞老化の低減に化粧料組成物を利用することに関する。さらに、本発明は、活性剤または活性剤を含有する組成物の有効量を治療箇所に塗布することにより、老化及び光老化の皮膚兆候を防止及び/または治療を目的とする化粧処理方法に適用される。
【背景技術】
【0003】
老化は、時間とともに生物の構造と機能が変化する生理的過程と経験したストレスとの組み合わせに対応する。遺伝因子による内因性老化並びに疲労やストレス状態及び妊娠などのホルモンの変化による生化学的な変化は、汚染物質、太陽光、疾病、生活様式などの生活を通して生物が晒される環境因子による外因性の老化と区別されることがある。老化は、全ての細胞と臓器に影響を与える、緩徐な進行性の過程である。したがって、これは、外部環境と内部媒体との間にバリアを構築し、生物を外部ストレスから保護する皮膚に当てはまる。老化の過程では、皮膚に変化が表れ、しわ、小じわ、過色素沈着または低色素沈着、乾燥、さらに皮膚の脱水、表皮の薄化、弾性線維症などが表れる。
【0004】
内因性老化は、繰り返される細胞分裂と深く関わっている。したがって、ヒト体細胞では、細胞型によっては、機能を失ったテロメアが現れ、老衰またはアポトーシスを誘導するまで、テロメアは細胞分裂の周期を短縮する。この現象が、ヒト体細胞は制限された分裂回数がプログラムされているという事実を説明する生体時計を構築する。
【0005】
細胞老化現象は、特に皮膚が太陽光に晒される身体部分の酸化的損傷により促進され、その後、光老化が内因性老化に重なる。酸化的損傷は、種々の因子、内因性(代謝、炎症、酸化還元サイクル)及びUV照射や電離放射線などの外因性因子、たばこ乱用、食事により供給される種々の分子(毒性金属、アルコール)により促進される。酸化ストレスによる損傷はまた、DNA、脂質及びタンパク質に達する。DNAレベルでは、酸化ストレスが多くの構造的変化(突然変異、開裂、共有結合タンパク質架橋)を引き起こす。8−オキソグアニンなどの酸化された塩基は、加齢とともに増加し、1日当たり及び細胞当たり10000塩基に達することがある。
【0006】
老化を治療するために、酸化ストレスによりDNAに生じた局部的損傷を治療でき、かつテロメア安定性を促進することにより細胞老化を遅らせることができる新規化合物を同定することは興味深い。
【0007】
そのような状況において、最近、本発明者らはこれらの種々の機能を満たすことができる興味深い分子標的を同定した。
【0008】
SIRTタンパク質は、細胞核またはミトコンドリアのタンパク質であり、NAD+依存性デアセチラーゼ機能を有し、サーチュインファミリーに属する。サーチュインのデアセチラーゼまたはモノ−ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性は、一部のヒストンのアセチル化量を変化させる。これは、サーチュイン、特にサーチュイン1、2及び3がエピジェネティック現象の制御に関与していることを示唆する。
【0009】
ヒトサーチュインファミリーは、進化を通して非常に保存的な、SIRT1からSIRT7と名付けられた、7つのタンパク質を有する。
【0010】
SIRT6は、細胞核サーチュインで特異的にテロメアクロマチンと関連し、テロメア構造の維持と安定化の役割を果たしている(非特許文献1)。したがって、SIRT6遺伝子を無効化したマウスでは、角化細胞の複製老化に加えて、早期老化及び短寿命が見られる(非特許文献2)。
【0011】
テロメアは、染色体の端部を覆う構造を有し、酵素的分解、再結合及び染色体間融合から染色体を保護している。ヒトでは、これらの構造は、数千回のDNA配列の繰り返しにより構築され、TRF1やTRF2などの特異的なタンパク質と関係がある。最近の研究により、細胞老化においてTRF2の発現が減少することが示されている(非特許文献3)。
【0012】
一方、SIRT6は、DNAがオキシダントにより損傷された場合に細胞が利用するDNA修復機構である、塩基除去によるDNA修復において重要な役割を果たす。これらの発見は、SIRT6がゲノムの完全性及び老化現象の制御に必要であり、細胞寿命の増加に直接関わっている可能性を示唆している(非特許文献4)。
【0013】
SIRT1タンパク質活性化ペプチドを利用して、皮膚の防御及び老化対策に有効な化粧料または医薬組成物を調製することができ(特許文献1〜4)、またある種のSIRT7誘導性医薬化合物が、加齢性疾患の治療に有用であることが知られている(特許文献5)。ところが、皮膚細胞中のSIRT6タンパク質を活性化できるペプチド化合物がスキンケアに必要であるにもかかわらず、そのようなペプチド化合物は現在まで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】フランス特許2883751号
【特許文献2】フランス特許2883752号
【特許文献3】フランス特許2883753号
【特許文献4】フランス特許2883754号
【特許文献5】欧州特許1955715号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Michishitaら,Nature,2008,Mar.27;452(7186):492−6
【非特許文献2】Kawahara,TLら、Cell,2009,Jan.9;136(1):62−74
【非特許文献3】Amoyelら,J.Invest.Dermatol.Apr.2009;129(Supplement 1s),s70
【非特許文献4】Mostoslavskyら,Cell,2006,Jan.27;124(2):315−29
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、下記一般式(I):
−(AA)−X−X2−−X−X−X−X−(AA)−R
のヒトSIRTタンパク質の高度保存領域に由来するペプチドが、非常に良好なSIRT6活性化剤であり、外部ストレス、特にUV照射によるDNA分解を予防し、及び/または効果的に修復し、テロメア維持を改善し、細胞老化を低下させることを示した。したがって、これらのペプチドは、皮膚の老化及び光老化の治療に好適である。
【0017】
本発明に関するペプチドは、以下の事実により特徴付けされる。すなわち、本ペプチドは、
・皮膚細胞内のSIRT6の発現を活性化し、
・UVB照射による皮膚細胞のDNA分解を低減し、
・酸化ストレスに対する皮膚細胞の保護を促進し、
・特異的にテロメアに関連するTRF2タンパク質の発現を刺激し、
・線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の発現を上昇させ、
・表皮のバリア機能を最適化する。
【0018】
「ペプチドまたはSIRT6を活性化する活性剤またはヒトSIRT6を活性化できる活性剤」は、細胞内に存在するSIRT6量を、遺伝子発現を直接的または間接的に変化させてタンパク質合成を増加させることにより、またはタンパク質の安定化やメッセンジャーRNA転写の安定化などの他の生物学的過程により、増加させることが可能な、一般式(I)に示すペプチドを指すものと解する。
【0019】
皮膚は、皮膚、粘膜及び上皮付属器を構築する組織を覆う全てを指すものと解する。
【0020】
SIRTファミリーの7つのタンパク質のペプチド配列のアラインメントは、欧州バイオインフォマティクス研究所から利用可能な、複数ペプチド配列アラインメントプログラムClustalW2を利用して行い、図1に示した。最適アラインメントは、3つの高度保存領域を示す。
【0021】
「ヒトSIRTタンパク質の高度保存領域」は、配列を最高のホモロジーに基づいて配置した時に、ファミリーの7つのサーチュインの少なくとも2つの実質的に同一の連続するアミノ酸を有するペプチド配列を指すものと解する。
第1の高度保存領域はGly−Ala−Glyペプチド配列を有し、
第2の高度保存領域はGln−Asnペプチド配列を有し、
第3の高度保存領域はHis−Glyペプチド配列を有する。
【0022】
したがって、本発明の第1の対象は、一般式(I):
−(AA)−X−X−X−X−X−X−(AA)−R
式中、
は、グリシン、スレオニンまたはヒスチジンであり、
は、アラニン、グルタミンまたはグリシンであり、
は、グリシン、アスパラギンまたはセリンであり、
は、バリン、イソロイシンまたはロイシンであり、
は、セリン、アスパラギン酸またはフェニルアラニンであり、
は、アラニン、グルタミン酸またはリジンであり、
がグリシンの場合、Xはアラニンで、Xはグリシンであり、
がスレオニンの場合、Xはアスパラギンであり、
がヒスチジンの場合、Xはグリシンであり、
AAは、アミノ酸またはその誘導体の1つを表し、n及びpは0〜2の整数を表し、
は、N末端アミノ酸の一級アミノ官能基を表し、遊離、またはアセチル基またはベンジル、トシル及びベンジルオキシカルボニル基から選択される芳香族基であってよい、飽和または不飽和の炭素数1〜30のアルキル鎖を有するアシル基で置換され、
は、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基の水酸基を表し、遊離、または炭素数1〜30のアルキル鎖から選択される基、NH、NHYまたはNYY基、ここで、Yは炭素数1〜4のアルキル鎖を表す、により置換される、
に対応する、ヒトSIRTタンパク質の高度保存領域のペプチド配列由来の6〜10アミノ酸からなるペプチドである。
一般式(I)の上記配列は、6〜10のアミノ酸残基からなる。
【0023】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、上記ペプチドは以下の配列を有する。
(配列番号1)Glu−Ile−His−Gly−Ser−Leu−Phe−Lys−NH
(配列番号2)His−Gly−Ser−Leu−Phe−Lys−NH
(配列番号3)Leu−Val−Gly−Ala−Gly−Val−Ser−Ala−NH
(配列番号4)Gly−Ala−Gly−Val−Ser−Ala−Glu
(配列番号5)Gly−Ala−Gly−Val−Ser−Ala−Glu−NH
(配列番号6)Thr−Gln−Asn−Ile−Asp−Glu−Leu
(配列番号7)Thr−Gln−Asn−Ile−Asp−Glu−Leu−NH
(配列番号8)Val−Ile−Thr−Gln−Asn−Ile−Asp−Ala−NH
【0024】
本発明の特に興味深い実施態様によれば、上記ペプチドは、配列番号4の配列または配列番号5の配列に対応する。
【0025】
本発明の他の特に好ましい実施態様によれば、上記ペプチドは、配列番号6の配列または配列番号7の配列に対応する。
【0026】
本発明のペプチドを構築し、AAまたはXで表されるアミノ酸は、L−体及びD−体の異性体構造を取ることができる。好ましくは、アミノ酸はL−体である。
【0027】
用語「ペプチド」は、ペプチド結合または変性ペプチド結合により連結した2個以上のアミノ酸のつながりを意味する。
【0028】
「ペプチド」は、上述のような本発明の天然または合成ペプチド、またはタンパク質分解もしくは合成的に得られたその断片の少なくとも1つ、または前述のペプチドの配列により部分的もしくは完全に構築される配列を有する天然または合成ペプチドを指すものと解する。
【0029】
ペプチド誘導体は、特に擬似ペプチド結合により相互接続したアミノ酸に関する。「擬似ペプチド結合」は、「通常の」ペプチド結合に置き換わることができる結合の全てを指すと解する。
【0030】
分解に対する耐性を改善するために、本発明のペプチドの保護型が必要となる場合がある。好ましくは、N末端アミノ酸の一級アミノ官能基を保護するために、アセチル基または芳香族基から選択されてよい、飽和または不飽和の炭素数1〜30のアルキル鎖を有するアシルであるR基による置換を利用してもよい。好ましくは、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基を保護するために、炭素数1〜30のアルキル鎖、またはNH、NHYまたはNYY基、ここで、Yは炭素数1〜4のアルキル鎖を表す、であるR基による置換を利用する。
【0031】
本発明のペプチドでは、N末端、C末端または両末端領域を保護してもよい。
【0032】
したがって、本発明は、配列番号1から配列番号8のペプチドが保護または非保護型であることによってあらかじめ定義、特徴付けされる組成物に関する。
【0033】
本発明の一般式(I)のペプチドは、構成アミノ酸から、従来の化学合成(固相または均質液相)、または酵素的合成(Kullmanら,J.Biol.Chem.,1980,225,8234)により得てもよい。
【0034】
本発明のペプチドは、天然のものでも合成のものでもよい。本発明では、ペプチドは化学合成された合成ペプチドが好ましい。
【0035】
本発明では、活性剤は、単一のペプチドであっても、ペプチドまたはペプチド誘導体の混合物であってもよい。
【0036】
本発明のペプチドは、1種または複数の生理的に好適な溶媒、例えば水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシル化ジエチレングリコールまたはプロポキシル化ジエチレングリコール、環状ポリオール、これら溶媒の混合物、に有利に可溶化される。希釈されたペプチドは、ろ過滅菌法により滅菌する。
【0037】
この希釈ステップ後、ペプチドを化粧料の分野で利用されているリポソームやマイクロカプセルなどの化粧料または医薬担体にカプセル化または包み込んでもよく、または粉状有機ポリマーやタルクやベントナイトなどの鉱物支持体に吸着させてもよい。
【0038】
「生理的に好適」とは、選択した溶媒が、毒性または不耐性反応を起こすことなく、皮膚に好適に接触させることが可能であることを意味すると解する。
【0039】
本発明のペプチドは、医薬品として利用してもよい。
【0040】
本発明の第2の対象は、生理的に好適な媒体中に、一般式(I)のペプチドを、ヒトSIRT6を活性化する活性剤として有する化粧料または医薬、特に皮膚用組成物である。
【0041】
本発明の有利な実施態様によれば、本発明の活性剤は、本発明の組成物中に、最終組成物の全重量に対して、約1×10−9M〜1×10−3M、好ましくは2×10−8M〜1×10−5Mの濃度で含まれる。
【0042】
この濃度範囲は、目的の結果を得るために必要な量、すなわちSIRT6を活性化し、DNA分解を抑制し、テロメア維持を改善するために必要な量に対応する活性剤の有効量である。
【0043】
好ましい態様では、本発明の組成物は、皮膚に対して生理的に好適な媒体を有する、局所投与に好適な形態で存在する。「生理的に好適」とは、媒体が、毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応、その他の二次的影響のリスクなしに、皮膚またはヒト上皮付属器に接触させて使用するのに適していることを指すと解する。
【0044】
「局所投与」とは、本発明の活性剤またはその活性剤を含有する組成物を、皮膚表面に適用または塗ることを指すと解する。
【0045】
皮膚上に適用される組成物は、水溶液もしくは含水アルコール溶液、油中水型もしくは水中油型エマルション、マイクロエマルション、水性もしくは無水ゲル、セラム、他の小胞分散体、パッチ、クリーム、スプレー、軟膏、ポマード、ローション、コロイド、溶液、懸濁液、その他の形態であってよい。
【0046】
これらの組成物は、特に水溶液、含水アルコール、油性溶液、水中油型エマルション、油中水型エマルションまたは多層エマルションの形態であってよい。さらに、皮膚、粘膜、唇及び/または上皮付属器に好適に適用できる、クリーム、懸濁液または粉体の形態であってもよい。これらの組成物は、多少流動性を有することがあり、クリーム、ローション、乳液、セラム、ポマード、ゲル、ペーストまたはフォームの外観を有する。また、棒状などの固体で存在することもあり、また、エアロゾル状で皮膚に適用してもよい。さらに、ケア製品として及び/または皮膚化粧品として利用してもよい。
【0047】
さらに、これら全ての組成物は、製剤に必要な補助剤に加え、適用が考えられる分野で通常利用されている添加剤を有する。例えば、共溶媒(エタノール、グリセロール、ベンジルアルコール、湿潤剤など)、増粘剤、希釈剤、乳化剤、抗酸化剤、着色剤、遮光剤、顔料、フィラー、保存剤、香料、防臭剤、精油、微量元素、必須脂肪酸、表面活性剤、成膜ポリマー、薬液用または鉱物用フィルター、保湿剤または温泉水などを有する。例えば、多糖類やポリペプチドなどの天然の水溶性ポリマー、メチルセルロース型やヒドロキシプロピルセルロース型のセルロース系誘導体、他の合成ポリマー、ポロキサマー、カルボマー、シロキサン、PVAまたはPVP、特にISP社製のポリマーが挙げられる。
【0048】
全ての場合において、当業者であれば、これらの補助剤及びその割合が、本発明の組成物の目的とする有利な性質を害しないように選択されていることを確認する。これらの補助剤は、例えば、組成物の全重量に対して0.01〜20%の濃度範囲で存在してよい。本発明の組成物がエマルションである場合、油層は、組成物の全重量に対して5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%である。組成物に使用される乳化剤と共乳化剤は、対象とする分野で従来から利用されているものであってよい。例えば、組成物に使用される乳化剤と共乳化剤は、組成物の全重量に対して0.3〜30重量%の割合で利用してよい。
【0049】
本発明の活性剤は単独で利用してもよく、他の活性剤と組み合わせて利用してもよいと解する。
【0050】
有効な手段として、本発明の利用可能な組成物は、本発明の活性剤の活性を促進することを目的とし、かつ特に加齢性障害の予防及び/または治療を目的とする、少なくとも1つの他の活性剤をさらに含有する。
【0051】
限定されるわけではないが、成分の種類として下記が挙げられる。すなわち、他のペプチド活性剤、植物抽出物、瘢痕形成薬、老化防止、しわ防止、スムージング、抗ラジカル、抗UV剤、真皮高分子の合成またはエネルギー代謝を刺激する薬剤、保湿剤、抗菌材、抗真菌剤、抗炎症剤、麻酔薬、皮膚分化調節剤、染色または脱色剤、爪または毛髪の成長を刺激する薬剤。
【0052】
優先的には、抗ラジカルまたは抗酸化剤、真皮高分子の合成を刺激する薬剤、他のエネルギー代謝を刺激する薬剤が利用される。特に好ましい実施態様では、本発明の組成物は、本発明のペプチドに加え、
・少なくとも1つのチトクロームc活性化化合物、及び/または、
・少なくとも1つのアクアポリン活性化化合物などの保湿化合物、及び/または、
・少なくとも1つのサーチュイン活性化化合物及び特にフランス特許FR2883754、米国特許US11/910,098または欧州特許EP1868631に記載のペプチド、及び/または、
・少なくとも1つの細胞接着を増進する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ムコ多糖体などのマトリックスタンパク質の産生を促進する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのプロテアソーム活性を調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つの日周リズムを調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのHSPタンパク質を調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つの細胞エネルギーを増進する化合物、及び/または、
・少なくとも1つの皮膚色素沈着を調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つの補酵素Q10活性化化合物、及び/または、
・少なくとも1つのトランスグルタミナーゼ活性化化合物、HMG−CoA還元酵素活性化化合物などのバリア機能を改善する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのミトコンドリア保護化合物、及び/または、
・少なくとも1つの表皮または真皮の成体の体細胞を保護または調整する化合物、及び/または、
・少なくとも1つのDNA分解を保護または修復する化合物
を有する。
【0053】
上記化合物は植物、動物または微生物のペプチド加水分解物などの天然由来のものでも、ペプチドなどのように合成物でもよい。
【0054】
その機能とは無関係に、組成物中の本発明の活性剤に関連する他の活性剤は、多種多様の化学構造を有していてよい。その非制限的な例として、ペプチド、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンB群、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)、フィトステロール、サリチル酸及びその誘導体、レチノイド、フラボノイド、糖化アミン、アゾール化合物、金属塩、天然由来ペプチド抽出物、その他天然または合成ポリマーが挙げられる。
【0055】
本発明の他の対象は、本発明のペプチドを医薬品として生理的に許容可能な媒体中に有する医薬組成物である。本発明の医薬組成物は、乾燥症、脱色または褐色斑、角化症などが挙げられる、早期老化または光老化と関連する皮膚症状を改善する。
【0056】
有利なことに、本発明のこの形態における組成物は、医薬使用の経口投与に適している。したがって、組成物は、特に錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、チュアブルペースト、そのまま使用するかまたは使用直前に液体と混合して使用する粉剤、シロップ剤、ゲルまたは当業者に周知の他の剤型にしてよい。これらの剤型は、着色剤、甘味料、香料、増量剤、結合剤、保存剤などの好適な製剤添加物を含有する。
【0057】
本発明の第3の対象は、一般式(I)のペプチドを、DNA分解を予防及び/または修復する活性剤として有する化粧料組成物である。
【0058】
「DNA分解を予防及び/または修復する活性剤」とは、DNA分解を抑制、またはDNA塩基間の光化学反応による損傷の修復を促進するペプチドを指すと解する。
【0059】
本発明の第4の対象は、一般式(I)のペプチドを、テロメア維持を改善し、細胞老化を低下させる活性剤として有する化粧料組成物である。
【0060】
「テロメア維持を改善し、細胞老化を低下させる活性剤」とは、TRF2やSIRT6などのように、テロメアと特異的に関連して、その安定性に関わるタンパク質の合成を増進するペプチドを指すと解する。
【0061】
本発明の第5の対象は、一般式(I)のペプチドを、ケラチノサイト分化マーカーの発現を増進し、皮膚の線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の発現を促進する活性剤として有する化粧料組成物である。
【0062】
本発明の活性剤のこれら特定の性質は、真皮の質を改善し、それにより皮膚の堅さを改善し、表皮のバリア機能を最適化する。
【0063】
本発明の第6の対象は、あらゆるタイプの外部ストレスから皮膚を保護するために、一般式(I)のペプチドを活性剤として有する組成物の利用である。
【0064】
用語「外部ストレス」は、環境が作り出すストレスを指すと解する。例として、汚染、UV照射、表面活性剤などの刺激製品、保存剤、香料、摩擦、髭剃り、脱毛などの機械的ストレスが挙げられる。汚染は、ディーゼル粒子、オゾン、重金属などによる「外部」汚染と、特に塗料、接着剤、壁紙溶剤(トルエン、スチレン、キシレン、ベンズアルデヒドなど)からの放出や喫煙による「内部」汚染の両者を指すと解する。
【0065】
特に、本発明の対象は、本発明のペプチドを、UV照射及び酸化ストレスによる皮膚の損傷を予防または治療するための有効量を有する化粧料組成物の利用である。
【0066】
本発明の第7の対象は、本発明の活性剤の有効量を有する組成物を、老化や光老化の皮膚兆候を予防及び/または治療するために、皮膚の処置箇所に局所的に適用することを特徴とする、化粧処理法である。
【0067】
老化の皮膚兆候は、表皮の角質層の表面粗さ、しわ、小じわなどの老化による皮膚及び上皮付属器の外見の変化だけでなく、UV照射後の真皮の薄化や他の皮膚の内部分解などの、外見の変化としてはその徴候が現れない、皮膚の内部変化を指すと解される。
【0068】
特に、本発明は、UV照射によるストレスに対して皮膚を保護することを目的とする化粧処理法に関する。
【0069】
本発明の他の利点及び特徴は、例示的、非限定的な目的で示す実施例により、より明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】ヒトSIRTタンパク質のペプチド配列のアラインメント(アラインメントは、欧州バイオインフォマティクス研究所から利用可能な、複数ペプチド配列アラインメントプログラムClustalW2を使用して行った)である。
図2】配列番号5のペプチドで24時間処理した正常ヒト線維芽細胞のサーチュイン6(SIRT6)免疫標識の定量化である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
実施例1:配列番号5及び配列番号7のペプチドによる、サーチュイン6発現活性化効果の証明
本研究の目的は、配列番号5及び配列番号7のペプチドによる、ヒト皮膚でのサーチュイン6発現への影響を決定することである。そのために、正常ヒト角化細胞(NHK)培養物及び正常ヒト線維芽細胞培養物を免疫蛍光により特異的に標識した。
【0072】
プロトコール:NHKまたは正常ヒト線維芽細胞を、1日1回、配列番号5または配列番号7のペプチドの1×10−6Mまたは3×10−6Mの溶液で処理する。
【0073】
24、48及び72時間の短期間処理の研究を行った。
【0074】
長期間処理の研究も、線維芽細胞については5〜17継代(または12継代)、NHKについては3〜5継代(または2継代培養)により行った。
【0075】
抗−SIRT6抗体による免疫標識のために、細胞を3.7%で10分間、パラホルムアルデヒドで洗浄、固定化する。
【0076】
その後、細胞を抗−SIRT6特異抗体(Abcam、参照番号:ab62738、ポリクローナル、ウサギ)の存在下に培養した後、蛍光色素を結合した適切な第2抗体を反応させる。特定の媒体に固定し、スライドを落射蛍光顕微鏡(ニコンEclipseE80i顕微鏡)により観察する。
【0077】
蛍光強度を、Image−Pro分析器バージョン5ソフトウェアを使用してイメージを分析することによって定量する。
【0078】
結果:試験条件の全てにおいて、コントロール条件下の蛍光よりも強い蛍光が、1×10−6Mまたは3×10−6Mの配列番号5または配列番号7のペプチドで処理した培養物で観察された。
【0079】
線維芽細胞では、1×10−6Mの配列番号5のペプチドで24時間処理した細胞において、コントロール細胞よりも最高で蛍光が47%上昇しているのが観察される(図2)。
【0080】
NHKでは、3×10−6Mの配列番号5のペプチドで72時間処理した細胞において、コントロール細胞よりも最高で蛍光が35%上昇しているのが観察される。蛍光は、最初の72時間、用量依存的に上昇する。
【0081】
一方、試験に用いた両種の細胞において、長期間の処理の間ずっと、SIRT6の発現の上昇が維持されている。
【0082】
結論:配列番号5及び配列番号7のペプチドは、短期培養の正常ヒト線維芽細胞及びNHKで、サーチュイン6の発現を著しく上昇させる。また、サーチュイン6の発現を刺激する効果は、長期間維持される。
【0083】
実施例2:配列番号4のペプチドによる、TRF2タンパク質発現活性化効果の証明
本研究の目的は、テロメアと特異的関連性を有し、その維持に関与しているタンパク質である、TRF2タンパク質のヒト皮膚での発現に対する、配列番号4のペプチドの影響を決定することである。そのために、正常ヒト角化細胞(NHK)培養物及び正常ヒト線維芽細胞培養物に対して免疫蛍光による特異的標識を長期間行った。
【0084】
プロトコール:線維芽細胞については5〜17継代(または12継代)、NHKについては1〜2継代(または1継代、10日間の処理)培養中の細胞を、1日1回、配列番号4のペプチドの1×10−6Mまたは3×10−6Mの溶液で処理する。
【0085】
抗−TRF2抗体による免疫標識のために、細胞を3.7%で10分間、パラホルムアルデヒドで洗浄、固定化する。
【0086】
その後、細胞を抗−TRF2特異抗体(Abcam、参照番号:ab13579、ポリクローナル、マウス)の存在下に培養した後、蛍光色素を結合した適切な第2抗体を反応させる。特定の媒体に固定し、スライドを落射蛍光顕微鏡(ニコンEclipseE80i顕微鏡)により観察する。
【0087】
蛍光強度を、Image−Pro分析器バージョン5ソフトウェアを使用してイメージを分析することによって定量する。
【0088】
結果:試験条件の全てにおいて、コントロール条件下による蛍光よりも強い蛍光が、1×10−6Mまたは3×10−6Mの配列番号4のペプチドで処理した培養物で観察された。
【0089】
線維芽細胞では、1×10−6Mの配列番号4のペプチドで処理した12継代培養細胞において、コントロール細胞よりも最高で蛍光が63%上昇しているのが観察される。蛍光は、用量依存的に上昇する。
【0090】
NHKでは、3×10−6Mの配列番号4のペプチドで10日間処理した細胞において、コントロール細胞よりも最高で蛍光が39%上昇しているのが観察される。蛍光は、用量依存的に上昇する。
【0091】
結論:配列番号4のペプチドは、長期培養の正常ヒト線維芽細胞及びNHKで、TRF2タンパク質の発現を用量依存的に著しく上昇させる。
【0092】
実施例3:配列番号5のペプチドによる、表皮分化及び表皮のバリア機能を活性化する効果の証明
本研究の目的は、配列番号5のペプチドによる表皮分化への影響を決定することである。そのために、長期間培養した基底層の角化細胞に特異的に発現される、主たる表皮分化のマーカーの発現を調査した。マーカーは、トランスグルタミナーゼ1及びインボルクリンを試験した。
【0093】
プロトコール:1〜3継代(または2継代、11日間の処理)の培養NHKを、1日1回、配列番号5のペプチドの1×10−6Mまたは3×10−6Mの溶液で処理する。
【0094】
細胞を洗浄、固定化する。特異部位を暴露した後、TG1に対する特異抗体(TEBU、参照番号:sc−25786、ポリクローナル、ウサギ)、インボルクリンに対する特異抗体(NovocastraNCL−INV、マウスモノクローナル、クローンSY5)の存在下、細胞を培養する。次いで、蛍光色素を結合した適切な第2抗体の存在下に培養する。観察を簡単に行うために、細胞核を、DNAに強固に結合する青色蛍光分子であるDAPI(4’,6’−ジアミノ−2−フェニリンドール)で対比染色してもよい。特定の媒体に固定し、スライドを落射蛍光顕微鏡(ニコンEclipseE80i顕微鏡)により観察する。
【0095】
結果:コントロール条件下による蛍光よりも強い蛍光が、1×10−6Mまたは3×10−6Mの配列番号5のペプチドで処理した培養物及び皮膚部分で観察される。
【0096】
結論:1×10−6Mまたは3×10−6Mの配列番号5のペプチドは、NHK分化を改善し、表皮のバリア機能を最適化する。
【0097】
実施例4:配列番号5のペプチドによる、皮膚細胞外マトリックス分子の発現を活性化する効果の証明
本研究の目的は、配列番号5のペプチドによる、皮膚細胞外マトリックス分子の発現に対する影響を決定することである。そのために、長期間培養した正常ヒト線維芽細胞におけるコラーゲンI及びIIIの発現を調査した。
【0098】
プロトコール:5〜17継代(または12継代)の培養正常ヒト線維芽細胞を、1日1回、配列番号5のペプチドの1×10−6Mまたは3×10−6Mの溶液で処理する。
【0099】
細胞を冷メタノールで5分間洗浄、固定化する。特異部位を暴露した後、コラーゲンIに対する特異抗体(TEBU、参照番号:600−401−103、ポリクローナル、ウサギ)、またはコラーゲンIIIに対する特異抗体(TEBU、参照番号:600−401−105、ポリクローナル、ウサギ)の存在下、細胞を培養する。次いで、蛍光色素を結合した適切な第2抗体の存在下に培養する。特定の媒体に固定し、スライドを落射蛍光顕微鏡(ニコンEclipseE80i顕微鏡)により観察する。
【0100】
結果:コントロール条件下による蛍光よりも強い蛍光が、1×10−6Mまたは3×10−6Mの配列番号5のペプチドで処理した培養物及び皮膚部分で観察される。
【0101】
結論:1×10−6Mまたは3×10−6Mの配列番号5のペプチドを長期間適用することによって、皮膚細胞外マトリックスの二つの必須タンパク質である、コラーゲンI及びIIIの発現が増加される。
【0102】
実施例5:UV照射によるDNAの損傷に対する、配列番号5のペプチドの効果の証明
本研究の目的は、UV照射によるDNAの損傷に対する、配列番号5のペプチドの保護効果を決定することである。そのために、DNAの損傷を細胞レベルで定量化することが可能な、コメットアッセイを行った。
【0103】
プロトコール:正常ヒト線維芽細胞を、1×10−6Mまたは3×10−6M濃度の配列番号5の配列のペプチドとともに24時間培養した後、60mJ/cmの照射量のUVBで照射し、1×10−6Mまたは3×10−6M濃度の上記ペプチドで再度24時間処理する。
【0104】
コントロールとして、処理をしない条件で培養、照射を行う。
【0105】
次いで、細胞をトリプシンにより支持体から剥離し、1200rpmで10分間遠心分離して濃縮し、計数する。
【0106】
所定の数の細胞(25000個)を0.75%で低融点アガロースゲルに加え、事前に1%アガロースで覆ったガラススライド上に載せる。スライドを溶菌溶液に4℃で1.5時間浸漬し、次いでアルカリ溶液に4℃で20分間浸漬する。これによって細胞は溶菌し、DNAの変性を行う。スライドを電気泳動溶液に浸漬した後、電界(20V−250mA)をかける。このように変性したDNAを、アガロースゲル内を4℃で30分間移動させる。DNA蛍光染料として2μg/mlのヨウ化プロピジウムをスライドに20分間適用し、DNAが損傷されている場合コメット・テール形状にみえるDNAを顕微鏡で観察する。
【0107】
定量ソフトウェアにより、試験各条件での平均「テール・モーメント」(またはコメット・テールの長さ)を決定することができる。このパラメーターにより、DNAの損傷レベルに関する情報が得られる。このパラメーター値が高いほど、DNA分解が激しい。
【0108】
結果:3×10−6Mの配列番号5のペプチドで処理した細胞では、テール・モーメントがコントロール条件でのテール・モーメントに比べて、24.8%低減している結果が見られる。
【0109】
結論:処理後にUVB照射を受けた細胞のDNAは、コントロール細胞のDNAに比べて損傷されにくい。この結果により、配列番号5の配列のペプチドのUVB照射に対する予防的保護及び治療効果が確認される。
【0110】
実施例6:酸化ストレス下の配列番号5の保護効果の証明
本研究の目的は、酸化ストレス下の角化細胞に対する、配列番号5のペプチドの保護効果を決定することである。そのために、Hによる酸化ストレス後に特異的免疫標識を行い、サーチュイン6の発現を定量的かつ定性的に評価した。
【0111】
プロトコール:培養中のNHKを、配列番号5のペプチドの1×10−6Mまたは3×10−6Mの溶液で24時間処理する。その後、細胞を2mMのHの存在下に培養し、洗浄した後、配列番号5のペプチドの1×10−6Mまたは3×10−6Mの溶液で再度24時間処理する。コントロールとして、処理及びHストレス負荷を行わないで(コントロール0)細胞培養し、処理を行わず、Hストレス負荷だけを行って(コントロール1)、細胞培養した。
【0112】
抗−SIRT6抗体による免疫標識のために、細胞を3.7%で10分間、パラホルムアルデヒドで洗浄、固定化する。
【0113】
その後、細胞を抗−SIRT6特異抗体(Abcam、参照番号:ab62738、ポリクローナル、マウス)の存在下に培養した後、蛍光色素を結合した適切な第2抗体を反応させる。特定の媒体に固定し、スライドを落射蛍光顕微鏡(ニコンEclipseE80i顕微鏡)により観察する。
【0114】
蛍光強度を、Image−Pro分析器バージョン5ソフトウェアを使用してイメージを分析することによって定量する。
【0115】
結果:定量分析は、NHKを1×10−6Mまたは3×10−6Mの配列番号5のペプチドで処理し、Hストレスを与えた場合、SIRT6の発現が、コントロール1に比べてそれぞれ16%及び20%上昇することを示す。
【0116】
結論:予防的に配列番号5のペプチドにより処理し、続いて酸化ストレスを与えた細胞は、コントロール細胞に比べて、そのSIRT6タンパク質含量が高い。この結果により、配列番号5の配列のペプチドが酸化ストレス下のNHKの保護を促進することが確認される。
【0117】
実施例7:組成物の調製
1.日焼け防止クリーム
【0118】
【表1】
【0119】
A相及びB相の成分を70℃〜75℃で別々に加熱する。B相を攪拌しながらA相に乳化させる。C相を、攪拌を強めながら45℃で加える。温度が40℃未満に下がったら、さらにD相を加える。激しく攪拌しながら、25℃まで温度を下げる。
【0120】
2.アンチエージングクリーム
【0121】
【表2】
【0122】
A相を65〜70℃で調製、融解する。C相を65〜70℃に加熱する。A相がB相に乳化される直前に、B相をA相に添加する。約45℃で、D相を添加してカルボマーを中和する。E相を穏やかに攪拌しながら添加し、25℃まで温度を下げる。必要に応じてF相を添加する。
【0123】
3.プロテクティブデイクリーム
【0124】
【表3】
【0125】
A相を調製し、攪拌しながら75℃に加熱する。攪拌しながらカーボポールを、次いでキサンタンガムを分散させてB相を調製する。静置する。75℃に加熱する。
【0126】
その温度で、ローター・ステーターで攪拌しながらA相をB相に乳化させる。急速攪拌しながら、C相により中和する。40℃に冷却後、D相、次いでE相を添加する。穏やかに攪拌しながら冷却を続け、F相を添加する。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]